さまざまなシーンで 活躍する ハンドヘルド計測器

NEWS
214/16
さまざまなシーンで
活躍する
ハンドヘルド計測器
車載や野外環境では、バッテリ電源のハンドヘルド
計 測 器 が 必 要 で す 。今 回リリースされた 2 種 類 の
ハンドヘルド計測器は、これまでの常識を超えた性能
をご提供します。
無線技術
IOT(モノのインターネット)への
道を開く無線通信
汎用測定器
レーダー・システム用ハイエンド
信号源の位相雑音測定
無線モニタリング/無線探知
ソフトウェアによる無線モニタリング・
システムの監視
NEWS アプリケーション
iPad、アンドロイド・タブレット、およびアマゾン kindle といったデバ
イスに使われる R&S®News アプリケーションは、それぞれのプロバイ
ダのアプリケーション・ストアから無料でダウンロードすることができ
ます。アプリケーションの言語は、内部で英語、ドイツ語、フランス語、
またはスペイン語へ設定することができます。
最新文書の印刷版の他に、最近の 3 年間に刊行されたすべての記事へ秒
単位で、しかもトピック毎に分類された状態でアクセスすることが可能
です。コンテンツは多数のビデオを含みます。グラフィカル・サインは、
アプリケーションを最後にオープンしてからどの新しい記事が表示され
たかをマークし、新しい機能の選択的ガイドを提供します。
R&S NEWS またはローデ・シュワルツというキーワードを使って、個々
のアプリケーション・ストアに用意されているアプリケーションを見つ
けることができます。
NEWS
発行元:
Rohde & Schwarz GmbH&Co. KG
Mühldorfstrasse 15・81671 München
www.rohde-schwarz.com
地域別連絡先
■■ ヨーロッパ、アフリカ、中東 | +49 89 4129 12345
[email protected]
■■ 北米 | 1 888 TEST RSA (1 888 837 87 72)
[email protected]
■■ 中南米 | +1 410 910 79 88
[email protected]
■■ アジア太平洋 | +65 65 13 04 88
[email protected]
■■ 中国 | +86 800 810 82 28/+86 400 650 58 96
[email protected]
編集者へのメール宛先 : [email protected]
編集長:Volker Bach, Rohde & Schwarz
編集およびレイアウト:Redaktion Drexl & Knobloch GmbH(ドイツ)
英訳:Dept. 5MS2
写真撮影:Rohde & Schwarz
印刷国:ドイツ
ボリューム:56
発行部数(ドイツ語版、英語版、フランス語版、スペイン語版、日本語版)
:
約 60,000 部
発行回数:年に約 3 回
ISSN 0028-9108
最寄りのローデ・シュワルツ販売店を通して無料で提供します。
出典が記載される場合には抜粋の転載も許可されます。コピーをローデ・
シュワルツ(ミュンヘン)までお送り下さい。
PD 3606.9633.72
R&S® は Rohde & Schwarz GmbH&Co. KG の登録商標です。商標名は所有者のト
レードマークです。CDMA2000® は Telecommunications Industry Association(TIAUSA)の登録商標です。Bluetooth® のワードマークとロゴは Bluetooth SIG, Inc. が
所有しており、ローデ・シュワルツは、ライセンスに基づいてこれらを使用してい
ます。他のすべての商標はそれらの個々の所有者の財産です。
表紙について
すべての DUT をテスト・ベンチで評価できる訳ではありません。
産業用システムや固定式通信装置の設置およびサービス作業の
際には、テスト担当者が DUT のある場所へ出向かなければなり
ません。この場合は、作業のあらゆる場面での要求を満たし、信
頼できる結果を得ることのできるモバイル型の計測器が必要に
なります。これらの機器は文字通り無駄が無く、小型で使いやす
いものであると同時に、わずかな手順で測定結果を得られるもの
でなければなりません。さらに、ユーザを満足させるようないく
つかの高度な機能を余分に備えていれば申し分ありません。この
ような計測器は非常に数が少なく、見かけることも稀ですが、必
ずしも最先端技術を駆使したものばかりが求められている訳で
はありません。高品質の電子計測器の開発にはコストがかかりま
す。特に、通常はスペースに余裕のあるデスクトップ・キャビネッ
ト型の機器が持つ機能を、ハンドヘルド機器に組み込もうとすれ
ばなおさらです。この目標を実現するには高度な集積化が必要と
されますが、これは、かなり以前にローデ・シュワルツがすでに
確立している分野です。2 種類の新しい計測器ファミリは、ロー
デ・シュワルツの優れた技術を示す良い例です。どちらも新たな
フォーム・ファクタの革新的な製品であり、あらゆるタイプのハ
ンドヘルド・デバイスに応用できる柔軟な設計手法が用いられ
ています。これら新製品のひとつである R&S®Scope Rider オシ
ロスコープは、ラボレベルの品質と、ロジック・アナライザや測
定カテゴリ CAT IV といった同クラスの製品をはるかにしのぐ機
能を備えており、低電圧測定を何の制約もなく行うことができま
す。その姉妹機である R&S®Spectrum Rider スペクトラム・ア
ナライザには、屋内および屋外アプリケーション用の最先端技術
が採用されており、長いバッテリ寿命と測定ウィザードなどの補
助的操作機能がその技術を支えています。このような技術的利
点に加えて、これらのモデルには、人間工学に基づく操作性と設
計を特に重視するというローデ・シュワルツの姿勢が反映されて
います。これは作業を迅速かつ容易に行うという範囲を超え、楽
しむという次元にまで達しています。このことを念頭に、今回は、
使うことに喜びすら覚えるような 2 種類の計測器を紹介します。
詳細については 22 ページと 32 ページの記事をご覧ください。
概要
NEWS
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無線技術
背景
ビッグ・データとモノのインターネット
- モバイル通信産業の課題への対応 .... 8
信号の生成と解析
R&S SMW200A ベクトル信号発生器、
R&S®FSW シグナル・スペクトラム・
アナライザ
チャネル・サウンディング -
将来の無線通信用周波数を求めて....... 14
®
汎用測定器
オシロスコープ
®
R&S Scope Rider
ハンドヘルド分野の
ニュー・プレーヤー ............................ 22
®
R&S RTM2000
時間ドメインと周波数ドメインにおける
ワイヤレス充電システムの解析........... 28
信号の生成と解析
R&S®Spectrum Rider
現場とラボの両方に対応した装備 ....... 32
R&S®FSWP 位相雑音アナライザ / VCO
テスタ
レーダー・システム用ハイエンド信号源
の位相雑音測定 ................................... 37
テスタ
R&S®CMW500 ワイドバンド無線機テスタ
IP ベース音声通信サービスのテスト ....18
ビッグ・データとモノの
インターネット - モバイル通信産業の
ラボ品質のハンドヘルド機器:新型オシロスコープ(写真)と新型スペクトラム・アナライザは、
課題(8 ページ)
その性能と耐久性により現場で威力を発揮します(22 ページと 32 ページ)
。
4
フォーカス
セキュア通信
Radiometer Physics GmbH (RPG)
ヨーロッパにおけるミリ波および
サブミリ波技術の有力企業 ................. 42
参考資料
テストと測定
カスタマ・サポート
国の文化資産を守る信頼性の高い
「ちょっとお尋ねしたいことが …」
デジタル・バックボーン ..................... 52
カスタマ・サポートの 20 年................ 59
無線モニタリング/無線探知
放送およびメディア
サービス
システム
その他
発行人 ................................................... 2
R&S®VTx ビデオ・テスタ・ファミリ
スクリーン上の色の爆発 -
HDMI 2.0a による
HDR ビデオの伝送 .............................. 48
R&S®RA-CHM システム状態監視
ソフトウェア
無線モニタリング・システムの
自動監視.............................................. 55
ローデ・シュワルツの子会社 RPG は、その測定
ドイツ国立図書館は、ローデ・シュワルツ SIT の
新しいソフトウェア製品が、複合無線モニタリン
機器によって宇宙のかなたを探っています(42
暗号化ソリューションを使用してユーザのデータ
グ・システム、小型無人システム、およびリモート・
ページ)
。
を保護しています(52 ページ)
。
センサを監視します(55 ページ)
。
NEWS コンパクト................................. 6
© ESA /AOES
ニュース.............................................. 60
NEWS 214/16
5
NEWS コンパクト
携帯電話生産テストのパラダイム・シフト
従来と全く異なる通信テスタです。19”
ボックス、可動部品、ノイズ、埃のたま
る開口部、すぐに陳腐化してしまうマザー
ボードはありません。その代わり、複数
のポートを持つ洗練されたフラット・ハウ
ジングに、必要なすべての RF の計測技術
を組み込みました。こうした変更に対し
て、いくつかの疑問が生じるかもしれま
せんが(なぜ?どのように動作するのか?
機能が低下するのではないか?)
、あくま
で、生産テストに関する要求を妥協するこ
となく技術的に信頼できる設計に反映させ
た結果です。これまで数千台が販売され
た R&S®CMW500 は、現時点における生
産アプリケーションにおいてマーケット・
リーダーとしての地位を築いていますが、
新しい R&S®CMW100 は、最終的にこれ
に替わる製品です。この新製品は、実際
には R&S®CMW500 ほど急進的な製品で
はありません。旧製品との機能的およびソ
フトウェア的な互換性が保たれているので
(シグナリングなしでのテスト)
、CMW100
への移行はシームレスに行うことができ
ます。新しいアプローチは、2 つの基本
的前提に基づいています。一つ目は、長
い RF ケーブルはエラー源になり得るとい
うことです。標準的なラックマウント製品
では 3 ~ 5m のケーブルを使用しますが、
R&S®CMW100 はテスト装置の位置でその
まま使用できるので、必要なケーブル長は
わずか数 cm ですみます。二つ目は、コン
ピュータは性能に大きく影響するものであ
るにも関わらず、計測機器自体よりもはる
かに早く陳腐化してしまうことです。
したがって、テスト・ソフトウェアは標準
的な量産 PC 上で実行されます。最大 8 台
の DUT を並列でテストすることができ、
しかも従来のものよりもはるかに高速な試
験を行えます。
モバイル・ネットワーク・ベンチマーキングを完了
モバイル・ネットワークの品質は、テスト
車両と大量のテスト用スマートフォンを使
用して評価されます。従来、これらのス
マートフォンは車両内部に取り付けられ、
そのアンテナ接点は RF ケーブルでルー
フ・アンテナに接続されていました。しか
し、今日のスマートフォンには、マルチス
タンダード・デバイスの要件を満たした
り、MIMO などのモデム技術に対応した
りするために、最大 5 種類のセルラー・ア
ンテナが組み込まれています。これらの
条件をルーフ・アンテナでシミュレートす
ることは、もはや現実的ではありません。
12 台以上のスマートフォンを同時に使用
してドライブ・テストを行う場合は、特に
その傾向が顕著になります。ローデ・シュ
ワ ル ツ の 子 会 社 で あ る SwissQual 社 が
Test device Containment Modules(TCM、
特 許申請 中 )を 開 発した 理 由はここに
あります。TCM は、スマートフォン(1 台)
用のコンパクトな人工気象チャンバです。
これらのモジュールはインテリジェント機
能を備えた制御システムを使用して、熱的
に均一な安定したテスト条件を実現し、ス
マートフォンに何らかの変更を加えること
なく、そのまま使用することができます。
RF 技術に関して言えば、TCM は完全に透
過的なシステムです。また、減衰値を変更
できるので、複数のエンド・ユーザ・シナ
リオ(たとえば手に持って耳に当てた状態)
を現実に即した形でシミュレートすること
ができます。
TCM は気象条件を制御できるので、ほぼ
屋外と同じ状態(たとえば、最大 16 個
のチャンバを収納できる特別設計の車両
用ルーフ・ボックス内)で使用すること
ができます。データは、SwissQual 製の
Diversity Benchmarker II によって処理され
ます。
生産および特性評価用の GNSS チップセット・テスタ
最近では、位置特定に衛星測位システム
を利用しないモバイル・デバイスは、あま
り見かけなくなりました。これは、全地球
航法衛星システム(GNSS)用のチップと
モジュールが大量に生産され出荷されて
いる、という背景を反映しています。各ユ
ニットは、コストのかかる故障による返品
を無くすためにテストされます。したがっ
て、テストはできるだけ効率的に、なおか
つコスト効率の良い方法で行う必要があり
ます。新しい R&S®SMBV-P101 GNSS テス
タは、このことを念頭に置いて設計されて
います。動作実証済みの R&S®SMBV100A
信号発生器は、フル GNSS 構成時には最
大 24 機の衛星を使う複雑なハイブリッ
ド・シナリオを詳細にシミュレートできま
6
すが、新しい生産テスタはこれをベース
として、構成の簡略化を実現しており、生
産要件を満たすために必要な衛星数も、
GPS、
Galileo、
Glonass、
および北斗(BeiDou)
のどの標準でも 1 機だけです。最初の生
産プロトタイプの特性評価も簡単な機能テ
ストによって行えるようにするために、生
成される信号は現実に即したものであり、
あらゆる点で必要な条件を完全に満たし
ています。生成される信号はリアルタイム
で計算されて切れ目なくタイムスタンプが
付与され、移動受信機における場合同様、
ドップラ・プロファイルに対応しています。
R&S®SMBV-P101 は、テスト・セットアッ
プを校正するために、安定した CW 高レ
ベル信号を提供します。
PC 上での包括的な信号解析
ソフトウェア機能が組み込まれたローデ・ 析するデータは、ファイル(I/Q または
シュワルツのシグナル・アナライザは、パ MATLAB®)としてロードされるか、LAN
ルス信号、無線通信信号、およびベクトル 経由で接続されたアナライザからリアルタ
変調信号を含むさまざまな信号タイプを イムで直接ロードされます。R&S®VSE は、
詳しく解析できます。これまで、テスト・ ネットワークに接続されたすべてのテスト
データを解析しようとすれば、ユーザがテ 用計測器に対してリモート解析および制御
スト用計測器に張り付いていなければなら ステーションとして機能し、大型スクリー
ず、これは、ライブ・データだけではなく ンを介して簡単に操作できるほか、数多く
保存されたデータ・セットの場合でも同じ の利点を提供します。R&S®VSE ハイエン
でした。このような場合、解析機能は純粋 ド解析ツールを使用しない低価格な計測
なソフトウェア機能なので、テスト用計測 器は、フロントエンドとして使用できます
器は不要になります。新しい R&S®VSE ベ (たとえば R&S®FSL)
。R&S®VSE は、現時
®
クトル信号エクスプローラ・ソフトウェア 点で R&S FSL / FPS / FSV / FSW アナライ
では、どの PC でも解析を行えるようにす ザ・ファミリと、R&S®RTO オシロスコー
ることでこの点を考慮し、テスト用計測 プに使用することができます。
器への依存性を完全に排除しました。解
わずかな信号も見逃さない HF 方向探知機
R&S®DDF1GTX 高速スキャニング HF 方向
探知機(DF)は、ローデ・シュワルツが過
去数十年間に蓄積してきた DF に関するす
べてのノウハウの集大成です。結果として、
比類のない技術が盛り込まれた、極めて
高度な機能を持つ計測器が実現されてい
ます。規制機関や治安当局用に開発された
R&S®DDF1GTX は、ごく短時間の信号や微
弱な信号も含め、HF スペクトラムのほぼ
あらゆる信号を捉えることができます。こ
れを実現するために、
R&S®DDF1GTX には、
アンテナ・エレメントの並列サンプリン
グ用受信チャネルが組み込まれています。
30MHz のリアルタイム帯域幅と併せて、
1 つのスペクトラム・スナップショットだ
けで、スキャン時に送信されていたすべ
ての電波を含む HF 範囲全体を、方位情
報を含めて解析することができます。こ
れ は 多 数 の 強 力 な フィー ルド・プ ログ
ラ マ ブ ル・ ゲ ート・ ア レ イ(FPGA) に
よって実現されており、この FPGA の性
能が 捕捉 の可能 性を最 大限まで高めて
います。市販 DF より 10 dB 低い内部ノ
イズが、ごく微弱な信号も確実に捉える
ことを可能にします。その他の機能とし
ては、同 一 周 波 数 の 異 な る信 号 を 特 定
するための超高分解能モード、同一チャ
ネ ル 干 渉 抑 制 の た め のビ ー ム 形 成、革
新 的 な 大 口 径 アン テ ナ、アクティブ /
パッシブ切り替え機能などがあります。
海軍艦艇のセキュリティ通信用音声端末
ローデ・シュワルツの R&S®NAVICS は、
極めて高度な機能を備えた船舶/艦艇用
通信システムです。このシステムの最新
バージョンは、2016 年に建造が開始され
る英国海軍の 26 型 GCS フリゲート艦に
搭 載 さ れ る 予 定 で す。R&S®NAVICS は、
すべての内部通信と外部通信に使用され
ま す。こ れ には、HF/VHF/UHF/SHF 無 線
システムとメッセージ通信処理システム、
および VoIP 音 声 端 末、スイッチ、ゲ ー
トウェイを使用する艦内マルチサービス
Ethernet(たとえば ATEX デバイスを使用
する WLAN)が含まれます。従来のシス
テムと異なり、R&S®NAVICS のコンポー
ネントはインターネット・プロトコル(IP)
のみで通信を行うので、市販のネットワー
ク技術を使用することができます。顧客
の要求により、ネットワークは信頼できる
セキュリティ機能、つまり、暗号化によっ
て保護されます。主要コンポーネントは、
R&S®GB5900SM 暗号化モジュール(図)
が組み込まれた VoIP 音声端末です。これ
は、艦内および外部との音声通信を行う
ために、艦内の任意の位置に簡単に取り付
けて使用できます。ゲートウェイにあるセ
キュリティ・フィルタにより、通信は承認
された相手としか行うことができません。
端末は、民間船舶用に暗号化モジュール無
しで使用することもできます。
NEWS 214/16
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無線技術 | 背景
ビッグ・データとモノの
インターネット
モバイル通信産業の
課題への対応
8
モノのインターネット、拡張モバイル・ブロードバンド、自動運転技術といった将来のプ
ロジェクトには、極めて高いネットワーク性能が求められます。次世代モバイル通信であ
る 5G はこれらに必要な性能を提供するものと期待されていますが、継続的な技術の進歩
により、特に LTE/LTE-Advanced ネットワークは優れた発展を示しています。以下はその
概要です。
1990 年の 900 MHz GSM 標準に関する
仕様確定を起点として捉えると、デジタ
ル無線通信は 25 回目の誕生日を迎えた
ことになります。しかし減速の兆しは見
られず、実際には減速とはかけ離れた事
態になっています。セルラー通信におけ
るデータへの要求は止まるところを知ら
ず、さらなる技術的進歩への需要が高ま
り続けています。モバイル・データ・ト
ラフィックの量は今後 6 年間で 10 倍に増
えると予想されており、専門家は、モバ
イル・ネットワークを介して互いに通信
を行う物品(モノのインターネット、IoT)
の数が指数的に増加すると予測していま
す。エリクソン・モビリティ・レポートは、
2015 年第 3 四半期だけで新たに 8700 万
人がモバイル契約を結んだと報告して
おり(インドで 1300 万人、アフリカで
2400 万人、中国で 700 万人)
、その契約
数は 2021 年後半までに 91 億件に達する
だろうと見込まれています。2015 年に平
均的なスマートフォン・ユーザが使用し
たデータの量は、1 カ月に 1.4 ギガバイト
でした。これは、2021 年までに 8.5 ギガ
バイトまで増加するだろうと見込まれて
います。これら 2 つの要素の組み合わせ
により、世界のデータ・トラフィックは
指数的に増加するでしょう。
この記事では、現在いかに膨大なデータ
が送受信されているかということと、モ
バイル・ネットワーク・オペレータは将
来的にどうすれば契約者に快適な通信を
提供することができるのかということに
ついて述べます。
つながったことが分かります。理論的に
実現可能なデバイスあたりのデータレー
トは、数百 k ビット/秒(EDGE)から
42 M ビット/秒(HSPA+)へ、さらには
数百 M ビット/秒(LTE / LTE-A)へと増
加してきました。最先端の市販 LTE-A デ
バイスは、理想的なラボ環境において
600 M ビット/秒を実現しています。実
際のネットワークにおいては、伝播条件
や共有チャネル原則によって実現可能
なダウンロード速度が制限されます。こ
れは、使用可能な帯域幅が、通信可能
なすべての契約者によって分割される
という事実によるものです。それでも、
LTE/LTE-A 技術は、使用可能なデータレー
トとネットワーク容量を大幅に向上させ
ました。このような目標を達成するにあ
たっては、以下のような技術革新が不可
欠でした。
■■
各契約者に提供できる 20 MHz の広い
システム帯域幅と、これらの各契約者用
の 20 MHz キャリア周波数を最大 5 つ
までまとめる能力(一般にキャリア・ア
グリゲーション(CA)と呼ばれる)
。CA
は、3GPP Release 10 の LTE-Advanced
における最も大きな改善点です。
■■
空間多重化(MIMO 技術)の利用-す
なわち、2 ~ 4 個または 2 ~ 8 個ある
送信/受信アンテナのうち任意のもの
を使用する。
■■
高速 OFDMA 多重化-すなわち、周波
数および時間リソースの割り当てをミリ
秒単位で変えることができる。無線デ
バイスに割り当てることのできる最小
のリソースは、周波数 180 kHz、時間長
0.5 ミリ秒のリソース・ブロック(RB)
です。
■■
高品質の変調方法。具体的には QPSK、
16QAM、64QAM、および 256QAM。
LTE/LTE-A の導入は、ネットワーク・オ
ペレータが、増大する需要に対応するこ
とを可能にしました。この技術の成功は、
2009 年後半に最初の商用 LTE ネットワー
クの運用が開始されて以来、世界 147 カ
国で 442 の商用ネットワークが開設さ
れたという事実からも見て取ることがで
き ま す( 出 典:Global Mobile Suppliers
Association (GSA)、2015 年 10 月)
。以下
の項では、3GPP 標準化機関が導入した
機能強化によって実現された、LTE のい
くつかの重要な改善点を検討していき
ま す(Release 10 の 時 点 で LTE は LTEAdvanced または LTE-A とも呼ばれてい
ます)
。
LTE の特長は、特別な拡張マルチメディ
ア・ブロードキャスト・マルチキャスト・
サービス(eMBMS、
NEWS 213 の 10 ペー
ジを参照)で、これは、同一セル内の複
数の契約者に同じリソース(周波数と時
間)を割り当てることを可能にします。
これは、たとえばモバイル TV アプリケー
ションを実現する極めて効率的な方法で、
多数の契約者が同じデータを同時に受信
します。このモードでは、無線デバイス
が新しいソフトウェアを効率的にインス
トールすることも可能です。一般にこの
ようなタスクは、依然として、各デバイ
ス単位で個別にデータ接続をすることに
よって行われています。
WLAN はほとんどの無線デバイスに実装
されているので、WLAN 接続は、個人の
住宅や公共の場所でも使用することがで
きます。多くのモバイル・ネットワーク・
オペレータは、インターネットへアクセ
スするもう 1 つの方法を提供するために、
空港などの公共の場所にホットスポット
2G/3G/4G 技術と将来的な発展
を設置しています。無線デバイスのユー
さ ま ざ ま な 2G(GSM、GPRS、EDGE)
、
3G
(UMTS、
HSPA、
HSPA+)
、
および 4G
(LTE リーン・ネットワーク・アーキテクチャ ザは、簡単に WLAN 機能をオン/オフし
/ LTE-Advanced(LTE-A)
)モバイル 技 術 と完全なパケット交換データ送信により、 て、インターネットにアクセスすること
の違いに着目すれば、基地局および無線 ネットワーク応答時間を短くすることが ができます。一部の無線デバイスは、十
デバイス間の無線インタフェースにおけ できます。LTE スマートフォンは、旧来 分な性能のホットスポットを検出した時
る新たな送信方法の導入、およびモバイ の技術よりはるかに速くインターネット・ 点で直ちにデバイスのデータ接続を自動
的に WLAN に切り替える専用アプリケー
ル・ネットワーク・アーキテクチャの最 ページをロードします。
ションも備えています。
適化が、モバイル通信の大きな進歩に
NEWS 214/16
9
無線技術 | 背景
このような 場 合、す べ てのデ ータ・ト
ラフィックはモ バ イル・ネットワーク
か WLAN を経由してやり取りされます。
3GPP 仕様では、たとえば WLAN により
電子メール・アプリケーションをバック
グラウンドで実行しながら、LTE 経由で
ビデオ・データを送信する、といった特
別なモードを使用することができます。
ただし、商用ネットワークでは(まだ)
採用されていません。一般に、WLAN や
LTE 使用時には他の場合よりはるかに高
い柔軟性が得られ、ネットワーク・オペ
レータは、より高いデータレートとより
多くの容量を契約者に提供することがで
きます。これに代わる方法として、まだ
免許を受けていない周波数帯でも、仕様
の観点から、LTE/LTE-A の運用をすぐに開
始することができます(licensed-assisted
access:LAA)
。これは、2016 年 3 月に予
定されている 3GPP の Release 13 に盛り
込まれる予定です。LTE から WLAN に切
り替える代わりに、たとえば免許を受け
ていない 2.4 GHz ISM 帯で LTE を使用し、
キャリア・アグリゲーション機能を使用
してデータレート能力を向上させること
が可能です。競合を避けて、十分な容量
を使用できる場合にのみ帯域へのアクセ
スが保証されるようにするために、LTE
には listen-before-talk(LBT)という機能
が追加されます。したがって、3GPP は、
WLAN および LTE 技術を使用する補完的
ソリューションを提供します。これらの
ソリューションを採用するかどうか、あ
るいはどちらのソリューションを採用す
るかは、商業的な展開によって決まるこ
とになるでしょう。
LTE ネットワークはすべてのセルで同じ
周波数を使用しますが、これは、セル境
界におけるセル間干渉を発生させます。
基地局との接続が有効な状態になってい
る無線デバイスは、同様に接続デバイス
に信号を送信している隣接セル基地局の
信号も受信します。これは干渉を発生さ
せて、実現可能なデータレートを低下さ
せます。データレートの低下は、特に異
種ネットワーク環境、つまり、1 つの大
きなセル(マクロ・セル)の中で複数の
小さいセル(フェムトまたはピコ・セル)
が運用されるネットワーク・トポロジが
受ける影響のひとつです。歩行者専用区
域は、その典型的な例です。サイズが小
さく容量の大きいホットスポットはトラ
フィックの多いエリアをカバーしますが、
それらのホットスポットのある場所は、
その都市の一部をカバーする上位セルの
受信範囲内でもあります。この影響を解
消するために、
セル間協調送受信(CoMP)
という方式が導入されました。CoMP は、
セル境界に位置する無線デバイスに対し、
調整のとれた形で信号を送信することを
可能にします。この調整を実現する方法
は複数あります。最も単純なケースでは、
使用可能な基地局のうちのどれを使用し
て送信を行うか、ということだけが決定
されます。その他のオプションとしては、
無線デバイス用のリソース・ブロックの
割り当てや、干渉を最小限に抑えるため
の使用基地局のアンテナ・ビーム指向な
どがあります。MIMO 技術を使用し、さ
らに調整の取れた形でベースバンド信号
にも影響を与えることによって(プリコー
ディング)
、セル境界におけるサービス・
エリアを最適化することが可能になりま
す。
3GPP Release 12 では、
異種ネットワー
クをさらに改善するために、デュアル・
コネクティビティと呼ばれる新たな技術
的要素が仕様化されました。この方式で
は、無線デバイスは、2 つの異なるキャ
リア周波数で 2 つの基地局に接続するよ
うに設定されます。マスター基地局(LTE
の eNodeB)は上位のマクロ・セルを提
供し、スレーブ eNodeB はホットスポッ
ト、つまりピコ・セルまたはフェムト・セ
ルを提供します。
T&M 機器はどのように関与しているのか
テストおよび測定用機器は、新技術導入とネットワーク運用の両
方において中心的な役割を果たします。モバイル・デバイス、コ
ンポーネント、基地局、およびスイッチング・ノードの開発と製造
には、無数のテスト・ソリューションが必要です。これらのテスト・
ソリューションは、ネットワークを展開して、その性能を検証する
際にも必要です。
まず、ネットワーク・オペレータは、そのネットワークを運用す
るために、適切なインフラストラクチャ製品を選ぶ必要がありま
す。信号発生器やシグナル・スペクトラム・アナライザなどの測
定機器を使用すれば、最良のインフラストラクチャ製品を選ぶ
ために、それら製品の妥当性を確認することができます。Global
Certification Forum(GCF)は、無線デバイス証明の前提として、
広範なテストを定めています。また、多くのオペレータが、それぞ
れ独自のネットワーク要件に基づいて追加的なテストを指定して
います。R&S®CMW500 ワイドバンド無線機テスタなどの T&M
機器は、必要とされるすべてのネットワーク機能をエミュレート
し、無線デバイスが正しく動作するかどうか(実装されたプロトコ
ルの機能テスト)
、ハードウェアが正しく実装されているか(たと
えば、
指定された最大送信出力を満たしているか)を検証します。
10
図 1:RF およびプロトコル・テスト・システムは、ネットワーク・オペレー
タによる適切な無線デバイス・プロバイダの選択を支援します。これらのテ
スト・ソリューションは、デバイスのモバイル・ネットワーク標準への適合
を確認します。
この構成では、マスター eNodeB は、セ
ル・トラフィックやデバイス速度などの
パラメータを使用して、マクロ・セルと
ホットスポットのどちらを使用してデー
タ接続を行うかを決定します。これら
2 つの切り替えは、極めて高速で行われ
ます。追加的なシグナリングは必要あり
ません。これによってシグナリング容量
を節約し、ハンドオーバー・エラーを最
小限に抑えることができます。無線デバ
イス内では、これら特定タイプの干渉を
認識し、適切なアルゴリズムを使用して
それらの干渉を受信信号から除去する
ように改善された受信機を採用すること
によって、セル境界での干渉に対処する
ことができます。このような計算を容易
にするために、ネットワークからも潜在
的干渉源に関するその他の情報を得るこ
とができます。LTE 標準では、これらの
技 術 的 要 素 は further enhanced InterCell
Interference Coordination(feICIC、3GPP
Release 11 に 規 定 ) お よ び Network
Assisted Interference Cancellation and
Suppression(NAICS、3GPP Release 12
に規定 ) と呼ばれています。
Device-to-Device(D2D) 機 能 は 2 つ の
基本的機能を実現するものなので、これ
らの機能の導入は極めて重要です。第一
に、ネットワーク支援型発見機能は、空
間的に隣接した 2 台のデバイス同士が互
いを検出することを可能にします。第二
に、これらのデバイスとその近傍にある
他のデバイスとの間で、直接データを交
換することが可能になります。つまり、
そのエリアをカバーしている基地局を経
由する必要がありません。ただし、少な
くともサービス・エリア内の場合、つまり、
最低でも 1 台のデバイスがセルラー・サー
ビス・エリア内にある場合は、プロセス
全体がネットワークによって認証、設定
されます。このまったく新しい機能は、
主に公共の安全を考慮して導入されまし
た。消防および警察用アプリケーション
では、個人で構成される小さいグループ
内で大量のデータ(画像、ビデオ)をや
り取りする必要があり、一部のグループ・
メンバーがネットワークのサービス・エ
リア外、たとえば火災現場であるビルの
地下室などに居ることもあり得ます。当
初の間、このような形で接続された無線
デバイス間でのデータ交換は公共の安全
および治安用のアプリケーションだけに
限定され、一般の人々による使用は、ア
プリケーション関連のブロードキャスト・
サービスだけに制限されます。その他の
商用モデルも考えることができ、これに
ついても 5G 開発プロセスの一環として
検討中です。特に自動車分野でのユース
ケース、つまり全自動運転への対応など
が考えられます。
LTE/LTE-A ネットワークの性能は向上し
ていますが、すべてが 4G へ移行するま
でには時間がかかると予想されます。し
たがって、2G および 3G 技術への効率的
なハンドオーバーは依然として重要です。
また、低いデータレートで十分だという
ユースケースも数多く存在します。この
場合に焦点となるのは、バッテリ寿命の
長い、コスト効率に優れたソリューショ
ンです。このような Machine-to-machine
(M2M)環境では、たとえば数年間は使
用できるように設計された技術を使用す
るモジュールが数多く使われています。
しかし、LTE/LTE-A は、M2M アプリケー
ションに応用するために、すでにいくつ
かの改善を取り入れています。たとえ
ば、LTE ユーザ機器用のカテゴリ 0 があ
りますが、このカテゴリは、このクラス
のデバイスを実装するために必要な労力
を軽減します(データレート要件が低く、
MIMO への対応の必要がない)
。
多数 の M2M デ バイスが同時にネット
ワークにアクセスしようとした時に、モ
バイル・ネットワークの過負荷を回避
R&S®TS8980 などの適切な適合テスト・システムを図 1 に示しま
す。
現場に基地局を展開する場合は、法的要件が満たされているか
どうかを迅速に確認することのできるコンパクトなテスタが必要
です(図 2)
。展開後は、ネットワークを最適化し、できる限り高
いデータレートを実現するために、オペレータは、ハンドオーバー
しきい値などのパラメータを調整し、サービス・エリアのギャップ
を確認する必要があります。図 3 に、
効果的なモバイル・ネットワー
ク・プランニングのためのドライブ・テスト・ソリューションを示し
ます。SwissQual の QualiPoc は、市販のスマートフォン上に測定
アプリケーションを実装します。このテスト・ソリューションは通
常アプリケーションのように使用できるので、ネットワーク・オペ
レータは、エンド・ユーザの使用経験を評価することができます。
オペレータのコア・ネットワーク内ではすべてのデータ・ストリー
ムが処理されますが、そこでは、データ・トラフィックをパケット・
レベルまで解析できることがますます重要になります。これは、
データ・トラフィックを分類し、ネットワークの最も効率的なルー
トを通じてサービスのデータ・パケットを送ることを可能にします。 図 2:基地局の設置には、コスト効率に優れたモバイル T&M 機器が使われ
ローデ・シュワルツの子会社である ipoque の IP 解析技術を使用 ます。
すれば、これに関する見通しを立てることができます。
NEWS 214/16
11
無線技術 | 背景
ケース・クラスが定義されたことです。
これらのユースケースは、少なくとも部
分的には、極めて高度なセキュリティと
信頼性を備えた接続を必要とします。さ
らに、自動車産業アプリケーション(た
とえば全自動運転)と Industry 4.0 アプ
リケーションでは、セルラー通信を使用
することが考えられます。これは新たな
要 す る に、LTE/LTE-A 技 術 は、 現 在 収益源への道を開くことになるでしょう。
の と こ ろ モ バ イ ル・ デ ー タ・ ト ラ 1 ms 範囲というレイテンシ要求を LTE/
フ ィッ ク や M2M/IoT に 関 す る 要 求 事 LTE-A で実現することは不可能です。テ
項 の 増 加 に 対 応 し て い ま す。 拡 張 モ クノロジに基づく議論に加えて、これま
バ イ ル・ブ ロ ード バ ンド や IoT も、 次 での開発サイクルは、次の技術的ステッ
世 代(5G) 仕 様 に 関 し て 行 わ れ て プが 2020 年になるであろうことを示し
い る 包 括 的 議 論 の 重 要 な 側 面 で す。 ています。
2020 年早々(地域によっては 2018 年)
に新世代のモバイル通信を導入しようと GSM が導入されたのは 1990 年であり、
いう業界の動きの動機となっているもの UMTS は 2000 年、LTE は 2010 年です。
は何でしょう。ひとつは、契約者数とデー ところで、2020 年のオリンピックの開催
タレートが絶え間なく増加し続けるため、 国が日本であることについても言及して
LTE/LTE-Advanced のすべての強化機能を おく必要があります。日本は 5G の開発
もってしても、長期的には需要に対応す に深く関わっている国です(もちろん、
。
ることができなくなると予想されている それだけが理由ではありません)
ことです。もうひとつは、モバイル・ネッ
トワークのレイテンシを大幅に改善する 主要な無線通信企業の研究機関や開発部
ために、業界全般にわたる新しいユース 門は、すでに 5G 技術分野で広範な研究
するためのプロセスも導入されていま
す。 現 在、 帯 域 幅 の 削 減(200 kHz)
や 15 kHz か ら 3.75 kHz へ の サ ブ キ ャ
リア・オフセットの引き下げといった
その他の改善も、3GPP 標準(Release 13)
の策定プロセスにおいて検討されていま
す。
を行っています。これらの努力は、主に、
将来的な要求事項に対するソリューショ
ンとして検討が行われている 4 つの技術
ブロックに注がれています。初期の研究
努力は、帯域幅を大幅に増やすことによっ
て使用できるようになる追加周波数帯は
どこか、ということを明らかにするでしょ
う。この研究は、最大帯域幅 2 GHz で
100 GHz までのスペクトラムをカバーし
ています。ここで、大きく変更されたチャ
ネル伝播条件が重要な役割を果たします。
研究者は、適切なチャネル・モデルの開
発と判定を行って新しい技術を評価する
前に、これらの条件を解析する必要があ
ります(考えられるチャネルの解析方法
を次の記事に示します)
。多数の送受信ア
ンテナ・エレメント(100 程度)の使用
についても、評価が行われています。ア
ンテナ・エレメントは、最新の MIMO 技
術を通じて、6 GHz 未満の周波数スペク
トラムにおけるデータレートを増やすた
めに使うことができます。
モバイル・デバイスのテストにおいても、同じ機能に大きな関
心が寄せられています。この機能を R&S®CMW500 上に実装す
れば、ユーザは、バックグラウンドで実行されるアプリケーショ
ンだけに基づいて、スマートフォンがどの IP データ・ストリー
ム(使用プロトコルを含む)を維持するかを解析することがで
きます。
モバイル・ネットワークを運用する場合には、常に予測できな
い干渉が発生し得ます。この干渉をできるだけ早く特定して解
消するために、モバイル・ネットワーク内の固定式ネットワー
ク・モニタリング・ツールと、モバイル干渉源特定ソリューショ
ンが使われます。たとえば、ネオンサインの故障が基地局の受
信帯域内に干渉を発生させて、セル内のすべてのデータ・トラ
フィックに悪影響を与えることがあります。
図 3:ネットワーク・オペレータは T&M 機器を使用してネットワーク性能を
解析し、エンド・ユーザの使用経験を最適化します。
12
高周波数帯においては、適切なセル・サ
イズの実現に必要なアンテナ・ゲインを
得るために、これらのアンテナ・エレメ
ントが必要になります。新しい無線イン
タフェース技術については、著しく高い
周波数と関連付けて、また、非常に短い
応答時間を可能にする方法として、検
討されています。これらのインタフェー
ス の 一 部 は、LTE に 実 装 さ れ た OFDM
技術に基づく追加的なフィルタ機能を
備えています。その例としては、Universal
Filtered Multicarrier(UFMC)、Filter
Bank Multicarrier(FBMC)
、Generalized
Frequency Division Multiplexing(GFDM)
、
お よ び filtered OFDM ま た は flexible
OFDM(f-OFDM)などが挙げられます。
さらに、より効率的なネットワーク・ト
ポロジについても検討が行われています。
これは、現在すでに使われ始めているト
ポロジです。基本的な考え方は、モバイ
ル通信専用のソフトウェア機能を設計し、
それをオープン・ハードウェア・プラッ
トフォーム上に実装する、ということで
す。これは、モバイル・コア・ネットワー
ク内の Enhanced Packet Core(EPC)ノー
ド機能や、基地局のベースバンド機能
を、より安価に実装することを可能にし
ます。また、ハードウェア故障時に、オ
ペレータがこれらの機能を代替プラット
フォームへ移動することも可能にします。
最終的には、これらのプロセスは、すで
に現在のデータ・センターに置かれて
いるものと同じものになる見込みです。
Network Function Virtualization(NFV) や
Software Defined Networking(SDN)
、な
らびにネットワーク・スライシングは、
モバイル・ネットワーク内にこれらの機
能を柔軟に実装する助けとなっています。
このような状況においては、セキュリティ
の側面が広範に検討されている、という
点に留意する必要があります。
サマリ
ビッグ・データに関する契約者の要求は
増え続けていますが、LTE/LTE-A 技術の
高い性能、既存の 2G/3G ネットワークと
のそのシームレスな連携、および WLAN
の補足的使用などは、ネットワーク・オ
ペレータがそれらの要求を満たすことを
可能にします。ブロードキャスト/マル
チキャスト・ソリューションは、システム
の柔軟性を高めます。また、M2M アプリ
ケーションはすでに大きな役割を果たし
ています。互いに通信を行う機器数の将
来的な増加(IoT)や、業界の垂直的分岐
から生じた新たな需要(自動車産業、ヘ
ルスケア、ロボット制御など)は、新た
な著しい改善へのニーズを決定付けるも
のと予想されています。モバイル通信産
業の研究者が、2020 年以降を見据えて、
すでに 5G についての検討を行っている
理由はここにあります。ローデ・シュワ
ルツとその子会社である SwissQual およ
び ipoque は、今日の T&M タスク用に包
括的なポートフォリオを提供するととも
に、5G の研究開発に積極的に関わってい
ます。
Meik Kottkamp
詳細については次のサイトをご覧ください。
❙ www.rohde-schwarz.com/mobile-network-test
❙ www.rohde-schwarz.com/technology/lte
❙ www.rohde-schwarz.com/technology/5G
図 4 は、モバイル測定用受信機と指向性アンテナを使用して干
渉源を特定中の技術者です。
現在でも、5G 相当コンポーネントの評価には、信号発生器と
シグナル・アナライザが使われています。これらの機器は、周
波数範囲、帯域幅、および送信技術などの点で高い柔軟性を備
えているので、なくてはならない存在です。また、新しい未定
義周波数帯における伝播状態の解析に使用する測定システムに
とっても、欠かすことのできないコンポーネントです(次の記
事を参照)
。マルチポートのネットワーク・アナライザは、将来
のアンテナ技術を実装する上でも決定的な役割を果たします。
そして最後に、個々のアプリケーションがデータレート、シグ
ナリング負荷、および電流消費に及ぼす影響についても調査中
です。測定は、IP 層自体にある個々のアプリケーションについ
て行う必要があるので、これは IoT モジュールにとっては特に
重要です。
図 4:指向性アンテナを使用するモバイル測定用受信機は、オペレータによ
る運用ネットワークのモニタリングと干渉の確認に役立ちます。
NEWS 214/16
13
無線技術 | 信号の生成と解析
チャネル・サウンディング -
将来の無線通信用周波数を求めて
次世代無線通信である 5G は、2020 年までに運用が開始される予定です。しかし、今日
のネットワークと比較して著しい性能向上が計画されているため、これを可能にするには、
広範な事前調査を行う必要があります。適切な送信チャネルを見つけてその特性を評価す
ることは非常に重要です。
5G が正確にはどのようなものになるのか、また、どのような方
法と技術によってこれらの野心的な目標が最終的に達成される
ことになるのかについて、まだ確実な予想をすることはできま
せん。ただし、
はっきりしている重要な特徴が 2 つだけあります。
第一に、5G は、商用無線通信アプリケーションに関して、ミリ
波(つまり 30 GHz 超)というまったく新しい周波数範囲を開拓
するということです(図 1)
。第二に、必要とされる信号帯域幅
が大幅に拡大されるということです。これらの新しいチャネル
については、これを最大限に活用するためのさまざまな解析を
行う必要があります。セルラー無線チャネルを特性評価するた
めの最も重要な方法は、チャネル・サウンディングです。
チャネルサウンディングとは
特に高周波・広帯域無線通信において、送信機と受信機の間に
存在する送信経路は決して理想的とは言えません。このような
状況下でも依然として高性能無線通信を行うことができるよう
にするには、無線チャネルの特性を正確に知る必要があります
が、
これはチャネル・サウンダによって知ることができます。チャ
ネル・サウンディングは、送信チャネル、特にセルラー無線チャ
ネルのインパルス応答を決定するプロセスです。この概念は、
距離測定用の古典的な音響測定法(たとえば音響測深機)から
派生したものです [1]。
的な情報を提供します。したがって、チャネルの特性評価に最
適です。反射によって生じる信号エコー、回折および散乱効果
による歪み、建築物や樹木によって生じるシャドー効果、さら
には雨や雪などによる気象関連現象も、無線チャネルに悪影響
を与えます。時変チャネル・インパルス応答の二乗振幅 h(t, τ)
の例を図 2 に示します。これは、電力遅延プロファイル(PDP)
とも呼ばれます。
無線信号のマルチパス伝播は、遅延軸τ上で確認できます。極
大値は強い遅延エコーの存在を示唆しており、これは、その無
線チャネル内に何らかの反射体が存在することを意味します。
この例では、時間に伴うチャネル・インパルス応答の変化は時
間軸 t 上で確認できます。このような時間による変動の原因と
しては、受信機が移動していることや、チャネル条件が変化し
ていることが考えられますが、後者の方がより一般的です。
チャネル・サウンダにとって不可欠な要求がすでに明らかになっ
ています。所望周波数範囲での高い感度に加えて、チャネルの
時間変化を検出するために十分に高速でなければなりません。
さらに、1 つのチャネル・インパルス応答を十分な時間枠で測
定して、最大限の時間分解能とダイナミック・レンジで遅延ス
プレッドを記録できることも求められます。
残念ながらこれら 2 つの要求事項は相反するものであり、最適
なバランスを取ることしかできません。最適点は、シナリオ、
チャネル・インパルス応答(CIR)は、信号の振幅と位相を含め、 つまり、定点測定か強い時間変化環境下(高速で移動する列車
対象チャネルが無線信号に与える影響に関する複合的かつ包括 内など)での測定かによって異なります。チャネル・サウンダ
図 1:モバイル通信用の新しいスペクトラム。出典:ITU Recommendation ITU-R V.431-7: Nomenclature
ITU バンド
周波数範囲
of the frequency and wavelength bands used in telecommunications.
X
8 GHz ~ 12 GHz
Ku
12 GHz ~ 18 GHz
K
18 GHz ~ 27 GHz
Ka
27 GHz ~ 40 GHz
Q
33 GHz ~ 50 GHz
周波数帯
周波数範囲
波長範囲
極超短波(UHF)
300 MHz ~ 3 GHz
1 dm ~ 10 dm
センチ波(SHF)
3 GHz ~ 30 GHz
1 cm ~ 10 cm
ミリ波(EHF)
30 GHz ~ 300 GHz
1 mm ~ 10 mm
14
U
40 GHz ~ 60 GHz
V
50 GHz ~ 75 GHz
E
60 GHz ~ 90 GHz
チャネルが無線信号に与える影響
遅延スプレッド
|h|2
時間 t
図 2:時変チャネルの
電力遅延プロファイル(PDP)
遅延 τ
t0
に極めて高い品質と柔軟性が求められることは明らかで、ここ
に示すソリューションが最適である理由もそこにあります。
以上から、チャネル・インパルス応答は、時間ドメインで直接
相関を取ることによって測定できます。これは、特定の変調が
施された周期パルス信号の自己相関特性を利用して行います
[1]。これらのサウンディング信号は非常に単純な構造をしてい
ます。たとえば、この目的には、M 系列と呼ばれる単純な疑似
ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS)が適しています。チャ
ネル・サウンディングの概念は非常にシンプルです。まず、検
討対象の無線チャネルに周期的な M 系列を送信します。受信さ
れた信号は、既知の M 系列によりチャネルの「末尾」に相関付
けされ、これによって必要なチャネル・インパルス応答が得ら
れます。もちろん、サウンディング信号は、たとえばそのスペ
クトラム純度やクレスト・ファクタなどについて最適化すること
ができます。これが、M 系列に加えて、レーダー技術で知られ
る FZC(Frank-Zadoff-Chu)シーケンスや FMCW 信号(チャー
プ信号)を使用できる理由です。
なぜ 5G チャネル・サウンディングなのか
デジタル・モバイル通信の時代は GSM で始まりましたが、こ
の新しい時代は、基地局や移動局のメーカーに、時間や位置に
応じて無線チャネルを扱うという課題を提起することにもなり
ました。特に、問題を解決するには、無線チャネルに関する広
範な測定と、それに基づくチャネル・モデルの導出が必要です。
チャネル・モデルは、セルラー・ネットワーク・プランニング・ツー
ルを含む無線通信システム開発全体の基礎としての役割を果た
しており、現在の第 4 世代無線通信(LTE-A)に至るまで、継
続的に発展してきました [2]。これまでの世代の無線通信は、通
常、3 GHz 未満の同じ周波数帯で運用されていたので、チャネ
ル・モデルの適応が比較的容易で、繰り返し利用されてきました。
しかし、ミリ波帯のようなまったく新しい周波数範囲でネット
ワークを運用し、使用可能なチャネル帯域幅をこれまで使われ
てきた帯域幅の数倍に拡大するとなると、既存のチャネル・モ
デルに変更を加えるだけでは不十分になってきます [1]。したがっ
て、広範なチャネル・サウンディング測定活動によるデータに
よってしか得られない、新しいモデルを導入する必要がありま
す。まさにこのような理由から、標準的環境での広範な測定活
動が開始されました。その一例が、2015 年 9 月に 3GPP の「5G
ワークショップ」で開始された活動です。
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無線技術 | 信号の生成と解析
ソリューション
チャネル・インパルス応答を直接測定するためのチャネル・サ
ウンディング・ソリューションは、サウンディング信号生成用の
高品質かつ柔軟な送信機と、非常に広いダイナミック・レンジ
を備えた高感度広帯域受信機で構成されます(図 3)
。ローデ・
シュワルツのポートフォリオに含まれる R&S®SMW200A ベクト
ル信号発生器と R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライ
ザは、ともにこれらの特性を満たしています。
チャネル・サウンディング用のテスト・セットアップ
サウンディング信号の生成
実際の環境
I/Q データの収集
チャネル・インパルス応答の解析
I/Q データ
R&S®SMW200A
R&S®FSW
図 3:チャネル・インパルス応答を直接測定するための基本的セットアップ(ケーブルとアンテナは省略)
図 4:電力遅延スペクトラムの測定例。測定は、ミュンヘンにあるローデ・シュワルツの中庭をテスト・サイトとして使用し、送信端(R&S®SMW200A)に
13 dBi のホーン・アンテナ、受信端(R&S®FSW43)に無指向性広帯域アンテナを使用して 17 GHz で実施。このアンテナの組み合わせは、チャネル・サウンディ
ング測定用として標準的なものです。この例ではビルのフロアと天井からの反射が顕著です。
直接波(LOS)
反射
16
MATLAB® をベースとした新しい PC アプリケーション・ソフ
トウェア R&S®TS-5GCS を使用すれば、簡単にチャネル・イン
パルス応答を測定することができます。このソフトウェアは、
R&S®FSW から取り込んだ I/Q データを評価し、オリジナルの
送信信号と相関を取ることによって、チャネル・インパルス
応答を計算します。測定データはグラフィックで表示され、
MATLAB® 互換フォーマットでエクスポートすることができます
(図 4 と 5)
。ユーザは、ミリ波帯に至る周波数において測定機
器の優秀かつ安定した特性の利点を生かし、測定したデータの
評価に注意を集中することができます。さらに、
サウンディング・
ソフトウェアが、柔軟なサウンディング信号を提供します。す
べてのサウンディング信号は、R&S®SMW200A の互換波形とし
て提供されます。加えて、R&S®ARB Toolbox Plus を使用すれば、
信号をユーザのニーズに合わせ、固有のサウンディング信号を
生成することができます。
サマリ
R&S®SMW200A ベ ク ト ル 信 号 発 生 器 お よ び R&S®FSW シ
グナル・スペクトラム・アナライザとともに使用する新しい
R&S®TS-5GCS チャネル・サウンディング・ソフトウェアは、コ
ンパクトで高い柔軟性と安定性、そして再現性を備えたチャネ
ル測定用ソリューションで、第 5 世代無線通信の高周波数帯に
使用することができます。さまざまな周波数範囲と帯域幅に使
用できる計測器や、用途に適した送受信アンテナも用意されて
います。サウンディング・ソフトウェアを使用すれば、驚くほど
簡単に必要なチャネル・インパルス応答を得ることができます。
Heinz Mellein; Johannes Köbele
関連資料
[1] Radio Propagation Measurement and Channel Modeling、Sana Salous、
Durham University UK、2013 年に John WILEY and Sons Ltd. より出版
[2] WINNER II D1.1.2,“Channel models”
、V1.2、2008 年、
http://www.ist-winner.org/deliverables.htm からダウンロード可能
図 5:3 次元電力遅延ドップラ・プロファイル。各エコーに対応するドップラ周波数シフトが示されています。ここに示すプロファイルは実際のパス測定によっ
チャネル・サウンディング・
て作成したものではなく、
R&S®SMW200A のフェーディング・シミュレータを使って作成したものです。このシミュレータを使えば、
ソリューションの動作のデモと検証を簡単に行うことができます。
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無線技術 | テスタ
IP ベース音声通信
サービスのテスト
第 4 世代(LTE/LTE-A)以降のネットワークは、すべてのサービスにインターネット・プ
ロトコルを使用します。音声通信などの従来型サービスを引き続き使用できるようにする
には、IP の他に、もうひとつのインフラストラクチャが必要です。4G デバイスにおいては、
IP マルチメディア・サブシステムの助けにより通話機能が実現します。R&S®CMW500 ワ
イドバンド無線機テスタは、テストに関連するさまざまな問題を解決します。
オール IP 通信はモバイル通信にまったく
新しいアプリケーションの世界を開きま
すが、これは同時に、2G(GSM)および
3G(UMTS)ネットワークで一般的だっ
た音声通信用の回路交換式サービスを使
えなくなることも意味します。これに代
えて、音声信号は IP パケットにパッキン
グしなければなりません。過去 1 年間で、
データ・サービスは最終的に音声通話を
抜いてネットワーク・オペレータの最も
重要な収入源となりましたが、音声通話
は依然としてかなりのシェアを占めてお
り、技術的に無視することはできない存
在です。最も重要なのは、音声品質を慣
れ親しんだ基準から落とすことはできな
いという点です。実際のところ、このよ
うなレガシー・サービスで多くの問題が
発生しています。というのも、IP ベース
のネットワークでは送信時にパケット喪
失、ジッタ、パケット遅延などが発生す
ることがあるためです。音声通話の場合、
これらの問題は音声品質に大きく影響す
るので、受信側でこれらの影響を補正す
るのが理想的です。LTE のような 3GPP
ベースのネットワークでは、トランスポー
ト層上の IP ベースのサービスを分離し、
必要に応じて保証された QoS を提供す
ることができます。この処理は、使用中
のサービスによってトリガされる専用ベ
アラによって行われます。専用ベアラは、
固有のネットワーク・アドレス(ポート
範囲)と指定された性能特性を持つ仮想
チャネル・タイプのひとつです。この機
能の前提となるのは、無線デバイスまた
はモデム内に高いレベルでサービスを組
み込むことです。
アプリケーションは上記のような組み込
みを行っていないため、一定の QoS を保
証できません。したがって、常にユーザ
が満足できるような通信を実現できるわ
けではありません。また、さまざまなサー
ビスの間に相互接続性がないので、ユー
ザはアプリケーションの普及状態にも影
響を受けます。緊急通話に対処するメカ
ニズムがないことも、これらのアプリケー
ションの大きな欠点です。結果として、
LTE で音声通信に対応するには、モバイ
ル・ネットワーク内に適切なメカニズム
とアーキテクチャを実装して、ビデオ電
話のような新機能と、従来の音声通話や
緊急通話のような実績ある機能に関して、
高い品質を保証する必要があります。
Skype や FaceTime などのサービスは、ビ
デオ電話やメッセージング・サービスの
ような機能をすでに提供しています。こ
のような機能はユーザに期待を抱かせる IP マルチメディア・サブシステム
ものですが、これらの over-the-top(OTT) LTE ネットワークに音声サービスを組み
込むための重要な技術が、IP マルチメ
ディア・サブシステム(IMS)です。IMS
は、IP ベースのマルチメディア・サービ
スに対応するための枠組みを提供します。
IMS を組み込んだネットワーク・アーキテクチャ
IMS を利用するには、ネットワーク・アー
キテクチャ内に新しいネットワーク要素
アプリケーション
が必要です(図 1)
。
SMS over IMS
Voice over IMS (VoLTE)
Video over IMS
RCS
…
IMS
広帯域
ケーブル・アクセス
固定接続
モバイル・アクセス
(GSM、
UMTS、
LTE、
C2K)
図 1:モバイル・ネットワークにおける重要技術としての IMS
18
広帯域無線アクセス
(WLAN)
IMS は、UMTS の 標 準 化 時 に 3GPP に
よって開発されました。以後改良が加え
られて、現在では Voice over LTE(VoLTE)
に も 使 わ れ て い ま す( 図 2)
。Session
Initiation Protocol(SIP)は IMS の基本プ
ロトコルです。SIP は、IP ネットワーク
を使用して契約者間の接続を確立します。
常に高い QoS を保証するために、ネット
ワーク・オペレータは、IMS に基づく音
IP マルチメディア・サブシステム(IMS)
シグナリング
R&S®CMW500 によるテスト
メディア・トランスポート
SDP
メディア・
コーディング
SIP
RTP
ユーティリティ
アプリケーション層
TCP
ネットワーク層
音声/ビデオ・データ
呼び確立
トランスポート層
アクセス技術
SDP
SIP
TCP
RTP
session description protocol
session initiation protocol
transport control protocol
realtime transport protocol
RTSP
RCTP
DNS
DHCP
LTE
UDP
WLAN
IPv4, IPv6
図 3:R&S®CMW500 ワイドバンド無線機テスタ
LTE
RTSP realtime streaming protocol
RTCP realtime control protocol
による LTE と WLAN の並列テスト
DNS domain name server
DHCP dynamic host
configuration protocol
UDP user datagram protocol
図 2:IMS のプロトコル構造
これらは、切れ目のないサービスの保証
や、外部から内部への移行時の WLAN 組
み込みにも使われています。Voice over
WLAN(VoWLAN)はネットワーク・オ
ペレータが推進する技術で、SIP/IMS も
使用して Voice over WLAN アクセス・ポ
イントへのルートを決定します。ネット
ワーク・オペレータに最も近い基地局を
使用して通話を行う代わりに、インター
ネットを通じて、ネットワーク・オペレー
タの提供するゲートウェイに音声パケッ
トがトンネル送信されます。この evolved
Packet Data Gateway(ePDG)は、
LTE ネッ
トワークと WLAN の間にリンクを作成し
ます。IMS とこれらすべてのメカニズム
に標準対応した次世代スマートフォンは、
使用可能なすべてのアクセス技術に関し
て、切れ目のない高品質の音声サービス
を実現します。
R&S®CMW500 による VoLTE、
VoWLAN、および WLAN トラフィッ
クのオフロード・テスト
R&S®CMW500 ワイドバンド無線機テス
タは、モバイル・デバイスに搭載されたこ
れらのメカニズムをテストするために必
要なすべてのものを備えています(図 3)
。
このテスタは、データ・アプリケーション・
ユニット上で、ePDG や IMS サーバなど、
すべてのアクセス技術と必要なすべての
サ ー バ を 提 供し( 図 4)
、LTE と WLAN
間のハンドオーバーや Single Radio Voice
Call Continuity(SRVCC)
、つまり LTE と
GSM や UMTS などの従来型ネットワー
ク間のハンドオーバーをテストします。
2015 年中盤以降は、内蔵の IMS サーバ
により複数の DUT(IMS 契約端末)を並
列にテストする機能を提供しています。
これにより、2 台のモバイル・デバイス
間の真のエンド・ツー・エンド接続をテ
ストすることも可能になりました。
VoLTE、VoWLAN、および WLAN トラフィックのオフロード・テスト
3GPP 構造
IMSサーバ、
VoLTE、VoWLAN
WCDMA
SRVCC
コア・ネットワーク
PDN-GW
LTE
LT
E
声通信とビデオ電話用に VoLTE サービス
の展開を開始しました。これらのサービ
スでは、回路交換式サービス、つまり 2G
および 3G ネットワークへのシームレス
な移行が保証されています。
IPsec
ePDG
Wi-Fi
WLAN
IMS
ePDG
PDN-GW
IPsec
IP multimedia subsystem
evolved packet data gateway
packet data network gateway
Internet protocol security
SRVCC single radio voice call continuity
VoWLAN voice over WLAN
VoLTE voice over LTE
図 4:ePDG を介した LTE/WLAN トラフィック・オフロード
NEWS 214/16
19
無線技術 | テスタ
複数の仮想リモート局によるテスト
仮想契約端末 2
電話:#2110
動作:応答
コーデック:狭帯域
エンドポイント:オーディオ・ボード
仮想契約端末 3
電話:#2111
動作:無応答
コーデック:n.a.
エンドポイント:n.a.
仮想契約端末 4
電話:#2112
動作:拒否
コーデック:n.a.
エンドポイント:n.a.
仮想契約端末 7
電話:#2115
動作:応答
コーデック:広帯域
エンドポイント:オーディオ・ボード
仮想契約端末 6
電話:#2114
動作:応答
コーデック:広帯域
エンドポイント:ループバック
仮想契約端末 1
電話:#*
動作:応答
コーデック:狭帯域
エンドポイント:ループバック
仮想契約端末 5
電話:#2113
動作:使用中
コーデック:n.a.
エンドポイント:n.a.
実際の契約端末 1
# 1220
# 5566778899
RF 2
RF 1
実際の契約端末 2
# 1221(デフォルト・ユーザ)
# 5544332211
図 5:R&S®CMW500 の IMS サーバ内仮想契約端末という概念によりさまざまなシナリオでのテストが可能
仮想契約端末という新しい概念により、
ユーザは、異なる特性と機能を持つ複数
の仮想リモート局を作成してテストする
ことが可能で、コーデックやエラー・レー
トといったさまざまなシナリオを迅速か
つ効果的に検証することができます。ま
た、ファームウェアの異なる実際の電話
(複数)を相互にテストすることも可能で
す(図 5)
。
IP と IMS の柔軟性により、ネットワーク・
オペレータは、新しいオーディオ・コー
デックやビデオ・コーデックを、既存の
アーキテクチャに妥当なコストで容易に
組み込むことができます。特に、新しい
オーディオ・コーデックである Enhanced
Voice Service(EVS) は、高 品 質 オ ー デ ィ
オ接続の実現に向けた大きな一歩です。
EVS は、その最高品質レベルにおいて、
人間の全可聴周波数範囲を送信すること
が で き ま す( 図 6)
。R&S®CMW-KS104
オプションを組み込んだ R&S®CMW500
は、LTE や WLAN などのさまざまな無線
技術について、EVS ベースの Voice over
IMS 通話に対応しています。
標準的なコーデック帯域幅
全帯域
超広帯域
レベル
広帯域
狭帯域
0 dB
–3 dB
図 6:音声コードの標
20 50
20
300
3400
7000
14 00020000
周波数(Hz)
準的送信帯域幅。新し
い EVS コーデックはす
べてをカバーします。
VoLTE および VoWLAN の精密解析
IP ベースの通信は柔軟性を備えています
が、ジッタやパケット喪失といった望ま
しくない副作用ももたらします。これら
の影響を最小限に抑えるために、あるい
は排除するために、データは受信機内に
バッファされます。実装された対策の効
果をテストするために、R&S®CMW500
テスタのデータ・アプリケーション・ユ
ニットは、これらのエラーを意図的に発
生させるための IP 障害発生機能と、それ
らのエラーを解析するための IP 解析機
能 を 備 え て い ま す。R&S®CMW-KM051
ディープ・パケット・インスペクション・
オプションを使用すれば、設定されたジッ
タ・プロファイルを検証して、データ喪
失を測定することができます。RF、プロ
トコル、およびデータという 3 つの領域
を組み合わせて 1 台のデバイスで同時
に解析を行うことにより、VoLTE および
VoWLAN プロセスのエラーを精密に解析
することが可能です。IP 解析を行えば、
OTT アプリケーションのデータ・パケッ
トを対応アプリケーションに相関付けて、
両者間の通信動作に関する結論を導き出
すことができます(以下を参照)
。
利用者の QoE を重視
スマートフォンを評価する際の重要な基
準のひとつが、1 回の充電で使用できる
時間です。大容量のバッテリはスマート
フォンに使用するにはサイズが大き過ぎ、
重量も重くなります。開発者は、個々の
ハードウェア・コンポーネント、特にア
プリケーションの電流消費に十分注意を
払う必要があります。アプリケーション
要件とモデムのネットワーク設定は共存
できるものでなければなりません。
源を供給します。IP ベースのイベントは、 イスの VoLTE 機能と VoWLAN 機能を詳
細に解析することができます。また、テ
スタの内蔵データ・アプリケーション・
のディープ・パケット・インスペクション・ ユ ニットと、IMS お よ び ePDG 用内 臓
エンジンは、アプリケーション、そのデー サーバにより、ユーザは、再現可能な実
タ・トラフィック、および消費電力の相 験環境において、WLAN のオフロードや
関関係を迅速に確認することを可能にし、 SRVCC シナリオのためにハードウェアと
最適化が必要な非効率的なアプリケー ソフトウェアを適切に連携させることが
ションも簡単に見分けることができます。 できます。また、イベント制御によるス
マートフォンの消費電力測定により、ハー
®
図 7 のセットアップは、R&S UPV オー ドウェア・コンポーネントとアプリケー
ディオ・アナライザを追加することによっ ションに関する改善の可能性が示されま
LTE の 節 電 モ ード で あ る Discontinuous て VoLTE 用に拡張可能で、VoLTE 通話中 す。ネットワーク・オペレータは、特定
Reception(DRX)などの機能は電力消費 の消費電力をモニタしながら、同時にオー のネットワーク特性の下で VoLTE 性能を
を削減しますが、VoLTE を組み合わせて ディオ品質を測定できるようになります。 精密に測定することによって、早い時期
にエラー源を確認できます。これは、携
テストする必要があります。ローデ・シュ
帯電話メーカーとネットワーク・オペレー
ワルツは、R&S®CMWrun テスト・シーケ サマリ
ンサ・ソフトウェアと R&S®CMW-KT051 LTE ネットワークと WLAN は、パケット タが、デバイスを市場に投入する前に、
ソフトウェア・パッケージをベースとす 交換 IP ストリームとして、他のデータと 機能や音声品質、その他のデータに関す
る完全自動ソリューションを提供してい 同様に音声を送信します。必要な QoS を るさまざまなパラメータを実験室でテス
ます。図 7 のテスト・セットアップでは、 保証するには、特別な手段を講じる必要 トするための汎用ツールです。
スマートフォンの電力消費に相関付ける
ことができます。R&S®CMW500 テスタ
組み込みのバッテリを使う代わりに、精
があります。最先端のネットワーク・シ
密電 圧計の機能を備えた R&S®NGMO2
ミュレーションと R&S®CMW500 の測定
リモート制御電源がスマートフォンに電
Christian Hof; Stefan Diebenbusch
能力により、デバイス・メーカーはデバ
図 7:イベント制御によるスマートフォンの消費電力測定。電力消費量の多いアプリケー
ションを簡単に見分けることができます。
NEWS 214/16
21
汎用測定器 | オシロスコープ
ハンドヘルド分野の
ニュー・プレーヤー
ローデ・シュワルツは、自社初の
ハンドヘルド・オシロスコープ
R&S®Scope Rider を発売しました。
しかし、特筆すべき点は、
初のハンドヘルド型装置である
ということだけではありません。
22
R&S®Scope Rider は、ラボ用オシロスコープの機能と性能、お
よびバッテリ電源式ハンドヘルド・デバイスの利便性と耐久性
を組み合せた製品です。内蔵するロジック・アナライザと高度
な測定機能によって、実験環境における組み込みデザインのデ
バッグや、現場での複雑な問題の解析に使用できる汎用型ツー
ルとなっています。
R&S®Scope Rider は、60 MHz の基本帯域幅(500 MHz まで拡
張可能)
、5 G サンプル/秒のサンプリング・レート、ラボ用オ
シロスコープの機能と、携帯型の頑丈なオシロスコープの性能
が両方必要とされるすべてのアプリケーションに使用すること
ができます。特別設計のフロントエンドと 10 ビット A/D コン
バータが、ラボ用測定機器と同様に、優れた感度と精度での信
号解析を可能にします。入力感度範囲は 2 mV/div から 100 V/div
まで拡大可能で、最大 200 V のオフセット補正が可能です。こ
れは、パワー・エレクトロニクス・モジュールの解析時には特
に重要です。
また、強力なトリガ・システムにより、複雑な信号波形の解析
も容易に行うことができます。多くのベンチトップ・モデルを
しのぐ 14 種類の異なるトリガ・タイプを使用でき、目標を定
めて信号成分のデータ捕捉と解析を行うことができます。エッ
ジ、グリッチ、パルス幅などの標準的なトリガ・タイプに加えて、
R&S®Scope Rider には、
ラント・トリガ、
アナログおよびデジタル・
ビデオ・システム用のビデオ・トリガ、スルー・レート・トリガ、
プロトコル・トリガを含む高度なトリガ機能を使用することがで
きます。トリガ・システムを完全にデジタル化とすることで、ト
リガ・ジッタを増大させるアナログ・トリガの経路を取り除くこ
とができるだけでなく、
システムに内在するデッド・タイムによっ
てトリガ・イベントを逃してしまう恐れのあるソフトウェア・ト
リガを使用する必要がなくなります。R&S®Scope Rider のトリ
ガ・システムにはこのような心配がなく、どのトリガ・タイプで
も入力信号を切れ目なくモニタすることができます。
キーやタッチスクリーンによる簡単操作
トリガなしで低頻度異常を可視化
不明確な異常パターンを扱う場合は、高い波形更新レートが特
に重要です(図 1)
。波形更新レートが高ければ、クロック信号
の散発的干渉のように予期せぬ時に発生する低頻度の信号異常
を、異常発生時にトリガをかけることなく捕捉して表示するこ
とができます。通常、こうした異常信号に関する予備知識なし
で、トリガをかけることは困難です。デュアルコア・チップ・シ
ステムを使用することにより、R&S®Scope Rider は、毎秒最大
50,000 信号波形という波形更新レートを実現しています。これ
は、明らかにラボ用測定機器と同等の性能です。同クラスのハ
ンドヘルド・オシロスコープで扱うことができるのはせいぜい
毎秒 100 波形で、トリガ機能を使用しなければ散発的異常を表
示することはできません。
多岐にわたる機能を容易に操作できることは、R&S®Scope Rider
の開発時における重要なポイントでした。この要求は、洗練さ
れたタッチスクリーン・デザインと、キーパッドおよび多機能
ロータリー・ノブによって満たされています。このオシロスコー
プは、タッチスクリーンまたはキーパッドですべての操作を行
うことができます。手袋を着用した現場での使用を考えると、
キーパッドは特に重要です。
キーの操作原理は単純です。キーを 1 回押すとその測定機能が
有効になり、もう一度押すとその機能が無効になります。キー
を押したまま保持すると、その測定機能のセットアップ・メ
ニューが表示されます。このため操作は非常に効率的になり、
メニュー・レベルを深くする必要もなくなりました。
図 1:R&S®Scope Rider の高い波形更新レートが、
このクロック信号の異常の表示を可能にします。
輝度でコード化されたディスプレイにより、低頻
度の異常信号が問題の原因であることが分かりま
す。
NEWS 214/16
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汎用測定器 | オシロスコープ
グラフィカル・ユーザ・インタフェースの開発にも特別な注意が
払われています(図 2)
。チャネル・インジケータがカラーコー
ド化されているので、測定結果と該当する入力チャネルを簡単
に対応付けることができます。また、読み易いフォントが使われ
ているので、測定結果の読み取りも容易です。測定機能とトリ
ガ機能、その他すべての設定はアイコンを使って説明されてい
るので、ほとんどの場合、ユーザ・マニュアルを開く必要はあり
ません。そして最後に、メニュー入力には 13 か国語を選ぶこと
ができ、それがユーザによる操作をさらに容易にしているという
のも重要な点です(図 3)
。
安全第一
携帯が容易で頑丈な設計のため、ハンドヘルド・オシロスコー
プはさまざまなサービス・タスクやメンテナンス・タスクに使
われます。一般的な用途としては、電気駆動系、パワー・エレ
クトロニクス、あるいは産業施設用電源などのチェックとメン
テナンスがあります。共通グランドラインを接続する従来型オ
シロスコープの使用時は、2 つの入力チャネル間のグランドライ
ンと信号ラインを取り違えると、直ちに短絡が生じて大電流が
流れるので危険です。
特別なフォントを使用しているので読み取りが容易です。チャネル・インジケータが、どの入力チャネルが
どの測定結果に対応しているのかを示します。
図 2:ユーザ・インタフェースは細
かい配慮の下に作られており、通常、
マニュアルが必要になることはほと
んどありません。
自動測定機能を始めとする
すべての基本的オシロスコープ機能は
アイコンで説明されています。
カラーコード化されたチャネル・インジケータが、各入力チャネルの最も重要な設定を表示します。
ローデ・シュワルツのロゴを選択すると
すべての設定に直接アクセスできます。
ナビゲーションはロータリー・ノブと
タッチスクリーンのどちらを使っても
可能です。
図 3:ユーザ・インタフェースの言
語は 13 カ国語から選択できます。
24
絶縁された入力チャンネルが、このリスクを防止します。また、
絶縁されたチャネルの差動機能が、さらなる利点を提供します。
つまり、差動測定が必要なアプリケーションでも、多くの場合、
高価なアクティブ差動プローブは不要です。
最大限の安全を確保する二重絶縁
CH 4
デジタル・ロジック・インタフェースや USB および LAN ポー
トを含むオシロスコープのインタフェース・ユニットは、測定
機器や入力チャネルから電気的に絶縁されています。このため、
アナログ測定チャネルを介してより高い電圧にリスクなく接続
して複数のデジタル制御信号を同時に解析したり、LAN を介し
て測定装置をリモート制御したりすることができます(図 4)
。
作動中の機器の危険な電圧の測定に使用する装置にとって、そ
の装置の測定カテゴリや保証最大 RMS 電圧は、安全に関する
重要な考慮事項です。これらの要素は、測定機器がユーザの安
全を確保しながら損傷を受けることなく耐えなければならない
最大電圧値を決定します。R&S®Scope Rider は最も高い測定カ
テゴリである CAT IV 用に設計されており、CAT IV 環境では最
大 600 V、CAT III 環境では最大 1000 V(RMS)の電圧を測定で
きます(図 5)
。
CH 1
CH 2
DC および/または
AC 電圧
CH 3
システム
チャネル・
リファレンス
DC 入力
インタフェース
電気的絶縁
USB、
Ethernet
MSO ロジック・プローブ
図 4:絶縁された入力チャネルが、2 つのオシロスコープ入力のグランドラ
インと信号ラインの取り違えによる短絡を防ぎます。したがって、パワー・
エレクトロニクスの測定も安全に行うことができます。
測定カテゴリ
内容
過電圧要件
0(旧 CAT I)
DUT を主電源に接続しないので、過電圧の恐れはない。
特になし
CAT II
主電源用ソケットまたは同様のポイントに DUT を接続。
恒久的な接続はしない。
最大 6000 V の過電圧
CAT III
ブレーカを介して、建屋内の主電源に DUT を恒久的に接続。
最大 600 V(RMS)の測定電圧に対して最大 6000 V の
過電圧。最大 1000 V(RMS)の測定電圧に対して最大
8000 V の過電圧。
CAT IV
直接、DUT を主電源に恒久的に接続。
最大 600 V(RMS)の測定電圧に対して最大 8000 V の
過電圧。
0
–
CAT II
CAT III
CAT IV
電源
ソケット
主サーキット・ブレーカ
+
トランス
図 5:測定カテゴリの概要
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汎用測定器 | オシロスコープ
5 種類の計測器を 1 つの筐体に
多くの場合、現場でのトラブルシューティングには、さまざま
な測定機能が必要になります。1 台の測定装置で使用できる機
能が多いほど、1 回のサービス・コールで持参しなければなら
ない測定機器は少なくなります。以下に示す 5 種類の測定器機
能が R&S®Scope Rider に組み込まれているのは、このような理
由によります。
■■
2 つまたは 4 つのチャネルと、ラボ用計測器なみの性能と機能
を備えたハンドヘルド・オシロスコープ
■■
デジタル制御信号の解析用に 8 つのデジタル入力を備えたロ
ジック・アナライザ(図 6)
■■
■■
■■
シリアル・プロトコルのデバッグ用にトリガ機能とデコーダ機
能を備えたプロトコル・アナライザ
読み取り値を長期的にモニタするためのデータ・ロガー(図 7)
4 チャネル計測器としてのデジタル電圧計、またはすべての従
来型マルチメータ測定機能を 2 チャネル計測器にまとめたデ
ジタル・マルチメータ
これが、R&S®Scope Rider を、現場における複雑なシステムの
サービスおよびメンテナンス・タスクや、開発ラボでの日常業
務に最適なものにしています。
図 6:R&S®Scope Rider は、デジタ
ル・ロジック・インタフェース(ミッ
クスド・シグナル・オシロスコープ)
と、シリアル・プロトコルのトリガ
リングおよびデコーディング機能を
備えた初のハンドヘルド・オシロス
コープです。
図 7:内蔵データ・ロガーによる長
期的モニタリング。
26
無線 LAN リモート制御とワンタッチ文書作成
高電圧テスト時や環境テスト・ラボ内など、危険な測定状況
や何らかのトラブルを引き起こしかねない測定状況に備えて、
R&S®Scope Rider には 無線 LAN モジュールが組み込まれてい
ます。このモジュールは、Scope Rider 用の 無線 LAN ホットス
ポットを作成するために使われます。測定は、ノート・パソコン、
タブレット、あるいはスマートフォンのウェブ・ブラウザから直
接行うことができます(図 8)
。
その他の詳細、製品カタログ、現在購入可能な製品については、
以下の製品紹介ページを参照してください。
www.2-minutes.com/jp
または
www.rohde-schwarz.co.jp/products/test_and_measurement/
oscilloscope/rth
Dr. Markus Herdin
ワンタッチ文書作成機能を使用すれば、1 日の測定結果を保存
し、後で簡単に文書を作成することができます。スクリーン
ショット、測定データ、および構成ファイルは、ボタンひとつ
で簡単に内臓 SD カードまたは USB フラッシュ・ドライブに保
存でき、後で PC に転送して文書を作成したり、さらに詳しく解
析したりすることが可能です。
2 種類の基本モデル、5 種類の帯域幅バリエーション、
豊富な拡張オプション
R&S®Scope Rider 購入時に決定しなければならないのは、2 つ
の基本モデル、つまり、追加のマルチメータ・チャネルを備え
た 2 チャネル測定モデルと、オシロスコープ・チャネル用の
デジタル電圧計機能を備えた 4 チャネル・モデルのどちらか
を選ぶかということだけです(図 9)
。どちらも基本帯域幅は
60 MHz です。その他のオプション機能はすべてキーコードを
使って有効にすることができます。納入されるオシロスコー
プには最大限の機能が組み込まれていますが、ユーザが本当
に必要とする機能だけを購入することができます。帯域幅は、
100 MHz、200 MHz、350 MHz、または 500 MHz にアップグ
レード可能で、その他の機能を有効にすることもできます。使
用できる機能は、
R&S®RTH-B1 ロジック解析オプション(MSO)
、
®
2
R&S RTH-K1(I C/SPI) お よ び R&S®RTH-K2(UART / RS-232)
プロトコル解析オプション、特別なトリガ・タイプを使用する
R&S®RTH-K19 拡張トリガ機能、R&S®RTH-K200 無線 LAN オプ
ション、および R&S®RTH-K201 リモート制御オプションです。
図 8:危険を伴うアプ
リケ ー ション の 場 合
は、無 線 LAN 経由で
ウェブ・ブラウザから
直接 R&S®Scope Rider
を操作することができ
ます。
図 9:2 種類の基本モデルを選べます:追加のマルチメータ・チャネルを備えた 2 チャネル・モデル(左)と、オシロスコープ・チャネル用のデジタル電圧計
機能を備えた 4 チャネル・モデル。
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汎用測定器 | オシロスコープ
R&S®RTM2000 マルチドメイン・
オシロスコープによる
ワイヤレス充電システムの解析
スマートフォンやその他のモバイル・デバイス用のワイヤレス充電が急速に普及しつつあ
ります。スウェーデンの大手家具会社も、ワイヤレス充電装置を組み込んだ新シリーズの
家具を発売しました。最も広く使われているワイヤレス充電規格は Qi と Rezence です。
これらの充電装置を開発してその妥当性を確認する際には、時間ドメインと周波数ドメイ
ンの両方でその動作を解析することが重要です。最も迅速かつ便利な方法は、1 台のオシ
ロスコープ内で両方のドメインを時間的に相関付けることです。
ワイヤレス充電器はそのフラットな構造により日常の環境に組
み込むことができるので、さまざまな業界のメーカーがその利
点を利用するようになっています。ワイヤレス充電器は、たと
えば新型車や家具にも組み込まれています。また、多くのスマー
トフォンがワイヤレス充電に対応しています。ケーブル不要の
この便利な充電は、ユーザにとっては非常に便利です。充電さ
れたスマートフォンはより多くの利益を生み出す可能性がある
ので、ネットワーク・オペレータにとっても利益の元となります。
このため、ネットワーク・オペレータによるファスト・フード・
チェーンなどへの充電器提供が進んでいます。
多くの機能をオシロスコープに組み込み、オプションによって
アップグレードするというトレンドは、開発者にとって利点とな
ります。たとえば、
R&S®RTM2000 マルチドメイン・オシロスコー
プには、スペクトラム解析およびスペクトログラム・オプション
(R&S®RTM-K18)
があります。ハードウェア実装されたデジタル・
ダウンコンバージョン(DDC)機能は、信号量を減らして解析
に関係する成分だけにしますが、この機能により、DC からオシ
ロスコープ帯域幅まで、アナログ入力信号のスペクトラムを高
速で解析することが可能になります。測定パラメータは、時間
ドメイン(時間と分解能)と周波数ドメイン(中心周波数、
スパン、
および分解能帯域幅)で個別に最適化することができます。
最近行われた Power Matters Alliance(PMA)と Rezence デベ
ロッパーである Alliance for Wireless Power(A4WP)の合併後、 以下の項では、R&S®RTM2000 を使用し、これらの課題を迅速
主なワイヤレス充電規格は Qi と Rezence の 2 つになりました。 かつ洗練された形で解決する方法を示します。
開発者にとっての設計課題は同じです。これらがどのようなも
のであり、どうすればその要求事項を満たすことができるのか
について、Qi 規格を例に以下で説明します。
Qi 充電システムのブロック図
開発者にとっての Qi とその課題
スマートフォン
モニタリング
Qi 規格に基づくワイヤレス電力伝送システムは、
110 kHz ~ 205 kHz
バッテリ
の周波数を使用し、最大 5 W の電力を伝送します。Qi 充電シス
受信コイル
通信
テムのセットアップを図 1 に示します。これらのシステムには、
選択、Ping、識別/構成、電力伝送という 4 つのフェーズがあ
電力
応答
ります。開発段階では、特に注意すべき点が 2 つあります。ひ
とつは、充電スタンドにデバイスを近づけた時のシステム動作、
送信コイル
通信
電源
つまり選択フェーズから電力伝送フェーズへの移行です。もう
ひとつは電磁干渉の解析で、これは、制御用の比較的弱い信号と、
5 W の電力伝送を行う強い信号が混在しているためです。どち
モニタリング
充電スタンド
らの開発タスクにおいても、制御要素のデジタル信号と、送信
コイルおよび受信コイルからの信号を、時間による相関付けの
下にモニタすることが不可欠です。これには、オシロスコープ 図 1 :Qi 充電システムは、スマートフォンと通信を行って電力伝送条件をネ
と入門機レベルのスペクトラム・アナライザが必要です。より ゴシエートします。
28
図 2:3 つのグラフで示した選択モードでのアナ
ログ Ping 信号:時間(上)
、周波数スペクトラム
(下)
、および時間対スペクトラム(スペクトログ
ラム、中)
。
電力伝送セットアップの特性評価
選択モードは基本的に電力節約のためのアイドル・モードです
が、このモードでは、充電スタンドの電力送信機が、その環境
をモニタするために定期的にアナログ Ping を送信します(図
2)
。たとえば、電力送信機が誘導磁場の変化によって近傍に物
体を検出すると、システムは Ping フェーズへ移行します。この
フェーズでは電力送信機が、近傍にあるその物体がスマートフォ
ンなのか、他の(金属製の)物体なのかを判定するために、応
答を要求するデジタル Ping を実行します。スマートフォンがこ
の Ping 信号に応答すると、システムは識別および構成フェーズ
に移行し、応答がない場合はアイドル・モードに戻ります。識
別および構成フェーズでは、まず、充電スタンドとスマートフォ
ンが、必要電力などの構成情報に基づいて電力伝送条件をネゴ
シエートします。これに続いて、時間的に相関付けされた電力
伝送が実行されます。
必要電力量を制御する方法は規格に指定されていませんが、3 つ
のプロセスが確立されています。
❙ 周波数制御:共振周波数を調整することによって充電コイルの
電力量を制御し、これによって伝送電力を制御します。
❙ デューティ・サイクル制御:インバータのデューティ・サイク
ルを必要電力に合わせて調整します。
❙ 電圧制御:充電コイルに加える電圧を調整します。
仕様では、異なる方法を並行して実装することも認めています。
周波数制御設計の特性評価を行う場合は、2 つの側面がありま
す。第一に、電力伝送条件をネゴシエートする時はさまざまな
時間間隔に従います。これには、2 つの通信プロセス間の具体
的な最小時間と、故障時に電力伝送を適切なタイミングで終了
することが含まれます。これらの時間は比較的長いですが(ミ
リ秒の範囲)
、定められた間隔に従わないと、多くの場合は障害
を招きます。第二に、通信における微弱な振幅変位変調(ASK)
信号を測定するには、高いダイナミック・レンジが必要です。
接続確立後の電圧レベルの変動は、多くの場合、互換性に関す
る問題を引き起こします。指定されたレベルに従うことは電力
効率の点でも利点となり、ENERGY STAR などのさまざまな電
力効率規格がこれを要求しています。
コイル設計と電力効率の最適化
効率的な充電を行うには、キャリア周波数 fc の周波数と振幅の
調整について正確に理解することが重要です。電力効率は、コ
イルの特性と素材に大きく影響されます。スペクトラム解析お
よびスペクトログラム・オプションを搭載した R&S®RTM2000
を使用すれば、ハンドシェイク時に fc を正確に解析することが
できます。オシロスコープの高いダイナミック・レンジのおか
げで、比較的大きい 20 V(Vpp)キャリア上の微弱な ASK 変調
信号も、図 3 に示すように測定することができます。解析のた
めの時間ウィンドウは、この情報に基づいて選択します。実際
の変調を解析する最良の方法は、スペクトログラムを使用する
ことです。スペクトログラムでは、信号レベルがカラーコード
化されて時間軸沿いにプロットされるので、スイッチング操作
などの変化を容易に読み取ることができます。
NEWS 214/16
29
汎用測定器 | オシロスコープ
FFT レートの高い R&S®RTM2000 は、ごく短時間のうちに起る
周波数変化も捕捉して表示することができます。R&S®RTM-K15
ヒストリおよびセグメント・メモリ・オプションを使用すれば、
スペクトログラムのマーカが捕捉時間を表示し、大容量の 460
M サンプル・メモリから、対応する時間と周波数波形をロード
することができます。すべてのオシロスコープ・ツールは、ロー
ドした波形を解析するために使用することができます。たとえ
ばマスク・テストは、エラーが発生したアナログ信号内の信号
異常を特定するための優れた方法です。
あらかじめ調査を行っておくと、後で行う電磁両立性評価の際
に慌てなくて済みます。
Qi 回路の電力を調整するために行う、キャリア周波数 fc に関す
るこのような変調を、図 4 に示します。スペクトログラムの上側
1/4 には、充電スタンドのアイドリング周波数(175 kHz)が示さ
れているのが分かります。負荷が接近すると fc はまず 120 kHz
に変化し、さらに距離が近づくにつれて徐々に 205 kHz まで調
整されます。青の最大ホールド・トレース、つまりすべての fc
スペクトラムの最大値を囲む包絡線部分(黄色のトレース)は、
振幅変化の解析を極めて容易にします。コイルは、この解析に
基づいて調整できます。
R&S®HZ-15 セットに付属しているプローブのような適切な近傍
界プローブを使用すれば、ボード・トラックを直接確認して、
設計の問題箇所を迅速に突き止めることができます(図 5)
。ま
た、スペクトラム・アナライザの場合同様、スペクトラム解析
およびスペクトログラム・オプションを組み込んだオシロスコー
プを使用すれば、中心周波数、スパン、および分解能帯域幅な
どのパラメータを測定時に調整することができます。これによ
りユーザは、対象の周波数範囲を特定して解析することができ
ます。通常、時間の短い散発的放射は、スペクトラム・アナラ
イザでなければ発見できません。
しかし、
R&S®RTM-K18 オプショ
®
ンの DDC 実装は、R&S RTM2000 オシロスコープによるこれら
の放射の検出を可能にします。時間ドメインで複数イベントを
同時にモニタする追加的機能のおかげで原因をより簡単に特定
することができ、シールディングなどの対策も、この解析に基
づいて選ぶことができます。
電磁的感受性の解析
充電スタンドの電磁的感受性の特性評価は、もうひとつの重要
なタスクです。大きな充電コイルだけではなく、ボード上のト
ラックも、完全なアンテナとしての挙動を示します。開発時に
具体的に言うと、通常、充電スタンドの状態の中の 2 つが最大
の課題となります。まず、接続を確立する際の定期的な Ping が、
ボード・トラックにリップルとノイズを発生させます。後の電力
伝送フェーズではシステムの共振周波数が固定されるので、そ
れ以前のフェーズよりも外部からの電磁干渉を受けやすくなり
ます。
50 V
アナログ Ping
デジタル Ping
50 V / ASK 変調ハンドシェイク部分の拡大
図 3:アナログおよび
デジタル Ping による
接続の確立と、ASK 変
調によるその後の構成
フェーズ
30
サマリ
無線充電システムには、RF、デジタル、電源、および制御用の
コンポーネントが含まれているので、これらのシステムの開発
時にはさまざまな測定機能が必要になります。R&S®RTM2000
のようなマルチドメイン・オシロスコープを使用すれば、これ
らの測定タスクに関する問題を容易に解決できるため、余分な
装置を揃える必要もありません。
Dr. Philipp Weigell
図 4:デバイスが充電
スタンドに接近してい
る状態。焦点を明確に
するために、時間ドメ
選択
インは無効にしてあり
ます。
接近
近傍の
受信機
最短コイル距離
電力
伝送
周波数変化の
包絡線
コンポーネント・オフ
コンポーネント・オン
図 5:H 近傍プローブによる Qi コントローラのスキャニング(左)
。コンポーネントをスイッチ・オフした場合とオンした場合の弱い電磁干渉(中央)と強い
電磁干渉(右)
。
NEWS 214/16
31
汎用測定器|信号の生成と解析
現場とラボの
両方に対応した装備 -
®
R&S Spectrum Rider
32
新しい R&S®Spectrum Rider を使用すれば、現場およびラボでのスペクト
ラム解析を、より容易かつ迅速に、しかも手頃なコストで行うことができま
す。この装置は、RF 送信機の設置とメンテナンス、および修理時や開発ラ
ボでのトラブルシューティング用に設計されています。
ベース・ユニットの周波数範囲が 5 kHz
から 2 GHz に拡大され、さまざまなラ
ボ用および教育用アプリケーションに使
用できます。また、ソフトウェア・キー
コ ード に より、2 GHz を 超 え る ア プ リ
ケーションや 3 GHz を超える LTE 用に、
R&S®Spectrum Rider の 範 囲 を 容 易 に
3 GHz または 4 GHz に広げることができ
ます。
びました。
大型のボタンや多機能ロータリー・ノブ
により、現場作業時も手袋を着けたまま
で操作が可能です。照明付きキーパッド
は暗い場所でも使いやすく、無反射ディ
スプレイには測定結果表示が見やすく表
示されて、ディスプレイにユーザが写り
込むこともありません。
■■
R&S®Spectrum Rider(図 1)は、MIL-PRF28800F class 2 仕様に従い、極めて頑丈
に設計されています。また、IP51 に基づ
く防滴・防塵構造を採用しており、低消
費電力(約 8 W)のためファンも不要で
す。このためアナライザの寿命が延び、
低騒音の動作が実現されています。わず
か数秒で起動することができ、バッテリ
を再充電することなくほぼ 8 時間の連続
使用が可能です。また、合計重量は 2.5kg
(バッテリを除く)に過ぎません。
業務用エレクトロニクスを扱う著名
なメディア・ハウスである EDN は、
2015 年の「ホット 100 プロダクツ」
のひとつに R&S®Spectrum Rider を選
■■
高調波および相互変調成分の測定
時間ドメインでのパルス信号の測定
R&S®Spectrum Rider は、18 cm 静電容量
式タッチスクリーンとキーパッドにより
簡単に操作することができます。中心周
波数、スパンおよびリファレンス・レベル、
マーカの管理など、ほとんどの設定はア
ナライザのタッチスクリーンで調整でき、
スマートフォンと同様に直感的な操作が
可能です。
そ の 小 さ い サ イ ズ に も 関 わ ら ず、
R&S®Spectrum Rider はさまざまな機能と
確かな RF 性能を備えています。
■■
キャリアから 100 kHz のオフセットで
-105 dBc(1 Hz)の位相ノイズ
■■
合計測定不確実性 0.5 dB
■■
3 GHz まで DANL < -163 dBm(標準値)
の高感度
図 1: 現 場 で の 使 用
を 念 頭 に 設 計:R&S®
サービス時および開発ラボにおける代表
的な RF 診断用測定機能:
■■
RF 発信源の周波数および振幅測定
■■
周波数カウンタによる正確な周波数指
示値(たとえば周波数リファレンス調整)
■■
スプリアス放射の測定
Spectrum Rider は IP51
に 基 づ く 防 滴・ 防 塵
設計を採用しており、
MIL-PRF-28800F class 2
の仕様を満たしていま
す。
NEWS 214/16
33
汎用測定器|信号の生成と解析
コンフィグ・メニュー・アイコンをタッ
チまたはクリックすると、ローデ・シュ
ワルツのハイエンド・シグナル・スペク
トラム・アナライザのメニューを簡略化
したメニューが表示されます(図 2)
。こ
のメニューでは、周波数、振幅、帯域幅
などの測定設定の概要を確認し、変更す
ることができます。
R&S®Spectrum Rider は、2 スペクトラム・
トレース、AM/FM オーディオ復調、リモー
ト制御、周波数カウンタなど、日常的な
スペクトラム解析に使われる標準的な機
能を、各種備えています。
また、ピークおよび平均電力測定といっ
たフィールド・エンジニアや修理ラボの
日常業務に適した、測定アプリケーショ
ンもオプションで用意されています。す
べてのオブジェクトはソフトウェア・キー
コードを使って簡単に有効にすることが
できるので、インストールに別途コスト
がかかったり、装置の移送によってダウ
ンタイムが発生したりすることはありま
せん。
図 2:コンフィグ
表示メニュー
図 3:R&S®FPH-K29 オ
プションと R&S®NRPZ8x パワー・センサに
よるパルス解析
34
現場での使用例:
パワー・センサによるパルス測定
立上り/立下り時間、デューティ・サイ
クルなどの主なパルス・パラメータは、
R&S®FPH-K29 オ プ シ ョ ン と R&S®NRP- 自動的に表示されます。トリガ機能とマー
Z8x 広帯域パワー・センサを使用すれば、 カも使用でき、時間分解能を上げればパ
パルス電力とピーク電力を正確に測定で ルスを拡大表示することができます。こ
きます。これらのセンサは、44 GHz まで れは、たとえばレーダー・システムの設
の周波数において、最大 50 ns の分解能 置とメンテナンスなどに便利です。
でパルスを測定します(図 3)
。パルス幅、
ラボでの使用例:オプションの
近傍界プローブによる EMI デバッグ
R&S®HZ-15 近 傍 界プローブ は、EMI デ
バッグ用の診断ツールとして、たとえば
回路基板、集積回路、ケーブル、
シールディ
ングなどに使用します。これらのプロー
ブは、30 MHz から 3 GHz までの放射測
定に適しています。R&S®HZ-16 プリアン
プは 3 GHz までの測定感度を改善し、ゲ
インは約 20 dB、雑音指 数は 4.5 dB で
す。この近傍界プローブとプリアンプを
R&S®Spectrum Rider と組み合わせて使用
すれば、開発時における干渉源の解析お
よび特定を、リーズナブルな費用で実現
することができます(図 4)
。
図 4:回路基板、集積回路、ケーブ
ル、シールドなどの測定のための
R&S®Spectrum Rider と EMI プロー
ブの組み合わせ
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35
汎用測定器|信号の生成と解析
測定ウィザードを使って作業するために必要な 3 つのステップ
A
プロジェクトのマネージャ
またはエキスパートがまとめて
テスト・シーケンスを作成
B
オペレータが
ウィザードを使用して
テスト・シーケンスを実行
C
オペレータが測定結果を
プログラム・マネージャ/
エキスパートに提示して、
文書化
標準的なテスト・シナリオ
ウィザードのプリセット
●●●
ウィザードのガイドに従ってテスト・シーケンスを実行
●●●
現場2
現場3
現場調査や、送信設備の設置およびメン
テナンスには、多くの場合、スペクトラ
ム測定用の標準的なセットが必要です。
ウィザードを使用すれば、標準化された
測定を何度でも簡単に行うことができま
す(図 5)
。
まず、測定内容を十分に理解した上で、
無料の R&S®Instrument View ソフトウェ
アを使い、PC 上にテスト・シーケンス
を作成します。各測定ステップには、写
真や説明文を追加できます。設定が完
了した測定シーケンスは、LAN 経由で
R&S®Spectrum Rider へ転送することがで
きます。現場のオペレータが行う操作は、
ウィザードを起動して測定シーケンスを
選択し、タッチスクリーンに表示される
説明に従うだけです。装置の設定は各テ
スト・ステップに合わせて正しく行われ
るので、現場で構成に時間をかける必要
はありません。
シーケンスを
まとめて作成
現場1
簡単かつ迅速な測定のための
ウィザード
すべての測定が終了したら測定結果を
Windows タ ブ レ ット や PC に 転 送 し、
R&S®Instrument View ソ フ ト ウ ェ ア を
使って数秒で測定レポートを作成するこ
とができます。
現場n
Laura Sanchez
同一様式で報告
テストの報告と評価
図 5:測定準備と結果の後処理の標準的シナリオ。
現場のオペレータが行う操作は、ウィザードを起
動してタッチスクリーンに表示される説明に従う
だけです。
36
図 1:R&S®FSWP 位相雑音アナライザ/ VCO テスタ
レーダー・システム用ハイエンド
信号源の位相雑音測定
新しい R&S®FSWP 位相雑音アナライザ/ VCO テスタは、位相雑音が極めて低い内蔵信
号源を備えています。相互相関法とこの信号源を組み合わせれば、高い安定性を持った信
号源(レーダー・システムに使われるものなど)の位相雑音を短時間で測定できる高い感
度が得られます。
信号源の品質は、高度なレーダー・システムの性能を左右する
最も重要な要素です。信号源の位相雑音が低いということは、
それだけ空間分解能が良く、移動物体の速度をより正確に測定
できることを意味します。位相雑音を最小限に抑えるには、ユー
ザが、パルス・モードでも位相雑音を測定できなければなりま
せん。これまで、これらの測定には、位相検出器、FFT スペク
トラム・アナライザ、極低ノイズのリファレンス信号源で構成
される複雑なシステムが必要とされてきました。これらの信号
源は、正確な測定結果を保証するために、DUT の信号よりはる
かに高品質の信号を供給できなければなりません。さらに高い
感度が必要な場合、ユーザは 2 つの異なるレシーバ、2 つの異
なるリファレンス信号源、および 2 つの位相検出器を用いて相
互相関法を使用することもできます。
NEWS 214/16
37
汎用測定器|信号の生成と解析
ユーザはこれを用いることで、2 つの測定系から生じるリファ ΔL = 5 × log(n )
レンス信号源と測定系の構成部品が発生するノイズを低減する
ΔL:相互相関による位相雑音感度の向上(dB)
ことができます。この方法は測定系が非常に複雑になりますが、 n: 相関/平均の数
次の式に示すように、感度は大幅に向上します。
たとえば、相関数を 10 倍にすると、位相雑音測定の感度が 5
dB 向上します。
図 2:周波数オフセッ
ト 1 MHz、 位 相 雑 音
-190 dBc(1 Hz)の時
のハイエンド OCXO の
トレース
図 3:ベクトル信号解析、
パルス信号解析、高調
波測定、高感度位相雑
音測定 - R&S®FSWP
はこれらすべてをこなし
ます。また、測定チャネ
ルの切り替えや、結果
の同時表示も簡単に行
うことができます。
38
位相雑音が重要なパラメータとなるのは、レーダー・アプリケー
ションだけではありません。OCXO や DRO などのハイエンド発
振器や、科学用および通信用アプリケーションに使われるシン
セサイザなどで高感度の測定を行うには、これらの複雑な測定
系を使わなければなりません。
R&S®FSWP 位相雑音アナライザ/ VCO テスタ(図 1)を使用
すれば、必要なすべての測定を 1 台で、しかも簡単なボタン操
作だけで行うことができ、ユーザは複雑な測定系に悩まされる
ことなく、DUT の評価・改善に注意を集中することができます。
極低ノイズ内蔵リファレンス信号源および相互相関法、パルス
信号の位相雑音機能、残留位相雑音用の内蔵信号源などの追加
オプションにより、R&S®FSWP は、レーダー・アプリケーショ
ンに欠かすことのできない測定器となっています(図 2)
。
R&S®FSWP は、DUT の信号が要求を満たしているかどうかを
検証するために、シグナル・スペクトラム・アナライザとして
使用することもできます。R&S®FSWP は、ユーザがさまざまな
測定チャネルの切り替えを可能にするオールインワン・ソリュー
ションです(図 3)
。スペクトラムの概要を素早く確認してから
位相雑音を測定する操作が簡単に出来ます。
図 4:さまざまな周波数
位相雑音および振幅雑音の高感度測定
たとえばレーダー・システム発振器の位相雑音を測定する場合、
測定用の外部リファレンスやその他の複雑なセットアップは不
要です。R&S®FSWP の内部発振器は、位相雑音性能の点で、市
場におけるほとんどすべての発振器や信号源をしのいでいます
(図 4)
。さらに高い感度が必要な場合は、相互相関法によって
最大 25 dB の感度向上が可能です。R&S®FSWP は、このために
もうひとつの内蔵局部発振器(R&S®FSWP-B60 オプション)を
使用します。トレースの下のグレー領域は、設定した相関数に
対応して、その時の測定で実現可能な感度レベルを示していま
す(図 5)
。これ以上に相関を加えても感度を改善できない場合
は、相関プロセスを自動的に中断することができます。内蔵信
号源が極めて低ノイズなので、多くの場合、ハイエンド発振器
の測定に必要な相関数は数回で済みます。これらの高感度測定
では、極めて迅速かつ高い信頼性で結果を得ることができます
(同クラスの測定システムよりも最大で 100 倍高速)
。
R&S®FSWP は DUT の信号をベースバンドへ変換してからデジ
タル化し、それを復調します。位相雑音に加え、特にデジタル
変調法において重要性を増しているパラメータである振幅雑音
の測定が可能です。この場合も、相互相関法による利点を生か
して、ダイオード検出器(現在最も一般的な方法)で実現可能
な感度より 20 dB 以上高い感度で測定を行うことができます。
R&S®FSWP の位相雑音
における R&S®FSWP の
内蔵局部発振器の位相
–20
位相ノイズ(単位:dBc、1Hz)
雑音
–40
10 GHz
1 GHz
100 MHz
10 MHz
–60
–80
–100
–120
–140
–160
–180
1 Hz
10 Hz
100 Hz
1 kHz
10 kHz
100 kHz
1 MHz
10 MHz
周波数オフセット
内蔵局部発振器の標準位相雑音
1 GHz
1 Hz
10 Hz
100 Hz
1 kHz
10 kHz
100 kHz
1 MHz
10 MHz
–60 dBc
–88 dBc
–116 dBc
–141 dBc
–153 dBc
–159 dBc
–163 dBc
–176 dBc
NEWS 214/16
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汎用測定器|信号の生成と解析
位相雑音と振幅雑音は、同一グラフ上に同時に表示するか、ウィ
ンドウを分けて表示することができます(図 5)
。
ボタンひとつでパルス信号源の位相雑音を測定
航空宇宙および防衛分野におけるレーダー・システムからの信
号は、ほとんどの場合パルスです。これまで、これらの信号源
における位相雑音測定には、非常にコストのかかる複雑な測定
系が必要でした。これは、必要なパルス源を DUT に同期させ
なければならないからです。また、安定した測定値を得るには、
正確なパルス・パラメータ情報と大変な忍耐も必要でした。し
かし、それも今では過去の話です。R&S®FSWP-K4 オプション
を搭載した R&S®FSWP を使用すれば、ボタンひとつでこれら
の測定を行うことができます。このデバイスは信号を記録し、
パルス繰り返し時間やパルス幅といったパラメータをすべて自
動的に計算して(図 5)信号を復調し、位相雑音および振幅雑
音を表示します。最大使用可能オフセット範囲の設定や測定の
校正は R&S®FSWP が自動的に行いますが、たとえば、過渡応
答を除いたり感度向上のためにユーザがゲートを定義すること
もできます(図 6)
。パルス・オフの時間が長い場合には、パル
ス信号の平均信号出力が非常に低くなり、ダイナミックレンジ
が減少して感度が低下しますが、極低ノイズのリファレンス信
号源と相互相関法により補うことができます。
シグナル・アナライザとして、R&S®FSWP は、パルス信号の位
相雑音測定以外にも使用することができます。R&S®FSWP-K6
オプションを使用すれば、パルスの立上り/立下り時間、位相
応答および周波数応答、パラメータ・トレンドなど、パルス信
号源の特性評価を行うために必要な各種パラメータを自動的に
測定することも可能です。
図 5:スペクトラム・アナライザ(下)と位相雑音・アナライザ(上)による時間ドメインと周波数ドメインでのパルス信号の測定。左上のウィンドウにはパ
ルス信号源の位相雑音、右上のウィンドウには振幅雑音が表示されます。雑音測定トレースとその下のグレー領域の間の距離は、相関法によって改善された
感度を表します。トレースとグレー領域が離れていない部分は、明確な測定結果を得るために相関数を増やす必要があることを示しています。
40
図 6:R&S®FSWP はパルス・パラメータを自動的に測定しますが、ユーザがゲートを定義することもできます。
パルス信号でも残留位相雑音を測定
R&S®FSWP には、残留位相雑音を測定するために内蔵信号源
(R&S®FSWP-B64)を組み込むことができます。これらの測定
は、たとえばハイエンド・レーダー・アプリケーションの開発
に不可欠です。ユーザは、信号経路内にあるアンプなどの個々
のコンポーネントが、ローカル発振器の位相雑音をどれだけ増
加させるかを知る必要があります。2 ポートのコンポーネント
は、信号を発生しなくても、信号に悪影響を与えて位相雑音を
増加させる可能性があります(残留位相雑音)
。R&S®FSWP で
は、これまで極めて高品質の信号源と位相シフタが必要だった
この複雑な測定を、ボタンひとつで行うことができます。必要
な準備は、内蔵信号源を DUT の入力に接続して、DUT の出力
を R&S®FSWP に接続するだけです。これで、DUT の残留位相
雑音を測定することができます。R&S®FSWP はこの動作モード
に相互相関法も使用して、内蔵周波数コンバータの残留位相雑
音を抑制します。
R&S®FSWP-K4 オプションを使用すれば、R&S®FSWP でパルス
信号の残留位相雑音を測定することもできます。レーダー送信
機用コンポーネントの動作は連続信号とパルス信号で異なるの
で、実際の(つまりパルス信号を使用する)条件下でコンポー
ネントの特性評価と最適化を行うには、これらの測定値が必要
です。
サマリ
新しい R&S®FSWP 位相雑音アナライザ/ VCO テスタの利点は、
その極めて高い位相雑音測定感度だけではありません。比類の
ない使いやすさと広範な測定オプションも備えています。連続
信号とパルス信号の位相雑音と振幅雑音、および残留位相雑音
の測定に加えて、シグナル・スペクトラム・アナライザとして
使用することができます。
Dr. Wolfgang Wendler
R&S®FSWP の概要
周波数範囲 R&S®FSWP8:1 MHz ~ 8 GHz
R&S®FSWP26:1 MHz ~ 26.5 GHz
R&S®FSWP50:1 MHz ~ 50 GHz
オフセット周波数範囲
入力信号 ≦ 1 GHz 10 mHz ~キャリア周波数の 30%
入力信号 > 1 GHz 10 mHz ~ 300 MHz
位相雑音 図 4 を参照
NEWS 214/16
41
フォーカス | Radiometer Physics GmbH (RPG)
年に予定されています。探査機には RPG の技術
を使用した SWI のサブミリ波分光計が搭載され
ます。
42
© ESA / AOES
木星の衛星エウロパを目指して飛行中の ESA 宇宙
探査機 JUICE(想像図)
。ミッション開始は 2022
高く、遠くへ
ローデ・シュワルツの子会社 Radiometer Physics GmbH(RPG)の
製品に関連する研究対象は、夜空を見上げれば見つけることができま
す。ただし、多くの場合は望遠鏡が必要です。
研究開発への取り組み
ボン近郊のメッケンハイムにある新しい
社屋で業務を行うこの会社のルーツは、
宇宙であると言えるでしょう。会社がボ
ンに置かれているという事実は偶然では
ありません。RPG の創立者であるペー
ター・ツィンマーマン博士が 20 年以上
勤務したマックス・プランク電波天文学
研究所に近いという事情によるものです。
博士はその後、NASA ジェット推進研究
所のマイクロ波リム・サウンダ計画に数
年間従事したことでサブミリ波による地
球大気調査技術に深く関わるようになり、
1991 年に自社を設立しました。設立当初
の同社は、もっぱら最大 1 THz までのミ
キサおよびローカル発振器の開発と、そ
れらの受信機システムへの組み込みに専
念していました。しかし、その後間もな
くしてラジオメータ(コラムを参照)全
体の製造へ移行したことは、言うまでも
なく RPG の技術的焦点にかなったことで
した。同社とその製品ラインは、それま
でに無い周波数範囲、そしてまた対応が
難しい周波数範囲における新たなアプリ
ケーションを求める市場の需要拡大とと
もに成長を遂げましたが、これらは同社
がそれまで熱心に取り組んできた分野で
す。気象測定装置は、現在でも、同社ポー
トフォリオの主力製品です。パッシブ・
ソリューション(ラジオメータやシンチ
ロメータ)に加えて、RPG は現在、雲レー
ダー・システムなどのアクティブ気象ス
キャナも提供しています。さらにもうひ
とつの業務分野には、2002 年に経営のバ
トンが後進に渡されてからも、宇宙探査
に対する創業者の情熱が引き継がれてい
ます。RPG のサブシステムは、過去も現
在も、ESA や NASA、その他の国の宇宙
機関が運用する重要な人工衛星や探査機
に使われています。また、ESA の Jupiter
Icy Moons Explorer(JUICE)
(前ページ写
真)ミッションのような将来的プロジェ
クトへ向けた研究開発努力が、積極的に
進められています。同社の第三の柱では、
地球へ、そしてローデ・シュワルツへ視
点が戻されています。電磁波スペクトラ
ム全体を解明しようとすれば 100 GHz を
超える領域についても考える必要があり、
テラヘルツという範囲にも挑戦しなけれ
ばなりません。しかし、この周波数範囲
で開発者が考えなければならない物理的
および技術的な落とし穴を検討するにあ
たっては、これらの問題を得意とする企
業と協力するというのが理に叶った方法
でした。初期の合同テストと測定プロジェ
クトは、ローデ・シュワルツ製ネットワー
ク・アナライザと信号発生器の周波数範
囲を 3 桁のギガヘルツ範囲まで拡大しま
した。RPG の技術を将来も確保するため
に、ローデ・シュワルツは 2006 年に同社
の株式買収を開始し、2010 年に筆頭株主
となりました。以降、テストおよび測定
プロジェクトに関して両社は密接な協力
を続けています。
広い裾野を持つマイクロ波技術の市場
的重要性が、なぜテラヘルツ範囲に置か
れる見込みがないのかということについ
ては、いくつかの理由があります。しか
し、この分野は研究開発における排他的
なニッチ市場にあたり、この範囲の徹底
的な調査を行った上で医薬品、材料科学、
工業用センサ技術、セキュリティおよび
通信技術へ応用すれば、魅力的なオプショ
ンとなり得ます。
ラジオメータとは?
ラジオメータとは、電磁波の放射を
測定するための装置です。RPG 製装
置の中核をなすのは、上空からの電
磁波のうちマイクロ波範囲のものを
測定する超高感度受信機モジュール
で す( 約 3 GHz ~ 660 GHz)
。この
範囲で放射される電磁波を個別の受
信チャネルで検出できるようにする
には、大幅に増幅する必要がありま
す(60 dB)
。これらの チャネ ル は、
空気に含まれる水分や酸素の吸収ス
ペクトラムを捉えられるように配置
されます。この情報により、
研究者は、
測定経路に沿った温度や湿度の分布
データを知ることができます。
電磁波スペクトラム
1 km
103
1m
102
101
1 MHz
105
106
1 GHz
107
電波
1 μm
1 cm 1 mm
1 nm 1 Å
100 10 –1 10 –2 10 –3 10 –4 10 –5 10 –6 10 –7 10 –8 10 –9 10 –10 10 –11 10 –12
108
109
1 THz
1 PHz
1 EHz
1 ZHz
1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 10 20 1021
マイクロ波
テラヘルツ波
IR
UV
X線
ガンマ線
マイクロ波領域と赤外線領域の間にあるテラヘルツ波(またはサブミリ波)範囲は、エレクトロニクス
分野から光学分野への遷移領域にあたります。
NEWS 214/16
43
フォーカス | Radiometer Physics GmbH (RPG)
地上からの気象観測
マイクロ波リモート・センシング装置は
RPG の重要な事業分野です。同社は、大
気リモート・センシング用の地上設置型
測定装置の開発に力を入れています。気
球による測定と異なり、リモート・セン
シングでは現場での測定を行わず、研究
者は観測対象(この場合は大気)から放
出される電磁波を解析しますが、これに
は分子から自然に放出される熱も含まれ
ます。ラジオメータは、このパッシブ測
定の原理に基づいています。あるいは、
アクティブ・レーダーを使用して、雨や
雲に反射された電磁波を測定することも
できます。大気は高マイクロ波を部分的
に透過させるので、どちらの製品グルー
プも高マイクロ波範囲で動作します。こ
れは一般的に、曇りや雨の時でも大気全
体を観測できることを意味します。マイ
クロ波ラジオメータは、この目的に最も
多く使われている装置です。この装置は、
地上から上空 10 km までの温度および湿
度の垂直分布を測定できます。この大気
層は対流圏と呼ばれ、気象現象はこの範
囲で発生します。垂直方向の温度および
湿度プロファイルは、気象予報にとって
非常に重要です。世界の気象サービス機
関は、気球を使ってこのデータを収集し
ています。しかし、こういった気球の打
ち上げには非常にコストがかかるので、
通常、1 日に上げることができる気球の
数は 2 個までです。ここでラジオメータ
が活躍します。ラジオメータは 1 分ごと
に温度および湿度プロファイルを提供す
るので、気象学者は特に地面近くの大気
に関して、高い信頼性の下に大気の変化
を捉えることができます。収集されたデー
タは、気象予報モデルの入力パラメータ
として使用できます。この目的のために、
ますます多くのラジオメータがネット
ワークに組み込まれつつあります。目標
は、数値気象予報用の気象観測気球を廃
止して、予報の品質を向上させることで
す。
しかし、気象予報における不確実性の大
部分は、登録された雲や降水現象のデー
タ精度が低いことによるものです。これ
がラジオメータによるパッシブ観測の限
界であり、RPG が、雲の分布を高精度
で測定する雲レーダー・システムを開発
した理由でもあります。数値気象予報の
応用に加えて、測定機器も、雲に関する
調査に貴重な発見をもたらします。雲の
44
内部で生じるプロセスを理解することに 実 用 気 象 衛 星(MetOp) プ ログ ラ ム は、
よって初めて、雲がどのように発生して RPG が関係する重要な人工衛星プロジェ
成長するかを予測することが可能になり クトです。ESA は、欧 州気 象 衛 星 機 構
ます。
(EUMETSAT)のためにこのプログラム
を実行しています。MetOp 衛星は、極
リモート・センシング分野における RPG 軌道を周回するヨーロッパ初の気象衛星
のポートフォリオは、地球大気以外にも です。これらの衛星は低高度(800 km)
応用することができます。マイクロ波ラ 軌道を周回して、気温、水温、湿度、風
ジオメータは、固体地球の観測、たとえ 速、およびオゾン濃度に関する高分解
ば土壌水分の観測などにも使用できます。 能測定データを提供します。この情報
ここで威力を発揮するもうひとつの装置 は、高高度静止軌道を周回する European
がシンチロメータで、この装置は地表と Meteosat 衛星によって得られるデータを
大気の間の熱流束を測定します。この熱 補強します。このプログラムは、2030 年
流束の一部は、地表と大気の間の水分移 までに至る複数のフェーズで構成されて
動に直接関連付けられます。これは、特 い ま す。 最 初 の 2 機 の 衛 星(MetOp-A
に水管理の専門家にとって非常に有用で と -B)はすでに軌道に投入されており、
あり、これらのデータは、灌漑方針の最 2017 年には MetOp-C が投入される予定
適化、森林火災の危険性評価、貯水池の です。第二世代衛星(MetOp-SG)には現
監視といった作業の助けになります。
行よりはるかに強力な計測器が搭載され
る予定で、RPG はすでにその作業を開始
しています。3 台の計測器が 2 機の衛星
に分散して搭載される予定で、これらの
計測器により、特にマイクロ波範囲とミリ
大気圏を超えて
RPG の宇宙事業部は上空からの探査を 波範囲(18 GHz ~ 229 GHz、および 183
担当しています。この事業部は長期にわ GHz ~ 664 GHz)で、現行よりはるかに
たり、人工衛星や宇宙探査機に搭載する 広い帯域の分析が可能になると期待され
超高感度電子計測器用のマイクロ波お て い ま す。MetOp-SG 衛 星 は 2 機 1 組
よびミリ波フロントエンドとコンポーネ でそれぞれが異なる装置を搭載し、短い
ントを開発してきました。ここでも焦点 間隔を置いて同じ軌道上を周回します。
は、地球、および他の惑星や衛星用の大 RPG は、すでに 3 台の計測器(マイクロ
気観測機器に置かれています。上に述べ 波サウンダ、マイクロ波イメージャ、お
た JUICE ミッションは、地球外プログラ よび氷雲イメージャ)すべてについて予
ムの一例です。これは、ESA の Cosmic 備研究を完了し、現在は、ダウンコンバー
Vision 2015 - 2025 の 計 画 期間におけ る タ、ミキサ、周波数逓倍器、フロントエ
最初の大型ミッションです。この探査機 ンド一式などの重要コンポーネントを開
は 2030 年に木星に達する予定で、太陽 発中です。
系外縁に送られた探査機の中で最も強
力な解析ツールを使用して、木星とそ
の 4 個の大型衛星(ガリレオ衛星)の
うちの 3 個を、数年間にわたって詳しく
調査する予定になっています。SWI サ
ブミリ波 分 光 計は、このミッションで
使われる 10 台の計測器のひとつとして
搭載されます。その任務は、木星の大
気温度プロファイルを記録して、成層
圏と対流圏における大気の組成と動き
を観測し、その外気圏と氷の衛星の表
面を分析することです。SWI はこの目
的 の た めに 30 cm ア ン テ ナ を 使 用し、
1080 GHz ~ 1275 GHz、
および 530 GHz ~
601 GHz の 周 波 数 範 囲 で 動 作 し ま す。
RPG はこの計測器に関する予備研究を終
了して、現在は RF コンポーネントのプロ
トタイプを開発中です。
同社は現在、計測器認定試験用モデルの
プロトタイプの作成を開始しつつありま
す。
このプロジェクトやその他のプロジェク
トにおいて、ESA はヨーロッパの機関と
して、重要コンポーネントをヨーロッパ
内で調達し、ヨーロッパの技術を使用し
て開発することを重視しています。
RPG のリモート・センシング製品ライン:
仏伊共同南極観測基地 ドーム・コンコルディアのラジオメータ(中左)
、同じくランペドゥーザ島にある
イタリア・エネルギー環境局(ENEA)気象観測所のラジオメータ(下左)
、
チリのアタカマ砂漠にあるヨー
ロッパ南天天文台のラジオメータ(右上)
、雲レーダー(中右)
、およびシンチロメータ。
NEWS 214/16
45
フォーカス | Radiometer Physics GmbH (RPG)
© ESA /Pierre Carril
最 近 ま で、 こ れ は ミ リ 波 技 術 分 野 の
限られた範囲でのみ可能でした。ヨー
ロッパの企業には、ミリ波生成に必要
な出力の半導体デバイスを製造する能
力が ありませ ん でした。しかし、やが
て EU の資金提供による Millimetre-wave
Integrated Diode and Amplifier Sources
(MIDAS)などの活動や、同様の ESA プ
ログラムが実を結ぶに至りました。現在
では、ヨーロッパの複数の半導体メー
カー が GaAs ショットキ ー 技 術に 基 づ
いて必要な回路を製造できるようにな
りました。ヨーロッパ製ソリューション
を使う主な利点は、システム開発者と
技術者が密接に連携できるということ
で、今やその念願は達成されました(米
国メーカーは、技術的な方針上の理由か
ら、このような密接なパートナーシップ
に参加することができませんでした)
。こ
れにより、RPG がそのパートナーの工程
データを深く理解できるようになりまし
た。RPG はこの情報を使用して、自社固
有のきわめて精密な回路レイアウトの原
案を作成することができます。
上:MetOp-SG 気 象 衛 星 は、2020 年 に 現 行 の
MetOp-A / B / C 世代の衛星に替えて運用される
見込みです(写真:ESA)
。中と下:RPG が開発・
製造した新しい R&S®ZCx 周波数コンバータを使
用すればミリ波範囲でネットワーク解析を行うこ
とができ、これまで以上に便利な運用が可能です。
46
そして再び地上へ
ミリ波半導体技術の発展は、RPG のポー
トフォリオの第三の柱にも生産的な影響
を及ぼします。一般にこれは、研究と産
業の広範なタスクに必要なものとして、
ミリ波コンポーネントの開発と製造に焦
点を当てる結果となります。これらのコ
ンポーネントには、通常、ミキサ、周波
数逓倍器、アンテナ、接続素子、アンプ
や分光計などがありますが、さらにこれ
らに負けず劣らず重要なのが、RPG が
ローデ・シュワルツ向けに製造する電子
計測器用のアクセサリです。最も新しい
電子計測器用アクセサリは新世代のネッ
トワーク解析周波数コンバータで、旧モ
デルより 10 dB ~ 15 dB 高い出力を備え
ており(上に述べたように、この周波数
範囲における出力は非常に重要な問題で
す)
、アクティブ・コンポーネントの特性
評価に新しい可能性を提供します。
RPG はすべての製品を自社施設で製造し
ています。これは、自社での製造が、必
要な品質レベルを確保する唯一の方法だ
からです。著名な各種科学機関で RPG 製
の計測器が使われているという事実は、
要求の厳しい研究界においてその品質が
広く知られ、高く評価されている証拠で
す(採用例を示す 45 ページの写真を参
照)
。
Volker Bach
ヨーロッパにおけるミリ波およびサブミリ波技術の
有力企業:
RPG Radiometer Physics GmbH, Meckenheim near
Bonn, Werner-von-Siemens-Strasse 4,
http://www.radiometer-physics.de.
NEWS 214/16
47
放送およびメディア | テストと測定
スクリーン上での
色の爆発 -
HDMI 2.0a による
HDR ビデオの伝送
48
より充実したホーム・ビデオ体験を実現するために、近年、
さまざまな技術的発展が達成されてきました。ハイ・ダイ
ナミック・レンジ(HDR)は、最新の、しかも画質の点で
は恐らく最も注目すべき革新的技術です。R&S®VTC / VTE
/ VTS ビデオ・テスタ・ファミリ用の新しいモジュールは、
この技術に適した T&M ソリューションです。
ビデオ品質を改善するにあたっては、解
像度、フレーム・レート、ピクセル品質
という 3 つの主要ポイントが考慮され
ます。数年前の最初の UHD TV セットの
発表は、ピクセル数をフル HD と比較し
て 4 倍にしました。これは特に、ますま
す大型化するディスプレイの利点を生か
す上で有効です。新しい UHD 規格では
フレーム・レートも高くなっているので
(HFR)
、動きが速い場合でもクリアな画
像が保たれます。ピクセル品質は、色空
間を拡張し、輝度のダイナミック・レン
ジを高くする(HDR)ことによって向上
させることができます。これらの拡張は、
画像をできるだけ人間の目の知覚に近付
けることを狙ったものです。これを成功
させるには、ダイナミック・レンジを広
げて必要な彩度を実現する必要がありま
す。彩度は、非常に明るい部分や暗い部
分も含めて、色品質に大きく影響します。
HDR が出現したのは、この点が理由に
なっています。
ハイ・ダイナミック・レンジ
画像内におけるダイナミック・レンジは、
最も暗い部分と明るい部分の明るさの差
として定義されます。明るさを表す物理
量は輝度と呼ばれ、
cd/m2 または nit(ニッ
ト)で表します。地球上で観測可能な輝
度範囲と、そのうち人間の目で認識でき
る部分を図 1 に示します。今までのとこ
ろ、標 準ダ イナミック・レンジ(SDR)
のテレビ技術における最小輝度と最大輝
度は、範囲が非常に限られています。結
果として、特に暗い部分や明るい部分で
は画像情報が失われてしまいます。しか
しこれは、HDR ビデオでは過去の話です。
対応輝度が 100 nit 程度の SDR 機器と異
なり、将来の HDR テレビのディスプレイ
では最大輝度が数千 nit に達し、この値
の画像やリッチ・ブラックを表示できる
ようになると見込まれています。しかし、
コンテンツ側では、これはどのように見
えるのでしょうか。
輝度範囲の比較
© Lucas Gojda / Shutterstock.com
10 –6
10 –2
100
104
106
人間の目
単位:cd/m2 または nit
SDR = standard dynamic range
HDR = high dynamic range
SDR TV
HDR TV
図 1:人間の目、HDR TV セット、SDR TV セットの輝度範囲比較
NEWS 214/16
49
放送およびメディア | テストと測定
図 2:R&S®VT-B2363 HDMI RX/TX 600 MHz モジュールは HDMI 2.0a 用のジェネレータとアナライザの機能を備えており、HDCP 2.2 にも対応しています。
HDR がユーザのスクリーンに付加価値を
提供できるのは、HDR に適した番組素
材がある場合のみです。現在のところ、
(少なくともエンド・ユーザにとって)こ
れ は 非 常に 限ら れ て い ま す。UHD Bluray ディスクは間もなく発売される見込
みで、大手 TV プロバイダも UHD に対応
する予定です。HDR ストリームは、すで
に Amazon と Netflix を通じて利用可能で
す。従来型の放送局も、長期的には HDR
に対応せざるを得ないでしょう。テスト
送信もすでに行われています(たとえば、
2015 年夏には Sky を通じ、ドイツ・サッ
カーリーグの試合が、R&S®AVHE100 ヘッ
ドエンド・ソリューションを使い UHD
/ HDR で衛星中継されました)
。各種標
準化機関は、このトピックをそれぞれの
懸案事項に加えました(たとえば ATSC
3.0)
。映画産業も長期にわたって HDR を
検討してきました。新しい映画やシリー
ズは、将来においても再生できるように
することを視野に入れ、すでにかなり前
から高色深度で作成されてきました。
送されます。このメタデータには、リファ
レンス・モニタの特性(EOTF、色空間、
原色など)が含まれています。これらの
特性は、HDR 対応の受信機によって解釈
され、実行されます。コンシューマ・エ
レクトロニクス間での HDR コンテンツの
転送は、新しい 2.0a 規格に即した HDMI
接続を介して行われます。
HDR に関係する HDMI 拡張
何 よ り、HDMI 2.0a は、CTA-861.3 HDR
静的メタデータ拡張規格に基づいて HDR
への対応を実現します。この規格の改訂
には、HDMI シンクのシグナリング機能
と、HDR メタデータ用(ソース用)の転
送システムが含まれています。
HDMI シンクは、改良 EDID(E-EDID)の
一部として新たに導入された静的 HDR メ
タデータ・ブロックを使ってHDRにサポー
トしていることを知らせます。HDR 非対
応のソースは、このブロックを無視しま
HDR は解像度には依存しないので、この す。ソースは、ポジティブ・シグナリン
特性は必ずしも UHD コンテンツに限った グにより、必要なメタデータを含む HDR
ものではなく、HD ビデオの画質も向上さ コンテンツを送信します。メタデータは、
せます。実際に行われるかどうかはまだ データ・アイランド期間(この期間にオー
分かりませんが、その可能性はあります。 ディオ・データと追加的データが転送さ
いずれにしろ、スタジオや編集の場では、 れる)に、ダイナミック・レンジおよび
HDR プレイアウト可能なコンテンツが Mastering InfoFrame とし て 転 送 さ れ ま
InfoFrame は 2 画像ごとに送られます。
すでに扱われています。たとえば、UHD す。
Blu-ray ディスク用に指定されたものと同
じ、カラー・チャネルあたり 10 ビットの メタデータは静的データです。これは、
コンテンツです。マスタリング工程では、 特定のコンテンツ(放送や映画など)に
放送、Blu-ray、インターネット、ビデオ・ 固定されたメタデータ・セットだけが使
オン・デマンドなどの別に関わらず、リ われることを意味します。ダイナミック・
ファレンス・モニタを使用して出力チャ メタデータ、つまりシナリオに応じて変
ネルに合った芸術的表現、つまりビデオ 化するデータは、現在のところ HDMI 仕
素材の最終的なカラー・スキームを作成 様に含まれていません。
します。各 HDR ディスプレイ上ででき
るだけ鮮明な必要画像品質を得るために、
画像コンテンツとともにメタデータが転
50
HDMI 2.0a に適した
R&S®VTx ビデオ・テスタ・ファミリ
R&S®VTS コ ン パ ク ト・ ビ デ オ・ テ ス
タ、R&S®VTE ビ デ オ・テ ス タ、お よ び
R&S®VTC ビデオ・テスト・センタ用の新
しい R&S®VT-B2363 HDMI RX/TX 600 MHz
モジュールを図 2 に示します。このモ
ジュールを使用すれば、バリュー・チェー
ン・プロセスの異なる段階で、最新世代
の HDMI シンクおよびソースの相互接続
性をテストすることができます。
前 モ デ ル の R&S®VT-B360 / -2360 / -2361
モジュールに対し、このモジュールは、ス
クランブリングなどの関連革新技術を含
め、最大 18 G ビット/秒のデータ・レー
トの HDMI 2.0a に対応しています。また、
旧バージョンの HDMI との後方互換性が
確保されており、全モデルと問題なく置き
換えることができます。
また、
このモジュー
ルは HDCP 1.4 に加えて HDCP 2.2 にも対
応しており、エンコードとデコードだけで
なく、デバッグのために HDCP 接続のス
テータス表示をすることも可能です。
アナライザ機能とジェネレータ機能は、ソ
フトウェア・キーコードを介して互いに独
立して有効にすることができます。また、
リアルタイムの解析と生成に加え、ソー
スとシンクの両方について、それぞれの
適合テスト・モードをオプションで選択で
きます。サポートされている適合テストの
範囲は、データ・シートに示されています。
HDMI フォーラムによって証明されたテス
トは、HDMI LLC や HDMI フォーラムの
サーバから MOI 文書として入手できます。
HDR に関しては、ジェネレータ機能を
使用することで、ダイナミック・レンジ
と Mastering InfoFrame を自由に編 集し
(図 3)
、HDR メタデータ・ブロックを含
めて、制御されたシンクの E-EDID を表
示することができます。
図 3:ジェネレータ・
アプリケーションを
使用すれば、
ダイナミック・レンジ
と Mastering InfoFrame
の設定を行うことがで
きます。
逆に、アナライザ端で適切な E-EDID が
与 えられ れば、ダ イナミック・レンジ
と Mastering InfoFrame が表示されます。
ジェネレータでもアナライザでも、適合
テスト仕様(CTS)に沿った特定の HDR
テストを行うことができます。
このモジュールを通常通り R&S®VTx 製
品ファミリの他の機能とともに使用すれ
ば、受信した A/V 信号をより詳細に表示
することができます。
追加情報
ウェブキャスト:4K、HDR、HDMI 2.0a
この記事の内容に関するより詳しい情報をウェブキャストの形で
参照することができます。ウェブキャストでは、ここに述べた技
術と、コンシューマ・エレクトロニクス向け HDMI 2.0a 用 T&M ソ
リューションの概要が、マルチメディアを使って解説されています。
サマリ
HDR は、よりリア ル な TV 画 像 を 実 現しま
す。各種の HDR 対応デバイスを家庭内でま
とめて使用できるようにするには、それらの
デバイスが HDMI 2.0a 規格に対応していなけ
ればなりません。ローデ・シュワルツは、そ
の R&S®VTx ビデオ・テスタ・ファミリにより、
開発、品質保証、生産において、新しい HDMI
機能のテストを可能にするテスト・オプション
を提供します。
Harald Gsödl
https://www.rohde-schwarz.com/news214/01
アプリケーション・ノート:ハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)
の UHD(UHD with high dynamic range (HDR))
この文書は、放送における HDR の使用と、エンコードおよび多
重化のために R&S®AVHE100 ヘッドエンド・ソリューションを使
用して送信チェーン内で HDR を実装する方法に焦点を当ててい
ます。
https://www.rohde-schwarz.com/news214/02
NEWS 214/16
51
セキュア通信 | 関連資料
ドイツ国立図書館は世界最大級の図書館
のひとつです。帝政ドイツ後期の建築で
あるライプツィヒの本館は 4 回にわたり
増築しなければなりませんでした。最後
の拡張工事は 2011 年です(写真左側の
ガラス張り部分)
。
52
国の文化資産を守る
信頼性の高い
デジタル・バックボーン
ドイツ国立図書館(DNB)は、全てのドイツ語出版物を収集して一般の人々が利用できる
ようにしています。DNB には、常に大量のデータを共有している 2 つの施設があります。
また、利用者の個人データも保護しなければなりません。このことを念頭に、同図書館は
信頼できる IT セキュリティ・ソリューションを導入するため、全国に入札を募りました。
このソリューションを提供したのがローデ・シュワルツです。
ドイツ国立図書館(DNB)はライプツィヒとフランクフルトの
施設において、それぞれ 1913 年以降に発行されたドイツおよび
ドイツ語のあらゆる媒体(書籍、新聞、雑誌、地図、音楽、録音、
および電子出版物)を収集、保管しています。ドイツの法律は、
要求が無くてもドイツ国内で出版された書籍類のコピーを DNB
に無料で 2 部送付するよう定めています。外国の媒体は、国際
的に交わされた合意を通じ、有償でコピーを受け取ることによっ
て収集されます。
この DNB の両施設には、火事などが発生した場合でもドイツの
文化資産を確実に保護することができるように、ドイツ国内出
版物に関してほぼ同じリファレンス・コレクションが保管されて
います。この相互安全策は、増え続ける同図書館のデジタル・
コレクションについても行われています。フランクフルトとライ
ブツィヒの間で迅速、安全、かつ将来に対応できる方法でデー
タを共有するには、より良いネットワーク化が必要でした。
数百万のデータ・レコードを容易に管理
現在、
ドイツ国立図書館には約 30,000 名の登録利用者がいます。
同図書館の蔵書には 2,790 万あまりの出版物が含まれており、
これを保管して希望者が利用できるようにしています。ライプ
ツィヒのドイツ・ミュージック・アーカイブの CD ベースのコン
テンツをフランクフルトのアーカイブ・システムに転送すると
いった現在のプロジェクトも、データ・トラフィック量を増大さ
しかし、ドイツ国立図書館には、単にそのコレクションの安全 せます。Ratuschni 氏は次のように語っています。
「現在の私達
を確保する以上のことが求められます。つまり、慎重な取り扱 のワークフローのほとんどが IT ベースで行われているので、ド
いが求められる利用者関連データを保護しなければなりません。 イツ国立図書館内でスムーズなデータ・トラフィックを確保す
現在では、図書館の多くのサービスがオンラインで利用できま る必要があります。
」サプライヤの選択にあたって、冗長データ
す。たとえば、閲覧室用の本や定期刊行物の予約などです。閲 リンク、高可用性、フェイルセーフ性能、サービスが決定要因
覧室での WLAN へのログイン、本の注文や予約といったこれら となった理由はここにあります。
のサービスは個人を対象としたものであり、利用者は個人デー
タを入力する必要があります。さらに、電子図書などの一部の 技術的要求を満たすことができたのはローデ・シュワルツ SIT
デジタル・アイテムは著作権で保護されており、それらへのア のソリューションだけだったので、ドイツ中央部にある電気
クセスは図書館の閲覧室内だけに制限されています。すべての 通信プロバイダの HL komm 社とともに契約を獲得しました。
データは両施設のデータセンター間でミラーリングされますが、 R&S®SITline ETH 製品ファミリが、DNB の光ファイバ・ライン
これらのデータ転送は暗号化する必要があります。ドイツ国立 上を流れるデータ・トラフィックを保護します。HL komm 社の
図書館のネットワークおよびデータセンターの責任者である Gregor Türpe 氏は次のように述べています。
「ローデ・シュワル
Peter Ratuschni 氏は次のように述べています。
「私たちはドイツ ツ SIT のソリューションは、特に膨大な量のデータに最適で、デー
の出版物を保護しなければならないだけでなく、利用者や従業 タ・トラフィックを妨げることなく信頼性の高い暗号化を行いま
員の個人データを保護する義務も負っています。
」
す。これにより、当社の実績あるキャリア・サービスに加えて、
より確実なセキュリティを顧客に提供することが可能になりま
す。
」
NEWS 214/16
53
セキュア通信 | 関連資料
高速かつ安全なデータ共有
増大するデータ量に対する投資の保護
世界をリードする 40 Gps のスループット、暗号化に伴うレイテ
ンシがわずか 3μs の R&S®SITLine ETH40G イーサネット暗号化
装置が、重要なデータを保護します。この暗号化ソリューショ
ンはリアルタイムのデータ・フローを実現し、データ転送経路
への透過的な統合化によって得られる利点以上のものを提供し
ます。加入者端末やユーザがレイテンシの面で影響を受けるこ
ともありません。暗号化はデータリンク層(OSI レイヤ 2)で行
われます。これは追加的な利点を提供します。すなわち、セキュ
リティ・オーバーヘッドを IP 暗号化(OSI レイヤ 3)より最大
で 40% 減らすことで、帯域幅を節約します。このため、この暗
号化装置はドイツ国立図書館にとって理想的なものとなってい
ます。この装置は、性能を低下させることなく、転送ラインで
のデータの盗用や改ざんを防止します。
R&S®SITLine ETH40G イーサネット暗号化装置は、ローデ・シュ
ワルツ SIT が開発したプラットフォーム・アーキテクチャをベー
スにしています。このモジュール型ハードウェアとソフトウェア・
アーキテクチャは、高いセキュリティを実現するカスタマイズ
暗号化ソリューションと、安価な標準的暗号化ソリューション
の利点を組み合わせたものです。最先端のマイクロエレクトロ
ニクスによって、1 台あたりのスペースをわずか 1 HU に削減し、
各転送ポイントにおけるサーバラックのスペースがモジュール
型パッケージ全体で 5 HU を超えない、という仕様を簡単に満
たすことができます。この革新的なプラットフォーム・コンセ
プトは、
もうひとつの利点を実現します。暗号化スループットは、
ハードウェアを交換することなくソフトウェア・アップグレード
によって変更できます。
暗号化には、256 ビットのキー長を使用する AES アルゴリズム
が使われています。さらに、それぞれ 2 つの転送ポイントを持
つ光ファイバ・ネットワークへの 接続を独立させることによっ
て、
セキュリティを強化します。プライマリ・ラインが故障しても、
データは自動的にセカンダリ・バックアップ・ラインを介して転
送されます。このセカンダリ・ラインも、やはり R&S®SITLine
ETH イーサネット暗号化装置によって保護されています。
入 札 時 に 指 定 さ れ た 1 Gbps の 帯 域 幅( ラ イ ン あ た り 500
Mbps × 2) は、R&S®SITLine ETH を ラ ッ ク か ら 取 り 外
す こ と な く、 必 要 に 応 じ て エ ン ク リ プ タ あ た り 40 Gbps
まで増やすことができます。
ドイツ製のセキュリティ
もうひとつの利点は、ローデ・シュワルツ SIT のイーサネット
暗号化装置が、機密(RESTRICTED)および NATO 機密(NATO
RESTRICTED)に分類されるデータの取り扱いについて、ドイ
ツ連邦電子情報保安局の承認を受けているという点です。ドイ
フランクフルト・アム・マイン(上)とライプツィヒのドイツ国立図書館は、 ツの IT セキュリティ法に指定されたものを含め、個人データの
保護に関する法的要求が満たされています。Ratuschni 氏は次の
高スループットの暗号化によって、将来にわたりデータ・プールを迅速に同
ように述べています。
「私たちは、ドイツ連邦政府の IT セキュリ
期することができます。
(写真:DNB)
ティ・パートナーとしてのローデ・シュワルツ SIT により、公共
機関として法的なデータ保護要求に関して安全側に位置してい
ます。それにより将来的なセキュリティも確保しています。
」
ローデ・シュワルツの 100% 子会社であるローデ・シュワルツ
SIT は、その製品の開発と製造をドイツ国内で行っています。こ
れには 2 つの利点があります。第一に、プラットフォーム・コ
ンポーネントとそれらの構成品に関し、迅速かつ長期的な入手
性が確保されます。第二に、顧客はドイツの高いデータ保護基
準規格を採用することができます。これは、特に暗号化装置に
関しては重要な利点です。
Christian Reschke
54
無線モニタリング/無線探知 | システム
無線モニタリング・システムの
自動監視
先進的な無線モニタリング・システムは、増加を続けるネットワーク・センサ、サブシステム、
および IT コンポーネントで構成されます。このようにシステムが複雑になると、故障や障
害に気付かずにシステムの損傷や危機的な状態を招いてしまう恐れがありますが、新しい
ソフトウェア製品がそのソリューションを提供します。
無線モニタリングおよび方向探知のためのシステムには、アン
テナ、センサ、システム・デバイス、PC /サーバ、ソフトウェ
ア・アプリケーション、データベースなどの数多くのコンポー
ネントと、インフラストラクチャおよびネットワーク・セグメン
トが含まれています。効果的なモニタリング/傍受業務を維持
するには、これらのシステム要素の動作状態を監視することが
不可欠です。R&S®RAMON ソフトウェア・ファミリの新しいメ
ンバーである R&S®RA-CHM システム状態監視ソフトウェアは、
この作業のために設計されています。このソフトウェアはデバ
イスとシステム・コンポーネント、およびその動作パラメータ
を完全自動で監視し、コンポーネントが限界に達した場合には
オペレータに警告を発して、メンテナンス要員による故障診断
を支援します。
通常このソフトウェアは、多数のサブシステムから構成され、
場合によっては複数の場所に分散されているような無線モニタ
リング・システムに使用します(図 1)
。また、遠隔地に置かれ
た小規模の無人システムやセンサにも最適です。R&S®RA-CHM
の主な機能は、実際の値とあらかじめ設定されたしきい値とを
比較することによって、システム・パラメータを監視すること
です。これには以下のようなパラメータが含まれます。
■■
動作状態(ドア開閉、温度、湿度、煙検出器、空気圧、燃料計、
電源、サーバ、ワークステーション)
■■
保存媒体とデータベース(外部および内部保存媒体のデータ
量、仮想メモリ容量、データベースのステータス情報)
図 1:新しい R&S®RA-CHM システム状態監視ソフトウェアは、大規模無線モニタリング・システムを構成するすべてのコンポーネントの動作パラメータを記
録し、それらを公称値と比較して、値が合わない場合はアラームをトリガします。
NEWS 214/16
55
無線モニタリング/無線探知 | システム
■■
■■
■■
■■
プロセッサ負荷(制御コンピュータ、システム・サーバ、デー
タベース・サーバの利用)
ネットワーク(たとえばシステム・コンポーネント/ IP アドレ
スへのアクセシビリティ、ネットワーク・リンク負荷)
機器類のステータス情報(受信機、方向探知機、解析システ
ムの動作ステータス、組み込みテスト(BIT)結果の解析)
システム・ソフトウェアのステータス情報(ドライバやプロセ
スの動作ステータス)
R&S RA-CHM はこれらのパラメータを収集して均等に保存しま
す(図 2)
。
®
しきい値に達さなかったりしきい値を超えたりした場合は、ソ
フトウェアがオペレータ・ワークステーション上で音響アラー
ムや視覚的アラームを作動させます。オペレータは影響を受け
るコンポーネントの専用管理インタフェースに直ちにアクセス
して、迅速に詳細なエラー解析を行ったり、トラブルシューティ
ングを開始したりすることができます。
セントラル・サーバ・アプリケーションが、LAN にアクセス可
能なデバイスやサブシステムからのすべてのデータを管理しま
す。R&S®RA-CHM は、適切なデバイス・ドライバを介してロー
デ・シュワルツ製機器にアクセスします。サードパーティのデ
バイスへは、標準化されて広く使われている Simple Network
Management Protocol(SNMP)を介してアクセスすることがで
きます。
R&S®RA-CHM は集中管理方式によって無線モニタリング・シ
ステム全体の起動と停止を行うことができます。この機能へは、
通常動作中にオペレータ・コンソール上のセントラル・メニュー・
アイテムを介して簡単にアクセスできます。重要コンポーネン
ト(冷却ユニットなど)に異常が発生した場合、あるいは通常
停止ができない場合や望ましくない場合に備えて、緊急停止機
能も用意されています。システムは、損傷を防ぐために、すべ
ての重要コンポーネント(データベース・サーバなど)のネッ
トワーク接続を解除します。
図 2:システム全体の概要が表示された R&S®RA-CHM のメイン・ウィンドウ。このソフトウェアは、大規模システムの数十個におよぶコンポーネントを監視
することができます。
56
簡単なシステム・セットアップ
R&S®RA-CHM は、セットアップとシステム要件に応じて仮想
サーバまたは独立したハードウェア・サーバとして使用するこ
とができます。ソフトウェアを専用ハードウェアにインストール
すれば、温度や汚染度などの運用条件に対して、より強固化す
ることが出来ます。また、システムを独立して起動・停止する
ことも可能です。どちらのバージョンでも、構成はシンプルか
つ柔軟です。システム・インテグレーション時に R&S®RA-CHM
が必要とする情報は、R&S®RAMON システム構成ツールから抽
出されてファイルとして保存されます。このシステム構成ファ
イルは、管理 GUI を通じて簡単に R&S®RA-CHM サーバに読み
込むことができます。システム・ソフトウェアのアップデートも
同じように行われます。このソフトウェアは特に階層システム
構成にも対応しているので、無人リモート局を使用する空間的
分散システムも効果的に監視することができます。エラーが発
生した場合も、オリジナルの構成ファイルから簡単に構成を再
ロードできるので、ダウンタイムが大幅に減少します。
タイムシーケンス・チャートによる測定値の可視化などの広範
な解析ツールのセットが、システム管理者によるメンテナンス
作業やエラー・バーストの検出を支援します。
R&S®RA-CHM では、さまざまな形で結果を表示することができ
ます。Windows のシステム・トレイにあるアイコンをクリック
すれば、その時点における基本的なシステム・ステータスが表
示されます。コンソール・アプリケーションのさまざまなウィン
ドウには、個々のサブシステムとそのコンポーネントの全般的
概要、
およびシステム・ステータスの概要が表示されます(図 3)
。
これは、無人のリモート制御局を使用する、空間的に分散され
たシステムに特に有効です。
R&S®RA-CHM は、PC などのハードウェア・コンポーネントに
関する詳細を表示できます(図 4)
。このデータは、ウェブ・ブ
ラウザを介し、限定的な機能で呼び出すことができます。これ
により、オペレータ・ワークステーションから離れた場所でも
システム・ステータスをチェックすることが可能です。
図 3:システム・ステータスの概要。ソフトウェアにリアルなハードウェア表示を組み込むことができるので、ユーザは、システム・ステータスを視覚的に素
早く把握することができます。
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無線モニタリング/無線探知 | システム
サマリ
無線モニタリング・システムは、正常な動作を保証して異常を
迅速に排除するために、継続的に監視することで、自動監視の
能力を向上させます。R&S®RAMON ファミリの新しいソフト
ウェア・モジュールである R&S®RA-CHM システム状態監視ソ
フトウェアは、まさにこのための製品です。R&S®RA-CHM はす
べてのコンポーネントの動作パラメータを記録し、それらを公
図 4:ある工業用システム内 PC におけるプロセッサ負荷の時間変化
58
称値と比較して、値が合わない場合はアラームをトリガします。
R&S®RA-CHM を使用すれば、ローデ・シュワルツ製機器の監視
に 加 え、Simple Network Management Protocol(SNMP)を 使
用してサードパーティのデバイスやシステム・コンポーネント
を監視することが可能になります。
Guido Schwarzer
サービス | カスタマ・サポート
「ちょっとお尋ねしたいことが …」
カスタマ・サポートの 20 年
電話や電子メールで問い合わせを行う
ユーザに対し、確かな技術知識に裏付け
られた個別対話を通じてユーザの抱える
問題を聞き取り、解決策を提示します。
ローデ・シュワルツのカスタマ・サポー
トは 20 年間にわたり、世界中のユーザを
悩ます緊急性の高い疑問や問題に 24 時
間体制で対応してきました。当初はセー
ルス支援のための技術センターとして設
置されましたが、エンド・ユーザにも歓
迎される質の高い付加価値サービスが必
要であることがすぐに明らかになり、現
在のカスタマ・サービスが作られました。
その試みが成功であったことは疑いあり
ません。ヨーロッパだけで毎年 20,000 件
を超える問合せに対応しており、世界中
では 1 営業日あたり平均して約 100 件の
問題が処理されています。このうちのほ
ぼ 1/3 は、その日のうちに無事解決して
います。測定機器、TV 送信機、無線シ
ステム、その他のコア製品、あるいは子
会社の製品などの別は問いません。さま
ざまな事業分野のエキスパートであるカ
スタマ・サポート・センターのエンジニ
アが、専門家のネットワークを構成して
います。担当者が答えることのできない
問題は、会社レベルで処理されます。成
功の秘訣は、ユーザの問い合わせを受け
た担当者が、会社内で利用可能な数多く
の情報にアクセスできるようにしたこと
です。カスタマ・サポート・センターは、
大量のリソースを利用することができま
す。ミュンヘンだけでも、金額にして約
200 万ユーロに達するデモ機器が揃えら
れています。これにより、エンジニアが
技術的問題を直接理解することができま
す。サポート業務は世界中 4 箇所のセン
ターに分散されており、1 日の業務を最
初に開始するのが北京とシンガポールの
センターです。さらにミュンヘンのチー
ムがこれに続きます。ドイツの通常営業
時間が終わるころには、米国のメリーラ
ンド州コロンビアにあるセンターが、さ
まざまな言語で世界中のユーザの疑問へ
の対応を開始します。もちろん、英語で
の対応は常時行われています。サポート
に電話をしたユーザは驚くはずです。コ
ンピュータ化されたホットラインではな
く、接続待ちもありません。問合せが集
中する時間帯でもオペレータが直接対応
します。すべてのオペレータが対応中で
すぐに電話に出られない場合は、ユーザ
に連絡先電話番号を確認して、できるだ
け早く折り返し連絡をします。カスタマ・
サポート・センターは無料で利用できま
す。
Volker Bach
カスタマ・サポート・センターの連絡先:
ヨーロッパ、アフリカ、中東
+49 89 4129 12345
[email protected]
北米
1 888 837 87 72
[email protected]
Latin America
+1 410 910 79 88
[email protected]
ラテンアメリカ
+86 800 810 82 28
[email protected]
中国
+86 800 810 82 28
[email protected]
NEWS 214/16
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ニュース | 国際
フィリピンの最先端 EMC 電波暗室
フィリピンのエレクトロニクス産業は、新し
い Electronics Product Development Center
(EPDC)の開設によって、製品開発に適した
条件を有するに至りました。この新しい開発
センターでは、電子製品やマルチメディア製
品、および家電製品用に CISPR 規格への適合
を証明するために、各社が EMC テストを行う
ことができます。ローデ・シュワルツ・アジ
ア(RSAsia)は、10 m の測定経路を持つ電波
暗室を含む EMC 機器の設置を担当しました。
この EMC プロジェクトは、ローデ・シュワル
ツ・アジア、ローデ・シュワルツ・フィリピン、
Albatross Projects Group、EMC 暗室のサプラ
イヤ、およびローデ・シュワルツのパートナー
の密接な協力の下に実施されました。
EPDC の EMC 電波暗室は、このタイプではフィリピン最大のものです。
AsiaSat による UHD チャネルの結合
香港の大埔地球局からの AsiaSat の UHD チャネ
ル・アップリンク
Asia Satellite Telecommunications Co. Ltd.
(AsiaSat)とローデ・シュワルツは、AsiaSat
の新しい放送プラットフォーム AsiaSat 4 に初
の FTA(無料)UHD チャネルを実装しました。
ローデ・シュワルツは、UHD データをリアル
タイムで編集、処理、およびプレイアウトする
ための R&S®CLIPSTER マスタリング・ステー
ションを含む広範な放送ソリューションを提供
しています。加えて、R&S®AVHE100 ヘッドエ
ンドは、10 ビットの色深度を持つ HEVC エン
コーダを使用するライブ・エンコーディングに
使用できます。ローデ・シュワルツの技術は
AsiaSat に最良の UHD TV 画像品質だけではな
く、将来への対応が可能なソリューションも提
供します。東経 122° に位置する AsiaSat 4 は、
2015 年 10 月に UHD チャネルの運用を開始し
ました。サービス・エリアの広い AsiaSat 4 は、
放送業者および有料 TV の AsiaSat 4 用 C バ
ンド・アンテナを備えたプラットフォームが、
UHD チャネルを直接受信することを可能にし
ます。.
26 型グローバル戦闘艦用通信システム
英国の BAE システム社がローデ・シュワルツ
の統合通信システムを採用しました。2015 年
6 月、3 隻の 26 型グローバル戦闘艦に搭載す
る通信システムについて 2 社が契約を結びま
した。これらの艦は英国海軍によって配備され
ますが、さらに追加発注が行われる予定です。
この決定の主な要因となったのは、システム
の技術的優秀性、使いやすさ、そしてコスト効
果に優れていることでした。そのユニークなセ
キュリティ概念により、ローデ・シュワルツは、
将来の艦艇プロジェクトにおいても NATO の
信頼できるパートナーとして認められました。
この通信システムのコ
ア・コンポーネントは、
ユ ニ ー ク な セ キュリ
ティ概 念を導 入した
新しい IP ベースのス
イッチング・システム
R&S®NAVICS です。
60
5G エキスパートがローデ・シュワルツに集合
2015 年 9 月、ローデ・シュワルツはミュンヘ
ンの本社において、注目のイベント 5G ミリ
波エキスパート・デイ(5G mmWave expert
day)を開催しました。このイベントは、
研究者、
開発者、製造者、およびテスト機器ユーザに、
ミリ波に関して直面している課題についての
ディスカッションの場を提供します。参加者は、
エリクソン、フラウンホーファー HHI、華為
(ファーウェイ)
、インテル、ノキア、NTT ドコ
モ、サムスンを含む先端技術企業の代表者で
す。日程 1 日のワークショップにおいて、さま
ざまな産業から参加した 5G エキスパートたち
が、無線業界にとって有益なミリ波関連の経
験を語りました。その内容は、スペクトラム調
査、チャネル測定、さまざまな 5G 技術、アン
テナ技術、5G デバイス用テスト機器などに関
するものでした。ローデ・シュワルツ製ソリュー
ションを理解するための対話型デモ・エリアも
設けられました。
世界中の先端企業と重要 5G 諸国から 40 名の従業員と代表が集まりました。
大成功のモバイル・ネットワーク・テスティング・フォーラム 2015
2015 年 6 月、ローデ・シュワルツは、第 7 回
モバイル・ネットワーク・テスティング・フォー
ラムに参加する無線通信産業の代表者を招待
しました。技術的な説明では、LTE-U / LTE-D、
モノのインターネット、装置間通信、IP トラ
フィック解析などのトピックが取り上げられま
した。プログラムには、顧客やパートナーから
のゲスト・スピーカーによる講演が含まれてい
ました。また、ローデ・シュワルツの提供する
モバイル・ネットワーク用テスト製品が 8 箇所
のデモ・アイランドにセットアップされ、子会
社の ipoque と SwissQual も自社の最新 T&M
開発を展示しました。
詳細については www.rohde-schwarz.com/
mobile-network-testing をご覧ください。
20 カ国から 100 名以上のゲストが第 7 回モバイル・ネットワーク・テスティング・フォーラムに参加し
ました。
Tata Power SED との覚書に署名
インドの多国籍コングロマリット、タタ・グ
ル ー プ の 一 部 門 で あ る Tata Power Strategic
Engineering Division(Tata Power SED)とロー
デ・シュワルツは、インド市場での協力に関す
る覚書に署名しました。この署名はメルケル
首相の訪印時に行われました。随行した財界
代表団にローデ・シュワルツ代表として参加
したのは、社長兼 CEO のマンフレート・フラ
イシュマンです。この覚書により両社は、ソ
フトウェア無線を使用する地上無線通信シス
テム用ソリューションの開発を目指します。こ
のソリューションは、インド政府のさまざまな
プロジェクトに利用される予定です。さらに、
両社は T&M ソリューションの分野でも協力を
進める予定です。.
協力覚書の調印に臨む Tata Power SED の Rahul
Chaudhry CEO(左)とローデ・シュワルツの社
長兼 CEO マンフレート・フライシュマン
NEWS 214/16
61
ニュース | 国際
レソト初のデジタル TV 送信機
2015 年 6 月、レソトの首都マセルにあるベレ
ア放送局で、同国初のデジタル TV 送信機であ
る R&S®THU9 と R&S®TMU9 が送信を開始し
ました。デジタル放送への移行は、アフリカ
南部にある同国に、より多くの周波数を提供
するだけでなく、より高速のブロードバンド・
サービスも実現します。レソト国営放送サー
ビ ス(Lesotho National Broadcasting Service:
LNBS)において、Khotso Elias Letsatsi 通信・
科学技術相がタッチスクリーンにより送信機を
作動させました。レソトは、2015 年末までに
デジタル化を完了させて、アナログ信号の送
信を停止する予定です。
Khotso Elias Letsatsi 大
臣のタッチスクリーン
操作により、同国のデ
ジタル TV の時代が幕
を開けました。
SOLARIS 粒子加速器の RF アンプ
ポーランドのクラクフにあるヤゲロニア大学
SOLARIS 国立シンクロトロン放射センターの
新しい粒子加速器は、この種の施設としては
東欧初です。この加速器が、2015 年 9 月に正
式オープンしました。ローデ・シュワルツの
R&S®THR9 高出力 FM 送信機ファミリをベー
スとした 2 台の 60 kW アンプは、この加速器
の重要コンポーネントです。これらのアンプ
は、ストレージ・リング内にある 2 つのメイン・
キャビティによって生成された 100 MHz の信
号を増幅するために使われます。これらのキャ
ビティは、回転する電子のエネルギー損失を
サイクルごとに補うために、エネルギーを補充
します。追加されたこのエネルギーは、電子
ビームがストレージ・リング内で固定軌道を維
持することを可能にします。SOLARIS シンク
SOLARIS の RF 専門家 Marek Madura(左)と、
ポ ー ランド の セ ー ル ス・エ ン ジ ニ ア、Mariusz
Warzywoda( 中 央 )
、 ロ ー デ・ シ ュ ワ ル ツ の
Robert Szutkowski。
62
ロトロンは汎用研究設備で、さまざまな科学分
野で必要とされる赤外線から X 線までの範囲
の電磁波を発生させることができます。オー
プニング・セレモニーには、地方政府と中央政
府の関係機関、在クラクフ各大学の学長、ポー
ランドおよび外国の関係科学機関の代表者な
どが出席しました。
ヘッドエンドが初めて
HDR 品質の送信を実現
2015 年 8 月初めに行われたスーパーカップの
Vfl. ヴォルフスブルク対 FC バイエルン・ミュ
ンヘン戦の UltraHD(UHD)による生放送にお
いて、担当の番組供給事業者は、色空間と輝
度範囲を拡張する方法であるハイ・ダイナミッ
ク・レンジ(HDR)を初めて使用しました(48
ページの記事を参照)
。HDR フォーマットは、
スタジアムのカメラから、衛星送信、プロトタ
イプとしてテストされた TV のディスプレイに
至るまで、制作チェーン全般にわたって使われ
ます。信号のライブ・エンコーディングは、ロー
デ・シュワルツの R&S®AVHE100 ヘッドエンド
を使用し、SES Platform Services 社によって
行われました。このヘッドエンドは、HEVC エ
®
ンコーディングのほか、4K/UHD プログラム・
データを転送可能なトランスポート・ストリー
タイの国家放送通信委員会(NBTC)とベトナ
ムにコーディングするための処理と多重化を
ム電気通信局(VNTA)は、2015 年 6 月から
行います。また、色空間に関係する特別なデー
R&S®BTC テスト・センターと R&S®AVBrun 適
タを Astra 衛星経由で送信します。この試合は、
合テスト・ソフトウェアを使用しています。タ
驚くほどの画質で HDR 対応 TV セットのプロ
イでは、受信機テストと DVB-T2 の開始準備の
トタイプ上に中継されました。9 月以来、SES
ために R&S®BTC が使われています。
Platform Services 社は、最初のサービス・プロ
バイダとして UHD プログラムを定期的に送信
DVB-T2 はベトナムでも放送されており、その
しています。ローデ・シュワルツのコーディン
ために VNTA とローデ・シュワルツが協力して、 グおよび多重化用ソリューションは、これらの
QCVN 63 規格への適合をテストするためのラ
送信にも使われています。
ボを準備中です。このラボは、
VNTA がヨーロッ
パのほとんどの重要受信機規格を対象として、
ベトナムのコンシューマ産業に適合テスト・
サービスを提供する役割も果たします。
ローデ・
シュワルツは、どちらの国でも、PSI/SI および
オーディオ/ビデオ用テスト・スイートとレ
ポーティング・ツールを提供した StreamSpark
社と協力しています。
ベトナムおよびタイ向けの
R&S BTC
受賞
エアバスがローデ・シュワルツを表彰
エアバス・ディフェンス・アンド・スペース社
が、2015 年 9 月中旬のサプライヤ・デイにブ
レーメンのエアバス工場で行われた 2015 年サ
プライヤ・アワードのセレモニーで、ローデ・
シュワルツにベスト・パフォーマンス・アワー
ドを授与しました。この賞は、過去 12 カ月間
に能力、革新、最適化の面で目覚ましい功績を
挙げたサプライヤに贈られます。ローデ・シュ
ワルツの受賞は、その革新的なテストおよび測
定用機器と優れた技術によるものでした。
優秀サプライヤの表
彰:エアバス社の上級
副社長で、調達、サプ
ライ・チェーン、およ
び物流責任者の Martin
Weichhardt が、 ロ ー
デ・ シ ュ ワ ル ツ の 社
長兼 CEO の Manfred
Fleischmann を祝福。
エアバス社は同時に、航空宇宙および防衛用に
特化された提携ソリューション、高い納期管理
能力、そして長い平均故障間隔を高く評価しま
した。
メミンゲン工場が「2015 年最優秀工場賞」を受賞
ドイツの業界紙「プロダクチオン」は、コンサ
ルティング会社の A.T. カーニー社と共同で、メ
ミンゲン工場を「優れた小規模シリーズ生産」
部門の「2015 年最優秀工場」に選出しました。
メミンゲン工場はノミネート 2 年目にして、そ
の品質により審査委員の高い評価を獲得しま
した。顧客の注文に 24 時間以内に応えること
のできる「ワンデイ TAT 工場」を目指す途上
で、同工場は新たな発展段階を通過しました。
その生産モデルに導かれ、ローデ・シュワルツ
は生産におけるさらに高い透明性を提供し、バ
リュー・ストリームに沿って各種工程をより密
接に同期させてきました。その結果が、ハイテ
ク製品の非常に柔軟な小規模シリーズ生産で
す。
「年間最優秀工場」賞は 1992 年から表彰
が続けられており、ドイツのメーカーにとって
最も厳格な伝統ある基準と見なされています。
2014 年にはローデ・シュワルツのタイスナハ
工場が同賞を受賞しています。
ローデ・シュワルツ中国が
優れたサービスにより
表彰される
レノボ・グローバル・サプライヤ・コンフェレ
ンスで、ローデ・シュワルツが特別賞を受賞し
ました。世界最大の PC メーカーが、
優秀なサー
ビス性に対する MBG アワード(MBG Award
for Outstanding Serviceability)を当社に与えた
のです。北京にある上海ナショナル・コンベン
ション・センターで行われたイベントでは、世
界の 600 以上のサプライヤの代表者 2000 名
以上が一堂に会しました。
Jürgen Steigmüller 工
場 長( 左 ) と、 ベ ン
チ マ ー ク・ コ ン ペ の
プロジェクト・マネー
ジャーを務める Achim
Müller がこの快挙を成
し遂げました。メミン
ゲンは「年間最優秀工
場」です。
NEWS 214/16
63
モノのインターネットの
テスト・パートナー
スマート・ホーム、コネクテッド・カー、スマート・シティ、スマート・ユーティリ
ティ、ウェアラブル・デバイス、そしてスマート産業用IOT(モノのインターネッ
ト)アプリケーションは、どこでも見かけられるようになりつつあります。
ローデ・シュワルツは、IOT(モノのインターネット)用の無線 M2M 通信シス
テムの開発と製造のための 計測ソリューションによって、メーカーとサプライ
ヤを支援します。
❙ 世界中に展開する開発およびサービス施設のネットワーク
❙ Wi-Fi、Bluetooth®、GSM、LTE などの技術を対象とした計測ソリューションの世
界的リーダー
❙ 各種国際標準化団体に加盟
www.rohde-schwarz.com/ad/IoT