父名義の家屋に子が増築をした場合の注意点 平成28 年6 月6 日 No.540

平成 28 年 6 月 6 日
No.540
父名義の家屋に子が増築をした場合の注意点
マイホーム等の取得の際に、夫がすべて資金を拠出しているにもかかわらず夫婦 2 分の 1 の共有名義とした場合、妻は資金
を拠出せず不動産の 2 分の 1 を取得することから、妻は夫から不動産の 2 分の 1 相当額の経済的利益を受けたものとして、
贈与税が課されることになります。このように贈与税が課されないようにするために名義は資金を拠出した人で登記をする必
要があります。そのため、複数の人が資金を拠出した場合には、その資金を拠出した割合により持分を登記する必要がありま
す。今回はこのような名義に関係する話で「父所有の家屋に子が増築資金を拠出した場合」の注意点についてご紹介します。
1. 概要
■父の自宅に子が同居することになり、手狭となったため子が増築資金 1,000 万円を拠出する場合・・・
【増築前】
【増築後】
増築費:子負担
(1,000 万円)
既存家屋:父所有
増築部分: ?
既存家屋:父所有
(時価:3,000 万円)
既存家屋:父所有
土 地:父所有
2. 増築部分の所有者
土 地:父所有
家屋に増築をする場合には、その増築した部分が独立した 1 戸の家屋としての構造を有するものでない限り、その増築部分
の家屋は、
「不動産の附合(民法 242 条)
」により、既存の家屋の所有者が、その所有権を取得することになります。そのた
め、父名義の家屋に従として附合させる建物を父以外の者である子が増築した場合には、父がその増築した部分の家屋の所有
権を取得することになります。
3. 課税関係
増築部分については、その資金を子が拠出したことに関係なく、既存家屋の所有者である父の所有となるため、このままで
は子が拠出した増築資金は、父が子から経済的利益を受けたものとして、父への贈与税が課されることになります。
4. 贈与税課税の回避
増築資金を拠出する子が、その負担する金額に対応する家屋の持分を取得すれば、父は子から経済的利益を受けていないも
のとして、父への贈与税課税を回避することができます。そのためには、既存家屋及び増築部分の持分を、既存家屋の時価
(3,000 万円)と増築費(1,000 万円)の按分計算によって、父の持分:4 分の 3(注 1)
、子の持分:4 分の 1(注 2)の
親子共有名義になるように登記をする必要があります。
(注 1)3,000 万円〈既存家屋の時価〉×(3,000 万円〈既存家屋の時価〉+1,000 万円〈増築費〉
)
(注 2)1,000 万円〈増築費〉×(3,000 万円〈既存家屋の時価〉+1,000 万円〈増築費〉
)
【父に贈与税が課税される場合】
増築部分:父所有
既存家屋:父所有
土 地:父所有
5. 譲渡所得について
【父に贈与税が課税されない場合】
増築費:子負担
(1,000 万円)
既存家屋:父所有
(時価:3,000 万円)
増築部分
3/4 父所有
既存家屋
3/4 父所有
増築部分
1/4
子所有
既存家屋
1/4
子所有
土 地:父所有
上記 4 のように親子共有名義にした場合、父が既存家屋の 4 分の 1 を子へ譲渡し、その対価として増築部分の 4 分の 3
を取得したという対価関係が成り立つことになります。これにより、父は既存家屋の 4 分の 1 を譲渡していることから、譲
渡所得の計算をする必要があります。
6. 土地の使用について
上記 4 の親子共有名義による登記完了後は、親の土地に子名義の家屋が存在することになりますが、この土地を無償(使
用貸借)で利用している場合、子への借地権に係る贈与税の認定課税は生じません。この場合、父の相続税に係る土地の評
価では、使用貸借に基づくものであることから、自用地として評価することになります。
(担当:吉留 佑)