GKH019601

直接話法構文について
岩
1.は
田
良
治
じ め に
例 えば次の (1) にある直接話法構文の Da
ivi
ds
idの部分 を伝達節 (
a
r
e
po
r
t
i
ngc
l
aus
e)と
tdi
dyo
us
e
e?
'
'の部分 を被伝達部 (
r
e
po
r
t
e
ds
pe
e
c
h)と呼ぶ とすると,伝達節が
呼び,-̀
Wha
文中の どの位置 に生 じるか とい うことと,伝達節の主語 と動詞が倒置 しているかいないか とい
Y
I
E
うことによって英語の直接話法構文 には (2) に示 した 6種類の形式が存在する。
(1)Da
vi
ds
ai
d,"
h a
W
tdi
dyo
us
e
e
r
(2)a_ SV"
R"(
e.g.Har
r
yas
ke
d:m e
no
ne
a
r
h wi
t
l
lt
hef
is
hi
ngbe
in?
g
"
)
b. VS"
R"(
e.g.A
s ke
dHar
r
y:m e
no
ne
ar
h wi
t
l
lt
hef
is
hi
ngbe
inr (
g
Co
l
l
i
ns
(
1
997:38)
)
)
"El
i
z
a
be
t
hc
o
mpl
ine
a
d.(
Qui
r
ke
tal
.
C
. "
R"SV (
e.g."
Ther
adi
oi
st
o
ol
o
ud,
(
1
985:1
022)
)
)
"c
o
mpl
a
i
ne
dEl
i
z
abe
t
h.(
i
bi
d.
)
)
d. "
R'
'
VS(
e.ど,"
Ther
adi
oi
st
o
ol
o
ud,
e. "
R'
'SV"
R'
'(
e.g."
Iwo
nde
r
,
"Jo
hns
a
i
d,"
whe
t
he
rIc
anbo
I
TO
Wyo
urbi
c
yc
l
e.
'
'
(
i
bi
d.
)
)
f
, "
R"VS"
R"(
e.g."
Iwo
nde
r
,
"s
a
i
dJo
hn,'
'
whe
t
he
rIc
anbo
r
r
o
wyo
urbi
c
yc
l
e.
"
(
i
b
i
d.
)
)
S=s
ub
j
e
c
t
,
V=ve
r
b,"
R"
=r
e
po
r
t
e
ds
pe
e
c
h
本稿の 目的は,(2)の形式 を持つ英語の直接話法構文が,生成文法理論 の枠組みで どの
ように生成 されると仮定するのが適切であるのか を考察することである。 まず,第 2節では英
語の直接話法構文が持つ種 々の特徴 を記述する。次 に,この構文 に関する生成文法理論 に基づ
十分 に)説明
く先行研究 を紹介 し,それ らの研究 には第 2節で紹介 したこの構文の諸特徴 を (
で きないな どの問題点があることを第 3節で指摘する。最後 に,第 4節で,代案 となる新 たな
仮説 を岩田 (
1
9
9
8)の三次元文法理論 に基づいて提案 し,その仮説 によって,先行研究 に兄い
だされる問題点 を生み出す ことな く第 2節で示 されたこの構文 の特徴 を説明で きるだけで な
く,直接話法構文 と他の同様の特徴 を持つ構文 との類似性 も説明で きるとい う帰結が得 られる
ことを示す。
2.直接話 法構 文 の特徴
英語の直接話法構文 には音韻上,意味上,お よび統語上,以下の ような特徴が観察 される。
2
.
1 音韻的特徴
l
王
l
被伝達部 は普通,伝達節 とは別の独立 した音調 (
i
nt
o
na
t
i
o
n)を とる。例 えば次 の (3) に
c
f
.
荒木 ・安井 (
編) (
1
9
9
2:4
2
3)
)
おいて被伝達部は上昇調で言われる。(
(3)Do
r
o
t
hys
a
i
d,"
I
smymo
t
he
ro
nt
hepho
ne
?
"
(
Qui
r
ke
ta
l
.(
1
985:1
023)
)
2
天 理 大 学 学 報
2
.
2 意味的特徴
C
。
mm。
ntc
l
aus
e)や文副詞 と類似 した機能 を果た字'
.(
c
f
.Qui
r
k
伝達節 は意味的 に,論評節 (
e
tal
・(
1
985:1
023)
)例 えば,(
4) において,伝達節 を含 む aは論評節 (
=ì
ti
sal
l
e
ge
d'
)を含
む b と文 副 詞 (
=à
l
l
e
ge
dl
y'
) を含 む Cの 意 味 解 釈 を持 つ。(
c
f
.
荒 木 ・安 井 (
編) (
1
9
9
2:
42
3)
)
(4)a. "
Ge
ner
ls
a
,
"t
he
yal
l
e
ge
d,"
ne
verr
e
t
i
r
e;t
he
yme
r
e
l
yf
adeawa
y.
"
b. "
Ge
ne
r
al
s
,
"i
ti
sal
l
e
ge
d,"
ne
ve
rr
e
t
i
r
e;t
he
yme
r
e
l
yf
adeaway:
'
s
,
"a
l
l
e
gedl
y,"
ne
ve
rr
e
t
i
r
e;t
he
yme
r
el
yf
adeaway,
"
C
. "
Ge
ne
r
al
(
Qui
r
ke
tal
.(
1
985:1
023)
)
さらに,次 の例 (
5a)において,伝達節 である s̀
ai
dMar
y'は (
5b)の挿入表現 である副詞句 àc
I
c
o
r
di
ng t
o Mar
y' と同 じように,文の残 りの部分全体 を修飾 している。(
Co
l
l
i
ns(
1
997:3940)
)
m,
"s
ai
dMar
y,"
want
st
ogot
ot
hes
t
o
r
e.
"
(5)a. "
Jo
l
b. "
Jo
hn,
'
'ac
c
o
r
di
ngt
oMar
y,"
want
st
ogot
ot
hes
t
o
r
e.
"
(
o
p.°
i
t
.
:39)
2.
3 統語的特徴
(
i
)伝達節が表現 されず,被伝達部のみが単独で用い られる場合がある。
(6)A:
Whatdi
dDor
o
t
hyac
t
ual
l
ys
ay?
B:"
Mymo
t
he
r
'
sont
hepho
ne.
"
(
Qui
r
ke
tal
.(
1
985:1
022)
)
(
i
i
)被伝達部 と伝達節のいずれ も,疑問節や命令節 にな りうる。 (
c
f
.Qui
r
ke
tal
.(
1
985:
1
023)
)
(7)a. Dor
o
t
hys
ai
d,"
I
smymo
t
he
ro
nt
hepho
ne
?
'
'(
-(3)
)
b. Do
r
o
t
hys
ai
d,"
Tel
lmymo
t
he
rI
'
l
lbeo
ve
rs
oo
n.
"
(8)a. Di
dyo
ur
e
al
l
ys
a
yt
oRo
nal
d,"
Yo
u'
r
emybes
tf
he
nd"
?
b. Tel
lRi
c
har
d,"
Yo
u'
r
emybes
tf
ri
e
nd.
"
(
i
bi
d.
)
さらに,被伝達部 は感嘆文 にな りうる。 (
c
f
.Qui
r
ke
tal
.(
1
985:1
030)
)
(9) "
whatabr
a
vebo
yyo
uar
e!
'
'Mar
gar
e
tt
o
l
dhi
m.(
i
bi
d.
)
)伝達節の時制 と被伝達部の時制 はいわゆる 「
時制の一致」 に したがわない。
(
i
i
i
(
1
0)a, He里
車重:"
I空重 mo
r
emo
ne
y・
"(
Le
e
c
ha
n dSvar
t
vi
k(
1
975:11
7)
)(
c
f
.He
s
ai
dt
hathene
e
de
dmo
r
emone
y.(
i
bi
d.
)
)
b. "
Ⅰ聖聖bei
ngpai
dbyt
hehour
,
'
's
he空
重垂・(
Qui
r
ke
ta
l.(
1
985:1
027)
)(
c
f
・She
s
ai
ds
hewasbe
i
ngpai
dbyt
heho
ur
.
(
i
bi
d.
)
)
I
'
vebe
e
nwai
t
i
ngo
ve
ranhourf
o
ryo
u,
"S
het
o
l
dhi
m.(
i
bi
d.
)(
c
f
.Shet
o
l
d
C
. "
hi
mt
hats
hehadbe
e
nwai
t
i
ngo
ve
ranho
urf
わrhi
m.(
i
bi
d.
)
)
(
(
1
0)の下線 は筆者)
(
i
v)伝達節が疑問節や否定節 であ って も,それ に影響 されて例 えば被伝達部の中の s
o
me
語が a
ny語 に変 わることはない。
(
ll) a
. Hes
ai
d,"
Mar
t
hahasboughts
omene
wmat
e
r
i
al
.
'
'
b. Di
dhes
a
y,"
Mar
t
hahasboughts
o
mene
wmat
e
r
i
al
"
?
直接話法構文について
3
C
. Hedi
dn'
ts
a
y,"
Mar
t
hahasboughts
o
mene
wmat
e
r
i
al
.
"
3.先 行 研 究
生成文法 (
の ミニマ リス ト・プログラム)の枠組みで直接 話法構文 を扱 っている研究 と し
て,Co
l
l
i
nsandBr
ani
gan(
1
997)と Col
l
i
ns(
1
997)と Gyoda(
1
999)
がある。 まず,Co
l
l
i
ns
1
2)の ような 3種類の事例,つ まり伝達節の主語 と動詞が倒置 し
and Br
ani
gan (
1
997)は (
ている (
2d)
,(
20,(
2b)の形式の直接話法構文 に対 し,それぞれ (
1
3) に示 した 3つの構造 を
仮定 している。すなわち,(
1
2b)の事例 は被伝達部 (
Co
l
l
i
nsandBr
ani
gan(
1
997)はこれを引
用 (
quot
e)と呼ぶ)その ものが (
Spe
c
Cへ)移動 した結果 と して適切 に説 明で きそ う もな
い。 したが って彼 らは,Spe
c
C に移動するのは空の引用演算子 (
e
mpt
y quo
t
at
i
veo
per
at
o
r
:
0)で,実際の被伝達部 は, 【C。01〔
A
G
,
Pa
S
kedHar
r
yt
.
】
]とい う節の外部 にあ り,(
(
1
2)の a と
Cでは)恐 らくその 【
c
pOlI
Ag,
。aS
kedHar
r
yt
l
]
]
に付加 (
ad
j
o
i
n)されてお り, この CP の Spe
c
の位置 にある演算子 0.と同一指標 を付与 されていてその演算子 の内容 (
c
ont
e
nt
)を同定す る
と仮定 してい
(
4
)
る
。
(
1
2)a. "
h e
W
no
ne
ar
t
hwi
l
lt
hef
i
s
hi
ngbe
inagai
g
n?
"as
kedHar
r
y.
b. "
h e
W
nonear
t
h,
'
'as
ke
dHa
r
r
y,`
wi
l
lt
hef
is
hi
ngbe
inagai
g
n?
"
h e
W
no
ne
ar
t
hwi
l
lt
hef
is
hi
ngbe
inaga
g
inr
C
. A
s ke
dHar
r
y:"
(
1
3)a. È
h eno
W
neart
hw
il
lt
hef
i
s
hi
ngbe
inagai
g
n?
'
'【
c
pO】【
榔 ・
as
ke
dHar
r
yt
.
]
]
b. "
h e
W
no
ne
ar
h"
t
,【
c
p0.[
Agr
Pas
ke
dHar
r
yt
.]
]
,"
wi
l
lt
hef
i
s
hi
ngbe
inagai
g
n?
'
'
C
・
p01Lb Pas
kedHar
r
yt
1
l
l
:
"
h e
W
no
ne
ar
t
hwi
l
lt
hef
i
s
hi
ngbe
inagai
g
n?
"
l
c
(
Co
l
l
i
nsandBr
ani
gan(
1
997:1
0ll)
)
この ように,主語 と動詞が倒置 した (
2b)
,(
2d)
,(
2f
)とい う直接話法構文全体の構造 を Co
l
l
i
ns
andBr
ni
a
gan(
1
997)は必ず しもはっきりとは示 していない。 この点について,Co
l
l
i
nsand
Br
ani
gan(
1
997:ll
)は直接話法構文において伝達節が主語 と動詞が倒置 した節である場合,
2b)
, (
2d)
, (
2f
)の構文では,伝達節 は挿入表現 (
par
e
nt
he
t
i
c
ale
xpr
es
s
i
o
n)
つ まり本稿の (
であ り,挿入表現 を含 んだ節 の構造 は Mc
Cawl
e
y(
1
982)の分析 と完全 に適合す る としてい
Cawl
e
y(
1
982) は挿入表現 を含んだ事例 に対 して以下の ような分析 をしているO 例 え
る。Mc
ば ò
fc
o
ur
s
e
'という挿入表現 を含んだ J̀o
hnt
al
ked,o
fc
or
s
e,aboutpo
l
i
t
i
c
s
.
'には次の入力構
造が与 えられる。
(
1
4)
S
Ei i選
N
P
^ v i
ke
J
i
mv
l
L
^
NP
t
a
l
k
e
dPA
l
l
a
b
o
u
t p
o
l
i
t
i
c
s
4
天 理 大 学 学 報
(
5
)
る
。
この入力構造 に Pa
r
e
nt
he
t
i
c
al Pl
a
c
e
me
ntとい う構成素構造 を変 えず に語順 を変 える移動変
形が適用 して,次 の構造が派生 され
(
15)
云
∠ゝ ∠=ゝ
pp
L
t
a
l
ke
d o
rc
o
ur
s
e
a
bo
utpo
l
i
t
i
c
s
この分析 を直接話法構文 に応用す る と,例 えば,(
2
f
)の形式 を持つ (
1
2
b)は次 の ように派生 さ
れ ることになる。
CP
(
16)
/一
-
CP,
璽堅
〈
-
塁等
- \
/
whe
no
ne
ar
t
hwi
l
l
0
.
-
CP
〈
-\
Ma
ry t
.]
[
asked
t
hef
is
hi
ngbe
inagai
g
n
l
移動変形
(
1
7
)
be
g
i
na
gal
n
次 に,直接話法構文の (2)の 6つの形式の うち (
2
C
)と (
2d)の形式 について,つ ま り被
伝達部が文頭 にあ り,文尾 にある伝達節の主語 と動詞が倒置 していない事例 と倒置 している辛
(
る
例 につい て,それ ぞれが どの ような構造 と操作 に よって生 成 され るか を Co
l
l
i
ns(
1
997)と
6
)
Gyo
da(
1
999)が論 じてい 。 まず ,Co
l
l
i
ns(
1
997
)によれば,(
2
C
)と (
2d)の形式の構文 に関
しては,伝達節 の動詞 の 目的語 の位置 には空の引用演算子 (
-Op)が存在 し,被伝 達部 は,
上記 の Co
l
l
i
nsa
n dBr
ni
a
gan(
1
997)の分析 と同 じように,伝達節の外側 に存在 し,Op と同
一指標 を付与 されている構造 を持つ。そ して,伝達節の主語 と動詞が倒置 していない例 えば次
の (
1
8) は (
1
9) の① -③ の手順 で生成 され る。
(
1
8) "
Iam s
ohappy,
"Mar
ys
ai
d.
(
1
9)① opが Trの外側 の指定部 に移動 す る。 (
引用演算 子の格素性 と D 素性 は Trの D
直接話法構文について
5
素性 と格素性 と照合関係 に入る。
)
②V が繰 り上が り,Trに付加する。
(
この段階で,Op と r
T の指定部の位置にある【
D
PMa
r
y]
は T の指定部か ら等距離
(
e
qui
di
s
t
ant
)にあ り, したがっていずれか一方がその指定部 に移動で きる。)
③sub
j(
=b p Ma
r
y]
)が T の指定部に移動する。(
T の格素性 と EPP素性が照合関
係に入る。)
以上が Spe
l
1
Out以前の顕在的統語論 (
o
ve
r
ts
y
nt
a
x)での操作であ り,その結果次の構造が
生成 される。
CP
(
2
0)
-
CP
∠
ゝ
Ⅰam s
ohappy
/
\
TP
/
へ
このあ と,LF において T
r が T に陰在的 (
c
o
ve
r
t
l
y)に付加 し,主語の ≠素性が動詞の ≠素性
と照合関係 に入 り,動詞の時制素性が T と照合関係 に入る。
次 に,伝達節の動詞 と主語が倒置 している事例,例 えば次の (
21
)は,被伝達部が伝達節の
外側に存在する上述の構造に基づいて,以下の (
2
2)の操作 によって生成 される。
(
21
) "
Iam s
ohappy,
'
's
ai
dMa叩.
(
2
2)①opが Trの外側の指定部 に移動す る。 (
引用演算子の格素性 と D 素性 は Trの D
素性 と格素性 と照合関係 に入る。)
②V が操 り上が り,Trに付加する。
③Trが操 り上が り,T に付加する。 (
動詞の時制素性は T と照合関係 に入る。
)
(
この段階で,(
1
8)の場合 と同様 に,Opと Trの指定部の位置 にある[
D
PMar
y】
は等距離であ り,いずれか一方が Tの指定部に移動で きる。)
④opが Tの指定部に移動する。(
Tの EPP素性が照合関係に入る。
)
6
天 理 大 学 学 報
(
22)の操作 の結 果,次 の構造が生成 される。
CP
㌔
(
23)
CP.
/ へ
\
、
、
Iam sohappy
CP
/へ
TP
一一
、
、
そ して,LF において主語 Mar
yの形式素性が T に付加 し,Ma
r
yの格素性 と≠素性が T の
格付与素性 と動詞の ≠素性 と照合関係 に入る。
以上のことか ら分かるように,伝達節の主語 と動詞が倒置するか どうか,つ まり,伝達節
2C
)の形式 になるか (
2d)の形式になるかは,Trの外側の指定部にある【
。
pOp】と Trの内
が(
-主語) とい う Tの指定部か ら等距離 にある 2つの要素の どちらが
側の指定部 にある DP (
その指定部に移動するかによる。
最後 に,Gyo
da(
1
999)は,(
2C
)と (
2d)の形式において被伝達部はもともとは伝達節の動詞
l
l
i
nsa
nd Br
a
ni
gan (
1
997)や
の補部の位置にあ り,その位置から文頭に移動するという Co
Co
l
l
i
ns(
1
997)の分析 とは異なる分析 をしている。つ まり,まず,伝達節の動詞 と主語が倒置
していない事例は次の (
2
4)① ∼③の仮定 と手順 にしたがって (
25)に示 したように生成 され
ると分析 している。
(
2
4)①引用構文 (
Quo
t
at
i
ve Co
ns
t
uc
r
t
i
o
n)にある母型主語 (
mat
ix s
r
ub
j
e
c
t
) は一様 に
【Spe
c
,T】
に顕在的 (
o
ve
r
t
l
y)に上昇する。
mat
ixve
r
r
b)は 「
意味的に軽 く (
s
ema
nt
i
c
a
l
l
yl
i
ht
g
)
」,
②引用構文にある母型動詞 (
Spe
l
1
Out以前に T に移動する。
+Quo
t
el
という強い形式素性 を持つ母型補文化詞 (
mat
ix c
r
o
mpl
eme
nt
i
z
e
r
)が被
③【
伝達部 (
Gyo
da(
1
999)はこれを引用 (
quo
t
e)と呼ぶ)をその指定部の位置に顕在
的に引 き寄せる。
直接話法構文について
(
25)
7
CP
琶i i 3
"
QUOTE"
C
'
/
へ、TP
/〈\
'
S
U
B
J T
V
l
川
-
I
/へ v
T
P
/
へ
v
I
t
s
u
E
U
/
へ W
v
l/\t
Q
U
O
T
E
t
yt
y
次 に,伝達節の動詞 と主語が倒置 している事例の派生には上記の倒置 していない事例の派生 と
c
f
.(
2
6) の③'
)
比べて 1つ多 くの操作,つまり動詞の T から C への顕在的なさらなる上昇 (
が含まれる。
(
2
6)
C
P
寧E i
i
i
i選
以上が,英語の直接話法構文 に関する生成文法に基づ く先行研究の概略であるが,そこには
(
7
)
この構文に関する仮説 として少な くとも次の ような問題点ない し不十分な点が兄いだされる。
(
27) (
i
)仮 に,Co
l
l
i
nsandBr
ani
gan(
1
997:ll)と Co
l
l
i
ns(
1
997:39)が示唆 しているよ
うに,直接話法構文 (
2b)
, (
2d)
,(
2f
)の構造が Mc
Cawl
e
y(
1
982)の提案する挿
8
天 理 大 学 学 報
入表現 を含んだ構造
だと考 え,Mc
Ca
wl
e
y(
1
982)の分析 を採用 した場合 ,次 の①
(
8
)
と② が問題点 となる。つ ま り,① ミニマ リス ト プログラムの枠組みでは,移動 は
1
4)- (
1
7)に見 られる【
,o
f
ある素性 を照合する とい う目的以外 では許 されないが,(
c
o
ur
s
e
】と【cp0.【
as
ke
dMar
yt
.1
1
の移動 は何 の素性 も照合す ることはない。②上述
Ca
wl
e
y(
1
982)の分析では,例 えば (
1
5
)と (
1
7)の派生構造でそれぞれ最
の Mc
ヮo
fc
o
ur
s
e
]
と【
。
pol【
a
s
ke
dMar
yt
.
]
】
は,移動 の
上位 の S と CP に直接 支配 される[
結果,それぞれ,Ⅴ と pp を結ぶ枝(
br
a
L
nC
h)
と CPlの右枝 をクロス して しまうが,
これは一般 に許 されない。
(
i
i
)本稿 の第 2節 の特徴 か ら,直接話法構文 の被伝 達部 と伝達節 は音韻 的 に も意味
的に も統語的 にも相互 に独立 してい ると考 え られるが, この ことを Gy
o
da (
1
999)
の (
2
5
)と (
2
6
)の構造に基づ く分析か らは説明で きない.また,Con
i
r
Ba
ndBr
ar
蜘 1
(
1
997)と Co
l
l
i
ns(
1
997)の直接話法構文 に対す る付加構造 において,伝達節 とそ
れに付加 された被伝達部が構造的 にどれほ ど被伝達部 と伝達節 の相互の遊離 ・独立
性 を説明で きるか不明である。
4.代
案
岩田 (
1
9
8
9;1
9
9
8)は,英語 の文副詞 (
s
e
nt
e
nc
ea
dve
r
b:SA)
,論評節 (
c
o
mme
ntc
l
a
us
e:
,非制限的副詞節 (
no
nr
e
s
t
ic
r
t
i
vead
ve
r
bi
a
lc
l
aus
e:NAG)
,お よび非制限的関係詞節 (
no
nCC)
no
ns
e
nt
e
nc
ead
ve
r
b:NSA)
,制限的副
r
e
s
t
ic
r
t
i
ver
e
l
at
i
vec
l
aus
e
:NRC)が SA以外 の副詞 (
r
e
s
t
r
i
c
t
i
ve a
d
ve
r
bi
a
lc
l
a
us
e:RAC)
,お よび制限的関係詞節 (
r
e
s
t
r
i
c
t
i
ve r
e
l
a
t
i
ve
詞節 (
2
8
) にまとめて示 したような,音韻的に,意味的に,そ して統語的
c
l
a
us
e:RRC) と,次の (
に対立 した特徴 を持つ ことを示 した。
(
2
8) (
i
)SA,CC,NAC,NRC は,NSA,RAC,RRC と異 な り,普通,文 中の他の要素か
t
o
ne
1
mi
t
)を形成 し,その境界 によって文 中の他 の要
ら独立 した別個 の音調単位 (
素か ら切 り離 されている。
(
i
i
)SA,NAC お よび CC は,NSA や RAC と異 な り,文 の一部 を修 飾す る こ とは
な く, また,NRC は,RRC と異 な り,文 の一部 である先行 詞 の意味 を制 限す る
ことはない。
(
i
i
i
)RAC,RRC の場合 と異 な り,CC,
NAC,NRC に付加疑問が付 くことがある。
A,CC,NAC,NRC と NSA,RAC,RRC の両者 は,それぞれ,次の ように性格
その結果 ,S
付 けることがで きると仮定 された。
(
2
9)a. NSA,RACお よび RRC は,文 中の他 の要素 と,音韻的 に も,意味的 に も,そ し
て統語的 に も,密接 な結 び付 き方 を してお り,文 中の他 の要素 と同 じ程度 に文構造
の一部 として組み込 まれている。
b. SA,NAC,CC お よび NRC は,いずれ も,文 中の他 の要素 と密接 な結 び付 き方
を してお らず,文中の他 の部分か ら遊離 ・独立 していて,文構造 の一部 として組み
込 まれていない。
1
9
9
8:51の (
31)))
(
岩田 (
そ して,(
2
9)の仮定 を基 に して,次の ような分析が提案 された。つ ま り,NSA,RAC お よび
RRC は,生成文法 において,従来,文 中の他 の要素 と同次元 の二次元的統語構造 に存在す る
2
9a)に示 されたこれ らの要素の性格 を考 えれば
要素 として分析 されて きたが, このことは,(
A,
NAC,CC お よび NRC は,(
29
b)に示 した ように,文中
自然 なことである。 これに対 し,S
直接話法構文について
9
の他の要素 と密接 に結び付いてお らず,文構造の一部 として組み込 まれないでそこか ら遊離 し
ているこれ らの要素は,全 く異質の特徴 を持つ NSA,RAC お よび RRC とは別次元の,すな
わち,三次元の空間に存在する構成素であると分析する。この分析が正 しければ,SA,NAC,
cc お よび NRC に関す る以上の考察 と直接話法構文 に関す る本稿 の2.
1
節 -2.
3節 の観察か
ら,英語の直接話法構文はその被伝達部 と伝達節が相互に遊離 ・独立 してお り,三次元の構造
(
9
)
を持 っていると分析 される。
i
)- (
i
i
i
) に示 したことか らも分かるよう
しか し,SA, NAC, CC および NRC は,次の (
に,等位構文の等位項同士の場合 と違って,文中の他の部分 と対等の関係 にはない。 (
c
r
.
岩田
(
1
9
9
8:5
2))
(
3
0) (
i
)等位節 とは異な り,SA,NAC,CC および NRC は,文の残 りの部分が表す命題
(
pr
o
pos
i
t
i
o
n) と対等の命題 を表 さない。
(
i
i
)等位節 を別の等位節の内部 に置 くことはできないが,SA, NAC, CC あるいは
NRC が文の他の部分の内部に置かれることはある。
(
i
i
i
)機能の異なる肯定文 と疑問文 を等位接続す ることはで きないが,疑問文である
主文に肯定文の形式の CC や NRC を付 けた り,肯定文である主文 に疑問文の形
式の CC を付 けることは可能である。
i
i
i
)の事実は,SA,NAC,CC および NRC が,それぞれ,文中の他の部分に対 し
この (
i
)- (
てある程度従属 している要素であるとい うことを示 している。同様 に,次 の (
31
)の (
i
)-
(
i
i
i
)に記 した事項は,直接話法構文の伝達節が ,SA,NAC,CC および NRC と同様,文中の
他の部分 (
-被伝達部)に対 してある程度従属 している要素であるとい うことを示唆 してい
る。
(
31) (
i
)等位節 とは異なり,直接話法構文の被伝達部 と伝達節は対等の命題 を表 さない。
(
c
r
.本稿の2.
2節 と注 (3)
)
(
i
i
)等位節 を別の等位節の内部に置 くことはで きないが,(
2e-D,(
4a)
,(
5a)
,(
1
2b)
や以下の例にあるように直接話法構文の伝達節が被伝達部の内部 に置かれることは
ある。(
被伝達部を伝達節の内部 に置 くことは不可。
)
a."
That
,
"Isai
d,"
i
sapi
t
y.
"(
Qui
r
keta
l
.(
1
985:1
378)
)
)等位接続表現の一方の等位項 を消去することはで きないが,直接話法構文の伝
(
i
i
i
c
f
.Qui
r
ke
t al
.(
1
985:1
023)
と本稿の2.
3節の
達節は消去 されることがある。(
i
)
)(その道,つまり被伝達部が省略 されることはあ りえない。)
(
以上の観察は,英語の直接話法構文の伝達節の被伝達部 に対する関係が英語の SA, NAC,
CC および NRC の文中の他の部分に対する関係 と同一あるいは平行的であることを示 してい
1
9
89;1
99
8:第 2章)に
る。 ここまでの考察が正 しいとすると,直接話法構文の構造は岩田 (
基づいて,英語の SA,NAC,CC および NRC を含んだ文の構造 と同様 に,次の条件 にしたが
って生成 されることになると仮定 される。
(
3
2)三次元構造生成条件 :
血
眼は,その背部に別の Ⅹ.
m
mを持つことがで きる。(
Ⅹ=C(
omp)
,I
Ⅹ の最大投射 Ⅹ.
(
nf
l)
,N,Ⅴ,A,P,Advo指標 iは前後の Ⅹが同一の範晴であることを示す。)そ し
て,(
i
)背部の Ⅹm
a
Xは,Ⅹ=C の場合は,前部の Ⅹm
a
よと対等の位置あるいはそれに直
接支配 される位置 にあ り,Ⅹ ≠C の場合 は,前部の ⅩJ
D
a
Xと対等の位置 にある。(
i
i
)
前部の Ⅹm
a
xと対等の位置 にある背部の Ⅹm
a
Tは,前部の Ⅹm
a
Xを直接支配する節点が
1
0
天 理 大 学 学 報
(
岩田
存在す る場合 には,その節点 に直接支配 されるO
(
1
9
9
8:5
3
5
4)
)
この三次元構造生成条件 と Ⅹ バ ー理論の原理 な どに したが うと,例 えば,概 略,次 の三次元
基底構造が得 られる。
(
3
3
)
a
l
N
2I
'
/
\
C^
Nl m
a
X
m
Ⅰ
SA,NAC
C
C,NRC,伝達節
VP
この構造 において,C3 比,N2m比,C2血
弧は (
32) の三次元構造生成条件 に したがって三次元の
継 と N2 相 は,それぞれ,前部の Cl棚 と Nl
空間に生成 された範噂 である。 この うち C3 n
- aX
と対 等 の位 置 に存在 し,等 位項 とな る。C2n
非は Cln
-に直接 支 配 され てい る要 素 で,SA,
NAC,CC,NRC あるいは直接話法構文の伝達節 はこの C2m
弧の位置 に生成 される。 この構造
に したが って例 えば直接話法構文 は,以下の ように生成 される。 まず,伝達節 の主語 と動詞が
21
)の事例 は,概 略 , (
3
4) に示 した三次元構造 を持 ち,その CP2
には
倒 置 している例 えば (
(
1
0
)
22) の① ∼④ の操作 が適用 される。
例 えば (
(
34)
cpl
H am s
oha
ppyI
. CP2
(または CP)
直接話法構文について
ll
次 に,伝達節の主語 と動詞が倒置 していない例 えば (
1
8)の事例 の派生 は,概略 ,(
35) に示
1
9)① ∼③ にある CP2
内の操作 に基づいてなされる。
した三次元構造 と例 えば (
(
35)
CP l
[Iam s
ohappy]
l
CP2
そ して (
3
4)千 (
35)のような直接話法構文の三次元派生構造は,岩田 (
1
9
9
8:5
4)に したが
って (
36)の ように略記 されるが,英語の文副詞,論評節,非制限的副詞節,あるいは非制限
的関係詞節 を含む事例の三次元構造の場合 と同 じく,PF 部門で岩 田 (
1
9
9
8:5
5)で提案 され
た (
3
7)の規約 にしたが って直線化 され,その結果,本稿 (2)の 6つの形式のいずれかが最
終的に生成 される。
`
3
6)a.
巳 [
:
E
Tl
:0
.
h
,
Ti
Py
,
=
]
】
は 。,
α,l
T
.
l
T,
T
,l
vs
id]T
a
r .T.lT,
Pt
,,
T
,Ma" lT
心
t
vt
.
Ⅲ".
b・
rlIam s
ohappy]
.
」 【
c
F
2lTPMary,l
rT l
T
,
POp.
(
または pr
o
.
)
l
T
,t
,l
T
,l
nl
vs
ai
d]T
r 日v
pt
vt
l
】
]
]
]
]
]
]
1
2
)
(
(
37
) 直線化規約 :次の構造 において,A.
の構成素 と A2
を任意の順で解釈せ よ。
r
"
A.
直接話法構文の生成 に関 してこの三次元分析 を仮定すれば,以下のような利点 と帰結が得 ら
2
7)の (
i
)で Co
l
l
i
nsand
れる。 まず,本節の分析では,伝達節の移動 は仮定 されないので,(
Br
n
ai
gan(
1
997)と Co
l
l
nS(
i
1
997)の分析 に対 して指摘 された問題点は生 じない。次 に,本稿
の第 2節で示 された伝達節 と被伝達部が相互 に遊離 ・独立 しているとい う英語の直接話法構文
に関 して観察 される特徴 は,本節の分析では自然 に説明されるOす なわち,本節の分析 (
例え
ば (
3
3)
)では,被伝達部 と伝達節 は構造上,異 なる次元 に位置す る要素であ り,伝達節 は論
3
3)の
評節や文副詞が生成 されるの と同 じ構造上の位置 に生成 され,伝達節 となる例 えば (
CzE
h
弧はルー トS(
r
o
o
ts
)であるので,(
2
7)の (
i
i
)の問題点 を生み出す ことな く英語の直接
1
2
天 理 大 学 学 報
話法構文 の特徴 を説明で きる。 さらに,直接 話法構文 に対 す る三次元分析 を仮定す れば,直接
話法構文 と他の 同様 な特徴 を持つ表現 (
例 えば,英語 の文副詞 ,論評節 ,非制 限的副詞節 ,あ
(
1
3
)
るい は非制 限的関係詞節 を含 む表現) との類似性 も説明で きる。
5.ま と め
本稿 では,英語 の直接話法構文 に関 して以下 に示 した ような考察 を した。
(
38) (
i
)英語 の直接話法構文 の被伝達部 と伝達節 は互 い に遊離 ・独 立 してい る。
(
i
i
)直接 話法構 文 に関す る生成文 法 の先行研 究 は,その構 造 ない し生 成 方 法 に関す
る仮説 において不備が あ る。
(
i
i
i
)英語 の直接 話法構文 に対 して岩 田 (
1
998) の三次元 分析 を仮 定す る こ とに よっ
て上記 (
i
i
) の不備 は生 じない。 さらに, この仮定 に よって,直接 話法構 文 と他 の
構文 (
つ ま り英語 の文副詞,論評節 ,非制 限的副詞節,あ るい は非制 限的関係 詞節
を含む表硯 ) との類似性 お よび平行性 が捉 え られ る とい う好 ま しい帰結が得 られる。
注
,(
l
l
)と (
2a)の例文の許容性および例文 (3)における音調 (
i
nt
o
nat
i
o
n)に
(1) 本稿の (1)
pki
ns先生にご教示いただいた。ここに記 して感謝 したい。
ついては天理大学の D.E.Ho
(2) 正書法上,被伝達部 と伝達節は普通,句読法 (
punc
t
uat
i
on)によって分割 される。 (
Qui
r
ke
t
al
.(
1
985:1
631
)
)
(3) 論評節は,文の残 りの部分の真理値 (
t
mt
hval
ue)に対する話 し手の不確かさを表 した り,
話 し手の確信 を表すが,この点は直接話法構文の伝達節 (
e.ど."
I
ti
st
i
mewewe
nt
,
"Is
ai
d.
)
の機能と関連 している。 (
Q山r
ke
tal
.(
1
985:111
4111
5)
)
(4) co
l
l
i
nsandBr
ani
gan(
1
997:ll
)によると,演算子をコン トロールするという点で被伝達部
o
ug
h一
移動構文の母型主語 (
mat
r
i
xs
ub
j
e
c
t
)と同 じ役割を果た している。
はt
(
i
)a.Kdsar
ehar
dl
c
p0.
LqpPRO t
oi
g
no
r
et
.
]
]
b.m atc
anwedo?
"[c
p Ol
[
吋Pr
e
pe
at
e
dGabr
ie
l
l
et
.
]
]
(
i
bi
d.
)
(5) 構成素構造 を変えないということは,例 えば (
1
4)について言えば 【
ヮo
fc
o
ur
s
e
】は最上位の
Sに支配 されたままということである。なお,構成素構造 を変える分析 として Ro
s
s(
1
973)と
Emo
nds(
1
976;1
979)がある。
(6) 伝達節における主語 と動詞の順番の問題 を談話構造的 (
di
s
c
o
ur
s
e
s
t
mc
t
ur
al
) な視点から考
1
9
8
5)がある。
察 したもの として福地 (
(7) さらに,本稿の後述の (
31
)が示 しているように,直接話法構文の伝達節 は被伝達部 にある
l
l
i
nsandBr
ani
ga
n(
1
997)
,Co
l
l
i
ns(
1
997)お
程度従属 している要素であるが,このことを Co
よび Gyo
da(
1
999)の分析では示す ことはで きないと考えられる。
(8) さらに,Co
l
l
i
ns(
1
9
9
7)の問題点は qyo
da(
1
999:§2.1.2)と小泉 (
1
9
9
9:8
5)で指摘 さ
れている。
(9) (2) の 6つの形式の間で,被伝達部 と伝達節の独立性 の度合いには差がある。例 えば,伝
2d)と (
2f
)の被伝達部
達節が文中あるいは文尾にあ り,伝達節の主語 と動詞が倒置 している (
と伝達節の独立性は,倒置 していない (
2C
)と (
2e
)の形式の被伝達部 と伝達節の独立性 より高
いと考えられる。同様に,伝達節が文中あるいは文尾にある形式の被伝達部 と伝達節の独立性
2a)と (
2
b)の形式の被伝達部 と伝達節の独立性 より高いと考えられ
は,伝達節が文頭 にある (
1
3
直接 話 法構 文 につ い て
るO (
c
f
.Qui
r
ke
tal
.(
1
985:1
0231
024)
)
(
1
0) 本稿の 目的は,第 1節で述べ た ように,英語の直接話法構文が どの ように生成 され る と仮定
3
4) と (
3
5)の構造 にお
す ることが よ り適当であるか を考察する ことであ り,例 えば以下の (
の厳密 な内部構造が どの ような ものであるか (
例 えば (
3
4) と (
3
5)の CP2
内の V の
ける CP2
補部 はいか なる ものであ るか な ど),そ してそ こに厳密 には どの ような操 作 が適用 され るか
l
l
i
ns(
1
997)による (
1
9) と (
2
2)の操作が適切であるのか どうか など) について
(
例 えば Co
1
ユ) を参照。
は本稿 では議論の対象 と しない。但 し,本稿の注 (
(
l
l
) 被伝達部の名詞 (
句)性 については次の例 を参照。
i
)a.Hes
ai
d,"
She
'
she
r
e.
"
(
b.Hes
ai
di
t/比at/s
o
me
t
hi
ng.
C
.Whatdi
dhes
a
y?
(
Munr
o(
1
982:305)
)
ただ し,直接話法構文の伝達節の動詞 と被伝達部 との統語的関係が通常 の他動詞 とその直接 目
nr
o(
1
982)によって指摘 されている。
的語 との統語的関係 とは異なることが Mu
(
1
2) ただ し,岩 田 (
1
9
9
8:第 2章の注 (
1
6)) を参照。
(
1
3) 本稿の注 (
1
ユ)の (
i
) と次 の事例 は,本稿の (
2a)の形式の直接話法構文では被伝達部 と伝
達節 の相互の独立性 が必ず しも高 くない ことを示唆 しているが,第 2節 で示 した この構文の特
2a)の形式 も三次元構造 を持つ と仮定 してお く。
徴 か ら本稿 では (
i
)a.Do
r
o
hys
t
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参 考
文 献
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