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弱視(Amblyopia)とは
弱視という言葉は」よく耳にしますが、弱視って一体
何をさすのかと聞かれますと、なかなかはっきりしません。
弱視とは原則的には眼球自体にはっきりとした構造異常が
ないのに、視力が出ない状態をいいます。その原因としては
乳幼児期に斜視、あるいは屈折異常があったため、網膜に焦
点のあったきれいな像が結ばれず、後頭部にある視覚中枢が
視覚情報を充分に識別出来ず、そのために視力の発達が不十
分となり視力の出ない状態を弱視といいます。先に述べたよ
うに基本的には眼球には異常は見られず、未熟児網膜症や先
天緑内障、先天性白内障などの眼の病気がある場合は、矯正
視力が不良でも弱視とは言いません。
I.斜視弱視(strabismic amblyopia)
乳児内斜視など一方の眼に斜視があると、斜視のある眼の黄
斑部には鮮明な像が結ばれず、そのような状態が継続すると、
其の眼が使われなくなって、弱視になることがしばしばあり
ます。これを斜視弱視といいます。斜視弱視の治療は種とし
て2つの舞文に分かれます。最初は弱視の治療そして、次に
手術療法にて眼位異常を矯正いたします。弱視の治療は基本
的には斜視の眼の視力を上げる為に、まっすぐな健康な眼を
隠して(パッチング)、出来るだけ斜視眼を使用するようにす
る、いわゆる遮蔽法で弱視の眼の視力を改善しておく必要が
あります。 乳児内斜視のは遠視を伴う者も多くありますの
で、このような場合には遠視を矯正する眼鏡を併用する必要
があります。斜視弱視症例では眼鏡で斜視がなおる事は無く、
手術療法、眼鏡装用(必要ならば) 遮蔽方法の組み合わせが
治療の基本になります。斜視弱視症例では、弱視の程度は比
較的ふかく、遮蔽法を使用しても、弱視眼視力の改善は遅い
傾向があります。弱視眼視力の改善を待って治療をするのは
良いのですが、その為に斜視手術のタイミングが遅れるのは
よくあるません。多少のじゃくしが残っていても手術ウィオ
行わなければいけないことがしばしばです。手術法は斜視眼
の前後転術が普通ですが、術後外斜視の発症を防ぐため、手
術量はやや控えめにするのが安全とお思います。
II.不同視弱視(anisometropic amblyopia)
片方の眼に強い屈折異常(遠視、近視、乱視)がある場合に、
より屈折異常の弱い眼が主に使われて、より屈折異常の強い
眼は、黄斑部に鮮明な像が結ばれないため、そちらの眼が使
われなくなり、弱視になることをいいます。治療法としては
矯正眼鏡と健眼遮蔽の組み合わせが一般的です。不同視弱視
の多くは片眼の遠視ですが、健眼とされている眼もある程度
の屈折異常がある事が多いです。もし遠視性不同視の診断が
確定したら、眼鏡による視力の改善を図ります。不同視弱視
のうち、早期に診断されれば、眼鏡を装用するだけで弱視眼
の視力が正常化する事がしばしばあります。 其のためすぐ
に遮蔽法を開始しないで、しばらく眼鏡を装用して、視力の
推移を見ながら、必要な時は健眼の遮蔽を行ないます。私た
ちは不同視弱視を治療する時には片眼の視力だけに注意す
るのではなくて、最終的にはより良い両眼視機能の確立を目
的とします。また眼の位置が正位であることも確認しなけれ
ばなりません。そのために定期的な視力検査、眼位検査、立
体視検査が中心となります。以上は主として片眼性遠視性不
同視について述べていますが,数は少ないですが、片目に強
い近視があるとやはり、遠視のときと同じように弱視になり
ます。この場合には遠視性不同視性弱視が眼鏡で比較的治療
結果がよいのに、近視性不同視の場合には、眼鏡がうまく装
用できないで、治療がうまくいかない事があります。
III.屈折異常性弱視(ametropic amblyopia)
両眼に強い屈折異常(遠視、近視、乱視)があり、眼鏡等を
使わず矯正されないままでいると、両眼の黄斑部に鮮明な像
が結ばれないため両眼共弱視になることがあります。屈折異
常性弱視は屈折異常が矯正されない場合には、両眼性の視力
低下を起こすので、読書障害などの問題を起こしてきます。
眼鏡による屈折異常の完全矯正が極めて重要になります。屈
折異常性弱視の特徴は斜視弱視、不同視弱視と比較して、両
眼間の視力の差が少ない為に、多くの場合は両眼の屈折異常
を眼鏡にて矯正する事により、比較的短期間で視力が改善す
る事がほとんどです。しかし視力が安定したからといって、
眼鏡を外す事は出来ません。潜伏遠視を無理して調節しなが
ら生活しますと、勉強、読書などで不利となります。遠視は
年齢とともに減少し、中には眼鏡が必要でなくなる人もいま
すが、少しでも遠視が残っている場合には、特に学生時代、
近業が多い時には遠視の眼鏡を充分に活用すべきなのです。
IV.視性刺激遮断性弱視または廃用性弱視
(Form Vision
Deparivation Amblyopia)生下時より先天性白内障や幼児
期に片眼に眼帯をしていたなど、網膜に光や像がとどかない
状態でいると、使われなかった方の眼が弱視になることがあ
ります。この場合には内斜視を伴う事が多く、発症時期が極
めて早期であるために、最も弱視の程度は重く、治療が困難
です。
治療は障害となっている病変を出来るだけ早く取り除く事
である。特に形態覚遮断弱視の最も多い原因となる、片眼性
先天性白内障においては、診断が確定したところで、出来る
だけ早期に全身麻酔下で白内障吸飲手術を行い、すぐにコン
タクトレンズによる屈折異常矯正と健眼遮蔽を行う必要が
ある。屈折異常矯正と健眼遮蔽は早期に始められ、それから
10 歳近くまで継続し,患者、患者の家族、医療関係者の努
力は大変なものである。その意味で治療の内容、視力改善の
見込みなどについて。家族に充分な説明をする必要があるの
はいうまでもない。
我が国ではまだ行っている症例は少ないが、新生児の先天性
白内障術後、人工水晶体移植術については、アメリカなどで
は官吏行われている。しかしながら長期にわたる視力改善の
報告はまだ少なく、また眼球の成長に従って人工水晶体の交
換が必要になる事も、問題とおもわれる。