CKD-MBDと - Riona.jp

The 61st Annual Meeting of
the Japanese Society for Dialysis Therapy
CKD-MBDと
鉄代謝の
世界的潮流
第 61回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム 3
日時
会場
同時通訳付き
6 月12 日(日)13:40∼16:10
第18 会場 リーガロイヤルホテルタワーウィング 3 階 ロイヤルホール
平成 28 年
〒530-0005 大阪市北区中之島 5-3-68 TEL:
(06)6448-1121
司会
Opening
Remarks
福岡腎臓内科クリニック 院長
平方 秀樹 先生
昭和大学医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授
医療法人社団 関川会 関川病院 院長
秋澤 忠男 先生
秋葉 隆 先生
CKD-MBD:世界と日本のガイドラインから
1 考える治療戦略
講演
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授
講演
2
深川 雅史 先生
Anemia:世界と日本の貧血治療と今後の展望
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科/血液浄化療法部 教授
南学 正臣 先生
Adverse consequences of iron deficiency
3 and the importance of its correction
講演
Professor, Dept of Innovative Clinical Trials, University Medicine Göttingen (UMG)/
Stefan D. Anker, MD, PhD
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 横山 啓太郎 先生
Göttingen, Germany Closing
Remarks
共催:第 61回日本透析医学会学術集会・総会/鳥居薬品株式会社/日本たばこ産業株式会社
CKD-MBDと鉄代謝の世界的潮流
CKD-MBD:
1 世界と日本のガイドラインから考える治療戦略
講演
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授
全身性疾患としての CKD-MBD の概念が提唱されてから、約10 年になる。最近では、
本来のミネラル代謝異常の枠を超え、心血管疾患、貧血や鉄代謝にも相互に広い関連を
持つ病態として認識されており、元々リン利尿因子である FGF23 は、この連関の中心的
役割を果たしている。
この分野でエビデンスの評価を最もきびしくして作成された KDIGO のガイドラインは、
本年部分改訂が予定されているが、臨床の場、特に我が国では、実情と離れているという
批判が根強くある。この理由としては、患者背景や医療制度の違い、使用できる薬剤の差
などが考えられるが、最も大きな理由は、治療に関しては RCT 研究のみ、その他について
は前向きコホート研究を採用して作っているので、むしろエビデンスがない部分が多いと
いうこと、さらにその乏しいエビデンスもほとんど欧米人のものであるということが挙げ
られる。
エビデンスの評価には非常な労力とお金を必要とし、その条件も容易には変わること
がないという現状では、各国の学会は、これに対するそれぞれの考え方を公式に表明す
先生
経 歴
1983 年 東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院(分院内科、第 3 内科)
研修医、東京厚生年金病院内科研修医、公立昭和
病院腎臓内科医長事務代理
東京大学附属病院分院内科医員(尾形悦郎教授)
を経て
1990 年 東京大学医学部附属病院第一内科(黒川清教授)
助手
1992 年 米国バンダービルト大学リサーチフェロー(細胞
生物学、循環器学)
1995 年 宮内庁侍従職、侍医
1997 年 東京逓信病院循環器科(腎臓内科)医師
2000 年 神戸大学医学部附属病院助教授、代謝機能疾患
治療部部長
2004 年 神戸大学医学部附属病院腎臓内科診療科長を併任
2007 年 神戸大学大学院医学研究科内科学講座腎臓内科
学分野長、准教授
名称変更に伴い、腎・血液浄化センター長
2009 年 東 海 大 学 医 学 部 内 科 学 系 腎 内 分 泌 代 謝 内 科
専任教授
神戸大学大学院医学部客員教授
ることが求められている。一方で、日本の患者に基づいたデータを世界で認められるレベ
ルで発信していくことも重要と考えられる。
深川 雅史
学会活動
日本腎臓学会 理事・評議員・専門医制度委員会副委員長・
国際委員会委員/日本透析医学会 評議員・国際学術委員
会委員・欧 文誌 編集委員会委員/日本アフェレシス学会
評議員/日本臨床分子医学会 評議員/日本骨粗鬆症学会
評議員/日本骨代謝学会 評議員/米国腎臓学会:Fellow of
the American Society of Nephrology(FASN)2015 年
Kidney Week プログラム委員/欧州腎臓学会:Distinguished
Fellow of the European Renal Association /国際腎臓学
会:Educational Ambassador・WCN2015 プログラム委員/
K-DIGO:CKD-MBD ガイドライン作業部会委員(2006 2009)/ DOPPS 4 Task Force Team Member /
J-MBDopps グループ長/医薬品医療機器総合機構 専門委
員(2012- )
2 Anemia:世界と日本の貧血治療と今後の展望
講演
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 / 血液浄化療法部 教授
南学 正臣
先生
腎性貧血はエリスロポエチン(EPO)の産生障害によって起こる。しかしながら、造血に
経 歴
は鉄が必須であり、鉄不足と鉄の利用障害は腎性貧血の治療低反応性の重要な原因であ
1988 年 東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院内科研修医、公立昭和
病院腎臓内科シニアレジデント
東京船員保険病院内科常勤医 を経て
1992 年 東京大学医学部大学院
1994 年 ワシントン大学腎臓内科 visiting scientist
1997 年 東京大学医学部附属病院 第一内科帰局
東海大学総合医学研究所・日本学術振興会特別
研究員
1998 年 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科助手
1999 年 東京大学医学部附属病院血液浄化部助手
2000 年 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科助手
2012 年 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻腎臓内
科学分野教授、内分泌病態学分野教授兼務
医学部附属病院 腎臓・内分泌内科科長、血液浄
化療法部部長
2013 年 東京大学医学部 執行部、東京大学医学部附属病
院 執行 部(病院 長 特 命事 項)、東 京大学 総 長補
佐 兼務(2015 年 3月まで)
る。鉄欠乏や鉄過剰を診断するためには、限界はあるものの血清フェリチン値、TSAT を
用いる。鉄の補充については、国によって方針が大きく異なっており、海外のガイドライン
が推奨する鉄補充の基準は、わが国の診療実態と大きく異なっている。本邦においては、
ESA 製剤も鉄剤も投与されておらず目標 Hb 値が維持できない患者においては、血清フェ
リチン値が 50 ng/mL 未満の場合に ESA 投与に先行した鉄補充療法を行い、ESA 投与
下で目標 Hb 値が維持できない患者においては、血清フェリチン値が100ng/mL 未満か
つTSATが 20%未満の場合に鉄補充療法を行うのがよい。最近利用可能になった鉄ベー
スのリン吸着薬は、患者の鉄の基礎的貯蔵状態を底上げする可能性があり、鉄ベースのリ
ン吸着薬を使用している患者で、治療低反応性の腎性貧血の割合が減少するかが注目さ
れている。更に、EPO の産生は低酸素に対する防御機構の発動を司る転写調節因子であ
る hypoxia-inducible factor(HIF) が調節しているが、最近開発された PHD 阻害薬は、
HIF を活性化することで EPO 産生を促すと同時に鉄の利用効率を高め、より効率的な
造血を促すことにより腎性貧血を治療する新規薬剤であり、これらの薬剤により今後、腎
性貧血の治療が大きく変わる可能性がある。
学会活動
日本内科学会 評議員/日本高血圧学会 評議員/日本抗
加齢医学会評議 員(2015.5-)/日本腎臓学会 理事/国
際腎臓学会 理事/アジア太平洋腎臓学会 理事
第 61回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム 3
The 61st Annual Meeting of the Japanese Society for Dialysis Therapy
同時通訳付き
Adverse consequences of iron deficiency
3 and the importance of its correction
講演
Professor, Dept of Innovative Clinical Trials, University Medicine Göttingen (UMG)/
Göttingen, Germany
Stefan D. Anker,
MD, PhD
Profile
Iron is importantly involved in numerous physiological processes including
MD,Medical
School,
Berlin, Germany
1993
年
oxygen transport(via haemoglobin)and oxidative phosphorylation and energy
1998 年 PhD,The National Heart & Lung Institute
production. Chronic illnesses like heart failure(HF)and kidney disease are
of Imperial College London
2002 年 Profe s s o r of C ardio l o g y & C a c h ex ia
characterized by presence of tissue inflammation leading to functional iron
Research (W2) at Charité Berlin
2014 年 Professor of Innovative Clinical Trials
deficiency, which occurs in 40-60% of HF patients in Europe, and even more
( W3) at Universit y Medical Center
Göttingen
frequently develops in HF patients in Asia. Iron deficiency can cause
anaemia, negatively impact on exercise capacity and symptoms and relates
Academic activities
to poor prognosis.
Co
ordinator
for SICA- HF study (EU - FP7 ) /
Whether iron deficiency is a valid therapeutic target in chronic HF was
Councillor of the Board European Societ y of
investigated in several phase II and one phase III trial over the past 10 years. Cardiolog y / The board of the Hear t Failure
Association (HFA) of the ESC/HFA President and
Data from the FAIR-HF and CONFIRM-HF studies demonstrate that treatment
c u r r e n t l y c h a i r s t h e H FA c o m m i t t e e o n
regulatory affairs / Editor-in-Chief of the first
with IV ferric carboxymaltose compared to placebo improves symptom
open access hear t failure journal ESC Hear t
Fa il u re / T h e e d i to r i a l b o a rd s of s c i e nt i fi c
status, quality of life and submaximal exercise capacity in patients with
journals (including Europ ean Hear t J ournal,
Euro p e a n J o ur nal of H e ar t Failure & IJ C) /
chronic HF and functional iron deficiency and systolic heart failure. The
President of the International Societ y on
diagnosis of iron deficiency was made when ferritin is <100μg/L or when Sarcopenia, Cachexia and Wasting Disorders /
E d i t o r- i n - C h i e f o f t h e J o u r n a l o f C a c h ex i a ,
ferritin is <300μg/L AND TSAT <20%. The benefit of IV iron therapy is
Sarcopenia and Muscle / International clinical
equally present in HF patients with or without anaemia, implicating iron t r i a l s t e e r i n g c o m m i t t e e s / C h a i r i n g o r
co-chairing several (incl. FAIR-HF & FAIR-HF2,
deficiency rather than anaemia as a true therapeutic target in patients with T I M - H F, A U G M E N T - H F, R E S H A P E - H F 2 ,
IMPULSE-HF and BACH) served in a number of
HF(Anker SD et al. N Engl J Med 2009 & Ponikowski P et al. Eur Heart J 2014). DMC s (chairing 4) and end-point commit tees
(chairing 4)
These data suggest that therapy with intravenous iron (and in particular
with ferric carboxymaltose, to which most of the data refers to) could play
a central role in the management of iron deficiency in patients with chronic HF. In May 2012, therefore the new
ESC / HFA guideline for the diagnosis and treatment of acute and chronic HF for the first time also mentioned
treatment with IV iron(namely ferric carboxymaltose)as a possible therapy in symptomatic patients with iron
deficiency.
A recent meta-analysis(Anker et al, ESC 2015)demonstrated that ferric carboxymaltose compared to placebo
reduced important morbid events in 839 CHF patients who were included in 4 different clinical trials. The
FAIR-HF2 will prospectively test the hypothesis that ferric carboxymaltose compared to placebo will reduced
recurrent events of heart failure hospitalization and cardiovascular death.
鉄は、ヘモグロビンを介した酸素運搬および酸化的リン酸化ならびにエネルギー産生といった多くの生理学的過程と重要な関わりがある。機能
性鉄欠乏につながる組織炎症の存在を特徴とする心不全や腎臓病などの慢性疾患は、欧州では心不全患者の 40∼ 60%に発生し、アジアにおけ
る発生頻度はさらに高くなっている。鉄欠乏は貧血を生じさせ、運動能力および症状に悪影響を与え、不良な予後と関連する。
過去10 年の間に、複数の第Ⅱ相および1件の第Ⅲ相試験において、鉄欠乏が慢性心不全における有効な治療標的であるか否かについて検討さ
れた。FAIR-HF 試験および CONFIRM-HF 試験のデータから、プラセボに対して静注鉄製剤であるカルボキシマルトース鉄が、心不全患者におけ
る心不全症状、QOL、最大下運動能力と機能性鉄欠乏および収縮性心不全の改善を示した。血清フェリチン濃度<100μg/L または血清フェリチ
ン濃度<300μg/L および TSATが<20%の場合に鉄欠乏であると診断された。静注鉄製剤治療によるベネフィットは、貧血の有無に関係なく心
不全患者に同様に認められたことから、心不全患者における真の治療標的は貧血ではなく鉄欠乏であることを示唆している(Anker SD et al. N
Engl J Med 2009 & Ponikowski P et al. Eur Heart J 2014)。
これらのデータは、静注鉄製剤治療(主にカルボキシマルトース鉄)が、慢性心不全患者における鉄欠乏の治療において中心的な役割を果たす可
能性があることを示唆している。そのため、急性および慢性心不全の診断および治療のための新しい ESC / HFA ガイドラインにおいて、鉄欠乏を
伴う症候性患者に対して取り得る治療として、静注鉄製剤(カルボキシマルトース鉄として)について、2012 年 5月に初めて言及された。
最近実施されたメタ分析(Anker et al, ESC 2015)では、4 件の異なる臨床試験に組み入れられた 839 名の慢性心不全患者において、プラセ
ボよりもカルボキシマルトース鉄が重要な病的事象を減少させたことが示された。FAIR-HF2試験では、プラセボよりもカルボキシマルトース鉄が、
心不全による再入院および心血管系の死亡を減少させるという仮説について前向き試験を行う。
memo