エレクトロニクス材料評価技術 元素分析 各分析法の特長 不純物・組成

元素分析
*誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析
*ICP質量分析
*EDX
*XPS・ESCA
*SIMS
*EPMA
等手法は多数
エレクトロニクス材料評価技術
理工学部・材料機能工学科
岩谷 素顕
[email protected]
9-2
9-1
各分析法の特長
不純物・組成分析のキーワード
不純物分析(主に1019cm-3以下の低い不純物濃度のもの)
 at%(アトミックパーセント)・・・材料全体に於いて原子の
割合を示したもの
 ppm・ppb・・・parts per million・parts per billion・・・
1ppmで材料全体において100万個(106個)に1個を表
す。ppbは10億個(109個)に1個
 cm-3・・・単位体積(cm-3=cc)あたりに含まれる原子数
SIMS (二次イオン質量分析)
GDMS (グロー放電質量分析)
ICP-OES (高周波誘導結合プラズマ発光分析)
LA-ICP/MS (レーザー照射型 誘導結合プラズマ質量分析)
組成分析(主に1020cm-3以上の高い不純物濃度のもの)
加速粒子分析技術:
RBS(ラザフォード後方散乱分析)、HFS(水素前方散乱分析)、PIXE
(粒子励起X線分析)
XPS/ESCA (X線光電子分光分析)
SEM-EDS (走査型電子顕微鏡)
AES (オージェ電子分光分析)
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9-4
不純物・組成分析のキーワード
 破壊測定・非破壊測定・・・言葉の通り、試料を削るな
ど破壊しながら測定するものが破壊測定、試料にダ
メージを与えずに測定するものが非破壊測定
過去の演習問題
Siにおいて単位体積当たり(1㎝3)何個のSi原子が含まれているか
を計算によって求めなさい。Siの格子定数は5.430 Åである。
1
1
8   6  4  8
8
2
z
 化学結合状態
・・・材料がどのような化学結合
で構成されているか?
a2
x
y
a1
8
 5.0 10 22 [cm 3 ]
10 3
(5.43 10 )
1㎝3あたりの原子数
 分解能・・・測定または識別できる能力
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SIMS
測定手順
① 酸素 (O2+) 又は セシウム (Cs+) を一次イオンとして使用。一次イオ
ンビームを四角にラスター(スキャン)させて材料をスパッタリングする
SIMS測定の精度
空間分解能/ビー
深さ分解能
ム径
10µm
破壊測定
1〜30nm
② ラスター領域から発生した二次イオンを二次イオン系(電場、磁場)で
質量分離されたのち、検出器(ファラデーカップ又はエレクトロンマルチ
プライヤー)で検出。
定量分析 検出限界感度 化学結合状態 破壊測定
可能
1012-1016 cm-3
不可
③ 一般的には標準サンプルの結果と比較することによって定量性を
確保している。(標準サンプルのない場合は定量的な精度は下がる)
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9-8
SIMS profile
測定できる元素
1.6 nm Mg-doped layer
Mg
In
Mg-doped
layer
BlueVioletQWs
QWs
1E+21
p-side
Concentration [cm-3]
1E+20
n-side
1E+09
1E+08
1E+07
1E+06
1E+19
5E+18
1E+05
1E+18
1E+04
1E+03
Intensity [counts]
1E+22
1E+17
1E+02
1E+16
1E+01
1E+15
(チャールスエバンスのHPより)
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9-10
GDMS
50
100 150 200
Depth[nm]
250
ICP-OES
固体試料を陰極としグロー放電を用いて試料表面をスパッタし、放出された
中性粒子をプラズマ内のArや電子との衝突によってイオン化させ、その成
分から校正元素濃度を測定する。ppb~%レベルの測定が可能。比較的バル
ク的な結晶を測定する場合に多用される。
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1E+00
0
高周波エネルギーにより発生させたアルゴンの高温プラズマの中心部
でネブライザーにより溶液試料を注入して発光させる。この光に含まれ
ている試料中の各元素に特有のスペクトル線を分光し、それぞれの強
度の測定値から各元素の含有量を定量する。
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LA-ICP/MS (レーザー照射型 誘導結合プラズマ質量分析)
加速粒子分析技術
固体試料に対しレーザーを照射し、そのエネルギーで照射部分
を蒸発・微粒子化させる。
定量分析に標準試料なしで絶対定量が可能
定量分析
検出感度
可能
0.001- 10
at%
(標準試料なし)
9-13
化学結合状態
破壊測定
空間分解能/
ビーム径
深さ分解能
不可
非破壊
1mm
5-20nm
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RBS(ラザフォード後方散乱分析)
加速粒子分析技術
He+ 、He2+などの軽いイオンを、数MeV
のエネルギーに加速し、分析磁場を通
すことで、イオン種とエネルギーをそろ
えて、試料表面に照射する
9-15
RBS(ラザフォード後方散乱分析)、HFS(水素前方散乱分析)、PIXE(粒子励起X線分析)
9-16
He+、He2+のような軽いイオンをMeV程度の高エネルギーに加
速し試料に照射する事で、固体中の原子核によりラザフォード
後方散乱されたイオンのエネルギーを検出する
XPS/ESCA (X線光電子分光分析)
定量分析
検出感度
化学結合状態
破壊測定
空間分解能/
ビーム径
深さ分解能
可能
0.05-0.5at%
可能
基本的には
非破壊
10μm
1-10nm
励起の一次過程 & 二次過程と光電子発生
X線照射
緩和過程1
特性X線
E=hν
励起状態
エネルギーを放出
オージェ電子
(エネルギーをもった電子)
光電子発生
(XPS/ESCA)
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緩和過程2
エネルギーを放出
ポイント:エネルギー保存の法則
9-18
実際の測定結果
XPS分析手法
•試料から放出された光電子の運動エネルギー (KE) を測定
•光電子の結合エネルギー (BE)は次の関係式で表せる。
BE
hν
KE
f
d
(単位:eV)
hν: 照射するX線のエネルギー(固定値)
f: 分光器の仕事関数
d: 表面電荷
・定性分析
・高分解能分析
・深さ方向分析
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*表面の元素の特定
*化学状態を特定
*薄い膜或いは積層膜の各層の組成を決定
Binding energy [eV]
XPSサーベイスペクトルにより
元素の定量情報が分かる
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Binding energy [eV]
高分解能XPSスペクトルにより
定量的化学状態の情報が分かる
特性X線
EDS(EDX)
電子線
M核
K核 L核
M核
K核 L核
定量分析
誤差が大きい
検出感度
化学結合状態
破壊測定
できない
サンプルの大
きさによる
数 at%
原子核
空間分解能/
ビーム径
深さ分解能
数 nm
余りない
励起
K
緩和
K
L
特性X線
主な元素の特性X線の波長(単位はÅ)
元素名
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多電子原子における電子のエネルギー
準位の概略
E
Tl Pb Bi Po At Rn
6p
Cs Ba
6s
Rb Sr
5s
Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg
5d
Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd
Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu
Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd
4d
Ga Ge As Se Br Kr
Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn
4p
3d
Al Si P S Cl Ar
Na Mg
3p
3s
B C N O F Ne
Li Be
2p
2s
H He
エネルギーの位置は電子の状態によって変化する
⇒各原子特有のエネルギー状態になる
1s
⇒化合物になっても内殻電子の状態はほとんど変化しない
⇒元素によって特性X線の波長は特有の値になる
9-23
K
Co
1.78892
1.62075
Ni
1.65784
1.50010
Cu
1.54051
1.39217
Mo
0.70926
0.63225
L
13.357
5.40625
特性X線の元素依存性
4f
In Sn Sb Te I Xe
5p
K
K Ca
4s
元素
Kα2 [Å]
Kα1 [Å]
Kβ1[Å]
Cr
Fe
2.293606
1.939980
2.28970
1.936042
2.08487
1.75661
Co
Cu
Mo
1.790260
1.544390
0.713590
1.788965
1.540562
0.709300
1.62079
1.392218
0.632288
[最も強い]
[弱い]
代表的な特性X線の波長
原子によって発生する特性X線の波長は異なる
9-24
EDS(EDX)の原理と結果
AES (オージェ電子分光分析)
X線の強度[counts/s]
定量分析
検出感度
化学結合状態
破壊測定
Yes
0.1-1.0at%
一部可
No(非破壊)
X線のエネルギー[keV]
9-25
9-26
AES (オージェ電子分光分析)
オージェ電子
オージェ電子
9-27
9-28
空間分解能/
ビーム径
0.01-2µm
深さ分解能
2-20nm
測定原理(エネルギー図)
測定事例
エネルギー
余剰エネルギー
9-29
照射した1次電子によって内殻順位(K殻)に空順位ができる。 この状態は不安定な
状態のため上のレベル(L殻)から電子が落ち、このレベル間のエネルギーが他のL
殻電子に与えられ原子外に放出される。このような過程をオージェ遷移、放出された
電子をオージェ電子という。ここで得られる結合エネルギーは原子固有の値のため、
このオージェ電子のエネルギー値を測定することにより構成元素を同定することが
可能である
9-30
測定事例
演習:
オージェ分光法ではHとHeの同定は原理的に不可
能である。その理由を説明しなさい。
9-31
9-32
今日のまとめ
 種々の元素分析法に関して紹介した
 各装置における測定分解能
不純物分析(主に1019cm-3以下の低い不純物濃度のもの)
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SIMS (二次イオン質量分析)
GDMS (グロー放電質量分析)
ICP-OES (高周波誘導結合プラズマ発光分析)
LA-ICP/MS (レーザー照射型 誘導結合プラズマ質量分析)
組成分析(主に1020cm-3以上の高い不純物濃度のもの)
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加速粒子分析技術:
RBS(ラザフォード後方散乱分析)、HFS(水素前方散乱分析)、PIXE
(粒子励起X線分析)
XPS/ESCA (X線光電子分光分析)
SEM-EDS (走査型電子顕微鏡)
AES (オージェ電子分光分析)