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論文内容要旨
高齢者の心臓における ATTR アミロイドーシスの臨床病理学的検討
心臓
48 巻 1 号 2016 年
掲載予定
病理系臨床病理診断学
野呂瀬
準
内容要旨
はじめに;
老人性全身性アミロイドーシス( senile systemic amyloidosis; SSA)
は、加齢に関連するアミロイドーシスであり、全身性アミロイドーシス
の一つに分類されている。野生株トランスサイレチン(transthyretin;
TTR)を構成蛋白とするアミロイドが全身の臓器に沈着する病態であり、
SSA の確定診断には、組織学的なアミロイド沈着の同定と、TTR に対す
る免疫組織化学によって診断される。主な沈着臓器は心臓と肺で、心臓
はほぼ全例に沈着を認めるとされる。無症候のことが多く、生前に診断
に至ることは少ないが、時に不整脈や心不全などの心症状を生じ問題と
なる症例がある。SSA は全身性アミロイドーシスのなかで最も頻度が高
いとされ、欧米での検討では、60 歳以上の約 10%、80 歳以上の約 25%
前後に SSA を認めるとの報告があるが、本邦ではいまだ病理学的検討は
充分とは言えない。今回我々は、80 歳以上の日本人高齢者の剖検例の心
臓を用いて SSA を有していないか ATTR アミロイド―シスの沈着を組織
学的に検討した。
対象;
2006 年から 2012 年までに浴風会病院で剖検を施行した 80 歳以上
の日本人高齢者連続 102 例(平均年齢 89.0 歳±6.1、中央値 87 歳
(80-102 歳)、男性 36 例、女性 66 例)を対象とした。
方法;
剖検臓器のうち心臓(左心室)のホルマリン固定され、パラフィン
包 埋 さ れ た 切 片 に 対 し 、 Hematoxylin-Eosin(HE)染 色 、 Congo-red
染色、Direct-fast-scarlet(DFS)染色を施行し、アミロイド沈着の
有 無 を 確 認 し た 。 さ ら に 全 症 例 に 対 し 、 TTR 染 色 を 施 行 し た 。
Congo-red 染及び DFS 染色にてアミロイド沈着が確認され、 TTR 染
色が陽性であった症例の頻度を算出し、TTR 陽性アミロイドの局在
と沈着の程度を評価した。日本人高齢者における ATTR アミロイド
―シスの発生頻度と臨床所見を含めた病態につき検討した。
結果・考察;
対象症例の 16.7%(17/102 例)において心筋細胞周囲間質、 小血管
壁に TTR 陽性アミロイドの沈着を認めた。高度のアミロイド沈着を示す
症例全例 95 歳以上であった。SSA では肉眼的に 88.2%(15/17 例)の症
例に心肥大を認めた。また SSA の存在が拡張不全による心不全の病態に
関与している可能性も考えられた。
まとめ;
SSA は加齢に関連するアミロイドーシスであり、老年人口の増加と
ともに症例が増えると思われる。更なる症例の蓄積と本症の組織所見
と病態の関連を解析する上で重要であると考えられた。