博 士 論 文 - 広島大学 学術情報リポジトリ

博
士
論
文
カキ果実の肉質評価および品質保持に
関する研究
平成27年12月
鈴
木
哲
也
目次
第1章
緒論
第2章
カキ‘富有’の肉質評価
第1節
音響振動法およびAMC法によるカキ‘富有’の肉質評価
1
9
と食べ頃予測
第2節
音響振動法およびAMC法による袋かけ栽培‘富有’の肉
25
質評価とおいしさの要因解明
第3章
第1節
カキ‘早秋’の肉質評価および品質保持技術の開発
音響振動法によるカキ‘早秋’の肉質評価と果肉硬度保持
34
技術の開発
第2節
1-MCP処理と防湿段ボール箱によるカキ‘早秋’の品
50
質保持技術の開発
第4章
第1節
カキ‘太秋’の肉質評価および品質保持技術の開発
音響振動法によるカキ‘太秋’の肉質評価とおいしさの要
57
因解明
第2節
AMC法によるカキ‘太秋’の食感評価方法の開発
66
第3節
1-MCP処理およびポリエチレン包装によるカキ‘太秋’
80
の食感保持技術の開発
第5章
総合考察
95
Synopsis
101
謝辞
107
引用文献
108
第1章
緒論
カキの来歴
カ キ( Diospyros kaki Thunb.)は カ キ ノ キ 科( Ebenaceae)カ キ 属 に 属 し ,中 国 ,日 本 ,
朝 鮮 半 島 に 分 布 し て い る . カ キ 属 に は 400 近 く の 種 が 存 在 す る と さ れ て い る が , そ の
多くは熱帯・亜熱帯地域に分布しており,カキのように温帯地域に分布している種は
多くない.熱帯・亜熱帯地域に分布しているカキ属植物には二倍体の種が多いが,カ
キは一部の九倍体品種を除き,ほとんどが六倍体であり,カキは種の形成過程で倍数
性 を 獲 得 し た と 考 え ら れ る ( 米 森 , 2008) .
カキの起源地は中国南部であり,朝鮮半島を経由して,日本に渡来したと考えられ
て い る ( 米 森 , 2008) . 「 古 事 記 」 や 「 日 本 書 紀 」 に は 地 名 や 人 名 と し て カ キ の 記 述
が あ る が ,カ キ を 果 樹 と し て 記 載 し た 最 初 の 文 献 に は「 本 草 和 名 」( 918)と「 和 名 類
聚 抄 」 ( 923~ 930) が あ る ( 菊 池 , 1948; 山 田 , 2013) . ま た , 平 安 時 代 の 宮 中 の 式
典 の 細 目 な ど を 記 し た「 延 喜 式 」( 927)に も 祭 礼 の 際 に 熟 し 柿 や 干 し 柿 が 供 物 と し て
記 載 さ れ て い た ( 米 森 , 2008) . こ れ ら は 渋 ガ キ の 記 録 で あ り , 甘 ガ キ の 最 も 古 い 記
録は神奈川県都筑郡柿生村(現川崎市麻生区)原産の‘禅寺丸’である.‘禅寺丸’
は不完全甘ガキ(後述)であり,東京では大正時代まで代表的な甘ガキであった. 一
方,江戸時代まで,完全甘ガキとして広く知られていたのは奈良県御所市原産の‘御
所’であり,これが各地で植えられ,地元の完全渋ガキや不完全甘ガキ品種と交雑し
て 完 全 甘 ガ キ 品 種 が 生 ま れ た ( 山 田 , 2013) . な お , ‘ 富 有 ’ は 岐 阜 県 本 巣 郡 川 崎 村
( 現 瑞 穂 市 ) 居 倉 の 原 産 で あ り , ‘ 居 倉 御 所 ’ と 呼 ば れ て い た . 1898 年 , 岐 阜 県 農 会
主催のカキ展覧会に福嶌才治氏が‘富有’と命名し出品して一等賞となり,その後,
1903 年 , 農 商 務 省 農 事 試 験 場 園 芸 部 恩 田 場 長 に 有 望 品 種 で あ る こ と を 認 め ら れ , 全 国
に 栽 培 が 広 ま っ た ( 第 18 回 全 国 か き 研 究 大 会 実 行 委 員 会 , 1980) .
甘ガキと渋ガキ
カ キ は 甘 渋 ,種 子 数 お よ び 果 肉 の 褐 斑 程 度 に よ っ て ,完 全 甘 ガ キ( pollination constant,
non-astringent: PCNA) , 完 全 渋 ガ キ ( pollination constant, astringent: PCA) , 不 完 全
甘 ガ キ( pollination variant, non-astringent:PVNA),不 完 全 渋 ガ キ( pollination variant,
astringent:PVA)に 分 類 さ れ る( Hume,1914;梶 浦 ,1946).第 1 表 に 示 し た よ う に ,
完全甘ガキは揮発性物質(アセトアルデヒド)の生成・蓄積とは無関係に脱渋し, そ
れ以外のカキは揮発性物質(アセトアルデヒド)が生成・蓄積することによって脱渋
する.その中で,アセトアルデヒド量の生成が相対的に高いものが 不完全甘ガキ,相
対的に低いものが不完全渋ガキ,ほとんど生成しないものが完全渋ガキと分類されて
い る ( 米 森 , 2008) . 完 全 甘 ガ キ は , 種 子 の 有 無 に か か わ ら ず 渋 味 が な い か ま た は ほ
とんどなく,通常,果肉全体に少量の褐斑が生じるものであり,‘富有’や‘次郎’
-1-
などがある.完全渋ガキは,種子の有無にかかわらず著しく渋味を有し,褐斑は生じ
ないものであり,‘西条’や‘愛宕’などがある.不完全甘ガキは,種子が形成され
るとその周囲に多量の褐斑が生じて甘ガキとなるが,種子数が少ないと種子のない部
分に渋が残るもので,‘西村早生’や‘禅寺丸’などがある.不完全渋ガキは,種子
の周囲にのみわずかに褐斑が生じるが,褐斑のない部分に著しく渋味のあるもので,
‘平核無’や‘会津身不知’などがある.不完全甘ガキは種子ができると果肉に多量
の褐斑が生じるため,肉質は粗い.完全甘ガキのうち‘富有’は種子脱渋性を有して
い る た め ,種 子 が 多 い ほ ど 果 肉 の 褐 斑 の 量 が 多 く ,種 子 脱 渋 性 を 有 し て い な い‘ 次 郎 ’
や ‘ 御 所 ’ な ど よ り 肉 質 は 粗 く な る ( 山 田 , 2013) .
岐阜県におけるカキ栽培の現状および課題
岐 阜 県 の カ キ 栽 培 面 積 は 1,340ha で 全 国 4 番 目 で あ る( 農 林 水 産 省 ,2015).甘 ガ キ
主 体 の 産 地 で あ り ,従 来 の 品 種 構 成 は 9 月 中 旬 ~ 10 月 上 旬 に 出 荷 さ れ る‘ 西 村 早 生 ’,
10 月 中 旬 ~ 下 旬 に 出 荷 さ れ る‘ 松 本 早 生 富 有 ’,11 月 上 旬 ~ 12 月 上 旬 に 出 荷 さ れ る‘ 富
有’であった.しかし,不完全甘ガキである‘西村早生’は渋果が混入しやすいこと
や果肉が硬く食味不良であること,‘松本早生富有’は早期軟化が発生しやすいこと
から,市場評価が低下しており,近年‘西村早生’の代替品種として‘早秋’,‘松
本早生富有’の代替品種として‘太秋’が導入されている. ‘早秋’は極早生の完全
甘 ガ キ と し て 10 月 初 旬 か ら 収 穫 が で き る こ と ,果 皮 色 は 赤 く ,良 食 味 で へ た す き 果 が
ほ と ん ど 発 生 し な い こ と か ら ( 山 田 ら , 2004) , 市 場 評 価 が 高 く , 高 単 価 で 販 売 さ れ
ている.しかし,‘西村早生’よりも日持ち性が短いこと,果肉硬度が早く低下する
ことが課題である.‘太秋’は中生の完全甘ガキであり,食味の優れていることが最
大 の 特 徴 で あ る( 山 根 ら ,2001).そ の 特 徴 は サ ク サ ク と し た 食 感 に 起 因 し て お り( 山
根 , 1994) , サ ク サ ク 感 を 生 か し た 販 売 戦 略 の 構 築 が 重 要 で あ る . ま た , 岐 阜 県 は ,
1998 年 頃 か ら , 労 力 分 散 お よ び 年 末 贈 答 需 要 に 対 応 す る た め , 袋 か け 栽 培 ‘ 富 有 ’ に
取 り 組 ん で い る . こ れ は 通 常 栽 培 の ‘ 富 有 ’ の 出 荷 終 了 後 , 12 月 中 旬 に 出 荷 す る . 樹
上での成熟期間が長いため,糖度が高いなど食味が優れている.この袋かけ栽培‘富
有’のうち,大きさ,糖度,果色が一定の基準を満たしているものを「果宝柿」と名
付け,岐阜県のトップブランドとして販売している.
岐阜県産のカキは中京および京浜市場を中心に出荷しており,‘富有’においては
名 古 屋 中 央 卸 売 市 場 の 取 扱 量 の 約 92% を 占 め て い る( 名 古 屋 市 , 2015).ほ ぼ 独 占 的
な状況であるが,販売価格は低迷している.供給量が少ない年でも,販売価格は上昇
せず,カキの需要そのものが減少していると考えられる.このような状況の中,需要
拡大を図るキーワードの一つとしておいしさがある.カキだけではなく,果物全体の
消費低迷が続いている中において,消費者ニーズが高く,栽培面積の増加している品
種がある.ブドウの‘シャインマスカット’,リンゴの‘シナノスイート’,ナシの
-2-
‘あきづき’,カンキツ類の‘せとか’などであり,これらの共通点は食味が優れて
い る こ と で あ る ( 山 田 , 2014) . そ こ で , 岐 阜 県 に お い て は , サ ク サ ク 感 を 有 し て い
る‘太秋’,高級ブランドとして評価の高い袋かけ栽培‘富有’など食味の優れてい
る商品づくりに取り組んでいる.
一般的に果物のおいしさは糖含量,糖組成,有機酸含量,糖酸比,硬度,食感,芳
香 な ど か ら 構 成 さ れ て い る .し か し ,カ キ 果 実 に 含 ま れ て い る 有 機 酸( 主 に ク エ ン 酸 ,
リ ン ゴ 酸 ) は 官 能 で 感 知 で き な い ほ ど 少 な い ( 三 浦 ・ 荒 木 , 1988) . ま た , カ キ 果 実
の 芳 香 に つ い て は ,揮 発 性 成 分 の 同 定( Horvat ら ,1991;平 ら ,1996)や 官 能 評 価( Lyon
ら , 1992) の 報 告 は あ る が , 香 り そ の も の が 弱 く , そ の 構 成 成 分 な ど は 十 分 解 明 さ れ
ていない.これらのことから,カキ果実のおいしさは糖含量や糖組成などの甘味,硬
度 や 食 感 な ど の 肉 質 に よ っ て 決 定 さ れ る .糖 含 量 や 糖 組 成 に つ い て の 報 告 は 多 く あ り ,
平 井・ 山 崎( 1984)は ,甘 ガ キ お よ び 渋 ガ キ 18 品 種 の 糖 組 成 を ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
ー で 測 定 し た 結 果 を 報 告 し て い る . 辻 ・ 小 宮 山 ( 1987) は , ‘ 富 有 ’ お よ び ‘ 甲 州 百
目’においてショ糖分解酵素の一つであるインベルター ゼの活性と糖組成との関係を
報告している.インべルターゼの活性上昇は甘味の増加に繋がると考えられている.
鄭 ・ 杉 浦 ( 1990) は , 甘 ガ キ お よ び 渋 ガ キ 6 品 種 に お け る 経 時 的 な 糖 組 成 の 変 化 と イ
ン ベ ル タ ー ゼ 活 性 と の 関 係 に つ い て 報 告 し て い る .ま た ,糖 度 向 上 技 術 と し て ,松 本 ・
黒 田( 1982)は 着 果 調 整 ,鈴 木 ら( 2010b)は 光 環 境 改 善 と 着 果 調 整 に つ い て 報 告 し て
いる.しかし,果肉硬度や食感など肉質よるおいしさの評価の報告は少ない.
カキの果肉硬度
カ キ の 果 肉 硬 度 に は 品 種 間 差 異 が あ り ,‘ 西 村 早 生 ’は 硬 く ,‘ 平 核 無 ’と‘ 太 秋 ’
は 軟 ら か い 品 種 で あ る ( 山 田 ら , 1998) . ま た , 成 熟 に 従 っ て 果 肉 硬 度 は 軟 ら か く な
る.収穫後,甘ガキ(完全甘ガキおよび種子が十分入っている不完全甘ガキ)は直ぐ
に食べることができるが,渋ガキ(完全渋ガキ,不完全渋ガキおよび種子が十分入っ
ていない不完全甘ガキ)は脱渋しないと渋くて食べることができない.脱渋方法には
炭酸ガス脱渋法やアルコール脱渋法などがあり,いずれも脱渋処理後,果肉硬度は低
下 す る ( 平 ら , 1987) .
一般的に果肉硬度は果実硬度計によって測定される.しかし,果実硬度計はプラン
ジャを貫入した時の最大貫入力を計測するため,対象物を破壊しなければならず,同
一 果 実 を 継 時 的 に 評 価 す る こ と が で き な い .非 破 壊 法 と し て ,Abbott ら( 1968),Finney
( 1970) は , 振 動 を 利 用 し て 果 実 の 弾 性 を 測 定 す る 方 法 を 開 発 し た が , 接 触 式 の セ ン
サ で 振 動 を 検 出 し て い た . そ こ で , Muramatsu ら ( 1997) は , 非 破 壊 お よ び 非 接 触 法
と し て , 果 実 に 正 弦 波 振 動 を 与 え た 時 の 振 動 を レ ー ザ ー ド ッ プ ラ ー 振 動 計 ( Laser
Doppler Vibrometer,LDV)で 測 定 す る 方 法 を 開 発 し た .キ ウ イ フ ル ー ツ( Terasaki ら ,
2001b, c) , リ ン ゴ ( 元 村 ら , 2004) , セ イ ヨ ウ ナ シ ( Murayama ら , 2006; Taniwaki
-3-
ら ,2009b; Terasaki ら ,2006),カ キ( Taniwaki ら ,2009a),メ ロ ン( Taniwaki ら ,
2009c,2010)な ど に お い て ,弾 性 指 標 に よ る 果 肉 硬 度 や 食 べ 頃 の 推 定 な ど が 報 告 さ れ
て い る . さ ら に , Kuroki ら ( 2006) は , LDV 法 を 応 用 し た 音 響 振 動 法 に よ る 小 型 測 定
装 置 を 開 発 し , ト マ ト ス ラ イ ス の 果 肉 硬 度 推 定 ( 中 野 ら , 2008) , セ イ ヨ ウ ナ シ の 可
食 期 お よ び 熟 度 推 定 な ど ( 知 野 ら , 2009, 2010a, 2010b, 2011) , ブ ド ウ の 品 種 に よ
る 果 肉 硬 度 の 軟 化 様 式 特 性 ( Takahashi ら , 2010) , ニ ホ ン ナ シ の 熟 度 指 標 ( 黒 坂 ら ,
2010) , ア ボ カ ド の 食 べ 頃 判 別 と 予 測 ( 秋 元 ら , 2010, 2011a, 2011b) , プ ル ー ン の
収 穫 指 標 と 予 測( 大 畑・櫻 井 ,2011,2012),マ ン ゴ ー の 果 肉 硬 度 推 定 と 品 質 保 持( 文
室 ・ 櫻 井 , 2011, 2012, Fumuro・ Sakurai, 2014) , ウ メ の 梅 酒 原 料 の 選 定 指 標 ( 大 江
ら , 2013) , ピ タ ヤ の 収 穫 適 期 判 定 ( Fumuro ら , 2013) な ど が 報 告 さ れ て い る .
このように,音響振動法によって,同一果実を非破壊で継続的に評価できるように
なり,多くの果実で果肉特性が明らかにされてきた.しかし,カキ果実において,品
種の違いによる保存条件を考慮した研究はほとんど行われていない.
カキ果実の食感
カキの育種において,以前は肉質が緻密な果実ほど良食味とされていたが,現在,
肉質の粗密は人によって好みがあり,どちらも「良い食味」であると位置づけられて
い る ( 山 田 , 2011) . 実 際 ‘ 太 秋 ’ は 肉 質 が 粗 く 軟 ら か い 品 種 で あ る が , 食 味 は 優 れ
て い る と 評 価 さ れ て い る .そ の 要 因 は ,食 感 が サ ク サ ク と し て い る こ と( 山 根 ,1994),
‘ 富 有 ’と は 糖 組 成 が 異 な る こ と ( 鈴 木 ら ,2010a)な ど で あ る .特 に サ ク サ ク と し た
食感は今までのカキにはない新たな食感であり,高い人気を得ている.そこで,この
サクサク感の有無や強弱を評価するために,定量的な計測方法が必要となってきた.
一般的な食感評価法として官能試験が多く行われているが,客観的な評価は困難で
あ る ( Taniwaki・ Sakurai, 2010) . ま た , 機 器 測 定 と し て , 実 際 に 人 が 食 べ た 時 に 発
生 す る 音 を マ イ ク ロ フ ォ ン で 計 測 す る 方 法 が 研 究 さ れ て き た が( Christensen・Vickers,
1981;De Belie ら ,2000,2002;Drake,1963,1965;Lee ら ,1998;Seymour・Hamann,
1998; Vickers・ Bourne, 1976) , 個 人 差 の 大 き い こ と , 再 現 性 の な い こ と が 課 題 で あ
っ た . そ こ で , Sakurai ら ( 2005a, b) は , プ ロ ー ブ を サ ン プ ル に 貫 入 さ せ , そ の 時 に
発生する音響振動をプローブとピストンの間に挟んだ圧電素子で検出する食感測定装
置 ( Acoustic Measurement of Crispness, AMC) を 開 発 し , 「 シ ャ ー プ ネ ス 指 標 」 に よ
っ て キ ュ ウ リ や カ キ の 肉 質 評 価 を 行 っ た .そ の 後 ,Taniwaki ら( 2006b)は ,電 圧 デ ー
タをオクターブマルチフィルタで周波数帯域ごとに分けて数値化し た.その食感指標
( TI: Texture Index) に よ っ て , ネ ギ ( Kuroki ら , 2008; Taniwaki ら , 2006a) , キ ャ
ベ ツ ( Taniwaki・ Sakurai, 2008) , セ イ ヨ ウ ナ シ ( Taniwaki ら , 2009b) , ス イ カ ( 岩
谷 ら , 2009) , ブ ド ウ ( 岩 谷 ら , 2010) な ど の 食 感 評 価 が 報 告 さ れ て い る . そ の 後 ,
Iwatani ら ( 2013) は , 振 動 検 出 を 圧 電 素 子 か ら 加 速 度 セ ン サ に 替 え , エ ネ ル ギ ー 食 感
-4-
指 標 を 厳 密 な 物 理 量 で 定 義 し , ス イ カ ( 岩 谷 ら , 2011) の 食 感 評 価 に つ い て 報 告 し て
いる.
従来の肉質評価方法で‘太秋’のサクサク感を定量評価することは難しく,生産者
や 流 通 販 売 関 係 者 な ど か ら サ ク サ ク 感 の 定 量 評 価 方 法 が 求 め ら れ て き た .AMC 法 に よ
って,少しずつ青果物の果肉特性が評価されてきたが,‘太秋’のサクサク感はまだ
評価されていない.
カキ果実の品質保持
果物を食べない一番の理由は,日持ちがせず買い置きができないことであり(公益
財 団 法 人 中 央 果 実 協 会 , 2015) , 日 持 ち 性 お よ び 品 質 保 持 の 短 さ が 消 費 低 迷 の 大 き な
要因の一つになっている.カキの消費拡大,有利販売を図るためには,食べ頃のおい
しい果実を供給するとともに品質保持によっておいしい果実の供給期間を拡大するこ
とが重要である.
収穫後にカキ果実の品質が悪化する要因には,果実自体の生理作用,果実からの水
分 蒸 散 , 微 生 物 に よ る 腐 敗 が あ る ( 北 川 , 1970) . 生 理 作 用 に よ る 品 質 悪 化 の う ち 最
たるものは軟化である.カキ果実の軟化にはエチレンが関わっており,エチレン生成
に 関 し て 多 く の 報 告 が あ る ( 板 村 ら , 1991; 岩 田 ら , 1969; 高 田 , 1982, 1983) . 板
村 ら ( 1986, 1994) は , ‘ 平 核 無 ’ に お い て , ア ル コ ー ル 脱 渋 処 理 に よ り エ チ レ ン 生
成が早まること,摘葉処理により脱渋後のエチレン生成が促進することを報告してい
る .Nakano ら( 2001)は ,‘ 西 条 ’に お い て ,水 分 ス ト レ ス お よ び 脱 渋 処 理 に 伴 う CO 2
ス ト レ ス が エ チ レ ン 誘 導 に 関 与 し て い る こ と を 報 告 し て い る . 千 々 和 ら ( 2002) は ,
‘ 伊 豆 ’に お い て ,へ た す き 果 が 健 全 果 よ り エ チ レ ン 生 成 の 早 い こ と を 報 告 し て い る .
播 磨 ら ( 2006) は , ‘ 刀 根 早 生 ’ に お い て , 環 状 は く 皮 処 理 に よ り エ チ レ ン 生 成 量 が
増 加 す る こ と を 報 告 し て い る .ま た ,カ キ 果 実 で は ,水 分 蒸 散 に よ っ て 減 量 率 が 3~ 5%
に な る と 果 実 表 面 の 光 沢 が 減 少 し ,5% を 越 す と 光 沢 が 消 失 ,シ ワ が 出 現 し ,肉 質 が 弾
性 化 す る ( 樽 谷 , 1965) . 果 実 か ら の 水 分 蒸 散 に 関 し て は , ‘ 富 有 ’ 果 実 を ポ リ エ チ
レ ン 袋 に 密 封 す る と 水 分 蒸 散 が 抑 制 さ れ , 貯 蔵 性 が 優 れ る こ と ( 樽 谷 , 1960) , ‘ 富
有’果実を高湿条件で保存すると低湿条件よりも水分損失量,エチレン生成量が少な
く な る こ と ( Tuchida ら , 2003) が 報 告 さ れ て い る .
軟 化 や 肉 質 の 変 化 は 細 胞 壁 構 成 成 分 の 分 解 に よ る と 考 え ら れ て い る . 平 ら ( 1986)
は,アルコールおよび炭酸ガス脱渋後における‘平核無’の硬度低下は水溶性ペクチ
ン の 増 加 に よ る と 報 告 し て い る . 板 村 ら ( 1989) , Itamura ら ( 1995) は , ア ル コ ー ル
脱渋後における‘平核無’や‘刀根早生’の急速な軟化はヘミセルロースの分解によ
る と 報 告 し て い る .石 丸 ら( 2001)は ,ア ル コ ー ル お よ び 炭 酸 ガ ス 脱 渋 後 に お け る‘ 平
核無’の軟化は水溶性ペクチン画分のウロン酸量の増加と水不溶性ペクチン画分のウ
ロン酸量の減少およびヘミセルロースの減少が関係していると報告している.また,
-5-
Tsuchida ら ( 2004) は , ‘ 富 有 ’ 果 実 に お け る 軟 化 は 様 々 な 細 胞 壁 構 成 成 分 の 含 量 の
変化によると報告している.
実 用 的 な 品 質 保 持 対 策 と し て , 石 丸 ら ( 1998) は , ハ ウ ス ‘ 刀 根 早 生 ’ に お い て ,
CO 2 脱 渋 時 に CO 2 濃 度 を 漸 次 低 下 さ せ る と 呼 吸 量 , エ チ レ ン 生 成 量 を 抑 え , 果 実 硬 度
を 保 持 で き る こ と を 報 告 し て い る . 播 磨 ら ( 2002a , 2002b ) は , CTSD ( Constant
Temperature Short Duration)脱 渋 法( Matsuo ら ,1976)に よ る 脱 渋 処 理 後 の ハ ウ ス‘ 刀
根早生’において,有孔ポリエチレン包装や透湿度を抑えた段ボール紙出荷容器によ
り ,エ チ レ ン 生 成 の 誘 導 と 軟 化 の 発 生 を 抑 制 す る こ と を 報 告 し て い る .ま た ,2010 年 ,
1-メ チ ル シ ク ロ プ ロ ペ ン( 1-MCP)が 日 本 で 農 薬 登 録 さ れ ,2015 年 5 月 現 在 ,リ ン ゴ ,
ナ シ , カ キ で 使 用 が 可 能 で あ る . 1-MCP は エ チ レ ン よ り も エ チ レ ン 受 容 体 に 対 す る 親
和性が高く,エチレンよりも先にエチレン受容体に結合するため,受容体の活性が維
持 さ れ , 成 熟 ・ 老 化 が 抑 制 さ れ た ま ま に な る ( 樫 村 , 2005) . リ ン ゴ ( 艾 乃 吐 拉 ら ,
2005;樫 村 ら ,2010a;Tatsuki ら ,2006),ナ シ( 島 田 ら ,2011),キ ウ イ フ ル ー ツ( Boquete
ら ,2004;Cantin ら ,2011;Kim ら ,2001),バ ナ ナ( Jiang ら ,1999;小 泉 ら ,2008;
Tojo ら , 2009) な ど に お け る 品 質 保 持 , 日 持 ち 性 向 上 効 果 が 報 告 さ れ て お り , カ キ に
お い て も ,‘ 刀 根 早 生 ’・‘ 西 条 ’( Harima ら ,2003),‘ 松 本 早 生 富 有 ’( 新 川 ら ,
2005),‘ 西 条 ’( 倉 橋 ら ,2005) ,‘ 蓮 台 寺 ’( Ortiz ら ,2005) ,‘ Rojo Brillante’
( Salvador ら , 2004b) な ど に お い て , 軟 化 抑 制 の 効 果 が 報 告 さ れ て い る .
こ の よ う に , カ キ 果 実 に は エ チ レ ン や 水 分 蒸 散 と 軟 化 の 関 係 , 1-MCP な ど に よ る 品
質保持についての報告があるが,おいしさに関わる肉質評価から品質保持について研
究した報告は少ない.そこで,カキ果実の肉質評価および品質保持に関する研究を行
った.
現在の‘富有’における収穫基準では,出荷時においてまだ果肉が硬すぎて食べ頃
に な っ て い な い .そ こ で ,第 2 章 で は‘ 富 有 ’の 肉 質 評 価 に 関 す る 研 究 を 行 っ た .第 1
節 で は ,音 響 振 動 法 お よ び AMC 法 に よ っ て ,‘ 富 有 ’の 肉 質 特 性 の 変 化 ,す な わ ち 食
べ頃を明らかにするとともに食べ頃予測式を作成した.第 2 節では,音響振動法およ
び AMC 法 に よ っ て ,‘ 富 有 ’の 抑 制 栽 培 で あ る 袋 か け 栽 培‘ 富 有 ’の 肉 質 特 性 を 明 ら
かにするとともにおいしさの要因を調査した.
‘早秋’は従来の早生品種に比べて日持ち性が短く,果肉硬度の低下が早いことが
課題であった.そこで,第 3 章では‘早秋’の肉質評価および品質保持に関する研究
を行った.第 1 節と第 2 節において,音響振動法により,‘早秋’の果肉硬度特性お
よび食べ頃を明らかにするとともに品質保持技術を開発した.
‘太秋’は食味の優れた品種であり,特にサクサクとした食感が人気である.この
サクサク感を活かすことにより,カキの新しい需要を喚起すると期待されている.そ
こで,第 4 章では‘太秋’の肉質評価および品質保持に関する研究を行った.第 1 節
では,音響振動法によって,‘太秋’の果肉硬度特性を明らかにするとともにおいし
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さ の 要 因 を 調 査 し た .第 2 節 で は ,AMC 法 に よ っ て ,‘ 太 秋 ’に お け る サ ク サ ク 感 の
定 量 評 価 方 法 を 開 発 し た .第 3 節 で は ,AMC 法 に よ っ て ,‘ 太 秋 ’の 肉 質 特 性 お よ び
食べ頃を明らかにするとともに品質保持技術を開発した.
なお,各品種とも,収穫時期は岐阜県における収穫基準を基本とした.
-7-
-8-
有Y
Y
種子数によって変動する
種子ができると,その周囲に褐斑が生じて脱渋する
不完全渋ガキはその範囲が狭いため,果肉全体としては渋い
X
可溶性タンニンの生成が早期に停止し,それが果実内で希釈される
W
褐斑部
Z
渋Y(変Z)
不完全渋ガキ(PVA)
有
Y
変
無
Z
無
甘渋性と種子との関係
渋
甘
甘渋性
不完全甘ガキ(PVNA)
完全渋ガキ(PCA)
完全甘ガキ(PCNA)
種類
第1表 甘ガキ,渋ガキの区分(山田,2013;米森,2008)
相対的に低い
相対的に高い
有(弱)
有(強)
無
有・無
(無関係に脱渋するX)
ほとんど生成しない
種子脱渋力
アセトアルデヒドの生成
少Y
多
Y
無
少
果肉の褐斑
密
粗W
密
やや粗W
肉質
第2章
カキ‘富有’の肉質評価
第1節
音響振動法およびAMC法によるカキ‘富有’の肉質評価と食べ頃予測
緒言
現 在 ,カ キ の 出 荷 基 準 は 大 き さ ,形 ,色 な ど の 外 観 に よ り 区 分 さ れ て い る .し か し ,
消 費 者 が 自 家 用 の カ キ を 購 入 す る 際 の 重 要 な 要 因 は 色 ,味 で あ る( 秋 元・伊 藤 ,1979a).
また,小売店がカキを仕入れる際の重要な要因は産地や銘柄であり,その理由は‘味
の 保 証 ’で あ る( 秋 元 ・ 伊 藤 , 1979b).こ の よ う に ,以 前 か ら 消 費 者 や 小 売 店 が カ キ
に求めているものは味であったが,実際に味を評価した販売はなかなか行われていな
かった.
カキの食味に係る主な要因は甘さ,果肉硬度および食感などであり,近年,糖度に
ついては,選果場における内部品質センサー導入,小売店における糖度表示など,生
産および販売面での取り組みが行われている.
一方,果肉硬度や食感については,まだ取り組みが行われていない.特に果 肉硬度
は収穫後大きく変化すること,また嗜好に個人差や地域差があることなどから,その
評価を行うことは極めて重要である.
従 来 ,果 肉 硬 度 の 測 定 は 破 壊 法 で 行 わ れ て お り ,樽 谷 ・ 真 部( 1960),樽 谷( 1960,
1961) は ‘ 富 有 ’ に お け る 貯 蔵 中 の 温 度 , 包 装 形 態 お よ び ガ ス 条 件 が 果 肉 硬 度 に 及 ぼ
す影響を報告している.しかし,破壊法では同一果実における経時的な測定ができな
いため,カキ果実本来の果肉硬度推移の評価が困難であった.実用的な非破壊法とし
て , 大 森 ・ 鷹 尾 ( 1994) は , 青 果 物 の 弾 性 範 囲 内 に お け る 圧 縮 力 と 変 形 量 の 関 係 か ら
軟 ら か さ を 測 定 す る 非 破 壊 評 価 装 置 ( HIT カ ウ ン タ ) を 開 発 し た . 薬 師 寺 ら ( 1995)
は カ キ へ の 適 応 性 を 検 討 し , HIT カ ウ ン タ 値 と ユ ニ バ ー サ ル 型 果 実 硬 度 計 , お よ び ,
ペネトロメータによる測定値との間に強い相関関係があることを明らかにした.しか
し,プランジャを果面に接触させて測定するため,同一果実の継続測定において,傷
害エチレンの発生による果肉硬度への影響を指摘した.近年,非破壊および非接触法
と し て ,Muramatsu ら( 1997)は 果 実 に 正 弦 波 振 動 を 与 え た 時 の 振 動 を レ ー ザ ー ド ッ プ
ラ ー 振 動 計( Laser Doppler Vibrometer,LDV)で 測 定 す る 方 法 を 開 発 し た .キ ウ イ フ ル
ー ツ( Terasaki ら ,2001b),リ ン ゴ( 元 村 ら ,2004),カ キ( Sakurai ら ,2005b;Taniwaki
ら , 2009a) , セ イ ヨ ウ ナ シ ( Murayama ら , 2006; Taniwaki ら , 2009b; Terasaki ら ,
2006),メ ロ ン( Taniwaki ら ,2009c; Taniwaki ら ,2010)な ど に お い て ,果 肉 硬 度 の
非 破 壊 測 定 が 報 告 さ れ て い る . し か し , LDV 法 に よ る 測 定 装 置 は 大 き く 高 価 で あ る た
め , Kuroki ら ( 2006) は LDV 法 を 応 用 し た 音 響 振 動 法 に よ る 小 型 測 定 装 置 を 開 発 し ,
栽 培 中 の 温 室 メ ロ ン に お け る 弾 性 指 標 の 変 化 を 明 ら か に し た .ト マ ト( 中 野 ら ,2008),
セ イ ヨ ウ ナ シ( 知 野 ら ,2009,2010a)な ど に お い て ,果 肉 硬 度 測 定 に よ る 果 実 特 性 の
評価が報告されている.
-9-
一方,従来の食感測定では,実際に人が食べた時に発生する音をマイクロフォンで
計測する方法がとられていた.しかし,個人差の大きいこと,再現性のないことが課
題 で あ っ た . Sakurai ら ( 2005a, b) は プ ロ ー ブ を サ ン プ ル に 貫 入 さ せ , そ の 時 に 発 生
する音響振動をプローブとピストンの間に挟んだ圧電素子で検出する食感測定装置
( Acoustic Measurement of Crispness, AMC) を 開 発 し , カ キ や キ ュ ウ リ の 肉 質 評 価 を
行 い ,そ の パ ラ メ ー タ ー「 シ ャ ー プ ネ ス 指 標 」に つ い て 検 討 し た .Taniwaki ら( 2006b)
は,その電圧データをオクターブマルチフィルタで周波数帯域ごとに分けて数値化し
た . ネ ギ ( Taniwaki ら , 2006a) , キ ャ ベ ツ ( Taniwaki・ Sakurai, 2008) , セ イ ヨ ウ ナ
シ( Taniwaki ら ,2009b)な ど に お い て ,食 感 の 数 値 化 お よ び そ の 評 価 が 報 告 さ れ て い
る.
カキ‘富有’における現在の収穫基準では,出荷時においてまだ果肉が硬すぎて食
べ頃になっていない.そこで,本研究では,‘富有’において音響振動法による果肉
硬 度 の 非 破 壊 測 定 お よ び 音 響 法( AMC 法 )に よ る 食 感 測 定 を 行 い ,収 穫 後 の 果 実 に お
ける肉質特性の変化,すなわち食べ頃を明らかにするとともに果肉硬度の変化から食
べ頃の予測が可能であることを明らかにしたので報告する.
材料および方法
1.音 響 振 動 法 に よ る 果 肉 硬 度 の 測 定 ( 実 験 1)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー に 植 栽 さ れ て い る ‘ 富 有 ’ ( 1963 年 定 植 ) の 果 実 を 供 試 し
た . 2008 年 は 収 穫 始 期 の 11 月 7 日 , 収 穫 盛 期 の 11 月 17 日 , 2009 年 は 収 穫 始 期 の 11
月 5 日 ,収 穫 盛 期 の 11 月 15 日 ,収 穫 終 期 の 11 月 25 日 に ,果 頂 部 の 果 皮 色 が‘ 富 有 ’
用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 ) で 5.0 に 達 し た 果 実 を そ れ ぞ れ 72
果 採 取 し た . 果 皮 色 の 測 定 に は 色 彩 色 差 計 ( CR-400, コ ニ カ ミ ノ ル タ ( 株 ) ) を 使 用
し た .新 川 ら( 2008)の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し ,測 定 し た 色 相 角 度( H°)を カ ラ
ー チ ャ ー ト 値( CC 値 )に 変 換 し た .CC 値 = - 8.101×LN( H°)+ 38.829( r 2 = 0.992).
収 穫 時( 収 穫 後 0 日 )~ 収 穫 後 40 日 ま で ,概 ね 1 日 お き に 非 破 壊 法 に よ る 果 肉 硬 度
の 測 定 ,軟 化 度 調 査 お よ び 官 能 評 価 な ど を 行 っ た .な お ,果 実 は 40 日 間 室 温 下 に 保 管
した.
非破壊法による果肉硬度の測定は小型振動測定装置((有)生物振動研究所)を使
用した.果実のへたを上向きにしてスポンジ上に置き,加振器と受振器を果実の赤道
部 の 対 角 線 上 に 軽 く 挟 み , 100~ 1,500 Hz の 振 動 を 与 え た . 第 2 共 鳴 周 波 数 ( f 2 ) を 振
幅 強 度 お よ び 位 相 か ら 求 め ,Kuroki ら( 2006)の 報 告 に 準 じ て ,弾 性 指 標( EI:Elasticity
Index) を 算 出 し た . な お , 果 実 直 径 ( d) は 加 振 器 と 受 振 器 の 挟 ん だ 長 さ と し た .
軟 化 判 定 は , 岩 田 ら ( 1969) の 手 法 を 用 い た . 軟 化 度 Ⅲ ( 指 で 押 す と 崩 壊 し そ う に
な る , ま た は 果 肉 の 一 部 が 水 浸 状 に な る ) に 達 し た 時 点 を 軟 化 と し た . な お , 2008 年
11 月 7 日 収 穫 は 25 果 ,2008 年 11 月 17 日 収 穫 と 2009 年 11 月 5 日 収 穫 は 24 果 ,2009
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年 11 月 15 日 収 穫 は 26 果 , 2009 年 11 月 25 日 収 穫 は 33 果 中 軟 化 し た 果 実 の 頻 度 を 軟
化率とした.
官 能 評 価 は 1 日 ( 回 ) に 2~ 3 果 用 い , 5 段 階 評 点 法 で 硬 さ お よ び お い し さ を 評 価 し
た . 硬 さ は 非 常 に 軟 ら か い ( - 2) ~ ち ょ う ど 良 い( 0) ~ 非 常 に 硬 い ( + 2), お い し
さ は 非 常 に お い し く な い( - 2)~ 普 通( 0)~ 非 常 に お い し い( + 2)と し た .パ ネ ル
は 岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 職 員 で 構 成 し , 2008 年 は 7 人 ( 男 性 5 人 ・ 女 性 2 人 , 30~
50 歳 代 ),2009 年 は 9 人( 男 性 6 人・女 性 3 人 ,30~ 50 歳 代 )と し た .い ず れ の パ ネ
ルも約 1 ヶ月半の訓練をした後,官能評価を行った.
また,官能評価におけるおいしさの評点と非破壊法による果肉硬度(弾性指標)と
の関係から,食べ頃を決定した.
<弾 性 指 標 の 計 算 >
本 実 験 で は , 音 響 振 動 法 に よ る 小 型 振 動 測 定 装 置 で 弾 性 指 標 ( EI) を 測 定 し た .
Abbott ら ( 1968) は , リ ン ゴ 果 実 に お い て 第 2 共 鳴 周 波 数 と 果 肉 弾 性 と の 間 に 強 い
相 関 が あ る こ と を 明 ら か に し た . そ の 後 , Cooke( 1972) は , 弾 性 率 ( μ) を 次 の 式 で
表 し た . α は 形 状 定 数 , ρ は 密 度 , m は 果 実 重 量 , f2 は 第 2 共 鳴 周 波 数 で あ る .
μ= α×ρ (1/ 3 ) ×m (2 / 3 ) ×f 2 2
Terasaki ら ( 2001a) は , 共 鳴 す る 果 実 の 振 動 モ ー ド を 決 定 し , 第 2 共 鳴 周 波 数 の 振
動モードが半径方向に回転楕円体状に歪むことを明らかにして上記式の理論を裏付け
た . ま た , 上 記 式 か ら , 定 数 項 で あ る 形 状 定 数 α と 密 度 ρ を 除 く と 弾 性 指 標 ( EI) は
次の式になる.
EI= m (2 / 3 ) ×f 2 2
Kuroki ら ( 2006) は , LDV 法 を 応 用 し た 音 響 振 動 法 に よ る 小 型 振 動 測 定 装 置 を 開 発
し , 樹 上 の 果 実 が 測 定 で き る よ う に 果 実 の 弾 性 指 標 ( EI) を 果 実 重 量 の 替 わ り に 果 実
直 径 ( d) を 用 い る 次 の 式 を 報 告 し た . 単 位 は m 2 ・ s -2 で あ る .
EI= d 2 ×f 2 2
2.音 響 法 ( A M C 法 ) に よ る 食 感 の 測 定 ( 実 験 2)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー に 植 栽 さ れ て い る ‘ 富 有 ’ ( 1963 年 定 植 ) の 果 実 を 供 試 し
た .2009 年 11 月 4 日 ~ 11 月 24 日 ま で ,1 日 お き に 各 6 果( 測 定 用 5 果 ,予 備 用 1 果 )
採取し,測定まで室温下に保管した.採取基準は,果頂部の果皮色が‘富有’用カラ
ー チ ャ ー ト 値 で 5.0 と し , 実 験 1 と 同 様 の 方 法 で 測 定 し た .
12 月 2 日 に 実 験 1 と 同 様 の 方 法 で , 非 破 壊 法 に よ る 果 肉 硬 度 を 小 型 振 動 測 定 装 置
((有)生物振動研究所)で測定した.
12 月 3 日 に は ,食 感 を 音 響 法( AMC 法 )に よ る 食 感 測 定 装 置(( 有 )生 物 振 動 研 究
所 )で 測 定 し た .果 実 赤 道 部 を 厚 さ 2 cm 程 度 に 輪 切 り に し ,果 皮 に や や 近 い 果 肉 部 を
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6 か 所 測 定 し た .楔 形 の プ ロ ー ブ( 直 径 5 mm,幅 5 mm)を 放 射 状 の 向 き に 毎 秒 22 mm
の速度で果肉に貫入させ,その時に生じる音響振動を圧電素子((株)富士セラミッ
ク ス )で 検 出 し ,出 力 電 圧 信 号 を コ ン ピ ュ ー タ で 解 析 し た .得 ら れ た 信 号 は 0~ 10Hz,
10~ 50Hz,50~ 100Hz,100Hz か ら 25,600Hz ま で は 半 オ ク タ ー ブ 毎 に 分 け ,19 の 周 波
数 帯 域 に 分 割 し た . Taniwaki・ Sakurai( 2008) の 報 告 に 準 じ て , 各 周 波 数 帯 域 の 食 感
指 標 ( TI: Texture Index) を 算 出 し た .
Taniwaki ら( 2009a)は‘ 富 有 ’と‘ 太 秋 ’に お い て ,19 に 分 割 し た 周 波 数 帯 域 の う
ち , 0~ 50 Hz の 食 感 指 標 が 官 能 評 価 に お け る 硬 さ と 高 い 相 関 の あ る こ と を 報 告 し て い
る . ま た , 岩 谷 ら ( 2009) は ス イ カ に お い て , 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz の 食 感 指 標 は , 非
破壊法による弾性指標で測定できる可能性を示唆している.これらのことから,食感
指 標 ( 0~ 50 Hz) と 弾 性 指 標 の 関 係 を 求 め た .
<食 感 指 標 の 計 算 >
本 実 験 で は , AMC 法 に よ る 食 感 測 定 装 置 で 食 感 指 標 ( TI) を 測 定 し た .
振動は物体が運動することによるので,その運動を 2 乗するとエネルギーに相当す
る 値 に な る . そ こ で , 食 感 指 標 ( TI) を 次 の よ う に 定 義 し た ( 櫻 井 , 2013; Taniwaki
ら , 2006a; Taniwaki・ Sakurai, 2008) . v は プ ロ ー ブ の 振 動 速 度 , n は デ ー タ 数 で あ
る.
TI= ∑ ( v 2 ) / n
プ ロ ー ブ の 振 動 速 度( v)と セ ン サ か ら の 電 圧 値( V)と の 間 に は ,セ ン サ が 位 置 情 報 を
検 出 す る と す れ ば v≃V×f の 関 係 が あ る た め , 食 感 指 標 ( TI) は 次 の 式 で 表 す こ と が で
きる.f は振動周波数である.
TI= ∑ ( V×f ) 2 / n= ( f 2 /n) ×∑ ( V 2 )
f は帯域の中心の周波数であることから,その 2 乗は帯域の下側と上側の周波数を掛け
た 値 と 等 し く な る た め , 食 感 指 標 ( TI) は 次 の 式 で 表 す こ と が で き る . 下 限 周 波 数
( f l ) , 上 限 周 波 数 ( f u ) , 振 幅 ( V i ) お よ び デ ー タ 数 ( n) で あ る .
TI=( f l f u )
1
n
n
Σ Vi 2
i=1
結果
1.音 響 振 動 法 に よ る 果 肉 硬 度 の 測 定 ( 実 験 1)
1)収 穫 後 の 弾 性 指 標 の 変 化
今回使用したカキは収穫時期,年度に関わらず,収穫時(収穫後 0 日)の弾性指標
はほぼ一定であり,収穫後の弾性指標の変化は同様のパターンを示した(第 1 図).
収 穫 後 0~ 14 日( 弾 性 指 標 43.4~ 14.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 )ま で は 大 き く 低 下 し ,そ の 後 緩
やかに低下した.
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2)収 穫 後 の 軟 化 率 お よ び 食 味 の 変 化
い ず れ の 収 穫 時 期 に お い て も ,収 穫 後 24 日 ま で は 軟 化 の 発 生 が 認 め ら れ ず ,35 日 前
後以降,軟化度Ⅲに達した果実の割合(軟化率)が増加した(データ略).
また,いずれの収穫時期においても,官能評価における硬さの評点は,収穫時(収
穫 後 0 日 )を ピ ー ク に そ の 後 低 下 し た .お い し さ の 評 点 は ,収 穫 後 10 日 前 後 を ピ ー ク
に山型に推移した(データ略).
3)官 能 評 価 に お け る 評 点 と 弾 性 指 標 と の 関 係
官能評価における硬さの評点と弾性指標との間には,硬さの評点 0 を境にして 2 つ
の有意な正の相関関係が認められた(第 2 図).相関係数は硬さの評点が 0 以上で r
= 0.873, 0 未 満 で r= 0.779 で あ っ た . 硬 さ の 評 点 が 0 未 満 で は , 硬 さ の 評 点 が 0~
- 2.0 ま で 大 き く 変 化 す る に も か か わ ら ず ,弾 性 指 標 の 変 化 は 14.4~ 5.0×10 6 cm 2 ・Hz 2
までと小さかった.
ま た ,お い し さ の 評 点 と 弾 性 指 標 と の 間 に は ,お い し さ の 評 点 が 最 も 大 き い 0.4 の 時
の 弾 性 指 標 22.4×10 6 cm 2 ・Hz 2 を 境 に し て ,2 つ の 有 意 な 正 と 負 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ
た ( 第 3 図 ) . 相 関 係 数 は 弾 性 指 標 が 22.4×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 上 で r= - 0.855, 22.4×
10 6 cm 2 ・Hz 2 未 満 で r= 0.813 で あ っ た . お い し さ の 評 点 が 0 以 上 の 弾 性 指 標 は 13.563
~ 30.202×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ り , こ の 範 囲 を 食 べ 頃 と 決 定 し た .
4)食 べ 頃 の 予 測
Terasaki ら( 2006)の 報 告 に 準 じ て ,逆 数 式( [1]式 )へ の フ ィ ッ テ ィ ン グ を 行 っ た .
Y= Y 0
1-
t
[ 1]
α+βt
Y は 弾 性 指 標 ,Y 0 は 収 穫 後 0 日 の 弾 性 指 標 , t は 収 穫 後 日 数 , α と β は 係 数 で あ る .
なお,αとβはχ2 フィッティングにより,係数の値を求めた.
食 べ 頃 の 弾 性 指 標 13.563~ 30.202×10 6 cm 2 ・Hz 2 を 含 む 中 で ,最 も フ ィ ッ テ ィ ン グ が
良 か っ た 収 穫 後 0~ 18 日 ま で の 弾 性 指 標 か ら , 次 の 式 を 得 た ( r= 0.999) .
Y= Y 0
1-
t
[ 2]
9.386+ 0.830t
- 13 -
[2]式 か ら 食 べ 頃 ( 収 穫 後 日 数 t) を 求 め る た め に , 以 下 の 式 に 変 形 し た .
t=
9.386( Y- Y 0 )
[ 3]
0.830( Y 0 - Y) - Y 0
食 べ 頃 始 期( t 1 )の 弾 性 指 標( Y)は 30.202×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ る た め ,[3]式 か ら 以
下の式で求められる.
t1=
9.386( 30.202- Y 0 )
[ 4]
0.830( Y 0 - 30.202) - Y 0
食 べ 頃 終 期 ( t 2 ) の 弾 性 指 標 ( Y) は 13. 563×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ る た め , [3]式 か ら
以下の式で求められる.
t2=
9.386( 13.563- Y 0 )
[ 5]
0.830( Y 0 - 13.563) - Y 0
こ の こ と か ら ,食 べ 頃 始 期 の 予 測 式 は [4]式 ,食 べ 頃 終 期 の 予 測 式 は [5]式 と な っ た .
な お ,弾 性 指 標( Y)は 指 数 表 示 に お け る 10 6 を 外 し た 仮 数 部 と し た た め ,収 穫 後 0 日
の 弾 性 指 標 ( Y0 ) も 指 数 部 を 代 入 す る .
この予測式の有効性を確認するため,本実験において供試した果実のうち,官能評
価 に 用 い た 果 実 を 除 い た 122 果 の 弾 性 指 標 の 測 定 デ ー タ を 用 い た . 実 際 の 食 べ 頃 始 期
は 弾 性 指 標 が 30.202×10 6 cm 2 ・Hz 2 ,食 べ 頃 終 期 は 弾 性 指 標 が 13.563×10 6 cm 2 ・Hz 2 に
相 当 す る 日 と し た( 実 測 値 ).実 測 値 の 平 均 は 食 べ 頃 始 期 で 4.3 日 ,食 べ 頃 終 期 で 14.7
日 で あ っ た . 予 測 値 は , 収 穫 後 0 日 の 弾 性 指 標 を 前 述 の [4]式 , [5]式 に 代 入 し て 算 出
し た . 食 べ 頃 始 期 に お け る 実 測 値 と 予 測 値 の 誤 差 ( 絶 対 値 ) は , 実 測 値 が 収 穫 後 2~ 6
日 で 0.5~ 1.0 日 ,7~ 10 日 で 1.3 日 で あ っ た .一 方 ,食 べ 頃 終 期 に お け る 誤 差( 絶 対 値 )
は , 実 測 値 が 収 穫 後 11~ 22 日 で 0.7~ 2.4 日 , 9, 10 日 で 3.5 日 で あ っ た ( 第 4 図 ) .
2.音 響 法 ( A M C 法 ) に よ る 食 感 の 測 定 ( 実 験 2)
1)収 穫 後 の 食 感 指 標 の 変 化
食感指標は,収穫後日数が経つに従い低下した(第 5 図).収穫後日数は,供試果
実 を 採 取 し て か ら 食 感 を 測 定 し た 12 月 3 日 ま で の 日 数 と し た .食 感 指 標 の 低 下 し た 幅
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が 最 も 大 き か っ た の は 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz で , 収 穫 後 9 日 は 7.7 Hz 2 mV 2 , 収 穫 後 29
日 は 6.5 Hz 2 mV 2 で あ っ た . 次 い で 560~ 800 Hz で あ り , 高 周 波 数 帯 域 ほ ど 低 下 幅 は 小
さかった.
ま た , 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz に お け る 食 感 指 標 は , 収 穫 後 9~ 15 日 ま で は 変 わ ら ず ,
17 日 以 降 低 下 し た ( 第 6 図 ) .
2)食 感 指 標 と 弾 性 指 標 と の 関 係
周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz に お け る 食 感 指 標 と 弾 性 指 標 と の 間 に は ,食 べ 頃 終 期 の 弾 性 指
標 13.563×10 6 cm 2 ・Hz 2 を 境 に し て ,2 つ の 有 意 な 正 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ た( 第 7 図 ).
相 関 係 数 は 弾 性 指 標 13.563×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 上 で r= 0.655, 13.563×10 6 cm 2 ・Hz 2 未
満 で r= 0.647 で あ っ た .
食 べ 頃 終 期 ま で は , 弾 性 指 標 の 変 化 の 幅 が 大 き く ( 27.8~ 13.5×10 6 cm 2 ・Hz 2 ) , 食
感 指 標 は 小 さ か っ た ( 7.7~ 7.2 Hz 2 mV 2 ) . 一 方 , 食 べ 頃 終 期 を 過 ぎ て か ら は , 食 感 指
標 の 変 化 の 幅 が 大 き く ( 7.5~ 5.9 Hz 2 mV 2 ) , 弾 性 指 標 は 小 さ か っ た ( 12.8~ 7.0×10 6
cm 2 ・Hz 2 ) .
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考察
カキ‘富有’の収穫後(収穫後 0 日)の弾性指標は,収穫時期に関わらず差が認め
ら れ な か っ た . 山 田 ら ( 1998) は , 収 穫 時 期 が 遅 く な る ほ ど 果 肉 硬 度 も 低 下 す る と し
たが,これは着色の進度に合わせて採取を行ったためと考えられる.カキは果頂部の
果皮色を収穫基準としており,本研究では岐阜県における‘富有’出荷基準のカラー
チ ャ ー ト 値 5.0 に 達 し た 果 実 を 採 取 し た の で ,硬 度 に 差 が 認 め ら れ な か っ た と 考 え ら れ
る .す な わ ち ,着 色 は カ キ 果 実 の 成 熟 段 階 を 判 断 す る 指 標 の 一 つ で あ り( 米 森 ,2002),
収穫時期に関わらず果皮色が同じであれば同じ成熟段階にあり,果 肉硬度に差はなか
ったものと考えられる.
‘ 富 有 ’果 実 は 軟 化 す る .す な わ ち 果 肉 硬 度 は 低 下 す る .音 響 振 動 法 に よ る 弾 性 指 標
は 指 数 関 数 的 に 低 下 し た .こ れ は ,Taniwaki ら( 2009a)が LDV 法 で 測 定 し た‘ 富 有 ’
や‘ 太 秋 ’の 弾 性 指 標 の 結 果 と 同 様 で あ っ た .LDV 法 に よ る キ ウ イ フ ル ー ツ( Terasaki
ら , 2001b) , セ イ ヨ ウ ナ シ ( Murayama ら , 2006; Taniwaki ら , 2009b; Terasaki ら ,
2006) の 弾 性 指 標 も 指 数 関 数 的 に 減 少 し て い る . ま た , 本 研 究 に お い て , 弾 性 指 標 は
収穫時期に関わらず,同様のパターンで低下した.セイヨウナシ‘ラ・フランス’果
実は低温処理日数に関わらず,低温処理後測定した弾性指標から食べ頃が予測できる
と 示 唆 さ れ て お り ( 藤 路 ら , 2006) , 果 実 の 硬 度 レ ベ ル を 揃 え る こ と に よ っ て , 果 実
熟度も揃うものと考えられる.
第 1 お よ び 2 図 よ り , 果 実 の 軟 化 が 進 み , 食 べ 頃 終 期 ( 弾 性 指 標 13.563×10 6 cm 2 ・
Hz 2 )を 過 ぎ る と ,弾 性 指 標 の 変 化 の 幅 は 小 さ く な り ,果 肉 硬 度 の 変 化 を 反 映 し 難 く な
った.これは,第 2 共鳴周波数から算出している弾性指標は果実中心部の弾性を反映
し て い る た め ( 黒 木 ら , 2006) , 果 実 の 外 側 に 軟 化 が 進 む と 果 実 中 心 部 の 軟 化 , す な
わち弾性指標の変化の幅は小さくなると考えられる.一方,第 6 および 7 図より,周
波 数 帯 域 0~ 50 Hz に お け る 食 感 指 標 は ,食 べ 頃 終 期 を 過 ぎ て か ら の 変 化 の 幅 が 大 き か
った.このことから,食べ頃終期を過ぎてからは,食感指標の方が弾性指標よりも果
肉 特 性 を 鋭 敏 に 評 価 で き る こ と が 明 ら か に な っ た .以 上 の こ と か ら ,収 穫 後 の‘ 富 有 ’
果実における肉質評価は,食べ頃終期までは音響振動法による弾性指標が,それ以降
は 音 響 法 ( AMC 法 ) に よ る 食 感 指 標 が 有 効 な 方 法 で あ る と 考 え ら れ る . こ の こ と は ,
Taniwaki ら ( 2009a) に よ る LDV 法 で 測 定 し た ‘ 富 有 ’ の 弾 性 指 標 が , 食 べ 頃 ま で は
有効であるとする報告と同様であった.
収穫後の‘富有’果実における弾性指標の変化から,食べ頃予測式を作成した.食
べ頃始期における実測値と予測値の誤差(絶対値)は小さく,実用性は高いと考えら
れ る .一 方 ,食 べ 頃 終 期 に お け る 誤 差( 絶 対 値 )は 食 べ 頃 始 期 に 比 べ て や や 大 き い が ,
食べ頃終期の弾性指標は非常に緩やかに減少し,その弾性指標に相当する日数が長い
ことから,実用上大きな問題はないと考えられる.しかし,今後,より精度の高い予
測式を作成するため,さらなる検討が必要である.
- 16 -
また,本予測式には収穫時の弾性指標が必要であり,現在,この測定装置を選果機
の速度に対応して導入することは難しく,今後,測定時間の短縮化など装置の改良が
必要である.
食べ頃の表示によって,消費者にちょうど良い硬さのおいしいカキを提供すること
が可能となる.カキの硬さの嗜好には個人差や地域差があるため,それぞれに応じた
販売や消費宣伝を行い,販売促進に繋げることができる.また,脱渋した渋ガキをよ
く食べる地域では,甘ガキである‘富有’の硬さは馴染みが薄く,食べ頃が分かり難
い.そこで,‘富有’の食べ頃あるいは消費者の嗜好にあった食べ頃時期を提示する
ことによって,今まであまり‘富有’を食べられていなかった新しい市場を開拓する
ことができると考えられる.近年,価格低迷などにより,農家経営が圧迫され産地活
力が低下しているなか,食べ頃表示による販売はカキの消費拡大を図ることができ,
カキ産地の活性化を促すことできると期待される.
- 17 -
50
2008/11/7 (n=72~26)
cm2 ・Hz2 )
45
2008/11/17(n=72~24)
40
2009/11/5 (n=72~24)
35
2009/11/15(n=72~26)
弾性指標(×106
30
2009/11/25(n=72~33)
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
収穫後日数(日)
第1図 ‘富有’における収穫後の弾性指標の変化
縦線は標準誤差を示す
- 18 -
35
40
cm2 ・Hz2 )
45
弾性指標(×106
50
30
40
35
25
20
r=0.873**(n=28)
r=0.779**(n=47)
15
10
5
0
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
硬さの評点
第2図 ‘富有’における硬さの評点と弾性指標との関係
**は1%水準で有意であることを示す
- 19 -
1.5
cm2 ・Hz2 )
45
弾性指標(×106
50
30
r=-0.855**
(n=16)
40
35
25
r=0.813**
(n=59)
20
15
10
5
0
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
おいしさの評点
第3図 ‘富有’におけるおいしさの評点と弾性指標との関係
**は1%水準で有意であることを示す
- 20 -
4.0
n=13
食べ頃終期
3.5
誤差Z(日)
3.0
15
21
2.5
2.0
18
1.5
30
25
1.0
0.5
0.0
9,10日
11,12日
2.0
13,14日
15,16日
17,18日 19~22日
食べ頃始期
8
誤差Z(日)
1.5
21
20
33
1.0
n=13
27
0.5
0.0
2日
3日
4日
5日
6日
7~10日
実測値(収穫後日数)
第4図 食べ頃終期および始期における実測値と予測値との誤差の関係
縦線は標準誤差を示す
Z
実測値と予測値との誤差日数(絶対値)
- 21 -
- 22 -
周波数帯域(Hz)
第5図 収穫後日数の違いが‘富有’の食感指標に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す
収穫後日数は9,13,17,21,25および29 dayの表示とした
(9 day n=21,13~29 day n=30)
17,920-25,600
12,800-17,920
8,920-12,800
13day
25day
6,400-8,920
4,480-6,400
3,200-4,480
2,240-3,200
1,600-2,240
1,120-1,600
9day
21day
800-1,120
560-800
400-560
280-400
200-280
140-200
100-140
50-100
10-50
0-50
食感指標(Hz2 mV2 )
8.0
17day
29day
7.0
6.0
5.0
4.0
8.0
食感指標(Hz2 mV2 )
a
a
a
ab
7.5
b
b
c
cd
d
7.0
e
e
6.5
6.0
9
11
13
15
17
19
21
23
25
収穫後日数(日)
第6図 ‘富有’における周波数帯域0-50 Hzの食感指標の変化
縦線は標準誤差を示す
異符号間はTukeyの多重検定により,5%水準で有意で
あることを示す
(9 day n=21,13~29 day n=30)
- 23 -
27
29
弾性指標(×106
cm2 ・Hz2 )
30
25
r = 0.655**(n=22)
20
15
r = 0.647**(n=31)
10
5
0
5.5
6.0
6.5
7.0
7.5
8.0
食感指標(Hz2 mV2 )
第7図 ‘富有’における周波数帯域0-50 Hzの食感指標と弾性指標の関係
**は1%水準で有意であることを示す
- 24 -
第2節
音響振動法およびAMC法による袋かけ栽培‘富有’の肉質評価とおいしさ
の要因解明
緒言
カ キ ‘ 富 有 ’ の 収 穫 時 期 は 11 月 上 旬 か ら 12 月 上 旬 ま で で あ る . そ の 時 期 の 生 産 者
は収穫作業,家庭選果作業,産地によっては選果場への出役があり, 一年間で最も多
忙である.従って,収穫時期の労働力によって栽培面積が決まる.構造的に価格が低
迷している中,規模拡大による生産量増大,生産コスト低減が重要である.また,通
常の栽培では,贈答需要が高まり,市場が活発になる年末出荷に対応できない.そこ
で,労力分散および年末贈答対応を図るため,‘富有’の抑制栽培が検討された.光
質 転 換 不 織 布 を 枝 ご と に 被 覆 す る 方 法 ( 松 村 ら , 2000) , ハ ウ ス で 樹 ご と に ビ ニ ル を
被 覆 す る 方 法 ( 尾 関 ら , 2005) な ど が 検 討 さ れ た が , 不 織 布 被 覆 の 労 力 , 施 設 費 お よ
び光熱費などのコストがかかることから,産地への本格的な導入には至らなかった.
し か し , そ の 後 , 手 軽 に 収 穫 時 期 を 遅 ら せ る こ と の で き る 袋 か け 栽 培 ( 片 桐 , 1993)
が考案され,全国の一部の産地で取り組まれた.岐阜県では「果宝柿」や「おふくろ
柿」,和歌山県では「夢」などのブランド名で高値販売され,高級ブ ランドとして位
置づけられている.
袋 か け 栽 培‘ 富 有 ’が 高 級 ブ ラ ン ド と し て 評 価 を 得 て い る 要 因 は 12 月 中 旬 に 出 荷 さ
れ る だ け で な く ,そ の 食 味 の 良 さ に あ る .通 常 栽 培‘ 富 有 ’の 収 穫 盛 期( 11 月 20 日 頃 )
か ら 約 3~ 4 週 間 樹 上 に 長 く 成 っ て い る こ と か ら ,糖 度 は 高 く な る( 片 桐 ,1993).そ
こ で ,本 研 究 で は ,音 響 振 動 法 に よ る 弾 性 指 標 お よ び AMC 法 に よ る 食 感 指 標 を 測 定 し ,
袋かけ栽培‘富有’の肉質評価を行い,糖度以外のおいしさの要因を明らかにした.
材料および方法
1.音 響 振 動 法 に よ る 果 肉 硬 度 の 測 定 ( 実 験 1)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の 袋 か け 栽 培 ‘ 富 有 ’ ( 1963 年 定 植 ) の 果 実 を 供 試 し
た . 2008 年 は 9 月 10 日 , 2009 年 は 9 月 8 日 か ら 収 穫 時 ま で , 白 色 パ ラ フ ィ ン 袋 を へ
た も 含 め て 果 実 ご と 被 袋 し た .2008 年 は 12 月 11 日 に 14 果 ,2009 年 は 12 月 9 日 に 50
果 ,一 斉 収 穫 し た .そ の 後 ,果 実 は 室 温 下 に 保 管 し ,収 穫 後 30 日 ま で 概 ね 2 日 お き に
果肉硬度,果皮色および軟化度などを調査した.
果肉硬度は音響振動法による小型振動測定装置((有)生物振動研究所)で測定し
た.果実のへたを上向きにしてスポンジ上に置き,加振器と受振器を果実の赤道部の
対 角 線 上 に 軽 く 挟 み , 100~ 1,500 Hz の 振 動 を 与 え た . 第 2 共 鳴 周 波 数 ( f 2 ) を ス ペ ク
ト ル ピ ー ク お よ び 位 相 か ら 求 め , Kuroki ら ( 2006) の 報 告 に 準 じ て , 弾 性 指 標 ( EI:
Elasticity Index) を 以 下 の 式 で 算 出 し た . 果 実 直 径 ( d) は 加 振 器 と 受 振 器 の 挟 ん だ 長
さとした.
- 25 -
EI= d 2 ・f 2 2
果 頂 部 の 果 皮 色 は 色 彩 色 差 計 ( CR-400, コ ニ カ ミ ノ ル タ ( 株 ) ) で 測 定 し た . 新 川
ら( 2008)の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し ,測 定 し た 色 相 角 度( H°)を‘ 富 有 ’用 カ ラ
ー チ ャ ー ト 値 ( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 ) に 変 換 し た . カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ( CC 値 )
= - 8.101×LN( H°) + 38.829( r 2 = 0.992) .
軟 化 判 定 は 岩 田 ら( 1969)の 手 法 を 用 い ,軟 化 度 Ⅲ( 指 で 押 す と 崩 壊 し そ う に な る ,
ま た は 果 肉 の 一 部 が 水 浸 状 に な っ て い る ) を 軟 化 と 判 断 し た . 2008 年 は 15 果 , 2009
年 は 26 果 中 軟 化 し た 果 実 の 頻 度 を 軟 化 率 と し た .
なお,通常栽培‘富有’の弾性指標および軟化率は,前節の実験 1 における収穫盛
期 , 2008 年 11 月 17 日 , 2009 年 11 月 15 日 の デ ー タ と し た .
2.A M C 法 に よ る 食 感 の 測 定 ( 実 験 2)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の 袋 か け 栽 培 ‘ 富 有 ’ ( 1963 年 定 植 ) の 果 実 を 供 試 し
た . 2009 年 9 月 8 日 か ら 収 穫 時 ま で , 白 色 パ ラ フ ィ ン 袋 を へ た も 含 め て 果 実 ご と 被 袋
し た .12 月 9 日 ,12 月 15 日 に 果 頂 部 の 果 皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 で 6,8,
10 の 果 実 を 各 6 果 採 取 し た .ま た ,12 月 9 日 に 対 照 と し て 通 常( 無 袋 )栽 培 の‘ 富 有 ’
を同様に採取した.果皮色の測定は実験 1 と同様の方法で行った.その後,室温下に
保 管 し , 12 月 17 日 に 食 感 を 測 定 し た .
食 感 は AMC 法 に よ る 食 感 測 定 装 置(( 有 )生 物 振 動 研 究 所 )で 測 定 し た .果 実 赤 道
部 を 厚 さ 2 cm 程 度 に 輪 切 り に し ,楔 形 の プ ロ ー ブ( 直 径 5 mm,幅 5 mm,先 端 30 °)
で 果 皮 に や や 近 い 果 肉 部 を 6 か 所 , 放 射 状 の 向 き に 測 定 し た . 毎 秒 22 mm の 速 度 で 赤
道面に対して直角に貫入させ,その時に生じる音響振動を圧電素子((株)富士セラ
ミックス)で検出し,出力電圧信号をコンピュータで解析した.得られた信号は,半
オ ク タ ー ブ マ ル チ フ ィ ル タ を 用 い て 19 の 周 波 数 帯 域 に 分 割 し た . Taniwaki・ Sakurai
( 2008)の 報 告 に 準 じ て ,各 周 波 数 帯 域 の 食 感 指 標( TI:Texture Index)を 下 限 周 波 数
( f l ) , 上 限 周 波 数 ( f u ) , 振 幅 ( V i ) お よ び デ ー タ 数 ( n) か ら , 以 下 の 式 で 算 出
した.
TI=( f l f u )
1
n
n
Σ Vi 2
i=1
結果
1. 音 響 振 動 法 に よ る 果 肉 硬 度 の 測 定 ( 実 験 1)
袋 か け 栽 培‘ 富 有 ’に お け る 収 穫 時 の 果 頂 部 の 果 皮 色( カ ラ ー チ ャ ー ト 値 )は ,2008
年 が 7.1, 2009 年 が 8.3 で あ り , そ の 後 , 微 増 し た ( デ ー タ 略 ) .
- 26 -
収 穫 直 後 の 弾 性 指 標 は , 2008 年 で 23.7×10 6 cm 2 ・Hz 2 , 2009 年 で 24.9×10 6 cm 2 ・Hz 2
で あ り( 第 8 図 ),両 年 と も 通 常 栽 培 の‘ 富 有 ’に お け る 収 穫 直 後 の 弾 性 指 標 の 約 55% ,
収 穫 後 約 7 日 の 弾 性 指 標 に 相 当 し た .収 穫 後 の 弾 性 指 標 は ,両 年 と も 収 穫 後 10~ 12 日
頃までは大きく,その後緩やかに低下し,通常栽培と同様の傾向を示した.
軟 化 率 は , 両 年 と も 収 穫 後 18~ 20 日 以 降 増 加 し た ( デ ー タ 略 ) .
2. A M C 法 に よ る 食 感 の 測 定 ( 実 験 2)
袋かけ栽培‘富有’における食感指標は果皮色(カラーチャート値)が高いほど,
収 穫 日 が 早 い ほ ど 低 か っ た ( 第 9 図 ) . 12 月 9 日 収 穫 の カ ラ ー チ ャ ー ト 値 6 の 果 実 と
12 月 15 日 収 穫 の カ ラ ー チ ャ ー ト 値 8 の 果 実 , 12 月 9 日 収 穫 の カ ラ ー チ ャ ー ト 値 8 の
果 実 と 12 月 15 日 収 穫 の カ ラ ー チ ャ ー ト 値 10 の 果 実 の 食 感 指 標 が ほ ぼ 同 様 で あ っ た .
ま た ,周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz に お い て ,12 月 15 日 収 穫 の 食 感 指 標 に 対 す る 12 月 9 日
収 穫 の 食 感 指 標 の 割 合 は カ ラ ー チ ャ ー ト 値 6 で 99.0%,8 で 97.5%,10 で 94.6%で あ り ,
カ ラ ー チ ャ ー ト 値 が 高 い ほ ど 小 さ か っ た ( 第 10 図 ) .
12 月 9 日 に 収 穫 し た 袋 か け 栽 培 ‘ 富 有 ’ と 通 常 ( 無 袋 ) 栽 培 ‘ 富 有 ’ と の 間 に は ,
い ず れ の カ ラ ー チ ャ ー ト 値 に お い て も 食 感 指 標 に 差 は 認 め ら れ な か っ た ( 第 11 図 ) .
- 27 -
考察
ニホンナシ,リンゴ,モモ,ブドウなどでは病害虫防除,外観保持および裂果防止
を 目 的 と し て 袋 か け が 行 わ れ て い る ( 小 林 , 1982) . し か し , カ キ ‘ 富 有 ’ に お け る
袋かけの目的は,収穫時期の遅延による収穫・選果作業の労力分散および 年末贈答需
要対応である.
袋 か け 栽 培‘ 富 有 ’の 収 穫 直 後 の 弾 性 指 標 は ,2008 年 で 23.7×10 6 cm 2 ・Hz 2 ,2009 年
で 24.9×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ り ( 第 8 図 ) , 両 年 と も 通 常 栽 培 ‘ 富 有 ’ に お け る 食 べ 頃 の
弾 性 指 標 13.6~ 30.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 ( 第 3 図 ) の 範 囲 内 で あ っ た . 袋 か け 栽 培 ‘ 富 有 ’
は収穫まで樹上で成熟が進み,果肉硬度が低下するため,収穫時には既に食べ頃にな
っていると考えられた.また,この点から,収穫時には完熟に近い状態になっている
と考えられた.このことは,軟化度Ⅰ~Ⅳ(Ⅰ.じゅうぶんに堅い,Ⅱ.全体にかな
り軟らかくなるが,しっかりしている,Ⅲ.指で押すと崩壊しそうになる,または果
肉の一部が水浸状になっている,Ⅳ.非常に軟弱となる,または果皮の一部が破損し
ている)のうち,軟化度Ⅱを完熟期,Ⅲを過熟期への過渡期,Ⅳを過熟期とした岩田
ら ( 1969) の 報 告 と 一 致 し て い る .
袋かけ栽培‘富有’における収穫直後の弾性指標は,通常栽培の‘富有’における
収穫後約 7 日の弾性指標に相当した.そこで,袋かけ栽培‘富有’の収穫後 0 日を通
常栽培‘富有’の収穫後 7 日に合わせると,弾性指標の推移はほぼ同様であり,両栽
培 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た( 第 12 図 ).こ の こ と か ら ,‘ 富 有 ’で は 収 穫 時 期 や 収
穫 時 の 果 皮 色 が 異 な っ て も ,収 穫 時 の 弾 性 指 標 が わ か れ ば ,そ の 後 の 弾 性 指 標 の 推 移 ,
すなわち食べ頃が推定できると考えられた.また,軟化による細胞壁構成成分の変化
は 品 種 や 脱 渋 方 法 に よ っ て 異 な る こ と か ら ( 石 丸 ら , 2001, 2002) , 袋 か け 栽 培 に お
い て も 肉 質 に 変 化 が 生 じ て い る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ た .そ こ で ,実 験 2 に お い て ,
AMC 法 に よ る 食 感 測 定 装 置 で 食 感 指 標 を 測 定 し た が ,袋 か け の 有 無 に よ る 食 感 指 標 の
違 い , す な わ ち 肉 質 の 違 い は 認 め ら れ な か っ た ( 第 11 図 ) .
通 常 栽 培 ‘ 富 有 ’ の 収 穫 時 期 は 11 月 上 旬 か ら 12 月 上 旬 で あ る . 日 持 ち 性 な ど を 考
慮した販売面および果実が低温障害に遭遇する前に収穫し終えなければならない農作
業 面 か ら ,一 定 の 果 皮 色(‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 5)に 達 し た 果 実 を 収 穫 し て い
る.そのため,収穫直後の果肉硬度はまだ硬く,食べ頃になっていない.一方,袋か
け栽培‘富有’は袋かけによる低温障害の防止によって,収穫時期を通常栽培よりも
約 3~ 4 週 間 遅 ら せ ,12 月 中 旬 に 収 穫 し て い る .本 実 験 か ら ,袋 か け 栽 培 で は ,収 穫 時
に完熟状態となり,食べ頃の硬さになっていることが明らかにされ,このことが袋か
け栽培‘富有’のおいしさの要因と考えられた.また,‘富有’は成熟に伴い糖組成
が 変 化 す る こ と ( 辻 ・ 小 宮 山 , 1987) , 人 は 同 じ 糖 度 で も , 果 肉 が 軟 ら か い ほ ど 甘 味
を 強 く 判 断 す る こ と ( 藤 原 ・ 板 倉 , 1999) か ら も お い し く 感 じ ら れ る と 考 え ら れ た .
- 28 -
弾性指標(×106
cm2 ・Hz2 )
30
2008/12/11(n=14~13)
2009/12/9(n=50~26)
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
収穫後日数(日)
第8図 袋かけ栽培‘富有’における収穫後の弾性指標の変化
縦線は標準誤差を示す
- 29 -
8.5
12/9収穫-CC値6(n=30)
12/9収穫-CC値10(n=34)
12/15収穫-CC値8(n=29)
12/9収穫-CC値8(n=30)
12/15収穫-CC値6(n=30)
12/15収穫-CC値10(n=34)
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
0-50
10-50
50-100
100-140
140-200
200-280
280-400
400-560
560-800
800-1,120
1,120-1,600
1,600-2,240
2,240-3,200
3,200-4,480
4,480-6,400
6,400-8,920
8,920-12,800
12,800-17,920
17,920-25,600
食感指標(Hz2 mV2 )
8.0
周波数帯域(Hz)
第9図 収穫日と果皮色の違いが袋かけ栽培‘富有’の食感指標に
及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す
- 30 -
8.0
n=30
n=30
n=29
n=30
n=30
7.5
n=34
12/9収穫
12/15収穫
第10図 袋かけ栽培‘富有’における周波数帯域
0-50 Hzの食感指標
縦線は標準誤差を示す
- 31 -
CC値10
CC値8
CC値6
CC値10
CC値8
7.0
CC値6
食感指標(Hz2 mV2 )
8.5
0-50
10-50
50-100
100-140
140-200
200-280
280-400
400-560
560-800
800-1,120
1,120-1,600
1,600-2,240
2,240-3,200
3,200-4,480
4,480-6,400
6,400-8,920
8,920-12,800
12,800-17,920
17,920-25,600
食感指標(Hz2mV 2)
食感指標(Hz2mV 2)
食感指標(Hz2mV 2)
9
9
9
袋かけ栽培-CC値10(n=34)
通常栽培-CC値10(n=36)
8
7
6
5
袋かけ栽培-CC値8(n=30)
通常栽培-CC値8(n=36)
8
7
6
5
袋かけ栽培-CC値6(n=30)
通常栽培-CC値6(n=27)
8
7
6
5
周波数帯域(Hz)
第11図 栽培方法の違いが‘富有’の食感指標に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す
(上段:CC値10,中段:CC値8,下段:CC値6)
- 32 -
2008/11/17(通常栽培)
弾性指標(×106
cm2 ・Hz2 )
50
2009/11/15(通常栽培)
45
2008/12/11(袋かけ栽培)
40
2009/12/9(袋かけ栽培)
35
30
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
収穫後日数(日)Z
第12図 通常栽培‘富有’および袋かけ栽培‘富有’における弾性指標
の推移
Z
通常栽培の収穫後日数(袋かけ栽培の収穫後0日を通常栽培
の収穫後7日とする)
- 33 -
第3章
カキ‘早秋’の肉質評価および品質保持技術の開発
第1節
音響振動法によるカキ‘早秋’の肉質評価と果肉硬度保持技術の開発
緒言
果樹経営において,早晩性の異なる品種の組み合わせは労力分散,危険分散などの
面から重要である.産地としても,早生品種から晩生品種まで長期間出荷する ことは
売り場の確保,選果場の運営など大きなメリットがある.特に早生品種はそのシーズ
ンで最も早く出荷され,その後の価格形成に大きな影響を与えることから,非常に重
要な役割を果たす.
リンゴでは‘つがる’,ナシでは‘幸水’,渋ガキでは‘刀根早生’が有力な早生
品種であるが,甘ガキでは‘西村早生’がその役を担っている産地が多かった.‘西
村早生’は不完全甘ガキであること,食味がやや劣ることなどから,年々市場評価が
低 下 し て い た . そ の よ う な 状 況 の 中 , 2003 年 に ‘ 早 秋 ’ が 品 種 登 録 さ れ , 極 早 生 の 完
全 甘 ガ キ と し て 10 月 初 旬 か ら 収 穫 が で き る こ と ,果 皮 色 は 赤 く ,良 食 味 で へ た す き 果
が ほ と ん ど 発 生 し な い こ と か ら( 山 田 ら ,2004),各 産 地 で 導 入 が 進 め ら れ た . し か
し,‘西村早生’や‘松本早生富有’よりも日持ち性が短いこと,すなわち,果肉硬
度が早く低下することが課題であった.日持ち性は品種によって異なり,晩生品種ほ
ど 長 い 傾 向 で あ る が ( 山 田 ら , 2002) , 技 術 的 に 日 持 ち 性 , 特 に 果 肉 硬 度 を 保 持 す る
ことは,流通段階における損失の削減に加えて,おいしいカキを長期間提供すること
からも重要である.
果肉硬度は果実硬度計による測定が一般的であり,果肉にプランジャを貫入した時
の最大貫入力で評価する.しかし,対象物を破壊しなければならないことや,より正
確 な 硬 さ の 評 価 に は 難 が あ る ( 大 森 , 1998) . そ の よ う な 中 , 非 破 壊 お よ び 非 接 触 法
と し て ,Muramatsu ら( 1997)は 果 実 に 正 弦 波 振 動 を 与 え た 時 の 振 動 を レ ー ザ ー ド ッ プ
ラ ー 振 動 計 ( Laser Doppler Vibrometer, LDV) で 測 定 す る 方 法 を 開 発 し た . し か し ,
LDV 法 に よ る 測 定 装 置 は 大 き く 高 価 で あ る た め , Kuroki ら ( 2006) は LDV 法 を 応 用
した音響振動法による小型測定装置を開発した.第 2 章第 1 節では,音響振動法によ
って,カキ‘富有’における収穫後の果肉硬度の変化を明らかにし,食べ頃予測式を
作成した.音響振動法での測定値(弾性指標)は微妙な硬さの評価が可能であり,特
に収穫直後から食べ頃までの硬さについては鋭敏に評価ができる.そこで,本研究に
おいても,音響振動法によって‘早秋’果実の硬さの特性を評価した.
カ キ 果 実 の 軟 化 に は エ チ レ ン が 関 わ っ て お り ( 板 村 ら , 1991) , Nakano ら ( 2001)
は , 水 分 ス ト レ ス や CO 2 ス ト レ ス が エ チ レ ン 誘 導 に 関 与 し て い る と 報 告 し て い る . ま
た , 樽 谷 ・ 真 部 ( 1960) , 樽 谷 ( 1960, 1961) は , カ キ ‘ 富 有 ’ 果 実 に お け る 好 適 な
貯蔵条件を低温,果実からの水分蒸散抑制,低酸素・高二酸化炭素条件と報告してい
る.これらのことから,果肉硬度保持方法としては,エチレン生合成・作用阻害,低
- 34 -
温 貯 蔵 ,水 分 蒸 散 抑 制 ,MA 貯 蔵 な ど が 想 定 さ れ る .し か し ,‘ 早 秋 ’は 常 温 下 で 流 通
さ れ る た め , 常 温 で の MA 貯 蔵 ( プ ラ ス チ ッ ク フ ィ ル ム 包 装 ) は ガ ス 障 害 な ど が 危 惧
さ れ る( 久 保 ,2002).ま た ,プ ラ ス チ ッ ク フ ィ ル ム 包 装 は 労 力 が か か る こ と か ら も ,
実用的ではない.
そこで,本研究では,‘早秋’における果肉硬度保持技術の開発として,エチレン
作用阻害,水分蒸散抑制の面から検討した.なお,果肉硬度保持技術の開発に当たっ
て,音響振動法による測定値(弾性指標)と 官能評価におけるおいしさとの関係を明
らかにした.
材料および方法
1. お い し さ の 評 点 と 弾 性 指 標 と の 関 係 ( 実 験 1)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の‘ 早 秋 ’果 実 を 供 試 し た .2011 年 10 月 4 日 に 21 果 ,
果 頂 部 の 果 皮 色 が ‘ 富 有 ’ 用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 ) で 6.0
に 達 し た 果 実 を 収 穫 し た .果 皮 色 の 測 定 に は 色 彩 色 差 計( CR-400,コ ニ カ ミ ノ ル タ( 株 ))
を 使 用 し た . 新 川 ら ( 2008) の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し , 測 定 し た 色 相 角 度 ( H°)
を カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ( CC 値 ) に 変 換 し た . CC 値 = - 9.033×LN( H°) + 43.185( r 2 =
0.986).そ の 後 ,室 温 下 に 保 管 し ,10 月 14 日 ま で に 7 回 ,1 回 当 た り 3 果 ,果 肉 硬 度
の測定と官能評価を行った.
果肉硬度は音響振動法による小型振動測定装置((有)生物振動研究所)で測定し
た.果実のへたを上向きにしてスポンジ上に置き,加振器と受振器を果実の赤道部の
対 角 線 上 に 軽 く 挟 み , 100~ 1,500 Hz の 振 動 を 与 え た . 第 2 共 鳴 周 波 数 ( f 2 ) を ス ペ ク
ト ル ピ ー ク お よ び 位 相 か ら 求 め , Kuroki ら ( 2006) の 報 告 に 準 じ て , 弾 性 指 標 ( EI:
Elasticity Index) を 以 下 の 式 で 算 出 し た . 果 実 直 径 ( d) は 加 振 器 と 受 振 器 の 挟 ん だ 長
さとした.
EI= d 2 ×f 2 2
官 能 評 価 は 5 段 階 評 点 法 で ,お い し さ( 非 常 に お い し く な い:- 2~ 非 常 に お い し い:
+ 2)を 評 価 し た .パ ネ ル は 岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 職 員 の 訓 練 さ れ た 6~ 7 人( 男 性 5
人 ・ 女 性 2 人 , 30~ 50 歳 代 ) で 構 成 し た .
2.エ チ レ ン 作 用 阻 害 剤 に よ る ‘ 早 秋 ’ の 果 肉 硬 度 保 持 技 術 の 開 発 ( 実 験 2)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の‘ 早 秋 ’果 実 を 供 試 し た .2013 年 10 月 3 日 に ,果 頂
部 の 果 皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 で 6.0 に 達 し た 果 実 を 収 穫 し た .果 皮 色 の 測
定 は 実 験 1 と 同 様 の 方 法 で 行 っ た . エ チ レ ン 作 用 阻 害 と し て 1-メ チ ル シ ク ロ プ ロ ペ ン
( 以 下 ,1-MCP)を 使 用 し た .試 験 区 は 1-MCP 処 理 を し た 1-MCP 処 理 区 お よ び 無 処 理
区 と し た .1-MCP は ,気 密 性 の プ ラ ス チ ッ ク 容 器( 内 容 積 117 L)に 果 実 と SmartFresh TM
- 35 -
( ロ ー ム ・ ア ン ド ・ ハ ー ス ・ ジ ャ パ ン ( 株 ) ) を 入 れ て 密 封 し , 初 期 濃 度 1 ppm で 24
時間曝露処理した.
処 理 後 14 日 間 , 有 効 内 寸 582 mm×392 mm×100 mm の プ ラ ス チ ッ ク コ ン テ ナ に 1
段 で 並 べ て 室 温 下 に 保 管 し ,1 日 ご と に 果 重 ,果 肉 硬 度 お よ び 果 皮 色 を ,ま た 軟 化 果 実
の 発 生 は 毎 日 調 査 し た . 1-MCP 処 理 区 は 20 果 , 無 処 理 区 は 30 果 と し た . 果 肉 硬 度 の
測 定 は 実 験 1 と 同 様 の 方 法 で 行 っ た . 軟 化 判 定 は 岩 田 ら ( 1969) の 手 法 を 用 い , 軟 化
度Ⅲ(指で押すと崩壊しそうになる,または果肉の一部が水浸状になっている)を軟
化 と 判 断 し た . 1-MCP 処 理 区 は 30 果 , 無 処 理 区 は 39 果 中 軟 化 し た 果 実 の 頻 度 を 軟 化
率とした.なお,軟化した果実は調査から除去した.
ま た ,別 の 果 実 を 供 試 し ,エ チ レ ン 生 成 速 度 を 密 閉 法( Fonseca ら ,2002)に よ っ て
毎 日 測 定 し た . 計 量 し た 約 2 kg( 8 個 ) の 果 実 を 内 容 積 4.8 L の ア ク リ ル 製 の 密 閉 容 器
に 密 封 し て 20℃ の イ ン キ ュ ベ ー タ に 静 置 し た . 密 封 後 , ヘ ッ ド ス ペ ー ス の ガ ス を 容 器
上 部 の セ プ タ ム の 付 い た ガ ス 採 取 口 か ら マ イ ク ロ シ リ ン ジ に て 2.0 mL を 40 分 お き に 4
〜 6 回 サ ン プ リ ン グ し , 水 素 炎 検 出 器 ( FID) 付 き の ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ り エ
チレン濃度を分析した.密封時間とエチレン濃度の関係を最小自乗法によって一次式
にあてはめ,その傾きをエチレン生成速度に換算した.エチレン生成速度の計測が終
了したら密封容器の蓋を取り外し,次の測定まで容器内を換気した.なお, 軟化した
果実は容器から取り除いた.
3. 水 分 蒸 散 抑 制 に よ る ‘ 早 秋 ’ の 果 肉 硬 度 保 持 技 術 の 開 発 ( 実 験 3)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の‘ 早 秋 ’を 供 試 し た .2013 年 10 月 7 日 に 果 頂 部 の 果
皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 で 6.0 に 達 し た 果 実 を 収 穫 し た .果 皮 色 の 測 定 は 実
験 1 と同様の方法で行った.
水分蒸散抑制として岐阜県産業技術センターが作成した防湿段ボール箱を使用した.
防湿樹脂の濃度などを変えた 2 種類の防湿ライナー原紙を作成し,慣行段ボール箱に
貼 り 付 け た .防 湿 ラ イ ナ ー 原 紙 の 透 湿 度 を カ ッ プ 法( JIS Z 0208:1976
-2
透 過 湿 度 試 験 方 法 )で 測 定 し た 結 果 ,130 g・m ・(24h)
-1
防湿包装材料の
-2
と 15 g・m ・(24h) -1 で あ っ た( 神
山 ら , 2014) . 透 湿 度 の 高 い 防 湿 ラ イ ナ ー 原 紙 を 貼 り 付 け た 防 湿 段 ボ ー ル 箱 A 区 , 透
湿度の低い防湿ライナー原紙を貼り付けた防湿段ボール箱 B 区,防湿ライナー原紙を
貼り付けなかった慣行段ボール区を設定し, それぞれ粘着テープで蓋の閉める部分を
留める I 貼りおよび蓋の閉める部分と角の部分を留める H 貼りで封函した(樫村ら,
2010b) . そ の 後 , 室 温 下 に 保 管 し た . 各 試 験 区 36 果 と し , 処 理 後 14 日 間 , 1 日 ご と
に 果 重 ,果 肉 硬 度 ,果 皮 色 お よ び 軟 化 果 実 の 発 生 を 調 査 し た .軟 化 率 は 各 区 36 果 中 軟
化した果実の頻度とした.なお,調査の度,段ボール箱を開閉した.果肉硬度の測定
および軟化の判定は実験 2 と同様の方法で行い,軟化した果実は調査から除去した.
- 36 -
結果
1.お い し さ の 評 点 と 弾 性 指 標 と の 関 係 ( 実 験 1)
お い し さ の 評 点 と 弾 性 指 標 と の 間 に は 有 意 な 正 の 相 関 ( r=0.924) が 認 め ら れ た . お
い し さ の 評 点 が 0 以 上 の 時 , 弾 性 指 標 は 約 22×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 上 で あ っ た ( 第 13 図 ) .
ま た ,弾 性 指 標 と 重 量 減 少 率 の 間 に は 有 意 な 負 の 相 関( r=-0.930)が 認 め ら れ た .弾 性
指 標 が 22×10 6 cm 2 ・Hz 2 の 時 , 重 量 減 少 率 は 約 3% で あ っ た ( 第 14 図 ) .
2.エ チ レ ン 作 用 阻 害 剤 に よ る ‘ 早 秋 ’ の 果 肉 硬 度 保 持 技 術 の 開 発 ( 実 験 2)
弾 性 指 標 は 指 数 関 数 的 に 減 少 し た .処 理 直 後 に お い て 1-MCP 処 理 区 が 無 処 理 区 よ り
も 有 意 に 高 か っ た が ,そ れ 以 降 ,両 区 間 の 差 は 認 め ら れ な か っ た( 第 15 図 ).重 量 減
少 率 で も ,1-MCP 処 理 区 と 無 処 理 区 と の 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た( 第 16 図 ).
軟 化 果 実 の 発 生 に つ い て , 無 処 理 区 で は 処 理 後 5 日 に 初 め て 認 め ら れ た が , 1-MCP
処 理 区 で は 処 理 後 12 日 ま で 認 め ら れ な か っ た . 無 処 理 区 で は 処 理 後 11 日 以 降 , 軟 化
果 実 の 発 生 が 急 増 し ,処 理 後 14 日 の 軟 化 率 は 35.9% で あ っ た .ま た ,1-MCP 処 理 区 に
お け る 処 理 後 14 日 の 軟 化 率 は 6.7% で あ っ た ( 第 17 図 ) .
エ チ レ ン 生 成 速 度 は ,1-MCP 処 理 区 ,無 処 理 区 と も に 処 理 後 5 日 ま で は 0.1 μL・kg -1 ・
hr -1 以 下 で あ り ,6 日 以 降 上 昇 し た .特 に 無 処 理 区 で は 大 き く 上 昇 し ,1-MCP 処 理 区 は
無 処 理 区 よ り も 低 く 推 移 し た ( 第 18 図 ) .
果 皮 色 は , 1-MCP 処 理 区 と 無 処 理 区 と の 間 に 差 が 認 め ら れ な か っ た . 処 理 後 か ら ほ
ぼ 直 線 的 に 上 昇 し ,収 穫 後 約 12 日 に は カ ラ ー チ ャ ー ト 値 が 約 10 に な っ た( デ ー タ 略 ).
な お , 試 験 期 間 中 の 室 温 は 平 均 25.4℃ ( 19.6~ 28.6℃ ) で あ っ た .
3. 水 分 蒸 散 抑 制 に よ る ‘ 早 秋 ’ の 果 肉 硬 度 保 持 技 術 の 開 発 ( 実 験 3)
慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 の 弾 性 指 標 は ほ ぼ 直 線 的 に 減 少 し た( 第 19 図 ).防 湿 段 ボ ー ル 箱
区 の 弾 性 指 標 は ,収 穫 直 後 か ら 収 穫 後 10 日 ま で は 緩 や か に ,そ れ 以 降 は 大 き く 減 少 し
た . 収 穫 後 4~ 10 日 の 間 , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 の 弾 性 指 標 は 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 よ り も 有
意に高く推移した.その間,防湿段ボール箱 B 区は防湿段ボール箱 A 区よりも,数値
の 上 で は 高 く 推 移 し た が ,I 貼 り ,H 貼 り と も に 有 意 な 差 が 認 め ら れ た の は 収 穫 後 6 日
のみであった.また,粘着テープの貼り方による弾性指標の差は認められなかった.
重量減少率は,防湿段ボール箱 B 区,防湿段ボール箱 A 区,慣行段ボール箱区の順で
有 意 に 低 く 推 移 し た( 第 20 図 ).粘 着 テ ー プ の 貼 り 方 に よ っ て ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 A 区
では収穫後 8 日以降,H 貼りが I 貼りより有意に低く推移したが,防湿段ボール箱 B
区および慣行段ボール箱区では差が認められなかった.
軟 化 率 は , 収 穫 後 12 日 以 降 , 各 試 験 区 と も 一 様 に 増 加 し , 明 確 な 差 が 認 め ら れ な
か っ た( 第 21 図 ). 収 穫 後 14 日 の 軟 化 率 は , 防 湿 段 ボ ー ル B 区 の I 貼 り ,H 貼 り と
も に 約 86% , 防 湿 段 ボ ー ル A 区 の H 貼 り で 約 81% , I 貼 り で 約 78% , 慣 行 段 ボ ー ル
- 37 -
区 の I 貼 り で 約 67% , H 貼 り で 約 53% で あ っ た .
果 皮 色 は ,収 穫 後 8 日 に 一 部 試 験 区 で 有 意 な 差 が 認 め ら れ た が ,そ の 他 の 日 に は 差
は 認 め ら れ な か っ た . 処 理 後 か ら ほ ぼ 直 線 的 に 上 昇 し , 収 穫 後 約 12 日 に は カ ラ ー チ
ャ ー ト 値 が 約 10 に な っ た ( デ ー タ 略 ) .
な お ,試 験 期 間 中 に お け る 段 ボ ー ル 箱 内 の 温 度 は ,封 函 方 法 に 関 係 な く ,慣 行 段 ボ
ー ル 箱 で 24.2℃ , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 A で 25.0℃ , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 B で 26.0℃ で あ り ,
大 き な 差 は 認 め ら れ な か っ た .一 方 ,湿 度 は 慣 行 段 ボ ー ル 箱 の I 貼 り を 除 い て ほ ぼ 99%
RH で あ っ た . 慣 行 段 ボ ー ル 箱 の I 貼 り は 約 95% RH で あ っ た .
- 38 -
考察
1.おいしさの評点と弾性指標との関係
第 2 章第 1 節では,音響振動法によって‘富有’果実の肉質を評価し,収穫後の果
実の弾性指標は指数関数的に低下すること,おいしさの評点が 0 以上の期間は収穫後
約 4~ 14 日 で あ る こ と を 明 ら か に し た . 本 研 究 の ‘ 早 秋 ’ に お い て も , 収 穫 後 の 果 実
の弾性指標は‘富有’と同様のパターンで指数関数的に減少した.しかし,‘富有’
の収穫直後の果実は硬すぎておいしさの評点が 0 以下であったが,‘早秋’は弾性指
標 が 高 い ほ ど お い し さ の 評 点 も 高 く ,収 穫 直 後 の 果 実 の 評 点 が 最 も 高 か っ た( 第 13 図 ).
こ の こ と か ら ,‘ 早 秋 ’に お い て は 収 穫 直 後 の 果 肉 硬 度 を 保 持 す る こ と が 重 要 で あ り ,
エチレン作用阻害や水分蒸散抑制の面から果肉硬度保持について検討した.
カキ果実の食味構成要素は主に,肉質の粗密,硬度,粉質の有無,果汁の多さ,糖
度 に よ っ て 構 成 さ れ て い る ( 佐 藤 , 2013) . 前 述 の ‘ 富 有 ’ と ‘ 早 秋 ’ と の 間 に お け
る収穫直後の弾性指標とおいしさの評点とのずれは,果肉硬度に加え肉質の粗密の違
い ( 山 田 ら , 2004) も 影 響 し て い る と 考 え ら れ た .
2.‘早秋’の果肉硬度保持技術の開発
前 述 か ら , 本 研 究 の 目 的 は 収 穫 直 後 の 硬 い 果 肉 硬 度 を 保 持 す る こ と で あ る . 1-MCP
は エ チ レ ン 作 用 を 強 力 に 阻 害 し( Sisler・Serek,1997),カ キ に お い て も 多 く の 軟 化 抑
制 効 果 の 報 告 が あ る (Harima ら ,2003;新 川 ら ,2005).し か し ,実 験 2 に お い て ,1-MCP
処 理 に よ る‘ 早 秋 ’の 硬 い 果 肉 硬 度 の 保 持 効 果 は 認 め ら れ な か っ た( 第 15 図 ).処 理
後 5 日 ま で の エ チ レ ン 生 成 速 度 は , 1-MCP 処 理 区 , 無 処 理 区 と も に 0.1 μL・kg -1 ・hr -1 以
下 で あ っ た こ と か ら( 第 18 図 ),収 穫 後 前 半 に お け る 果 実 軟 化 を 伴 わ な い 果 肉 硬 度 の
低下は,エチレンとは関係がないと考えられた.
1-MCP 処 理 に よ っ て ,軟 化 率 は 低 く 抑 え ら れ ,日 持 ち 性 は 向 上 し た( 第 17 図 ).こ
れ は , 千 々 和 ら ( 2005) の ‘ 伊 豆 ’ 果 実 に お け る 結 果 と 同 様 で あ っ た . 処 理 後 6 日 以
降 ,1-MCP 処 理 区 の エ チ レ ン 生 成 速 度 は 無 処 理 区 よ り も 低 く 推 移 し た( 第 18 図 ).1-MCP
はエチレン作用を阻害し,結果として成熟に伴う自己触媒的なエチレン生成を抑制す
る こ と か ら ( Nakano ら , 2002) , 軟 化 果 実 の 発 生 を 抑 え た と 考 え ら れ た .
な お , 実 験 2 の 無 処 理 区 に お い て , 処 理 後 11 日 以 降 , 軟 化 率 は 増 加 し た が ( 第 17
図 ), 弾 性 指 標 は 大 き く 低 下 し な か っ た( 第 15 図 ). こ れ は , 軟 化 し た 果 実 を そ の 都
度除去したこと,弾性指標は指数関数的に低下するため,果実の軟化が進むと変化の
幅が小さくなること,軟化度は果実に触れて調査するが,弾性指標の第 2 共鳴周波数
は 果 実 の 中 心 部 を 測 定 し て い る た め( Akimoto ら , 2012), 両 測 定 値 間 に 軟 化 の 進 行 す
る時間的なずれが生じていることなどが要因と考えられた.
播 磨 ら( 2002b)は ,ハ ウ ス 栽 培‘ 刀 根 早 生 ’果 実 の 実 験 で ,透 湿 度 を 抑 え た 段 ボ ー
ル箱による水分蒸散抑制効果を報告している.実験 3 において,防湿段ボール箱によ
- 39 -
る‘早秋’の果肉硬度保持効果が認められた.おいしさの評点が 0 以上の時の弾性指
標 は 約 22×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 上 で あ り ,そ の 期 間 は ,慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 が 収 穫 直 後 か ら 収
穫 後 約 6 日 ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 が 収 穫 直 後 か ら 収 穫 後 約 10 日 と ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 が
約 4 日 長 か っ た( 第 19 図 ).防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 の 重 量 減 少 率 は 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 の 重
量減少率より低く推移し,果実からの水分蒸散が抑制されたことが要因と考えられた
( 第 20 図 ).こ の こ と か ら ,実 験 2 に お い て ,1-MCP 処 理 に よ る‘ 早 秋 ’の 果 肉 硬 度
保持効果が認められなかったのは,果実からの水分蒸散が抑制されなかったことが要
因と考えられた.
透湿度(防湿段ボール箱 A 区と B 区)の違いによって,重量減少率の差は認められ
た が( 第 20 図 ),弾 性 指 標 の 差 は 一 部 を 除 い て 明 確 に 認 め ら れ な か っ た( 第 19 図 ).
粘 着 テ ー プ の 貼 り 方( I 貼 り と H 貼 り )の 違 い に よ っ て ,重 量 減 少 率 の 差 は 防 湿 段 ボ ー
ル 箱 A 区 に お い て 認 め ら れ た が ( 第 20 図 ) , 弾 性 指 標 の 差 は 認 め ら れ な か っ た ( 第
19 図 ) . こ れ ら の 結 果 か ら , 果 肉 硬 度 保 持 効 果 , コ ス ト お よ び 労 力 な ど か ら 考 慮 す る
と,防湿段ボール箱 A 区の I 貼りが最も実用的な方法と考えられた.
中 野 ら ( 2001) は , ハ ウ ス 栽 培 ‘ 刀 根 早 生 ’ 果 実 の 実 験 で , 有 孔 ポ リ 包 装 の 水 分 蒸
散抑制によって水ストレス誘導エチレン生成を抑制し,その結果,果実軟化を抑制す
る と 報 告 し て い る .ま た ,播 磨 ら( 2002b)も ,透 湿 度 を 抑 え た 段 ボ ー ル 箱 に お い て 同
様の報告をしている.しかし,本実験における‘早秋’では,収穫後 5 日までエチレ
ン 生 成 速 度 が 非 常 に 低 く 推 移 し た た め( 第 18 図 ),収 穫 直 後 の ス ト レ ス 誘 導 性 エ チ レ
ンの生成は認められなかったと考えられた.このことから, 防湿段ボール箱の水分蒸
散抑制によるストレス性誘導エチレンの生成抑制については判断できなかった.
収 穫 後 12 日 以 降 ,段 ボ ー ル 箱 の 種 類 に 関 わ ら ず 弾 性 指 標 は 大 き く 低 下 し( 第 19 図 ),
軟 化 が 増 加 し た( 第 21 図 ).ま た ,お い し さ の 評 点 が 0 以 上 の 時 の 重 量 減 少 率 は 約 3%
で あ り( 第 13,14 図 ),そ の 時 の 収 穫 後 日 数 は ,慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 が 約 6 日 ,防 湿 段
ボ ー ル 箱 A 区 が 約 10~ 12 日 ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 B 区 が 14 日 以 降 で あ っ た( 第 20 図 ).
慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 と 防 湿 段 ボ ー ル 箱 A 区 は ,弾 性 指 標 が 約 22×10 6 cm 2 ・Hz 2 に な っ た 日
と 重 量 減 少 率 が 3% に な っ た 日 が ほ ぼ 同 じ で あ っ た が , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 B 区 で は 重 量
減 少 率 が 3% に な る 前 に 果 実 が 軟 化 し た .防 湿 段 ボ ー ル 箱 の 水 分 蒸 散 抑 制 は 成 熟 に 伴 う
自己触媒型エチレンの生成を抑制しないため,自己触媒型エチレン生成によって軟化
の増加,重量減少率の上昇よりも早い軟化の発生が生じたと考えられた.
実験 3 は,調査の度,段ボール箱を開閉しており,実際の流通とは異なる条件であ
った.また,段ボール箱内のエチレン濃度やガス組成を測定していない.今後,防湿
段ボール箱の実用化を図っていく中,実際の流通を想定し,途中で開封しない試験区
を設定するとともに開封後の果実における経時的な弾性指標の測定,段ボール箱内の
エチレン濃度やガス組成などの測定を行う必要がある.
- 40 -
弾性指標(×106 cm 2 ・Hz 2)
40
35
30
25
20
15
y=11.392x+21.785
10
r=0.924 **(n=21)
5
0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
おいしさの評点
第13図 ‘早秋’におけるおいしさの評点と弾性指標との関係
**は1%水準で有意であることを示す
- 41 -
8
重量減少率(%)
7
6
y=-0.2304x+8.1683
5
r=-0.930**(n=21)
4
3
2
1
0
5
10
15
20
25
30
35
弾性指標(×106 cm 2 ・Hz 2)
第14図 ‘早秋’における弾性指標と重量減少率との関係
**は1%水準で有意であることを示す - 42 -
40
40
1-MCP処理(n=20)
***
弾性指標(×106 cm 2 ・Hz 2)
35
無処理(n=30)
30
ns
25
ns
20
ns
ns
15
ns
ns
ns
10
5
0
0
2
4
6
8
10
12
14
処理後日数(日)
第15図 1-MCP処理が‘早秋’の弾性指標に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す
t検定により,nsは有意差なし,***は0.1%水準で有意差あり
- 43 -
12
ns
無処理(n=30)
10
重量減少率(%)
ns
1-MCP処理(n=20)
ns
8
ns
6
ns
ns
4
***
ns
2
0
0
2
4
6
8
10
12
処理後日数(日)
第16図 1-MCP処理が‘早秋’の重量減少率に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す
アークサイン変換後,t検定により,nsは有意差なし,
***は0.1%水準で有意差あり
- 44 -
14
40
1-MCP処理
35
無処理
軟化率(%)
30
25
20
15
10
5
0
0
2
4
6
8
10
処理後日数(日)
第17図 1-MCP処理が‘早秋’の軟化率に及ぼす影響
- 45 -
12
14
エチレン生成速度(uL・kg -1 ・hr-1 )
1.0
1-MCP処理
0.9
軟化果実
の除去Z
無処理
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0
2
4
6
8
10
12
処理後日数(日)
第18図 1-MCP処理が‘早秋’のエチレン生成速度に及ぼす影響
Z
1-MCP処理区は1果,無処理区は2果を除去
- 46 -
14
弾性指標(×106 cm 2 ・Hz2 )
45
a
a
a
a
a
a
40
35
防湿DB-A(I)
防湿DB-A(H)
防湿DB-B(I)
防湿DB-B(H)
慣行DB(I)
慣行DB(H)
a
a
ab
ab
bc
c
30
a
ab
b
b
c
c
25
a
a
b
b
a
ab
c
c
20
a
a
ab
bc
c
b
d
15
a
a
a
ab
c
d
c
a
a
a
a
a
a
ab
b
10
5
0
0
2
4
6
8
10
12
14
収穫後日数(日)
第19図 防湿段ボール箱および封函方法が‘早秋’の弾性指標に及ぼす影響
防湿DB-Aは防湿段ボール箱A区,防湿DB-Bは防湿段ボール箱B区,
慣行DBは慣行段ボール箱区,(I)はI貼り,(H)はH貼りを示す
縦線は標準誤差を示す(n=15~36)
同一収穫後日数における異符号間はTukey-Kramerの多重検定により,
5%水準で有意差あり
- 47 -
10
防湿DB-A(I)
防湿DB-A(H)
防湿DB-B(I)
防湿DB-B(H)
慣行DB(I)
慣行DB(H)
9
a
重量減少率(%)
8
a
7
a
a
6
a
a
5
b
a
4
a
a
3
a
a
b
b
c
c
2
1
0
0
a
a
a
a
a
a
a
a
b
b
c
c
2
4
b
b
b
c
b
b
b
c
c
6
a
c
c
d
d
8
d
d
10
c
c
d
d
12
14
収穫後日数(日)
第20図 防湿段ボール箱および封函方法が‘早秋’の重量減少率に及ぼす影響
防湿DB-Aは防湿段ボール箱A区,防湿DB-Bは防湿段ボール箱B区,
慣行DBは慣行段ボール箱区,(I)はI貼り,(H)はH貼りを示す
縦線は標準誤差を示す(n=15~36)
同一収穫後日数における異符号間は,アークサイン変換後,Tukey Kramerの多重検定により,5%水準で有意差あり
- 48 -
100
防湿DB-A(I)
防湿DB-A(H)
防湿DB-B(I)
防湿DB-B(H)
慣行DB(I)
慣行DB(H)
90
軟化率(%)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
2
4
6
8
10
12
14
収穫後日数(日)
第21図 防湿段ボール箱および封函方法が‘早秋’の軟化率に及ぼす影響
防湿DB-Aは防湿段ボール箱A区,防湿DB-Bは防湿段ボール箱B区,
慣行DBは慣行段ボール箱区,(I)はI貼り,(H)はH貼りを示す
- 49 -
第2節
1-MCP処理と防湿段ボール箱によるカキ‘早秋’の品質保持技術の開発
緒言
‘ 早 秋 ’ は 極 早 生 の 完 全 甘 ガ キ と し て 10月 初 旬 か ら 収 穫 で き る こ と , 果 皮 色 は 赤 く ,
良 食 味 で あ る こ と か ら ( 山 田 ら , 2004) , 市 場 評 価 が 高 く , 高 単 価 で 販 売 さ れ て い る .
しかし,既存の早生品種である‘西村早生’など よりも日持ち性が短いこと,すなわち
果肉硬度が早く低下することが課題であった.前節で,防湿段ボール箱の水分蒸散抑制
に よ っ て 果 肉 硬 度 は 保 持 さ れ る が , 日 持 ち 性 は 向 上 し な い こ と , 1-メ チ ル シ ク ロ プ ロ ペ
ン ( 以 下 , 1-MCP) 処 理 の エ チ レ ン 作 用 阻 害 に よ っ て 日 持 ち 性 は 向 上 す る が , 果 肉 硬 度
は保持されないことを明らかにした.
そ こ で , 本 研 究 で は , 1-MCP処 理 と 防 湿 段 ボ ー ル 箱 の 組 み 合 わ せ に よ る 果 実 品 質 保 持
技術の開発について検討した.
材料および方法
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の‘ 早 秋 ’を 供 試 し た .2014 年 10 月 7 日 に 果 頂 部 の 果
皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 )で 7.0 に 達 し た 果 実
を 収 穫 し た . 果 皮 色 の 測 定 に は 色 彩 色 差 計 ( CR-400, コ ニ カ ミ ノ ル タ ( 株 ) ) を 使 用
し た . 新 川 ら ( 2008) の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し , 測 定 し た 色 相 角 度 ( H°) を カ ラ
ー チ ャ ー ト 値( CC 値 )に 変 換 し た .CC 値 = - 9.156×LN( H°)+ 43.797( r 2 = 0.985).
1-MCP は ,気 密 性 の プ ラ ス チ ッ ク 容 器( 内 容 積 117 L)に 果 実 と SmartFresh TM( ロ ー
ム・ア ン ド・ハ ー ス・ジ ャ パ ン( 株 ))を 入 れ て 密 封 し ,初 期 濃 度 1ppm で 収 穫 日 か ら
24 時 間 曝 露 処 理 し た . そ の 後 , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 ( 前 節 の 結 果 か ら , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 A
〈 透 湿 度 130 g・m -2 ・(24h) -1 〉 と B〈 透 湿 度 15 g・m -2 ・(24h) -1 〉 の 範 囲 内 に な る 透 湿 度 の
防 湿 段 ボ ー ル 箱 を 新 た に 作 成 し た ),慣 行 段 ボ ー ル 箱 お よ び 平 箱( 蓋 な し の 慣 行 段 ボ ー
ル 箱 ) に 詰 め , 室 温 下 で 保 管 し た . 防 湿 段 ボ ー ル 箱 の 透 湿 度 は 107 g・m -2 ・(24h)
り( カ ッ プ 法:JIS Z 0208:1976
-1
であ
防 湿 包 装 材 料 の 透 過 湿 度 試 験 方 法 ),防 湿 段 ボ ー ル 箱
および慣行段ボール箱の蓋は I 貼りで封函した.試験区は防湿段ボール箱区,慣行段
ボ ー ル 箱 区 , 平 箱 区 , 1-MCP+ 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 , 1-MCP+ 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 お よ び
1-MCP+ 平 箱 区 と し た . 各 区 36 果 と し , 1-MCP 処 理 後 14 日 間 , 果 肉 硬 度 , 重 量 お よ
び軟化果実の発生などを調査した.
果肉硬度は音響振動法による小型振動測定装置((有)生物振動研究所)で測定し
た.果実のへたを上向きにしてスポンジ上に置き,加振器と受振器を果実の赤道部の
対 角 線 上 に 軽 く 挟 み , 100~ 1,500 Hz の 振 動 を 与 え た . 第 2 共 鳴 周 波 数 ( f 2 ) を ス ペ ク
ト ル ピ ー ク お よ び 位 相 か ら 求 め , Kuroki ら ( 2006) の 報 告 に 準 じ て , 弾 性 指 標 ( EI:
Elasticity Index) を 以 下 の 式 で 算 出 し た . 果 実 直 径 ( d) は 加 振 器 と 受 振 器 の 挟 ん だ 長
さとした.
- 50 -
EI= d 2 ×f 2 2
軟 化 判 定 は 岩 田 ら( 1969)の 手 法 を 用 い ,軟 化 度 Ⅲ( 指 で 押 す と 崩 壊 し そ う に な る ,
または果肉の一部が水浸状になっている)を軟化と判断した.防湿段ボール箱区と慣
行 段 ボ ー ル 箱 区 は 32 果 , 1-MCP+ 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 , 1-MCP+ 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 , 平
箱 区 お よ び 1-MCP+ 平 箱 区 は 31 果 中 軟 化 し た 果 実 の 頻 度 を 軟 化 率 と し た .な お ,軟 化
した果実は調査から除去した.
結果
防 湿 段 ボ ー ル 箱 お よ び 慣 行 段 ボ ー ル 箱 の 湿 度 は ほ ぼ 99% RH, 平 箱 の 湿 度 は 平 均 約
65% RH で あ っ た ( デ ー タ 略 ) .
弾性指標は,防湿段ボール箱区で緩やかに,慣行段ボール箱区で直線的に,平箱区
で 指 数 関 数 的 に 低 下 し た( 第 22 図 ).防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 の 弾 性 指 標 は 慣 行 段 ボ ー ル 箱
区 お よ び 平 箱 区 よ り も ,処 理 後 2~ 4 日 以 降 ,有 意 に 高 く 推 移 し た .ま た ,1-MCP 処 理
に よ っ て ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 の 弾 性 指 標 は ,処 理 後 10~ 12 日 の 間 ,有 意 に 高 く 推 移 し た .
しかし,慣行段ボール箱および平箱の弾性指標において差は認められなかった.弾性
指 標 が 約 22×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 上 に お い て 果 肉 硬 度 が 保 持 さ れ る と す る と ( 第 13 図 ) ,
果 肉 硬 度 保 持 日 数 は ,1-MCP+ 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 で 処 理 後 約 12 日 ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 区
で 約 8 日 ,1-MCP+ 慣 行 段 ボ ー ル 箱 お よ び 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 で 約 6 日 ,1-MCP+ 平 箱 区
および平箱区で約 2 日であった.
重量減少率は防湿段ボール箱区,慣行段ボール箱区,平箱区の順で有意に低く推移
し ,い ず れ の 段 ボ ー ル 箱 に お い て も 1-MCP 処 理 に よ る 重 量 減 少 率 の 差 は 認 め ら れ な か
っ た ( 第 23 図 ) .
防湿段ボール箱区および慣行段ボール箱区の軟化率は平箱区よりも高く推移した
( 第 24 図 ) . 処 理 後 14 日 の 軟 化 率 は 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 で 56.3% , 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区
で 37.5% , 平 箱 区 で 29.0% で あ っ た . ま た , い ず れ の 段 ボ ー ル 箱 に お い て も , 1-MCP
処 理 に よ っ て 軟 化 率 は 低 く 推 移 し , 処 理 後 14 日 の 軟 化 率 は 6.5% で あ っ た . 軟 化 率 が
約 10% ま で を 日 持 ち 保 持 と す る と ,日 持 ち 保 持 日 数 は 1-MCP+ 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 お よ
び 1-MCP+ 平 箱 区 で 処 理 約 14 日 , 1-MCP+ 慣 行 段 ボ ー ル 箱 で 約 12 日 , 平 箱 区 で 約 10
~ 12 日 , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 お よ び 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 で 約 8 日 で あ っ た .
- 51 -
考察
前 節 に お い て , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 に よ る 果 肉 硬 度 保 持 効 果 , 1-MCP 処 理 に よ る 日 持 ち
性向上効果を明らかにした.カキの流通販売上,果肉硬度保持および日持ち性向上と
もに重要な要素であり,‘早秋’の一層のブランド化を図るためにはいずれの要素も
兼 ね 備 え る 必 要 が あ る .お い し く て ,棚 持 ち も 優 れ て い る 商 品 は 非 常 に 魅 力 的 で あ る .
そ こ で , 1-MCP 処 理 に よ る エ チ レ ン 作 用 阻 害 と 防 湿 段 ボ ー ル 箱 に よ る 水 分 蒸 散 抑 制 を
組み合わせることによって,果肉硬度が保持されるとともに日持ち性も向上する技術
の開発を検討した.
本 実 験 結 果 に お い て , 1-MCP+ 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 の 果 肉 硬 度 保 持 日 数 は 処 理 後 約 12
日 で あ り , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 よ り も 約 4 日 , 1-MCP+ 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 お よ び 慣 行 段
ボ ー ル 箱 区 よ り も 約 6 日 ,1-MCP+ 平 箱 区 お よ び 平 箱 区 よ り も 約 10 日 長 く 保 持 さ れ た
( 第 22 図 ) . ま た , 1-MCP+ 防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 の 日 持 ち 保 持 日 数 は 約 14 日 で あ り ,
防 湿 段 ボ ー ル 箱 区 お よ び 慣 行 段 ボ ー ル 箱 区 よ り も 約 6 日 ,平 箱 区 よ り も 約 2~ 4 日 長 く
保 持 さ れ た( 第 24 図 ).1-MCP 処 理 し た 果 実 を 防 湿 段 ボ ー ル 箱 に 入 れ る こ と に よ っ て ,
1-MCP 処 理 単 独 よ り も 果 肉 硬 度 保 持 日 数 が 長 く , 防 湿 段 ボ ー ル 箱 単 独 よ り も 日 持 ち 保
持日数が長く保持されたことは,それぞれ水分蒸散抑制,エチレン作用阻害が加味さ
れた効果と考えられた.しかし,防湿段ボール箱単独よりも果肉硬度保持日数が長く
なったことは水分蒸散抑制とエチレン作用阻害が相乗的に作用したためと考えられ
た . ニ ホ ン ス モ モ に お い て , 1-MCP 処 理 し た 果 実 を MA 包 装 す る と , 食 べ 頃 期 間 が 長
く な っ た と 報 告 さ れ て い る ( Khan・ Singh, 2008) .
前節の実験 2 および本実験の結果において,防湿段ボール箱の軟化率は慣行段ボー
ル箱や平箱の軟化率よりも高い傾向であった.ニホンナシ‘幸水’をMA包装用段ボ
ー ル 箱 内 で 貯 蔵 し た 際 ,段 ボ ー ル 箱 内 に エ チ レ ン が 蓄 積 し た 報 告 か ら( 羽 山 ら ,2012),
防湿段ボール箱は成熟エチレンが溜まりやすく,軟化率が高まったと考えられた.
岐阜県における‘早秋’の選果基準では,条紋や傷が軽微なもの,カイガラムシの
被害のないものなどを蓋付きの段ボール箱で,条紋がやや目立ち,果肉に達していな
い程度の傷があるもの,カイガラムシの被害のあるもの,軟化につながらない程度の
へたすき果などを平箱(蓋なしの段ボール箱)で出荷している.これは商品が有する
価値による違いであるが,本実験における平箱の弾性指標は指数関数的に低下し,果
肉硬度保持日数は処理後約 2 日であり,これではおいしい‘早秋’を販売していると
は言い難い.段ボール箱のコストもあるが,果実品質保持を考えるのであれば,蓋付
きの段ボール箱が良いと考えられる.しかし,へたすき果,フジコナ カイガラムシ被
害 果 な ど エ チ レ ン が 発 生 す る 危 険 性 の あ る 果 実 ( 千 々 和 ら , 2002; 杉 浦 ら , 2012) が
混入すると,逆に軟化率が早くから高まる危険性があるため,果実の選別には注意が
必要である.
本 実 験 に よ っ て ,1-MCP 処 理 と 防 湿 段 ボ ー ル 箱 を 組 み 合 わ せ る こ と に よ っ て‘ 早 秋 ’
- 52 -
の 果 肉 硬 度 は 処 理 後 12 日 , 日 持 ち は 処 理 後 14 日 ま で 保 持 で き る こ と が 明 ら か に な っ
た . し か し , 1-MCP 処 理 お よ び 防 湿 段 ボ ー ル 箱 の コ ス ト や 労 力 が 余 分 に か か る た め ,
レギュラー品ではなく付加価値のあるブランド品としての販売戦略(価格設定)を構
築する必要がある.そこで,コストおよび労力低減の方法の一つとして,MA包装用
段 ボ ー ル 箱 内 1-MCP 処 理 ( 羽 山 ら , 2012; 樫 村 ら , 2010b) な ど 検 討 し て い く 必 要 が
ある.
- 53 -
防湿DB区
慣行DB区
平箱区
弾性指標(×106 cm 2 ・Hz2 )
30
a
a
a
a
a
a
25
a
a
a
a
20
1-MCP+防湿DB区
1-MCP+慣行DB区
1-MCP+平箱区
a
a
b
b
b
a
a
a
b
b
b
c
c
15
a
a
c
c
a
b
b
b
bc
a
c
c
b
b
c
c
10
a
b
d
c
d
d
c
c
d
5
0
2
4
6
8
10
12
14
処理後日数(日)
第22図 1-MCP処理および防湿段ボール箱が‘早秋’の弾性指標に及ぼす
影響
縦線は標準誤差を示す(n=16~36)
同一収穫後日数における異符号間はTukey-Kramerの多重検定に
より,5%水準で有意差あり
- 54 -
防湿DB区
慣行DB区
平箱区
12
1 -MCP+防湿DB区
1 -MCP+慣行DB区
1 -MCP+平箱区
10
a
a
重量損失率(%)
a
a
a
8
a
a
a
6
a
4
a
b
c
c
d
d
2
0
0
a
a
a
a
a
a
b
2
4
6
b
b
b
b
b
b
c
c
c
c
d
d
b
b
b
a
a
c
c
10
c
c
c
c
c
c
8
b
12
14
処理後日数(日)
第23図 1-MCP処理および防湿段ボール箱が‘早秋’の重量減少率に及ぼす
影響
縦線は標準誤差を示す(n=16~36)
同一収穫後日数における異符号間は,アークサイン変換後,Tukey Kramerの多重検定により,5%水準で有意差あり
- 55 -
60
防湿DB区
1-M CP+防湿DB区
慣行DB区
1-M CP+慣行DB区
平箱区
1-M CP+平箱区
軟化率(%)
50
40
30
20
10
0
0
2
4
6
8
10
12
14
処理後日数(日)
第24図 1-MCP処理および防湿段ボール箱が‘早秋’の軟化率に及ぼす
影響
- 56 -
第4章
カキ‘太秋’の肉質評価および品質保持技術の開発
第1節
音響振動法によるカキ‘太秋’の肉質評価とおいしさの要因解明
緒言
日本のカキ育種は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所が
リ ー ド し て 取 り 組 ん で い る . 1980 年 代 ま で の 育 種 目 標 は , 果 実 品 質 が 高 く , 裂 果 性 の
な い 早 生 の 完 全 甘 ガ キ の 育 成 で あ り ,1995 年 に 大 果 性 や 食 味 の 良 さ を 追 求 し た‘ 太 秋 ’,
2003 年 に 早 生 品 種 の 代 表 と し て ‘ 早 秋 ’ を 品 種 登 録 し た ( 河 野 , 2013) . 育 種 目 標 の
一つである高果実品質の基準は,硬度が軟,紛質化が無,果汁が多,糖度が高とし て
お り ( 佐 藤 , 2013) , ‘ 太 秋 ’ は 硬 度 が 低 く , 紛 質 化 が 無 , 果 汁 が 非 常 に 多 く , 糖 度
が中程度であることから,高品質果実と位置づけられている.
現 在 , ‘ 太 秋 ’ は 熊 本 県 , 福 岡 県 , 愛 媛 県 を 中 心 に 291.2 ha 導 入 さ れ て お り ( 農 林
水 産 省 , 2015) , 全 国 的 に 栽 培 が 広 ま っ て い る . ま た , 食 味 が 非 常 に 優 れ て い る こ と
から,消費者の人気も高まっている.食味が良い主な要因は,糖組成が‘富有’とは
異 な る こ と ( 鈴 木 ら , 2010a) , 食 感 が サ ク サ ク と し て い る こ と ( 山 根 ,1994) な ど で
あり,特にサクサク感は今までのカキにはない新たな食感であり,若い世代に人気が
高い.
カ キ 果 実 の 物 理 的 な お い し さ に 関 す る 研 究 が 少 な い 中 ,Sakurai ら( 2005b)は ,AMC
法 に よ る‘ 富 有 ’の 肉 質 評 価 を 行 い ,パ ラ メ ー タ ー「 シ ャ ー プ ネ ス 指 標 」を 検 討 し た .
Taniwaki ら( 2009a)は ,Muramatsu ら( 1997)が 開 発 し た LDV 法 と AMC 法 に よ っ て ,
‘ 富 有 ’ と ‘ 太 秋 ’ の 食 べ 頃 を 明 ら か に し た . 第 2 章 第 1 節 で は , Kuroki ら ( 2006)
が 開 発 し た 音 響 振 動 法 の 小 型 振 動 測 定 装 置 と AMC 法 の 食 感 測 定 装 置 に よ っ て ,
‘富有’
の肉質評価を行った.そこで,本研究では,‘太秋’の物理的なおいしさの要因を明
らかにするため,音響振動法による弾性指標と官能評価によって,肉質特性を評価し
た.
材料および方法
1.音 響 振 動 法 に よ る 果 肉 硬 度 の 測 定 ( 実 験 1)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の‘ 太 秋 ’( 1997 年 定 植 )果 実 を 供 試 し た .2009 年 10
月 6 日 ( 収 穫 始 期 ), 10 月 16 日( 収 穫 盛 期 ),10 月 26 日( 収 穫 終 期 ) に , 果 頂 部 の
果 皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 )で 3.5 に 達 し た 果
実 を そ れ ぞ れ 52 果 , 56 果 , 60 果 収 穫 し た . 果 皮 色 の 測 定 に は 色 彩 色 差 計 ( CR-400,
コ ニ カ ミ ノ ル タ ( 株 ) ) を 使 用 し た . 新 川 ら ( 2008) の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し ,
測 定 し た 色 相 角 度 ( H°) を カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ( CC 値 ) に 変 換 し た . CC 値 = - 8.101
×LN( H°)+ 38.829( r 2 = 0.992).収 穫 後 40 日 ま で ,室 温 下 に 保 管 し ,概 ね 1 日 お き
に果肉硬度,軟化度の調査および官能評価を行った.
- 57 -
果肉硬度は音響振動法による小型振動測定装置((有)生物振動研究所)で測定し
た.果実のへたを上向きにしてスポンジ上に置き,加振器と受振器を果実の赤道部の
対 角 線 上 に 軽 く 挟 み , 100~ 1,500 Hz の 振 動 を 与 え た . 第 2 共 鳴 周 波 数 ( f 2 ) を ス ペ ク
ト ル ピ ー ク お よ び 位 相 か ら 求 め , Kuroki ら ( 2006) の 報 告 に 準 じ て , 弾 性 指 標 ( EI:
Elasticity Index) を 以 下 の 式 で 算 出 し た . 果 実 直 径 ( d) は 加 振 器 と 受 振 器 の 挟 ん だ 長
さとした.
EI= d 2 ・f 2 2
軟 化 判 定 は 岩 田 ら( 1969)の 手 法 を 用 い ,軟 化 度 Ⅲ( 指 で 押 す と 崩 壊 し そ う に な る ,
ま た は 果 肉 の 一 部 が 水 浸 状 に な っ て い る ) を 軟 化 と 判 断 し た . 10 月 6 日 収 穫 は 22 果 ,
10 月 16 日 収 穫 は 13 果 ,10 月 26 日 収 穫 は 18 果 中 軟 化 し た 果 実 の 頻 度 を 軟 化 率 と し た .
官 能 評 価 は 1 日 に 3 果 用 い , 5 段 階 評 点 法 で 硬 さ ( 非 常 に 軟 ら か い : - 2~ 非 常 に 硬
い : + 2)お よ び お い し さ( 非 常 に お い し く な い : - 2~ 非 常 に お い し い : + 2)を 評 価
し た .パ ネ ル は 岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 職 員 の 訓 練 さ れ た 9 人( 男 性 6 人・女 性 3 人 ,
30~ 50 歳 代 ) で 構 成 し た .
2.音 響 振 動 法 と 官 能 評 価 に よ る 物 理 的 な お い し さ の 要 因 解 明 ( 実 験 2)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の‘ 太 秋 ’( 1997 年 定 植 )果 実 を 供 試 し た .2010 年 10
月 19 日 に , 果 頂 部 の 果 皮 色 が ‘ 富 有 ’ 用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 で 3.5 に 達 し た 果 実 を 48
果採取した.果皮色の測定は実験 1 と同様の方法で行った.
収 穫 後 33 日 ま で , 室 温 下 に 保 管 し , 概 ね 1 日 お き に 2~ 3 果 , 果 肉 硬 度 の 測 定 お よ
び 官 能 評 価 を 行 っ た .果 肉 硬 度 の 測 定 お よ び 官 能 評 価 は 実 験 1 と 同 様 の 方 法 で 行 っ た .
な お 官 能 評 価 に お い て は , サ ク サ ク 感 ( 非 常 に 弱 い : - 2~ 非 常 に 強 い : + 2) を 新 た
に評価した.パネルは岐阜県農業技術センター職員 の訓練された 7 人(男性 5 人・女
性 2 人 , 30~ 50 歳 代 ) で 構 成 し た .
結果
1. 音 響 振 動 法 に よ る 果 肉 硬 度 の 測 定 ( 実 験 1)
1)収 穫 後 の 弾 性 指 標 の 変 化
収 穫 直 後 の 弾 性 指 標 は ,10 月 6 日 収 穫 で 26.5×10 6 cm 2 ・Hz 2 ,10 月 16 日 収 穫 で 28.1×10 6
cm 2 ・Hz 2 , 10 月 26 日 収 穫 で 28.0×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ り , 収 穫 時 期 に よ る 差 は 認 め ら れ な
か っ た( 第 25 図 ).収 穫 後 の 弾 性 指 標 の 推 移 は ,い ず れ の 収 穫 時 期 に お い て も ,収 穫
後 8 日 ま で( 弾 性 指 標 約 6.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 )ま で は 大 き く ,そ の 後 ,緩 や か に 低 下 し ,
同様のパターンで推移した.
2)収 穫 後 の 食 味 の 変 化 お よ び 軟 化 率
- 58 -
いずれの収穫時期においても,官能評価における硬さおよびおいしさの評点は,収
穫 後 12 日 ま で は 緩 や か に ,そ の 後 ,大 き く 低 下 し た .お い し さ の 評 点 が 0 に な る の は ,
収 穫 後 約 15 日 で あ っ た ( デ ー タ 略 ) .
軟 化 率 は ,10 月 6 日 収 穫 で 収 穫 後 22 日 以 降 、10 月 16 日 お よ び 10 月 26 日 収 穫 で 収
穫 後 32 日 以 降 ,増 加 し た( 第 26 図 ).軟 化 率 の 増 加 が 早 か っ た 10 月 6 日 収 穫 は 弾 性
指標の低下も早かった.
3)官 能 評 価 に お け る 評 点 と 弾 性 指 標 と の 関 係
官能評価におけるおいしさの評点と弾性指標との間には,おいしさの評点 0 を境に
し て 2 つ の 集 団 に 分 け る こ と が で き た( 第 27 図 ).相 関 係 数 は お い し さ の 評 点 が 0 以
上 で r= 0.607,0 未 満 で r= 0.389 で あ り ,お い し さ の 評 点 が 0 以 上 で は 有 意 な 正 の 相 関
関 係 が 認 め ら れ た . な お , お い し さ の 評 点 が 0 以 上 の 弾 性 指 標 は 約 4.0×10 6 cm 2 ・Hz 2
以上であった.
また,硬さの評点と弾性指標との間においても,同様に 2 つの集団に分けることが
できた(データ略).
2. 音 響 振 動 法 と 官 能 評 価 に よ る 物 理 的 な お い し さ の 要 因 解 明 ( 実 験 2)
官能評価における硬さの評点とおいしさの評点との間,サクサク感の評点とおいし
さ の 評 点 と の 間 に は ,そ れ ぞ れ 有 意 な 正 の 相 関 関 係( r= 0.925,r= 0.965)が 認 め ら れ ,
硬さの評点とおいしさの評点,サクサク感の評点とおいしさの評点の間に大きな違い
は 認 め ら れ な か っ た( 第 28 図 ).し か し ,お い し さ の 評 点 が 0 以 上 に お け る 硬 さ の 評
点 と お い し さ の 評 点 と の 間 の 相 関 係 数 は r=0.536( p<0.05) , サ ク サ ク 感 の 評 点 と お い
し さ の 評 点 と の 間 の 相 関 係 数 は r=0.825( p<0.01) で あ り , い ず れ も 有 意 な 相 関 は 認 め
られたが,サクサク感の評点とおいしさの評点の相関係数の方が大きかった.
サクサク感の評点と弾性指標との間には,サクサク感の評点 0 を境にして 2 つの集
団 に 分 け る こ と が で き ,そ れ ぞ れ 有 意 な 正 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ た( 第 29 図 ).相 関
係 数 は サ ク サ ク 感 の 評 点 が 0 以 上 で r= 0.527,0 以 下 で r= 0.590 で あ っ た .し か し ,サ
ク サ ク 感 の 評 点 0 以 下 で は , サ ク サ ク 感 の 評 点 が - 2.0~ 0 ま で 大 き く 変 化 す る に も か
か わ ら ず , 弾 性 指 標 の 変 化 は 約 2.5~ 11.5×10 6 cm 2 ・Hz 2 と 小 さ か っ た . 一 方 , サ ク サ
ク 感 の 評 点 0 以 上 で は , サ ク サ ク 感 の 評 点 の 変 化 が 0~ 1.1 ま で と 小 さ い に も か か わ ら
ず , 弾 性 指 標 は 約 7.1~ 37.1×10 6 cm 2 ・Hz 2 と 大 き く 変 化 し た .
- 59 -
考察
実験 1 の結果から,‘太秋’における収穫直後の弾性指標は収穫時期に関わらず差
が 認 め ら れ な か っ た( 第 25 図 ).‘ 富 有 ’と 同 様 に 果 皮 色 が 同 じ で あ れ ば 同 じ 成 熟 段
階にあり,果肉硬度に差はなかったと考えられた.‘太秋’の収穫直後の弾性指標は
26.5~ 28.0×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ り , ‘ 富 有 ’ の 収 穫 直 後 の 弾 性 指 標 43.4×10 6 cm 2 ・Hz 2
( 第 1 図 ) の 約 63% で あ っ た . こ れ は , ユ ニ バ ー サ ル 型 果 実 硬 度 計 に よ る 果 肉 貫 入 抵
抗 と 同 様 の 結 果 で あ り ( 山 田 ら , 1998) , ‘ 太 秋 ’ の 果 肉 の 軟 ら か さ を 改 め て 明 ら か
にした.また,‘太秋’の収穫後の弾性指標は,収穫時期に 関わらず,同様のパター
ン で 指 数 関 数 的 に 低 下 し た( 第 25 図 ).‘ 富 有 ’の 収 穫 後 の 弾 性 指 標 も 指 数 関 数 的 に
低下するが(第 1 図),‘太秋’の弾性指標が‘富有’よりも減少する割合が大きか
った.これは,品種特性による影響と考えられた.
お い し さ の 評 点 が 0 以 上 の 弾 性 指 標 は , ‘ 富 有 ’ で 13.6~ 30.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 ( 第 3
図 ) , ‘ 太 秋 ’ で 約 4.0×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 上 で あ っ た ( 第 27 図 ) . 食 べ 頃 終 期 の 弾 性
指標は‘太秋’が‘富有’よりも低く,これは両品種間 における食感の違いによると
考えられた.‘太秋’は今までのカキにはないサクサク感を有しており, このサクサ
ク感によって,弾性指標が低下してもおいしさを保つことができ ると考えられた.
実験 2 の結果から,‘太秋’の物理的なおいしさの要因において,サクサク感が果
肉硬度よりも重要であることが明らかになった.官能評価におけるサクサク感の評点
と 弾 性 指 標 と の 関 係 か ら( 第 29 図 ),サ ク サ ク 感 の 評 点 が 0 以 上 の 時 ,サ ク サ ク 感 の
評点の変化以上に弾性指標が大きく変化したため,弾性指標によるサクサク感の評価
は難しいと考えられた.
サクサク感は‘太秋’のおいしさを評価するにあたって重要な要素であり,また,
サクサク感を有する品種が増えていることからも,サクサク感の定量評価方法の開発
が必要である.
- 60 -
2009/10/6(n=52~13)
弾性指標(×106
cm2 ・Hz2 )
30
2009/10/16(n=56~11)
2009/10/26(n=60~14)
25
20
15
10
5
0
0
4
8
12
16
20
24
28
32
36
収穫後日数(日)
第25図 ‘太秋’における収穫後の弾性指標の変化
縦線は標準誤差を示す
- 61 -
40
2009/10/6
80
2009/10/16
2009/10/26
軟化率(%)
60
40
20
0
0
5
10
15
20
25
30
収穫後日数(日)
第26図 ‘太秋’における軟化率の推移
- 62 -
35
40
弾性指標(×106
cm2 ・Hz2 )
18
16
14
r=0.607** (n=18)
12
10
8
6
r=0.389(n=22)
4
2
0
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
おいしさの評点
第27図 ‘太秋’におけるおいしさの評点と弾性指標との関係
**は1%水準で有意であることを示す
- 63 -
1.5
おいしさの評点
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
r=0.925** (n=47)
-1.5
-2.0
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
硬さの評点
1.5
おいしさの評点
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
r=0.965**(n=47)
-1.5
-2.0
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
サクサク感の評点
第28図 ‘太秋’における硬さ,サクサク感の評点と
おいしさの評点との関係
**は1%水準で有意であることを示す
- 64 -
1.5
弾性指標(×106
cm2 ・Hz2 )
40
35
30
25
20
15
r=0.590** (n=31)
r=0.527*
(n=16)
10
5
0
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
サクサク感の評点
第29図 ‘太秋’におけるサクサク感の評点と弾性指標との関係
**は1%,*は5%水準で有意であることを示す
- 65 -
第2節
AMC法によるカキ‘太秋’の食感評価方法の開発
緒言
近年,カキの消費は低迷しており,特に若い世代の消費量が非常に減少している.
総 務 省 家 計 調 査( 総 務 省 統 計 局 ,2011)に よ る と ,世 帯 主 が 29 歳 以 下 の 世 帯 に お け る
カ キ の 平 均 年 間 購 入 量 は ,世 帯 主 が 60~ 69 歳 の 世 帯 に 比 べ て 約 7.2% と 非 常 に 少 な く ,
将来におけるカキの需要低下が危惧されている.この状況を打破し,カキの需要回復
を図るためには,消費者ニーズを踏まえた戦略の構築が必要である.消費者がカキを
購 入 す る 際 の 重 要 な 要 因 は 色 ,味 で あ り ( 秋 元 ・ 伊 藤 , 1979a), ま た , 小 売 店 が カ キ
を 仕 入 れ る 際 の 重 要 な 要 因 は‘ 味 の 保 証 ’で あ る( 秋 元 ・ 伊 藤 , 1979b).こ の よ う に
以前から,消費者ニーズとして食味は重要な要因であったが,農林水産省の定めた果
実 の 全 国 標 準 規 格 が 生 産 者 と 流 通 業 者 段 階 の み を 対 象 と し て い た よ う に( 黒 田 ,1978),
カキ産地において消費者ニーズが考慮されることはほとんどなく,大きさや果皮色な
ど流通段階で重視される外観品質が優先されていた.しかし,時代が移り,今後カキ
産地が生き残っていくためには,消費者ニーズを最優先に位置づけることが極めて重
要になってきた.
‘ 太 秋 ’は 1995 年 に 品 種 登 録 さ れ た 中 生 の 完 全 甘 ガ キ で あ り ,食 味 が 優 れ て い る こ
と が 最 大 の 特 徴 で あ る ( 山 根 ら , 2001) . 消 費 者 へ の 試 食 ア ン ケ ー ト 調 査 に お い て も
人 気 が 高 く( 川 尾 ,2009),‘ 太 秋 ’が 基 幹 品 種 と し て 出 荷 体 系 の 一 角 を 担 う こ と は ,
カキ全体の需要拡大に繋がる.‘太秋’の食味の良さは,食感がサクサクとしている
こ と( 山 根 ,1994),‘ 富 有 ’と は 糖 組 成 が 異 な る こ と( 鈴 木 ら ,2010a)な ど に あ る .
特にサクサクとした食感は今までのカキにはない新たな食感であり,ナシのような食
感とも評されている.この食感を定量的に評価することは,おいしさの解明とともに
今後のカキ消費拡大に取り組むにあたって重要なポイントである.
従来の食感測定は実際に人が食べた時に発生する音をマイクロフォンで計測する方
法 が と ら れ て い た .し か し ,個 人 差 の 大 き い こ と ,再 現 性 の な い こ と が 課 題 で あ っ た .
そ こ で ,Sakurai ら( 2005a)は ,プ ロ ー ブ を サ ン プ ル に 貫 入 さ せ ,そ の 時 に 発 生 す る 音
響 振 動 を プ ロ ー ブ と ピ ス ト ン の 間 に 挟 ん だ 圧 電 素 子 で 検 出 す る 食 感 測 定 装 置( Acoustic
Measurement of Crispness, AMC) を 開 発 し た . そ の 後 , そ の 電 圧 デ ー タ を オ ク タ ー ブ
マ ル チ フ ィ ル タ で 周 波 数 帯 域 ご と に 分 け て 数 値 化 し( Taniwaki ら ,2006b),振 動 検 出
に 加 速 度 セ ン サ を 用 い , エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 を 厳 密 な 物 理 量 で 定 義 し た ( Iwatani ら ,
2013) .
Sakurai ら ( 2005b) に お い て は , AMC 法 に よ っ て ‘ 富 有 ’ の 肉 質 評 価 を 行 い , そ の
パ ラ メ ー タ ー「 シ ャ ー プ ネ ス 指 標 」を 検 討 し た .ま た , Taniwaki ら( 2009a)に お い て
は , AMC 法 と Muramatsu ら ( 1997) が 開 発 し た レ ー ザ ー ド ッ プ ラ ー ( Laser Doppler
Vibrometer,LDV)法 に よ っ て ,‘ 富 有 ’と‘ 太 秋 ’の 食 べ 頃 を 明 ら か に し た .第 2 章
- 66 -
第 1 節 で は ,AMC 法 と Kuroki ら( 2006)が 開 発 し た 音 響 振 動 法 の 小 型 測 定 装 置 に よ っ
て ,‘ 富 有 ’の 食 べ 頃 の 予 測 を 行 っ た .こ の よ う に ,AMC 法 を 中 心 に ,カ キ ,特 に‘ 富
有’の肉質特性が明らかになってきた.
Taniwaki ら( 2009a)は ,AMC 法 に よ る‘ 富 有 ’と‘ 太 秋 ’の 食 感 指 標( TI:Texture
Index) の 推 移 が 異 な る こ と を 明 ら か に し た が , サ ク サ ク と し た 食 感 の 評 価 に つ い て は
検 討 し て い な い . そ こ で , 本 研 究 で は , AMC 法 を 用 い て ,‘ 太 秋 ’に お け る サ ク サ ク
とした食感(以下,サクサク感)の定量評価方法および収穫時の熟度(果頂部の果皮
色)と食感の関係について検討したので報告する.
材料および方法
1.収 穫 後 日 数 と エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 関 係 ( 実 験 1)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の 14 年 生‘ 太 秋 ’を 供 試 し た .2010 年 10 月 13 日 ,15
日 ,17 日 ,19 日 ,21 日 ,23 日 お よ び 25 日 に ,果 頂 部 の 果 皮 色 が ‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ
ャ ー ト 値( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 )で 3.5 に 達 し た 果 実 を 各 7 果 収 穫 し た .カ ラ ー
チ ャ ー ト 値 3.5 は 岐 阜 県 に お け る‘ 太 秋 ’の 収 穫 基 準 で あ り ,商 業 的 な 収 穫 適 期 で あ る .
果 皮 色 の 測 定 に は 色 彩 色 差 計 ( CR-400, コ ニ カ ミ ノ ル タ ( 株 ) ) を 使 用 し た . 新 川 ら
( 2008)の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し ,測 定 し た 色 相 角 度( H°)を カ ラ ー チ ャ ー ト 値
( CC 値 ) に 変 換 し た . CC 値 = - 9.163×LN( H°)+ 43.807( r 2 = 0.987). そ の 後 ,室
温 下 に 保 管 し , 10 月 26 日 に 食 感 測 定 お よ び 官 能 評 価 を 行 っ た .
食 感 は AMC 法 に よ る 食 感 測 定 装 置(( 有 )生 物 振 動 研 究 所 )で 測 定 し た .果 実 赤 道
部 を 厚 さ 2 cm 程 度 に 輪 切 り に し ,楔 形 の プ ロ ー ブ( 直 径 5 mm,幅 5 mm,先 端 角 30°)
で 果 皮 に や や 近 い 果 肉 部 を 5 か 所 , 放 射 状 の 向 き に 測 定 し た . 毎 秒 22 mm の 速 度 で 赤
道面に対して直角に貫入させ,その時に生じる音響振動を加速度センサで検出し,出
力電圧信号をコンピュータで解析した.得られた信号は半オクターブマルチフィルタ
を 用 い て 19 の 周 波 数 帯 域 に 分 割 し た .Iwatani ら( 2013)の 報 告 に 準 じ て ,各 周 波 数 帯
域 の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標( ETI:Energy Texture Index)を デ ー タ 取 得 時 間( t),上 限 周
波 数 ( fu ) , 下 限 周 波 数 ( fl ) お よ び 振 幅 ( Vi ) か ら , 以 下 の 式 で 算 出 し た .
ETI= (1/t)×(1/f u f l ) 2 ×Σ (Vi) 2
官 能 評 価 は ,5 段 階 評 点 法 で サ ク サ ク 感( 非 常 に 弱 い:- 2~ 非 常 に 強 い:+ 2)お よ
び お い し さ ( 非 常 に お い し く な い : - 2~ 非 常 に お い し い : + 2) を 評 価 し た . パ ネ リ
ストは,カキ果実の品質評価の経験を積んだ著者の 1 人(鈴木)が行い,試験区名を
伏せたうえで評価した.
2.商 業 適 期 に 収 穫 し た ‘ 太 秋 ’ と ‘ 甘 秋 ’ の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 比 較 ( 実 験 2)
- 67 -
当 セ ン タ ー 植 栽 の 14 年 生 ‘ 太 秋 ’ お よ び 15 年 生 ‘ 甘 秋 ’ を 供 試 し た . 2010 年 10
月 25 日 に ,果 頂 部 の 果 皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 で‘ 太 秋 ’は 3.5,‘ 甘 秋 ’
は 5.0 に 達 し た 果 実 を 各 8 果 収 穫 し た .‘ 甘 秋 ’の 果 実 成 熟 期 は‘ 伊 豆 ’と‘ 松 本 早 生
富 有 ’の 中 間 の 時 期 で あ り( 山 田 ら ,2006),岐 阜 県 に お い て は 10 月 中 下 旬 に 相 当 し ,
商 業 的 な 適 期 と し て カ ラ ー チ ャ ー ト 値 5.0 で 収 穫 し た .10 月 25 日 に 果 肉 硬 度 測 定 ,10
月 27 日 に 食 感 測 定 お よ び 官 能 評 価 を 行 っ た .
果 肉 硬 度 は 非 破 壊 法 に よ る 小 型 振 動 測 定 装 置(( 有 )生 物 振 動 研 究 所 )で 測 定 し た .
果実のへたを上向きにしてスポンジ上に置き,加振器と受振器を果実の赤道部の対角
線 上 に 軽 く 挟 み , 100~ 1,500 Hz の 振 動 を 与 え た . 第 2 共 鳴 周 波 数 ( f 2 ) を ス ペ ク ト ル
ピ ー ク お よ び 位 相 か ら 求 め ,Kuroki ら( 2006)の 報 告 に 準 じ て ,弾 性 指 標( EI:Elasticity
Index) を 以 下 の 式 で 算 出 し た . 果 実 直 径 ( d) は 加 振 器 と 受 振 器 の 挟 ん だ 長 さ と し た .
EI= d 2 ・f 2 2
食感測定と官能評価は実験 1 と同様の方法で行った.なお,官能評価は実験 1 に硬
さ ( 非 常 に 軟 ら か い : - 2~ 非 常 に 硬 い : + 2) を 加 え て 評 価 し た .
3.収 穫 時 の 熟 度 ( 果 皮 色 ) と エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 関 係 ( 実 験 3)
当 セ ン タ ー 植 栽 の 14 年 生‘ 太 秋 ’を 供 試 し た .2010 年 10 月 25 日 に ,果 頂 部 の 果 皮
色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 で 3.5 お よ び 4.5 に 達 し た 果 実 を 各 7 果 収 穫 し た .な
お , カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 の 果 実 は 実 験 1 で 用 い た 果 実 と 同 一 の も の で あ る .
10 月 25 日 に 果 肉 硬 度 測 定 , 10 月 26 日 に 食 感 測 定 お よ び 官 能 評 価 を 実 験 1 お よ び 2
と同様の方法で行った.
結果
1.収 穫 後 日 数 と エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 関 係 ( 実 験 1)
エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は , 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz, 100~ 140 Hz お よ び 3,200 Hz 以 上 に
お い て 収 穫 後 日 数 が 経 つ に 従 い 低 下 し た ( 第 30 図 ) . 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz に お け る
エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は 収 穫 後 1~ 3 日 と 9~ 13 日 に 低 下 し ,3~ 9 日 は ほ ぼ 横 ば い で あ っ
た ( 第 31 図 ) . 周 波 数 帯 域 100~ 140 Hz に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は 収 穫 後 5~ 7
日 と 11~ 13 日 に 低 下 し ,1~ 5 日 と 7~ 11 日 は ほ ぼ 横 ば い で あ っ た .周 波 数 帯 域 3,200 Hz
以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 お よ び サ ク サ ク 感 の 評 点 は 収 穫 後 5~ 13 日 に 低 下 し ,
1~ 5 日 は ほ ぼ 横 ば い で あ っ た . 特 に 11~ 13 日 は 急 激 に 低 下 し た ( 第 31 図 ) . お い し
さの評点はサクサク感の評点とほぼ同様の推移を示した(データ略).
ま た , 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz, 100~ 140 Hz お よ び 3,200 Hz 以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー
食 感 指 標 と サ ク サ ク 感 の 評 点 と の 間 に は ,相 関 係 数 0.7 以 上 の 強 い 正 の 相 関 関 係 が 認 め
- 68 -
られた(第 2 表).
2.商 業 適 期 に 収 穫 し た ‘ 太 秋 ’ と ‘ 甘 秋 ’ の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 比 較 ( 実 験 2)
弾 性 指 標 は ‘ 太 秋 ’ で 28.6×10 6 cm 2 ・Hz 2 , ‘ 甘 秋 ’ で 26.6×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ り , 両
品 種 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た( 第 3 表 ).硬 さ の 評 点 は‘ 太 秋 ’で -0.1,‘ 甘
秋 ’で 0.1 で あ り ,両 品 種 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら な か っ た .サ ク サ ク 感 の 評 点 は‘ 太 秋 ’
で 1.8, ‘ 甘 秋 ’ で -1.5 で あ り , 両 品 種 間 に 0.1% 水 準 で 有 意 な 差 が 認 め ら れ た ( 第 3
表).
また,両品種間において,実験 1 で示した周波数帯域におけるエネルギー食感指標
の う ち , 0~ 50 Hz で は 5% 水 準 , 4,480~ 12,800 Hz で は 1% 水 準 , 12,800 Hz 以 上 で は
0.1% 水 準 で 有 意 な 差 が 認 め ら れ た . 特 に , 4,480 Hz 以 上 の 高 周 波 帯 域 で は , ‘ 太 秋 ’
が ‘ 甘 秋 ’ よ り 有 意 に 高 い エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 を 示 し た ( 第 32 図 ) .
3.収 穫 時 の 熟 度 ( 果 皮 色 ) と エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 関 係 ( 実 験 3)
‘ 太 秋 ’ の 弾 性 指 標 は カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 で 28.7×10 6 cm 2 ・Hz 2 , カ ラ ー チ ャ ー ト
値 4.5 で 26.7×10 6 cm 2 ・Hz 2 で あ り ,両 区 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た( 第 4 表 ).
硬 さ の 評 点 は カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 で 0.0, カ ラ ー チ ャ ー ト 値 4.5 で -0.1 で あ り , 両 区
間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た . サ ク サ ク 感 の 評 点 は カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 で 1.9,
カ ラ ー チ ャ ー ト 値 4.5 で 1.4 で あ り , 両 区 間 に 5% 水 準 で 有 意 な 差 が 認 め ら れ た ( 第 4
表).
ま た , 2 つ の 果 皮 色 ( カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 と 4.5) の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 間 に お
い て , 周 波 数 帯 域 12,800~ 17,920 Hz で は 5% 水 準 , 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz お よ び 4,480
~ 12,800 Hz で は 1% 水 準 , 周 波 数 帯 域 3,200~ 4,480 Hz で は 0.1% 水 準 で , カ ラ ー チ ャ
ー ト 値 3.5 の 方 が 有 意 に 高 い エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 を 示 し た ( 第 33 図 ) .
- 69 -
考察
日本語のテクスチャー表現は非常に多く,日本人はテクスチャーに対して繊細であ
り , こ だ わ り を も っ て い る ( 早 川 , 2009) . リ ン ゴ の シ ャ キ シ ャ キ 感 や ス イ カ の シ ャ
リ感など果物には特徴的な食感があり,テクスチャーとして表現されるが,従来のカ
キにはこのような特徴的な食感,テクスチャー表現はなかった.しかし,‘太秋’は
今までのカキにはないサクサク感を有し,その食感は‘太秋’のおいしさを表現して
いる.そこで,このサクサク感を定量的に評価することは,おいしさの解明とともに
‘太秋’の品質評価を行ううえで非常に重要である.‘太秋’の果肉硬度は‘富有’
な ど に 比 べ て 軟 ら か く ( 千 々 和 ら , 1997; 山 田 ら , 1998) , 果 肉 硬 度 の 測 定 値 だ け で
評価すると単なる軟らかい品種になってしまうため,食感の客観的な測定を行い,サ
クサク感を評価することが重要である.
実験 1 で収穫後日数の異なる‘太秋’の食感測定および官能評価を行った. 周波数
帯 域 0~ 50 Hz, 100~ 140 Hz お よ び 3,200 Hz 以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は 収 穫
後日数が経つに従い低下し,サクサク感の評点との間に強い正の相関関係が 認められ
た ( 第 30 図 , 第 2 表 ) . し か し , 周 波 数 帯 域 0~ 50 Hz に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標
の低下パターンはサクサク感の評点の低下パターンと少し異なることから, 周波数帯
域 100~ 140 Hz お よ び 3,200 Hz 以 上 の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 に お い て サ ク サ ク 感 の 定 量
評 価 が 可 能 と 考 え ら れ た ( 第 31 図 ) .
次に,実験 2 で商業的な適期に収穫した‘太秋’と‘甘秋’の果 肉硬度測定,食感
測 定 お よ び 官 能 評 価 の 比 較 を 行 っ た .果 肉 硬 度 を 示 す 弾 性 指 標 と 官 能 評 価 の 結 果 か ら ,
‘太秋’と‘甘秋’との間に果肉硬度の差は認められないが,食感の差は認められる
ことが確認された(第 3 表).そして,その食感の差は食感測定の結果からも明らか
に な っ た . 4,480 Hz 以 上 の 高 周 波 帯 域 に お い て , ‘ 太 秋 ’ が ‘ 甘 秋 ’ よ り 有 意 に 高 い
エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 を 示 し た( 第 32 図 ).実 験 2 お よ び 前 述 の 実 験 1 の 食 感 測 定 の 結
果から,‘太秋’のサクサク感の定量評価は,弾性指標ではできないが,周波数帯域
4,480 Hz 以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 で は で き る こ と が 明 ら か に な っ た .こ れ は ,
ス イ カ の シ ャ リ 感 を 定 量 評 価 す る に 当 た り , 1,000 Hz 以 上 の 高 周 波 数 帯 域 を 大 き く 評
価 し て い る 報 告 と 一 致 す る ( 岩 谷 ら , 2011) . な お , 実 験 2 に お け る ‘ 太 秋 ’ と ‘ 甘
秋’は両方とも商業的な収穫適期の果実を用いている.すなわち,両品種の 熟度を揃
えていないため,この結果は品種間差のみでなく,それぞれの熟度の違いも影響して
いる可能性があると考えられる.今後,熟度を揃えて実験を行い,より高精度にサク
サク感を定量評価できる周波数帯域を検討していく必要がある.
‘太秋’は未熟な果実ほど糖度が低く,サクサク感が強いが,過熟になると糖度が
高 く , サ ク サ ク 感 が な く な る ( 川 尾 , 2009) . 現 在 , 岐 阜 県 に お け る ‘ 太 秋 ’ の 収 穫
基 準 は 果 頂 部 の 果 皮 色 が‘ 富 有 ’用 カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 以 上 で あ り ,糖 度 よ り も サ ク
サク感を重視している.そこで,収穫時の熟度(果頂部の果皮色)と食感の関係を調
- 70 -
査 し た .カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 で 収 穫 し た 果 実 と 4.5 で 収 穫 し た 果 実 と の 間 に 果 実 硬 度
の差は認められなかったが,食感の差は認められた(第 4 表).収穫後 1 日のカラー
チ ャ ー ト 値 4.5 の 果 実 と 収 穫 後 1~ 11 日 の カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 の 果 実 に お け る エ ネ ル
ギ ー 食 感 指 標 を 比 較 す る と , 4.5 で 収 穫 し た 果 実 の 食 感 は 3.5 で 収 穫 し た 果 実 の 収 穫 後
7~ 9 日 に 相 当 す る と 考 え ら れ た( 第 34 図 ).サ ク サ ク 感 は‘ 太 秋 ’の お い し さ の 代 名
詞 で あ り ,食 感 を 重 視 し た 選 果 の 中 で ,カ ラ ー チ ャ ー ト 値 4.5 以 上 の 果 実 の 出 荷 は‘ 太
秋’の評価低下に繋がることが懸念された.今後,‘太秋’の一層のブランド化を図
るためには,収穫基準の適正な範囲を検討する必要があると考えられた.
現在,カキの品種育成においては‘太秋’の食味の良さを活かした育種が行われて
お り , 2007 年 に は ‘ 黒 熊 ’ と ‘ 太 秋 ’ を 交 雑 し て 選 抜 さ れ た ‘ 太 天 ’ が 品 種 登 録 出 願
さ れ た( 山 田 ら ,2008).‘ 太 天 ’は 不 完 全 渋 ガ キ で あ る こ と か ら 脱 渋 処 理 を 行 う が ,
脱 渋 後 も サ ク サ ク 感 は 残 る ( 佐 藤 , 2009) . こ の よ う に , 今 後 , サ ク サ ク 感 を 有 し た
品種の増えることが予測され,サクサク感を定量評価することは益々重要になると考
えられた.
今後,カキの消費拡大を図るためには,‘太秋’のサクサク感を活用していく必要
がある.サクサク感を定量評価することによって,品種育成や栽培技術および貯蔵技
術の開発を効率的,効果的に進めることができると考えられる.‘太秋’を起爆剤と
して,カキ産地の活性が期待される.
- 71 -
- 72 -
周波数帯域(Hz)
第30図 ‘太秋’における収穫後日数とエネルギー食感指標の関係
縦線は標準誤差を示す(n=35)
17,920-25,600
5day
13day
12,800-17,920
8,920-12,800
6,400-8,920
4,480-6,400
3,200-4,480
3day
11day
2,240-3,200
1,600-2,240
1,120-1,600
800-1,120
560-800
1day
9day
400-560
280-400
200-280
140-200
100-140
50-100
10-50
0-50
エネルギー食感指標(mV2 ・Hz-2 )
25
7day
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
エネルギー食感指標およびサクサク感の評点Z
0-50Hz
3,200-4,480Hz
6,400-8,920Hz
12,800-17,920Hz
サクサク感
100-140Hz
4,480-6,400Hz
8,920-12,800Hz
17,920-25,600Hz
110
100
90
80
70
60
50
40
30
1
3
5
7
9
11
13
収穫後日数(日)
第31図 ‘太秋’における周波数帯域0-50 Hz,100-140 Hz,3,200 Hz以上
のエネルギー食感指標およびサクサク感の評点の推移
Z
収穫後1日のエネルギー食感指標および評点を100とした値
- 73 -
第2表 ‘太秋’における各周波数帯域のエネルギー
食感指標とサクサク感の評点との相関係数
周波数帯域(Hz)
相関係数(r)
0-50
0.806 ***
10-50
-0.277 ns
50-100
0.073 ns
100-140
0.705 ***
140-200
0.597 ***
200-280
0.433 ***
280-400
0.215 ns
560-800
0.429 ***
800-1120
0.073 ns
1,120-1,600
-0.130 ns
1,600-2,240
0.163 ns
2,240-3,200
0.695 ***
3,200-4,480
0.859 ***
4,480-6,400
0.901 ***
6,400-8,920
0.901 ***
8,920-12,800
0.892 ***
12,800-17,920
0.920 ***
17,920-25,600
0.928 ***
nsは有意差がないこと,***は0.1%水準で
有意差があることを示す(n=49)
- 74 -
第3表 商業適期に収穫した‘太秋’と‘甘秋’の果実硬度,食感の比較
弾性指標
官能評価の評点
6 2
2
硬さ
サクサク感
(×10 cm ・Hz )
太秋
28.6
-0.1
1.8
甘秋
26.6
0.1
-1.5
ns
ns
***
有意差Z
Z
t検定により,nsは有意差がないこと,***は0.1%水準で有意差があることを示す
(n=8)
- 75 -
太秋
25
甘秋
エネルギー食感指標(mV2 ・Hz-2 )
***
***
20
*
15
**
**
**
ns
ns
ns
10
ns
*
5
*
***
0
ns
ns
ns
ns
ns
ns
周波数帯域(Hz)
第32図 商業適期に収穫した‘太秋’と‘甘秋’のエネルギー食感指標の比較
縦線は標準誤差を示す(n=40)
t検定により,nsは有意差がないこと,*は5%水準,**は1%水準,
***は0.1%水準で有意差があることを示す
- 76 -
17,920-25,600
12,800-17,920
8,920-12,800
6,400-8,920
4,480-6,400
3,200-4,480
2,240-3,200
1,600-2,240
1,120-1,600
800-1,120
560-800
400-560
280-400
200-280
140-200
100-140
50-100
10-50
0-50
-5
第4表 ‘太秋’における果皮色と果実硬度,食感の関係
弾性指標
官能評価の評点
6 2
2
硬さ
サクサク感
(×10 cm ・Hz )
CC値3.5
28.7
0.0
1.9
CC値4.5
26.7
-0.1
1.4
Z
ns
ns
*
有意差
Z
t検定により,nsは有意差がないこと,*は5%水準で有意差があることを示す
(n=7)
- 77 -
25
CC値3.5
CC値4.5
ns
エネルギー食感指標(mV2 ・Hz-2 )
20
*
**
15
**
**
***
ns
10
ns
ns
5
ns
ns
ns
ns
**
ns
ns
ns
0
-5
ns
ns
周波数帯域(Hz)
第33図 ‘太秋’における果皮色とエネルギー食感指標の関係
縦線は標準誤差を示す(n=35)
t検定により,nsは有意差がないこと,*は5%水準,**は1%水準,
***は0.1%水準で有意差があることを示す
- 78 -
17,920-25,600
12,800-17,920
8,920-12,800
6,400-8,920
4,480-6,400
3,200-4,480
2,240-3,200
1,600-2,240
1,120-1,600
800-1,120
560-800
400-560
280-400
200-280
140-200
100-140
50-100
10-50
0-50
-10
エネルギー食感指標(mV2 ・Hz-2 )
20
CC値4.5: 1day
18
CC値3.5: 1day
CC値3.5: 3day
16
CC値3.5: 5day
14
CC値3.5: 7day
CC値3.5: 9day
12
CC値3.5: 11day
10
17,920-25,600
12,800-17,920
8,920-12,800
6,400-8,920
4,480-6,400
8
周波数帯域(Hz)
第34図 ‘太秋’における果皮色,収穫後日数とエネルギー食感指標の関係
縦線は標準誤差を示す(n=35)
- 79 -
第3節
1-MCP処理およびポリエチレン包装によるカキ‘太秋’の食感保持技術
の開発
緒言
近年,農産物の価格が低迷している中,多くの産地においてブランド化の取り組み
が行われている.和歌山県農業協同組合連合会では,同県内産ミカンについて「味が
一番の商品」を生産・販売戦略のキーワードとして,糖度および酸度を基準としたブ
ランド展開を行っている.「味一」・「味一α」はその中のトップブランドであり,
レ ギ ュ ラ ー 品 の 約 2~ 4 倍 の 市 場 出 荷 価 格 で 取 引 さ れ て い る( 佐 藤・于 ,2011).ま た ,
静岡県内の茶産地には,広く栽培されている‘やぶきた’ではなく,香味に特徴のあ
る品種をブランド化して生産・販売戦略に取り組んでいる地域がある(加納・納口,
2008) .
‘ 太 秋 ’は 1995 年 に 品 種 登 録 さ れ た 中 生 の 完 全 甘 ガ キ で あ り ,食 味 が 優 れ て い る こ
と が 最 大 の 特 徴 で あ る ( 山 根 ら , 2001) . ‘ 太 秋 ’ の 食 味 の 良 さ は , 食 感 が サ ク サ ク
と し て い る こ と ( 山 根 , 1994) , ‘ 富 有 ’ と は 糖 組 成 が 異 な る こ と ( 鈴 木 ら , 2010a)
などにある.特にサクサクとした食感は今までのカキにはない新たな食感であり,ナ
シのような食感とも評されている.そして,この最大の特徴であるサクサクとした食
感を生かしたブランド戦略,すなわち,食感を長期間保持することができる技術の開
発は,消費が右下がり傾向であるカキの新しい需要を喚起すると期待される.
カキ果実の物理的なおいしさに関する研究は,貯蔵における品質保持(果肉硬度の
評 価 ) を 中 心 に 行 わ れ て き た . 樽 谷 ・ 真 部 ( 1960) , 樽 谷 ( 1960) は ‘ 富 有 ’ の 好 適
な 貯 蔵 条 件 を 明 ら か に し , 0.06 mm の ポ リ エ チ レ ン 袋 に 入 れ , 0℃ に 貯 蔵 す る 方 法 を 開
発した.現在,その方法は実用化され,‘富有’の冷蔵柿が流通している.また,文
室 ・ 蒲 生 ( 2002) , 平 ・ 磯 部 ( 2005) は , ‘ 平 核 無 ’ を 炭 酸 ガ ス 脱 渋 し た 後 , プ ラ ス
チ ッ ク フ ィ ル ム で 個 包 装 し , 1℃ に 保 持 す る と , 約 2~ 3 か 月 間 の 長 期 貯 蔵 が 可 能 で あ
ることを明らかにした.しかし,これら果肉硬度に基づく貯蔵性の評価と食感評価は
異なるものであり,食感の保持に関する研究は行われていない.
食感の評価を行うに当たり,定量的に評価する方法が必要である.これまで,食感
の 評 価 は 官 能 試 験 が 一 般 的 で あ り ,客 観 的 に 評 価 す る 方 法 が な か っ た .そ こ で ,Sakurai
ら( 2005a)は ,プ ロ ー ブ を サ ン プ ル に 貫 入 さ せ ,そ の 時 に 発 生 す る 音 響 振 動 を プ ロ ー
ブ と ピ ス ト ン の 間 に 挟 ん だ 圧 電 素 子 で 検 出 す る 食 感 測 定 装 置( Acoustic Measurement of
Crispness, AMC) を 開 発 し た . そ の 後 , そ の 電 圧 デ ー タ を オ ク タ ー ブ マ ル チ フ ィ ル タ
で 周 波 数 帯 域 ご と に 分 け て 数 値 化 し( Taniwaki ら ,2006b),振 動 検 出 に 加 速 度 セ ン サ
を 用 い ,エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 を 厳 密 な 物 理 量 で 定 義 し た( Iwatani ら ,2013).そ し て ,
前 節 で は ,AMC 法 に よ っ て‘ 太 秋 ’の サ ク サ ク と し た 食 感 を 定 量 評 価 で き る こ と を 明
らかにした.
- 80 -
そ こ で , 本 研 究 で は , AMC 法 を 用 い て ‘ 太 秋 ’ の サ ク サ ク と し た 食 感 ( 以 下 ,サ ク
サク感)を定量評価するとともに,サクサク感の保持技術について検討したので報告
する.なお,サクサク感の保持方法は,現地で実用的に使用できる技術とするため,
冷蔵設備を使用しない室温条件下で検討した.
材料および方法
1.ポ リ エ チ レ ン 包 装 が エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 に 及 ぼ す 影 響 ( 実 験 1)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の 15 年 生 ‘太 秋 ’を 供 試 し た . 2011 年 10 月 17 日 , 20
日 お よ び 23 日 に 各 14 果 ,26 日 お よ び 29 日 に 各 6 果 ,果 頂 部 の 果 皮 色 が ‘富 有 ’用 カ ラ
ー チ ャ ー ト 値( 農 林 水 産 省 果 樹 試 験 場 監 修 )で 3.5 に 達 し た 果 実 を 収 穫 し た .果 皮 色 の
測 定 に は 色 彩 色 差 計 ( CR-400, コ ニ カ ミ ノ ル タ ( 株 ) ) を 使 用 し た . 新 川 ら ( 2008)
の 報 告 に 準 じ て 次 式 を 作 成 し , 測 定 し た 色 相 角 度 ( H°) を カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ( CC 値 )
に 変 換 し た .CC 値 = - 9.033×LN( H°)+ 43.185( r 2 = 0.986).な お ,供 試 果 実 は へ た
すきや条紋の発生していないものとした.
そ の 後 ,低 密 度 ポ リ エ チ レ ン の 袋( 大 き さ 180 mm×270 mm)で 個 包 装 し た .密 封 は
ヒ ー ト シ ー ラ ー で 行 い ,室 温 下 に 保 管 し た .11 月 1 日 と 10 日 に 食 感 測 定 お よ び 官 能 評
価 を 行 い , そ れ ぞ れ の 前 日 に 果 重 お よ び 果 皮 色 を 測 定 し た . 11 月 1 日 は 収 穫 後 3~ 15
日 に 相 当 す る 収 穫 日 ( 10 月 17 日 , 20 日 , 23 日 , 26 日 お よ び 29 日 ) の 果 実 各 6 果 ,
10 日 は 収 穫 後 18~ 24 日 に 相 当 す る 収 穫 日 ( 10 月 17 日 , 20 日 お よ び 23 日 ) の 果 実 各
8 果 を 測 定 し た . ポ リ エ チ レ ン の 厚 さ は 0.03 mm, 0.06 mm お よ び 0.08 mm の 3 種 類 を
用いた.
食 感 は AMC 法 に よ る 食 感 測 定 装 置(( 有 )生 物 振 動 研 究 所 )で 測 定 し た .果 実 赤 道
部 を 厚 さ 2 cm 程 度 に 輪 切 り に し ,楔 形 の プ ロ ー ブ( 直 径 5 mm,幅 5 mm,先 端 角 30°)
で 果 皮 に や や 近 い 果 肉 部 を 5 か 所 , 放 射 状 の 向 き に 測 定 し た . 毎 秒 22 mm の 速 度 で 赤
道面に対して直角に貫入させ,その時に生じる音響振動を加速度センサで検出し,出
力電圧信号をコンピュータで解析した.得られた信号は,半オクターブマルチフィル
タ を 用 い て 19 の 周 波 数 帯 域 に 分 割 し た .Iwatani ら( 2013)の 報 告 に 準 じ て ,各 周 波 数
帯 域 の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標( ETI:Energy Texture Index)を デ ー タ 取 得 時 間( t),上 限
周 波 数 ( fu ) , 下 限 周 波 数 ( fl ) お よ び 振 幅 電 圧 ( Vi ) か ら , 次 の 式 で 算 出 し た .
ETI= (1/t)×(1/f u f l ) 2 ×Σ (Vi) 2
食 感 は , 前 節 に 準 じ て , 周 波 数 帯 域 4,480 Hz 以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 で 評
価した.
官 能 評 価 は 5 段 階 評 点 法 で , サ ク サ ク 感 ( 非 常 に 弱 い : - 2~ 非 常 に 強 い : + 2) お
よ び お い し さ ( 非 常 に お い し く な い : - 2~ 非 常 に お い し い : + 2) を 評 価 し た . パ ネ
- 81 -
リストは,カキ果実の品質評価の経験を積んだ著者の 1 人(鈴木)が行い,試験区名
を伏せたうえで評価した.
2.1-メ チ ル シ ク ロ プ ロ ペ ン ( 以 下 , 1-M C P ) 処 理 と ポ リ エ チ レ ン 包 装 が エ ネ ル ギ ー
食 感 指 標 に 及 ぼ す 影 響 ( 実 験 2)
岐 阜 県 農 業 技 術 セ ン タ ー 植 栽 の 16 年 生 ‘太 秋 ’を 供 試 し た . 2012 年 10 月 16 日 , 19
日 , 22 日 , 25 日 , 29 日 , 11 月 2 日 お よ び 5 日 に , 果 頂 部 の 果 皮 色 が ‘ 富 有 ’ 用 カ ラ
ー チ ャ ー ト 値 で 3.5 に 達 し た 果 実 を 各 8 果 収 穫 し た .果 皮 色 の 測 定 は 実 験 1 と 同 様 の 方
法で行った.また,実験 1 と同様にへたすきや条紋の発生している果実は供試しなか
った.
試 験 区 は ,低 密 度 ポ リ エ チ レ ン 袋( 厚 さ 0.06 mm,大 き さ 180 mm×270 mm)で 個 包
装 し た ポ リ エ チ レ ン 包 装 区 ( 以 下 , ポ リ 包 装 区 ) , 1-MCP 処 理 後 , 低 密 度 ポ リ エ チ レ
ン 袋 で 個 包 装 し た 1-MCP 処 理 + ポ リ エ チ レ ン 包 装 区 ( 以 下 , 1-MCP+ポ リ 包 装 区 ) お
よび無処理区とした.なお,個包装はヒートシーラーで密封した.ポリエチレン袋の
厚 さ は 実 験 1 の 結 果 お よ び 取 扱 い の 利 便 性 な ど を 考 慮 し て 0.06 mm と し た .1-MCP は ,
気 密 性 の プ ラ ス チ ッ ク 容 器 ( 内 容 積 117 L) に 果 実 と SmartFresh TM ( ロ ー ム ・ ア ン ド ・
ハ ー ス ・ ジ ャ パ ン ( 株 ) ) を 入 れ て 密 封 し , 1 ppm で 24 時 間 曝 露 処 理 し た .
そ の 後 ,室 温 下 に 保 管 し ,11 月 15 日 に 果 重 お よ び 果 皮 色 を 測 定 し ,11 月 16 日 に 食
感 測 定 お よ び 官 能 評 価 を 行 っ た . 11 月 16 日 は 収 穫 後 11~ 31 日 に 相 当 し , 食 感 測 定 お
よび官能評価は実験 1 と同様の方法で行った.
結果
1.ポ リ エ チ レ ン 包 装 が エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 に 及 ぼ す 影 響 ( 実 験 1)
ポ リ エ チ レ ン 包 装 し た 区 に お け る サ ク サ ク 感 の 評 点 は ,収 穫 後 15 日 ま で 横 ば い に 推
移し,その後大きく低下した.無処理区におけるサクサク感の評点は直線的に低下し
た .収 穫 後 9 日 ま で お よ び 18~ 24 日 に お い て は ,試 験 区 間 に 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か
っ た . 収 穫 後 12 と 15 日 に お い て は , ポ リ エ チ レ ン 包 装 し た 区 が 無 処 理 区 よ り も 有 意
に 高 く 推 移 し た .ポ リ エ チ レ ン 袋 の 厚 さ の 間 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た( 第 35 図 ).
な お ,お い し さ の 評 点 は サ ク サ ク 感 の 評 点 と ほ ぼ 同 様 の 推 移 を 示 し た( r=0.96,デ ー タ
略).
エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 結 果 を 第 36 図 に 示 し た . 周 波 数 帯 域 4,480~ 6,400 Hz に お け
る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は ,試 験 区 間 に 明 確 な 差 が 認 め ら れ な か っ た .周 波 数 帯 域 6,400
Hz 以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は サ ク サ ク 感 の 評 点 と ほ ぼ 同 様 の 推 移 を 示 し ,エ
ネルギー食感指標とサクサク感の評点との間には正の相関が認められ,相関係数
( r=0.74~ 0.77) は 1% 水 準 で 有 意 で あ っ た ( デ ー タ 略 ) . 収 穫 後 12 と 15 日 に お い て
は,ポリエチレン包装した区が無処理区よりも有意に高く推移し,ポリエチレン包装
- 82 -
した区の間に有意な差は認められなかった.
重量減少率は,無処理区がポリエチレン包装した区よりも有意に大きく推移し,収
穫 後 日 数 が 経 つ に 従 い ,そ の 差 は 大 き く な っ た( 第 37 図 ).ポ リ エ チ レ ン 包 装 し た 区
の 間 で は , 収 穫 後 5 日 以 降 , 0.03 mm 区 が 0.06 mm 区 お よ び 0.08 mm 区 よ り も 有 意 に
大きく推移した.しかし,その差はわずかであった.
果 皮 色( カ ラ ー チ ャ ー ト 値 )は ,い ず れ の 試 験 区 に お い て も ,収 穫 後 2 日 に は 約 4.0
と な り ,収 穫 後 14 日 ま で は ほ ぼ 横 ば い で 推 移 し ,そ れ 以 降 上 昇 し た .な お ,試 験 区 間
に 明 確 な 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た ( 第 38 図 ) .
な お , 保 存 期 間 中 の 温 度 は 11.4~ 25.4℃ ( 平 均 18.9℃ ) で あ っ た .
2. 1-M C P 処 理 お よ び ポ リ エ チ レ ン 包 装 が エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 に 及 ぼ す 影 響( 実 験 2)
1-MCP+ ポ リ 包 装 区 に お け る サ ク サ ク 感 の 評 点 は ,収 穫 後 25 日 ま で 横 ば い に 推 移 し ,
そ の 後 大 き く 低 下 し た( 第 39 図 ).無 処 理 区 お よ び ポ リ 包 装 区 に お け る サ ク サ ク 感 の
評 点 は や や 直 線 的 に 低 下 し た .収 穫 後 11 日 に お い て は ,ポ リ 包 装 区 お よ び 1-MCP+ ポ
リ 包 装 区 が 無 処 理 区 よ り も 有 意 に 高 く , ポ リ 包 装 区 と 1-MCP+ ポ リ 包 装 区 と の 間 に 有
意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た .収 穫 後 14~ 25 日 に お い て は ,1-MCP+ ポ リ 包 装 区 が ポ リ
包装区および無処理区よりも有意に高く推移した.なお,おいしさの評点はサクサク
感 の 評 点 と ほ ぼ 同 様 の 推 移 を 示 し た ( r=0.96, デ ー タ 略 ) .
エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 の 結 果 を 第 40 図 に 示 し た . 周 波 数 帯 域 4,480~ 6,400 Hz に お い
ては,無処理区でエネルギー食感指標がサクサク感の評点よりもやや高めに推移し,
1-MCP + ポ リ 包 装 区 と 無 処 理 区 と の 間 に 明 確 な 差 は 認 め ら れ な か っ た . 周 波 数 帯 域
6,400 Hz 以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は サ ク サ ク 感 の 評 点 の 推 移 と ほ ぼ 同 様 の 傾
向を示し,エネルギー食感指標とサクサク感の評点との間には正の相関が認められ,
相 関 係 数( r=0.77~ 0.86)は 1% 水 準 で 有 意 で あ っ た( デ ー タ 略 ).周 波 数 帯 域 6,400 Hz
以 上 に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は , 収 穫 後 14~ 25 日 に お い て 1-MCP+ ポ リ 包 装 区
が無処理区およびポリ包装区よりも有意に高く推移した.
重 量 減 少 率 は , 無 処 理 区 が ポ リ 包 装 区 お よ び 1-MCP+ ポ リ 包 装 区 よ り も 有 意 に 大 き
く 推 移 し ,収 穫 後 日 数 が 経 つ に 従 い ,そ の 差 は 大 き く な っ た( 第 41 図 ).ポ リ 包 装 区
と 1-MCP+ ポ リ 包 装 区 と の 間 に も わ ず か で は あ る が 有 意 な 差 が 認 め ら れ , 1-MCP+ ポ
リ包装区がポリ包装区よりも大きく推移した.
収 穫 後 22 日 ま で の 果 皮 色( カ ラ ー チ ャ ー ト 値 )は ,試 験 区 間 に 差 が 認 め ら れ な か っ
た が ,収 穫 後 25~ 31 日 に お い て は 無 処 理 区 が 1-MCP+ ポ リ 包 装 区 よ り も 有 意 に 大 き く
推 移 し た ( 第 42 図 ) .
な お , 保 存 期 間 中 の 温 度 は 6.7~ 27.0℃ ( 平 均 15.6℃ ) で あ っ た .
- 83 -
考察
1.‘ 太 秋 ’ の 食 感 の 定 量 評 価
鈴 木 ら ( 1981) は , カ キ 果 実 に お け る 熟 期 の 判 定 は も っ ぱ ら 果 皮 色 に 基 づ い て な さ
れ て お り ,カ ラ ー チ ャ ー ト は 最 も 良 い 熟 期 判 定 の 指 針 で あ る と し た .ま た ,第 2 章 第 1
節では,‘富有’において収穫時期に関わらず果皮色が同じであれば,収穫時の果 肉
硬度およびその後の硬度変化に差はなく,同じ成熟段階であるとした.これらのこと
から,‘太秋’においても収穫時の果皮色が同じであれば成熟段階も同じと考え,本
研究では異なる収穫日から特定の調査日までの日数を収穫後日数として実験を行い,
取りまとめた.
前 節 で は ,AMC 法 に お け る 周 波 数 帯 域 4,480 Hz 以 上 の エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 に よ っ て ,
‘ 太 秋 ’の サ ク サ ク 感 を 定 量 評 価 で き る と し た .本 研 究 に お い て ,周 波 数 帯 域 6,400~
25,600 Hz に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は サ ク サ ク 感 の 評 点 と 同 様 の 推 移 を 示 し た が ,
周 波 数 帯 域 4,480~ 6,400 Hz に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 は サ ク サ ク 感 の 評 点 と 異 な る
推 移 を 示 し た ( 第 35, 36, 39, 40 図 ) . 周 波 数 帯 域 4,480~ 6,400 Hz に お い て , エ ネ
ル ギ ー 食 感 指 標 と サ ク サ ク 感 の 評 点 と の 相 関 係 数 は r=0.67( 実 験 1) , 0.74( 実 験 2)
で あ り 統 計 上 1% 水 準 で 有 意 で あ っ た が ,無 処 理 区 で エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 が サ ク サ ク 感
の評点よりもやや高めに推移したことから,この周波数帯域での定 量評価は精度が劣
ると考えられた.以上の結果から,本研究において,‘太秋’のサクサク感は周波数
帯 域 6,400~ 25,600 Hz に お け る エ ネ ル ギ ー 食 感 指 標 に よ っ て , 高 い 精 度 で 定 量 評 価 で
き る こ と が 明 ら か に な っ た . な お , 周 波 数 帯 域 6,400~ 25,600 Hz に お い て , サ ク サ ク
感が保持されているエネルギー食感指標の値を特定するには,まだデータが十分でな
いため,今後の研究が必要であると考えられた.
2. ‘ 太 秋 ’ の 食 感 保 持 技 術 の 開 発
樽 谷 ( 1960) は , ‘ 富 有 ’ を ポ リ エ チ レ ン 包 装 す る こ と に よ っ て , 果 実 か ら の 水 分
蒸 散 が 抑 制 さ れ , 貯 蔵 性 が 高 ま る こ と を 明 ら か に し た . Tsuchida ら ( 2003) は , ‘ 富
有 ’を 低 湿 条 件( 温 度 20℃ ,湿 度 60% )に 置 く と 高 湿 条 件( 温 度 20℃ ,湿 度 ≧ 98.5% )
に比べて水分損失量,エチレン生成量が多くなり,果実軟化が著しくなったと報告し
て い る . 実 験 1 お よ び 2 に お い て , ‘ 太 秋 ’ を ポ リ エ チ レ ン 包 装 す る と , 収 穫 後 約 11
~ 15 日 ま で サ ク サ ク と し た 食 感 を 保 持 す る こ と が で き た( 第 35,36,39,40 図 ).無
処 理 区 の 食 感 保 持 日 数 は 収 穫 後 約 9 日 ま で で あ る こ と か ら( 第 35,36 図 ),ポ リ エ チ
レ ン 包 装 に よ っ て 約 2~ 6 日 長 く 保 持 で き る こ と が 明 ら か に な っ た .ポ リ エ チ レ ン 包 装
した区の重量減少率が無処理区の重量減少率よりも有意に低く推移したことから(第
37, 41 図 ) , ポ リ エ チ レ ン 包 装 に よ る 水 分 蒸 散 抑 制 に よ っ て , 果 肉 細 胞 壁 の 健 全 性 が
保 た れ ( Tuchida ら , 2003) , 食 感 が 保 持 さ れ る と 考 え ら れ た .
実験 1 において,ポリエチレンの厚さによる食感保持効果に差は認められなかった
- 84 -
( 第 35,36 図 ).重 量 減 少 率 は ポ リ エ チ レ ン の 厚 さ に よ っ て 有 意 な 差 が 認 め ら れ た が
( 第 37 図 ) , 食 感 の 保 持 さ れ て い る 期 間 中 ( 収 穫 後 14 日 ) の 重 量 減 少 率 は 0.03 mm
区 で 0.7% ,0.06 mm 区 で 0.3% ,0.08 mm 区 で 0.2% と わ ず か な 差 で あ っ た .樽 谷( 1960)
は ,果 実 品 質 に 影 響 を 及 ぼ す 重 量 減 少 率 を 5%程 度 と し て お り ,ポ リ エ チ レ ン 包 装 区 間
に お け る 0.2~ 0.7% の 差 で は 果 実 品 質 へ の 影 響 は ほ と ん ど な い と 考 え ら れ た .ま た ,樽
谷( 1960,1961)は ,‘ 富 有 ’に 対 し て 厚 さ の 異 な る ポ リ エ チ レ ン を 包 装 し た と こ ろ ,
0.06 mm が 0.03 mm お よ び 0.08 mm よ り も 長 期 間 貯 蔵 す る こ と が で き , そ の 理 由 と し
て,水分蒸散の防止のみでなくガス条件の面を指摘している.しかし,本研究のよう
な 短 期 間 の 保 存 に お い て は , ポ リ エ チ レ ン に よ る MA 効 果 の 可 能 性 は 低 く , 果 実 品 質
に差が生じなかったと考えられた.
1-MCP は エ チ レ ン 作 用 を 強 力 に 阻 害 し( Sisler・Serek,1997),リ ン ゴ ,ナ シ な ど に
お け る 鮮 度 保 持 効 果 が 報 告 さ れ て い る ( 艾 乃 吐 拉 ら , 2005; 島 田 ら , 2011) . カ キ で
は,‘刀根早生’,‘西条’,‘松本早生富有’,‘太秋’などにおいて,軟化抑制
の 効 果 が 報 告 さ れ て い る (Harima ら ,2003; 中 満 ら ,2006; 新 川 ら ,2005).実 験 1 の
ポ リ エ チ レ ン 包 装 し た 区 に お い て は ,収 穫 後 18 日 以 降 ,果 皮 は 硬 い が 果 肉 の 軟 ら か い
果実が発生し始めたことから,これ以上の保存は商品価値を著しく損ねてしまうと判
断 し た . 果 肉 硬 度 に 対 し て ガ ス 条 件 は 大 き な 影 響 を 示 さ な い こ と ( 樽 谷 , 1961) , 実
際に果肉の軟化した果実から異臭などは認められなかったことから,この軟化はエチ
レ ン に よ る 影 響 と 考 え , 1-MCP 処 理 を 試 み た . 実 験 2 の 結 果 で は , 1-MCP 処 理 後 , ポ
リ エ チ レ ン 包 装 を 行 う と ,収 穫 後 約 25 日 ま で 食 感 を 保 持 す る こ と が で き た( 第 39,40
図 ).ポ リ エ チ レ ン 包 装 の み の 食 感 保 持 日 数 は 収 穫 後 約 11~ 15 日 ま で で あ っ た こ と か
ら ,1-MCP を 処 理 す る こ と に よ っ て さ ら に 約 10~ 14 日 長 く 保 持 で き る こ と が 明 ら か に
なった.このことから,ポリエチレン包装のみで収穫後しばらくしてから生じる軟化
は,少なくともエチレンが関与していると考えられた.本研究では,エチレン生成量
を 測 定 し て い な い が , 温 度 20℃ で 貯 蔵 し た ‘ 富 有 ’ で は 高 湿 条 件 ( 湿 度 100% ) に お
い て も エ チ レ ン が 発 生 す る こ と か ら ( 土 田 ら , 2002) , 本 研 究 の ‘ 太 秋 ’ に お い て も
エチレンが発生し,ポリエチレンの袋内に徐々にエチレンが溜まり,軟化に至ると考
え ら れ た . な お , 実 験 2 の 重 量 減 少 率 に お い て , 1-MCP+ ポ リ 包 装 区 が ポ リ 包 装 区 よ
り も わ ず か に 大 き く 推 移 し た こ と は( 第 41 図 ),ポ リ 包 装 し た 日 に ち の 違 い と 考 え ら
れ た .す な わ ち ,1-MCP+ ポ リ 包 装 区 は 1-MCP 処 理 に 24 時 間 を 要 す る た め ,ポ リ 包 装
区に比べて 1 日遅くポリ包装を行ったことがそのまま影響したと考えられた.
以 上 の 結 果 か ら , ポ リ エ チ レ ン 包 装 に よ る 水 分 蒸 散 抑 制 に よ っ て , 収 穫 後 約 11~ 15
日まで食感を保持できることが明らかになった.その後,袋内に蓄積したエチレンに
よ っ て 軟 化 が 生 じ る た め ,1-MCP 処 理 に よ り ,収 穫 後 約 25 日 ま で 食 感 が 保 持 で き る と
考 え ら れ た . し か し , エ チ レ ン 生 成 量 は 保 存 期 間 中 の 温 度 ( 李 ・ 前 澤 , 2004) や 果 実
品 質 ( 千 々 和 ら , 2002) に よ っ て 変 わ る た め , ポ リ エ チ レ ン 包 装 の み で は , 保 存 条 件
- 85 -
に よ っ て 収 穫 後 11~ 15 日 よ り も 早 く 軟 化 す る 可 能 性 が 危 惧 さ れ る .そ こ で ,1-MCP 処
理後にポリエチレン包装を行うと,そのようなリスクを軽減し,安定して食感を保持
することができると考えられた.
一般的な果実において,食味に直結する肉質を決定する要因は細胞壁構成成分であ
る ( 久 保 , 2002) . ま た , 石 丸 ら ( 2002) は , ‘ 富 有 ’ 果 実 と ‘ 平 核 無 ’ 果 実 の 肉 質
の 違 い は ペ ク チ ン 質 の ウ ロ ン 酸 量 の 違 い に よ る と 推 察 し て お り ,他 の カ キ に は な い‘ 太
秋’のサクサクとした食感もこれら細胞壁構成成分の違いによるものと考えられる.
ま た , 果 実 の 軟 化 は 細 胞 壁 構 成 成 分 の 変 化 に よ る も の で ( Tsuchida ら , 2003) , 食 感
の低下も同様に細胞壁構成成分の変化によるものと考えられる.軟化抑制効果のある
1-MCP 処 理 に よ っ て 食 感 も 保 持 さ れ た こ と か ら , 軟 化 の 進 行 と 食 感 の 低 下 は ほ ぼ 同 様
であるように見えるが,実際の細胞壁構成成分の変化は明らかではない.今後,食感
に関する細胞壁構成成分およびその変化について,軟化との違いを明らかにしていく
必要がある.
ま た ,本 研 究 で は ,室 温 下 に お い て ポ リ エ チ レ ン で 密 封 包 装 し た .実 験 1,2 と も に ,
官能評価時において異臭や異味は感じられなかったが,室温下での密封包装はガス障
害 の 危 険 性 が あ る ( 久 保 , 2002) . 今 後 , よ り 長 期 間 , 食 感 を 保 持 し よ う と す る と ,
ガス組成を測定するとともに,水分蒸散を抑制しながらガス交換性があり,エチレン
の蓄積も軽減できる有孔ポリエチレンの利用や低温条件下での保存などを検討してい
く必要がある.
1-MCP 処 理 後 に ポ リ エ チ レ ン 包 装 を 行 い ,収 穫 後 25 日 ま で 食 感 を 保 持 し て も ,果 皮
色 ( カ ラ ー チ ャ ー ト 値 ) は 4.2 前 後 で あ り ( 第 42 図 ) , 実 用 上 問 題 は な か っ た . 実 験
1, 2 を 通 じ て , 果 皮 色 の 変 化 は 食 感 の 変 化 と 異 な り , 両 者 が 別 々 の 生 理 学 的 要 因 で 進
行するプロセスであることが示唆された.
‘ 太 秋 ’ は 消 費 者 の 人 気 が 高 い 品 種 で あ る が ( 川 尾 , 2009) , 岐 阜 県 に お け る 出 荷
時 期 は 10 月 中 旬 ~ 11 月 上 旬 と 限 ら れ て い る .し か も ,成 熟 が 進 む と サ ク サ ク 感 は 弱 く
な る た め ( 川 尾 , 2009) , サ ク サ ク 感 の 強 い 収 穫 時 期 は 一 層 限 定 さ れ る . こ の 状 況 の
中,本法による食感保持技術は‘太秋’のサクサク感を長期間保持することができ,
商品的価値を高め有利販売に繋げることができると期待される.
- 86 -
a
a
a
a
2.0
サクサク感の評点
1.5
0.03 mm区
0.06 mm区
0.08 mm区
無処理区
a
a
a
a
a
a
a
a
1.0
a
a
a
a
a
a
0.5
b
a
a
a
a
b
0.0
-0.5
a
a
a
a
a
a
a
a
-1.0
-1.5
3
5
7
9
11
13
15
17
19
21
23
収穫後日数(日)
第35図 ポリエチレン包装が‘太秋’のサクサク感の評点に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=3~8)
同一収穫後日数における異符号間はTukey-Kramerの多重検定に
より,5%水準で有意差あり
- 87 -
- 88 -
エネルギー食感指標(mV2・Hz-2)
エネルギー食感指標(mV 2 ・Hz-2)
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
3
3
5
5
7
a
ab
ab
b
7
a
ab
ab
b
9
9
11
13
a
ab
ab
b
15
a
a
a
a
17
11
13
b
a
a
a
15
b
a
a
a
17
収穫後日数(日)
a
a
b
b
12,800-17,920 Hz
収穫後日数(日)
a
ab
ab
b
19
a
a
a
a
19
a
a
a
a
21
21
a
a
a
a
a
a
a
a
23
23
a
a
a
a
a
a
a
a
10
12
14
16
18
20
22
24
26
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
3
3
a
a
a
a
aa
a
a
5
5
7
a
ab
ab
b
7
a
ab
ab
b
9
9
11
13
b
a
a
a
15
b
a
a
a
17
11
13
b
a
a
a
15
b
a
a
a
17
収穫後日数(日)
a
ab
bc
c
17,920-25,600 Hz
収穫後日数(日)
a
a
ab
b
6,400-8,920 Hz
19
a
a
a
a
19
a
a
a
a
21
21
a
a
a
a
a
a
a
a
23
23
a
a
a
a
a
a
a
a
-4
-2
0
2
4
6
8
10
12
3
a
a
a
a
5
7
a
ab
ab
b
11
13
b
a
a
a
15
b
a
a
a
17
収穫後日数(日)
無処理区
0.08 mm区
0.06 mm区
0.03 mm区
9
b
b
a
a
8,920-12,800 Hz
19
a
a
a
a
第36図 ポリエチレン包装が‘太秋’の周波数帯域4,480-25,600 Hzにおけるエネルギー食感指標に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=15~40)
同一収穫後日数における異符号間はTukey-Kramerの多重検定により,5%水準で有意差あり
a
a
a
a
a
a
a
a
4,480-6,400 Hz
21
a
a
a
a
23
a
a
a
a
12
0.03 mm区
0.06 mm区
10
a
0.08 mm区
a
重量減少率(%)
無処理区
a
8
a
a
6
a
4
a
2
a
a
0 a
0 a
a
b
b
2 b
4
b
c
c
6
8
b
bc
c
10
b
c
c
12
14
b
c
c
16
b
c
c
18
20
b
bc
c
b
22
収穫後日数(日)
第37図 ポリエチレン包装が‘太秋’の重量減少率に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=3~8)
同一収穫後日数における異符号間は,アークサイン変換後,Tukey Kramerの多重検定により,5%水準で有意差あり
- 89 -
c
c
0.03 mm区
0.08 mm区
0.06 mm区
無処理区
果皮色(カラーチャート値)
5.0
a
4.5
ab
b
b
a
a
a
a
a
4.0
a
a
a
a
3.5
a
a
a
a
a
a
a
a
a
a
a
a
b
a
a
a
a
a
a
a
a
a
a
3.0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
収穫後日数(日)
第38図 ポリエチレン包装が‘太秋’の果皮色に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=3~8)
同一収穫後日数における異符号間はTukey-Kramerの多重検定により,
5%水準で有意差あり
- 90 -
ポリ包装区
1-MCP+ポリ包装区
無処理区
2.0
a
サクサク感の評点
a
a
1.0
a
a
b
b
b
a
b
b
b
0.0
b
b
a
a
b
a
a
-1.0
-2.0
11
13
15
17
19
21
23
25
27
29
31
収穫後日数(日)
第39図 ポリエチレン包装,1-MCP処理が‘太秋’のサクサク感の評点
に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=8,収穫後18日はn=5)
同一収穫後日数における異符号間はTukeyの多重検定により,
5%水準で有意差あり
- 91 -
b
b
- 92 -
エネルギー食感指標(mV2・Hz-2)
エネルギー食感指標(mV 2 ・Hz-2)
2
4
6
8
10
12
14
16
18
0
1
2
3
4
5
11
13
13
15
c
b
a
15
c
b
a
17
21
23
21
23
b
b
a
25
収穫後日数(日)
19
b
b
a
c
b
a
25
収穫後日数(日)
19
b
b
a
12,800-17,920 Hz
17
b
a
a
b
a
a
27
27
29
a
a
a
29
31
31
b
b
a
b
a
ab
b
a
a
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
0
1
2
3
4
5
6
a
a
b
11
11
b
ab
a
13
13
15
b
b
a
15
b
b
a
17
17
21
23
b
b
a
25
21
23
b
b
a
a
b
a
a
c
b
25
収穫後日数(日)
19
b
b
a
17,920-25,600 Hz
収穫後日数(日)
19
b
b
a
6,400-8,920 Hz
27
27
29
a
a
a
29
a
a
a
31
31
b
b
a
b
b
a
0
1
2
3
4
5
6
7
8
11
b
ab
a
13
15
b
b
a
19
21
23
b
b
a
25
収穫後日数(日)
無処理区
1-MCP+ポリ包装区
ポリ包装区
17
b
b
a
8,920-12,800 Hz
c
b
a
27
29
a
a
a
31
b
b
a
第40図 ポリエチレン包装,1-MCP処理が‘太秋’の周波数帯域4,480-25,600 Hzにおけるエネルギー食感指標に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=40,収穫後18日はn=25)
同一収穫後日数における異符号間はTukeyの多重検定により,5%水準で有意差あり
b
a
ab
11
b
ab
a
4,480-6,400 Hz
10
ポリ包装区
a
1-MCP+ポリ包装区
重量減少率(%)
a
無処理区
8
a
a
a
6
a
4
a
2
0
11
a
a
13
b
b
b
b
b
b
c
15
c
19
c
23
c
c
29
c
17
21
25
27
31
収穫後日数(日)
第41図 ポリエチレン包装,1-MCP処理が‘太秋’の重量損失率に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=8,収穫後18日はn=5)
同一収穫後日数における異符号間は,アークサイン変換後,Tukeyの
多重検定により,5%水準で有意差あり
- 93 -
果皮色(カラーチャート値)
5.5
ポリ包装区
1-MCP+ポリ包装区
無処理区
5.0
a
a
a
a
4.5
a
a
a
a
a
4.0
b
a
a
a
a
ab
ab
a
b
b
b
a
3.5
11
13
15
17
19
21
23
25
27
29
収穫後日数(日)
第42図 ポリエチレン包装,1-MCP処理が‘太秋’の果皮色に及ぼす影響
縦線は標準誤差を示す(n=8,収穫後18日はn=5)
同一収穫後日数における異符号間はTukeyの多重検定により,
5%水準で有意差あり
- 94 -
31
第5章
総合考察
カキ果実の肉質に関する研究は,軟化や貯蔵などを中心に行われてきた.板村ら
( 1991, 1994) は , 軟 化 と エ チ レ ン の 関 係 , Nakano ら ( 2001, 2003) は , エ チ レ ン 生
成 と ス ト レ ス の 関 係 , 石 丸 ら ( 1998) , 中 野 ら ( 2001) , 播 磨 ら ( 2002a, 2002b) は ,
軟 化 抑 制 技 術 に つ い て 報 告 し て い る . ま た , 樽 谷 ( 1965) , 板 村 ら ( 1993) , 文 室 ・
蒲 生 ( 2002) , 平 ・ 磯 部 ( 2005) は , 貯 蔵 に つ い て 報 告 し て い る . し か し , 食 味 の 観
点から肉質について研究した報告は少なく,本研究は,カキ果実の 果肉の物理的なお
いしさについて研究した.
カキは完全甘ガキ,完全渋ガキ,不完全甘ガキ,不完全渋ガキに分類される.完全
渋ガキ,不完全渋ガキ,一部の不完全甘ガキは,脱渋処理によってカキ果実内部で生
じ た ア セ ト ア ル デ ヒ ド に よ り 可 溶 性 タ ン ニ ン を 不 溶 化 さ せ て( 松 尾 ,1989;Taira,1996),
渋味を感じないようにしないと食べることができない.脱渋 処理の方法には炭酸ガス
脱 渋 法 や ア ル コ ー ル 脱 渋 法 な ど が あ り , 現 在 は 炭 酸 ガ ス 脱 渋 法 を 改 良 し た CTSD 脱 渋
法が多くの渋ガキ産地で行われている.いずれの脱渋方法においても,脱渋処理後果
肉硬度は低下するが,アルコール脱渋法が炭酸ガス脱渋法よりも低下が速い(平ら,
1987) . 一 方 , 完 全 甘 ガ キ は タ ン ニ ン 細 胞 の 肥 大 が 果 実 発 育 初 期 に 停 止 す る こ と に よ
っ て 自 然 脱 渋 が 起 こ る た め ( 米 森 ら , 1985) , 収 穫 後 , 脱 渋 処 理 を 行 わ ず に 食 べ る こ
とができる.このため,果肉硬度は収穫直後が最も硬く,その後少しずつ軟らかくな
り,食べ頃を迎え,やがて軟化に至る.このように,完全甘ガキの果肉硬度は収穫後
大きく変化する.本研究では,甘ガキ,特に岐阜県の主要品種である‘富有’,‘早
秋 ’ ,‘ 太 秋 ’ に つ い て , 音 響 振 動 法 に よ る 弾 性 指 標 , AMC 法 に よ る 食 感 指 標 を 測 定
し,肉質特性を評価するとともに品質保持技術を開発した.
音響振動法による食べ頃判定
収 穫 後 ,カ キ 果 実 の 全 糖 含 量 は ほ と ん ど 変 化 し な い( 小 宮 山 ら ,1985;平 ら ,1987).
また,カキ果実に含まれている有機酸含量は少なく,香りも弱いことから,収穫後の
カキ果実におけるおいしさの変化,すなわち食べ頃は主に果肉硬度によって決定する
と考えられる.
一 般 的 に 果 肉 硬 度 は 果 実 硬 度 計 で 測 定 す る が ,プ ラ ン ジ ャ で 対 象 物 を 貫 入 す る た め ,
同一果実を継時的に測定して評価することができない.そこで ,第 2 章第 1 節,第3
章第 1 節,第 4 章第 1 節において,非破壊法の音響振動法で弾性指標を測定し,果肉
硬 度 を 継 時 的 に 評 価 し た .室 温 お よ び 無 包 装 条 件 で は ,収 穫 後 の‘ 富 有 ’,‘ 早 秋 ’,
‘ 太 秋 ’ の 弾 性 指 標 は 指 数 関 数 的 に 低 下 し ( 第 1, 15, 25 図 ) , セ イ ヨ ウ ナ シ ( 知 野
ら , 2009; Murayama ら , 2006; Terasaki ら , 2006) , メ ロ ン ( Taniwaki ら , 2009c) ,
ア ボ カ ド ( 秋 元 ら , 2010, 2011a, 2011b) と 同 様 の 結 果 で あ っ た . こ の こ と か ら , 樹
種や軟化機構に関わらず収穫後の果実の弾性指標は指数関数的に低下する特徴がある
- 95 -
と考えられた.弾性指標の推移と官能評価によって,‘富有’および‘早秋’の食べ
頃の弾性指標を決定し,その弾性指標に相当する食べ頃日数を求めた.‘富有’では
弾 性 指 標 13.6~ 30.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 ,収 穫 後 約 4~ 15 日 ,‘ 早 秋 ’で は 弾 性 指 標 22.0×10 6
cm 2 ・Hz 2 以 上 ,収 穫 後 約 4 日 ま で で あ っ た .‘ 富 有 ’は ,収 穫 後 ,弾 性 指 標 の 低 下 に 伴
って食べ頃を迎えるが,‘早秋’は収穫直後から食べ頃であった.このように,食べ
頃の弾性指標および日数は品種によって異なることが明らかになった.この‘富有’
と‘早秋’の違いは果肉硬度に加えて肉質の粗密が影響していると考えられた.肉質
の粗密の基準は粗が‘西村早生’,中が‘富有’,密が‘平核無’であり(独立行政
法 人 農 業 ・ 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 果 樹 研 究 所 , 2007) , ‘ 早 秋 ’ の 肉 質 は 密 と 分
類 さ れ ‘ 富 有 ’ と は 異 な る ( 山 田 ら , 2004) .
収穫後の‘富有’における弾性指標は,収穫直後から食べ頃終期までは大きく低下
し ,そ の 後 は 緩 や か に 低 下 し た( 第 1 図 ).硬 さ の 評 点 と 弾 性 指 標 と の 関 係 か ら( 第 2
図 ) , 収 穫 直 後 の 弾 性 指 標 43.4×10 6 cm 2 ・Hz 2 か ら 食 べ 頃 終 期 の 弾 性 指 標 13.6×10 6
cm 2 ・Hz 2 ま で は ,硬 さ の 評 点 の 変 化 に 比 べ て 弾 性 指 標 の 変 化 が 大 き い こ と ,食 べ 頃 終 期
の 弾 性 指 標 13.6×10 6 cm 2 ・Hz 2 以 下 で は , 弾 性 指 標 の 変 化 が 小 さ い に も 関 わ ら ず , 硬
さの評点の変化が大きいことが明らかになった.このことから,弾性指標は収穫直後
から食べ頃終期まで,すなわち果肉が硬い状態から食べ頃の状態までは詳細に評価す
ることができるが,食べ頃を過ぎて軟らかくなった果肉の変化は捉え 難いと考えられ
た.このことは‘早秋’および‘太秋’においても同様の傾向が認められた.弾性指
標の算出に用いた第 2 共鳴周波数は果実の中心部の物性を評価していることから
( Akimoto ら ,2012),カ キ は 果 実 の 中 心 部 か ら 果 皮 方 向 に 軟 化 し て い く と 考 え ら れ た .
すなわち,果実内部の軟化が終了すると第 2 共鳴周波数の低下は止まるが,表皮に近
い 果 肉 の 軟 化 は 続 行 し て い る と 考 え ら れ る た め ,第 3,第 4 共 鳴 周 波 数 に よ る 評 価 を 今
後行う必要があると考えられた.
音響振動法による食べ頃予測
果実の収穫後の成熟現象を追熟という.クライマクテリック型果実は,一定の発育
段階に達していれば未熟段階で収穫しても,その後,追熟して適熟状態に至る.キウ
イフルーツやセイヨウナシは成熟エチレンの生成が始まる前,メロンは樹上でのエチ
レ ン 生 成 開 始 直 後 に 収 穫 さ れ る ( 久 保 , 2008) . キ ウ イ フ ル ー ツ の 追 熟 に は エ チ レ ン
処 理 が 必 要 で あ り ( 矢 野 ・ 長 谷 川 , 1993) , セ イ ヨ ウ ナ シ は 低 温 処 理 に よ っ て 追 熟 が
促 進 さ れ る ( 村 山 ら , 1993; 古 田 ・ 浅 野 , 1991) . メ ロ ン は 収 穫 後 数 日 間 常 温 で 追 熟
す る 必 要 が あ る ( 平 井 , 2008) . こ の よ う に , キ ウ イ フ ル ー ツ , セ イ ヨ ウ ナ シ , メ ロ
ンなどは追熟して適熟,すなわち食べ頃まで待たないと,消費者はおいしく食べるこ
と が で き な い .し か し ,追 熟 す る 果 実 の 食 べ 頃 判 定 は 難 し い .早 過 ぎ る と 果 肉 が 硬 く ,
香りも弱く,果実本来のおいしさに欠ける.一方,食べ頃を過ぎると過熟になり,果
- 96 -
肉が軟化し,こちらも果実本来のおいしさを損ねてしまう.このため ,流通販売関係
者や消費者から,簡易な食べ頃判定方法や予測方法が求められており,セイヨウナシ
‘ ラ・フ ラ ン ス ’で は 食 べ 頃 判 定 装 置 お よ び 食 べ 頃 判 定 ラ ベ ル( 大 森 ら ,2004a,2004b),
メ ロ ン で は 打 音 伝 搬 速 度 や 弾 性 指 標 に よ る メ ロ ン の 食 べ 頃 予 測 式 ( 佐 野 ら , 2010) が
作成された.
一般的にカキはキウイフルーツ,セイヨウナシ,メロンなどのように追熟して食べ
る果実ではない.‘早秋’は果肉硬度の低下が早く,また肉質が緻密であること(山
田 ら , 2004) , ‘ 太 秋 ’ は 果 肉 硬 度 そ の も の が 低 い こ と ( 山 田 ら , 1998) , ‘ 刀 根 早
生 ’お よ び‘ 平 核 無 ’は 脱 渋 処 理 に よ っ て 果 肉 硬 度 が 低 下 す る こ と か ら( 平 ら ,1987;
山 田 ら , 1998) , 出 荷 時 に お い て こ れ ら の 品 種 は 既 に 食 べ 頃 に な っ て い る . し か し ,
‘富有’は出荷時においてまだ果肉が硬すぎて,食べ頃になっていない.実際,産地
直送の贈答品として‘富有’を出荷市場以外の地域に発送した時,届け先から『この
カキは硬すぎる』と苦情を受けたこともある.‘富有’が食べ頃に至るためには,メ
ロンのように数日追熟しなければならない.このことから,‘富有’には食べ頃の判
定および予測が必要であり,第 2 章第 1 節において,収穫後の弾性指標の推移から逆
数 式 へ の フ ィ ッ テ ィ ン グ を 行 い ,‘ 富 有 ’の 食 べ 頃 予 測 式 を 作 成 し た .神 田 ら( 2010)
は,‘西条’において,収穫前(樹上)の果実の弾性指標測定により収穫期の予測が
可能であることを示唆している.そこで,甘ガキである‘富有’は脱渋処理を行う必
要がないため,収穫前(樹上)の果実における弾性指標の測定によって,食べ頃の予
測が可能であると推察された.このことから,収穫後ではなく,収穫前から食べ頃の
予測が可能になると,早い時期に販売促進および売り場確保を図り,有利販売に繋ぐ
ことができると考えられる.また,現在‘富有’の収穫適期は果皮色の変化で判断し
ているが,温暖化によってカキでは着色遅延や樹上早期果肉軟化の発生が指摘されて
お り ( 杉 浦 ら , 2007) , 今 後 , 着 色 と 肉 質 の 変 化 に ず れ が 生 じ る こ と も 考 え ら れ る .
このことから,肉質(弾性指標)の変化による収穫適期の判別および予測が重要にな
ると考えられる.
カキ果実の果肉は収穫直後の硬い状態から熟柿のような非常に軟らか い状態まで大
きく変化し,各人各様の好みがある.また,果物の嗜好には地域差も存在する(飯島
ら , 2004) . こ の よ う に 果 肉 硬 度 に お い て 幅 広 く , 多 様 な 好 み の あ る 果 物 は 希 少 で あ
り,食べ頃を明らかにすることによって,消費者が好みに応じて食べることができる
とともに,消費者や地域の好みに合わせた販売戦略を講じることができる.
AMC法による‘太秋’の食感評価
1995 年 に ‘ 太 秋 ’ が 品 種 登 録 さ れ る ま で , カ キ に は 特 徴 的 な 食 感 や テ ク ス チ ャ ー 表
現がなかった.‘太秋’の有するサクサク感は今までのカキにはない新たな食感であ
り,そのサクサク感はカキの新しいおいしさを表現している.そこで,このサクサク
- 97 -
感の有無や強弱などを評価するためには,定量的な測定方法が必要である.しかし,
サ ク サ ク 感 は 果 肉 硬 度 と は 異 な る 尺 度 で あ り ,貫 入 式 の 果 実 硬 度 計 で は 評 価 が 難 し い .
また,第 2 章第 1 節,第 3 章第 1 節,第 4 章第 1 節において,音響振動法における弾
性指標により‘富有’および‘早秋’の食べ頃を判定することはできたが,‘太秋’
の サ ク サ ク 感 を 評 価 す る こ と は 難 し か っ た .そ こ で ,第 4 章 第 2 節 ,第 3 節 に お い て ,
AMC 法 の 食 感 指 標 に よ っ て ,サ ク サ ク 感 を 評 価 す る こ と が で き な い か 検 討 し た .そ の
結 果 , ‘ 太 秋 ’ の サ ク サ ク 感 は 6,400~ 25,600 Hz の 高 周 波 数 帯 域 に お け る エ ネ ル ギ ー
食 感 指 標 で 評 価 の で き る こ と が 明 ら か に な っ た . 櫻 井 ( 2010, 2013) は , 周 波 数 帯 域
10~ 280 Hz に お い て ブ ド ウ の 食 感 ,100~ 140 Hz に お い て ハ ク サ イ の ザ ク ザ ク 感 ,2,240
~ 6,400 Hz に お い て レ タ ス の シ ャ キ シ ャ キ 感 , 4,480~ 6,400 Hz に お い て キ ャ ベ ツ の シ
ャ キ シ ャ キ 感 ,8,920~ 12,800 Hz に お い て ス イ カ の シ ャ リ 感 を 評 価 し て い る と 報 告 し て
おり,‘太秋’のサクサク感はスイカのシャリ感と近い食感であると推察された .
サクサク感を定量評価することによって,従来,経験的に判断されていたことが数値
と し て 判 断 で き る よ う に な っ た . 果 頂 部 の 果 皮 色 を カ ラ ー チ ャ ー ト 値 4.5 で 収 穫 し た 果
実 の 食 感 は 3.5 で 収 穫 し た 果 実 の 収 穫 後 7~ 9 日 に 相 当 す る こ と が 明 ら か に な っ た .ま た ,
果 頂 部 の 果 皮 色 を カ ラ ー チ ャ ー ト 値 3.5 で 収 穫 し た 果 実 の 食 感 保 持 期 間 は 収 穫 後 約 9 日
ま で , 4.0 で 収 穫 し た 果 実 は 約 7 日 ま で , 4.5 で 収 穫 し た 果 実 は 約 4~ 5 日 ま で で あ っ た
ことから,食感を重視した販売戦略の場合,収穫に適した果皮色はカラーチャート値
3.5~ 4.0 で あ る と 考 え ら れ た ( 鈴 木 , 2014) .
カキ果実の品質保持技術の開発
第 3 章 第 1 節 ,第 4 章 第 2,3 節 に お い て ,‘ 早 秋 ’は 弾 性 指 標 に よ る 果 肉 硬 度 の 評
価,‘太秋’は食感指標によるサクサク感の評価から,食べ頃期間を明らかにした.
室温および無包装条件における食べ頃期間は‘早秋’で収穫後約 4 日まで,‘太秋’
で約 9 日までであった.果肉硬度を保持することによって,‘早秋’は流通段階にお
けるロスの削減に加えて,おいしい果実を長期間提供することができる.サクサク感
を保持することによって,‘太秋’は新たな需要を掘り起こし,カキ全体の消費拡大
に繋げることができる.そこで,岐阜県におけるカキの販売戦略上,重要なポジショ
ンを占める‘早秋’および‘太秋’の品質保持技術を検討した.
果実の品質保持を図る上でまず水分蒸散抑制が重要である.カキ果実に含まれてい
る 水 分 は 可 食 部 100 g 当 た り 83.1 g で あ り ( 文 部 科 学 省 , 2015) , 約 5%の 水 分 が 損 失
す る と 果 実 品 質 は 著 し く 劣 化 す る ( 樽 谷 , 1960) . 樽 谷 ( 1960) は , ‘ 富 有 ’ を ポ リ
エ チ レ ン 袋 に 密 封 す る と 果 実 か ら の 蒸 散 が 抑 制 さ れ 貯 蔵 性 が 優 れ る こ と , Tsuchida ら
( 2003)は ,‘ 富 有 ’を 貯 蔵 す る に あ た り ,低 湿 条 件 よ り 高 湿 条 件 の 方 が 水 分 損 失 量 ,
エチレン生成量が少ないことを報告している.本研究における水分蒸散抑制の方法と
して,‘早秋’は防湿段ボール箱,‘太秋’はポリエチレン袋の個包装とした.これ
- 98 -
は,‘早秋’はレギュラー品として,‘太秋’はブランド品として商品化することを
想 定 し た も の で あ る .第 3 章 第 1 節 ,第 4 章 第 3 節 に お い て ,‘ 早 秋 ’の 果 肉 硬 度 は ,
防 湿 段 ボ ー ル 箱 に よ っ て 慣 行 段 ボ ー ル 箱 よ り も 約 4 日 長 い 収 穫 後 約 10 日 ま で ,
‘太秋’
の サ ク サ ク 感 は ,ポ リ エ チ レ ン 袋 の 個 包 装 に よ っ て 無 包 装 よ り も 約 2~ 6 日 長 い 収 穫 後
約 11~ 15 日 ま で 保 持 で き る こ と が 明 ら か に な っ た .こ の こ と か ら ,水 分 蒸 散 抑 制 に よ
って食べ頃期間の長期化が可能であると考えられた.
しかし,‘早秋’において,防湿段ボール箱の軟化率が慣行段ボール箱 の軟化率よ
り も 高 い 傾 向 で あ っ た こ と ,‘ 太 秋 ’の ポ リ エ チ レ ン 個 包 装 に お い て ,収 穫 後 18 日 以
降,果皮は硬いが果肉の軟らかい果実が発生し始めたことから,水分蒸散抑制のみで
は次第に成熟エチレンの発生による影響が生じると考えられた.そこで,第 3 章第 2
節,第 4 章第 3 節において,防湿段ボール箱に入れる前,ポリエチレン袋に個包装す
る 前 に エ チ レ ン 作 用 阻 害 効 果 の あ る 1-MCP の 処 理 を 行 っ た .1-MCP に よ る カ キ の 日 持
ち 性 向 上( Harima ら ,2003; 倉 橋 ら ,2005; Oriz ら ,2005;Salvador ら ,2004b)や 低
温 障 害 軽 減( Pérez-Munuera ら ,2009;Salvador ら ,2004a)に つ い て の 報 告 は 多 く あ る
が , 1-MCP 処 理 と 水 分 蒸 散 抑 制 な ど 他 の 品 質 保 持 技 術 を 組 み 合 わ せ た 報 告 は 少 な い .
‘ 早 秋 ’を 1-MCP 処 理 後 防 湿 段 ボ ー ル 箱 に 入 れ る と ,果 肉 硬 度 は 1-MCP 処 理 単 独 よ り
も 約 6~ 10 日 ,防 湿 段 ボ ー ル 箱 単 独 よ り も 約 4 日 長 い 処 理 後 12 日 ま で ,
‘ 太 秋 ’を 1-MCP
処 理 後 ポ リ エ チ レ ン 個 包 装 す る と , サ ク サ ク 感 は ポ リ エ チ レ ン 個 包 装 単 独 よ り も 約 10
~ 14 日 長 い 収 穫 後 約 25 日 ま で 保 持 で き る こ と が 明 ら か に な っ た .こ の こ と は ,1-MCP
処理によるエチレン作用阻害と水分蒸散抑制の組み合わせによる相乗効果と考えられ
た .‘ 早 秋 ’に お い て ,処 理 後 12 日 ま で 品 質 が 保 持 さ れ る こ と は 販 売 上 大 き な メ リ ッ
ト で あ る . し か し , 1-MCP 処 理 お よ び 防 湿 段 ボ ー ル 箱 の 費 用 が か か る た め , コ ス ト 分
を 見 据 え た 販 売 戦 略 が 必 要 で あ る .ま た ,‘ 太 秋 ’に お い て ,収 穫 後 25 日( 11 月 中 下
旬)まで品質が保持されることは,サクサク感のあるカキを長期間供給するという面
か ら は メ リ ッ ト が あ る .し か し ,岐 阜 県 に お け る 11 月 中 下 旬 は‘ 富 有 ’の 出 荷 最 盛 期
であり,その時期に‘太秋’の売り場を確保するのは難しい.販売上大きなメリット
を 出 す た め に は , 12 月 中 旬 の 年 末 贈 答 需 要 に 向 け た よ り 長 期 的 な 品 質 保 持 が 必 要 で あ
る .そ の た め に は ,低 温 貯 蔵 や MA 包 装 な ど の 組 み 合 わ せ や 併 用 が 必 要 と 考 え ら れ る .
第 2 章第 1 節の弾性指標による果肉硬度の評価から,‘富有’ における食べ頃の弾
性 指 標 は 13.6~ 30.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 ,食 べ 頃 期 間 は 収 穫 後 約 4~ 15 日 で あ っ た .そ こ で ,
‘ 富 有 ’ を 1-MCP 処 理 後 , 厚 さ 0.03mm の ポ リ エ チ レ ン 大 袋 を 内 装 し た 慣 行 段 ボ ー ル
箱 に 入 れ る と , 1-MCP を 処 理 せ ず , そ の ま ま 慣 行 段 ボ ー ル 箱 に 入 れ る 慣 行 方 法 よ り も
果肉硬度を長く保持できることが明らかになった.しかし,食べ頃の果肉硬度よりも
硬い状態を保持し,結果として,慣行方法よりも食べ頃期間は短くなった(鈴木ら,
2012) . こ の よ う に 食 べ 頃 の 果 肉 硬 度 に 上 限 と 下 限 が あ る 場 合 , そ の 間 で 果 肉 硬 度 を
保持することは難しいと考えられた.‘富有’は果肉硬度および日持ち保持日数その
- 99 -
ものが長いことから,販売戦略的には品質保持を図るよりも,通常栽培の出荷が終了
してから出荷する袋かけ栽培の方が販路拡大や有利販売には実用的であると考えられ
た.
まとめ
カキ果実の消費が低迷しており,特に若い世代の消費が著しく低下している(総務
省 統 計 局 , 2011) . 将 来 の 需 要 低 下 が 危 惧 さ れ る 中 , 需 要 拡 大 を 図 る た め に は , お い
しいカキを供給することが重要である.そのためには,糖度が高いことは もちろんで
あるが,食べ頃の硬さのカキを食べていただくことも重要である.高度な栽培技術に
よって高品質果実を生産しても,収穫後の品質管理が悪いと 折角のブランドイメージ
を損ねてしまう.消費者は食べた時の食味で判断するため,食べ頃を判定して 伝える
こ と ,食 べ 頃 期 間 を 伸 ば し て お い し さ を 長 く 保 つ こ と が 重 要 で あ る .本 研 究 に よ っ て ,
カ キ‘ 富 有 ’,‘ 早 秋 ’,‘ 太 秋 ’の 食 べ 頃 を 明 ら か に し ,品 質 保 持 技 術 を 開 発 し た .
そ の 結 果 , 消 費 者 に お い し い カ キ を 長 期 間 提 供 す る こ と が 可 能 に な っ た . ま た , AMC
法によるサクサク感の定量評価方法を開発した.現在,‘太秋’以外にサクサク感を
有 す る 品 種 は ‘ 太 天 ’ ( 2009 年 品 種 登 録 ) , ‘ 福 岡 K1 号 ’ ( 2012 年 品 種 登 録 , 商 標
名 ‘ 秋 王 ’ ) , ‘ 太 豊 ’ ( 2014 年 品 種 登 録 出 願 公 表 ) な ど が あ る . 今 後 , こ の 傾 向 は
益々増えていくことが予想されるため,カキ品質の一要素としてサクサク感を評価す
る こ と が 重 要 で あ る .サ ク サ ク 感 の 定 量 評 価 に よ っ て ,サ ク サ ク 感 を 有 す る 品 種 育 成 ,
品質保持技術の開発などの推進に繋がると考えられる.‘太秋’は若い世代に好評で
あり,今後,サクサク感を有する品種が増えることにより,カキ全体の消費拡大に 繋
がることが期待される.
近年,音響振動法による振動特性によって,果実の内部障 害の判別が可能になって
き た .ニ ホ ン ナ シ‘ 幸 水 ’の 芯 腐 れ 症 果 実 の 判 別( Kadowaki ら ,2012),カ キ‘ 早 秋 ’
の 早 期 軟 化 果 実 の 判 別 ( 鈴 木 ら , 2013) , ブ ラ ッ ド オ レ ン ジ と ハ ッ サ ク の す 上 が り 果
の 判 別( 文 室 ら ,2014),モ モ‘ お か や ま 夢 白 桃 ’の 核 割 れ 果 実 の 判 別( 中 野 ら ,2015)
の 報 告 が あ る .音 響 振 動 法 が ,今 後 ,今 ま で 検 出 で き な か っ た 様 々 な カ キ の 内 部 障 害 ,
例えば果実中心部から始まる早期軟化などの判別に適用でき るようになることが期待
される.
- 100 -
Synopsis
Chapter 1( General Introduction)
Persimmon growing area of Gifu prefecture is 1,340 ha. It is the fourth in the country. Gifu
prefecture is a main region to grow non-astringent persimmon. ‘Fuyu’ persimmon that is
non-astringent, and grown in the Gifu prefecture occupies about 92% of ‘Fuyu’ handling
volume of Nagoya City Central Wholesale Market, but the sales price is sluggish. Expansion
of demand and improvement of the eating quality would be a key to keep the sale price at the
higher level. Therefore, the flesh texture in non-astringent persimmon, particularly ‘Fuyu’,
‘Soshu’, and ‘Taishuu’ has been studied as leading cultivars of Gifu prefecture.
In chapter 2, the flesh texture of ‘Fuyu’ persimmon after the harvest was evaluated with an
acoustic resonance measurement and an acoustic measurement of crispness (AMC). The flesh
texture and the factors required for the palatability of bagging ‘Fuyu’ persimmon after the
harvest were evaluated with an acoustic resonance measurement and AMC. In chapter 3, the
flesh texture and improvement of the storability of ‘Soshu’ persimmon were evaluated with
acoustic resonance measurement. In chapter 4, the flesh texture and the factors required for
the physical palatability of ‘Taishuu’ persimmon after the harvest were evaluated with AMC.
Quantitative evaluation of the crisp texture of ‘Taishuu’ persimmon was studied based on
AMC. The crisp texture and improvement of the storability of ‘Taishuu’ persimmon were
evaluated with AMC.
Chapter 2
Section 1
The flesh texture of ‘Fuyu’ persimmon after the harvest was evaluated with an acoustic
resonance measurement and an acoustic measurement of crispness (AMC). Moreover, a
prediction for optimum ripeness was studied with the elasticity index (EI) determined by an
acoustic resonance measurement and the score by a sensory test. EI determined by a resonant
frequency method for ‘Fuyu’ after the harvest decreased in a consistent manner despite the
harvest time. By a sensory test, the optimum ripeness by EI was determined to range from
30.202 to 13.563×10 6 cm 2 ・Hz 2 . A predictive formula for optimum ripeness was constructed
using a reciprocal equation. The beginning of the optimal ripeness period ( t 1 )={9.386(30.202
- Y 0 )} / {0.830(Y 0 - 30.202) - Y 0 }
,
the
end
of
the
optimal
ripeness
period
(t 2 )={9.386(13.563- Y 0 )}/ {0.830(Y 0 –13.563)- Y 0 }, where Y 0 is EI at 0 after harvest and
substitutes mantissa of the scientific notation . The error between this predicted value and the
observed one ranged from 0.5 to 1.3 days for the beginning of optimal ripeness period and
from 0.7 to 3.5 days for the end of the optimal ripeness period, suggesting that the formula is
- 101 -
practical to predict the range of optimal ripeness of ‘Fuyu’. However, further examination is
necessary to construct a predictive formula with high precision. Texture index (TI) measured
by AMC decreased little before the optimum ripeness and decreased greatly after the optimum
ripeness. For the flesh texture of ‘Fuyu’ persimmon, EI drastically decreased before the
optimal ripeness time and TI decreased thereafter, suggesting that both parameters reflect
different inner qualities of persimmon fruit.
Section 2
Bagging of ‘Fuyu’ fruit on the tree prolongs the harvest time by t hree to four weeks from
November 20 th to December 15 t h , partly because the bagging reduces low temperat ure injury.
Effects of bagging of ‘Fuyu’ persimmon on the desirable flesh texture and softeness were
evaluated after the harvest with an acoustic resonance measurement and an acoustic
measurement of crispness (AMC). The elasticity index (EI) of bagg ed ‘Fuyu’ immediately
after the harvest was in the range of optimum ripeness of non-bagged ‘Fuyu’. Bagged ‘Fuyu’
was harvested three to four weeks later than non-bagged fruit. EI of the harvest day 0 of
bagged ‘Fuyu’ corresponded to EI of about 7 days after harvest of non-bagged ‘Fuyu’.
Changing pattern of EI of bagged ‘Fuyu’ was similar to that of non-bagged ‘Fuyu’ 7 days
after harvest. Measurement of the texture index (TI) by AMC revealed no difference between
bagged ‘Fuyu’ and non-bagged ‘Fuyu’. These results suggested that bagging of ‘Fuyu’ fruit
was the way to achieve the optimum ripeness after the harvest.
Chapter 3
Section 1
The flesh texture and improvement of the storability of ‘Soshu’ persimmon were evaluated
with acoustic resonance measurement. The elasticity index (EI) determined by a resonant
frequency method for ‘Soshu’ after the harvest decreased in a consistent manner like ‘Fuyu’.
A significant positive correlation (r=0.924) was found between the sensory score on desirable
texture and EI measured by the resonant frequency. The sensory score (ranging from -2: very
poor to +2: very good) on desirable texture (0 or higher) corresponded to EI of about 22×10 6
cm 2 ・Hz 2 or higher. The flesh firmness immediately after the normal harvest time of ‘Fuyu’
was too hard, and the sensory score on desirable texture was 0 or less. ‘Soshu’ that was
received the highest sensory score on desirable texture exhibited the higher EI than ‘Fuyu’
with the highest score. The highest sensory score on the desirable quality was found
immediately after harvest. Resonant method revealed that 1-methylecyclopropene (1-MCP)
treatment did not affect the maintenance of flesh firmness of ‘Soshu’ . 1-MCP had no effect on
the weight loss caused by water evaporation. It reduced the rate of over ripe fluit or fluit with
- 102 -
water-soaked lesion, improving the shelf-life. Moisture-proof corrugated fiberboard box
retained flesh firmness. The moisture-proof corrugated fiberboard box prolonged the
shelf-life period about 4 days longer than the conventiona l corrugated fiberboard box. The
weight loss of moisture-proof corrugated fiberboard box fruit was lower than that in the
conventional corrugated fiberboard box. No clear difference was observed between a
imcomplete and complete closure by adhesive tapes during changes in flesh firmness.
Moisture-proof corrugated fiberboard box had no effect on softening rate of flesh. These
results suggested that the imcomplete closure of the moisture-proof corrugated fiberboard
box has an advantage in shipping method in t erms of retaining flesh firmness, operation cost,
and labor cost.
Section 2
In the previous section, it was found the effect of the moisture-proof corrugated fiberboard
box on retaining flesh firmness and the effect of 1-methylecyclopropene (1-MCP) treatment
on improving shelf-life. Method of keeping fruit quality in ‘Soshu’ persimmon was studied on
the combination of 1-MCP treatment and the moisture-proof corrugated fiberboard box. When
22×10 6 cm 2 ・Hz 2 or higher of EI was used for evaluation of the desirable flesh firmness,
number of days of retaining flesh firmness under the condition of combination of 1-MCP
treatment and the moisture-proof corrugated fiberboard box was about 12 days, which was
about 4 days longer than the moisture-proof corrugated fiberboard box alone. The number of
days for retaining flesh firmness by conventional corrugated fiberboard box was about 6 days
with or without 1-MCP. Those by conventional corrugated fiberboard box without top was
about 2 days with or without 1-MCP. When the retaining shelf-life was defined accumulation
of deteriorate fruits at 10%, number of days of retaining shelf-life was about 14 days for the
combination of 1-MCP and any type of corrugated fiberboard box, which was about 6 days
longer than the moisture-proof or conventional corrugated fiberboard box without 1-MCP.
Conventional corrugated fiberboard box without top retained flesh firmness 10 to 12 days
after 1-MCP treatment. These results suggested the synergistic effect of suppression of water
loss from the fruit and inhibition of ethylene action contributed to retaining flesh firmness.
Including the results of previous section, the softening rat io of accumulation of deteriorate
fruit in the moisture-proof corrugated fiberboard box tended to be higher than that of the
conventional corrugated fiberboard box and the corrugated fiberboard box without top.
Chapter 4
Section 1
The desirable flesh texture and softeness of ‘Taishuu’ persimmon after the harvest were
- 103 -
evaluated with an acoustic resonance measurement and a sensory test. When ‘Taishuu’
persimmon was harvested according to the same color score, the elasticity index (EI)
determined by a resonant frequency method decreased in a similar manner after the harvest
time. While EI of ‘Taishuu’ after the harvest exponentially decreased similar to that of ‘Fuyu’,
the rate of decrease in EI of ‘Taishuu’ was higher than that of ‘Fuyu’. When the sensory score
(ranging from -2: very poor to +2: very good) on desirable texture of ‘Taishuu’ was 0 or
higher, EI was about 4.0×10 6 cm 2 ・Hz 2 or higher, that is lower than those for ‘Fuyu’.
‘Taishuu’ had the crisp texture that was different from other cultivars of persimmon and this
crisp texture maintained even when EI was decreased. These results suggest that the crisp
texture of ‘Taishuu’ plays an important role in determination of the desirable texture of
‘Taishuu’. The results of the sensory test revealed that the crisp texture rather than the flesh
firmness is more important to determine the desirable texture of ‘Taishuu’. Since the
correlation between the sensory score on desirable texture and EI was non-linear, evaluation
of the crisp texture by EI is difficult.
Section 2
Evaluation of the crisp texture of ‘Taishuu’ persimmon was studied by an acoustic
measurement of crispness (AMC). The crispness of flesh texture and a sensory test of
‘Taishuu’ stored for varying days were studied. The e nergy texture index (ETI) calculated
from frequency bands from 0 to 50 Hz , from 100 to 140 Hz and from 3,200 to 25,600 Hz
decreased after harvest. A significant positive correlation (r=0.705 ~ 0.928) was found
between ETIs and the sensory score on crispness. Declining pattern of ETI calculated from
frequency band from 0 to 50 Hz was different from that of the sensory score. The results
suggested that ETIs calculated from frequency bands from 100 to 140 Hz and above 3,200 Hz
could be used to evaluate quantitatively the crisp texture. Next, measurements of the texture
of ‘Kanshu’ persimmon with a different texture from that of ‘Taishuu’ revealed th at there was
a significant difference between ETIs above 4,480 Hz. These results suggest that ETIs with a
frequency above 4,480 Hz can be used to segregate quantitatively the crisp textures of
‘Taishuu’ and ‘Kanshu’. Furthermore, the relation between skin color score and flesh texture
were studied using ‘Taishuu’. The ETIs of ‘Taishuu’ harvested with a color score of 4.5
(orange) were lower than those harvested with a color score of 3.5 (yellow’sh orange), and
corresponded to those of fruit harvested with a score of 3.5 and stored for 7 to 9 days.
Therefore shipment of the fruit with a color score above 4.5 may decline the market rating of
‘Taishuu’.
Section 3
- 104 -
Evaluation of the crisp texture of ‘Taishuu’ persimmon stored under different condition
was more precisely studied with an acoustic measurement of crispness (AMC). Changing
pattern of the energy texture index (ETI) calculated from frequency band from 4,480 to 6,400
Hz and the sensory score on crispness were different. Changing pattern of ETI calculated
from four frequency bands from 6,400 to 25,600 Hz fit more to those of the sensory score on
crispness than ETI from the lower frequency bands. Polyethylene packaging maintained the
crisp texture for about 11 to 15 days after harvest , which was longer for about 2 to 6 days
than fruit without the packaging. The weight loss rate of the fruit with polyethylene
packaging was significantly smaller than that without polyethylene packaging. These results
suggested that suppression of water loss from the fruit by polyethylene packaging maintains
the crisp texture. Thickness of polyethylene packaging did not affect the maintenance of the
crisp texture. Difference in thickness of polyethylene film have essentially no effect on the
texture. Polyethylene packaging following 1-MCP treatment for 24 h maintained the crisp
texture for about 25 days after harvest, which was about 10 to 14 days longer than fruit with
polyethylene packaging alone. These results suggested that the crisp texture can be
maintained longer because of the inhibition of ethylene action by 1-MCP treatment. Since
polyethylene packaging only induces the softening of fruit probably due to accumulation of
ethylene within polyethylene bag, 1-MCP treatment was thought to be necessary for
maintenance of the crisp texture stored in a polyethylene of the fruit bag.
Chapter 5( General Discussion)
Determination of optimum ripeness by an acoustic resonance measurement
The optimum ripeness of persimmon was determined by the change of the elasticity index
(EI) measured by an acoustic resonance measurement. EI of the optimum ripeness of ‘Fuyu’
persimmon was 13.6 to 30.2×10 6 cm 2 ・Hz 2 , and EI of the optimum ripeness of ‘Soshu’
persimmon was 22.0×10 6 cm 2 ・Hz 2 or higher. It was revealed that EI of the optimum ripeness
is different in cultivars. It was also suggested that the difference of EIs between ‘Fuyu’ and
‘Soshu’ could be influenced by the flesh texture as well as the flesh firmness .
Prediction of optimum ripeness by an acoustic resonance measurement
‘Fuyu’ persimmon after the harvest reached the optimal ripeness with decreasing in EI. It is
necessary to predict the range of the optimal ripeness. A predicted range for the optimum
ripeness was calculated using a reciprocal equation. This equation makes it possible to build a
strategy for consumer is acceptance. Thus, consumers could eat persimmons according to
predicted quality by the formula for the optimum ripeness.
Texture evaluation of ‘Taishuu’ persimmon using an acoustic vibration method( AMC)
Quantitative evaluation of the crisp texture of ‘Taishuu’ persimmon was difficult only by a
- 105 -
fruit hardness tester and an acoustic resonance measurement. Therefore, quantitative
evaluation of the crisp texture of ‘Taishuu’ persimmon was studied based on an acoustic
measurement of crispness (AMC). The results suggested that the energy texture index (ETI)
calculated from frequency bands from 6,400 to 25,600 Hz could be used to evaluate
quantitatively the crisp texture.
Development of keeping fruit quality of persimmon
It was found that the optimal ripeness period could be evaluated either by the flesh
firmness by EI in ‘Soshu’ persimmon or the crisp texture by ETI in ‘Taishuu’ persimmon. The
optimal ripeness period without the packaging lasted about 4 days after the harvest in ‘Soshu’
and about 9 days after the harvest in ‘Taishuu’, suggesting that the packaging is necessary to
prolong the period of optimal ripeness of persimmon by the following mechanisms.
1) Suppression of water loss
The moisture-proof corrugated fiberboard box extended the period of appropriate flesh
firmness of ‘Soshu’ persimmon to about 10 days after the harvest, or about 4 days longer than
the conventional corrugated fiberboard box. Polyethylene packaging maintained the crisp
texture of ‘Taishuu’ persimmon for about 11 to 15 days after the harvest. It is about 2 to 6
days longer than without the packaging. These results suggested that suppression of water
loss from the fruit maintains the flesh firmness and the crisp texture.
The
moisture-proof
corrugated
fiberboard
box
and
polyethylene
packaging
have
disadvantages to induce the softening of fruit due to accumulation of ethylene within the
fiberboard box or polyethelene packaging.
2) 1-methylecyclopropene and suppression of water loss
The moisture-proof corrugated fiberboard box packaging following 1-methylecyclopropene
(1-MCP) treatment maintained the flesh firmness of ‘Soshu’ persimmon for about 12 days
after 1-MCP treatment, or about 6 to 10 days longer than with 1-MCP treatment only and
about 4 days longer than with only the moisture-proof corrugated fiberboard box packaging.
Polyethylene packaging following 1-MCP treatment maintained the crisp texture of ‘Taishuu’
persimmon for about 25 days after the harvest, or about 10 to 14 days longer than with
polyethylene packaging alone. These results suggested the synergistic effect of suppression
of water loss from the fruit by packaging and inhibition of ethylene action by 1-MCP.
- 106 -
謝辞
本研究の遂行および本論文の作成にあたり,終始ご懇切なご指導とご校閲を賜った
広島大学大学院生物圏科学研究科
櫻井直樹教授に謹んで深謝申し上げます.
また,本論文の作成にあたり,有益なご助言を頂きました上真一教授,実岡寛文教
授,羽倉義雄教授,中坪孝之教授,岡山大学大学院環境生命科学研究科
久保康隆教
授の審査員の先生方に対し,心より感謝申し上げます.
本研究の遂行にあたり,広島大学大学院生物圏科学研究科教育研究補助職員
秀美博士,広島大学博士課程
岩谷真一郎氏,広島大学産学連携センター研究員
秋元
谷
脇満博士には有益なご助言を頂きました.深く感謝申し上げます.また,岐阜県農業
技術センター
新川猛主任専門研究員には有益なご助言とご協力を頂きました.深く
感謝申し上げます.岐阜大学大学院連合農学研究科
センター紙業部
中野浩平教授,岐阜県産業技術
神山真一主任専門研究員からは貴重なデータの提供と有益なご助言
を頂きました.深く感謝申し上げます.
さらに,本研究の遂行にあたり,岐阜県農業技術センター
越川兼行所長,前矢野
秀治所長,元宇次原清尚所長,鈴村尚司氏,高木敏彦氏,那須大輔氏を始め,多くの
上司ならびに同僚各位より特段のご配慮と多大なご協力を頂き,大変お世話になりま
したました.記して深く感謝の意を表します.
- 107 -
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本博士論文は次の論文を参考論文とした。
参
考
1
第2章第1節
参考論文の1
第3章第1節
参考論文の2
第4章第2節
参考論文の3
第4章第3節
参考論文の4
論
文
鈴 木哲 也・新 川
猛 ・ 櫻 井 直 樹 .収 穫 後 の カ キ‘ 富 有 ’果 実 に お け る 肉 質 評 価 と 食
べ 頃 予 測 . 園 学 研 . 10: 421–427.2011.
2
鈴 木哲 也・新 川
猛 ・ 中 野 浩 平 ・ 神 山 真 一 ・ 櫻 井 直 樹 .音 響 振 動 法 に よ る カ キ‘ 早
秋 ’ の 果 肉 評 価 と 果 肉 硬 度 保 持 技 術 の 開 発 . 園 学 研 . 14: 75–81.2015.
3
鈴 木哲 也・新 川
猛 ・ 櫻 井 直 樹 .音 響 振 動 法 に よ る カ キ‘ 太 秋 ’の 食 感 評 価 .園 学
研 . 12: 433–438.2013.
4
鈴 木 哲 也・新 川
猛・櫻 井 直 樹 .1-MCP 処 理 お よ び ポ リ エ チ レ ン 包 装 に よ る カ キ‘ 太
秋 ’ の 食 感 保 持 技 術 の 開 発 . 園 学 研 . 13: 275–282.2014.