理由書 【錦二丁目7番地区計画】 1.地区の概況 本地区は、中区の地下鉄桜通線丸の内駅及び地下鉄東山線伏見駅の東側に位置し、名古 屋駅や栄へのアクセスは非常に利便性が高いが、大部分が大規模な平面駐車場による低未 利用地と老朽化した建物となっている。 2.都市の将来における位置づけ 本地区は、『名古屋市都市計画マスタープラン』において、将来都市構造における「都心 域」に位置し、「商業・業務等とあわせて中高層住宅を誘導することにより、都市機能の集 積による高い利便性と職住近接性を活かした快適な都心居住を促進する」とされている。 また、本地区を含む長者町界隈では、「新産業機能や都心居住機能を充実し、繊維街として のまちの個性を生かしたにぎわいづくり、魅力づくりをめざす」とされている。 また、本地区は『都市再生緊急整備地域 地域整備方針』において、 「街区内で土地の集 約化をすることにより、土地の有効利用に資する都市開発事業を促進する」とされている。 さらに、『名古屋都市計画 都市再開発の方針』において、特に一体的かつ総合的に市街地 の再開発を促進すべき地区である「都心核」に位置し、「再開発、建物の共同化など土地の 高度利用を推進し、本社機能、金融機能、都心商業機能、都心居住機能等の立地を促進し て、都心核にふさわしい空間形成を図る」とされている。 3.計画に至った経緯 本地区を含む錦二丁目地区は、かつて日本有数の繊維問屋街として発展したが、産業・ 流通構造変化の影響を受けて繊維業が衰退し、人口減少や平面駐車場の増加によりまちの 活力が低下してきている。さらに、錦三丁目から性風俗店が進出してきており、少年の健 全な育成の観点等から地区内の都市環境への悪影響が懸念されている。また、錦二丁目地 区には広場空間がなく、恒久的かつ魅力的な溜まり空間が不足しており、歩行空間ととも により良好で快適な歩行者のための環境形成が求められている。さらに、本地区周辺は緑 被率が低いことから緑化空間の充実が求められているとともに、老朽化した建物が多く存 在し、かつ主要駅に近接していることから災害時の帰宅困難者対応が求められている。 一方、錦二丁目地区は、地元主体でまちの将来像を示した『これからの錦二丁目長者町 まちづくり構想』を策定し、あいちトリエンナーレや長者町ゑびす祭りなどの魅力向上に 向けた取組みが展開されており、また都市の低炭素化に貢献する低炭素モデル地区事業に 位置づけられるなど様々なまちづくりの取組みが進められている。 このような状況において、本地区においては平成 17 年度に「錦二丁目7番街区まちづく り協議会」を設立後、錦二丁目地区のまちづくりを実現するリーディングプロジェクトと しての開発のあり方に関する検討を進め、平成 24 年度末に市街地再開発準備組合を設立し、 計画の具体化や関係者の合意形成など事業の熟度が高まったことから、早期の計画実現に 向け今回都市計画提案に至ったものである。 4.計画の必要性 本地区では、良好な都市環境の形成及び魅力と賑わいのある複合市街地の形成を目指し て、連続的な賑わい空間の創出を図るための風俗営業や1階部分における駐車場設置に関 する用途規制、良好な街並みの創出を図るための景観に関する規制が必要である。 また、快適な歩行者空間の創出と回遊性の向上を実現するために、一定以上の空地確保 を定める壁面の位置や建ぺい率に関する規制、及び広場や歩行者用通路などの整備が必要 である。さらに、緑豊かなで潤いある都市空間の創出を実現するために、緑化率に関する 規制が必要である。 加えて、都心域にふさわしい土地利用を図るとともに防災性の向上を図るために、敷地 の共同化と老朽建物の更新を図る必要があり、人口定着によるまちの活力向上を促進する ため、多様な世代を対象とした住宅整備及び生活に必要な都市機能の導入を図る必要があ る。あわせて、快適な歩行者空間の創出と回遊性の向上を図るために、広場や歩行者用通 路などの整備を進める必要がある。 そのため、本地区において、魅力的かつ良好な都市環境の形成を図るとともに、土地の 高度利用と都市機能の更新及び合理的な土地利用を図るために、高度利用型地区計画と容 積適正配分型地区計画の適用が必要である。 5.計画の妥当性 本計画は、都市基盤施設が高い水準で整備されている地区において、まちの活力の向上 に向けて、土地利用転換により新たな都市機能として都心居住やにぎわい、交流に資する 都市機能を誘導し良好な都市環境の形成を図るとともに、既存都市機能と融合した魅力あ る複合市街地として安全なまちを目指すものである。 地区施設の整備においては、溜まり空間の創出と回遊性の向上を図るため、街区中央部 に広場を整備し、周辺街路から広場につながる歩行者用通路を整備するとともに、回遊性 の向上を図るとともに、まちのうるおいを演出する緑地を整備する。 建築物等に関する事項においては、用途の制限、容積率の最高限度、容積率の最低限度、 建ぺい率の最高限度、敷地面積の最低限度、建築面積の最低限度、壁面の位置の制限、壁 面後退区域における工作物の設置の制限、高さの最高限度、建築物等の形態又は色彩その 他の意匠の制限、緑化率の最低限度を定めることで、良好な都市環境の形成と、魅力ある 複合市街地として安全で活気あるまちの形成を実現する。 以上にように、本計画の内容は、魅力的かつ良好な都市環境の形成を図るとともに、適正 な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、建築物の敷地等の統合を促進し、 小規模建築物の建築を抑制するともに建築物の敷地内に有効な空地を確保することにより、 土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新、魅力ある複合市街地の形成を図るもの である。また、土地の特性に応じて容積率規制の詳細化を図り、良好な市街地環境の形成及 び合理的な土地利用を図るものである。さらに、 「新産業機能や都心居住機能を充実し、繊維 街としてのまちの個性を生かしたにぎわいづくり、魅力づくりをめざす」とする名古屋市都 市計画マスタープランにも適合しているため、本計画は妥当であると考える。
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