(仮称)尼崎市公共調達基本条例(骨子素案)について Ⅰ 条例制定の経緯等 1 これまでの取組 本市は、電子入札の導入等による公正性や競争性・透明性の向上、最低制限価 格の設 定によりダンピング受注を防止する適正履行及び質の確保、受注制限解除 の試行等の不調対策による円滑な事業推進など、社会経済情勢などに対応するた め契約制度の見直しに取り組んできた。 また、公共工事などの発注では、競争性が確保できる範囲内において、市内事業 者により多くの受注機会を提供し、地域経済の持続的な発展や市内事業者育成に 寄 与する取組を進めるとともに、災害復旧に係る協力体制の確保や障害者雇用の 促進など社会的な課題の解決に役立つ取組を評価する制度を拡充してきた。 2 条例制定の背景 「公共サービス基本法」(平成21年制定)により、公共サービスに従事する者の労 働環境の整備に関して国や地方公共団体が必要な施策を講じる努力義務が規定さ れ、また、「公 共 工 事 の品 質確 保 の促 進に関する法 律」などのいわゆる担い手3法 の改正(平成26年)により、インフラ等の品質確保とその担い手確保を実現するため、 適正な予定価格の設定などが発注者の責務として明確に規定されるなど、発注者と してこれまで以上の取組が求められている。 また、「尼崎市産業振興基本条例」(平成26年制定)により、地域経済の持続的な 発展のため市内事業者の受注機会の増大が図れるような環境整備を市の責務とし て位置付けたことから、市内事業者優先などの取組が安定的に進められる枠組みを 構築する必要がある。 さらに、アウトソーシングを推 進していくにあたり、公 共 調 達に係る労 働者が労 働 関係法令の遵守された環境で働くことができるよう、発注者の責務として適切に取り 組む必要がある。 これらのことについて、契約の原則を踏まえながら適切に取組を進めていくために は、公共調達に係る基本的な考え方を示していくことが必要である。 1 3 今後の取組方向 指 定管理者制度も含めた公共調達に関する基本方針その他の基本的事項を条 例に定め、市内事業者に対する優先的な発注などこれまでの取組を安定的に進め ていくとともに、社会経済情勢などに対応した施策を発注者として適切に推進し、地 域経済の持続的な発展及び市民福祉の増進に寄与することを目指すものとする。 Ⅱ 条例(骨子素案)の概要 1 目的 公共調達に関する基本方針その他の基本的事項を定めることにより、これらに基 づく施 策を推進し、もって地域経 済の持続 的な発展及び市民福 祉の増進に寄与 す ることを目的とする。 2 定義 (1) 公共調達 ア 本市が発注する工事若しくは製造の請負、業務の委託又は物品の購入に係 る契約により完成した物件の引渡、役務の提供、物品の納品等を受けること。 イ 地方自治法第244条の2第3項に規定する指定管理者(以下「指定管理者」 という。)に本市の公の施設の管理等の業務を行わせること。 (2) 受注者 公共調達に係る契約により受注した事業者及び指定管理者 (3) 市内事業者 本市の区域内に本店又は主たる事務所を有する事業者 (4) 下請等契約 ア 下請の契約、再委託の契約その他これに準ずる契約により、受注者その他 本市以外の者から公共調達に係る業務の一部を請け負い、又は受託すること を内容とする契約 イ 労働者派遣法の規定により、自己の雇用する労働者を受注者その他の本市 以外の者のために公共調達に係る業務に従事させることを内容とする契約 (5) 下請負者等 下 請等契約により公共調達に係る業務の一部を請け負い、又は受託する者 及び労働者派遣の役務の提供を行う者 2 (6) 社会的課題 災害協定の締結、環境保全、障害者雇用その他の社会における各般の課題 3 基本方針 (1) 市内事業者に対する優先的な発注及び市内事業者の受注機会の増大 (2) 社会的課題の解決に資する取組の推進 (3) 公共調達に係る労働者の適正な労働環境の確保 (4) 公共調達における適正な履行及び質の確保 4 発注者の責務 公共調達における公正性、競争性及び透明性の確保を図りつつ、基本方針に基 づく公共調達に関する取組を総合的に推進するものとする。 5 受注者の責務 法令等を遵守するとともに、基本方針に基づき、公共調達に係る業務の適正な履 行に努めなければならない。 6 市内事業者に対する優先的な発注及び市内事業者の受注機会の増大 (1) 市内事業者に対する優先的な発注 専門的な能力 及び技 術を有する者に発注する必要がある場合 などを除き、 市内事業者に対し優先的に発注するよう努めるものとする。 (2) 市内事業者の受注機会の増大 経済的合理性に配慮しつつ、市内事業者が公共調達に係る業務を受注する ことができる機会の増大に努めるものとする。 (3) 下請等契約等 受注者及び下請負者等は、市内事業者と下請等契約及び原材料等の購入 契約を締結するよう努めなければならない。 7 社会的課題の解決に資する取組の推進 公共調達に係る契約等の性質又は目的に応じ、入札の参加に必要な資格を定め る場合に、特定の社会的課題の解決に資する取組を行っている者を優遇するなど、 3 社会的課題の解決に資する取組の推進に努めるものとする。 8 公共調達に係る労働者の適正な労働環境の確保 (1) 適正な労働環境の確保 本市並びに受注者及び下請負者等は、公共調達に係る労働者の雇用の安 定その他の適正な労働環境の確保に努めなければならない。 (2) 労働関係法令遵守状況報告書の提出 ア 対象受注者 (※1) は、本市に、労働関係法令遵守状況報告書(労働関係法令 を遵守しているかどうかを確認するための報告書)を提出しなければならない。 (※1)①②の契 約の受 注者 と指定 管 理者(対 象範 囲は予 定、別 途 規則 等で規 定) ①工 事 請負 契 約⇒1億5千 万円 以 上(予 定 価格) ②委 託 契約⇒1千万 円 以上(予 定価 格)の庁 舎等の清 掃 業務、人 的警 備 業務など イ 対象 下 請 負 者 等 ( ※ 2 ) は、対 象 受 注 者に、労 働 関 係 法 令 遵 守 状 況 報 告 書 を 提出しなければならない。 (※2)①②の契 約の対 象受 注 者⇒すべての下請 負 者等 指 定 管理 者 が対 象受 注 者 ⇒指定 管 理 者 が発 注 する1千 万 円 以 上(予 定価 格 )の庁 舎 等の 清 掃業 務 、人 的警 備 業務 などの委 託 契約 の受注 者 及びその 下 請負 者 等(対 象 範囲は予 定 、別途 規 則等で規定) ウ 労 働関 係 法 令遵 守状 況 報 告書の内 容 に変更があったときは、対 象受 注 者 及び対象下請負者等 は、その旨をそれぞれの提出先に書面で届け出なけれ ばならない。 エ 対象受注者は、対象下請 負者等から労働関係法令遵守状況報告書などの 提出を受けたときは、それらをとりまとめて本市に提出しなければならない。 オ 労働関係法令遵守状況報告書の記載事項については、社会保険の加入の 有 無や公共調達に係 る労働者の最も低い賃金額などを、規則や要綱で定め る予定である。 (3) 説明等の要求 ア 本市は、必要に応じ、対象受注者に対し、労働関係法令遵守状況報告書の 記 載 事 項(対 象 下 請 負 者 等に係るものを含む。)について、説 明 又は資 料の 提出を求めることができる。 イ 本市及び対象受注者は、必要に応じ、対象下請負者等に対し、対象下請負 4 者等の労働関係法令遵守状況報告書の記載事項について、説明等を求める ことができる。 (4) 関係機関への通報 対象受注者及び対象下請負者等が労働関係法令を遵守していないことを確 認した場合において必要があると認めるときは、都道府県労働局長その他の関 係機関に通報するものとする。 (5) 措置結果報告書の提出 対象受注者及び対象下請負者等は、労働関係法令遵守状況報告書により 報告すべき事項で労働関係法令が遵守されていないものがあるときは、必要な 措置を講じ、措置結果報告書(当該措置の結果を記載した報告書)を本市に提 出しなければならない。 (6) 措置結果報告書に係る説明等の要求 本市及び対象受注者は、措置結果報告書について、「(3)説明等の要求」と 同様の説明等を求めることができる。 (7) 不遵守事項の解消の要求 労働関係法令遵守状況報告書により報告すべき事項で労働関係法令が遵 守されていないものについて、その解消が確認できないときは、対象受注者及 び対象下請負者等に対し、措置結果報告書の提出等を求めることができる。 (8) 公表 対 象受 注 者 及び対 象 下 請負 者 等が労働 関 係 法令 遵 守 状 況報 告 書 等を提 出 しないとき、本市による説明等の要求を拒み、又は虚偽の説 明等をしたとき などには、氏名などを公表することができる。 (9) 対象下請負者等や対象労働者への明示 対象受注者及び対象下請負者等は、対象下請等契約 ( ※ 3 ) を締結しようとす る下 請負者等に対し、当該下請等契約が対 象下請等契約であることを明示し なければならない。 また、対象労働者 (※4) に対して、その従事する業務が対象契約等 ( ※5) に係る ものであることなどを明示しなければならない。 (※3)労 働 関係 法 令遵 守 状況 報 告書の提 出などが義 務 付けられる下 請等 契 約 (※4)対 象 契約 等に係る業 務に従 事する労働 者 (※5)労 働 関係 法 令遵 守 状況 報 告書の提 出などが義 務 付けられる契 約等 及び下 請等 契 約 5 (10) 通報及び相談 対象労働者からの対象契約等における労働関係法令の違反に関する通報 を受け、又は相談に応じるものとする。 また、対象 受注 者 及 び対象 下請 負 者等は、対象 労 働者が対象 契約 等にお ける労働関係法令違反を通 報したことなどを理由として、解雇など不利益な取 扱いをしてはならない。 9 公共調達における適正な履行及び質の確保 (1) 適正な予定価格等の設定 公共調達に係る業務の適正な履行及びその質を確保するため、適正な予定 価格及び最低制限価格を設定するものとする。 (2) 履行内容の確認 公共調達に係る業務の適正な履行及びその質を確保するため、履行内容を 適切に確認するものとする。 (3) 下請等契約の適正化 受 注者と下 請負 者 等 は、公 共 調達に係る業 務の適 正な履 行 及 びその質の 確 保並びに適正な労働環境の確保のため、下請代金支払遅延等防止法その 他の関係法令を遵守し、適正な下請等契約を締結しなければならない。 (4) 業務の継続性と雇用の配慮 受注者と下請負者等は、公共調達に係る業務で継続性のあるものを新たに 受注する場合は、当該業務の継続性を維持しその質を確保するとともに、当該 業 務を受注する前から従事していた労働者 の雇用の安定を図るため、当該労 働者の雇用に配慮するよう努めなければならない。 (5) 不正行為等の排除 談合その他の不正行為や不良又は不適格であると認められる事業者を公共 調達から排除するために必要な措置を講じるものとする。 10 施行日 この条例は、公布の日から施行する予定とする。ただし、労働関係法令遵守状況 報告書の提出などの規定は、規則で定める日(平成29年7月予定)から施行する予 定とする。 以 上 6
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