http://scirex.grips.ac.jp/center/ 発行元 政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター 発行日 2015年10月 政策と科学の架橋として サイレックス事業 ご挨拶 「政策のための科学」−政策と科学の共進化にむけて− 2015年8月をもって、科学技術イノベーション政策研究センター (通称、SciREXセンター)は設立1周年を迎えました。 経済や社会のグローバル化が急速に進む中、我が国では少子高齢化と労働人口減少というこれまで経験したことのない社会がやっ てこようとしています。加えて我が国を含む世界では、エネルギー・水・食料等の資源不足、地球環境問題、感染症、テロ問題など、 数多くの複雑な問題に直面しています。そこで今、これらの解決に向けて、科学技術とイノベーションが重要な役割を果たすことが期 設立以来、本センターは、文部科学省のもとで実施されている「科 待されており、世界各国において、科学技術イノベーションの促進が重要な政策的課題となっています。 学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」 (SciREX事業)の中核として、客観的根拠(エビデンス)に基づく科学技 その一方で、先進諸国を中心として財政状況が厳しさを増す中で、限られた資源を効果的・効率的に活用することが求められてい 術イノベーション政策の形成を目指して、同事業のこれまでの取組や成 ます。科学技術が関係する多くの課題がある中で、専門家や政府に対する人々の信頼を得ることは、重要な課題となっています。 果を踏まえて、政策形成への研究成果の活用や実装に向けた取組を積 極的に進めて参りました。 このような背景のもと、客観的根拠(エビデンス)に基づいて、合理的なプロセスにより、効果的・効率的な政策を作り、実施して いくことが求められており、科学的な理論・知見・手法によって、それを支える「政策のための科学」が求められています。 その中でも特に1年目である2014年は、どのような問題が重要な政策 課題となりうるのかを明らかにするために、様々な研究会や検討会を立ち しかし、価値中立的で客観性を重視する科学と、一定の価値の実現を目指す政策とでは、価値観や行動様式が異なり、両者がと 上げ議論を重ねてきました。取り上げるテーマとしては、北極圏に対する もに問題解決のために役割を果たすことは、決して容易なものではありません。両者が互いに対等かつ尊重しあいながら信頼関係を構 総合戦略、デュアルユース技術、ITと知識基盤社会、政策形成プロセ 築し、そして共に進化していくために、両者を「つなげる場」が求められています。SciREXセンターはそのような役割を果たすべく設置 スに内在する課題、と多岐に渡りますが、研究者だけでなく、政治家、 されました。 行政官、関係機関の実務者といった様々なステークホルダーが自由に対 「政策形成」と「政策のための科学」の共進化 等な立場で参加できる場となるように努めてきました。また、客観的根拠 に基づいた政策形成を促すために、科学技術が経済・社会に与える影 響を評価・分析し、政策オプションを作成するモデル構築も行ってきました。 政 策 経験知・ニーズ 科 学 政策形成の メカニズム の進化 「政策形成メカニズム」 と 「政策のための科学」 共進化 政策のた めの科学 の発展 今後はこれまでの活動を踏まえて、関係機関(文部科学省科学技術・ 学術政策研究所(NISTEP) 、科学技術振興機構社会技術研究開発 センター(RISTEX)、同研究開発戦略センター(CRDS) )や、他の SciREXの拠点大学(東京大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、 九州大学)との連携を一層強化し、重要な政策課題について共同研究 を行うとともに、研究成果の政策形成への実装をさらに加速化させていき ます。このようにして生まれた研究成果は、内閣府総合科学技術・イノ ベーション会議や各省への報告、SciREXセミナーやワークショップでの 発信、ワーキングペーパーやクォータリー等を通じて、実際の政策形成や 実施の現場で活用されるようアウトリーチにも力を入れていきます。またイ ンターンの受入れなど人材育成の面でも連携を強めるとともに、これまで よりも幅広いステークホルダーの参加を募りながら、 「政策のための科学」 のコミュニティ形成を促進し、政策研究と政策形成との架橋となることを 科学技術イノベーション政策研究センター センター長(政策研究大学院大学長) 白石 目指していきます。 2015年8月 規範的 Normative エビデンス 政策オプション 行動規範の確立 客観的 Objective ※「エビデンスに基づく政策形成のための 『科学イノベーション政策の科学』 の構築」科学技術振興機構研究開発戦略センター (CRDS) 、 2011年、2頁の図をもとに作成 02 03 海外における政策と科学をつなぐ動向 近年、客観的根拠(エビデンス)に基づいて科学技術イノベーション政策を形成し実施していく必要性は海外でも高まっており、多 様な取り組みがなされています。ここでは、英国、米国、欧州連合、経済協力開発機構(OECD)の例をご紹介します。 我が国における政策と科学をつなぐ取り組み 我が国では、科学技術イノベーション政策と「政策のための科学」をつなぐ取り組みとして、2011年度より文部科学省が「科学技 術イノベーション政策における『政策のための科学』 」推進事業を開始し、以下の「政策課題対応型調査研究」 、 「データ・情報基盤 整備」 、「公募型研究開発」及び「基盤的研究・人材育成」の4つのプログラムが推進されてきました。また、これらの成果を実際の 政策形成に活かしていくために、2014年8月に政策研究大学院大学にSciREXセンターが設置されました。 英国 米国 ○ 米国大統領顧問、大統領科学諮問委員会、米国科学アカデ ミーなどが、政策決定者を支援しています。 ○ 王 立 協 会(The Royal Society) 、研 究 会 議(Research Councils) 、科学技術芸術国家基金(NESTA)といった多様な 主体が、独自にイノベーション政策の研究、研究への助成、政策 提言の立案、政策評価を行っています。 ○ 2005年、マーバーガー大統領科学顧問(当時)が、科学的 エビデンスに基づく政策形成の重要性を提唱しました。 ○ NESTAを中心にイノベーションへの投資規模と経済成長への 効果等のイノベーション測定指標が作成されています。 研究基盤 政策設計・ デザイン 分析手法・ツール 関連諸分野 関連諸分野 ○ 米国科学財団(NSF)は、公募型研究プログラム(SciSIPプ ログラム)を開始し、2014年までに200件超が採択されました。 学会 ! 研究会 ○ 2008年、連邦政府の科学研究への投資と社会・経済への 影響(雇用、経済成長、社会的影響等)を測定するためのデータ ベース(STAR METRICS)を開発しています。 等 連携・人的協力 公募型研究開発 (JST-RISTEX) 中核的拠点機能 政策課題対応型 調査研究 (NISTEP) 関係府省 SciREXセンター 問題意識 科研費 等による 議会 研究 ワーキング ペーパー データ・情報 基盤整備 (NISTEP) ス ー ベ タ ー デ 文部科学省 社 会・政 治・行 政 ○ 主席科学顧問をはじめ、各省庁に科学顧問が設置され、科学 的知見やエビデンスに基づき、政策決定者を支援しています。 「科学技術イノベーション政策のための科学」の各種取組みと中核的拠点機能の関係 政策課題 材 基盤的研究・人材育成 人 政策 提言 ※科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)等の資料をもとに作成 欧州連合 ○ 2008年、報告書「政策形成のための科学的エビデンス」がま とめられました。 ○ 2014年より開始されたHorizon 2020では、2020年までの研 究開発・イノベーションの投資の方向性を定めています。その中で 社会とともにある社会のための科学を推進する取り組みが、人文 社会科学を含む形で進められています。 ○ また、欧州大統領・委員会に科学的助言を行うハイレベルの 科学者グループの設置が検討されています。 経済協力開発機構 ○ 年に2回、「科学・技術・産業スコアボード」が作成され、科 学技術、グローバル化、産業の動向について分析が行われてい ます。 ○ 2010年、OECD閣僚理事会にて、 「OECDイノベーション戦略」 が決定され、イノベーション戦略とイノベーション測定のための枠組 みを整備することが決まりました。 ○ グローバル・サイエンスフォーラムでは、政策形成における科学 的助言の在り方について検討し、報告書としてまとめています。 【データ・情報 基盤整備】 (NISTEP) 【基盤的研究・ 【公募型研究開発】 【政策課題型 人材育成】 (JST-RISTEX) 対応調査研究】 (各拠点大学) (NISTEP) 政策形成及び調 国際的水準の基 中長期に政策形 政策ニーズを踏ま 査・分 析・研 究の 盤的研究・人材育 成 に寄 与する手 えた調 査 分 析 の ためのデータの体 成拠点の構築と、 法・指標等に関す 推進 (研究開発投 系的・継続的蓄積 幅 広い人 材の育 る多 様な研 究 開 資の経済的、社会 と、情報基盤の構 成の推進 発プロジェクトの 的影響の調査分 推進 析 築 平成26年度終了) 【中核的拠点機能】(SciREX センター・各拠点大学 ) 上記4つの取組の蓄積を踏まえて、実際の政策形成への成果の活用や実装を 進めるとともに、 「政策のための科学」をより発展させていくことが求められて います。 ※科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)等の資料をもとに作成 04 05 SciREX センターのミッション・活動方針 SciREXセンターのミッション SciREX センターの具体的活動イメージ 実際の科学技術イノベーション政策の企画立案・実施・評価・改善という一連のプロセスには、政治家、行政官、実施機関の 実務者、研究者、産業界関係者、市民など、様々な背景や問題意識、利害関係、価値観を持つステークホルダーが関係します。 1.エビデンスに基づく政策立案への貢献: そのため、SciREXセンターでは、各ステークホルダーが互いに尊重しつつ対等に議論できる場を継続的に設け、対応すべき課題を 効果的な科学技術イノベーション政策に資する方法論を開発するとともに、科学技術イノベーション政策に関わるエビデンスを集約 特定し、研究プロジェクトを立ち上げています。 します。 また、このような課題の多くは、他の様々な要因と緊密に絡み合っているために、不確実性や複雑性を伴い、解決のための手法を 導き出すことは簡単とは言えません。SciREXセンターでは、このよう複合型の問題の政策研究を行うために、政策デザイン、政策分析・ 2.「政策形成」と「政策研究」の共進化: 科学技術イノベーションが関係する諸課題の解決のために、 「政策形成」と「政策研究」を橋渡しし、双方の共進化を促します。 影響評価、政策形成プロセスという3つのアプローチに加えて、自然科学だけでなく人文・社会科学といった幅広い学問領域の専門 家や国内外関係機関の参画を得て、多角的な観点から知見やアイディアを集約し、問題解決のための提案を行っています。 このようにして生まれた成果は、総合科学技術・イノベーション会議をはじめ、政策決定・審議機関への報告、ワーキングペーパーや、 3.科学技術イノベーション政策に関する議論の場の提供: 公開セミナーを通して発信することで、政策形成の現場に直結するように取り組んでいます。 多角的な観点から政策課題を理解するために、政策立案者、研究者および関係者が協働する場を提供します。 SciREXセンターの活動方針 Sc iREXセンター活動イメージ 上記3つのミッションを達成するために、以下のような活動方針を設け運営を行っています。 ● 政策への実装を志向 ● 様々なステークホルダーが互いに尊重しつつ対等に議論できる場の提供 多様な関係者が参画する場の形成と運営 ● 学際的取組・異分野連携の促進 ● 国内外関係機関との連携・協力 ● 独立性・公平性 独自研究 (方法論、手法開発等) ● エビデンスに基づいた提言・提案 政策ニーズ・問題意識 政策リエゾン レビュー・構造化 政策デザイン 各拠点 対応すべき課題を特定 政策分析・影響 評価 政策形成プロ セス実践 独自研究 (方法論、手法開発等) 独自研究 (方法論、手法開発等) 関係機関 研究プロジェクト 立案 実施 その他大学、 研究機関 成果の普及・展開 ①新しい知見とそれに基づく提言 ②新規方法論、手法の開発 各領域においても、右のフローを踏まえた 独自研究を実施 06 07 SciREX センターの全体像 センター長:白石 GRIPS 学長 副センター長:有本建男 GRIPS 教授 政策デザ イン領域 科学技術イノベーション政策において緊急性が高い課題について集中的に検討を行 い、政策シナリオや政策オプションの骨格をデザイン ・ 政策的ニーズが高く、複数の省庁にまたがる緊急性の高い課題について、 ステークホルダーがフラット な関係で議論できる場の形成 PM:角南篤 PM補佐:小山田和仁 企画・運営部門 GRIPS 教授 GRIPS 専門職 ・ 各領域の活動の支援するとともに、関係機関との連携協力・協働の取組を推進 ・ 複数領域にまたがるプロジェクトの企画・実施 ・ 新規政策課題の発掘や新しい方法論の検討などを目的とするラウンドテーブルやワークショップ などの場の運営など ・ SciREXセンターの活動や関連する取組に関する情報発信・アウトリーチ 政策分析・影響評価領域 PM:黒田昌裕 GR I PS客員教授 慶應義塾大学名誉教授 科学技術イノベーション政策によって解決すべき課題について、 定量的評価を加えた政策オプションを作成 ・ 科学技術がもたらす社会的・経済的影響を評価するための手法の開発 ・ 研究者、政策担当者等から構成される場を設置し、研究手法や政策に接続 する上での課題等について検討 政策形成プロセス実践領域 PM:森田朗 GR I PS客員教授 国立社会保障・人口問題研究所所長 東京大学名誉教授 科学技術イノベーションが係わる政策形成プロセスにおいて、エ ビデンスに基づく議論・政策立案を実現する上での課題を明確化 し、課題解決のための方法論を開発 ・ ステークホルダーの価値観や利害認識、資源配分の判断基準等が政策形 成プロセスに与える影響とその構造の把握 PM補佐:松浦正浩 GRIPS 客員研究員 東京大学公共政策大学院 特任准教授 PM補佐:池内健太 GRIPS 客員研究員 NISTEP 第1グループ研究員 08 PM補佐:森川想 GRIPS 客員研究員 東京大学工学系研究科 社会基盤学専攻助教 09 政策デザイン領域の活動紹介 政策分析・影響評価領域の活動紹介 【ミッション】 【ミッション】 科学技術や社会経済、環境の変化がもたらす新しい課題について、研究者、行政官、その他ステークホルダーがフラットな関 科学技術イノベーション政策が解決すべき課題について、有効かつ実行可能な政策案を作成し、その社会的・経済的な効果 係で議論する場を作り、集中的に検討を行うことで、対応すべき具体的課題を明らかにし、取り得るべき政策シナリオや選択肢を を評価します。 設計します。 ● 科学技術イノベーションがもたらす社会的・経済的影響を定量的に評価する応用一般均衡シミュレーション・モデルや、特許・ 論文・プレスリリースデータを用いたイノベーションプロセスの測定手法の開発を行います。 ● 領域の研究成果を政策の現場で活用するために、研究者と政策担当者の対話の場として「推進フォーラム」を設置し、政策ニー 【活動紹介】 科学技術の発展、企業活動や資本のグローバルな展開、それにともなう経済や環境の変化などがもたらす問題は、これまでの政策 ズの的確な把握と研究成果を政策へ実装する方法を検討します。 や制度の対象や想定を越えるため、新たな政策的対応が必要になります。 本領域では、このような問題に対して、我が国として取り組むべき課題を明らかにし、政策的な方向性やシナリオ、具体的選択肢を 【活動紹介】 検討するため、当該問題に関係する研究者や専門家、関係府省の行政官、政策実施に関わる実務者、その他ステークホルダーが ● IoT (Internet of Things) によるイノベーションを促進するための政策案の策定および分析 参画する研究会を集中的に開催するとともに、関係する調査を機動的に実施しています。これにより、その時点で入手可能な科学的 本プロジェクトは、科学技術振興機構研究開発戦略センター (CRDS)との連携のもと、多部門経済一般均衡的相互依存モデ 知見や専門性、関連動向に関する情報等を踏まえた、政策シナリオや選択肢等を設計し提言としてとりまとめます。とりまとめた結果を、 ルを構築し、IoT 関連技術が社会的・経済的に与える影響を分析、IoT による社会変化を促進する政策案を選択可能な政策 議会や府省等の政策担当者、メディアやその他関係者に提示することで、当該問題に対する認識を高める政策を形成することを目指 オプションとして提示しました。 しています。 ● 科学技術イノベーション政策の定量的評価を行うための経済モデル間の比較研究 SciREX事業において実施された科学技術イノベーション政策の経済・社会効果を定量的に評価する経済モデル (動学一般均 【プロジェクトの例】 ● 北極圏問題についての我が国の総合戦略 衡モデル、応用一般均衡モデル等) に関する研究調査を行っています。 ● 科学技術外交の戦略的推進 ● デュアルユース技術の研究開発 <方法論の例> インプット BIG DATA 従来の 議会 アプローチ アウトプット マクロ経済 政府R&D投資 日本経済全体 (マクロ) に与える 経済効果を推計する インプット 政策 提言 府省・行政機関 技術A 2 2 CO 環境・社会の変化 10 今回の 専門家・行政官 官・ステークホルダー等 ステーク がフラットな関係で議論 政策シナリオや 選択肢を政策提言 として取りまとめ アプローチ 政府R&D投資 アウトカム 多部門経済 知識 ストック 一般均衡的 アウトカム 技術B 市民 市民 アウトプット 相互依存モデル 経済効果 GDP 産業別生産額 その他経済変数 (産業間の相互 メディア CO 2 CO 2 CO2 2 CO CO 経済・社会のグローバル化 GDP その他経済変数 モデル 投資 (技術) が経済に与える影響 がブラックボックスとなっている 科学技術の発展 経済効果 知識 ストック 投資 (技術) が経済に与える 影響を可視的・定量化する 取引を明示的に 考慮) GDP 産業別生産額 その他経済変数 開発した技術が影響を与える産業 部門毎に経済効果を分析する 11 政策形成プロセス実践領域の活動紹介 企画運営部門の活動紹介 【ミッション】 【ミッション】 政策デザインおよび政策分析・影響評価の後、客観的根拠(エビデンス)に基づき適切と考えられる政策の社会的意思決定に向 3つの研究領域の研究活動を支援するとともに、各領域をまたぐ政策課題に対して、独自研究プロジェクトを実施しています。また けたプロセスを理解し、その障害要因を特定し、障害を乗り越えるための方法論を検討します。 重要な政策課題については、関係機関や他のSciREXの拠点大学と連携し、共同で研究を行っていきます。さらに、当センターの研 究成果が政策の現場に届くようアウトリーチを行うとともに、新たな政策課題発見のために、ワークショップ、セミナーなどの議論の場を 設けています。 【活動紹介】 政策の形成と実施には、多くの人々と手続きがかかわっています。このため、仮に適切な課題設定をもとに、適切な実施と評価の 方法に基づいて政策案が形成されたとしても、多数の利害関係者が参加する複雑な政治過程である政策形成プロセスは、その「実践」 【活動紹介】 ● 企画・運営部門における実施プロジェクト例 の段階に至って、多くの困難に直面してしまうかもしれません。 ▶ 客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の確立に向けた政策 政策形成プロセス実践領域では、まず、いくつかの事例分析を行い、政策形成プロセスに生じる意思決定・説得に伴う困難―例 マネジメントシステム えば、利害関係者の対立や、社会・国民に対する説明の不足―を特定し、それらが生じる文脈やその傾向について明らかにしていき 客観的根拠に基づいた実効性のあるSTI政策の企画立案、実施、評価、 ます。現在は、審議会での議論の特徴の分析や、情報提示のあり方が市民の政策認識に与える影響の調査などを行っていますが、 改善を実施するための総合的な政策マネジメントシステムの構築に向けた検 これにとどまらず、事例分析から、こうした政策過程が陥りやすい困難の傾向性を明らかにするための分析手法を検討することも、私 討を行っています。 たちの重要な活動の一つです。 ▶「科学と社会」に関する指標化プロジェクト また、科学技術と政策の交錯の程度やあり方と、政策形成プロセスの実践における利害との関係を明らかにするために、利害の 科学と社会の関係に関する指標の収集・分析・整理及び開発を試みて 対立の深さ・専門家の役割・世論やメディアの役割といった共通の分析軸を念頭に置きつつ、本領域では特に、科学技術との関わ います。OECDと連携して、国際的指標のマニュアル作成を目指します。 SciREXセミナーの様子 りについて濃淡のある幅広い政策領域について検討・比較を行っています。こうした作業を通じて、政策形成プロセスの障害を乗り 越えるための手掛かりを得、その方法論について検討していくことが当領域の目標です。 ● SciREXセミナー SciREX事業の成果や進捗報告などについて、研究者、政策担当者を交えて意見交換ができる場として開催しています。政策形 成の現場から生まれる問題意識や課題を研究に取り入れるとともに、政策形成と政策研究の架け渡しの場となることを目指し、関係 政策形成プロセスのイメージ 社会的課題 原因の分析 政策形成プロセスの要素 ①エビデンス (データ) ―客観性、信頼性、代表性 ②分析手法 ―客観性、信頼性 ③解決方法 ―客観性、有効性 価値判断・不確実性への対応 解決策(政策) の発見 根拠に基づく政策形成 キーワード 政策の決定 (制度化) と実施 者間のネットワーク形成を促しています。 決定手続き 多数派形成の政治 ● 広報活動・アウトリーチ ホームページ、パンフレット、ワーキングペーパー、及び今後刊行予定のクォータリー等を通じて、センターの活動や研究成果を発 信しています。 政策形成プロセスの制約と 解決策 ①不確実性 データ ⇒ 情報収集の強化 方法 ⇒ 研究開発 ②時間的制約 ⇒ 手続の合理化 ③利害関係者 ⇒ 合意形成の技術 ● 学生インターンシップ 政策研究、政策実務に関心のある学生のインターンを積極的に受け入れ、政策研究の実践的な業務を経験してもらうことで、 「政 策のための科学」の将来を担う人材の裾野を広げていくことを目指しています。 分析方法 ①社会的課題の把握 ―データ、社会の認識 課題の解決 12 ②政策形成プロセスの記録の分析 ー府省内・関係業界の記録、 審議会の議事録・資料、国会審議の内容、メディア報道、論文 等 13 「政策のための科学」の発展に向けて SciREXセンターは、今後も多様なステークホルダーとの連携を強め、 「政策形成」 と 「政策研究」との架橋となるべく、機能していきます。 教育・研究機関 基盤的研究・人材育成拠点 GRIPS 東京大学 政界 科学技術イノベーション 政策研究センター HP:http://scirex.grips.ac.jp/center/ Facebook: https://www.facebook.com/scirex.gist Twitter: https://twitter.com/scirex SciREX センター ○○ 各府省 省 △△ 省 一橋大学 お問い合わせ 大阪大学/京都大学 〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1 電話 : 03-6349-6318 (直通) FAX : 03-6439-6260 Eメール : [email protected] 九州大学 インターンシップ 発信 実践的業務の経験を提供 関係大学 政策提言 シンポジウム 14 政策リエゾン 政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター NISTEP ワーキングペーパー SciREXセミナー RISTEX 関係府省 CRDS 研究機関・大学 関係機関 15
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