粉末圧延法を利用した 電解用新規不溶性アノードの開発 研究責任者 : 田口正美 (秋田大学大学院 工学資源学研究科 教授) コーディネータ : 伊藤慎一 (秋田大学 産学連携機構 産学連携コーディネータ) 研究背景と目的 鉛蓄電池用Pb基合金グリッドのグ ロース挙動の研究において,粉末圧 延で作製したPb-Sn合金が卓越した 耐クリープ性を示すことが判明した. この成果を,電解プロセッシングに 適用し,Pb基粉末圧延合金の不溶 性アノードとして特性を調査する. 粉末圧延法により電解採取用PbAg基合金アノードを調製すると,電 極寿命の大幅な延長の他に,厚さ・ 重量の低減,材料費の削減などの 様々な効果が期待できる. 図 (a)鋳造圧延法と(b)粉末圧延法で作製した Pb-1.5mass%Sn合金の結晶組織 Zn電解採取用アノードに求められる性質 1. 製品Znの純度: 不溶性アノー ドに起因する汚染Pb量が少な いこと. 2. 耐食性・耐久性: 腐食や反り・ 伸びなどの変形が少なく,不溶 性アノードとして長期間使用が 可能なこと. 3. エネルギー効率: アノード電位 が低く,カソード電流効率が高 いこと.ひいては,エネルギー 効率が高く,省エネルギーであ ること. 4. 製造コスト: 厚さ・重量を低減 でき,材料費を削減できること. 製造法が簡便で安価なこと. 図 Zn電解採取の模式図 左図 (a)鋳造圧延合金, (b)ショットピーニ ング処理した鋳造 圧延合金,(c)粉 末圧延合金の断 面組織 右図 各種Pb基合金の調製 フローおよび粉末圧延 装置 Pb基合金クリープ試験 通常の大気中試験のみならず, H2SO4中あるいはH2SO4中通電下で のクリープ試験が可能! 図 Pb-0.71Ag鋳造圧延合金のクリープ 挙動に及ぼす試験条件の影響 (303 K, 15.0MPa, 150 g L-1 H2SO4) Norton則 図 電気化学腐食クリープ装置 ε=Bσ n Pb-0.71mass%Ag鋳造 圧延合金は転位クリープ 機構で変形する. 新技術の特徴・従来(競合)技術との比較 • Pb-0.71Ag粉末圧延合金は, H2SO4溶液中のみならず , H2SO4溶液中通電下において も,ほとんどクリープ変形しない. • 合金中に多数存在する結晶粒 界が転位の移動を阻止した可 能性が高い. Pb-Ag粉末圧延合金は,耐クリープ 性・耐食性を有する長寿命の新規 不溶性アノードとしてきわめて有望 図 H2SO4中におけるPb-0.71Ag鋳造圧延合金およびPb-0.71Ag粉末圧延合金の クリープ挙動の相違 ( 150 g L-1 H2SO4 , 303 K, 15.0MPa) エネルギー効率Eeff(%): Pb-Ag粉末圧延合金 ≒ Pb-Ag鋳造圧延合金 製品Zn中の汚染Pb量(ppm): Pb-Ag粉末圧延合金 < Pb-Ag鋳造圧延合金 (新規アノードの方が40%以上低下) 図 Zn電解採取のエネルギー効率ならびに製品Zn中の汚染Pb量 (70 g L-1 Zn + 150 g L-1 H2SO4, 313 K, 60 mA cm-2,18.0 ks ) 想定される用途 • Zn電解採取を含む各種工業電解プロセッ シング用不溶性アノード • 電極材料の新規製造プロセス • 卓越した耐食性・耐クリープ性を有する 新規非鉄金属材料の開発 • ヘテロ構造を有する省エネルギー型電極 材料の開発 実用化に向けた課題 • 卓越した耐クリープ性を確認できたが,その発 現機構については未解明の部分が多い.(変 形機構や結晶粒界の役割など) • 新規不溶性アノードの研究は,実験室規模に とどまっている.今後は,スケールアップしたプ ロトタイプによる実証試験を行う. • 実用化に向けて,電解消費電力の大幅な削減 を目指す.具体的には,酸素過電圧を低下さ せた新規アノードを調製する.粉末圧延による アノード作製技術を確立することも重要である. 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :非鉄金属の電解採取方法 およびそれに用いるアノードの製造方法 • 出願番号 :特願2012-092313 • 出願人 :国立大学法人 秋田大学 DOWAホールデングス株式会社 • 発明者 :田口正美 想定される技術移転 • 本技術をもって、低コスト ・ 長寿命の電 解アノード製造がおこない、市場での活 用を目指す ① 非鉄金属の電解採取用アノード ② 非鉄金属の成形加工方法 ③ 耐食、耐クリープ材料(電極材料) お問い合わせ先 秋田大学 産学連携コーディネーター 伊藤 慎一 TEL 018-889-2712 FAX 018-837-5356 e-mail staff@crc.akita-u.ac.jp
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