HEALTH FILE 【 デ ー タでみる ぶぎん健康ファイル⑩ 】 は、食後10時間以上の空腹状態時に採血し 糖尿病にご用心 ③ た血液検査での血糖値が判定基準になります が、糖尿病予備群の中には、空腹時血糖値は 正常値を示し、検査をすり抜けてしまう例も あり、HbA1c検査を併用することで、より ■糖尿病の検査と診断 正確な診断ができるようになりました。 糖尿病の確定診断は、血液検査によって行 空腹時血糖値が126mg/dl以上で「境界型」 いますが、2010年7月に発表された糖尿病 もしくは「糖尿病型」と判定された場合、あ 学会の新・糖尿病診断基準では、「糖尿病型」 るいは食事の影響を考えずに測定する「随時 の判定に「HbA1c(ヘモグロビンA1c) 」が 血糖値」で200mg/dLを超えていた場合は 「糖尿病型」と判定され、二次検査で「ブド 加わりました。 高血糖の状態が続くと、赤血球中のたんぱ ウ糖負荷試験(OGTT) 」を行います。人間 く質ヘモグロビンとブドウ糖が結合し、 「糖化 ドッグのオプション検査としても行われるブ たんぱく」となりますが、その一種のHbA1c ドウ糖負荷試験は、空腹時に血糖値を測定 の血中の割合を調べることで血糖異常を確認 し、その後、75gのブドウ糖液を飲んで血糖 できます。血糖値が高い状態が続くとHbA1c 値の推移を確認するより正確な判定方法とさ 値は上昇し、逆に血糖値が低い状態が続くと れています。 減少します。赤血球の寿命は約4か月程度で ■微妙なサインを見逃さない 糖尿病の予防には、定期的な健診を受け、 すが、HbA1cは検査の1~2ヵ月前の血糖の 状態を反映する指標とされています。 ご自身の血糖値を把握することが何よりも大 一般的な健診で行われる「空腹時血糖値」 切です。特に糖尿病予備群に該当する方は、 図表1 糖尿病型 糖尿病の臨床診断のフローチャート 血糖値 ( 空腹時≧126 ㎎ /dl ブドウ糖負荷試験 2 時間値≧200 ㎎ /dl 随時血糖値≧200 ㎎ /dl のいずれか ) HbA1c(NGSP) ≧ 6.5% 空腹時血糖値 前日の夕食後 10 時間以上 経過した翌朝、空腹状態 で測定した血糖値。 初回検査 血糖値と HbA1c ともに糖尿病型 血糖値のみ 糖尿病型 HbA1c のみ 糖尿病型 随時血糖値 食事時間と関係なく採血 して測定した血糖値。 糖尿病の典型的症状 確実な糖尿病網膜症 あり 血糖値と HbA1c ともに 糖尿病型 血糖値 のみ 糖尿病型 なし 再検査 糖尿病 HbA1c のみ 糖尿病型 糖尿病 いずれも 糖尿病型 でない 糖尿病の疑い なるべく 1 カ月以内に 血糖値と HbA1c ともに 糖尿病型 血糖値 のみ 糖尿病型 糖尿病 再検査 HbA1c のみ 糖尿病型 いずれも 糖尿病型 でない 糖尿病の疑い 3∼6ヵ月後に血糖値・HbA1c を再検査 日本糖尿病学会「糖尿病診断に関する調査検討委員会報告書」より作成 32 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号 糖尿病の診断検査 ブドウ糖負荷試験 食後 10 時間以上の空腹 時に血糖値を測定。その 後、ブ ド ウ 糖 液 を 飲 み、 2 時間後に血糖値を測定。 HbA1c 値 血中のヘモグロビン A1c の値で、1∼2ヶ月前の 血糖の状態を推定 自覚症状がないからと安心してそのまま放置 してしまうと、糖尿病へ移行してしまうこと も少なくありません。糖尿病予備群はいつ糖 尿病になってもおかしくない状態にいること を自覚することが大切です。また、正常値の 方と比べて動脈硬化の進行を加速化させるた め、糖尿病だけでなく多くの循環器疾患を併 発する可能性もあるので油断は禁物です。 自覚症状が乏しい糖尿病の症状ですが、比 較的多く見られる症状としては、「水を飲ん でも喉が渇く」 「疲れやすい・疲れがとれない」 「食べても体重が減る」などがあります。こ れらは、糖尿病に限定された症状ではありま せんが、糖尿病は違和感を感じて受診した時 には既に進行している可能性が高い病気で す。本人に自覚がなくても家族や職場など、 周囲の人が気付くこともありますので、普段 と異なる症状や違和感があれば軽視せずに受 診して原因を確かめましょう。 になるわけではありません。遺伝するのは 「なりやすい体質」であり、病気そのものが 遺伝するわけではありまません。言い換えれ ば、糖尿病になりやすい体質であっても生活 習慣を改善することで、十分に予防すること が可能なのです。 糖尿病と診断されると、インスリンの分泌 をできるだけ軽減する生活を過ごす必要があ ります。糖尿病の治療としては、インスリン 注射や血糖降下剤などの薬物療法もあります が、基本は食事と運動両面からの生活習慣の 改善がメインとなります。なかでも食事療法 は、量や内容、味付け、食事回数などの管理 が不可欠となり、これまでの食生活を基本か ら改善する必要があります。量や食品数に制 限はありますが、糖尿病だからと、食べられ ない食品はありません。食事の基本事項を守 れば、健康な人と同じ食品を食べることがで きます。 ■糖尿病は生活習慣病病 栄養バランスとエネルギー量を考え、色々 糖尿病ですが、日本での糖尿病の歴史はまだ 病予備群の方はもちろんですが、肥満予防に 今や高血圧性疾患と並び国民病と呼ばれる 浅く、戦後の経済成長で生活が豊かになると ともに増加してきました。そのため糖尿病は 文明病や現代病とも呼ばれています。 実際、終戦後や東京オリンピック、大阪万 博など、高い経済成長を機に糖尿病の患者数 も増加しています。私たちは食生活や住環境 の欧米化、交通の都市化・オートメーション 化など、大変便利で豊かな生活環境を手に入 れてきましたが、それと同時に疾病をはじ め、さまざまな問題も抱えることになってし まったのです。 日本では15歳以上の5人にひとりが糖尿 病もしくは糖尿病予備群で、今後も増加が予 想されています。多くの生活習慣病の発症要 因と同じように、糖尿病の発症には遺伝と生 活習慣が大きく関わっていますが、家族に糖 尿病の罹患者がいても遺伝により必ず糖尿病 な食品を組み合わせた「糖尿病食」は、糖尿 も効果があり、健康な人にも勧められる「健 康食」としても注目されています。 食事療法と併せて重要なのが運動療法で す。運動は糖尿病の温床となる肥満の解消を はじめ、インスリンの分泌能力を改善させ、 ブドウ糖の働きを促す効果があります。 「運 動=スポーツ」と限定せずに階段昇降やウォー キングなどを日常生活に取り入れ、こまめに 体を動かす習慣をつけることが大切です。 これまでは肥満傾向の強い40代以降の病 気のイメージが強かった糖尿病ですが、食習 慣やライフスタイルが多種多様化した現代で は、発症年齢も若年化の傾向にあり、誰もが 罹患する可能性があります。豊かな暮らしの 中で何をどう選ぶか、私たち個々人の取捨選 択の能力が糖尿病を予防し、健康な生活を手 に入れる鍵となるのかもしれません。 ぶぎんレポート No.200 2016 年 6 月号 33
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