こちらからPDFファイルをご覧頂けます。

The
第21号
Southern
Wind
南 風
( H28.6.14 )
~
県高校総体に思う
不完全燃焼を避けるために必要なこと
島根 県 立 松 江 南高 等 学校
校長
長野
博
~
県高校総体が終わった。本校は男子総合 14 位、女子総合 5 位、男女総合 8 位という結果だった。
男子空手道部(団体)、女子ハンドボール部、女子バドミントン部(ダブルス)が全国高校総体の出
場権を獲得した。全国のステージで存分に戦ってきてほしい。水泳部と陸上部は中国大会の関門が
あるが、全国切符が手に入ることを期待している。
前期総体の一週間前に激励集会を行った。私は校長として激励の言葉を言うのであるが、この言
葉が一体どれほどの効果があるのだろうかといつも思う。部の顧問やコーチほど、生徒との距離は
近くない。よく話をする生徒でも、毎日の様子を見てはいない。だから話す内容は当たり障りの無
いものになるが、いつも本気で本音であることは言っておく。
練習や試合に臨む心構えについて、指導者がかける言葉は様々だ。「努力は裏切らない」、「基本に
忠実に」、「試合を楽しもう」、「 ピンチはチャンス」、「いつも感謝の気持ちを持って」・・・。競技
歴や指導歴に差はあるだろうが、指導者の経験の中で蓄積され研磨された言葉だ。選手にとっては
少なくとも節目節目の刺激であり、時には身に染みるような話になることもある。生徒諸君、どう
かどんな話でも一度は受け容れ、自らの経験の中で取捨選択し磨きをかけて生かしてほしい。座右
の銘にまで昇華させた言葉は一生の宝になる。
以前、A高校に着任したM教諭の部が、その年の新人戦でいきなり 3 位になった。M教諭は前評
判どおりの指導者だった。M教諭の指導している様子を見に行った時のことである。全員が一心不
乱に練習をしていたが、2~3人の生徒が片隅で雑談をした。わずかな時間だったが、M教諭が気
づき、咎めた。「その話は、君やチームが目指している目標に対してどんな意味を持つんだ。」穏や
かな口調だったが、生徒たちは姿勢を正し、引きつった顔で話を聞いていた。
岡山の私立B高校は音楽科を設置しているが、この高校の吹奏楽部の演奏を聴く機会があった。
アトラクションで一人の女子生徒が目隠しをして木琴を演奏した。速さ、正確さ、溢れる情感、見
事な演奏だった。同僚の話では、彼らの多くはプロの音楽家を目指しており、学校では午後の授業
と放課後は全て楽器の練習をしているらしい。
私は昭和 61 年から陸上の長距離に関わってきたが、「この記録が 1 年前に出ていれば」と思うこ
とは良くある。大学へ進学した年に出した記録を高校 3 年の総体の結果に照らすと優勝してしまう
ようなこともある。それだけ 1 年という時間は貴重なのである。だから、4 年かかって出した記録
を 3 年間で出すにはどうすれば良いかと思うのである。
練習すれば必ず上手くなるし、記録も出る。練習の質と量は必ず結果に表れる。上の二つの例は
練習の質も高いのだろうが、緊張感が練習密度を高め量を補完している。B高校のように練習時間
が多ければ、将来への意識の高さも手伝って通常の高校生をはるかに超える演奏となる。同じ 3 時
間を 3 時間分の練習に使う者と、冗漫な雰囲気の中で時間だけが浪費されているような練習をして
いる者とでは、練習の総量に違いが出るのは当然だ。そう言えば、前任校の駅伝チームは、朝練習
も放課後の練習も、最後の挨拶が終わるまで私語を聞いたことがない。
総体など最後の大会で期待した結果が出せなかった時、その後しばらく集中力や覇気を欠いた状
態が続くことがある。そして、そんなときに「不完全燃焼だ。」という。しかし、勝てば完全燃焼で
負ければ不完全燃焼というのはおかしくはないか。私は、不完全燃焼という言葉は最後の結果に対
するものではなく、そこに至る過程に対する言葉であると思うのである。だから、上記のような状
態は「不完全燃焼」ではなく、単に「引きずっている」のだと思っている。
<裏面に続く>
<表面から続く>
1・2 年生の諸君にはこれからの 1 年を大切にしてほしい。6 月 6 日の総体報告会の教頭先生の話
は今回の総体の総括であり、健闘を讃える話であり、3 年生へのねぎらいの言葉だった。しかし、
併せて来年の総体に向けた激励の言葉でもあり、すでに 29 年度の県高校総体に向けた 1 回目の激励
会であったとも言える。時間と仲間と指導者の言葉を大切に、不完全燃焼にならぬよう練習に取り
組んでほしい。
3 年生の諸君は、総体報告会の後、早くも学年集会があったが、「切り替え」という言葉を飽きる
ほど聞いたはずだ。当たり前だ。最後の結果を引きずって時間を浪費すれば、進路決定という次な
る目標に対して不完全燃焼となるからだ。
「勝者と敗者は紙一重の差。勝者は試合終了に近づくほど強気と冷静さを出してくる。敗者は弱
気と焦りを出してくる。」
1992 年のバルセロナオリンピックで金メダル、1996 年のアトランタオリンピックで銀メダルに輝
いた柔道の古賀稔彦選手の言葉だ。高校時代に 2 年連続インターハイで優勝した氏が、自身の経験
を踏まえ至った結論の一つである。古賀氏はこうも言う。
「稽古で良い癖をつけることが必要。稽古から本番へ直結させるためだ。」
今年の学園祭では古賀氏の講演会を予定している。良い話が聞けるはずだ。
<皆様へ>
【2016中国高校総体】
今年度のインターハイは中国 5 県で開催され、島根県でもテニス、ボート、柔道、体操、新体操の
各競技が行われます。また、大会運営補助や来県される方々のおもてなしなど、大会を支える高校生
活動も各地で行われ、本校は松江地区推進委員会の事務局校でもあります。本校ホームページではニ
ュースの掲載の他、関係先にリンクを貼っています。ぜひご覧ください。
【県立美術館の企画展】
先日、県立美術館の学芸員の方とお話をする機会がありました。ご専門は日本絵画のようですが、
芸術に対する深い造詣と、熱意を感じました。
県立美術館では「ポーラ美術館コレクション展」が開催されています。私にとって 4 回目のモネと
なります。今回はモネが中心ではありませんが、モネからシャガールに至る西洋絵画の流れが良くわ
かる、すばらしい企画展です。ちなみに私の一押しはマルタンの「ラパスティード=デュ=ヴェール
の橋」です。6 月 20 日までです。ぜひ見に行かれることをお薦めします。
【関連メッセージ】
今号の内容に関連した過去の”風”を紹介します。
松江南高校のホームページからご覧ください。
(ホームページの右側「校長メッセージ 南風 みなみかぜ」をクリックしてください。)
・
「平高の風」(第5号):
「全国大会観戦記」
・
「南風」(第10号):
「三度目のモネを見て考えた」