直接話法構文について 岩 1.は 田 良 治 じ め に 例 えば次の (1) にある直接話法構文の Da ivi ds idの部分 を伝達節 ( a r e po r t i ngc l aus e)と tdi dyo us e e? ' 'の部分 を被伝達部 ( r e po r t e ds pe e c h)と呼ぶ とすると,伝達節が 呼び,-̀ Wha 文中の どの位置 に生 じるか とい うことと,伝達節の主語 と動詞が倒置 しているかいないか とい Y I E うことによって英語の直接話法構文 には (2) に示 した 6種類の形式が存在する。 (1)Da vi ds ai d," h a W tdi dyo us e e r (2)a_ SV" R"( e.g.Har r yas ke d:m e no ne a r h wi t l lt hef is hi ngbe in? g " ) b. VS" R"( e.g.A s ke dHar r y:m e no ne ar h wi t l lt hef is hi ngbe inr ( g Co l l i ns ( 1 997:38) ) ) "El i z a be t hc o mpl ine a d.( Qui r ke tal . C . " R"SV ( e.g." Ther adi oi st o ol o ud, ( 1 985:1 022) ) ) "c o mpl a i ne dEl i z abe t h.( i bi d. ) ) d. " R' ' VS( e.ど," Ther adi oi st o ol o ud, e. " R' 'SV" R' '( e.g." Iwo nde r , "Jo hns a i d," whe t he rIc anbo I TO Wyo urbi c yc l e. ' ' ( i bi d. ) ) f , " R"VS" R"( e.g." Iwo nde r , "s a i dJo hn,' ' whe t he rIc anbo r r o wyo urbi c yc l e. " ( i b i d. ) ) S=s ub j e c t , V=ve r b," R" =r e po r t e ds pe e c h 本稿の 目的は,(2)の形式 を持つ英語の直接話法構文が,生成文法理論 の枠組みで どの ように生成 されると仮定するのが適切であるのか を考察することである。 まず,第 2節では英 語の直接話法構文が持つ種 々の特徴 を記述する。次 に,この構文 に関する生成文法理論 に基づ 十分 に)説明 く先行研究 を紹介 し,それ らの研究 には第 2節で紹介 したこの構文の諸特徴 を ( で きないな どの問題点があることを第 3節で指摘する。最後 に,第 4節で,代案 となる新 たな 仮説 を岩田 ( 1 9 9 8)の三次元文法理論 に基づいて提案 し,その仮説 によって,先行研究 に兄い だされる問題点 を生み出す ことな く第 2節で示 されたこの構文 の特徴 を説明で きるだけで な く,直接話法構文 と他の同様の特徴 を持つ構文 との類似性 も説明で きるとい う帰結が得 られる ことを示す。 2.直接話 法構 文 の特徴 英語の直接話法構文 には音韻上,意味上,お よび統語上,以下の ような特徴が観察 される。 2 . 1 音韻的特徴 l 王 l 被伝達部 は普通,伝達節 とは別の独立 した音調 ( i nt o na t i o n)を とる。例 えば次 の (3) に c f . 荒木 ・安井 ( 編) ( 1 9 9 2:4 2 3) ) おいて被伝達部は上昇調で言われる。( (3)Do r o t hys a i d," I smymo t he ro nt hepho ne ? " ( Qui r ke ta l .( 1 985:1 023) ) 2 天 理 大 学 学 報 2 . 2 意味的特徴 C 。 mm。 ntc l aus e)や文副詞 と類似 した機能 を果た字' .( c f .Qui r k 伝達節 は意味的 に,論評節 ( e tal ・( 1 985:1 023) )例 えば,( 4) において,伝達節 を含 む aは論評節 ( =ì ti sal l e ge d' )を含 む b と文 副 詞 ( =à l l e ge dl y' ) を含 む Cの 意 味 解 釈 を持 つ。( c f . 荒 木 ・安 井 ( 編) ( 1 9 9 2: 42 3) ) (4)a. " Ge ner ls a , "t he yal l e ge d," ne verr e t i r e;t he yme r e l yf adeawa y. " b. " Ge ne r al s , "i ti sal l e ge d," ne ve rr e t i r e;t he yme r e l yf adeaway: ' s , "a l l e gedl y," ne ve rr e t i r e;t he yme r el yf adeaway, " C . " Ge ne r al ( Qui r ke tal .( 1 985:1 023) ) さらに,次 の例 ( 5a)において,伝達節 である s̀ ai dMar y'は ( 5b)の挿入表現 である副詞句 àc I c o r di ng t o Mar y' と同 じように,文の残 りの部分全体 を修飾 している。( Co l l i ns( 1 997:3940) ) m, "s ai dMar y," want st ogot ot hes t o r e. " (5)a. " Jo l b. " Jo hn, ' 'ac c o r di ngt oMar y," want st ogot ot hes t o r e. " ( o p.° i t . :39) 2. 3 統語的特徴 ( i )伝達節が表現 されず,被伝達部のみが単独で用い られる場合がある。 (6)A: Whatdi dDor o t hyac t ual l ys ay? B:" Mymo t he r ' sont hepho ne. " ( Qui r ke tal .( 1 985:1 022) ) ( i i )被伝達部 と伝達節のいずれ も,疑問節や命令節 にな りうる。 ( c f .Qui r ke tal .( 1 985: 1 023) ) (7)a. Dor o t hys ai d," I smymo t he ro nt hepho ne ? ' '( -(3) ) b. Do r o t hys ai d," Tel lmymo t he rI ' l lbeo ve rs oo n. " (8)a. Di dyo ur e al l ys a yt oRo nal d," Yo u' r emybes tf he nd" ? b. Tel lRi c har d," Yo u' r emybes tf ri e nd. " ( i bi d. ) さらに,被伝達部 は感嘆文 にな りうる。 ( c f .Qui r ke tal .( 1 985:1 030) ) (9) " whatabr a vebo yyo uar e! ' 'Mar gar e tt o l dhi m.( i bi d. ) )伝達節の時制 と被伝達部の時制 はいわゆる 「 時制の一致」 に したがわない。 ( i i i ( 1 0)a, He里 車重:" I空重 mo r emo ne y・ "( Le e c ha n dSvar t vi k( 1 975:11 7) )( c f .He s ai dt hathene e de dmo r emone y.( i bi d. ) ) b. " Ⅰ聖聖bei ngpai dbyt hehour , ' 's he空 重垂・( Qui r ke ta l.( 1 985:1 027) )( c f ・She s ai ds hewasbe i ngpai dbyt heho ur . ( i bi d. ) ) I ' vebe e nwai t i ngo ve ranhourf o ryo u, "S het o l dhi m.( i bi d. )( c f .Shet o l d C . " hi mt hats hehadbe e nwai t i ngo ve ranho urf わrhi m.( i bi d. ) ) ( ( 1 0)の下線 は筆者) ( i v)伝達節が疑問節や否定節 であ って も,それ に影響 されて例 えば被伝達部の中の s o me 語が a ny語 に変 わることはない。 ( ll) a . Hes ai d," Mar t hahasboughts omene wmat e r i al . ' ' b. Di dhes a y," Mar t hahasboughts o mene wmat e r i al " ? 直接話法構文について 3 C . Hedi dn' ts a y," Mar t hahasboughts o mene wmat e r i al . " 3.先 行 研 究 生成文法 ( の ミニマ リス ト・プログラム)の枠組みで直接 話法構文 を扱 っている研究 と し て,Co l l i nsandBr ani gan( 1 997)と Col l i ns( 1 997)と Gyoda( 1 999) がある。 まず,Co l l i ns 1 2)の ような 3種類の事例,つ まり伝達節の主語 と動詞が倒置 し and Br ani gan ( 1 997)は ( ている ( 2d) ,( 20,( 2b)の形式の直接話法構文 に対 し,それぞれ ( 1 3) に示 した 3つの構造 を 仮定 している。すなわち,( 1 2b)の事例 は被伝達部 ( Co l l i nsandBr ani gan( 1 997)はこれを引 用 ( quot e)と呼ぶ)その ものが ( Spe c Cへ)移動 した結果 と して適切 に説 明で きそ う もな い。 したが って彼 らは,Spe c C に移動するのは空の引用演算子 ( e mpt y quo t at i veo per at o r : 0)で,実際の被伝達部 は, 【C。01〔 A G , Pa S kedHar r yt . 】 ]とい う節の外部 にあ り,( ( 1 2)の a と Cでは)恐 らくその 【 c pOlI Ag, 。aS kedHar r yt l ] ] に付加 ( ad j o i n)されてお り, この CP の Spe c の位置 にある演算子 0.と同一指標 を付与 されていてその演算子 の内容 ( c ont e nt )を同定す る と仮定 してい ( 4 ) る 。 ( 1 2)a. " h e W no ne ar t hwi l lt hef i s hi ngbe inagai g n? "as kedHar r y. b. " h e W nonear t h, ' 'as ke dHa r r y,` wi l lt hef is hi ngbe inagai g n? " h e W no ne ar t hwi l lt hef is hi ngbe inaga g inr C . A s ke dHar r y:" ( 1 3)a. È h eno W neart hw il lt hef i s hi ngbe inagai g n? ' '【 c pO】【 榔 ・ as ke dHar r yt . ] ] b. " h e W no ne ar h" t ,【 c p0.[ Agr Pas ke dHar r yt .] ] ," wi l lt hef i s hi ngbe inagai g n? ' ' C ・ p01Lb Pas kedHar r yt 1 l l : " h e W no ne ar t hwi l lt hef i s hi ngbe inagai g n? " l c ( Co l l i nsandBr ani gan( 1 997:1 0ll) ) この ように,主語 と動詞が倒置 した ( 2b) ,( 2d) ,( 2f )とい う直接話法構文全体の構造 を Co l l i ns andBr ni a gan( 1 997)は必ず しもはっきりとは示 していない。 この点について,Co l l i nsand Br ani gan( 1 997:ll )は直接話法構文において伝達節が主語 と動詞が倒置 した節である場合, 2b) , ( 2d) , ( 2f )の構文では,伝達節 は挿入表現 ( par e nt he t i c ale xpr es s i o n) つ まり本稿の ( であ り,挿入表現 を含 んだ節 の構造 は Mc Cawl e y( 1 982)の分析 と完全 に適合す る としてい Cawl e y( 1 982) は挿入表現 を含んだ事例 に対 して以下の ような分析 をしているO 例 え る。Mc ば ò fc o ur s e 'という挿入表現 を含んだ J̀o hnt al ked,o fc or s e,aboutpo l i t i c s . 'には次の入力構 造が与 えられる。 ( 1 4) S Ei i選 N P ^ v i ke J i mv l L ^ NP t a l k e dPA l l a b o u t p o l i t i c s 4 天 理 大 学 学 報 ( 5 ) る 。 この入力構造 に Pa r e nt he t i c al Pl a c e me ntとい う構成素構造 を変 えず に語順 を変 える移動変 形が適用 して,次 の構造が派生 され ( 15) 云 ∠ゝ ∠=ゝ pp L t a l ke d o rc o ur s e a bo utpo l i t i c s この分析 を直接話法構文 に応用す る と,例 えば,( 2 f )の形式 を持つ ( 1 2 b)は次 の ように派生 さ れ ることになる。 CP ( 16) /一 - CP, 璽堅 〈 - 塁等 - \ / whe no ne ar t hwi l l 0 . - CP 〈 -\ Ma ry t .] [ asked t hef is hi ngbe inagai g n l 移動変形 ( 1 7 ) be g i na gal n 次 に,直接話法構文の (2)の 6つの形式の うち ( 2 C )と ( 2d)の形式 について,つ ま り被 伝達部が文頭 にあ り,文尾 にある伝達節の主語 と動詞が倒置 していない事例 と倒置 している辛 ( る 例 につい て,それ ぞれが どの ような構造 と操作 に よって生 成 され るか を Co l l i ns( 1 997)と 6 ) Gyo da( 1 999)が論 じてい 。 まず ,Co l l i ns( 1 997 )によれば,( 2 C )と ( 2d)の形式の構文 に関 しては,伝達節 の動詞 の 目的語 の位置 には空の引用演算子 ( -Op)が存在 し,被伝 達部 は, 上記 の Co l l i nsa n dBr ni a gan( 1 997)の分析 と同 じように,伝達節の外側 に存在 し,Op と同 一指標 を付与 されている構造 を持つ。そ して,伝達節の主語 と動詞が倒置 していない例 えば次 の ( 1 8) は ( 1 9) の① -③ の手順 で生成 され る。 ( 1 8) " Iam s ohappy, "Mar ys ai d. ( 1 9)① opが Trの外側 の指定部 に移動 す る。 ( 引用演算 子の格素性 と D 素性 は Trの D 直接話法構文について 5 素性 と格素性 と照合関係 に入る。 ) ②V が繰 り上が り,Trに付加する。 ( この段階で,Op と r T の指定部の位置にある【 D PMa r y] は T の指定部か ら等距離 ( e qui di s t ant )にあ り, したがっていずれか一方がその指定部 に移動で きる。) ③sub j( =b p Ma r y] )が T の指定部に移動する。( T の格素性 と EPP素性が照合関 係に入る。) 以上が Spe l 1 Out以前の顕在的統語論 ( o ve r ts y nt a x)での操作であ り,その結果次の構造が 生成 される。 CP ( 2 0) - CP ∠ ゝ Ⅰam s ohappy / \ TP / へ このあ と,LF において T r が T に陰在的 ( c o ve r t l y)に付加 し,主語の ≠素性が動詞の ≠素性 と照合関係 に入 り,動詞の時制素性が T と照合関係 に入る。 次 に,伝達節の動詞 と主語が倒置 している事例,例 えば次の ( 21 )は,被伝達部が伝達節の 外側に存在する上述の構造に基づいて,以下の ( 2 2)の操作 によって生成 される。 ( 21 ) " Iam s ohappy, ' 's ai dMa叩. ( 2 2)①opが Trの外側の指定部 に移動す る。 ( 引用演算子の格素性 と D 素性 は Trの D 素性 と格素性 と照合関係 に入る。) ②V が操 り上が り,Trに付加する。 ③Trが操 り上が り,T に付加する。 ( 動詞の時制素性は T と照合関係 に入る。 ) ( この段階で,( 1 8)の場合 と同様 に,Opと Trの指定部の位置 にある[ D PMar y】 は等距離であ り,いずれか一方が Tの指定部に移動で きる。) ④opが Tの指定部に移動する。( Tの EPP素性が照合関係に入る。 ) 6 天 理 大 学 学 報 ( 22)の操作 の結 果,次 の構造が生成 される。 CP ㌔ ( 23) CP. / へ \ 、 、 Iam sohappy CP /へ TP 一一 、 、 そ して,LF において主語 Mar yの形式素性が T に付加 し,Ma r yの格素性 と≠素性が T の 格付与素性 と動詞の ≠素性 と照合関係 に入る。 以上のことか ら分かるように,伝達節の主語 と動詞が倒置するか どうか,つ まり,伝達節 2C )の形式 になるか ( 2d)の形式になるかは,Trの外側の指定部にある【 。 pOp】と Trの内 が( -主語) とい う Tの指定部か ら等距離 にある 2つの要素の どちらが 側の指定部 にある DP ( その指定部に移動するかによる。 最後 に,Gyo da( 1 999)は,( 2C )と ( 2d)の形式において被伝達部はもともとは伝達節の動詞 l l i nsa nd Br a ni gan ( 1 997)や の補部の位置にあ り,その位置から文頭に移動するという Co Co l l i ns( 1 997)の分析 とは異なる分析 をしている。つ まり,まず,伝達節の動詞 と主語が倒置 していない事例は次の ( 2 4)① ∼③の仮定 と手順 にしたがって ( 25)に示 したように生成 され ると分析 している。 ( 2 4)①引用構文 ( Quo t at i ve Co ns t uc r t i o n)にある母型主語 ( mat ix s r ub j e c t ) は一様 に 【Spe c ,T】 に顕在的 ( o ve r t l y)に上昇する。 mat ixve r r b)は 「 意味的に軽 く ( s ema nt i c a l l yl i ht g ) 」, ②引用構文にある母型動詞 ( Spe l 1 Out以前に T に移動する。 +Quo t el という強い形式素性 を持つ母型補文化詞 ( mat ix c r o mpl eme nt i z e r )が被 ③【 伝達部 ( Gyo da( 1 999)はこれを引用 ( quo t e)と呼ぶ)をその指定部の位置に顕在 的に引 き寄せる。 直接話法構文について ( 25) 7 CP 琶i i 3 " QUOTE" C ' / へ、TP /〈\ ' S U B J T V l 川 - I /へ v T P / へ v I t s u E U / へ W v l/\t Q U O T E t yt y 次 に,伝達節の動詞 と主語が倒置 している事例の派生には上記の倒置 していない事例の派生 と c f .( 2 6) の③' ) 比べて 1つ多 くの操作,つまり動詞の T から C への顕在的なさらなる上昇 ( が含まれる。 ( 2 6) C P 寧E i i i i選 以上が,英語の直接話法構文 に関する生成文法に基づ く先行研究の概略であるが,そこには ( 7 ) この構文に関する仮説 として少な くとも次の ような問題点ない し不十分な点が兄いだされる。 ( 27) ( i )仮 に,Co l l i nsandBr ani gan( 1 997:ll)と Co l l i ns( 1 997:39)が示唆 しているよ うに,直接話法構文 ( 2b) , ( 2d) ,( 2f )の構造が Mc Cawl e y( 1 982)の提案する挿 8 天 理 大 学 学 報 入表現 を含んだ構造 だと考 え,Mc Ca wl e y( 1 982)の分析 を採用 した場合 ,次 の① ( 8 ) と② が問題点 となる。つ ま り,① ミニマ リス ト プログラムの枠組みでは,移動 は 1 4)- ( 1 7)に見 られる【 ,o f ある素性 を照合する とい う目的以外 では許 されないが,( c o ur s e 】と【cp0.【 as ke dMar yt .1 1 の移動 は何 の素性 も照合す ることはない。②上述 Ca wl e y( 1 982)の分析では,例 えば ( 1 5 )と ( 1 7)の派生構造でそれぞれ最 の Mc ヮo fc o ur s e ] と【 。 pol【 a s ke dMar yt . ] 】 は,移動 の 上位 の S と CP に直接 支配 される[ 結果,それぞれ,Ⅴ と pp を結ぶ枝( br a L nC h) と CPlの右枝 をクロス して しまうが, これは一般 に許 されない。 ( i i )本稿 の第 2節 の特徴 か ら,直接話法構文 の被伝 達部 と伝達節 は音韻 的 に も意味 的に も統語的 にも相互 に独立 してい ると考 え られるが, この ことを Gy o da ( 1 999) の ( 2 5 )と ( 2 6 )の構造に基づ く分析か らは説明で きない.また,Con i r Ba ndBr ar 蜘 1 ( 1 997)と Co l l i ns( 1 997)の直接話法構文 に対す る付加構造 において,伝達節 とそ れに付加 された被伝達部が構造的 にどれほ ど被伝達部 と伝達節 の相互の遊離 ・独立 性 を説明で きるか不明である。 4.代 案 岩田 ( 1 9 8 9;1 9 9 8)は,英語 の文副詞 ( s e nt e nc ea dve r b:SA) ,論評節 ( c o mme ntc l a us e: ,非制限的副詞節 ( no nr e s t ic r t i vead ve r bi a lc l aus e:NAG) ,お よび非制限的関係詞節 ( no nCC) no ns e nt e nc ead ve r b:NSA) ,制限的副 r e s t ic r t i ver e l at i vec l aus e :NRC)が SA以外 の副詞 ( r e s t r i c t i ve a d ve r bi a lc l a us e:RAC) ,お よび制限的関係詞節 ( r e s t r i c t i ve r e l a t i ve 詞節 ( 2 8 ) にまとめて示 したような,音韻的に,意味的に,そ して統語的 c l a us e:RRC) と,次の ( に対立 した特徴 を持つ ことを示 した。 ( 2 8) ( i )SA,CC,NAC,NRC は,NSA,RAC,RRC と異 な り,普通,文 中の他の要素か t o ne 1 mi t )を形成 し,その境界 によって文 中の他 の要 ら独立 した別個 の音調単位 ( 素か ら切 り離 されている。 ( i i )SA,NAC お よび CC は,NSA や RAC と異 な り,文 の一部 を修 飾す る こ とは な く, また,NRC は,RRC と異 な り,文 の一部 である先行 詞 の意味 を制 限す る ことはない。 ( i i i )RAC,RRC の場合 と異 な り,CC, NAC,NRC に付加疑問が付 くことがある。 A,CC,NAC,NRC と NSA,RAC,RRC の両者 は,それぞれ,次の ように性格 その結果 ,S 付 けることがで きると仮定 された。 ( 2 9)a. NSA,RACお よび RRC は,文 中の他 の要素 と,音韻的 に も,意味的 に も,そ し て統語的 に も,密接 な結 び付 き方 を してお り,文 中の他 の要素 と同 じ程度 に文構造 の一部 として組み込 まれている。 b. SA,NAC,CC お よび NRC は,いずれ も,文 中の他 の要素 と密接 な結 び付 き方 を してお らず,文中の他 の部分か ら遊離 ・独立 していて,文構造 の一部 として組み 込 まれていない。 1 9 9 8:51の ( 31))) ( 岩田 ( そ して,( 2 9)の仮定 を基 に して,次の ような分析が提案 された。つ ま り,NSA,RAC お よび RRC は,生成文法 において,従来,文 中の他 の要素 と同次元 の二次元的統語構造 に存在す る 2 9a)に示 されたこれ らの要素の性格 を考 えれば 要素 として分析 されて きたが, このことは,( A, NAC,CC お よび NRC は,( 29 b)に示 した ように,文中 自然 なことである。 これに対 し,S 直接話法構文について 9 の他の要素 と密接 に結び付いてお らず,文構造の一部 として組み込 まれないでそこか ら遊離 し ているこれ らの要素は,全 く異質の特徴 を持つ NSA,RAC お よび RRC とは別次元の,すな わち,三次元の空間に存在する構成素であると分析する。この分析が正 しければ,SA,NAC, cc お よび NRC に関す る以上の考察 と直接話法構文 に関す る本稿 の2. 1 節 -2. 3節 の観察か ら,英語の直接話法構文はその被伝達部 と伝達節が相互に遊離 ・独立 してお り,三次元の構造 ( 9 ) を持 っていると分析 される。 i )- ( i i i ) に示 したことか らも分かるよう しか し,SA, NAC, CC および NRC は,次の ( に,等位構文の等位項同士の場合 と違って,文中の他の部分 と対等の関係 にはない。 ( c r . 岩田 ( 1 9 9 8:5 2)) ( 3 0) ( i )等位節 とは異な り,SA,NAC,CC および NRC は,文の残 りの部分が表す命題 ( pr o pos i t i o n) と対等の命題 を表 さない。 ( i i )等位節 を別の等位節の内部 に置 くことはできないが,SA, NAC, CC あるいは NRC が文の他の部分の内部に置かれることはある。 ( i i i )機能の異なる肯定文 と疑問文 を等位接続す ることはで きないが,疑問文である 主文に肯定文の形式の CC や NRC を付 けた り,肯定文である主文 に疑問文の形 式の CC を付 けることは可能である。 i i i )の事実は,SA,NAC,CC および NRC が,それぞれ,文中の他の部分に対 し この ( i )- ( てある程度従属 している要素であるとい うことを示 している。同様 に,次 の ( 31 )の ( i )- ( i i i )に記 した事項は,直接話法構文の伝達節が ,SA,NAC,CC および NRC と同様,文中の 他の部分 ( -被伝達部)に対 してある程度従属 している要素であるとい うことを示唆 してい る。 ( 31) ( i )等位節 とは異なり,直接話法構文の被伝達部 と伝達節は対等の命題 を表 さない。 ( c r .本稿の2. 2節 と注 (3) ) ( i i )等位節 を別の等位節の内部に置 くことはで きないが,( 2e-D,( 4a) ,( 5a) ,( 1 2b) や以下の例にあるように直接話法構文の伝達節が被伝達部の内部 に置かれることは ある。( 被伝達部を伝達節の内部 に置 くことは不可。 ) a." That , "Isai d," i sapi t y. "( Qui r keta l .( 1 985:1 378) ) )等位接続表現の一方の等位項 を消去することはで きないが,直接話法構文の伝 ( i i i c f .Qui r ke t al .( 1 985:1 023) と本稿の2. 3節の 達節は消去 されることがある。( i ) )(その道,つまり被伝達部が省略 されることはあ りえない。) ( 以上の観察は,英語の直接話法構文の伝達節の被伝達部 に対する関係が英語の SA, NAC, CC および NRC の文中の他の部分に対する関係 と同一あるいは平行的であることを示 してい 1 9 89;1 99 8:第 2章)に る。 ここまでの考察が正 しいとすると,直接話法構文の構造は岩田 ( 基づいて,英語の SA,NAC,CC および NRC を含んだ文の構造 と同様 に,次の条件 にしたが って生成 されることになると仮定 される。 ( 3 2)三次元構造生成条件 : 血 眼は,その背部に別の Ⅹ. m mを持つことがで きる。( Ⅹ=C( omp) ,I Ⅹ の最大投射 Ⅹ. ( nf l) ,N,Ⅴ,A,P,Advo指標 iは前後の Ⅹが同一の範晴であることを示す。)そ し て,( i )背部の Ⅹm a Xは,Ⅹ=C の場合は,前部の Ⅹm a よと対等の位置あるいはそれに直 接支配 される位置 にあ り,Ⅹ ≠C の場合 は,前部の ⅩJ D a Xと対等の位置 にある。( i i ) 前部の Ⅹm a xと対等の位置 にある背部の Ⅹm a Tは,前部の Ⅹm a Xを直接支配する節点が 1 0 天 理 大 学 学 報 ( 岩田 存在す る場合 には,その節点 に直接支配 されるO ( 1 9 9 8:5 3 5 4) ) この三次元構造生成条件 と Ⅹ バ ー理論の原理 な どに したが うと,例 えば,概 略,次 の三次元 基底構造が得 られる。 ( 3 3 ) a l N 2I ' / \ C^ Nl m a X m Ⅰ SA,NAC C C,NRC,伝達節 VP この構造 において,C3 比,N2m比,C2血 弧は ( 32) の三次元構造生成条件 に したがって三次元の 継 と N2 相 は,それぞれ,前部の Cl棚 と Nl 空間に生成 された範噂 である。 この うち C3 n - aX と対 等 の位 置 に存在 し,等 位項 とな る。C2n 非は Cln -に直接 支 配 され てい る要 素 で,SA, NAC,CC,NRC あるいは直接話法構文の伝達節 はこの C2m 弧の位置 に生成 される。 この構造 に したが って例 えば直接話法構文 は,以下の ように生成 される。 まず,伝達節 の主語 と動詞が 21 )の事例 は,概 略 , ( 3 4) に示 した三次元構造 を持 ち,その CP2 には 倒 置 している例 えば ( ( 1 0 ) 22) の① ∼④ の操作 が適用 される。 例 えば ( ( 34) cpl H am s oha ppyI . CP2 (または CP) 直接話法構文について ll 次 に,伝達節の主語 と動詞が倒置 していない例 えば ( 1 8)の事例 の派生 は,概略 ,( 35) に示 1 9)① ∼③ にある CP2 内の操作 に基づいてなされる。 した三次元構造 と例 えば ( ( 35) CP l [Iam s ohappy] l CP2 そ して ( 3 4)千 ( 35)のような直接話法構文の三次元派生構造は,岩田 ( 1 9 9 8:5 4)に したが って ( 36)の ように略記 されるが,英語の文副詞,論評節,非制限的副詞節,あるいは非制限 的関係詞節 を含む事例の三次元構造の場合 と同 じく,PF 部門で岩 田 ( 1 9 9 8:5 5)で提案 され た ( 3 7)の規約 にしたが って直線化 され,その結果,本稿 (2)の 6つの形式のいずれかが最 終的に生成 される。 ` 3 6)a. 巳 [ : E Tl :0 . h , Ti Py , = ] 】 は 。, α,l T . l T, T ,l vs id]T a r .T.lT, Pt ,, T ,Ma" lT 心 t vt . Ⅲ". b・ rlIam s ohappy] . 」 【 c F 2lTPMary,l rT l T , POp. ( または pr o . ) l T ,t ,l T ,l nl vs ai d]T r 日v pt vt l 】 ] ] ] ] ] ] 1 2 ) ( ( 37 ) 直線化規約 :次の構造 において,A. の構成素 と A2 を任意の順で解釈せ よ。 r " A. 直接話法構文の生成 に関 してこの三次元分析 を仮定すれば,以下のような利点 と帰結が得 ら 2 7)の ( i )で Co l l i nsand れる。 まず,本節の分析では,伝達節の移動 は仮定 されないので,( Br n ai gan( 1 997)と Co l l nS( i 1 997)の分析 に対 して指摘 された問題点は生 じない。次 に,本稿 の第 2節で示 された伝達節 と被伝達部が相互 に遊離 ・独立 しているとい う英語の直接話法構文 に関 して観察 される特徴 は,本節の分析では自然 に説明されるOす なわち,本節の分析 ( 例え ば ( 3 3) )では,被伝達部 と伝達節 は構造上,異 なる次元 に位置す る要素であ り,伝達節 は論 3 3)の 評節や文副詞が生成 されるの と同 じ構造上の位置 に生成 され,伝達節 となる例 えば ( CzE h 弧はルー トS( r o o ts )であるので,( 2 7)の ( i i )の問題点 を生み出す ことな く英語の直接 1 2 天 理 大 学 学 報 話法構文 の特徴 を説明で きる。 さらに,直接 話法構文 に対 す る三次元分析 を仮定す れば,直接 話法構文 と他の 同様 な特徴 を持つ表現 ( 例 えば,英語 の文副詞 ,論評節 ,非制 限的副詞節 ,あ ( 1 3 ) るい は非制 限的関係詞節 を含 む表現) との類似性 も説明で きる。 5.ま と め 本稿 では,英語 の直接話法構文 に関 して以下 に示 した ような考察 を した。 ( 38) ( i )英語 の直接話法構文 の被伝達部 と伝達節 は互 い に遊離 ・独 立 してい る。 ( i i )直接 話法構 文 に関す る生成文 法 の先行研 究 は,その構 造 ない し生 成 方 法 に関す る仮説 において不備が あ る。 ( i i i )英語 の直接 話法構文 に対 して岩 田 ( 1 998) の三次元 分析 を仮 定す る こ とに よっ て上記 ( i i ) の不備 は生 じない。 さらに, この仮定 に よって,直接 話法構 文 と他 の 構文 ( つ ま り英語 の文副詞,論評節 ,非制 限的副詞節,あ るい は非制 限的関係 詞節 を含む表硯 ) との類似性 お よび平行性 が捉 え られ る とい う好 ま しい帰結が得 られる。 注 ,( l l )と ( 2a)の例文の許容性および例文 (3)における音調 ( i nt o nat i o n)に (1) 本稿の (1) pki ns先生にご教示いただいた。ここに記 して感謝 したい。 ついては天理大学の D.E.Ho (2) 正書法上,被伝達部 と伝達節は普通,句読法 ( punc t uat i on)によって分割 される。 ( Qui r ke t al .( 1 985:1 631 ) ) (3) 論評節は,文の残 りの部分の真理値 ( t mt hval ue)に対する話 し手の不確かさを表 した り, 話 し手の確信 を表すが,この点は直接話法構文の伝達節 ( e.ど." I ti st i mewewe nt , "Is ai d. ) の機能と関連 している。 ( Q山r ke tal .( 1 985:111 4111 5) ) (4) co l l i nsandBr ani gan( 1 997:ll )によると,演算子をコン トロールするという点で被伝達部 o ug h一 移動構文の母型主語 ( mat r i xs ub j e c t )と同 じ役割を果た している。 はt ( i )a.Kdsar ehar dl c p0. LqpPRO t oi g no r et . ] ] b.m atc anwedo? "[c p Ol [ 吋Pr e pe at e dGabr ie l l et . ] ] ( i bi d. ) (5) 構成素構造 を変えないということは,例 えば ( 1 4)について言えば 【 ヮo fc o ur s e 】は最上位の Sに支配 されたままということである。なお,構成素構造 を変える分析 として Ro s s( 1 973)と Emo nds( 1 976;1 979)がある。 (6) 伝達節における主語 と動詞の順番の問題 を談話構造的 ( di s c o ur s e s t mc t ur al ) な視点から考 1 9 8 5)がある。 察 したもの として福地 ( (7) さらに,本稿の後述の ( 31 )が示 しているように,直接話法構文の伝達節 は被伝達部 にある l l i nsandBr ani ga n( 1 997) ,Co l l i ns( 1 997)お 程度従属 している要素であるが,このことを Co よび Gyo da( 1 999)の分析では示す ことはで きないと考えられる。 (8) さらに,Co l l i ns( 1 9 9 7)の問題点は qyo da( 1 999:§2.1.2)と小泉 ( 1 9 9 9:8 5)で指摘 さ れている。 (9) (2) の 6つの形式の間で,被伝達部 と伝達節の独立性 の度合いには差がある。例 えば,伝 2d)と ( 2f )の被伝達部 達節が文中あるいは文尾にあ り,伝達節の主語 と動詞が倒置 している ( と伝達節の独立性は,倒置 していない ( 2C )と ( 2e )の形式の被伝達部 と伝達節の独立性 より高 いと考えられる。同様に,伝達節が文中あるいは文尾にある形式の被伝達部 と伝達節の独立性 2a)と ( 2 b)の形式の被伝達部 と伝達節の独立性 より高いと考えられ は,伝達節が文頭 にある ( 1 3 直接 話 法構 文 につ い て るO ( c f .Qui r ke tal .( 1 985:1 0231 024) ) ( 1 0) 本稿の 目的は,第 1節で述べ た ように,英語の直接話法構文が どの ように生成 され る と仮定 3 4) と ( 3 5)の構造 にお す ることが よ り適当であるか を考察する ことであ り,例 えば以下の ( の厳密 な内部構造が どの ような ものであるか ( 例 えば ( 3 4) と ( 3 5)の CP2 内の V の ける CP2 補部 はいか なる ものであ るか な ど),そ してそ こに厳密 には どの ような操 作 が適用 され るか l l i ns( 1 997)による ( 1 9) と ( 2 2)の操作が適切であるのか どうか など) について ( 例 えば Co 1 ユ) を参照。 は本稿 では議論の対象 と しない。但 し,本稿の注 ( ( l l ) 被伝達部の名詞 ( 句)性 については次の例 を参照。 i )a.Hes ai d," She ' she r e. " ( b.Hes ai di t/比at/s o me t hi ng. C .Whatdi dhes a y? ( Munr o( 1 982:305) ) ただ し,直接話法構文の伝達節の動詞 と被伝達部 との統語的関係が通常 の他動詞 とその直接 目 nr o( 1 982)によって指摘 されている。 的語 との統語的関係 とは異なることが Mu ( 1 2) ただ し,岩 田 ( 1 9 9 8:第 2章の注 ( 1 6)) を参照。 ( 1 3) 本稿の注 ( 1 ユ)の ( i ) と次 の事例 は,本稿の ( 2a)の形式の直接話法構文では被伝達部 と伝 達節 の相互の独立性 が必ず しも高 くない ことを示唆 しているが,第 2節 で示 した この構文の特 2a)の形式 も三次元構造 を持つ と仮定 してお く。 徴 か ら本稿 では ( i )a.Do r o hys t ai d," Mymo he t r ' so nt hepho ne. " ( o t hys ai dwas` M̀ymo t her ' so nt hepho ne. " b.WhatDor ( Qui r ke tal .( 1 985:1 022) ) 参 考 文 献 荒木一雄 ・安井稔. ( 梶) ( 1 9 9 2)『 現代英文法辞典 j .三省堂. Co l l i ns ,C.( 1 997)Lo c alEc o no T n y.TheMI TPr e s s ,Cambr idge,Mas s ac hus e t t s . Co l l i ns ,C,a n dP.Br ni a ga n ( 1 997)" Quo t at i veI nve r s i o n, ' ' Nat uT ・ alLan gua geandLi n gui s t i cThe y1 5:1 41. o T Emo nds ,a.E.( 1 976)A TT L anS F o T ・ mat i o nalAppT ・ O aC ht oEn gl i s hSynt ax.Ac ade mi cPr e s s ,Ne w Yo r k. 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