北海道内における アスファルト再生骨材の現状について

平成27年度
北海道内における
アスファルト再生骨材の現状について
国立研究開発法人
国立研究開発法人
国立研究開発法人
土木研究所
土木研究所
土木研究所
寒地土木研究所
寒地土木研究所
寒地土木研究所
寒地道路保全チーム
寒地道路保全チーム
寒地道路保全チーム
○上野
安倍
木村
千草
隆二
孝司
舗装発生材を繰り返しリサイクルすることにより、これまでよりも劣化の進んだ再生骨材が
発生することが予測される。また、近年、表層に改質アスファルトを用いた舗装が多く利用さ
れており、再生骨材の性状が多様化している。
本文では、積雪寒冷地に適した再生骨材の品質規格値および配合条件について検討を行うた
め、北海道内の再生アスファルトプラントの現状をアンケートにより調査した結果を報告する。
キーワード:舗装、アスファルト再生骨材、再生アスファルトプラント
さらに、近年は表層にポリマー改質アスファルトを用
いた舗装が多く利用されており、この切削材が混入する
ことにより再生骨材の性状が多様化している。これに伴
我が国における舗装発生材の再利用は、本州等で1980
い平成22年に舗装再生便覧が改訂され、これまでの旧ア
年代から本格的に行われている。北海道の国道では、
1998年度から表層混合物にアスファルト再生骨材(以下、 スファルトの針入度の規格値に代わる方法として、圧裂
再生骨材)が利用され、2回目以降のリサイクルに入り、 試験を用いた圧裂係数による品質管理手法が追加された。
本文では、再生骨材の性状が舗装品質に与える影響を
劣化の進んだ再生骨材の発生が予想される。
評価するため実施した室内試験結果と、再生骨材の品質
再生骨材の旧アスファルトの針入度の規格値は
20(1/10mm)以上1)とされているが、この規格値は本州で
の変動や、舗装発生材の多様化等の実態を把握すること
を目的とした再生アスファルトプラントに対するアンケ
使用されている針入度60-80のストレートアスファルト
ート調査の結果を報告するものである。
(以下、ストアス80-100)等を用いた舗装より発生した
再生骨材を使用した試験舗装の結果から決定されたもの
である2)。しかし、積雪寒冷地である北海道では、低温
2. 再生骨材の性状の変化による舗装品質への影響
時の横断ひび割れの抑制を考慮し針入度80-100のストア
(1) 繰り返し利用によるアスファルト性状への影響
ス(以下、ストアス80-100)を使用している。
また、再生アスファルトは、新規の材料と同等の品質
ストアス80-100を使用している北海道において、スト
が求められるため、北海道では針入度90(1/10mm)を目標
アス60-80を用いた舗装より発生した再生骨材を使用し
に3)、劣化により硬化したアスファルトに軟化剤である
た試験舗装の結果から決定された現在の規格値の下、繰
再生添加剤を加え針入度を回復させている。これに対し、 り返し利用を行った場合のアスファルト性状への影響を
確認するため評価試験を実施した。
本州等の一般地域では針入度50(1/10mm)を目標に劣化し
試験に用いた試料は、下限規格値である針入度20(1/
たアスファルトの針入度を回復させており、本州の積雪
10mm)までの劣化と、再生添加剤を用いた針入度調整法
寒冷地では針入度70(1/10mm)を目標に針入度を回復させ
による再生混合率50%の条件で再生を繰り返し行ったア
ている1)。
スファルトである。なお、再生にあたっては、ストアス
下限規格値である針入度20(1/10mm)まで劣化したアス
80-100は前述したとおり、針入度90(1/10mm)を目標に再
ファルトの針入度を前記の条件で回復させて繰り返し劣
化、再生を行った場合、劣化および再生に伴う針入度の
生添加剤を加え針入度を回復させ、比較のために実施し
変動幅は北海道では70(1/10mm)となるのに対し、本州等
たストアス60-80は針入度70(1/10mm)を目標に再生添加剤
では30(1/10mm)あるいは50(1/10mm)となる。このことか
を加え針入度を調整している。また、劣化にあたっては、
ら、北海道では本州等と比較してアスファルトの針入度
アスファルトプラントでの熱劣化を模擬したRTFOT後、
の変動幅が大きくなり、舗装材料に蓄積する劣化の影響、 供用時の劣化を模擬したPAVを行い、PAVの試験時間を
および再生添加剤の性質の影響が大きく現れ、アスファ
調整することで針入度を20(1/10mm)に調整している。
ここでは、ひび割れの発生と相関の高い軟化点試験と、
ルト性状に大きな変動が生じることが予測される。
1. はじめに
Chigusa Ueno, Ryuji Abe, Takashi Kimura
Chigusa Ueno, Ryuji Abe, Takashi Kimura
90
ストアス80-100
ストアス60-80
軟化点(℃)
80
70
60
50
40
新材
1サイクル
再生
2サイクル 再々生 3サイクル
図-1 繰り返し再生における軟化点の推移
アスファルテン レジン分 芳香族 飽和分
100%
15.9
13.5
80%
60%
33.9
47.9
17.8
20.3
39.5
27.8
40%
20%
0%
20.6
18.7
26.3
38.3
25.7
28.4
32.7
28.2
24.8
9.6
15.2
10.6
新材
1サイクル
再生
24.6
18.9
20.9
12.2
2サイクル 再々生 3サイクル
図-2 繰り返し再生における組成の推移(60-80)
アスファルテン レジン分 芳香族 飽和分
100%
23.3
20.2
80%
60%
20%
0%
30.1
17.1
37.3
36.1
30.7
44.5
24.4
30.2
16.5
23.6
20.5
14.6
16.3
21.9
11.2
新材
13.3
1サイクル
再生
27.3
25.8
39.4
40%
20.2
14.7
27.6
2サイクル 再々生 3サイクル
動的安定度 DS(回/mm)
図-3 繰り返し再生における組成の推移(80-100)
1000
800
556
600
400
312
317
343
20%
50%
340
200
0
新材
排水性舗装切削材
20%
50%
耐流動対策舗装切削材
図-4 改質切削材の塑性変形抵抗性への影響
1000
ひずみ(μm)
アスファルトの組成分析試験を用いて評価を行った。
a)軟化点
図-1に軟化点の推移を示す。ストアス80-100、ストア
ス60-80ともにサイクルを繰り返す毎に軟化点が上昇す
る傾向が見られた。特に、ストアス80-100では軟化点の
上昇幅が大きく、2サイクル以降では80℃を超える結果
となり、ストアス60-80よりも軟化点の上昇傾向が大き
く現れた。これは,針入度の低下幅がストアス60-80よ
りもストアス80-100のほうが20(1/10mm)程度大きいこと
に起因しているものと考えられる。
b)組成成分
組成成分の推移を図-2に示す。一般に、劣化によりア
スファルテン、レジン分が増加し、芳香族、飽和分が減
少し、再生により芳香族、飽和分を主とする添加剤を加
えることにより、組成成分の構成割合が回復することが
報告されている4)。
今回の試験結果では、ストアス80-100、ストアス60-80
ともに、飽和分が主成分である再生添加剤の組成の影響
を受けて繰り返し再生することにより飽和分の割合が増
加する傾向が見られた。特にストアス80-100では新材で
23.3%であった飽和分が、再々生では37.3%となっており、
再生を繰り返すことにより飽和分の割合が大きく増加し
ている。
また、ストアス60-80(図-2)、ストアス80-100(図-3)
ともに劣化を繰り返すことによりアスファルテンの蓄積
傾向が見られた。特に、ストアス80-100はストアス60-80
と比較してアスファルテンの蓄積傾向が顕著に見られる。
以上から、現在の針入度の規格値を用いると、針入度
規格の高いストアス80-100は、針入度規格の低いストア
ス60-80と比べて、劣化の前後、および再生の前後で組
成割合の変動が大きく、繰り返し再生を行うほど新材と
同程度の組成割合に回復することが困難となり、品質が
不安定となると考えられる。
(2) 性状の多様化による影響
ポリマー改質アスファルトを使用した舗装切削剤(以
下、改質切削材)が、再生アスファルト混合物の性状に
及ぼす影響を把握するため、塑性変形抵抗性、および疲
労抵抗性を評価した。
試験に用いた改質切削材は排水性舗装切削材(ポリマ
ー改質アスファルトH型使用)と、耐流動対策舗装切削
材(ポリマー改質アスファルトⅡ型使用)であり、いず
れも、針入度の下限規格値である針入度20(1/10mm)まで、
85℃の乾燥機内で熱劣化させた試料を用いた。
a)動的安定度
ホイールトラッキング試験より、塑性変形抵抗性を確
認した。試験結果を図-4 に示す。
排水性、耐流動対策舗装切削材を用いた再生混合物は、
新材と同程度の動的安定度を示しており、新材と同等程
度以上の塑性変形抵抗性を有していると考えられる。
b)疲労抵抗性
10℃の試験条件で繰り返し曲げ試験を行い、混合物の
疲労に対する抵抗性を検討した。試験結果を図-5に示す。
500
300
新材
耐流動20%
100
1.0E+03
排水性20%
耐流動50%
排水性50%
1.0E+04
1.0E+05
破壊点回数(回)
図-5 改質切削材の疲労抵抗性への影響
1.0E+06
3. アンケート調査概要
(1) 調査対象再生アスファルトプラント
平成26年度に北海道舗装事業協会・北海道アスファル
ト合材協会を通し、北海道内の約半数の再生アスファル
トプラントに対しアンケートを配布し、調査を行った。
また、同様のアンケートを平成19年度に実施している。
各年度のアンケート対象プラント数を表-1に示す。
なお、地区分けは平成26年度再生アスファルトプラン
ト現状調書を参考にした。また、札幌市近郊とは、札幌
市、石狩市、北広島市、江別市としている。
(2) 調査項目・目的
アンケート調査項目を表-2に示す。再生骨材の品質に
関する質問と、改質切削材に関する質問、および再生ア
スファルトプラントの試験設備に関する質問を行った。
a)再生骨材の品質について
舗装発生材の表層へのリサイクル利用が開始されてか
ら 15 年以上が経過し、2 回目以降のリサイクルに入り、
劣化の進んだ再生骨材が発生している可能性がある。
このため、現在再生アスファルトプラントで使用され
ている再生骨材の品質を調査するため、旧アスファルト
の針入度について調査を行った。
また、各地区1プラント以上より、品質管理データ、
および再生骨材を受領した。また、当研究所において受
領した再生骨材からアスファルトを回収し、針入度試験
を実施し、旧アスファルトの針入度について、アンケー
ト調査結果と比較した。
b)改質切削材について
改質切削材は、ポリマー改質アスファルトを含有して
いるため、再生アスファルト混合物製造時の加熱温度に
留意が必要となる。また、再生アスファルトプラントの
ドライヤ内に付着し、混合物製造時の支障となった例も
確認されている。
Chigusa Ueno, Ryuji Abe, Takashi Kimura
このため、再生アスファルトプラントでの管理、利用
実態を確認するため、調査を行った。
c)試験設備について
平成22年に圧裂試験を用いた圧裂係数による品質管理
手法が舗装再生便覧に追加されたが、新たな品質管理手
法の実施の実態と、試験設備の保有状況を確認するため、
また、今後の配備計画を確認するため調査を行った。
4. 調査結果
(1) 再生骨材の品質について
a)平均針入度
再生アスファルトプラントより平成 26 年度、および
19 年度に使用された再生骨材の旧アスファルトの針入
度の平均値を調査した。結果を図-6 に示す。選択項目
は、図中の階級分けに示すとおりであり、針入度
5(1/10mm)の幅を持っている。
平均値においては、平成 19 年度も平成 26 年度も同様
の分布を示し、最頻値は 30(1/10mm)以上 35(1/10mm)未満
であり、針入度の低下傾向は見られなかった。
表-1 アンケート対象再生アスファルトプラント数
【H19】地区別
プラント数
札幌・小樽
札幌市近郊
近郊外
【H19】調査
プラント数
【H26】地区別
プラント数
10
34
【H26】調査
プラント数
8
24
11
9
函館
15
5
9
室蘭
16
11
13
5
旭川
15
8
10
5
留萌・稚内
17
7
11
7
網走
15
9
12
5
帯広
18
7
11
4
釧路
19
9
16
6
合計
149
77
106
54
5
表-2 アンケート調査項目
項目
詳細項目
平均針入度
再生骨材の品質について
最低針入度
規格値を下回る材料の確認
受入状況
改質切削材の受入について
管理状況
利用状況
圧裂試験の実施状況
再生アスファルトプラントの試験設備について 圧裂試験を実施できる設備の有無
試験設備の配備予定
80%
頻度(%)
排水性、耐流動対策舗装切削材を用いた再生混合物は
ともに、切削材の混合率が高くなるに伴い、同じひずみ
レベルの新材の値よりも破壊点回数が大きくなる傾向が
見られた。
従前の研究5)から、改質剤を含む耐流動対策舗装用混
合物は、一般的な混合物と比較して、同じひずみレベル
で大きな破壊点回数となること明らかになっている。こ
のことから、上記の傾向は、切削材に含まれる改質剤が
影響したものと考えられる。
以上の結果より、改質切削材においては、下限規格値
である針入度20(1/10mm)まで劣化した条件であっても、
新材と同程度以上の性状を有することが考えれる。
改質切削材は、針入度規格の低いポリマー改質アスフ
ァルトの影響により、ストレートアスファルトを用いた
舗装発生材よりも針入度が低くなりやすく、従前までの
針入度規格値での管理には限界があり、改質切削材の性
状を適正に評価し、有効に利用するためには、針入度以
外の品質管理手法の活用が有効と考えられる。
70%
H19
60%
H26
50%
H19 n=77
H26 n=54
40%
30%
20%
10%
0%
20未満
20~25
25~30
30~35
35~40
針入度(1/10mm)
図-6 針入度(アンケート平均値)
40以上
頻度(%)
80%
70%
H19
60%
H26
50%
40%
H19 n=77
H26 n=54
30%
20%
10%
0%
20未満
25~30
30~
図-7 針入度(アンケート最低値)
頻度(%)
80%
70%
H19
60%
H26
50%
40%
H19 n=11
H26 n=16
30%
20%
10%
0%
20未満
20~25
25~30
30~35
35~40
40以上
針入度(1/10mm)
図-8 針入度(品質管理データ平均値)
頻度(%)
80%
70%
H19
60%
H26
50%
40%
H19 n=17
H26 n=13
30%
20%
10%
0%
20未満
20~25
25~30
30~35
35~40
40以上
針入度(1/10mm)
図-9 針入度(回収した旧アスファルトの試験値)
70%
アンケート結果
品管管理データ
試験結果
60%
頻度(%)
50%
40%
30%
20%
10%
0%
20未満
20~25
25~30
30~35
35~40
40以上
針入度(1/10mm)
図-10 針入度の調査結果の比較(平成19年度)
70%
アンケート結果
品管管理データ
試験結果
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
20未満
20~25
25~30
30~35
35~40
40以上
針入度(1/10mm)
図-11
Chigusa Ueno, Ryuji Abe, Takashi Kimura
20~25
針入度(1/10mm)
頻度(%)
b)最低針入度
平均値同様に、再生骨材の旧アスファルトの針入度の
最低値を調査した。結果を図-7 に示す。
最低値においては、平成 19 年度から平成 26 年度にか
けて、30(1/10mm)以上の回答の割合が 7 年の経過で 38%
から 15%まで低下していおり、針入度の低下傾向が見
られた。
な お 、 最 頻 値 は 両 年 度 と も 、 25(1/10mm) 以 上
30(1/10mm)未満であった。
c) 品質管理データにおける針入度
再生アスファルトプラントより収集した品質管理デー
タにおけるの旧アスファルトの針入度の平均値を図-8
に示す。
平成 19 年度と平成 26 年度は同様の分布を示し、両年
度とも、針入度 25(1/10mm)未満および針入度 40(1/10mm)
以上の結果は見られなかった。
d)採取した再生骨材における針入度
再生アスファルトプラントより収集した再生骨材を当
研究所にて、旧アスファルトを回収し、針入度試験を行
った。結果を図-9に示す。
平成19年度の最頻値は25(1/10mm)以上30(1/10mm)未
満であったが、平成26年度の最頻値は20(1/10mm)以上
25(1/10mm) 未 満 と な り 、 平 成 26 年 度 は 針 入 度
20(1/10mm)未満が20%以上確認され、旧アスファルト
の針入度の低下傾向が見られた。
e)各データの比較
平成19年度、および平成26年度のアンケート調査にお
ける針入度の平均値、品質管理データにおける針入度の
平均値、採取試料の試験結果による針入度を比較した。
図-10に示す平成19年度の結果においてはアンケート
結果と品質管理データはほぼ同様の傾向を示しており、
アンケート調査結果が実態を反映していたと判断できる。
一方、試験結果は、針入度が5(1/10mm)低い側に分布
し、アンケート調査結果との間に若干の差異が見られた。
また、図-11に示す平成26年度の結果においては、ア
ンケート結果と品質管理データはほぼ同様の傾向を示し
た が 、 ア ン ケ ー ト 結 果 の 最 頻 値 は 30(1/10mm) 以 上
35(1/10mm) 未 満 で あ る が 、 試 験 結 果 の 最 頻 値 は
20(1/10mm)以上25(1/10mm)未満と、針入度が10(1/10mm)低
い側に分布する結果となった。
アンケート調査の結果、および採取した再生骨材にお
ける針入度の結果から、再生骨材の旧アスファルトの針
入度は、経年的に低下してきているものと考えられる。
また、現在の旧アスファルトの規格値である針入度
20(1/10mm)を下回る材料が、数プラントで確認されてい
ることや、針入度25(1/10mm)未満の材料が多く確認され
れいることから、今後、針入度のい再生骨材が舗装材料
に用いられることにより、再生アスファルト舗装の品質
に影響が現れてくることが考えられる。
針入度の調査結果の比較(平成26年度)
(2) 改質切削材について
a)受け入れ状況
改質切削材の受け入れ状況を図-12 に示す。受け入れ
を行っている再生アスファルトプラントは平成 19 年度
から平成 26 年度にかけて 10%増加している。
b)管理状況
改質切削材の管理状況を図-13 に示す。通常の舗装発
生材と改質切削材を区別し管理している再生アスファル
トプラントは両年度ともに 7 割程度である。
c)利用状況
改質切削材の管理状況を図-14に示す。なお、図中の
Aは「改質切削材を通常の発生材と区別することなく一
括で保管し、これを再生アスファルト混合物用骨材とし
て用いる。」、Bは「改質切削材を通常の発生材と区別
して保管し、粒度やアスファルト量を調整するため一定
の割合でこれらを混合し、再生アスファルト混合物用骨
材として用いる。」、Cは「路盤材料としての利用」を
示している。
平成19年度はCの路盤材としての利用が26件と最多で
あったが、平成26年度においては、CよりもA 、Bの回
答が多く、再生アスファルト混合物用骨材としての利用
が進んでいることが分かる。
d)利用時の混合率
改質切削材を通常の発生材と区別して保管し、一定の
割合でこれらを混合し、再生アスファルト混合物用骨材
として用いると回答した再生アスファルトプラントに対
し、混合率について調査した。結果を表-3に示す。10~
20%の混合率としている再生アスファルトプラントが半
数を占め、改質切削材を用いた場合の影響を極力小さく
抑える配慮がされている。
(3) 再生アスファルトプラントの試験設備について
a)圧裂試験の実施状況
近年、ポリマー改質アスファルトを用いた舗装が多く
利用されてきたことにより、これらの発生材を評価する
手法として、圧裂試験を用いた圧裂係数による品質管理
手法が舗装再生便覧に追加されたことに伴い、実際に圧
裂試験による品質管理を実施している再生アスファルト
プラントの有無を確認した。結果を図-15 に示す。
圧裂試験による品質管理を実施した経験のある再生ア
スファルトプラントは 3 プラントに止まり、全体の 6%
と低い割合であった。
b)圧裂試験を実施できる設備の有無
図-16 に圧裂試験の実施できる設備が整っているかを
確認した結果を示す。
圧裂試験が実施できる再生アスファルトプラントは、
試験を実施したことのある再生アスファルトプラントよ
り 1 プラント増えたが、全体の 7%と低い割合であった。
c)試験設備の配備予定
圧裂試験を実施するためには、通常の配合設計に用い
るマーシャル安定度試験機の他に、①供試体を20±1℃に
Chigusa Ueno, Ryuji Abe, Takashi Kimura
H19
H26
不明
9%
不明
19%
(10プラント)
(5プラント)
受け入
れあり
43%
受け入
れなし
48%
受け入
れあり
53%
(28プラント)
受け入
れなし
28%
(15プラント)
(24プラント)
(27プラント)
図-12 改質切削材の受け入れ状況
H19
H26
不明
8%
(2プラント)
区別しない
21%
(5プラント)
区別しない
31%
(9プラント)
区別する
69%
(20プラント)
区別する
71%
(17プラント)
図-13 改質切削材の管理状況
6
その他
H19
その他
26
C
C
18
B
13
A
0
5
10
15
20
プラント数
25
16
B
18
A
18
0
30
H26
3
5
10
15
20
プラント数
図-14 改質切削材の利用状況
表-3 改質切削材の混合率
混合率
プラント数
微量
2
5%
1
10%
4
20%
5
25%
1
30%
1
33%
1
50%以下
3
はい
6%
(3プラント)
いいえ
94%
(51プラント)
図-15 実施状況
25
30
養生可能な恒温槽、②29KN以上で載荷可能な載荷装置、
③100N単位で測定が可能な載荷荷重測定用計器、④最
小目盛が1/100mmで変位量を自動記録できる変位測定用
計器が必要となる。そこで、圧裂試験用の設備を保有し
ていない再生アスファルトプラントに対し、上記の4設
備の未配備状況について確認した。結果を図-17に示す。
載荷荷重測定用機器、および変位測定機器は50プラン
ト中がほぼ全ての再生アスファルトプラントにおいて保
有していない状況であった。また、載荷装置で7割、恒
温槽で3割程度が保有していない状況であった。
d)配備予定
試験設備が未配備の再生アスファルトプラントに対し、
今後の配備予定を調査した。結果を図-18に示す。
「今後購入・改造を予定している」、「自社の試験所
にて実施する」、「検討中」と回答した再生アスファル
トプラントが1割程度ずつであり、6割以上は購入・改造
の予定はないと回答した。購入の予定がないと回答した
再生アスファルトプラントに理由を聞き取ったところ、
「低品質の再生骨材が発生していない」のほか、「試験
室に配備できるスペースがない」、「コスト面で障害が
ある」との回答が多く見られた。
また、積雪寒冷地(北海道用)のストアス80-100を用
いた再生混合物に対する圧裂係数と針入度の関係が舗装
再生便覧に明記されておらず、圧裂係数を用いた配合設
計が実施できない状況であることも、圧裂係数による品
質管理が進んでいない要因であるとの意見をいただいた。
5. まとめ
はい
7%
(4プラント)
いいえ
93%
(50プラント)
図-16
施設の有無
47
変位測定用計器
45
載荷荷重測定用計器
33
載荷装置
15
恒温槽
0
10
Chigusa Ueno, Ryuji Abe, Takashi Kimura
30
40
50
図-17 試験装置の未配備状況
5
検討中
6
自社試験施設にて実施
31
購入・改造予定無し
いずれ、購入・改造予
定あり
7
0
近い将来購入予定あり
0
本検討で得られた考察を以下に示す。
(1) ストアス80-100を用いた室内試験の結果、現在の再
生骨材の旧アスファルトの針入度規格値20(1/10mm)で、
繰り返しリサイクルを行った場合、アスファルトの品
質が不安定になることが確認された。
(2) 室内試験の結果、針入度20(1/10mm)まで劣化した改
質切削材を混合した再生アスファルト混合物は、新材
と同等以上の塑性変形抵抗性、疲労抵抗性を有するこ
とが確認された。
(3) アンケートによる再生骨材の針入度の最低値調査結
果、および再生アスファルトプラントより採取した再
生骨材の針入度試験結果より、平成19年度から平成
26年度にかけて針入度が低下している傾向が確認さ
れた。
(4) アンケート結果より、改質切削材を受け入れたプラ
ント数が 増加し、再生アスファルト混合物への利用
も増加していることが確認された。
(5) アンケート結果より、圧裂係数による再生骨材の品
質管理の実績は少なく、試験設備が未配備の再生アス
ファルトプラントが多数を占めることがわかった。
20
10
20
30
40
図-18 配備予定
6. 今後の課題
再生骨材の旧アスファルトの針入度が低下傾向にあり、
また、改質切削材の再生アスファルト混合物への利用が
増加していることから、舗装寿命への影響を考慮した再
生骨材の規格値の検討が急務と考える。再生骨材の規格
値および再生混合物の配合設計における課題を解決する
ため検討を進めていく所存である。
参考文献
1) 社団法人日本道路協会:舗装再生便覧,2010.
2) 安崎 裕,片倉弘美,高木信幸:再生加熱アスファ
ルト混合物の供用性評価,土木技術資料,31-9 pp48-53,
1989.
3) 北海道開発局:平成 20 年度版北海道開発局特記仕様
書,p 舗装-舗装-10,2008.
4) 谷口豊明,伊藤達也:アスファルトの劣化,ASPHLT,
Vol.33 No.164,pp67-82,1990.
5) 丸山記美雄,田高淳,笠原篤:改質II型混合物の曲げ
疲労特性,土木学会第61回年次学術講演会,2007.9