日本IR協議会 IRカンファレス2015 2015年12月16日 Round2 第5会場 インベスター・インパクト 「IRツールに表れる企業経営者の意識 」 長期的な企業価値評価のために アナリストはどこを見ているのか? ~Economic Moatの重要性~ 山口勝業 博士(経済学)、CFA、CMA イボットソン・アソシエイツ・ジャパン 代表取締役社長 ©2015 Morningstar, Inc. All rights reserved. Economic Moatとは? ► Moatとは「お城を守るお堀」 ► Economic Moatは、「企業の収益力を競争環境から守る防壁」 最初に提唱したのはWarren Buffet氏 ► Morningstarの株式調査の基本哲学 Economic Moatの強さ = 超過利潤率 x 持続期間 資本の超過利潤 = ROIC (return on invested capital) - WACC (weighted average cost of capital) ROIC WACC No Moat 10 年 Narrow Moat 20 年 超過利潤の持続期間 3 Wide Moat 30 年 株価評価モデルの考え方 残余利益(超過利潤)モデル 残余利益 NI t rE Bt 1 B0 t 1 rE t 1 PVE 株式の 現在価値 (時価) = 現在の 自己資本 (簿価) + 将来の残余利益 の 現在価値(時価) PVE :株式の現在価値 (present value of equity) Bt :t期末の自己資本の簿価 (book value) NIt :t期の税引後当期利益 (net income) rE :株式資本コスト (cost of equity capital) 4 𝑁𝐼𝑡 𝑅𝑂𝐸𝑡 = 𝐵𝑡−1 なので、分子は以下で表記できる 𝑅𝑂𝐸𝑡 − 𝑟𝐸 × 𝐵𝑡−1 MorningstarのアナリストがEconomic Moatを評価する5つの要素 「この企業は次の5つの要素に関して持続的競争力を持っているか?」 ► Intangible Assets ブランド、特許、政府の認可など 競合先が新規参入しにくくなる無形資産 ► Cost Advantage 原価が安いことで、低価格戦略をとれる、または 高い粗利率を得られる ► Switching Costs 顧客が他社製品・サービスへ乗り換えようとすると コスト(費用・労力)がかかる ► Network Effect 多くの顧客が使うようになると、ますます顧客にとって製品・サービスの価値が高まる ► Efficient Scale 製品・サービスの市場が小さく(ニッチ)て1社または数社で十分に満たされている 5 Economic Moatの違いと株価の関係 Wide Moat 企 業 価 値 と 株 価 Narrow Moat No Moat 期間 6 結論 ► ROEを高めることは、もちろん大事だが・・・ ► ROEはふつう未来永劫、増加しつづけることはない ► より重要なのは、資本コストを上回る超過利潤 を持続させること ► 競争的環境のもとで企業価値を持続させるには Economic Moat が必要 ► アナリストが定性分析で注目するのは Economic Moat の強さ 7
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