平成28年度 琉球大学 熱帯生物圏研究センターセミナー Tropical Biosphere Reseach Center Seminar 「カメムシ類-バークホルデリア腸内共生系の進化」 講演者: 竹下 和貴 先生 (産業技術総合研究所) Evolu'on of the s'nkbug-‐Burkholderia gut symbiosis” Speaker: Dr. Kazutaka TAKESHITA (AIST, Hokkaido) 日時: 2016年6月27日(月) 16:30-17:30 場所: 熱帯生物圏研究センター分子生命科学研究施設 講義室 【講演要旨】 多くの昆虫が体内に共生微生物を保有し、緊密な相互作用を行っているが、その共生関係 の分子基盤や進化プロセスについてはあまり理解が進んでいない。 大豆の重要害虫である ホソヘリカメムシ(Riptortus pedestris)は、バークホルデリア(Burkholderia)属の共生 細菌を毎世代環境土壌中より獲得し中腸後端部に保持している。このバークホルデリア共生 細菌は、一般的な昆虫の共生細菌とは異なり単離培養が容易で遺伝子組換えが可能であるこ とから、ホソヘリカメムシ-バークホルデリア腸内共生系は昆虫内部共生の分子基盤を解明す るためのきわめて有用なモデル実験系として近年注目されている。そこで、発表ではまず、 ホソヘリカメムシ-バークホルデリア腸内共生系における共生の分子基盤の解明に向けた共生 細菌の比較ゲノム研究を紹介する。ゲノム配列が利用可能なバークホルデリア属細菌全31株の 比較ゲノム解析を行ったところ、カメムシ共生性を示すバークホルデリアが特異的に保持する 遺伝子を多数見出すことに成功した。現在、同定した特異的遺伝子に関して遺伝子欠損株の 作成およびホソヘリカメムシへの感染実験を進めており、その最新知見についてお話しする。 発表の後半では、ホソヘリカメムシに近縁なカメムシ類の共生系の全貌について俯瞰的に紹 介し、カメムシ類-バークホルデリア腸内共生系の進化的起原とその後の進化プロセスに関し て議論する。さらに、最近我々は、ホソヘリカメムシに近縁なカメムシ類の一部が、バーク ホルデリアを中腸の細胞内に共生させていることを発見したので、それについてもあわせて 紹介したい。 問い合わせ先: 松浦 優 ([email protected]‐ryukyu.ac.jp)
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