資料3-2 電子政府に関する 国内外の先進的な取り組み 平成28年6月15日 政府CIO上席補佐官 平本健二 1 概況 現状 公共サービスにおける情報利活用が拡大しており、電子行政やデジタルガバメント と言わないものの社会に有用な関連サービスが次々と登場している。 これらの新サービスは、国際的にも通用するサービスが多数あるものの、国内の 展開にとどまっているものが多い。 今後 誰が提供しているという供給者の視点や従来の電子政府の視点ではなく、 社会全体で役に立つかどうかという生活者や利用者の視点の下で、サービスの全 体像を整理していく必要がある。 2 事例集 本資料は、デジタル技術を活用した今後の行政サービスを検討す る素材とするため、民間によるサービスも含め幅広く事例を収集し ています。 3 デジタルサービス モバイル、衛星画像、3Dプリンタ、AI等の最新技術を政府に積極的に 導入し、サービス向上に活用。 モバイル Safety tips(観光庁) 訪日外国人旅行客、および在住している外国人向けに 災害時に役立つ様々な機能を、英語・中国語(繁・簡)・ 韓国語の4言語で提供。 AR Go雨探知機 XバンドMPレーダーの雨情報をスマホに提供。ARを活用することで、雲 の画像と重ねて表示が可能。 3D 地理院地図3Dデータ(国土地理院) AI 3Dデータを提供することで、3Dプリンタで出力した模型を 基にした防災教育などが可能となった。 AIやロボットの活用 国内では特許審査での活用等、AI活用の検討が始まっている。ロボッ トと組み合わせて案内サービスにも活用。 国外では、調達プロセスでの法令順守確認、コールセンター、医療診 断支援等の特定分野での様々なAI活用が始まっている。 4 デジタルサービス 映像配信 会見やセミナーの配信 大臣会見やセミナーの内容をビデオで配信し、参加でき ない遠方の人にも情報を広く提供。 センサーデータ はなこさん(環境省) センサーで観測した環境データを集約して提供。 民間センサー 自動車の運転データ 埼玉県は、ホンダのデータを活用し、急制動や急ハンドルの情報を基 に、道路の改善や都市計画への反映を実施。 QRコード 自動リンク サイトへのアクセスを容易にするために、様々なサービスでQRコードが 活用されている。 5 サービス改革 利用者の視点で、従来にないサービス改革が拡大中。 Webサイト 熊本県菊池市 情報入手は主に検索で行い、PCよりもモバイルでアクセ スする人が増えていることを受け、検索エンジンとコンテ ンツで構成されるサイトを提供。世界の主流のデザイン である。 国・自治体連携 復旧復興支援DB (復興庁) 利用者の利便性を考え、国と自治体の支援制度情報を 一元的に提供。 生活密着サービス 横浜市金沢区、千葉市 横浜市金沢区の「育なび」では、子供の成長の流れに沿って情報を提供。 千葉市の「ちばレポ」では、街の問題を誰でも簡単に共有できる仕組みを 実現。 メニュー改革 子育てタウン 子育て情報のメニューや情報項目の整理を行い、全国100以上の自治体 にwebやアプリのサービスを提供。子育てタウンを使っている自治体間の 引越しであれば、同じメニューでの情報検索をすることが可能。 6 サービス改革 デジタル申請 コンパス 登山届を適確に管理するために日本山岳ガイド協会が 登山届の管理アプリを開発。長野県や岐阜県等と協定 を結んで運用。 自転車貸出 BayBike(横浜市) 従来のレンタル自転車と異なり、レンタル自転車をITによ り管理し、様々なサイクルポート間での貸し出し、返却が 可能になった。 指紋認証 自動化ゲート(法務省) パスポートと指紋の照合により本人確認を行い,自動的に出入国手続 きを行うことができる。 政府内専門家チーム Digital Immigration(米国) 専門家(GSA 18F)が入管局を支 援し、従来の提供者視点ではなく 利用者視点でシステム開発やアー キテクチャの見直しを実施。93% の利用者が満足するサービスに刷 新。 7 ワンストップサービス 利用者の視点で業務を再検討。行政機関がワンストップでないサービ スは、民間サービスとしてワンストップサービスを実現。 手続き freee 起業にかかわる書式は各行政機関で不統一であるが、支援 ソフトにより、最小の作業で関係書類を一括して作成可能。 1,000社以上の会社が freeeを使って起業。 行政側の縦割りを民間サービスでカバー。 広域情報比較サービス 生活ガイド.com 各自治体における生活のための基本情報を収集し、自治体 間の比較検討ができるサイト。 広域情報提供サービス(委託) さとふる 各自治体のふるさと納税情報を一元的に提供し、利用者に ワンストップサービスを提供。自治体の業務の効率化も実現。 広域情報提供サービス(API) カーリル 全国の図書館が提供する情報を利用者視点で集約し提供。 8 ワンストップサービス 課題別ポータル(農業) 全国農地ナビ データを標準化することで、全国の農地台帳情報を集約 して提供。 課題別ポータル(企業) ミラサポ(中企庁) 中小企業に有用な情報を、制度や調達といった行政機 関からの情報だけでなく、その利用者の事例や、参加者 間のコミュニケーション等、総合的にサポート。 課題別ポータル(人材) JREC-IN 大学、国、民間などの研究者の求人情報を集約し、個人の 希望条件に合わせて配信。 Webサイト Gov.uk、USA.gov 利用者視点で情報提供を一元化。英国 は、府省のサイトを廃止し、政府サイト Gov.ukに一元化。米国は、ワンストップ サイトUSA.govで政府の情報を一元的に 提供。 9 オープンガバメント 参加や協働の取り組みは、国内外ともに参加者の拡大が課題になって いる。 対話 アイディアボックス(経済産業省) ネット上で国民と職員が参加して政策についてのブレー ンストーミングを行う。海外ではTwitterを使った対話など も行われている。 ハッカソン ハッカソン 社会課題を解決するために、課題を持っている人と技術者 が一堂に集まり解決策を探るイベントが、国内外の各地で 開催されている。 協働 地理院地図Github 地理院地図のソース情報をGithub で公開。 クラウドソーシング CrowdMag(米国NOAA) 世界中の地磁気データをクラウドソーシングで収集し、分析に役立て ている。 10 データ利活用 オープンデータの推進の次のステージとしてデータの利活用事例が増 加。利用者本位、きれいなデータ、ビジュアル化が大きな流れである。 官民データ RESAS(地域経済分析 システム)(内閣官房) 地域経済に関連する統計情報や民間が持っているデー タを融合し、地域経済の分析を可能にしたサービス。 分析基盤 地図による小地域分析 (jSTAT MAP)(総務省) 年代別人口等の基本的な統計データをベースに、ユー ザが保有データも重ねて分析できる。商圏分析や施設 配置の最適化の分析が簡単にできる。 専門チームの支援 College scorecard(米国) デジタルガバメントチーム(GSA 18F)と教育省が協力し、入学しやす さ、学費、卒業後の年収等の大学に関するデータを集約し、利用者 視点で提供。 予測 米国Predpol 過去の犯罪に関するビッグデータを分析し、犯罪が起こりそうな場所 や時間帯を予測。警官を配置するなどにより犯罪を予防。 11 ID 2016年1月に開始され、今後の活用が期待されている。 個人 マイナンバー 国民一人一人にマイナンバーを発行し、その情報や公 的個人認証の証明書が入ったカードを発行。 法人 法人番号、法人ポータル 国内全法人400万社に固有の番号を発行。法人番号を利用して政府が保有する各種情報を集約した法人ポータルサイトを検証中。 法人番号開始に伴う業務改革として、法人名へのフリガナ付与や英語名の検討が行われている。 申請方法の見直しや添付書類の削減等による業務効率化も検討されている。 12 ワークスタイル改革 ライフスタイルをベースに、時短勤務等の制度面の工夫、遠隔会議等 の技術面の工夫を組み合わせ、個人に最適な仕組みを提供。 ワークスタイル 佐賀県の改革 全職員に在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル ワーク等を導入。新型インフルエンザ対策等のBCP等を 踏まえ、経営戦略として導入。 テレワーク 米国テレワーク 連邦職員全体にテレワークが定着し、テレワークしている人の46%が月に 2日以上テレワークしている。 法王がワシントンを訪問した日にテレワークを推奨するなど、イベントによ る混雑対策としてもテレワークが推奨されている。 スマート・ワーク 英国The Way we work フレキシブルなワークスタイルを推奨 しており、特にオフィス移転等の時に、 テレビ会議やディスプレイを大量に導 入し、抜本的なオフィス改革と働き方 改革を実施している。 13 相互運用性 相互運用性の確保はデータ駆動社会において社会の基盤であり、行 政機関が率先して取り組むことが国内外の主流。 フレームワーク 欧州EIF (European Interoperability Framework) 紹鴎の相互運用性を確保するために、情報交換のフ レームワークと導入のための参照モデルを体系的に整 備。 語彙 共通語彙基盤 データを正確に交換し相互運 用性を確保する仕組み。氏名、 住所、法人、施設等の社会の 基盤となる語彙を定義。 IoTとも相互運用できる仕組み。 文字 文字情報基盤 氏名や法人を表記するための文字の基盤を整備。法人番号システムの 法人名表記では、正確な表記のための文字とデータ交換用の文字と使 い分ける仕組みを導入している。 ひな形 オープンデータカタログ、ダッシュボード オープンデータに関する十分な知見がなくても導入できる共通語彙基盤 ベースのデータカタログとビジュアル化するツールをフリーで提供。 14 インフラ インフラは、クラウドのような基盤だけではなく、自組織だけでは整備が 困難な共通サービスも検討することが重要。 共通化 自治体クラウド システム費用の低減化及び業務の効率化を図る目的で 「神奈川県町村情報システム共同化推進協議会」(葉山 町、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井 町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原 町、愛川町、清川村)を設置し、住民記録等システム(4 6業務システム)を共同で実現。 このような自治体共同の取り組みが増加。 yahoo公金 広域共通サービス 官公庁オークション 各行政機関が整備するのが難しい公金収集の仕組みや オークションの仕組みを民間サービスとして提供。 情報発信と共有基盤 ソーシャルメディア ソーシャルメディアは、社会の情報流通インフラとなっており、国内 外の行政機関で積極的に活用されている。 また自治体職員間の課題共有と解決策検討のコミュニケーション基 盤としても使われている。 民間クラウド活用 米国FEDRAMP 米国政府では、民間クラウドサービスを安全に使うためにFedRAMPとい う民間クラウド評価の仕組みを持っている。英国も同様に認定の仕組み を持っている。 15 セキュリティ 電子行政の基盤として、統一基準で基盤を整備するとともに、監視 サービスにより運用を支援。 ガイドライン 政府統一基準 セキュリティに関する統一基準を整備し、技術変化に合 わせて改定を実施。 監視 政府機関情報セキュリティ横断監視・ 即応調整チーム(GSOC)」 政府機関のセキュリティ状況について24時間監視。各府省に対して 警告や助言を行っている。 16 ガバナンス 国内外ともに成熟度が上がってきており、日常業務として確実に行わ れている。透明性の確保と新技術対応の改定作業が課題。 制度 米国FITARA 連邦ITリフォーム法を 整備し政府内での技 術の活用を強力に推 進。各省庁の実施状 況もスコアカードとし て公表。 プロジェクト管理 アーキテクチャ 米国SCC データやプロセス 等のシステムの アーキテクチャだ けではなく、訓練 や事例情報も含 めた総合的な相 互運用性を検討。 工程レビュー システム開発の重要なマイルストンにおいて工程レビュー を行い、問題プロジェクトの発生を防止するとともに改善を 実施。 透明化 ITダッシュボード 府省のシステム投資を定量的に分析し公開。このサイトを見ることで、 各府省の投資の傾向やベンダの取り組み状況の分析も可能。 17 人材育成・体制 人材育成や体制は、民間専門家の活用が国内外で盛んに行われてお り、成果を上げている。受け入れ態勢が課題。 専門家の活用 PIF (Presidential Innovation Fellow) 米国では、1年任期制でミッションを明確にし、大統領直 轄でデジタル技術を使った改革に取り組んでいる。ラボ であるGSA18Fとともに成果に対する評価が高く、次元の 組織から常設の組織へと位置づけを変更した。 Lab デジタルサービス・ラボ 電子行政の先進各国では、先端のデジタル技術を行政の 現場に導入するための民間人材を中心とした専門チーム を設置して行政の効率化とサービス向上を実現している。 米国政府 GSA18F 英国政府 Government Digital Service (GDS) デンマーク MindLab オーストラリア Digital Transformation Office (DTO) シンガポール IDA Hive 専門家による情報共有 政府CIO補佐官プール制 政府CIO補佐官をプール制にし、連絡会を毎週行うことにより府省共通の 課題の共有や解決が図れるようになっている。 国際会議での国際調整や最先端プロジェクトの推進等、高度な専門性が 必要な領域を先導。 協働 Code for Japanフェローシップ 民間企業の人材を自治体へ派遣し、行政は民間の知見を入手し、民間 は社会課題に対する対応方法を身に着ける人材交流プログラム。 18
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