平成28年度 東京都Ⅰ類B 教養論文 講評&解答例

平成28年度 東京都Ⅰ類B
教養論文
講評&解答例
0 001112 154919
KL15491
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教養論文
問 題
(1) 別添の資料を参考に,東京において,誰もが安心して快適に利用できる交通を実現していく
ために,あなたが重要と考える課題を 200 字程度で簡潔に述べよ。
(2) (1)で述べた課題に対して,都はどのような取組を進めるべきか,あなたの考えを述べよ。
なお,解答に当たっては,解答用紙に(1),(2)を明記すること。
公務員試験対策 平成 28 年度東京都Ⅰ類B本試験(論文試験) 解答例
1
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資料1
今後 10 年間の道路整備の方向性
Q4
東京都と特別区及び 26 市2町では,都市計画道路を計画的,効率的に整備するため,今後
10 年間で優先的に整備すべき路線を選定していく予定です。あなたが今後 10 年間の整備の方
向性として,どうあるべきだと思うものを次の中から3つまで選んでください。
(3MA)
(n=479)
0%
20%
40%
60%
緊急物資の輸送,消防活動などの救援・救護活動のルート
確保,震災時における大規模な市街地火災の延焼防止,
安全な避難路の確保など防災性を向上させる
55.5
自転車レーン等の整備により自転車と歩行者を分離する
55.1
骨格幹線道路(※)の整備により,人やモノの流れを円滑
にして,東京の発展に寄与することに加え,防災性の向上,
安全で快適な暮らしを実現する
52.4
40.9
高齢者や障害者,車イスやベビーカーなど,様々な利用者
が安全に通行できる
慢性的な交通渋滞の解消により,時刻表どおりのバスの運
行や物流などの経済活動への影響を軽減する
28.8
地域の特性を活かした歩行者空間の拡充や緑豊かな道路
空間の形成など,地域と行政が連携したみちづくりを実施
する
20.3
14.8
駅前広場の整備などにより,バスや鉄道などの公共交通の
利用がしやすくなる
幹線道路の整備により,生活道路へ流入する通過交通を減
らす
大規模な宅地開発,区画整理や再開発などによるまちづく
りを支援,促進させる
80%
13.2
2.7
1.9
その他
※骨格幹線道路…都内や隣接県を広域的に連絡し,高速自動車国道をはじめとする主要な道路
を結ぶ,枢要な交通機能を担う幹線道路
その他の主な意見
・歴史と情緒あふれる道路が欲しい。
東京都生活文化局
平成 27 年度第3回インターネット都政モニターアンケート
「東京における都市計画道路の整備」より作成
2
公務員試験対策 平成 28 年度東京都Ⅰ類B本試験(論文試験) 解答例
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資料2
論点整理
<鉄道>
<取り巻く背景>
■バス乗り場の分散や,段差・不連続な雨よけなどにより,
乗換利便性が阻害
■新規路線の乗入や都市開発による利用者増に伴い,乗降や
乗換で混雑
■ターミナルでは,移動や乗換に必要な情報を認知しづらい
◆国際的な都市間競争の
激化
◆少子高齢化や都心回帰
の進展
■多言語での案内やWi-Fiなど通信環境が不十分
◆環境への意識の高まり
<自動車・自転車・徒歩>
■都心部では依然として道路混雑が発生
◆防災機能の強化
ふくそう
■自転車と歩行者が輻輳し、交通安全の確保が課題
■高齢者等の外出支援、街の回遊性向上に向け、安全で快適
な歩行空間の更なる確保が必要
<空港>
■首都圏空港(羽田,成田)の容量は,主に国際線需要の増加
に伴い,2020 年代には満杯の見込み
■空港容量拡大に対応する空港アクセスの充実が必要
◆ICTの進歩など技術革新
◆国家戦略特区の指定,
集約型地域構造への再編
◆2020 年オリンピック・
パラリンピック開催
東京都都市整備局
平成 26 年8月 26 日 第2回東京の総合的な交通政策のあり方検討会
資料「東京の交通が目指すべき将来像と政策目標について」より作成
公務員試験対策 平成 28 年度東京都Ⅰ類B本試験(論文試験) 解答例
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解答例
(1) 第1に,災害に強い幹線道路の整備である。道路混雑が問題視される中,人・モノの流れの円滑
化に加え防災性向上への都民ニーズは高い。第2に,外国人来訪者が快適に移動できる体制整備で
ある。五輪開催に伴い外国人来訪者が増加する中,空港アクセスの充実化,外国人にとって複雑と
される鉄道の乗換改善が課題となる。第3に,自転車利用者と歩行者の双方が安心利用できる交通
整備である。双方の輻輳による交通事故を減らし,歩行者の安全を確保しつつ自転車の利用拡大を
図るのが課題である。
(230 字)
(2) 道路などの交通基盤は,都市の骨格を形成するとともに,人々の日常生活を支える重要な都市基
盤となっている。これをさらに発展させ,東京の活力を高めていくために,都は以下の3つの取組
を進める必要がある。
第1に,骨格幹線道路の一層の整備を図ることである。これによって渋滞が緩和されれば,物流
がスムーズになるとともに,時間損失がなく,ドライバーやバス利用者等も安心して快適に道路網
を利用できる。加えて骨格幹線道路は,災害時に緊急物資輸送や救援ルートになるとともに延焼防
止にも資することから,首都直下地震が懸念される東京の防災力向上にも結び付く。また,都は骨
格幹線道路の整備によりもたらされる効果の拡大を図るため,骨格幹線道路へのアクセス強化に繋
がる道路整備も行っていく必要がある。さらに渋滞緩和を図るため,警視庁との連携のもと,交通
管制システムを導入し,交通状況に即応した信号の制御や交通量の分散を図っていくことで,円滑
な道路交通が実現すると考える。
第2に,交通アクセスの充実,ならびに外国人来訪者にとって乗換しやすい鉄道を実現すること
である。交通利便性は外国人来訪者の東京に対する印象を大きく左右させる。東京が国際都市とし
て更なる飛躍を遂げるためにも,外国人来訪者が快適に利用できる交通の整備は不可欠である。
そこで都は,民間事業者と連携し,主要駅から空港までの直通便を増やしていく。特に,羽田空
港の利便性を高めるには,
公共交通機関の営業が終了している深夜早朝時間帯の対応が問題となる。
これに対しては国にも協力を仰ぎ,この時間帯のアクセスバスの運行強化を図り,空港容量の拡大
に対応していく。
他方,鉄道網が高度に発達する東京は,外国人来訪者にとって乗換が容易でない。加え,手持ち
のモバイル端末で乗換や観光情報等を調べる外国人来訪者は増加しているが,
他の観光都市に比べ,
Wi―Fi などの通信環境の整備も十分に発達しているとは言い難い。そこで都は,外国人来訪者が
多い駅を中心とし,交通事業者が協調して乗換改善に取り組めるよう主導するとともに,JRや私
鉄の無料Wi―Fi 環境拡大に向けて通信事業者に働きかけを行う必要がある。
第3に,歩行者が安心でき,自転車にも便利な交通を確保することである。自転車は環境にやさ
しいだけでなく,公共交通の補完的利用が期待される点でも重要な交通手段の1つである。しかし
都内でも,自転車と歩行者との交通事故は多発しており,高齢者や障害者をはじめとする歩行者が
4
公務員試験対策 平成 28 年度東京都Ⅰ類B本試験(論文試験) 解答例
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安心して通行できる交通の実現が求められている。そこで都は,国や区市とも連携し,道路事情に
応じた自転車レーンを整備し,自転車利用者,歩行者双方にとって快適な交通空間を実現していく
必要がある。さらに自転車の利用拡大を図るため,区が実施するシェアサイクルを都が支援するこ
とで,区域を超えた事業を促進していくことも必要である。
以上の取組実現には,関係機関との連携が極めて重要となる。世界一の交通体系の実現に向けて
一丸となって取り組めるように都が主導し,東京の国際競争力を高めていかねばならない。
(約 1280 字)
以 上
講 評
難易度:B[標準]
平成 26・27 年度は設問において論点テーマが具体的には絞られていない出題が続いていたのに対
し,本年度は「東京において,誰もが安心して快適に利用できる交通を実現していくために」と論
点テーマが絞られた問題が出題された。このテーマ自体を重点的に対策して臨んだ受験生は少ない
かもしれないが,資料1・2の双方を活用すれば課題の抽出は行いやすい問題となっている。さら
に,資料1が取組を構想するヒントともなっているので,それをうまく活用しつつ,課題とその対
策について設問条件にも留意しながら複数論じられるとよい。なお,
【解答例】では取り上げていな
いものの,高齢化のさらなる進展にも伴ってバリアフリーの整備が一層求められるという視点から
論述することももちろん可能である。
公務員試験対策 平成 28 年度東京都Ⅰ類B本試験(論文試験) 解答例
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