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更新日:2016/6/24
調査部:田村 康昌
天然ガス・LNG に関する最新動向
(各社ホームページ、各種報道、他)
○2015 年の世界の LNG 取引量は、2.45 億トンとなり、2014 年度と比べて 2.5%の増加となっ
た。4 年以下の短期・スポット取引については全体の 28%となり、2014 年度に比べて量・割
合ともに若干の減少となっている。
○ 世界の LNG 生産能力は大幅拡大の局面を迎えており、2016 年以降操業開始が予定されるプ
ロジェクトの合計は、約 1.4 億トンに達する。これらの多くは、豪州(4,500 万トン/年)、米
国(6,350 万トン/年)におけるものである。
○ 2014 年後半以降の油価下落に伴う財務状況の悪化等により、投資計画の延期・中止を表明す
る企業も現れている。今後も、短中期的には生産能力の過剰が見込まれることもあり、まだ投
資決定が行われていないの LNG プロジェクトの実現性については不透明な状況となってい
る。
○ 豪州では 2015 年以降に GLNG、APLNG、Gorgon LNG が相次いで操業を開始した。また、
Wheatstone LNG、Ichthys LNG、Prelude FLNG といった、いずれも日本企業が関与する 3
件のプロジェクトが建設中となっており、2017 年以降の操業開始を予定している。
○ 米国では、現在、5 件のプロジェクトの建設が進んでいる。Sabine Pass LNG は、2016 年 2
月に、初カーゴを出荷し、米国本土からの LNG 輸出がついに開始された。
○ 2020 年時点では年間の需要として 3 億トンから 4 億トン、
2030 年時点では 4 億トンから 5.7
億トンとの見通しとなっており、現在、建設中の LNG 液化基地の生産能力(1.4 億トン)を
考慮すると、2020 年代初頭の短中期的には充分な供給力があると考えられる。
○ 2016 年 5 月の日本向け LNG 価格(速報ベース)は、5.9 ドル/MMBtu となり、2005 年以来
の安値水準となっている。日本向け LNG 輸入量の大半を占める長期契約においては、石油価
格連動方式による価格決定が主流であり、2015 年度の原油価格の下落に伴い、実際の輸入価
格への反映までの数ヶ月のタイムラグは生じるものの、日本向け LNG 輸入価格も低下した。
○ 日本向けの 2016 年 5 月の入着ベースのスポット価格は、4.3 ドル/MMBtu と、経済産業省が
2014 年 4 月以降公表を開始して以降の、最安値を更新した。気温要因等の一次的な需要増は
あるものの、豪州・米国・マレーシア等における新規 LNG 基地の操業開始により、短期的に
は、スポット価格の大幅な上昇は考えにくい
○ 2016 年 6 月末には、拡張パナマ運河が運用開始予定。北米東海岸からの日本向け輸送に際し
て、スエズ運河又は喜望峰まわりとくらべて大幅な短縮となる。仕向け地制限のない米国産
LNG については、輸送の最適化等のための地域間 SWAP 等の検討も進んでいる。
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1. LNG の取引量推移
(1) 世界の LNG 取引量
国際 LNG 輸入者協会(GIIGNL)によると、2015 年の世界の LNG 取引は、2.45 億トンとな
り、2014 年度と比べて 2.5%の増加となった。
2015 年にはエジプト、ヨルダン、パキスタンが新たな LNG 輸入国となり、日本・韓国等の需
要減を吸収することとなった。また、ポーランドも、2015 年 12 月に試運転カーゴを受入れ、新た
な輸入国として 2016 年には商業運転の開始が予定されている。
4 年以下の短期・スポット取引については全体の 28%となり、2014 年度とくらべて、量・割合と
もに若干の減少となっている。なお、今年度から公表された契約から 90 日以内に引き渡されたス
ポット取引については全取引の約 15%と推定されている。
出所:GIIGNL
図 1 LNG 取引量推移(世界)
(2)日本の LNG 輸入量
日本の LNG 輸入量は、原発の再稼動、省エネの進展、再生可能エネルギーの普及等による需要
減に伴い、全体の輸入数量は 2014 年の 89 百万トンかから、2015 年度は 85 百万トンとなり、約
4.5%の減少となった。4 年以下の短期・スポットによる取引は、2014 年度の 26 百万トン(全輸入
量の 29%)から、2015 年には 21 百万トン(全輸入量の 24%)に減少している。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所:GIIGNL
図 2 LNG 輸入量推移(日本)
2.LNG の生産能力の見通し
(1)新規 LNG プロジェクトの進捗と見通し
現在、世界では LNG 生産能力は大幅拡大の局面を迎えており、2016 年以降に操業開始が予定
される建設中のプロジェクトの合計は、約 1.4 億トンに達する。これらの多くは、豪州(約 4,500
万トン/年)、米国(6,350 万トン/年)におけるものである。(図 3)
なお、上記建設中のプロジェクトの他にも、北米地域(米国・カナダ)、豪州、東アフリカ(モ
ザンビーク)等では、計画中・提案中のプロジェクトが多数存在する。しかしながら、2014 年後
半以降の油価下落に伴い、財務状況が悪化したプロジェクト参加企業も多く、Arrow Energy LNG
(豪州)、Browse LNG(豪州)、Oregon LNG(米国)など、投資計画の延期・中止を表明する
プロジェクトも現れている。
大規模な投資を必要とする LNG プロジェクトは、通常、その生産能力の大半について、顧客(売
り先)を確保してから、最終投資決定(FID)がなされる。しかしながら、短中期的に生産能力が
過剰になる状況であり、また、これまで需要の多くを担ってきた日本買主は将来の需要見通しが不
確実(原発の再稼動、再生可能エネルギーの普及、国内市場における自由化の動向)な状況である
こともあり、計画中のプロジェクトの実現性については不透明な状況となっている。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表 1 2016 年以降操業開始済み・稼動が予定される主な LNG プロジェクト
国
生産開始予定
生産能力(万 t/y)
AP LNG
オーストラリア
2016
900
Gorgon LNG
オーストラリア
2016
1560
アメリカ
2016~2019
2,250(→2,700)
MLNG Train9
マレーシア
2016 予定
360
Petronas Floating LNG
マレーシア
2016 予定
120
Wheatstone LNG
オーストラリア
2017 予定
890
Ichthys LNG
オーストラリア
2017 予定
840
Prelude FLNG
オーストラリア
2017 予定
360
CovePoint LNG
アメリカ
2017 予定
525
ロシア
2017 予定
1650
Cameron LNG
アメリカ
2018 予定
1350
Freeport LNG
アメリカ
2018 予定
1320
Corpus Christi LNG
アメリカ
2018 予定
900(→1,350)
プロジェクト名
Sabine Pass LNG
Yamal LNG
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図 3 地域別の LNG 生産開始見通し
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(2)豪州における LNG プロジェクトの進捗
豪州では 2015 年以降に GLNG、APLNG、Gorgon LNG が相次いで操業を開始した。いずれ
も、複数の液化トレインを有する大型プロジェクトであり、2017 年頃まで段階的に生産量が増加
する予定。また、Wheatstone LNG、Ichthys LNG、Prelude FLNG、いずれも日本企業が関与す
る 3 件のプロジェクトが建設中となっており、2017 年以降の操業開始を予定している。
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図 4 豪州の主な LNG プロジェクト
① 2015 年下期以降に操業開始した豪州 LNG 基地
○ G LNG
・
・
・
・
参画企業:Santos 30%、PETRONAS 27.5%、Total 27.5%、KOGAS 15%
液化能力:780 万トン/年(390 万トン×2 トレイン)
CBM プロジェクト
2015 年 10 月に初カーゴ出荷
○ Australia Pacific LNG(AP LNG)
・ 参画企業:Origin Energy Limited 37.5%,ConocoPhillips 37.5%,Sinopec 25%
・ 液化能力:900 万トン/年(450 万トン×2 トレイン)
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
・ CBM プロジェクト
・ 2016 年 1 月初カーゴ出荷
○ Gorgon LNG
・ 参画企業:Chevron 47.3%、ExxonMobil 25%、Shell 25%、大阪ガス 1.25%、東京ガス 1%、
中部電力 0.417%
・ 液化能力:1560 万トン/年(520 万トン/年×3 トレイン)
・ 2016 年 3 月に初カーゴ出荷
② 現在建設中の LNG 基地
○ Wheatstone LNG
・ 参画企業:Chevron 64.14%、KUFPEC 13.4%、Woodside 13%、PE Wheatstone 8%、
九州電力 1.46%
・ 液化能力:890 万トン/年(445 万トン/年×2 トレイン)(2500 万トン/年まで拡張可能)
・ 2017 年生産開始予定
○ Ichthys LNG
・ 参画企業:INPEX 62.245%、Total 30%、CPC 2.625%、東京ガス 1.575%、大阪ガス 1.2%、
関西電力 1.2%、中部電力 0.735%、東邦ガス:0.42%
・ 液化能力:840 万トン/年(420 万トン/年×2 トレイン)
・ 2017 年生産開始予定
○Prelude FLNG
・
・
・
・
参画企業:Shell 67.5%、Inpex 17.5%、CPC 5%、Kogas 10%
液化能力:360 万トン/年(LNG)
(130 万トン/年(コンデンセート)、40 万トン/年(LPG))
2017 年生産開始予定
現在韓国サムソン重工(SHI)の造船所にて建造中
図 5 Prelude FLNG のイメージ図
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出所:Shell
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(3)北米における LNG プロジェクトの進捗
米国では、現在、5 件のプロジェクトの建設が進んでいる。Sabine Pass LNG は、2016 年 2 月
に、初カーゴを出荷し、米国本土からの LNG 輸出がついに開始された。
また、カナダにおいては、Pacifc Northwest LNG が 2015 年 7 月に条件付 FID を行っている。
既に、2015 年 7 月 BC 州議会からのプロジェクト開発契約(Project Development Agreement)
が承認されており、カナダ連邦政府による環境影響評価の承認がなされれば、カナダ初の LNG 輸
出プロジェクトとして動き出すこととなる。
なお、現在建設中の北米産 LNG の合計は、6,350 万トンに達し、このうち、日本企業(電力・
ガス・メーカー)が予定する引取量は、約 1,400 万トンとなる。これまでの一般的なLNGの事業
形態(上流権益保有者がLNG事業を行い販売する)と異なり、北米ではフィードガスを調達した
企業が液化事業者(上流権益保有者以外)に液化サービスを委託する形式となる。仕向け地の制約
も基本的には課されておらず、需給に応じて短期・スポット市場への流入も見込まれる。実際に、
日本企業・インド Gail 等のアジアの買主が、一定量を欧州向けに販売し、同数量を日本・アジア
市場で引き取る等、必ずしも全量を日本向けに輸送するのではなく、契約の柔軟性を活かした様々
な取り組みが進んでいる。
図 6 米国の主な LNG プロジェクト
–7–
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
① 操業開始済み LNG 液化基地
○SabinePass LNG(アメリカ)
・ 参画企業:Cheniere
・ 液化能力:2,700 万トン/年(450 万トン/年×6 トレイン)
※ 第 6 トレイン(450 万トン/年)は未着工
・ 2016 年 2 月初カーゴ出荷
・ 2017~19 年第 3~第 5 トレイン生産開始予定
② 建設中 LNG 基地
○ CovePoint LNG(アメリカ):
・ 参画企業:Dominion Cove Point LNG
・ 液化能力:525 万トン/年
・ 2017 年生産開始予定
○ Freeport LNG(アメリカ):
・
・
・
・
参画企業:Freeport LNG Investment、ZHA FLNG、
Texas LNG Holdings、大阪ガス
液化能力:1320 万トン/年(440 万トン/年×3 トレイン) ※第 4 トレイン拡張計画あり
2018 年生産開始予定
○ Cameron LNG(アメリカ):
・ 参画企業:Sempra 50.2%、GDF Suez 16.6%、JLI(三菱商事、日本郵船) 16.6%
三井物産 16.6%
・ 液化能力:1350 万トン/年(450 万トン/年×3 トレイン)※第 4、5 トレイン拡張計画あり
・ 2018 年生産開始予定
○ Corpus Christi LNG(アメリカ):
・
・
・
・
参画企業:Cheniere
液化能力:1350 万トン/年(450 万トン/年×3 トレイン)
第 3 トレイン未着工。第 4、5 トレイン拡張計画あり
2018 年生産開始予定
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表 2 日本企業の米国産 LNG の調達
液化加工契約保持者(売主)
(基地事業者とは異なる)
LNG 引取者(買主)
大阪ガス 220 万 t/年(2018 年から 20 年)
中部電力 220 万 t/年(2018 年から 20 年)
Freeport LNG
東芝 220 万 t/年(2019 年から 20 年)
東京電力 120 万 t/年(ポートフォリオ供給)
BP 440 万トン/年
関西電力 50 万 t/年(ポートフォリオ供給)
東京電力 80 万 t/年(2018 年から 20 年)
東北電力 30 万 t/年(2022 年から 16 年)
三菱商事 400 万 t/年
(2018 年から 20 年)
東京ガス 20 万 t/年(2022 年から 16 年)
東邦ガス 20 万 t/年(2019 年から 19 年)
東京電力 40 万 t/年(2018 年から 20 年)
Cameron LNG
東邦ガス 30 万 t/年(2018 年から 20 年)
三井物産 400 万 t/年
(2018 年から 20 年)
関西電力 40 万 t/年(2018 年から 20 年)
東京ガス 52 万 t/年(2020 年から 20 年)
Cove
LNG
Engie 400 万 t/年(2018 年か
東北電力 27 万 t(2018 年から 20 年)
ら 20 年)
住友商事・東京ガス 230 万 t/ 東京ガス 140 万 t/年(2017 年から 20 年)
Point
年
関西電力 80 万 t/年(2017 年から 20 年)
(2017 年から 20 年)
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
③ 条件付 FID 済 LNG 液化基地計画(カナダ)
○ Pacific North West LNG
・ 参画企業:Petronas 62%、Sinopec 15%、JAPEX 10%、Indian Oil Corp. 10%、
Petroleum BRUNEI 3%
・ 液化能力:1200 万トン/年(600 万トン/年×2 トレイン)
・ 2015 年 6 月 カナダ初 (条件付※)最終投資決定
※ 2015 年 7 月 BC 州議会がプロジェクト開発契約 (Project Development Agreement)承
認済み。カナダ連邦政府による環境影響評価 の承認待ち。
・ 2019 年 操業開始予定を目指す
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(5)世界の LNG 生産能力の推移と見通し
世界の LNG 生産能力は、2015 年末で約 3 億トン/年となっている。今後、現在建設中のプロジ
ェクトが順調に操業を開始すれば、2020 年までには、オーストラリアがカタールを抜き世界最大
の生産国となり、オーストラリア(8,600 万トン)、カタール(7,700 万トン/年)、米国(約 7000
万トン/年)の 3 国の合計で 2.3 億トンとなり、世界全体(約 4.5 億トン)の LNG 生産能力の半分
を超える数量となる見通しとなっている。
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図 7 地域別の LNG 生産能力推移
3.LNG の需要見通し
(1)新規 LNG 受入れ基地の稼動見通し
アジア、特に中国を中心に、LNG 受入れ基地の建設が進んでいる。新興国等では急増するエネ
ルギー需要に対応するため、陸上 LNG 受入基地に代わり、初期コスト低減、建設期間の短縮が可
能な、FSRU(浮体式 LNG 貯蔵・再ガス化設備)の導入も進んでいる。2015 年にはエジプト、ヨ
ルダン、パキスタンが新たな LNG 輸入国となったが、いずれも、FSRU による、受入れ基地であ
った。
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出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
図 8 地域別の LNG 受入れ基地稼動見通し
(2)LNG 需要見通し(日本)
2015 年 7 月に発表された、経済産業省長期エネルギー需給見通しによると、天然ガスは今後役
割が拡大する重要なエネルギー源と位置付けられ、2030 年の一次エネルギーのうち 19%(6,500
万トン)が想定されている。原子力発電所の再稼動、省エネの進展を前提として、2015 年の日本
の輸入実績にくらべて減少となるが、LNG 価格や将来のエネルギー・電源構成によっては、他の
エネルギーを補う燃料となる可能性も残る。
出所:経済産業省長期エネルギー需給見通
図 5 長期エネルギー需給見通し
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(3)LNG 需給見通し(中国)
2015 年は、経済減速、天然ガスの硬直的な統制価格による油価下落後に価格競争力の低下等に
より、天然ガス需要の伸びが抑制され、LNG 輸入は、世界 3 位の輸入国(シェア 8%)ではある
ものの、各種統計により若干の差異はあるが、輸入開始以来初の前年割れとなった。
一方で、大気環境改善、CO2 排出抑制政策に伴い、中長期的な天然ガスの潜在需要は高く、景気
動向、ロシアからのパイプラインを通じた天然ガス輸入の進展、天然ガスの統制価格などの不確実
性は残るものの、今後の需要増を担う見通しとなる。
7000
億m3
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
2013年
2020年
2025年
生産
図 6 中国の天然ガス消費量推移(2006~2015)
2030年
2035年
2040年
需要
図 7 中国の天然ガス需要見通し(IEA)
(4)世界の LNG 需要見通し
図 1 に、世界の LNG 需要推移と今後の見通しを示す。
現在世界では、年間約 2.45 億トンの LNG が取引(需要)されている。天然ガスは中期的に有望
なエネルギー源と期待され、中長期的には需要は堅調に伸びていくと予想され、2020 年時点では
年間の需要として 3 億トンから 4 億トン、2030 年時点では 4 億トンから 5.7 億トン程度との見通
しとなっている。
一方で、現在、建設中の LNG 液化基地の生産能力(1.4 億トン)を考慮すると、2020 年初頭の
短中期的には充分な供給力があると考えられる。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所: IEA Natural Gas Information, 資源エネルギー庁委託調査「アジア・太平洋市場
の天然ガス需給動向調査報告書(2014 年 3 月)」 を基に JOGMEC 作成
図 9 世界のLNG需要見通し
4. 天然ガス・LNG 取引
(1)天然ガス・LNG 価格推移
2016 年 5 月の JLC(速報ベース)は、5.9 ドル/MMBtu と 2005 年以来の安値水準となってい
る。日本向け LNG 輸入量の大半を占める長期契約においては、石油価格連動方式による価格決定
が主流であり、2015 年度の原油価格の下落に伴い、実際の輸入価格への反映までの数ヶ月のタイ
ムラグは生じるものの、日本向け LNG 輸入価格も低下している。
スポット LNG 価格については、豪州の新規プロジェクトからの操業開始・本格稼動、需要面に
ついては、日本・韓国における原発の再稼動、中国における景気減速を受け、2016 年 5 月の入着
ベースのスポット価格は、4.3 ドル/MMBtu と、経済産業省が 2014 年 4 月以降公表を開始して以
降の、最安値を更新した。
2016 年以降も、気温要因等の一次的な需要増はあるものの、豪州・米国・マレーシア等におけ
る新規 LNG 基地の操業開始により、需要の変動を上回る大量の LNG 供給増が続く見込みで、短
期的には、スポット価格の上昇する可能性は低いと考えられる。
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 10 世界の天然ガス・原油価格推移
(2)天然ガス・LNG の価格決定メカニズム
天然ガス・LNG の価格決定メカニズムとしては、産ガス国である米国・イギリスと、天然ガス・
LNG の輸入国から成る欧州大陸部、LNG による輸入を行う北東アジアの大きく3つに大別され
る。(表 3)
欧州大陸部においては、もともとガスは石油製品の競合燃料であり、消費者はガスと石油の価格
優位性のある方を選択することから、石油製品(重油、灯油など)の価格に連動して天然ガスの価
格を決定する方式が出来上がっていた。従来の価格決定方式を維持したいロシアを始めとした売主
側の意向はあるものの、昨今の天然ガス取引市場の拡大や原油価格高騰に伴う天然ガス価格の高騰
に際しての、価格見直し・再交渉といった中、ガス市場価格連動を認める動きも出てきている。
国際ガス連盟(IGU)の調査によれば、EU における天然ガスの取引において、石油価格連動の
取引割合は 2005 年の 78%から 2015 年は 30%に低下し、ハブ価格に連動した取引は、2005 年の
15%から 64%に増加したとされている。
北東アジアにおいては、依然、長期契約を中心に石油価格連動による価格決定方式が主であるが、
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
北米産 LNG の輸出開始に際しては、米国ヘンリーハブ(H/H)価格連動等の指標の多様かが進む
見込みである。また、伊勢志摩サミットにあわせて経済済産業省から発表された LNG 市場戦略に
も示されるように、最大需要地であるアジアの需要に応じた価格指標の確立も、供給安定性に資す
るスポット市場の発達とあわせて。
今後、米国産 LNG の増加に伴い、現在の 3 大需要地における供給源(図 11)のバランスにも
変化が予定される。特に、中国・欧州にパイプラインを通じた天然ガス供給を進めるロシアの動向・
価格戦略次第では大きな影響があり、今後の不確実性として注視する必要がある。
表 3 天然ガス・LNG の価格決定方式
北米
イギリス
大陸欧州
日本・アジア
主な
調達形態
・域内生産
・パイプライン輸入
(一部 LNG)
・域内生産
・パイプライン輸入
・LNG 輸入
・LNG 輸入
主な
取引形態
市場取引
(米:H/H、英:NBP)
(LNG は長期契約)
長期契約・市場取引
(近年は契約期間の短期
化・市場取引が増加)
長期契約
(近年、将来需要の不確
実さから短期も増加傾
向)
価格決定の
指標・因子
・取引時点における天然
ガス需給
(LNG も含む)
・取引時点における石油
製品価格(市場価格を一
部反映も増加傾向)
・契約交渉時点における
情勢(スポット価格、他
燃料価格、他ガス調達源
の開発見通し、など)
・取引時点における原油
価格
・契約交渉時点における
情勢(LNG プロジェクト
の開発見通し(調達開始
時期における LNG 需給見
通し))
備考
-
北米産 LNG(H/H 価格連動)の輸入が順次開始予定
(2016 年以降)
出所:各種情報を基に JOGMEC 作成
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所:IEA Natural Gas Information 2015
図 11 三大天然ガス市場における供給源割合
(3)新たな LNG 輸送航路による取引
① パナマ運河の拡張
2007 年 9 月に着工したパナマ運河の拡張工事は、2016 年 6 月 26 日に開所式が開催され、その
翌日の 6 月 27 日には、日本郵船が運航する LPG 船が第一船として通峡する予定となっている。
当初計画では、1914 年のパナマ運河開通 100 周年にあわせて完成予定であったが、追加工事の費
用負担に関する対立による工事中断等により、完成が遅れていた。
現在、建設中の米国の LNG 液化基地はすべて米国大西洋側に位置することから、アジア向け輸
送には、多くの場合拡張後のパナマ運河を通じた輸送となることが想定されている。なお、新パナ
マ運河の活用により輸送日数は約 20 日(速力 19 ノット)~25 日(速力 15 ノット)となり、スエ
ズ運河経由(片道約 33~42 日)、アフリカの喜望峰経由(片道 35~45 日)と比較して大幅な短
縮が可能となる。
表 4 パナマ運河を通峡可能な最大船型
現行
新運河
運河・閘門の
大きさ
通航可能な
最大船型
運河・閘門の
大きさ
通航可能な最
大船型
全長
305m
294.1m
427m
366m
全幅
33.5m
32.3m
55m
49m
喫水
12.8m
12.04m
18.3m
15.2m
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② ヤマルプロジェクト(北極海航路)
2017 年に予定されれる、ロシア Yamal LNG の起ち上がりに伴い、北極圏航路を使用してのア
ジア向け輸出も計画されている。北極圏航路は、海水温上昇による北極海の氷減少に伴い活用が期
待されてきた航路で、既に、2012 年にはノルウェー産 LNG 等のアジア向け輸送などで実績があ
る。最大氷厚 2.1m の氷海において単独砕氷航行可能なLNG船にて出荷された LNG 船による輸
送を行うものの、冬季についてはやはり海面が凍りに覆われることから、北極圏航路は基本的に夏
季限定となる見込みである。冬季については、Yamal LNG から欧州地域内の港湾まで輸送の後、
通常の LNG 船に積み替えを行い、そこからアジア等各地域に再出荷されることも想定される。
出所:Total、Novatek
図 12 Yamal LNG の輸出ルート
③ 地域間のスワップ取引による最適化
北米からのLNG 輸出が本格化し、
新パナマ運河、
北極海航路等新たな輸送ルート活用が進めば、
今後のアジア向けの LNG 取引ににおける長距離輸送は増加する傾向にある。一方で、特に北米を
中心とした仕向け地制限のない契約に基づき、北米からの欧州向けカーゴと日本・アジア向けカー
ゴの相互交換等、輸送ルート・コストの最適化のための取り組みが進んでいる。
○ 関西電力と仏 ENGIE(旧 GDF スエズ)との協力協定
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
関西電力が北米から購入する LNG を、Engie 社に販売し、原則同量分の LNG を関西電力が
購入

2019 年から原則最低 160 万トン/年(双方合意で増量可)
○JERA から EDF Trading(欧州 LNG 基地向け)に LNG の販売

2018 年 6 月~2 年半、最大 150 万 t/年、欧州ガス価格連動

EDF Trading が指定する欧州域内の LNG 基地での受渡し

販売数量は、売主(JERA)の裁量で調整可能
○ インド Gail の保有する、米国サビンパスカーゴの SWAP 検討

輸送コストを最適化するため、米国での FOB 契約と同量のインドの基地向 DES 契約との
SWAP に関する入札実施

米国-インド、インド-豪州の輸送を比較した場合、10~15 日(往復 20~30 日)の輸送日数を
削減可能
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図 13 アジア向け天然ガス輸送(将来)
5.まとめ
世界の LNG 生産能力は大幅拡大の局面を迎えており、2016 年以降操業開始が予定されるプロ
ジェクトの合計は、約 1.4 億トンに達する。これらの多くは、豪州(4,500 万トン/年)、米国(6,350
万トン/年)におけるものである。一方で、2014 年後半以降の油価下落に伴う財務状況の悪化等に
より、投資計画の延期・中止をを表明する企業も現れている。今後も、短中期的には生産能力の過
剰が見込まれることもあり、計画中の LNG プロジェクトの実現性については不透明な状況となっ
ている。
2016 年 4 月の日本向け LNG 価格(速報ベース)は、6.4 ドル/MMBtu(6/20 過ぎに発表、Web
更新待ち)と 2005 年以来の安値水準となっている。日本向け LNG 輸入量の大半を占める長期契
約においては、石油価格連動方式による価格決定が主流であり、2015 年度の原油価格の下落に伴
い、実際の輸入価格への反映までの数ヶ月のタイムラグは生じるものの、日本向け LNG 輸入価格
も低下した。日本向けの 2016 年 5 月の入着ベースのスポット価格は、4.3 ドル/MMBtu と、経済
産業省が 2014 年 4 月以降公表を開始して以降の、最安値を更新した。気温要因等の一次的な需要
増はあるものの、豪州・米国・マレーシア等における新規 LNG 基地の操業開始により、短期的に
は、スポット価格の大幅な上昇は考えにくい
2016 年 2 月には、米国 Sabine Pass LNG 基地からの LNG が出荷され、また、2016 年 6 月末
には、パナマ運河の拡張工事の工事の完了・本格運用開始が予定されている。従来のアジア向け
LNG の取引では大半を占めていた石油価格連動の LNG 取引から、ヘンリーハブ(HH)価格連動
への多様化、また、仕向け地制限がない LNG の短期・スポット市場への供給により、これまで以
上に LNG 取引における流動性が増すことも考えられる。また、地域間でのカーゴの SWAP 等売
り買主間の協力のもと様々な最適化のための検討が進むことが想定される。今後、米国産 LNG の
増加に際しては、中国・欧州にパイプラインを通じた天然ガス供給を進めるロシアの動向・価格戦
略次第では大きな影響があり、今後の不確実性として注視する必要がある。
以上
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