はじめに 大阪大学大学院医学系研究科 生体システム薬理学 教授 金井 好克 トランスポーター(輸送体)は、その分子実体が明らかにされる以前より、利 尿薬、抗うつ薬等臨床的に汎用される薬物の標的として重要な位置を占めてきた。 同時に、薬物動態の支配要因として、薬物の吸収、分布、代謝、排泄における役 割について膨大なデータが蓄積されてきている。今や、ゲノムワイドにトランス ポーターファミリーの全体像が把握され、個々の分子について、構造、機能、病 態関連性の解析が進行し、新たな観点からの創薬が試みられている。特に近年の トランスポーターを分子標的とした糖尿病治療薬の完成により、トランスポータ ーの創薬標的としての意義が再認識された。 本セミナーでは、今後の分子標的創薬の要となるトランスポーターの構造的理 解と標的探索に焦点を当て、最近の構造科学の目覚ましい進展について紹介する とともに、新たな技術を駆使して病態解析から分子標的を探索する研究とあわせ て、トランスポーター創薬の方向性と今後克服すべき課題について議論したい。
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