商店街の活性化に向けて -カルテ分析でわかったこと

商店街の活性化に向けて
‐カルテ分析でわかったこと‐
商店街よろず相談チーフアドバイザー
山田静也
1. はじめに
本分析は平成 27 年度に訪問型商店街よろずアドバイザー派遣事業にて訪問
した商店街の特徴や課題をアドバイザーがカルテ形式にまとめ、そのカルテ
の分析を試みるものである。
アドバイザーが訪問した商店街の特徴や課題を浮き彫りにし、それぞれの強
みや機会の中で各商店街が活性化するためにどのような方向に進むべきか
示唆できれば、と思う。
なお、カルテのデータは分析可能な 57 商店街を使用している。カルテのデ
ータは定量化できるように主要な項目を定量データに置き換えしている。そ
のため置き換え時には分析者の主観が入ってしまっていることをお断りし
ておく。また、今回訪問できた商店街は自治体の推薦を受けての訪問が大多
数のため比較的積極的な商店街運営を行っていることには注意が必要であ
る。
2. 分析編
ここでは、商店街の基礎的なデータから様々な分析を試みる。
① 組織の違い
商店街では、基本的に法人格を持った組合組織(商店街振興組合等)と
法人格の持たない任意組織(商店会など)がある。このうち、組合組織
は 28、任意組織 29 であった。組織での違いは今回の訪問では差が生じ
ていなかった。
(図 商店街組織の違い)
商店街組織の違い
組合組織
49%
任意組織
51%
②商店街の規模
商店街の規模を表すには商店街における店舗の数を把握することが良いと
思われる。全体では50店舗未満の商店街が半数以上を占めることがわかっ
た。
(表・図 全商店街における店舗数区分 )
全商店街における店舗数区分
店舗数
商店街数
50未満
33
50~99
14
100以上
10
全商店街
100以上
17%
50未満
58%
50~99
25%
次に組合組織での規模をみてみる。比較的100店舗を超える商店街が多い
ことがわかる。
(表・図
組合組織における店舗数区分
組合組織
50未満
10
50~99
8
100以上
10
組合組織
100以上
36%
50未満
36%
50~99
28%
最後に任意組織での規模をみてみる。100店舗を超える商店街は無く、
50店舗未満の小さい規模の商店街が多いことがわかる。
(表・図 任意組織における店舗数区分
任意組織
50未満
23
50~99
6
100以上
0
任意組織
50~99
21%
50未満
79%
③
商店街組織への加入率
商店街の役員の方と話す機会があると必ず出てくるのが組織に入って
もらえない、組織加入率が悪い、といった話題である。組合組織と任意
組織それぞれで加入率を計ってみた。組合組織では、80%~90%という
高い加入率が全体の 36%を占めていて、80%以上が全体の 52%という
ように組合加入率が高い商店街組合組織が多い。これは、新規での出店
する店主にも組合という法人格を持ってメリットが多いことが加入への
声がけにもつながっているのではないかと推察する。
(表
組合組織での加入率)
組合加入率
商店街数
50%未満
2
50%~60%
4
60%~70%
5
70%~80%
1
80%~90%
9
90%~100%
4
(図
組合組織での加入率)
組合加入率
90%~100%
16%
50%未満
8%
50%~60%
16%
80%~90%
36%
60%~70%
20%
70%~80%
4%
一方、任意組織では不明(任意組織自体で把握できていない)を含め加
入率が低いと言える。
(表
任意組織での加入率)
任意組織加入率
商店街数
50%未満
3
50%~60%
1
60%~70%
2
70%~80%
4
80%~90%
7
90%~100%
5
不明
6
(図
任意組織での加入率)
任意組織加入率
50%~60%
4%
不明
21%
90%~100%
18%
④
50%
未満
11%
80%~90%
25%
60%~70%
7%
70%~80%
14%
生鮮店舗の有無
地域住民が商店街を積極的に利用するためには生鮮店舗が商店街にあ
るかどうかも大きな要因となるものと考えられる。そこで、まず全体で
生鮮店舗を持っている商店街はどの程度あるか測ってみた。全体で生鮮
店舗がある商店街は 19 商店街しかなく、地域住民の買い物ニーズに応え
られていないものと考えられる。
(表
生鮮店舗のある商店街数)
生鮮店舗の有無
あり
19
なし
38
(図
生鮮店舗のある割合)
生鮮店舗の有無
あり
33%
なし
67%
次に組合組織で生鮮店舗のある商店街数を測ってみた。組合組織では生鮮店舗
がある商店街が少ない。組合組織の 25%しかなく、地域住民が他の地域での購
買行動をしているのではないだろうか。
(表
組合組織で生鮮店舗のある商店街数)
組合組織で生鮮店舗の有無
あり
7
なし
21
(図
組合組織で生鮮店舗のある割合)
組合組織での生鮮店舗の有無
あり
25%
なし
75%
最後に任意組織で生鮮店舗のある商店街数を測ってみた。任意組織には、半数
近くに生鮮店舗があり、比較的地域住民の買い物ニーズに応えられていると思
われる。
(表
任意組織で生鮮店舗のある商店街数)
任意組織で生鮮店舗の有無
あり
12
なし
17
(図
任意組織で生鮮店舗のある割合)
任意組織での生鮮店舗の有無
なし
59%
あり
41%
⑤ 域外からの集客増加、外国人の集客について
ここでは、商店街が域外からの集客増加に取り組んでいるかを見てみる。
全体として、域外からの集客増加取組の割合が高く、何らかの取組を実施して
いることが見て取れる。
(表・図
域外からの集客増加に向けた取り組み)
域外からの集客増加に向けた取り組み
あり
35
なし
22
域外からの集客増加に向けた取り組み
なし
39%
あり
61%
次に最近増加している訪日客等の外国人に対する集客策を講じているか見てみ
る。全体で 26%の商店街しか外国人の集客対策がなされていないことがわかる。
(表・図
外国人の集客策)
外国人の集客策を講じているか?
している
15
していない
42
外国人の集客策を講じているか?
している
26%
していない
74%
さらに、域外からの集客と外国人の集客をする手段として地域資源と商店街の
特長を上手く活用できているか見てみる。全体では地域資源と特長を上手く活
用している商店街は 40%にとどまっている。
(表・図
地域資源と特長の活用)
地域資源と特長が合致しているか
している
23
していない
34
地域資源と特長が合致しているか
していない
60%
している
40%
次に域外からの集客増加外国人の集客を同時に実施している商店街数を見てみ
た。その数は13商店街という結果で少ない印象を受けた。
外国人の集客策を講じているか
域外からの集客増加に向けた取り
組み
13
また、
(域外からの集客増加に向けた取り組み×地域資源・特長を絡めた域外
者来街対策)あるいは(外国人の集客策×地域資源・特長を絡めた域外者来街
対策)という2軸で実施している商店街を見てみた。それぞれ、18 商店街、10
商店街という結果で域外からの集客増加に向けた取り組み自体はしているが地
域資源の活用があまりされていないことがわかる。
地域資源・特長を絡め
た域外者来街対策が
あるか
域外からの集客増加に向けた取り
組み
18
外国人の集客策を講じているか
10
域外からの集客増
加に向けた取り組
み自体を実施
35
⑥補助金の活用度合
ここでは、24年度および25年度補正で公募された集客のためのイベント等
で活用できた「にぎわい補助金」の活用度合を見てみた。
組合組織では非常に高い割合で「にぎわい補助金」を活用できたようであるが、
任意組織では約半数しか活用しなかった。これは、組織体制(常勤事務職員が
いるとか、連携している街づくり会社があるといったもの)がしっかりしてい
る組合組織にとっては使いでのある補助金であったが、任意組織のような組織
体制が確立できていない商店街にとっては獲得・運営までのハードルが高かっ
たのではないかと推測できる。
(表・図
組合組織「にぎわい補助金」活用度合)
組合組織
にぎわい補助金を活用した
にぎわい補助金は活用しなかった
25
3
組合組織
にぎわい補
助金は活用
しなかった
11%
にぎわい補
助金を活用
した
89%
(表・図
任意組織「にぎわい補助金」活用度合)
任意組織
にぎわい補助金を活用した
15
にぎわい補助金は活用しなかった
14
任意組織
にぎわい補
助金は活用
しなかった
48%
にぎわい補
助金を活用
した
52%
⑦商店街活性化のための課題
ここでは、アドバイザーにヒアリングしていただきカルテに記載している商
店街の活性化のための課題を抽出いたものである。各商店街での課題は様々で
あるが、17のキーワードに置き換え集計した。各商店街では1~2の課題が
あった。
その中でも後継者確保、役員の世代交代や空き店舗対策といった「商店街で
商売を行う資源」を充実することが課題と認識して商店街が多いことがわかる。
イベントの継続を課題として認識している商店街も多い。これは「集客」が
真の課題であり、集客を続けるためにはイベントの継続をする必要があるとい
う認識ととらえられる。
財政状況の改善も多い課題である。駐車場などの運営、街路灯の運営を商店街
で行っているが会員が減り、顧客も減ることで固定資産を使った商店街の財務
状況が悪くなっていることが原因である。
生鮮店舗の導入は意外と少ない。地域住民のニーズに対応し、新たな商店の導
入という意味でももっと課題として認識しても良いと思われるが、効果がすぐ
出ないと思っているのか意外と少ない印象である。
商店街活性化の課題
0
後継者確保・育成
空き店舗対策
イベントの継続
財政状況の改善
役員世代交代
活性化意識ない
地域資源の有効活用
商店街加入率の向上
生鮮を核としたテナント誘致
アーケード等のハード更新
個店の魅力強化
個店の売上向上
既存顧客の囲い込み
活性化のための資金確保
観光客対応強化
域外顧客の獲得
その他
2
4
6
8
10
12
13
10
9
7
7
6
5
4
4
4
3
3
2
2
2
1
6
14
3.商店街の類型化
ここでは商店街をSWOT分析とアンゾフの成長マトリクスで分類・類型化
し、取るべき対策や戦略について検討していくものとする。なお、ここでの議
論は分析編の「⑦商店街活性化のための課題」をベースにしている。
①SWOT分析
ここでは分析編の分析を基に、SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)し
商店街をある程度分類、類型化してみたい。以下の表は分類するうえで考慮し
た内容・基準である。
分類項目
内容・基準
商店街としての
強み(S)がある
・生鮮店が商店街内にあり顧客の日々のニーズに応えるこ
とができる
・地域の文化的・日常的な特長を把握して商店街の運営に
活用している
・生鮮店が商店街内になく、地域住民の日々のニーズに応
商店街としての
えられていない
弱み(W)がある
・これといった特長がない
商店街としての
・地域住民が誰でも知っている地域資源があり、イベント等
外部の機会(O)
で活用できる
を活用できる商
・外国人の興味も引く個性ある店舗が多いと思われる
店街
商店街としての
外部の脅威(T)
があり、存続が
問われる商店
街
・大型店が地域内にでき顧客が流出する
・空き店舗が増え、店主も高齢化していく
この分類基準に沿って今回のカルテ分析での結果を当てはめてみると、強み
のある商店街は57商店街中6商店街ある。この強みのある商店街はさらに強
みを磨くことで地域のみならず域外から広く集客が可能になることを示唆して
いる。
外部の機会を活用できる商店街は18商店街あり、強みに分類されている商
店街を除いた場合、強みを見出し、機会と相乗し来街者を増加する可能性が出
てくる。したがって、機会に沿うように強みを洗い出して強化していく必要が
ある。
弱みのある商店街は、57商店街中21商店街あり、その弱みを克服してい
く必要がある。具体的には、生鮮店舗(移動店舗みたいなものでも)を誘致し
て、一人でも多くの地域住民に来街してもらうことが重要である。
外部の脅威がある商店街は9商店街あり、すべてが弱みと重複しており、地
域住民からの支持が得られていない可能性がある。弱みのところでも記載して
いるように生鮮店舗(移動店舗みたいなものでも)を誘致して、一人でも多く
の地域住民に来街してもらうことが重要である。さもなければ、近郊の大型店
などに顧客を奪われ存続が問われることになってしまう。
②SWOT分析から得られる対策
以下は、各象限に当てはまる商店街の対策を検討するクロスSWOTという
ツールである。商店街から見れば自社の置かれた現況からの対策を検討するの
に有効と思われる。
強み(S)
・生鮮店が商店街内に
あり顧客の日々のニー
ズに応えることができ
る
・地域の文化的・日常
的な特長を把握して商
店街の運営に活用して
いる
機会(O) ・ 地 域 住 民 が 誰
でも知っている地
域資源があり、イ
ベント等で活用で
きる
・外国人の興味も
引く個性ある店
舗が多いと思わ
れる
(対策例)
・積極的に強みを活か
して域外からの集客
を図るイベント等を
開催する。
弱み(W)
・生鮮店が商店街内にな
く、地域住民の日々のニー
ズに応えられていない
・これといった特長がない
(対策例)
・何らかの強み、地域資
源等を見出し、イベント
につなげたりする
脅威(T) ・ 大 型 店 が 地 域
内にでき顧客が
流出する
・空き店舗が増
え、店主も高齢
化していく
(対策例)
・地域資源等を活用し
ながら、積極的に個性
のある商店の誘致を
図り、集客していく。
・若い年代の店主を誘
致できるよう空き店
舗にお試しショップ
などを試験的に実施
してみる。
(対策例)
・根本的に商店街をどう
するかを議論するところ
から始める(他の商店街
との合併なども模索する
必要が出てくる可能性が
大きい)
③商店街の取るべき戦略(生き残り戦略/アドバイザーのためのツール)
ここでは、カルテに記載された各商店街の活性化の課題から何をすればよい
か、すなわち、どのような生き残り戦略をとるかを検討する。
各商店街の掲げる課題は、下のマトリクス(アンゾフの成長マトリクスの援用)
に当てはめてみると考えやすい。戦略の内容も課題を振り分けることで理解で
きる。
さらに、今後商店街を訪問するアドバイザーも商店街を分析しながらマトリク
スに当てはめていくことでその商店街の取るべき戦略も議論できると思われる。
ただし、新顧客/新商品・サービスの象限は通常の成長マトリクスでは「多角
化戦略」に該当するのだが、商店街のあり方から考えると撤退や合併などとい
った根本対策が必要になる。
(図
商店街の成長マトリクス)
取扱商品・サービス
顧客
(表
既存
新
既存
地域住民浸透戦略
新店舗導入戦略
新
域外顧客獲得戦略
根本対策戦略
商店街の成長マトリクス)
戦略
戦略の中身(課題のキーワード)
イベントの継続
既存顧客の囲い込み
地域住民浸透戦略
生鮮を核としたテナント誘致
アーケード等のハード更新
活性化のための資金確保
商店街加入率の向上
後継者確保・育成
新店舗導入戦略
個店の魅力強化
空き店舗対策
個店の売上向上
域外顧客の獲得
域外顧客獲得戦略
地域資源の有効活用
観光客対応強化
活性化意識ない
根本対策
財政状況の改善
役員世代交代