2016 年度 北大・東北大等合同セミナー 「確率モデル要論 」(尾畑伸明 著) 講師: 長谷部 高広 研究室: 北海道大学 理学部 3 号館 606 学習内容 「確率モデル要論」(参考文献 [1]) の 6 章 (マルコフ連鎖) を読もうと思います. マルコ フ連鎖 (Markov chain) とは, 集合のある点から出発して, 次の時刻には別の点にある確率 で移動していくということを繰り返すプロセスのことです. 以下の図 0 • 1 • 1 1 2 2 • 1 2 1 2 3 • 1 2 1 は, ある時刻で位置 1, 2 にいるならば, 次の時刻では隣のどちらかに等確率 1/2 で移動し, 端の点 0,3 にいるならば, 次の時刻では確率 1 で隣に移動するというマルコフ連鎖です. Xn を 2 から出発して時刻 n における位置を表すとすると, もちろん時刻 0 では確率 1 で位置 2 にいるのですが, 実は時間 n が十分大きいならば, Xn が位置 k (k = 0, 1, 2, 3) にいる確 率はおよそ { 1 , k = 0, 3, P [Xn = k] ≃ 6 1 , k = 1, 2 3 となります. またこの極限の確率 ( 61 , 13 , 13 , 16 ) (定常分布と呼ぶ) は出発地点に依存しません. もちろんもっと複雑なマルコフ連鎖も考えられます. この本では以下の問いに答えてい きます. (1) どのような条件の下で, 定常分布が存在するか? (2) 定常分布はどのように求めることができるのか? 問 (1) に関するキーワードは「既約性」「再帰性」「周期性」です. 問 (2) については「行 列の固有ベクトル」がキーワードになります. 予備知識 • 線形代数 (行列のかけ算や固有値など). 例えば正方行列 P = (pij )ni,j=1 に対して, P k の (i, j) 成分はどのように表されるか? • 測度論を使わない確率論の基礎 (確率, 期待値, 確率変数, 条件付き確率など). 参考 文献として [2, 3] を挙げておきます. 測度論は知らなくてもよいが, 知っていると理 解が深まると思います. 測度論に基づく確率論を学びたい人はセミナーのテキスト [1] の 1,2,3 章あるいは [4, 5] を参考にしてください. 参考文献 [1] 尾畑伸明 確率モデル要論, 牧野書店, 2012. [2] 鈴木武 確率入門: モデルで学ぶ, 培風館, 1997. [3] 小杉のぶ子 はじめての確率論, 近代科学社, 2011. [4] 佐藤 坦 はじめての確率論: 測度から確率へ, 共立出版, 1994. [5] 舟木直久 確率論, 朝倉書店, 2004.
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