起炎菌シリーズ その5 B群連鎖球菌

けんさの豆知識
~起炎菌シリーズ
その⑤
2012 年 12 月発行
[40]
臨床検査部
(微生物検査室)
B 群連鎖球菌(GBS)~
今回の『けんさの豆知識』は、感染症の原因となる細菌(起炎菌)シリーズ第 5 弾、B 群連鎖球菌を特集します。
B 群連鎖球菌(Streptcoccus agalactiae)は Lancefield の B 群に属する連鎖球菌で GBS(Group B Streptcoccus)
と略されることもあります。B 群連鎖球菌はヒトの腟、腸管、膀胱、咽頭にいる菌ではありますが、
新生児の重篤な感染症、細菌性髄膜炎や敗血症の原因菌としてよく知られています。
細菌を分類する基礎的な手技としてグラム(Gram)染色があります。紫色に染まれば陽性、赤色なら陰性です。
染まった形によって球状なら球菌、こん棒状なら桿菌と大別され、色と形の組合せで大きく4つに分類されます。
グラム染色
グラム陽性球菌(連鎖状)
・球菌が鎖状(糸状)に連なってみえます。
(顕微鏡で観察)
これは一方向に細胞分裂して増殖するからです。
※strepto は「ひねる」の意味で、ひねって糸を紡ぐことに由来
菌の性状
1つの菌は、顕微鏡で拡大しないと見えませんが、多数の菌が集まって肉眼的に
見えるようになった1つ1つの集まりを集落(コロニー)と言います。
同じ B 群連鎖球菌の仲間でも集落の色・形・溶血性は様々です。
羊血液寒天培地に発育した B 群連鎖球菌の一例です。
コロニーの周りが明るくぬけて見えるのは、赤血球が壊さ
れて溶血しているからです。このように透明に溶血してい
るのをβ(ベータ)溶血といいます。
検査技師はこのコロニーを見てある程度の予測をたてて
検査を進めます。
検査
咽 頭 炎 の 原因 菌 で よく知 ら れ る A群 溶 連 菌 (Streptcoccus
pyogenes)は、Lancefield 分類のA群に属する連鎖球菌で、B
群連鎖球菌と同じβ溶血をしますが、コロニーの形態や溶血
環の大きさの違いで見分けます。
グラム陽性球菌の中でも起炎菌シリーズその②のブドウ球菌はカタラーゼ陽性、連鎖球菌は陰性であること
で区別できます。また連鎖球菌は細胞壁に細胞壁多糖体(C 多糖体)を持ち、この抗原性の違いによりさらに
20群に分類されます。これを Lancefield 分類といい、特にヒトの病原性と関係するのが A,B,C,D,F,G 群で今回
の Streptcoccus agalactiae は B 群に分類されることから B 群連鎖球菌と呼ばれます。これは市販の抗血清と反応さ
せて凝集の有無で群別することができます。
感染
B群連鎖球菌は、多くの人が持っていて腟、腸管、膀胱、咽頭に常在または一時的に存在していますが、何
の症状もありませんし問題にもなりません。しかし一方で新生児の髄膜炎や敗血症、肺炎、成人では尿路感染
症や子宮感染症、敗血症、組織感染症、肺炎などの重篤な感染症を起こすこともあります。妊婦さんのGBS
検査はこの新生児の重篤な感染症を予防するために行っています。
妊婦さんの腟培養検査でGBSが陽性だった場合は、この菌を産道感染により赤ちゃんへ移さないために
出産前にお母さんに抗菌薬を投与することもあるようです。