論文内容要旨 論文題名 Fecal calprotectin is a clinically relevant biomarker of mucosal healing in patients with quiescent ulcerative colitis 掲載雑誌名 Journal of Gastroenterology and Hepatology 2015 年 内科系内科学消化器内科学分野専攻 山口明香 内容要旨 潰瘍性大腸炎は、長期にわたり再燃と寛解を繰り返す慢性炎症性腸疾患 である。疾患活動性は主に臨床症状により評価されてきたが、症状は内視 鏡で観察される炎症所見と必ずしも一致しないため大腸内視鏡検査によ る評価も必要とされる。しかしながら、大腸内視鏡検査は侵襲的な検査で あることから、簡便で信頼性の高い内視鏡検査の代用となるマーカーが探 索されてきた。便中カルプロテクチン(fecal calprotectin:FC)は、好中球 の細胞質中に豊富に含まれるタンパク質で、好中球が粘膜組織に浸潤する 際に上昇する。FC は、潰瘍性大腸炎の疾患活動性を反映することが報告 されており、内視鏡的に炎症が消失した状態(粘膜治癒)を予測できる可能 性がある。そこで、我々は寛解期潰瘍性大腸炎の患者を対象とし、FC に よる粘膜治癒の予測能を検討する前向き研究を行った。2013 年 10 月から 2014 年 11 月に、寛解期潰瘍性大腸炎患者 112 例を対象とし、多施設共同 研究を行った。大腸内視鏡検査が施行される 3 日以内に採取された便検体 を用い FC を測定し、大腸内視鏡所見は Mayo スコアにて評価した。Mayo スコア 0 および 1 を粘膜治癒と定義して、FC の ROC 曲線を作成し、至 適カットオフ値により、感度、特異度、陽性的中率、陽性尤度比、正診率 を求めた。また、大腸内視鏡検査施行時に採血を行い、C 反応性たんぱく、 ヘモグロビン濃度、赤沈一時間値、血清アルブミン濃度についても予測能 を同様に検討した。さらに Mayo スコア 0 を粘膜治癒と定義した場合の予 測能についても検討した。結果は、対象とした患者は全て臨床的に寛解期 であったが、Mayo スコア 2 以上が 11 例にみられ、FC の全症例の中央値 は、115µg/g であった。Mayo スコア 0 および 1 を粘膜治癒と定義した場 合、 FC の AUC は 0.869 で、カットオフ値を 200µg/g における感度は 67%、 特異度は 91%であり、他のいずれのマーカーよりも予測能は高かった。 また、Mayo スコア 0 の場合、FC の AUC は、0.639 で、カットオフ値を 194µg/g にすると、感度が 71%、特異度が 53%であり、他のマーカーと の有意差は認めなかった。Mayo スコア 0 および 1 を粘膜治癒と定義すれ ば、FC は信頼できる予測マーカーであった。一方、Mayo スコア 0 にお ける粘膜治癒の予測能は不十分であった。
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