一般社団法人 日本医療安全学会 ニュースレター 2016 年 6 月 10 日 日本医療安全学会相談役 衆議院議員 阿部 知子 医療安全に幅広い知見の結集を この度、日本医療安全学会の「相談役」を拝命いたしました。私は昭和 49 年 に東京大学医学部を卒業し小児科医として働いておりましたが、平成 12 年 (2000 年)に衆議院議員に当選して以来、その仕事を続けています。 さる 3 月 6 日、本当に久しぶり(46 年ぶり?)に東京大学安田講堂に身を置 きました。第 2 回医療安全学会学術総会に、シンポジストとしてお招きいただ いた故ですが、こうした学会が医学界の一分野として確立され、現場も含めた 専門家が熱心に討議されていることに頼もしさと感銘を受けたものです。 私は世にいう学生運動世代ですので、大学在学中から東大物療内科の講師で あった高橋晄正先生たちがスモンやキノホルムの薬害を取り上げたり、また小 児科学会が未熟児網膜症や大腿四頭筋短縮症の問題に取り組んでいることに影 響を受けて、医療行為が生み出す被害者の声を聴くことの大切さを学ばせて頂 いたと思っております。同時に、私が議員となったきっかけでもありますが、 1998 年に兄が脊椎の手術後にエコノミークラス症候群を合併し急逝して以降、 忙しい業務に追われる医療現場では一度事故が起きるとリカバーできない現実 があり、それを何とかしなくてはならないと思うようになりました。 同時期、横浜市立大学病院での患者取り違え事件をはじめとして、特定機能 病院に指定されレベルが高いと思われていた病院で次々に初歩的ミスが続き、 医療に携わる人材もシステムも疲弊し、機能不全に陥っており、それが医療の 受益者と提供者の間にも大きな溝を作っていることも実感していました。 そうした医療現場を改善するべく衆議院議員となり、小児医療・産科医療の 充実や医療事故調査委員会の設置を求めて活動して参りました。紆余曲折の末 2015 年に医療事故調査制度がスタートし、今後は調査機能の充実と事故直後の 対応や再発防止のための教育、患者被害者家族参加のしくみ、無過失補償制度 をどう進めていくのか等が課題と考えています。 先日のシンポジウムでは、特に事故からの回復過程に必要とされる医療や全 スタッフの安全教育を重視する名古屋大学の取り組みに強い共感を覚えました。 今後とも皆さんの活動に刺激を頂きながら、立法府の中で役割を果たしていき たいと思います。
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