地震観測・構造調査で解明する,プレートの沈み込み と地震発生の詳細な関係 —海域地震学— 地震予知研究センター TEL: 03-5841-5715 望月 公廣 (准教授) E-mail: [email protected] 山田 知朗 (助教) ご質問等は、お気軽に!! 2011 年 3 月に発生した東北地方太平洋沖地震(2011 年東北沖地震),近い将来に発生が予想される東南海・ 南海地震は,いずれも海側プレートが陸側プレート下に沈み込むことによってプレート間の摩擦が引き起こした 海溝型巨大地震です.一言にプレート間摩擦と言ってしまいますが,その実体についてはまだまだ謎だらけです. 海底に降り積もったプランクトンの死骸,川を通って海まで運ばれた土砂,あるいは海山のような海底面の起伏 がプレート間の境界に沿って地下深く沈み込んでいく過程で(地下 30 km でプレート境界面の温度が 300 度を 超え,圧力 1 GPa がかかります),境界面の物理的性質(物性)はどのように変化していき,どのような地震を 発生させるのでしょうか.残念ながら,地下深くのプレート境界面をその場観察することはできません.そのた め,我々は地震波を使って,その状態を理解しようと研究を進めています(図 1).海底地震計(図 2)を使った 海域での地震観測・調査に加え,陸上地震観測網のデータを使って,沈み込みに伴うプレート境界面の構造・物 性の変化をシームレスに追うことで,地震発生との関係を詳細に解明しようというのが,我々の研究の目的です. 最近の研究内容: 2011 年東北沖地震断層の北限周辺域における,プレート境界面の構造と,本震前後での境界面の性質 の変化の解明 2011 年東北沖地震の最大余震(Mw7.8)を含む茨城県沖の地震活動と沈み込む海山との関係(図 3) 海底地震計および陸上地震観測網のデータを用いた,東南海・南海地震断層境界周辺におけるプレート 内の流体分布 ニュージーランド北島沖合で観測されるスロースリップとプレート境界の構造(図 1) 図 1 人工的に発生させた地震波による,海底下構造の反射断面図. ニュージーランド北島(左端)の下に右側から沈み込んでいく太平洋 プレートの様子を見ることができる.沈み込みに伴うプレート境界か らの地震波の反射強度の変化などから,プレート境界の性質を調べる. ニュージーランド北島 海底 図2 船上から設置するために吊 り上げられた長期観測型海底地 震計.水深 6000 m までの海底で, 1 年間以上独立して観測可能. 東北沖地震と最大 余震の断層すべり 量分布 最大余震の断層すべりの時間発展.紫破線が海山の位置 図3 茨城県の沖合に沈み込んだ海山 と,プレート境界面の性質との関係. 沖合の紫破線の海底下に,海山が沈み 込んでいる.東北沖地震では茨城県沖 合まで断層すべりが伝播したが,海山 までには到達しなかった.本震発生か ら 30 分後に, 茨城県沖を震源とする M7.8 の最大余震が発生したが,断層 すべりはやはり,海山の手前で止まっ た. ~~~~~~~~~~~ 仲谷 幸浩 君 大学院生の研究紹介 ~~~~~~~~~~~ (博士課程 3 年) 日本海溝域で東 北沖地震前後の地 震活動変化を調べ 図4 ています. 東北沖地震後 3 ヶ月間の b 値(大地震 修士課程では海 と小地震の発生数比) 底地震計データの 分布.地震を引き起こ 自動処理法を開発 す応力状態がプレー しました.その結果,これまで見つかっていなかった ト境界面の性質によ 小さな地震も捉えられるようになりました.最近では, ることがわかった. 地震を引き起こす応力の状態が,プレート境界面の性 質(水の存在など)を反映していることがわかってき ました(右図). 様々な観点から地震現象を扱える「海域地震学」 です.船に乗って観測したい人,海底データから新た な発見をしたいという人は一緒に研究しましょう! 大学院生は仲谷君に加え,米島慎二君(博士課程 3 年),岩崎友理子さん(修士課程 1 年)が在籍し ています.研究室にいらして,先輩方の話も聞い てみてください.
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