産廃が純国産エネルギーに変わる!? ~放置竹林の有効利用~ 福岡大学 工学部 助教 機械工学科 麻生 裕之 1 ◆ 日本 : モウソウチク 竹の種類 マダケ ハチク マダケ ハチク : 日本に自生していたもの モウソウチク : 200~300年前に中国から渡ってきた 中国から渡来してまだ間がないため 病気などの外敵が存在せず爆発的に繁殖 ◆ 荒廃した竹林内は、地下茎が枯れている 土砂崩れの危険がある 曲渕ダム(福岡市) 2 竹の現状 非常に繁殖力が強いため定期的な伐採が必要 3 竹の現状 非常に繁殖力が強いため定期的な伐採が必要 【問題点】 ◆ 放置された竹林は約9億m2 (竹林には1m2当たり10本程度の竹が生えている) ◆ 竹林保護のため伐採された竹廃材(廃棄物)が大量発生 竹廃材の有効利用が求められている 4 バイオマスとは?? バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、 一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除 いたもの」をバイオマスと呼ぶ。 1. 廃棄物系バイオマス … 廃棄される紙、家畜排せつ物、 食品廃棄物、建設発生木材、製材 工場残材、下水汚泥等 2. 未利用バイオマス … 3. 資源作物 … 稲わら・麦わら・もみ殻等 さとうきびやトウモロコシなど (エネルギーや製品の製造を目的に 栽培される植物) 5 なぜ普及しない?? Q. なぜバイオマスエネルギーは普及しないのか?? ・ 廃棄物系バイオマス 廃棄物は多岐にわたり、回収にもコストがかかり、 処理・加工装置も非常に大型化になる ・ 資源作物 当初、アメリカなどで比較的うまくいっていたが、 燃料として使用するものが食用にもなりうる”さと うきび”や”トウモロコシ”などといった農作物で あるため、人道問題として”食物”をわざわざエネ ルギーにする必要があるのか?という世論が生じ、 トーンダウン 6 バイオマス燃料 ・ 未利用バイオマス これまでは、バイオマス燃料の製造が主流で、生産 コストが全く合わず、さらに大量生産が出来ない 本学の産学官連携担当教授から、 「竹チップを使って、何か有効的な利用はできないか?」 Keyword : 地元中小企業との連携・放置竹林・ 産業廃棄物・大量消費・CO2トレード 7 竹チップボイラー 竹チップの直接燃焼による熱の利用であれば、 コストもかからず、大量消費が可能ではないか?? 竹チップ チャレンジ スタート!! 8 竹チップバイオマスボイラーへの可能性 ・ 疑問点 古くから竹は生息していたが、なぜ『竹ボイラー』 なるものが存在しないのか?? 調査結果1 2つの大きな問題が発覚! ・ 含水率が非常に高い! (乾燥重量と同等の水分を含むことも…) ・ 燃焼によりタール状の燃えカスが残る (ボイラーのバーナー部に付着し、失火) 9 竹チップバイオマスボイラーへの可能性 調査結果2 一方で、ものすごい可能性も… ・発熱量(単位質量あたり)が一般木材よりも高い!! 竹の熱量は、約4600kcal/kg (参照: http://keyaki2.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_c6d2.html) なお、木質ペレットと灯油、石炭の熱量は1kgあたり 木質ペレット: 4,037kcal 灯油 : 8,767kcal A重油 : 9,341kcal http://www.pref.iwate.jp/~hp0552/biomass/outline/outline.htm より 石炭(瀝青炭): 6,400kcal 石炭(褐炭) : 4,500kcal http://www.kobelco.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2006/07/05/ubc_ppt.pdfより 上記より、木質ペレットより発熱量14%増、褐炭とほぼ同じ、 A重油のほぼ50%と考えられる。 10 竹エネルギーファーム構想 さらに… ・ 竹は驚異的なスピードで成長!!(10~20m/年) 2~3年で成竹になり、その高さは20m以上!! つまり… まずは、放置竹林の処理により 出てくる竹を使用 将来的には、平地に管理竹林を造り、4区画に分割し、1年ご とに1区画をカットしていけば、4区画目をカットした翌年は… 『短期循環型』の再生エネルギー資源になり、 まさに純国産のエネルギーになる!! 11 竹の地産地消…その先 本研究における … “3大”キーワード!! “地産地消” “1次産業による地方創生” “純国産エネルギー” 12 竹利用の従来の考え方 放置竹を有効利用するためには、 乾燥処理や燃焼効率の向上などの改良が必要である 【従来技術】 運搬 (高コスト) 竹の伐採 乾燥 (長時間・屋内) チップ化 燃焼 【問題点】 ◆竹の空隙率が高いため、 単位質量あたりの輸送コストがかかる ◆含水比が高いため、乾燥までに相当な時間が必要 13 竹利用の新しい考え方 【新技術】 + = 運搬 伐採+現地で粉砕 自動乾燥+燃焼 14 粒子の乾燥方法 【粒子の乾燥】 原理的には、”気流乾燥機” 熱風で粒子を浮遊させ、”空気の熱”と”粒子摩擦による熱”で粒子を乾燥させる ○ 特徴 ・高温空気はボイラーからの輻射熱を利用 →排ガスは水分を多く含むため、利用不可 →ボイラーを断熱材で囲み、輻射熱を回収 ボイラーからの熱を逃がさずに有効利用 未利用エネルギーの有効利用 ※気流乾燥機とは?? 垂直管内を10~30m/sの高速で流れる熱ガス中に粒粉体材料を連続投入し, 瞬時に分散浮遊させて空気輸送する間に急速乾燥させる方式で,粒粉状,フレー ク状材料に適している。 15 粒子の乾燥方法 【粒子の含水率による分別】 ○ 特徴 ・粒子の浮遊速度(沈降速度)の違いを利用 →乾燥した粒子と含水率の高い粒子の浮遊高さの違い 含水率70%程度 含水率50%程 度 含水率30%以下 乾燥して軽くなった竹チップだけが排出されるシステム 16 自動乾燥分別装置 ④ 暖められた空気 高湿度の空気 ③ 外部へ逃がす空気 竹チップの流れ ① ② ⑤ 水分含有率30%以下の竹チップ ⑦ ⑧ ⑥ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ブロワ キャンバス 垂直管乾燥器 (輸送管) 粒子分離フィルタ 回収・供給器 竹チップボイラ 排煙筒 断熱ボックス 17 エネルギーの地産地消 【ポイント】 ・小型の粉砕機で竹林の傍で伐採した竹を粉砕 ・竹チップを軽トラなど小型運搬機で輸送 ・自動乾燥機能付きボイラーで生竹をそのまま燃焼 近隣のビニールハウスなどのボイラーとして使用 まさに … 『地域型のエネルギーの地産地消』 (実用化すれば、多岐にわたる応用も…) 18 エネルギーの地産地消のイメージ 【エネルギーの地産地消のイメージ】 19 エネルギーの地方創生のイメージ 【竹チップボイラーの普及による地方創生のイメージ】 (第1次産業(農業・林業)の再生) 20 まとめ 21 従来技術とその問題点 竹をバイオマスボイラーの燃料として実用化し た例は過去に全くなく、周知の事実として、 ・ 含水率が高く、乾燥に時間とコスト ・ 燃焼時のクリンカの発生により失火 という2つの大きな問題があり、これまで様々な 企業や自治体などがチャレンジするものの、い まだ成功例がない。 22 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来の最大の問題点であった、乾燥のプロセ スを大幅に改良し、非常に簡便でローコストな 乾燥システムを発明することに成功した。 • 本技術の適用により、乾燥プロセスにおいて、 竹材の運搬コストや長期保管用倉庫の確保 などを含めた乾燥にかかるコストは、従来に 比べてトータルで1/5~1/10以下程度まで削 減されることが期待される。 23 想定される用途 • 本技術を生かすためには、竹チップ専用ボイ ラーを開発し、農業ビニールハウスに適用す ることで農家の大きな負担となっている燃料 費を大幅に削減できると考えられる。 • 上記以外に、農村部で地方再生の効果が得 られることも期待される。 • また、竹チップを用いたバイオマスボイラーが 完成すると、温泉や温浴施設などに展開する ことも可能と思われる。 24 実用化に向けた課題 • 現在、乾燥システムにおいて自動分別が可能 なところまで開発済み。しかし、粒子径が揃っ ていない場合の精度について未解決である。 • 今後、乾燥システムからボイラー供給する方 法について実験を行い、実際のボイラーに適 用していく場合の条件設定を行っていく。 • 実用化に向けて、自動分別の精度を粒子量 が増えた場合を想定して技術を確立する。 25 企業への期待 • 未解決のクリンカの問題については、炉内の 燃焼技術により克服できると考えている。 • 既存のバイオマスボイラーにて高い技術とノ ウハウ持ち、燃焼についてしっかりとした研究 開発部門を有する企業との共同研究を希望。 • また、バイオマスエネルギーの有効利用(バイ オマス発電を含む)への展開を考えている企 業には、本技術の導入が有効と思われる。 26 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 :竹破砕片乾燥選別システム 出願番号 :特願2014-82707 出願人 :福岡大学 発明者 :麻生裕之 27 産学連携の経歴 • 2007年-2009年 佐賀県新エネルギー産業振興課,分担者 『先導的小型排熱エネルギー利用発電システムの研究開発』 • 2010年-2012年 NEDO技術開発機構,分担者 『革新的凝縮器を有するアンモニア/水を用いた新しい海洋温 度差発電の研究開発』 • 2013年-2014年 佐賀県中小企業・小規模事業者ものづくり・ 商業・サービス革新事業,共同研究者 『生竹の直接燃焼による農業ハウス栽培に適したバイオマス空 調技術の開発』 28 お問い合わせ先 福岡大学 研究推進部 担当コーディネーター 産学官連携センター 川上 由基人 TEL 092-871-6631(内線:2806) FAX 092-866-2308 e-mail [email protected] 29
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