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ルネサス半導体セミナー
実用電子回路入門~実践応用編~コース
テキスト
www.renesas.com
ご注意書き
1. 本資料に記載された回路、ソフトウェアおよびこれらに関連する情報は、半導体製品の動作例、
応用例を説明するものです。お客様の機器・システムの設計において、回路、ソフトウェアお
よびこれらに関連する情報を使用する場合には、お客様の責任において行ってください。これ
らの使用に起因して、お客様または第三者に生じた損害に関し、当社は、一切その責任を負い
ません。
2. 本資料に記載されている情報は、正確を期すため慎重に作成したものですが、誤りがないこと
を保証するものではありません。万一、本資料に記載されている情報の誤りに起因する損害が
お客様に生じた場合においても、当社は、一切その責任を負いません。
3. 本資料に記載された製品デ-タ、図、表、プログラム、アルゴリズム、応用回路例等の情報の
使用に起因して発生した第三者の特許権、著作権その他の知的財産権に対する侵害に関し、当
社は、何らの責任を負うものではありません。当社は、本資料に基づき当社または第三者の特
許権、著作権その他の知的財産権を何ら許諾するものではありません。
4. 当社製品を改造、改変、複製等しないでください。かかる改造、改変、複製等により生じた損
害に関し、当社は、一切その責任を負いません。
5. 当社は、当社製品の品質水準を「標準水準」および「高品質水準」に分類しており、
各品質水準は、以下に示す用途に製品が使用されることを意図しております。
標準水準:
コンピュータ、OA 機器、通信機器、計測機器、AV 機器、
家電、工作機械、パーソナル機器、産業用ロボット等
高品質水準:
輸送機器(自動車、電車、船舶等)、交通用信号機器、
防災・防犯装置、各種安全装置等
当社製品は、直接生命・身体に危害を及ぼす可能性のある機器・システム(生命維持装置、人
体に埋め込み使用するもの等) 、もしくは多大な物的損害を発生させるおそれのある機器・シ
ステム(原子力制御システム、軍事機器等)に使用されることを意図しておらず、使用するこ
とはできません。 たとえ、意図しない用途に当社製品を使用したことによりお客様または第三
者に損害が生じても、当社は一切その責任を負いません。 なお、ご不明点がある場合は、当社
営業にお問い合わせください。
6. 当社製品をご使用の際は、当社が指定する最大定格、動作電源電圧範囲、放熱特性、実装条件
その他の保証範囲内でご使用ください。当社保証範囲を超えて当社製品をご使用された場合の
故障および事故につきましては、当社は、一切その責任を負いません。
7. 当社は、当社製品の品質および信頼性の向上に努めていますが、半導体製品はある確率で故障
が発生したり、使用条件によっては誤動作したりする場合があります。また、当社製品は耐放
射線設計については行っておりません。当社製品の故障または誤動作が生じた場合も、人身事
故、火災事故、社会的損害等を生じさせないよう、お客様の責任において、冗長設計、延焼対
策設計、誤動作防止設計等の安全設計およびエージング処理等、お客様の機器・システムとし
ての出荷保証を行ってください。特に、マイコンソフトウェアは、単独での検証は困難なため、
お客様の機器・システムとしての安全検証をお客様の責任で行ってください。
8. 当社製品の環境適合性等の詳細につきましては、製品個別に必ず当社営業窓口までお問合せく
ださい。ご使用に際しては、特定の物質の含有・使用を規制する RoHS 指令等、適用される環境
関連法令を十分調査のうえ、かかる法令に適合するようご使用ください。お客様がかかる法令
を遵守しないことにより生じた損害に関して、当社は、一切その責任を負いません。
9. 本資料に記載されている当社製品および技術を国内外の法令および規則により製造・使用・販
売を禁止されている機器・システムに使用することはできません。また、当社製品および技術
を大量破壊兵器の開発等の目的、軍事利用の目的その他軍事用途に使用しないでください。当
社製品または技術を輸出する場合は、
「外国為替及び外国貿易法」その他輸出関連法令を遵守し、
かかる法令の定めるところにより必要な手続を行ってください。
10. お客様の転売等により、本ご注意書き記載の諸条件に抵触して当社製品が使用され、その使用か
ら損害が生じた場合、当社は何らの責任も負わず、お客様にてご負担して頂きますのでご了承く
ださい。
11. 本資料の全部または一部を当社の文書による事前の承諾を得ることなく転載または複製するこ
とを禁じます。
注 1. 本資料において使用されている「当社」とは、ルネサス エレクトロニクス株式会社およびルネ
サス エレクトロニクス株式会社がその総株主の議決権の過半数を直接または間接に保有する
会社をいいます。
注 2. 本資料において使用されている「当社製品」とは、注1において定義された当社の開発、製造
製品をいいます。
(2012.4)
はじめに
このテキストは、ルネサス エレクトロニクス株式会社
半導体トレーニングセンター
「実用電子回路入門~実践応用編~コース」用に作成されたものです。
入門基礎編では、電気の基礎知識、電子部品、能動素子の動作、増幅回路の動作、演算増幅器
(オペアンプ)の概要を学習し、実験を通して回路の具体化から評価測定まで経験できました。
実践応用編では、多段増幅回路について学び、増幅回路の動特性、過渡特性といった様々な特
性も学習したうえで、高度な回路の理解のためにオペアンプの内部回路と、その動作の詳細を学習
します。また、オペアンプのいろいろな応用回路例についても、基本的な応用回路例に加えてセン
サーアンプ等の具体的な応用例も学習します。
さらに、実際の設計・製作の演習として、オペアンプを利用した高性能ヘッドフォンアンプの製作・
評価も行います。 (演習に使用したヘッドフォンアンプは持ち帰って自己学習に役立てられます)
オペアンプを徹底的に理解して自在に使いこなせるようになることを目的としていますので、技術
者としてのスキルアップを目指し、回路設計のスペシャリストを目指すあなたに最適なコースです。
(内容)
・多段構成の増幅回路の動作、設計について。
・直流増幅器について。
・演算増幅器(オペアンプ)の概要。
・回路の起動特性や過渡的な動作、過渡歪や混変調歪などの諸現象。
・演習: 演算増幅器(オペアンプ)の動作確認。
・演算増幅器の内部回路構成と、各ブロックの動作解説。
・差動増幅回路の応用例、電子ボリュームやアナログスイッチ、変調器等について。
・フィルタや加減算器、比較器といった演算増幅器の各種応用回路。
・オペアンプを使用したセンサアンプでの使用例。
・演習: オペアンプを利用した高性能ヘッドフォンアンプの設計・製作。
1
・参考: オペアンプで構成したPWMパワーアンプ。
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青文字部分は閲覧が可能です
目次1
第1章 多段増幅回路
第4章 演習; オペアンプ
1-1 電流帰還型増幅回路
4-1 演習の目的と内容
1-2 2段直結増幅回路
4-2 オペアンプを使った増幅器
1-3 負帰還(NFB)と帰還増幅回路
4-3 回路の構成
1-4 2段直結増幅回路の設計
4-4 設計仕様
1-5 2段直結増幅回路前段の設計
4-5 評価用基板
1-6 2段直結増幅回路後段の設計
4-6 組み立て、動作確認
1-7 出力にエミッタフォロワを加えた
4-7 測定データ
3段直結回路
1-8
プッシュプル出力回路
第5章 オペアンプの内部構成
1-9
参考:プッシュプル増幅回路
5-1 オペアンプ内部回路の特徴
1-10 利得、ノイズ特性
5-2 オペアンプの内部回路構成
1-11 ダイナミックレンジ、歪
5-3 差動増幅回路
1-12 周波数特性、安定度
5-4 差動増幅回路の出力
1-13 直流増幅回路
5-5 カレントミラー回路
1-14 直流帰還
5-6 バイアス回路
5-7 増幅部の構成
第2章 演算増幅器(オペアンプ)
5-8 バイアス部の構成
2-1 演算増幅器(オペアンプ)とは
5-9 システムとしての特徴
2-2 オペアンプの規格、特性
2-3 オペアンプの用途
2-4 オペアンプを使った増幅器
第6章 特殊な回路
(差動増幅回路の応用例)
2-5 OPアンプを使った加算器・減算器
6-1 ミュート回路
2-6 OPアンプを使ったフィルター
6-2 信号切替器(アナログスイッチ)
2-7 単一電源での使用
6-3 電子ボリューム
6-4 振幅変調回路(掛算器)
第3章 増幅回路の諸特性
6-5 (参考)非飽和リミッター
3-1 起動終動特性
3-2 過飽和特性
3-3 電源過変動特性
3-4 発振他
3-5 静特性と動特性
3-6 変調歪
3-7 混変調歪と過渡変調歪
3-8 電源ライン、GNDラインの影響
2
青文字部分は閲覧が可能です
目次2
第7章 オペアンプを使用した演算回路
7-1 加算器、減算器
第10章 (演習)
製作:オペアンプを
7-2
フィルター
使用した高性能ヘッドフォンアンプ
10-1 全体構成の確認
7-3
微分器、積分器
10-2 部品と基板組み立て
7-4
発振回路(マルチバイブレーター)
10-3 基板組み立ての状態
7-5
コンパレーター
10-4 動作確認、測定
7-6
基準電源、バイアス回路
10-5 測定データ
第8章 センサーアンプ
第11章 参考:オペアンプで構成した
PWMパワーアンプ
8-1 いろいろな計測器(センサー)
8-2 計測器の構成とセンサーアンプ
11-1 システム構成
8-3 計装アンプ
11-2 PWMパワーアンプ
8-4 各種センサの特性例
11-3 PWM変調器
8-5 光センサー
11-4 全体システム図
8-6 温度センサー
8-7 磁気センサー
8-8 音センサー(MICアンプ)
Appendix: 参考資料
1 オペアンプ応用回路例(1)
2 オペアンプ応用回路例(2)
第9章 (演習)
設計: オペアンプを
使用した高性能ヘッドフォンアンプ
3 オペアンプ応用回路例(3)
4 標準数列とカラーコード
9-1 演習の目的と内容
5 オペアンプ
: uPC4572
9-2 用途・仕様
6 オペアンプ
: HA1630D08
9-3 全体システム構成
7 オペアンプ
: μPC4082
9-4 増幅部(オペアンプ)の設計
8 オペアンプ
: NJM4558
9-5 出力段の設計
9 オペアンプ
: OP275GP
9-6 電源部
10 オペアンプ
: AD712JNZ
9-7 性能見積り
11 オペアンプ
: AD8066ARZ
12 NPNトランジスタ: 2SC1213A
13 PNPトランジスタ: 2SA673A
14 FET
: 2SK359
3
初段にNPNトランジスタ、後段にPNPトランジスタで構成した2段直結増幅回路
・初段と後段にNPNトランジスタ2つ直列に接続した回路は、前後段のインピーダンス整合を
とることや、DC直結にするのに制約が多かったりします。
・後段をPNPトランジスタにすることで、初段のコレクタと後段のベースのDC電圧の整合が
取り易くなり、効率の良い回路が構成出来ます。
初段にPNPトランジスタ、後段にNPNトランジスタで構成した2段直結増幅回路
・初段と後段の整合が取りやすくなるのは、上記の例と同じです。
・後段(出力段)に hFE が大きくて電流直線性の高いNPNトランジスタを使用できるので、
出力性能を上げるのに有利になります。
・初段に雑音性能の良いPNPトランジスタが使用できるのもメリットです。
4
演算増幅器とは
演算増幅器(オペレーショナルアンプまたはオペアンプ)は、トランジスタやFET を使って組み
上げることができます。 しかし、トランジスタやFETは製品ごとに特性のばらつきがあり、部品
点数も多くなってしまいますので、通常はIC化された製品を使い内部はブラックボックスとして
扱います。
プラスとマイナスの2電源を用いるものと、単一電源のものがあります。汎用のオペアンプは数
多くの製品があり、幅広い分野で使われています。
オペアンプの特徴
・差動増幅器です。差動というのは入力端子が2本あり、その差の電圧を入力電圧として増幅
するということです。
・電圧増幅率が100dB(10 万倍)程度あります。通常は負帰還をかけて使用します。
・入力インピーダンスが非常に大きく数MΩ程度になります。
・出力インピーダンスが低く多くの電流を引き出すことができ、高負荷回路の接続が容易です。
・直流増幅器であり計測器や制御装置等にも広く使用されています。
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非反転増幅回路
・ 非反転増幅回路は入力信号に対して出力信号は反転しません。
・ 直流から増幅できます。
・ 入力信号は非反転入力端子に入力されます。
・ 出力から反転入力側に、R2を経由して負帰還をかけています。
・ 増幅度は、 G = 1 + R2/R1 となります。
6
差動増幅回路
初段入力部で正と負の2入力の差分を増幅するために構成され、エミッタ接地動作です。
カレントミラー負荷回路
差動入力部からの2つの出力を反転合成して、一つの出力にします。
エミッタ接地増幅回路
次段の増幅部で、エミッタフォロワを入力側に配したエミッタ接地増幅回路です。
出力PP回路
出力段の、エミッタフォロワによるプッシュプル電流増幅回路です。
基準バイアス回路
電源電圧に依存しない基準電流を生成する回路で、定電圧回路を持ち定電流出力を発生し
ます。
定電流源バイアス回路
基準バイアス回路からの定電流出力を基に、各ブロックにバイアス電流を供給する回路です
。
出力段バイアス回路
出力段の動作バイアスを設定する、温度補正を兼ねた定電圧回路です。
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センサ
いろいろな検出信号を電気信号に変えるのがセンサの役割です。検出に使用する材料等の
物理的な特性を利用して電気信号に変換します。
センサアンプ
センサから得られた出力はそのまま使える訳ではありません。信号の大きさを使いやすい
レベルに増幅したり、不要な信号を除去したり、信号の一部を取り出して使う等の選択が
必要になります。
センサ出力に補正を加えて、演算・データ化が出来るように、各種の処理を加えるのがセンサ
アンプの役割です。信号レベルの増幅、不要なDCオフセットの除去、信号の非線形性の補正
などの処理を行います。
データ化、演算処理
得られる信号を、最終的にデータ化し、演算処理をしたうえでデータ出力(表示等)までを行い
ます。
機能的には、A/Dコンバータと演算・データ処理、出力装置(表示等)の駆動で、通常はこれら
の機能を内臓したマイコンなどで行なわれます。
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全体構成
ヘッドフォンは比較的低いインピーダンス(約8Ω~600Ω位の範囲)の装置のため、駆動する
アンプには小出力ながらパワーアンプの機能が求められます。 今回の演習に用いる回路は
オペアンプに出力回路を加えて、駆動能力を向上させた回路を採用しました。オペアンプの
使用例としては標準的な設計で、身近な用途のため、オペアンプの具体的な使い方や使用
回路の特徴などが理解し易い例です。
増幅部
増幅部はオペアンプによる非反転アンプを構成しています。ラインレベルの入力信号でヘッド
フォンを駆動するので、あまり大きなゲインは必要なく、設計は容易になります。
出力部
出力部は、エミッタフォロワによるPP型出力ですが、出力段と、前段に逆極性のトランジスタを
使用したエミッタフォロワを配することによって、出力段バイアス回路に工夫を加えています。
電源部
電源部には、汎用のACアダプタ(12V)の出力から、中点電位を生成する回路を加えて正負2
電源の形を構成しています。
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実用電子回路入門~実践応用編~コース
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