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論文内容要旨
J wave in Patients with Syncope (失神患者における J 波)
Circulation Journal 掲載予定
内科系内科学 循環器内科学分野
千葉 雄太
【背景】J 波は若年者を中心に健常者においてもしばしば認められ、致死
性不整脈との関連を指摘されているが、そのような重症例は稀である。失
神も日常診療でしばしば認め、不整脈も原因となりうるが、その多くは神
経調節性反射性失神(neurally mediated reflex syncope;NMRS) などの
致死的ではないものが多くを占める。失神患者での J 波を検討した報告は
ほとんどなく、本研究では head up tilt test (HUT)を用いて、失神患
者の J 波と NMRS との関連について検討した。
【方法】失神を主訴に昭和大学病院を受診し、2011 年 1 月から 2014 年 6
月までに HUT を施行した 326 例を対象とし、安静時 12 誘導心電図で器質
的心疾患がうたがわれる所見を認める 67 例を除外した 259 例について検
討した。下壁もしくは側壁誘導の 1mm 以上の J 波の有無で J group, non-J
group の 2 群に分け、J group はさらに J 波に続く ST 部分のタイプで
ascending ST-segment, descending/horizontal ST-segment の 2 群に分
けた。HUT は 30 分、80°で行い、失神/前失神を認めない症例には薬物負
荷(アデノシン三リン酸、イソプロテレノール、硝酸イソソルビド)を行
った後に、HUT15 分、80°を施行した。いずれの薬物負荷においても失神
/前失神を認めない症例を陰性と判定した。
【結果】
J group は 97 例(37%, 男性 57 例, 47.6± 22.5 才)、non-J group は 162
例 (63%, 男性 89 例, 51.1± 21.2 才)であった。J group の 97 例中
ascending ST-segment は 66 例、descending/horizontal ST-segment は
31 例であった。J group は non-J group に比べ有意に HUT 陽性率が高く
( P<0.0001 )、 下 壁 誘 導 で の descending/horizontal ST-segment は
ascending ST-segment と比べ HUT 陽性とより強い関連を認めた (odds
ratio 3.23)。
【結語】
下壁もしくは側壁誘導の J 波は失神患者に多く認められ、HUT 誘発性 NMRS
との関連を認めた。また、下壁誘導の J 波と descending/horizontal
ST-segment は NMRS とより強い関連を認めた。