藍野⼤学中央研究施設開設記念シンポジウム 平成28年6⽉17⽇(⾦) 開始︓午後4時25分 会場︓A102 教室 開会のあいさつ 武⽥雅俊 学⻑ 1. 学科だより・・・各学科の研究紹介と中央研究施設とのかかわり (4:28〜4:53) ① 看護学科 波多野浩道 学科⻑ ② 理学療法学科 ⻄村敦 学科⻑ ③ 作業療法学科 ⻑辻永喜 学科⻑ ④ 臨床⼯学科 外池光雄 学科⻑ 2. 基調講演 (4:53〜5:25) 脊髄損傷における細胞移植の問題点 井出千束 施設⻑ 3. 中央研究施設からの発信 (5:25〜5:38) ① ⾻髄間質細胞が分泌する神経再⽣因⼦の解析 中野法彦 准教授 ② グリア細胞機能調節を介した脊髄再⽣メカニズムの解明 兼清健志 講師 4. 平成 28 年度 科研費採択研究の紹介 (5:38〜6:22) ① ピンクで転倒予防 本多容⼦ 教授 ② 前頭側頭型認知症の分⼦病態 武⽥雅俊 学⻑ ③ 無細胞液性因⼦による損傷脊髄の再⽣の促進 ̶臨床応⽤を⽬指して̶ 井出千束 教授 ④ 効果的なスキル学習を実現するための課題難易度について 酒井浩 准教授 ⑤ 動脈機能の改善を⽬的としたストレッチ運動プログラムの開発 ⼤和洋輔 助⼿ ⑥ ⽣体信号を⽤いたストレス状態の客観評価 林拓世 講師 ⑦ 単軸引張による⾚⾎球変形能の測定 郡慎平 講師 閉会の辞 菅⽥勝也 副学⻑ ------------------------------------------------------------------------------ 懇親会 AINOPIA 1階 フーコバーナ にて シンポジウム終了次第 基調講演 グリア細胞機能調節を介した脊髄再生メカニズムの解明 兼清健志 脊髄損傷モデルラットを用いたこれまでの研究から、神経再 脊髄損傷における細胞移植の問題点 井出千束 生にはニューロン自身のみならず、その周辺のグリア細胞がダ 再生研では骨髄間質細胞を中心とした細胞移植による脊髄損 イナミックに相互作用することが重要であることが示唆され 傷の治療法の開発を目指してきたので、まずその概要をお話し た。そこで本研究では、神経再生を促すことがわかっている骨 したい。 髄間質細胞が各種グリア細胞に与える影響を調べ、神経再生時 脊髄損傷で機能が回復しないのは、脊髄に神経再生のための におけるグリア細胞の役割を明らかにすることで、グリア細胞 環境がないためで、細胞移植によって、脊髄組織が修復され、 の機能調節を介した神経再生治療の新たな方法を開発するこ 再生軸索の足場がつくられ、神経再生が促進されるであろうと とを目指す。 一般に信じられてきた。 しかし、骨髄間質細胞(あるいは骨髄単核細胞)の移植では、 細胞は移植後1−3週で消失してしまう。それにも拘らず動物 の歩行は改善し、損傷部は修復され、無数の再生軸索が伸びる。 この事実は、骨髄間質細胞から何らかの有効因子が分泌されて いることを示唆する。実際、骨髄間質細胞の培養上清を脊髄損 傷のラットの髄液内に投与すると、細胞移植と同じ組織修復・ 平成 28 年度 科研費採択研究の紹介 歩行改善の効果が得られる。これは脊髄に内在性の再生能があ ることを示す。 これに対して、未分化な幼若細胞である神経幹細胞の移植で は様子が異なる。例えば、iPS 由来の神経幹細胞の移植では、 認知症の高齢者に対する色彩を用いた転倒予防策の検証 移植細胞は分化・増殖し、無数の突起を伸長させ、損傷部を修 藍野大学医療保健学部看護学科 本多容子 復するかの様に見えるが、必ずしも歩行の改善がみられないこ 本研究は、平成 25~27 年度挑戦的萌芽研究「入院中の認知 とが問題である。また、神経幹細胞の分化、増殖、突起伸長と 症高齢者の転倒予防をめざした病室内の色彩環境の検証」の発 いった性質は、適度なレベルに納まる保証がない、つまり制御 展的研究である。認知症の高齢者は自ら危険回避行動を取るこ が効かなくなる恐れがあり、臨床的に問題が大きい。 とが難しく、非認知症の高齢者よりも転倒率が高いことが指摘 骨髄間質細胞とは別の神経系の脈絡叢上皮細胞の移植でも、 されている。そこで、認知症の高齢者のための新たな転倒予防 やはり細胞は移植後暫くして消失するが、脊髄の修復・歩行改 策として、病棟の色彩環境に着目した。本研究は、実際に認知 善をもたらす。実際、脈絡叢上皮細胞の培養上清は軸索伸長の 症の高齢者が入院している病棟で、手すりやベッド柵に鮮やか 効果を示す。液性因子によって脊髄の内在性再生能が賦活され な着色を施すことで、転倒率や転倒状況が変化するか否かを調 る現象は、基礎的・臨床的に重要である。液性因子の同定とそ 査し、色彩を用いた転倒予防の実用化を探ることを目的として の応用が今後の課題である。 いる。 家族性前頭側頭型認知症の病態機序におけるアポトーシス関 連蛋白質の関与 中央研究施設からの発信 武田雅俊、田中稔久、森原剛史、森康治、兼清健志、井出千束 タウ、TDP-43、FUS、ジペプチドリピート蛋白等が関与す る前頭側頭型認知症の病態機序の詳細は未解明のままである。 骨髄間質細胞が分泌する神経再生因子の解析 中央研究施設 中野法彦 我々は以前より内因性アポトーシス抑性因子 XIAP (X-linked 本学旧再生医療研究所において、われわれは脊髄損傷に対し inhibitor to apoptosis protein)とタウ蛋白との相互作用を検討し て骨髄間質細胞を用いた治療が有効であることが明らかにし てきた。本研究では、主に C9orf72 におけるイントロン内 6 塩 てきた。そのメカニズムとして、骨髄間質細胞が分泌する因子 基リピート(GGGCC)の延長によって生じるジペプチドリピー が脊髄損傷の修復に関わっていると考えている。そこで、骨髄 ト蛋白と内因性アポトーシス抑性因子との相互作用を検討し、 間質細胞の培養上清に含まれている神経再生因子の解析を行 異常蓄積蛋白の神経細胞内蓄積と神経細胞死誘導のメカニズ ってきた。これまでにいくつかの因子を明らかにしてきたが、 ムを解明することを目的とする。本研究の成果は、疾患の新た 現在それらとは異なる主要な活性を担う有効因子の精製・同定 な下位分類、治療法、診断法の開発に寄与することが期待され を進めている。 る。 1 Circulation, 2000)。しかしながら、中高齢者や生活習慣病を有 無細胞性因子による損傷脊髄の再生の促進 ― 臨床応用を目指して ― する者が運動を実施する場合、開始初期に急な有酸素性運動の 井出千束 導入は、膝などの関節への負担や運動中の安全面などの観点か 骨髄間質(単核)細胞や脈絡叢上皮細胞の移植実験から、移植 ら実施継続が困難になるケースが多い。そのため、中高齢者や 細胞から分泌される液性因子が脊髄の再性能を賦活している 生活習慣病を有する者が運動開始初期に安全かつ気軽に導入 ことが明らかとなった。この液性成分を骨髄間質細胞の培養上 でき、かつ動脈硬化性疾患発症リスクに対して効果のある運動 清から分離・同定する。 プログラムを提供することが重要であると考えられる。そこで 培養上清を種々のカラムで分画し、培養海馬ニューロンでの突 我々は、低強度運動であるストレッチ運動に着目し、動脈硬化 起伸長促進効果を指標に bioassay して、活性を有する分画を 度の改善に効果的なストレッチ運動プログラムの開発を目指 判別する。活性ありと判定された分画から有効因子を分離して、 している。 臨床応用に供する。(共同研究者:中野法彦准教授、兼清健志 講師)。 生体信号を用いたストレス状態の客観評価 林拓世 効果的なスキル学習を実現するための課題難易度に関する研 本研究では,健常時における日常性ストレスに伴う神経系・内 究 分泌系・免疫系に基づく生体適応反応と回復過程の定量評価に 作業療法学科 酒井 浩 より,心の健康状態把握を目的とする.具体的には,健常者を 高齢者,認知症および高次脳機能障害者における日常生活上 対象に情動及び情報利用に関連したストレスを付与した際の の転倒やミスには Working Memory Network とその中枢であ 脳波,心電図,脈波,生体試料の計測と,心理学的検査として る背外側前頭前野(DLPFC)が関係すると考えられている。 対象の気質や急性及び慢性ストレス状況の把握を行い,さらに また,脳内における知覚処理情報は角回周辺領域によって統 受動的及び能動的回復措置に伴うストレス状態からの回復過 合的に監視されると考えられており,DLPFC と角回周辺領域 程評価を行う. の相互連絡が認知的行動制御の基盤システムを構成している。 このシステムはスキル学習においても大脳基底核,小脳,海 単軸引張による赤球変形能の測定 馬といった領域と連携しながら重要な役割を担っている。そ 臨床工学科 のため,認知リハビリテーションでは,前述の問題を予防す るためには DLPFC の機能維持向上が重要視され,我々も 郡慎平 腎不全などにより人工透析をしなければならない患者は年々 DLPFC と角回周辺を標的部位とし,課題難易度とこれらの領 増加傾向にあり、このような患者は 1 回あたり 5 時間程度で週 域の賦活度との関係を検討してきた。 2,3 回の間隔で透析を行う。血液透析装置については、溶血に しかし近年,脳内には,DLPFC を含む Working Memory ネ 関する研究は数多くなされる一方、赤血球変形能力に関しての ットワークのみならず,少なくとも3つの主要なネットワー 評価はほとんどなされていない。そこで本研究では、透析後の クが存在することが明らかとなった。これらは中央実行ネッ 赤血球に対して顕微鏡観察下で単軸引張実験を行うことで、人 トワーク(CEN),ディフォルトモードネットワーク(DMN), 工透析によりその変形能力がどのように変化するかについて 顕著性ネットワーク(SN)と呼ばれ,DLPFC は CEN に含ま 定量評価する。 れると想定されている。これまで DLPFC を標的とした検討 が行われてきたが,DMN や SN を含めた検討は非常に少ない。 本研究では課題難易度と脳内賦活について CEN,DMN,SN の相対的変化を算出することで,もっとも学習効率を高めら れる難易度設定を明らかにする。 これらの研究には MRI 装置が必須であるが,今後は近赤外 線トポグラフィー(NIRS)を使った展開も検討しており,中 央研究棟における実験スペース確保や動物実験の側面からの 共同研究体制構築が今後の課題と言える。 動脈機能の改善を目的とした運動プログラムの開発 藍野大学医療保健学部理学療法学科 助手 大和洋輔 「ヒトは血管とともに老いる」と言われるように、中高齢期 から動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患)などの発症 リスクが増加する。動脈硬化性疾患発症リスクの改善には有酸 素 性 運 動 ト レ ー ニ ン グ が 有 効 で あ る ( Tanaka H., et al. 2
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