間葉系幹細胞シートを用いた 角膜損傷治療への応用 東京農工大学 農学研究院 動物生命科学部門 准教授 田中 あかね 東京農工大学 農学研究院 動物生命科学部門 教授 松田 浩珍 1 研究背景 • 小動物眼科において、とくにイヌでは、角膜の病気が多い • ほとんどの眼科疾患は、点眼薬による薬物治療で治癒する • 外科的な治療が必要な眼科疾患もある 例:角膜損傷、緑内障、腫瘍 • 経済発展とともに、ペットに対する高度医療化が進んでいる • 新たな技術を用いた、簡便な治療技術の開発が望まれている • イヌの自然発症疾患は、ヒトの良い病態モデルになる 2 新技術の基となる研究成果・技術 • 眼科疾患における外科的治療 例:角膜潰瘍:角膜表層切除瞬膜フラップ術 角膜潰瘍部を切除し、第三眼瞼(瞬膜)で眼表面を被い、瞼を縫合する 3 新技術の基となる研究成果・技術 • 眼科疾患における外科的治療 例:角膜潰瘍:角膜表層切除瞬膜フラップ術 – 利点 • 瞼を閉じることにより、眼帯の役割をして、外部 刺激を防御することができる – 欠点 • 瞼を閉じることにより、患眼の視覚が一時的に 喪失する • 獣医師や飼い主が、外部から眼の状態を確認 することができない 4 新技術の基となる研究成果・技術 • 組織幹細胞の発見 – 骨髄、肝臓、神経、脂肪組織⇒異なる細胞に分化することができる 幹細胞の分離・培養技術 – 骨髄由来間葉系幹細胞⇒血管の再生、肝臓の再生、糖尿病治療への 期待 – 脂肪由来間葉系幹細胞 – 組織幹細胞は、移植した時に拒絶反応が起こらない • ティシュー・エンジニアリングの発展 – 細胞シート • 土台に羊膜やコラーゲンゲルが使われていた • 温度応答性培養皿の開発により細胞を一枚の薄い膜をとして取り扱うこ とが可能となった 5 間葉系幹細胞を用いた角膜損傷治療への応用 • 脂肪組織の採取と間葉系幹細胞の分離・培養 • 温度感受性培養皿への播種 6 間葉系幹細胞を用いた角膜損傷治療への応用1 • 実験犬を用いて、角膜の表面を削り、その後に、幹細胞シート をのせて、角膜表面の再生の経過を観察した。 7 間葉系幹細胞を用いた角膜損傷治療への応用2 • 症例:両眼の慢性角膜炎と角膜表面の色素沈着による 視覚障害 8 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来の方法は、眼を閉じていたため、中の状 況を把握することができなかった。 • 幹細胞シートを使用することにより、眼の状態 を確認することができ、患眼の視覚を妨げるこ ともなくなった。 9 想定される用途 • 本技術の特徴を生かせば、上皮の損傷(火傷、 腫瘍など)への適用への期待が大きい。 • また、角膜の治癒促進効果に着目すると、神経 疾患や関節疾患といった用途に適用拡大する ことも可能と思われる。 10 想定される業界 • 利用者・対象 獣医師、動物病院 • 市場規模 小動物医療施設:全国に10,000施設以上 イヌの飼育頭数(2009年度):12,322,000頭 ネコの飼育頭数(2009年度):10,021,000頭 眼科疾患罹患率:5%程度 眼科手術の一般的手術料:100,000円程度 11 実用化に向けた課題 • 培養された細胞シートをどのような形態で輸 送するか • 数ミクロンの薄い細胞シートを角膜上にきれ いにのせるツール • 施術には技術講習受講・トレーニングが必要 12 企業への期待 • 輸送や販売経路の開発 • 技術講習セミナーなどの主催 • 新技術の公告 13 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :移植用細胞シートの製造方 法、移植用細胞シート、及び移植用細胞 シートを用いる治療方法 • 出願番号 :特願2010-192682 • 出願人 :東京農工大学 • 発明者 :田中 あかね、松田 浩珍 14 お問い合わせ先 東京農工大学 農学研究院 動物生命科学部門 准教授 田中 あかね e-mail:[email protected] コーディネーター 堀野 康夫 TEL 042-388 - 7283 FAX 042-388 - 7173 e-mail [email protected] 15
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