調 査 速 報 浜銀総合研究所 調査部 産業調査室 2016.6.24 タイ自動車市場月次統計(2016年5月) 輸出主導型の増産が続く:国内販売も底堅さが出てきたが油断は禁物 ○5月生産台数(季調値)は前月比 2.2%増の年率 217 万台 ・タイ工業連盟(Federation of Thai Industries:FTI)が発表した 2016 年5月の四輪車総生産 台数は、前年同月比 24.7%増と3か月連続で前年比プラスとなり、季節調整済年率換算値 (当社試算、 以下 SAAR)も前月比 2.2%増の 217.4 万台と3か月連続で増加した (図表1) 。 ・なお、4月に続き5月も前年同月比で2桁%の増産となったのは、トヨタ自動車が昨年5 月の新型ピックアップトラックの生産開始を控え、4月は新旧車種切り替えで工場稼働を 抑え生産を落とし、5月は新型車を国内向けにのみ生産しスロースタートだったため、直 近の2か月はその裏がでたことが背景にある。前年の水準が特殊要因で低かったことで、 生産台数の月次パフォーマンスは強かったが、SAAR でみる直近数か月の推移も堅調であ ることに要注目だ。背景には、輸出と国内販売がともに持ち直していることがある。 ・5月の総輸出台数は前年同月比 11.9%増と4か月ぶりの前年超えとなり、SAAR も前月比 8.0%増の 133.6 万台と2か月連続の大幅増となった(図表2) 。輸出台数の SAAR は、昨 年9月以来、8か月ぶりに 130 万台超えとなった。なお、16 年1∼5月の平均 SAAR は 122 万台となり、15 暦年(120 万台)の水準を上回った。輸出台数が堅調に推移している 背景には、複数の自動車メーカーが新型車の輸出展開を加速させており、マクロ景気悪化 に伴う海外需要の減少といった逆風を打ち消していることがある。 ・5月の国内販売台数は前年同月比 15.9%増と大幅増となり、SAAR も前月比 10.2%増の 83.5 万台と3か月連続で増加した。 (図表3) 。税制改正後(1月1日に新自動車税制導入) に落ち込んだ国内販売でも持ち直しの動きが続いている。 ・FTI のスポークスマンは一部メディアに対し、インフラ投資を中心としたタイ政府の景気 刺激策に伴う経済環境の改善が、国内販売の増加に繋がったとコメントした。しかし、そ の言葉を額面通り受け止めることは難しい。なぜなら、消費者の景況感には依然として改 善がみられないからだ(図表4) 。また、セグメント別販売台数の推移を見ると、乗用車 とピックアップトラック (PPV を含む) 、 SUV の SAAR は5月にそれぞれ増加した一方で、 貨物車・バスの SAAR は今年に入ってから漸減傾向が続いており、データ上では公共投資 の増加に伴うトラック需要の増加はみられない(図表5) 。 図表1 5月生産(SAAR)は3か月連続で増加 ・また、現地の業界関係者から、ディーラー 季調済、千台 トラフィック(来店客数)に改善が見られ ていないことや、地方部を中心に安値販売 を強化している販売店が多くみられると いった声も聞こえており、収益性を犠牲に した販売が国内需要を押し上げている可 能性も考えられる。国内販売に底堅さが出 てきているが、本格回復と判断するのはま だ早く、引き続き現状は楽観できるもので はないと考える。 タイ四輪車総生産台数 3,000 前年同月比、% 100 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 3か月後方移動平均値(左軸) 前年同月比(右軸) 80 16年5月SAAR 217.4万台 60 前月比+2.2% 40 2,500 2,000 20 1,500 0 -20 1,000 500 -40 -60 2012年 245万台 2013年 246万台 2014年 188万台 2015年 191万台 -80 0 -100 . 1 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 図表2 輸出台数 SAAR も2か月連続で増加 タイ四輪車総輸出台数 前年同月比、% 季調済、千台 80 1,600 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 16年5月SAAR 133.6万台 3か月後方移動平均値(左軸) 前月比+8.0% 60 1,400 前年同月比(右軸) 1,200 40 1,000 20 800 0 600 -20 400 -40 200 2013年 113万台 2014年 113万台 2015年 120万台 12 13 14 15 -60 -80 . 0 2012年 103万台 2011年 16 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 図表3 国内販売の持ち直しの動きが続く 前年同月比、% タイ四輪車総販売台数 季調済、千台 1,800 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 80 3か月後方移動平均値(左軸) 60 前年同月比(右軸) 40 16年5月SAAR 83.5万台 前月比+10.2% 20 1,600 1,400 1,200 1,000 0 800 -20 600 -40 400 -60 2012年 143万台 200 2013年 133万台 2014年 88万台 2015年 80万台 -80 0 -100 . 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 図表4 消費者の景況感には改善がみられず タイ四輪車総販売台数(SAAR)と消費者信頼感指数の推移 季調済、千台 2,000 100 1,800 消費者信頼感指数(右軸) 1,600 90 四輪車総販売台数SAAR(左軸) 1,400 80 1,200 1,000 800 70 600 400 60 . 2012年 13 14 15 16 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industries、University of the Thai Chamber of Commerceのデータを基に作成 2 図表5 主要セグメント別販売台数:貨物車・バスの販売減少が続く 季調済、千台 1,200 乗用車販売台数 季調済、千台 前年同月比、% 100 900 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 3か月後方移動平均値(左軸) 前年同月比(右軸) 1,000 80 800 60 700 80 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 60 3か月後方移動平均値(左軸) 前年同月比(右軸) 40 600 20 500 0 400 -20 40 16年5月SAAR 30.4万台 前月比+6.2% 800 20 0 600 -20 400 200 0 ピックアップトラック販売台数(PPV含む) 前年同月比、% 300 -40 -40 16年5月SAAR 43.8万台 前月比+20.1% -60 200 2012年 67万台 2013年 63万台 2014年 37万台 2015年 30万台 -80 100 -100 0 2012年 67万台 2013年 59万台 2014年 42万台 2015年 40万台 -80 -100 . . 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 前年同月比、% 季調済、千台 SUV(乗用車ベース)販売台数 100 120 16年5月SAAR 5.2万台 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 前月比+41.5% 90 100 3か月後方移動平均値(左軸) 前年同月比(右軸) 80 80 季調済、千台 貨物車・バス販売台数 120 季節調整済年率換算値:SAAR(左軸) 110 3か月後方移動平均値(左軸) 100 前年同月比(右軸) 90 70 60 60 40 70 50 20 60 40 0 50 30 -20 20 -40 10 0 2012年 2.6万台 2013年 3.7万台 2014年 4.2万台 -60 2015年 5.7万台 80 前年同月比、% 80 60 40 16年5月SAAR 4.6万台 前月比▲4.6% 20 0 -20 40 -40 30 20 -60 10 -80 0 2012年 7.2万台 2013年7.5 万台 2014年 5.0万台 -60 2015年 4.7万台 -80 . . 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 12 13 14 15 16 2011年 注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。 注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。 出所: Federation of Thai Industriesのデータを基に作成 担当:調査部 産業調査室 深尾三四郎 Tel: 045-225-2375 Email: [email protected] 本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究所・調査部が 信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するものではありません。 3
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