一般演題口演 腎炎・ネフローゼ(基礎)4 6月19日 09:00〜10:12 Room 8 (パシフィコ横浜会議センター 4階 418) 司会 本田 一穂 司会 (昭和大学医学部顕微解剖学) O-336 二次的ポドサイト傷害は雄で強い 演者 岡部 匡裕 (東海大学) 宮崎 陽一 (慈恵医大腎臓高血圧内科) 横尾 隆 (慈恵医大腎臓高血圧内科) 大塚 正人 (東海大学) 本島 英 (東海大学) 深川 雅史 (東海大学) 松阪 泰二 (東海大学) 以前我々は,一部のpodocyteが傷害されると,近傍のpodocyteも二次的に傷害されることを見 出した.一方,ヒトのCKD有病率は女性に高いが,新規透析導入は男性に多く,男性CKDは女性 よりpodocyte傷害拡大が速い可能性がある.今回,一部のpodocyteにのみ傷害を誘導できるモ ザイクマウスを用い,二次的podocyte傷害に性差があるかを検討した.このマウスでは同一糸 球体内に,イムノトキシン(LMB2)受容体 hCD25陽性,あるいは陰性podocyteがモザイク状 に存在する.hCD25陽性率に性差はなかった(雄 51±8.1,雌 51±5.8%).28週齢の雄・雌 各5匹へLMB2を投与しpodocyte傷害を誘導したところ,7日目の尿中Alb/Cre比(ACR)は雄 85±14,雌 85±14 mg/mgと同様だったが,その後雄マウス群でACR高値が有意に遷延(14日目 73±21 vs 53±50;21日目 53±23 vs 19±16 mg/mg, p<0.01)し,雄2匹が死亡した.25日目の腎組織 解析では,雄マウス群で尿細管拡張が高度であり,糸球体でより顕著なnephrin減弱およびdesmi n発現を認め,podocyte傷害が強いことが観察された.一方,全podocyteにhCD25を発現するN EP25マウスでは,LMB2で誘導されるpodocyte傷害に性差は認められなかった.以上より,LM B2による直接的podocyte傷害には性差がないが,二次的podocyte傷害においては性差が存在し ,雄性はpodocyte傷害拡大の増悪因子である事が示唆された. O-337 ポドサイト障害促進因子dendrinの核移行メカニズムの解明 演者 白田 成俊 (京都大学TMKプロジェクト) 伊原 寛一郎 (東北大学農学研究科) 柳田 素子 (京都大学腎臓内科) 西森 克彦 (東北大学農学研究科) 淺沼 克彦 (京都大学TMKプロジェクト) 【背景】我々は,dendrinがスリット膜(SD)裏打ち蛋白であること,ポドサイト障害時に核移 行しアポトーシスを促進することを報告している.また,糸球体硬化を伴うヒト腎疾患でdendri nの核移行が認められ,IgA腎症の予後と相関することを示してきた.しかしdendrinの局在を制 御するメカニズムは不明であった.【目的・方法】本研究では,dendrinのSD裏打ち部への局在 および核移行メカニズムについて,yeast two hybrid screening,免疫沈降法やポドサイト特異 的MAGI-2(SD関連タンパク)KOマウスを作製して検討した.【結果】DendrinはMAGI-2によ りSD裏打ち部に局在すること,Fyn(リン酸化酵素),PTP1B(脱リン酸化酵素)によりリン酸 化制御されていることを見つけた.さらにdendrinはNedd4-2(ユビキチンリガーゼ)によりユ ビキチン化を受けること,リン酸化により蛋白分解が制御されていることを見出した.MAGI-2 KOマウスのポドサイトでは,dendrinの発現低下および核への集積が認められ,ポドサイトアポ トーシスから糸球体硬化が認められた.また,SD裏打ち部のdendrinはリン酸化され,核移行し たdendrinは脱リン酸化されていた.【結論】Dendrinの細胞内局在と発現は,MAGI-2, Fyn, PTP1B, Nedd4-2によって制御され,ポドサイト障害に関与することが判明した. O-338 Podoplanin強制発現ラットポドサイトの検討 演者 野坂 仁也 (上尾中央総合病院腎臓内科) 藤原 信治 (上尾中央総合病院腎臓内科) 大野 大 (上尾中央総合病院腎臓内科) Dontscho Kerjaschki (Clinical Department of Pathology, Medical University of Vienna, Austria) 内田 俊也 (帝京大学内科) 兒島 憲一郎 (上尾中央総合病院腎臓内科) 【目的】ポドサイトの膜蛋白であるpodoplaninは,足突起の形態保持や糸球体係蹄壁の透過性制 御において,重要な役割を持つことが示唆されているが,その詳細についてはほとんどわかって いない.我々は以前にpodoplanin強制発現ラットポドサイトを作製し,足突起の平低化を想起さ せる細胞形態や,アクチン細胞骨格の変化が認められたことを報告した.しかしながらその機序 に関しては不明であるため,今回このポドサイトを用いてさらなる検討をおこなった.【方法】 ウェスタンブロッティング法を用いて,podoplaninとの関連が示唆されているERM蛋白のリン酸 化を,G-LISA activation kitを用いて,RhoA,Rac1,Cdc42活性について検討した.また創傷 治癒アッセイで細胞の運動能を観察した.【結果】podoplanin強制発現ポドサイトではコントロ ールと比較して,ERM蛋白のリン酸化が増強し,Rac1とCdc42の活性が低下していた.また運 動能の低下が認められた.【結論】podoplaninの強制発現がERM蛋白のリン酸化を経て,Rac1 やCdc42の活性を低下させることにより,アクチン細胞骨格の変化や運動能の低下をもたらし, 形態変化を起こした可能性が示唆された. O-339 スリット膜の形成,維持におけるEphrin-B1の役割―タモキシフェ ン誘導ポドサイト特異的KOマウスを用いた解析― 演者 福住 好恭 (新潟大学腎研究施設分子病態学) 張 瑩 (新潟大学腎研究施設分子病態学) 山岸 稜平 (新潟大学腎研究施設分子病態学) 河内 裕 (新潟大学腎研究施設分子病態学) 【背景】私たちはEphrin-B1がスリット膜に発現し,CD2APの正常局在に関与していることを報 告したが,スリット膜機能維持におけるEphrin-B1の役割の詳細は不明である.【目的・方法】 スリット膜の形成,維持におけるEphrin-B1の役割を明らかにするため,胎生期(E18.5)もし くは成体期(9-11週齢)にEphrin-B1欠損を誘導したマウスを用い,蛋白尿,及びスリット膜構 成分子の発現を解析した.また,次世代シーケンサを用いた網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq解 析)を行った.【結果】胎生期にEphrin-B1欠損を誘導したKOマウスでは,有意な蛋白尿が観察 されなかったが,成体期に欠損誘導したKOマウスでは有意な蛋白尿(5.33 vs 1.55 mg/mg Cr ,p<0.0001,n=8,誘導後10日),並びにスリット膜機能分子であるNephrin,NEPH1,CD2 AP,ZO-1の発現,局在の変化が観察された.RNA-seq解析では,KOマウスの糸球体において5 0%以下に発現が減少した遺伝子としてスリット膜関連分子とともに,血管新生因子Angiopoieti n-1,Wntシグナル分子Sclerostin,細胞接着因子Camello-like 3などが同定された.【結論】E phrin-B1は成体期におけるスリット膜の機能維持に重要な役割を担っていると考えられる.RNA -seq解析で同定された分子は,EphrinB1に関連する新規スリット膜機能分子である可能性がある. O-340 糸球体上皮細胞の運動制御におけるオートファジーの役割 演者 四枝 龍佑 (九州大学大学院医学研究院病態機能内科学) 鳥巣 久美子 (九州大学大学院医学研究院病態機能内科学) 鶴屋 和彦 (九州大学大学院医学研究院病態機能内科学) 北園 孝成 (九州大学大学院医学研究院病態機能内科学) 【背景】糸球体上皮細胞のオートファジー欠損によって,ネフローゼ症候群が悪化することが遺 伝子改変マウスの解析から報告されているが,その詳しい機序は不明である.本研究は,オート ファジーによる糸球体上皮細胞の運動性への関与に注目し,その役割を明らかにすることを目的 とした.【方法】培養マウス糸球体上皮細胞を用いて,ヒドロキシクロロキンもしくはAtg7の ノックダウンによってオートファジーを阻害した群を作成し,コントロール群と比較検討した. 創傷治癒・細胞遊走アッセイで細胞運動性を評価すると共に,Rhoファミリータンパクの活性を 検討し,免疫染色で細胞骨格タンパクの構造変化を定量した.更に,細胞接着分子の発現をフロ ーサイトメトリーで比較した.【結果】オートファジーを阻害した群は,運動性が過剰に亢進し た表現型を示し,Rhoファミリータンパクの活性の変化とアクチン線維の制御異常を呈した.ま た,オートファジー阻害群では,細胞膜表面のβ1インテグリンの活性増加が見られ,運動性異常 と接着性の変化への関与が推察された.【結論】オートファジーは,糸球体上皮細胞の運動性を 抑制的に制御し,かつ糸球体基底膜との接着性に関わることで,糸球体バリア機能の保持に関与 していることが示唆された. O-341 尿蛋白出現機序におけるCD147/Basiginの役割 演者 吉岡 知輝 (名古屋大学腎臓内科) 小杉 智規 (名古屋大学腎臓内科) 森 佳子 (名古屋大学腎臓内科) 前田 佳哉輔 (名古屋大学腎臓内科) 門松 健治 (名古屋大学分子生物学) 松尾 清一 (名古屋大学腎臓内科) 丸山 彰一 (名古屋大学腎臓内科) 【目的】CD147/Basigin(Bsg)は炎症・免疫に関与する膜一回貫通型糖蛋白質である.これま でに我々は,Bsgが白血球遊走やIL17産生Tリンパ球の分化に関与し,腎尿細管間質の線維化や 自己免疫性糸球体腎炎の発症・進展に関わる事を証明した.本研究では,アドリアマイシン(A DR)腎症モデルを用い,糸球体を中心とした尿蛋白出現機序におけるBsgの関与を検証する.【 方法】8~12週齢の雄野生型(Bsg+/+)およびBsg欠損(Bsg-/- )マウスにADRを経静脈的に投与し,2週間後に屠殺.血液・尿・腎臓を採取・検証した.ヒト ポドサイト培養 細胞を用いて細胞形態学・分子 生物学的検討を行った.【結果】Bsg+/+はBsg-/- に比して有意な尿蛋白量の増加と共にポドサイト障害,足突起の癒合を認めた.病理学的に尿細 管間質障害を認めないが ,マクロファージの浸潤は尿蛋白量に比例してBsg+/+ で増加した.Bsgは正常糸球体内に認めないが,ADR投与後障害糸球体のポドサイト上に著明な 発現を認めた.ヒト培養ポドサイト細胞においてTGF-β刺激時にFocal Adhesion Kinase(FAK )の増加と共にBsg発現を確認した.siRNAによるBsg発現抑制実験ではポドサイトFAKのリン酸 化抑制を認めた.【結論】ポドサイト障害により誘導されたBsgはFAKのリン酸化を介し,尿蛋 白出現に寄与する. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org)
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