糖尿病患者における代謝異常の考察

糖尿病患者における代謝異常の考察
(医)大田姫野クリニック1)
島根大学医学部附属病院栄養サポートセンター2)
福村宏1),小林幸造1),岡田理江1),
矢野彰三2),角昌晃1),滋野和志1)
日本透析医学会学術集会・総会
COI開示
筆頭発表者名 福村 宏
演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にあ
る企業などはありません。
はじめに
糖尿病(DM)患者では筋萎縮が原因で筋肉
量の低下を生じ,しばしば,筋力およびADL
能力の低下を招く.
今回,透析患者において血液検査,体組
成,歩行速度,握力を測定し,糖尿病の有
(DM+群)無(DM-群)で比較検討したので
報告する.
対象患者条件
 通院血液透析患者
 透析歴6ヶ月以上
 支えなしで歩け,筋肉の測定ができる
 ペースメーカを装着していない
 1分間起立できる
方法
以下の項目を比較
 血液検査:Alb,BUN,Cr,CRP,T-cho
 透析指標:Kt/V,%CGR,nPCR

体組成:四肢骨格筋量,除脂肪量,体脂肪率
骨格筋量指数(SMI)
 上腕筋囲,上腕三頭筋皮下脂肪厚
 握力,歩行速度
対象患者背景
全体
(mean±SD)
DM-
(mean±SD)
DM+
(mean±SD)
P
患者数(人)
178
103
75
男性(人)
115
63
52
NS
女性(人)
63
40
23
NS
年齢(歳)
68.3±11.5
66.6±12.2
70.8±10.0
<0.05
透析歴(月)
110.7±107.4
149.9±123.2
56.9±39.9
<0.01
身長(m)
1.59±0.09
1.59±0.09
1.59±0.10
NS
BUN,Cr,CRP,T-cho
BUN
(mg/dl)
(mg/dl)
NS
80
P<0.01
54.6
10
(mg/dl)
(mg/dl)
NS
P<0.01
250
1.2
12
57.4
T-cho
CRP
1.4
14
70
60
Cr
200
9.9
171.1
1
154.3
8.8
50
8
0.8
6
0.6
4
0.4
150
40
30
20
100
0.37
0.31
50
10
0
DM(-)
DM(+)
2
0.2
0
0
DM(-)
DM(+)
0
DM(-)
DM(+)
DM(-)
DM(+)
nPCR,%CGR,Kt/V,Alb
nPCR
(g/kg/day) P<0.05
1.2
(%)
%CGR
Kt/V
P<0.01
P<0.01
Alb
4
1
120
0.9
0.84
0.8
2.5
110.9
3.6
3.6
3.5
2.1
97.5
100
NS
4.5
3
140
(g/dl)
1.9
2
80
3
2.5
0.6
1.5
2
60
0.4
1.5
1
40
1
0.2
0
DM(-)
DM(+)
20
0.5
0
0
0.5
DM(-)
DM(+)
0
DM(-)
DM(+)
DM(-)
DM(+)
四肢骨格筋,除脂肪量,上腕筋囲,
上腕三頭筋皮下脂肪厚
上腕三頭筋皮下
(kg)
四肢骨格筋量
NS
25
(kg)
除脂肪量
NS
50
(cm)
上腕筋囲
NS
16
30
45
20
40
15.3
16
15
38.2
38.9
35
22.2
22.8
12
10
15
6
10
15
4
10
5
2
5
0
DM(-)
DM(+)
9.1
8
20
0
11
20
25
5
P<0.01
14
25
30
10
(cm) 脂肪厚
0
DM(-)
DM(+)
0
DM(-)
DM(+)
DM(-)
DM(+)
握力,歩行速度,BMI
(kg)
握力
NS
40
35
(sec)
NS
30
5
25
4.1
25
24
20
15
BMI
(kg/m2) P<0.01
6
30
25
歩行速度
22.3
4.3
20.4
4
20
3
15
2
10
1
5
0
0
10
5
0
DM(-)
DM(+)
DM(-)
DM(+)
DM(-)
DM(+)
DW,体脂肪率,SMI
DW
(kg)
P<0.01
体脂肪率
(%)
P<0.01
SMI
(kg/m2)
80
40
8
70
35
7
57.1
60
29.9
30
51.6
6
5.9
6.1
25.6
50
25
5
40
20
4
30
15
3
20
10
2
10
5
1
0
0
0
DM(-)
NS
DM(+)
DM(-)
DM(+)
DM(-)
DM(+)
まとめ
DM患者は非DM患者に比べ
 高齢で,透析歴が短かかった。
 血中のAlb,BUN,CRPに有意差を認めなかったが,
Crと総コレステロール(TC)は有意な低値を認めた。
 nPCR,%CGR,Kt/Vは有意に低値であった.
 四肢骨格筋量や除脂肪量に有意差なく,体重,体脂
肪率は有意に高値を示した.同様に,上腕筋囲に有
意差なく,上腕三頭筋皮下脂肪厚は有意に高値で
あった.
 一方,握力,歩行速度には有意差を認めなかった.
考察①
CKD患者,特に末期腎不全である透析患者の身
体活動量は健常者の約40%,運動耐用能は約
50%と低下し,しばしば筋萎縮を認めSMIの低
下症例があるとの報告がある.
一方,DM患者にも同様に透析導入前から末梢
神経障害が引き起こす筋肉量,筋力低下の報
告もある.
これらの報告から,DM+群,DM-群供に筋肉
量,筋力低下があり,今回の検討では有意な
差が認められなかったと思われた.
考察②
DM+群はCr,%CGRが有意に低値であり,筋肉
の質の違い,運動量の減少,蛋白質の筋肉で
の代謝異常の可能性が考えられた.
結 語
糖尿病透析患者では,筋肉量増加
を伴わない体脂肪のみの増加があ
ると考えられた.