こちら - 筑波大学菅平高原実験センター

草原
当センターが開設された 1934 年当時、敷地は放牧等で維持されてきた草原でした。日本の
気候化では、草原を放置すると次第に樹木が進入してアカマツやシラカンバなどが優先する
先駆性の森林に遷移していきます。当センターでは敷地のうち約 6ha を、毎年秋に刈り取りを
行うことで、半自然草原を維持しています。ススキ・ヤマハギ・ワレモコウ・マツムシソウなどが
優占する本州中部の典型的な山地草原となっています。ここでは、草原の自然の移り変わりを
追跡調査すると同時に、種多様性と生産性の関係を調べる実験、ワラビ採集の植物群集への
影響を調べる実験、温暖化が植物群集に与える影響を調べる実験、草原から森林への遷移が
撹乱の種類によってどう変わるかを調べる実験などを行っています。草原生態系と大気の間の
熱・二酸化炭素の交換の様子も長期観測されています。
草原(6 月の様子)
毎年 10 月中旬に植物の刈り取りを行っています。
アカマツ林
毎年の刈り取りによって草原として維持されてきた場所のうち約 8.5ha が、途中で刈り取りを中止
したことで自然に樹木が進入し、今日ではアカマツが優先する森林になっています。このうち 4 ha は
アカマツの優占度が高い最大樹齢約 45 歳(2012 年現在)の森林で、樹高約 15m・直径 30cm 以上の
アカマツが見られます。残りの 4.5ha はアカマツ・ミズナラ・シラカンバが混交する約 65 歳の森林で、
最大直径 50cm を超します。これらの森林ができるまでの間、植栽・下草刈り・伐採・農薬散布などの
人為管理は一切行っておらず(遊歩道の維持だけを行っています)、全く自然に形成された森林です。
日本のほとんどの草原や森林伐採跡地は、植林などを行わずともただ放っておくことで自然の森林に
なりますが、その良い見本になっています。これらの森林では、永久試験地(約 2ha)で樹木の成長や
森林群集の変化を長期観測する毎木調査・リタートラップ調査が行われている他、ほ乳類・昆虫・菌類
の生物相調査や、様々な実験を行っています。
アカマツ林
落葉広葉樹林
根子岳・四阿山の間より発し本センターの敷地内を流れる大明神沢沿いには、約 14ha のミズナラ・
シラカンバ・カエデ類・サクラ類・シナノキ・トチノキ・アズキナシなどからなる落葉樹林が見られます。
ここは、元々落葉樹林として維持されてきた場所が、当センターが開設された 1934 年以前に大部分
が伐採され、その切り株からの芽生えによって自然に森林が再生(萌芽更新)した場所だと考えられ
ます。ほとんどの場所ではアカマツ林同様、伐採以後は一切人為的管理が入っていません。一部の
場所では、カラマツ・ドイツトウヒ・ブナなどが植栽され、成長しています。敷地内で最も成熟度が高く、
また菅平高原の中でも最も保存状態の良い河畔林の一つであり、多数の動植物が生息しています。
生物科学・環境 科学などの実習地・研究地として極めて利用価値が高く、その保存につとめています。
ここでも、永久試験地(約 1 ha)での毎木調査・リタートラップ調査、生物相調査、各種実験が行なわ
れています。
ミズナラ林
大明神の滝
※原則として公開はしていません。
樹木園
草原であった場所を 1955 年に造成を開始し、様々な樹種を植栽してきました。そこに自然に進入・
定着した種が加わりは、今日では 200 種あまりの樹木からなる立派な樹林となり、動物やカビ・キノコ
の良好な観察場所ともなっています。菅平高原の代表的な潜在自然植生のひとつ
だと考えられて
いるブナ林の復元を目指して、シラカンバ林の林床にブナの苗木を植えてブナ人工林の育成も行い、
ブナの成長にともなう生物相・微気候・土壌などの変化を記録し、野外実習や研究の場として利用
できるように管理しています。一部のブナ個体が、2005 年頃から結実を開始しました。
樹木園入口付近の広場
園内 若いブナの林