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自由応募分科会 1「文化大革命研究の『問い』の共有に向けて」
谷川真一(神戸大学)
今年は中国で文化大革命が開始されてから 50 年目の年に当たる。これまでに欧米諸国や中
国、そして日本でも数多くの文革に関する研究が行われ、さまざま立場や視点から議論が行
われてきた。このなかで最も豊富な研究の蓄積があるのは欧米であるが、欧米の文革研究は
資料的制約や時代状況、そして「欧米の社会科学」との関係などの制約要因により、その「問
い」を社会アクター間の派閥抗争や集合行為に集中させ、国家主導の暴力やエリート・アク
ターと非エリート・アクターの関係などの重要な側面を疎かにしてきたという問題点がある。
中国国内では、国外の研究者がアクセスすることの困難な資料を用いた洞察的な研究が行わ
れる一方で、それらは 1981 年の「歴史決議」の枠組みを超えることができないという限界(き
わめて重要な誤謬を含む)を抱えている。
一方、日本の状況はどうであろうか。日本の文革研究は、今後の発展のための基礎を築い
たといえるのか?若手研究者の道標となる研究の蓄積は存在するのか?残念ながら、日本で
は今後の研究の発展のための基礎となるべき、実証的研究の蓄積は疎か、研究者の間で文革
に関する「問い」や基本的な概念すら共有できていないのが現状であろう。これは、日本の
文革研究者が文革についての「問い」を共有せず、独自の「文革論」を展開してきたためで
はなかろうか。学術的研究を積み重ね、深化させるには、まずその前提として研究者が対話
を通じて「問い」を共有する必要がある。
そこで、本分科会では、ディシプリン(政治学、社会学、文化人類学)
、研究対象地域(内
モンゴル、陝西、上海)
、問題関心(少数民族への暴力、派閥組織間の暴力、平反問題)
、世
代的にも多様な研究者を集め、対話を通じていくつかの「問い」の共有化を目指し、今後の
文革研究の発展のための礎としたい。