コレステロール動態解析の ための化学プローブ技術 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 健康維持機能物質開発研究グループ 主任研究員 小川昌克 健康工学研究部門 界面・材料研究グループ 研究グループ長 田中睦生 1 想定される用途 従来と異なる細胞内の遊離コレステロールを ターゲットとする化学プローブを考案しました。 • ライブセルイメージング(生きた細胞の蛍光顕 微鏡観察)用のコレステロール蛍光プローブ • エクソソームやコレステロール輸送タンパク質 など研究のための研究試薬の開発 2 私どもの技術開発の背景 •動物細胞はコレステロールなくして生きられない。 •動物細胞の健康維持にコレステロールは深くかかわり、 その役割は多岐にわたる。 •コレステロール研究の歴史は古く膨大な研究報告があ るが、コレステロールの役割について詳細な分子機構 は今でも不明なことが多い。 •今後、コレステロール研究において、化学プローブの 研究開発が重要と考えます。 3 従来技術とその問題点 既に実用化されているコレステロール化学プ ローブは、コレステロールの疎水性部分を化学 修飾して作られています。 しかし、コレステロールが細胞内で近傍分子と の相互作用する際、その水酸基と疎水性部分 の両方が重要です。疎水性部分を化学修飾す ると膜中で分子運動の異常が危惧されます。 4 従来技術とその問題点 コレステロールの構造式 アルキル鎖 環状部分 水酸基 疎水性部分 5 新技術の特徴・従来技術との比較 コレステロールの化学プローブを作る際に、コ レステロール分子認識に重要な部分が化学修 飾によって構造変化することが従来技術の問題 点でした。 本技術では、コレステロールの水酸基を化学 修飾して蛍光基等をコレステロールに導入しま した。その際、水酸基部分に「水素結合する基」 を残すことで分子認識に重要な構造を保存しま した。 6 新技術の特徴・従来技術との比較 本技術による コレステロール化学プローブの構造式 R:蛍光基など 7 実験結果の例 培養細胞を本技術に基づくコレステロール蛍光プローブ で染色した顕微鏡画像(ライブセルイメージ) 上段:微分干渉像 下段:蛍光像 スケールバー 50mm 左列:染色直後 右列:染色後3時間 8 想定される用途 • 細胞内の遊離コレステロールを可視化するた めの本技術の特徴を生かした蛍光プローブ 参考文献: Ogawa Y., Tanaka M. (2016)Anal. Biochem., 492, 49-55. • 上記以外に、エクソソームを精製する試薬の 開発に利用されることが期待される。 9 実用化に向けた課題 • 現在、培養細胞内の遊離コレステロール局在 を観察するための蛍光プローブまで開発済み です。 • 今後、本蛍光プローブによるコレステロール 細胞内動態の観察データを取得し、さらに有 用性を検証します。 • 蛍光プローブ以外では、実用化に向けて脂質 やタンパク質等との相互作用を検出できるよ う技術を確立する必要があります。 10 企業への期待 • 本技術による蛍光プローブがライブセルイ メージング用コレステロールプローブとして製 品化されることを希望します。 • 研究用試薬の開発技術を持つ企業との連携 (ライセンス、共同研究等)を希望します。 • また、エクソソーム研究等のための研究用試 薬を開発中の企業には、本技術の導入が有 効と思われます。 11 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :膜マイクロドメイン又は コレステロール認識タンパク質検出用 高感度分子プローブ • 登録番号 :特許第5004234号 • 出願人 :産業技術総合研究所 • 発明者 :小川昌克、田中睦生 12 お問い合わせ先 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生命工学領域研究戦略部 イノベーションコーディネータ 新間 陽一 TEL 029-862 - 6032 FAX 029-862 - 6048 e-mail [email protected] 13
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