当日配布資料(936KB)

東海3大学新技術説明会 7/9
波動のエネルギー集中を応用した
制振および発電技術
• 三重大学 大学院工学研究科
• 機械工学専攻 准教授 小竹 茂夫
自然エネルギーの産む流れ
自然風力
海洋波力
Aoyama Wind Farm, Mie Prefecture
750kW×20 風車
Mighty Whale, Mie Prefecture
水柱振動型波力発電機
化石燃料不使用のグリーンエネルギー
二酸化炭素削減に寄与する有力な手段
However…
自然エネルギーの持つ欠点
低いエネルギー密度
ランダムな時間変動
風車の大型化
超大型風車
90m in diameter for 3000kW
軽くて強い(比強度の大きな)羽
が必要になる
・電力網の乱れを産む
・共振現象等を利用しにくい
コヒーレントな波の持つ力
太陽熱発電所
(a) 晴れの日
コヒーレントな光は焦点を結ぶ
1300MW 発電機
(b) 曇りの日
非コヒーレントな光は焦点を結ばない
空間的なコヒーレンスを持つ自然エネルギー
自然風
海の波
数 km オーダー
数kmの空間に渡り,同じ時間で同じ方向に風が吹き,波が打ち寄せる
自然の風や波には空間的なコヒーレンスが存在する
エネルギーを集めることはできないか?
空間的にコヒーレントな波のエネルギーを集中させる
波のエネルギーが一箇所に集められたなら,
大きなエネルギーが効率よく発電できる
非線形振動現象の持つ性質
分数調波振動
衝突振動現象
F1
F2
k2
k1
m1
x1
カオス振動
m2
x2
概周期振動
複雑な振動現象は,未だ多くが解明されていない
量子アルゴリズムと古典的波動現象に潜むアナロジー
大域的に結合した多体振動系
量子アルゴリズム
ハードウエアー・基礎学問
・ 量子ビット (2 状態のスピン)
・ 量子ゲート (量子作用素)
・ エンタングル
・ 量子情報科学
ψ1
ψ2
大きく異なる
・ 多体振動系
・ 大域的結合
・ 非エンタングル
・ 古典力学
ψ3=a1|0>+a2|1>
|0)=|000> ~ |7)=|111>
ソフトウェアー / アルゴリズム
類似点がある
波動アルゴリズム
Grover アルゴリズムとは何か?
波動の振幅を特定の場所に集める操作
Amp.
τ
It = I − 2 τ τ
s :初期状態
Is = 2 s s − I
It :ある特定の状態のみ,
位相を反転させる
ψ = LI s It I s It s ⇒ τ
平均
Is:すべての状態の平均を取る
τ
τ
: 特定の状態
I
: 単位変換
多体衝突振動系に現れるGroverアルゴリズム
Grover アルゴリズムによる特定振動子の振幅の増幅
(A.D.Patel:quant-ph/0609042v2(2006))
特定振動子へのエネルギー集中
多体衝突振動系
Grover アルゴリズム
xt
τsˆ
m m
K
m m
M
N-1
m m
X
x̂t
Grover アルゴリズムの成り立つ条件
(1) 振動子数:N
0
0 ⎤ ⎡ X&& ⎤ ⎡K + ( N −1)k + k ′ − ( N −1)k − k ′⎤ ⎡ X ⎤
⎡M
⎢ ⎥ ⎢
⎢x⎥
⎢ 0 ( N −1)m 0 ⎥ &&
( N −1)k
0 ⎥⎥ ⎢ ⎥
⎢
⎥ ⎢ x ⎥ = ⎢ − ( N −1)k
⎢
⎥
⎢⎣ 0
m′⎥⎦ ⎣ &x&1 ⎦ ⎢⎣
k ′ ⎥⎦ ⎢⎣ x1 ⎥⎦
0
0
− k′
It 演算子 → 特定振動子の衝突による位相反転
特定振動子からの影響を減らしたい
小振動子の数を大きくする: N
Grover アルゴリズムの成り立つ条件
(2) 大振動子の条件:M,K
k ′X
多体振動系の中に2体振動系の内部共振系を生成させる
M,Kの条件を固有振動数 ω+ ,ω- によって表現する
Grover アルゴリズムの応用
系全体から,特定の振動子にエネルギーを流し込む
:エネルギー
系全体に外部からエネルギーが入力される
エネルギーが全体から特定の
振動子に集中する
特定振動子の振幅が大きくなる
Grover アルゴリズムの実現
発電方法
発電による振動の減衰
磁束ベクトル密度: B [T] 振動子の速度: v [m/s] コイルの角度:θ [°],
磁性体の一辺の長さ: l [m] ,
コイルの持つ抵抗: R [Ω]
( Bl ) 2 sin θ
Fe = −
v
R
B ,l ,R ,θ: 定数
Fe = −cv
発電による反力の生成
減衰力は振動子の速度に比例する
発電モデル
• 運動方程式
発電による反力 → 速度に比例する減衰力
N
⎧ &&
⎪MX + KX + k ′( X − x1 ) + ∑ k ( X − xi ) = 0
i =2
⎪
m&x&i + k ( xi − X ) = Fi (ti )
⎨
⎪
m′&x&1 + k ′( x1 − X ) + cx&1 = F1 (t1 )
⎪
⎩
i=2,3,…N
系全体のエネルギーを特定振動子に
集中させてから,発電によって取り出す
エネルギー
シミュレーション
シミュレーションの条件
N
⎧ &&
⎪MX + KX + k ′( X − x1 ) + ∑ k ( X − xi ) = 0
i =2
⎪
&
&
mxi + k ( xi − X ) = Fi (ti )
⎨
⎪
m′&x&1 + k ′( x1 − X ) + cx&1 = F1 (t1 )
⎪
⎩
i=2,3,…N
M =
16 ( N − 1 )
49 ( N − 1 )
, K =
− k′
135
135
ただし,(1,2)ブロックサブシステムの
固有振動数ω+=7/2 ,ω-=1/2
X& = 0,x&1 = 0,x&i = 1
•
•
初期条件 X=0 ,x1=0 ,xi=0 ,
時間刻み0.01[s], t=500[s]間の4次のRunge‐Kutta法による数値計算
入力の大きさ,次の入力までの時間間隔は0~10までの乱数
また,各小振動子について
1.同時・同方向かつ同じ大きさの入力(コヒーレント)
2.大きさのみ異なる入力
3.方向のみ異なる入力
4.タイミング・方向・大きさすべてがバラバラ
の4種類の入力について確認
各小振動子への入力の違いがエネルギー集中に与える影響を確認
シミュレーション
入力が同じ大きさで、かつ同時かつ同方向の場合 (コヒーレント)
各小振動子のエネルギーの時間変化
特殊振動子への系のエネルギー集中率
energy concentration rate
600000
E
E1
E2
E3
E4
E5
energy [J]
500000
400000
300000
200000
100000
0
0
200
time [s]
400
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
F1
F2
Fi
• エネルギーが特殊振動子に集中している
1
200
time [s]
400
シミュレーション
• 入力とエネルギー集中の関係 (入力の大きさのみバラバラな場合)
各小振動子のエネルギーの時間変化
特殊振動子への系のエネルギー集中率
energy concentration rate
600000
E
E1
E2
E3
E4
E5
energy [J]
500000
400000
300000
200000
100000
0
0
200
time [s]
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
400
0
F1
F2
Fi
• エネルギーの集中の大きさが変わる
200
time [s]
400
シミュレーション
• 入力とエネルギー集中の関係 (入力の方向のみバラバラな場合)
各小振動子のエネルギーの時間変化
特殊振動子への系のエネルギー集中率
E
E1
E2
E3
E4
E5
10000
energy [J]
energy concentration rate
12000
8000
6000
4000
2000
0
0
200
time [s]
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
400
F1
F2
Fi
• ほとんどエネルギーが集中しない
1
200
time [s]
400
シミュレーション
• 入力とエネルギー集中の関係 (すべてバラバラな場合)
3500
3000
2500
2000
特殊振動子への系のエネルギー集中率
energy concentration rate
energy [J]
各小振動子のエネルギーの時間変化
E
E1
E2
E3
E4
E5
1500
1000
500
0
0
200
time [s]
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
400
F1
F2
Fi
• ほとんどエネルギーが集中しない
1
200
time [s]
400
シミュレーション
入力とエネルギー集中の関係
N
⎧ &&
⎪MX + KX + k ′( X − x1 ) + ∑ k ( X − xi ) = 0
i =2
⎪
&
&
mxi + k ( xi − X ) = Fi (ti )
⎨
⎪
m′&x&1 + k ′( x1 − X ) + cx&1 = F1 (t1 )
⎪
⎩
• 入力が同時かつ同方向 → 特殊振動子にエネルギーが集中する
(コヒーレント)
• 入力の方向やタイミングが異なる → エネルギーは集中しない
(インコヒーレント)
コヒーレントな場合
小振動子から大振動子に同時に伝わる力が大きい
↓
大振動子の変位大
↓
特殊振動子へ移動するエネルギー大
インコヒーレントな場合
小振動子から大振動子に同時に伝わる力が小さい
↓
大振動子の変位小
↓
特殊振動子へ移動するエネルギー小
シミュレーション
減衰,および特殊振動子の振動数がエネルギー集中に与える影響について検証
• 初期速度 X& = 0,x&1 = 0,x&cm =1
• N=100,500,1000
• c=0.01,0.04,0.1,0.4,1.0 • 同時かつ同方向かつ同じ大きさの入力がある場合に
各Nにおける,各cごとに特殊振動子の質量m’を
変化させ,t=500[s]間に減衰されるエネルギーの
合計値を計算
シミュレーション
減衰による特殊振動子の振動数とエネルギー集中への影響
N=500
N=1000
5000000
3500000
c=0.01
c=0.04
c=0.10
c=0.40
c=1.00
2500000
c=0.01
c=0.04
c=0.10
c=0.40
c=1.00
2000000
1500000
1000000
total energy[J]
3000000
total energy[J]
total energy[J]
N=100
800000
700000
600000
500000
400000
300000
200000
100000
0
500000
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011
m´[kg]
4000000
c=0.01
c=0.04
c=0.10
c=0.40
c=1.00
3000000
2000000
1000000
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
m´kg]
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
m´[kg]
M =
16 ( N − 1 )
49 ( N − 1 )
,K =
− k′
135
135
ただし,(1,2)ブロックサブシステムの
固有振動数ω+=7/2 ,ω-=1/2
• Nが大きい → ピークが鋭い
• Nが小さい → m’=4以外にピークがある
• cに最適値がある
• Nが大きい→ Itが正しく実現し,共振によって
エネルギーが集中
• 減衰が大き過ぎる → エネルギーが集中しにく
い
その他に想定される用途
• 高層ビルにおける風による揺れの低減
• 高層ビルにおける風による揺れからの発電
• 地震による建物の揺れからの除震
これまでの技術では,多くのダンパーや
発電機を建物に設置する必要があった
建物内に設置された設備をこれらの目的に
使うことができる
小振動子に直接力が掛からないため
効率はあまり良くない可能性がある
その他に想定される用途
•
•
•
•
高層ビル群における風による揺れの低減
高層ビル群における風による揺れからの発電
地震による建物群の揺れからの除震
石油備蓄基地のタンクの揺れからの除震
ダンパー
エネルギー流れ
その他に想定される用途
• 原子力発電所の圧力容器内部の燃料棒の揺れの低減
• ボイラー等,熱交換器のパイプ群の揺れの低減
これまでの技術では,冷却水の流れによって生じる
振動を低減できず,疲労破壊の原因となっていた
管群全体の揺れを一度に
低減できる
アルゴリズムの応用
多くの波動現象に適応可能
量子アルゴリズム
交流回路
音回路
電流
振動回路
破面
光学回路
音
物性
電子
振動
光
凝固組織
流体
破壊
塑性
結晶成長
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:複数の振動子にかかる振動エネルギーを局所的に集中
させる方法
• 出願番号 :特願2008-230346
• 出願人
:国立大学法人三重大学
• 発明者
:小竹茂夫、鈴木泰之、花井宏旭、内田秀範
お問い合わせ先
国立大学法人三重大学
TEL
FAX
e-mail
知的財産統括室
059-231 - 5495
059-231 - 9743
chizai-mip@crc.mie-u.ac.jp