ネコと小鳥 ネコが屋根でねていました。あ、足をぎゅっとちぢめたよ。

第 6 話(4 頁)
ネコと小鳥
ネコが屋根でねていました。あ、足をぎゅっとちぢめたよ。
ネコの近くに小鳥が止まったのです。
だめだめ、小鳥さん、近くに行っちや。ネコはずるいんだよ。
「トルストイは子どもの目線に立って、じっとネコと小鳥の動きを観察している。そんな息
遣いが聞こえてくるようだ。」
「確かに観察するトルストイがいて、見たままを易しい言葉で書いている。」
「『ネコはずるいんだよ』っていう結びが、ものすごく効いている。小鳥は近づきすぎてネ
コに食べられちゃたんだろうか。」
「あわてて飛んで逃げた、ってことも……、と思ったが、やっぱり、それはないか。」
「ネコは足をぎゅっと縮めたときに爪を隠した。そして、敵意がないように見せかけた。そ
れを、『ずるい』という表現に込めたとは読めないかな。」
「随分と深い読み方をするね。」
「トルストイはじっと観察していて、きっと話の先まで見ているはずだ。なのに、わざと、
そこまでは書いていない。」
「そのあたりが、アーズブカの真骨頂かな。」