スペシャリトコラム 特別号 - ステップダウン型の過渡現象の解

The Intelligent Technology Company
スペシャリストコラム 特別号
ステップダウン型の過渡現象の解
文書管理番号:ELS1409_S000_20
2016 年 5 月
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スペシャリストコラム 特別号
ステップダウン型の過渡現象の解
目次
1微積分方程式からラプラス変換 ............................................................................. 4
1-1 微積分方程式 ..................................................................................................... 4
1-2 ラプラス変換........................................................................................................ 4
1-3 連立方程式の解 .................................................................................................. 5
2ラプラス逆変換 ..................................................................................................... 6
3近似式 ............................................................................................................... 13
改版履歴 .................................................................................................................... 16
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この資料は、スペシャリストコラム 『スイッチング方式レギュレータ~その1』 の補足資料です。ステップ
ダウン型の過渡現象について、もっと知りたい方にご覧いただく資料です。
図 1 (a) に示すステップダウン型レギュレータの過渡現象を求めます。(b) は 2 つのスイッチ(S1 と S2)
のオン・オフ※1 のタイミングです。
L
Vin
S1
S2
C
R
S1 on
S 2 off
S1 off
S 2 on
ton
toff
T
(a) 等価回路
(b) スイッチのタイミング
図 1 ステップダウン型レギュレータ
※1
接点の用語としては、オン・オフよりもメイク・ブレイクの方がより専門的のようですが、ここではオン・オフを
用います。
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1- 微積分方程式からラプラス変換
1-1 微積分方程式
図 2 に示すように、 S1 がオン、 S 2 がオフのときの電源からのチャージのときの電流を求めます。
網電流 i1 , i2 を図 2 のように定義すると、各ループに対
L
して式(1) および式(2) が成り立ちます。
L

di1 1 t
1 0
  i1  i2 dt   i1  i2 dt  Vin ········ (1)
dt C 0
C 
Vin
i1
C
i2
R
0
1 t
i1  i2  dt  1  i1  i2  dt  Ri2  0 ········ (2)

0
C
C
図 2 チャージの期間
1-2 ラプラス変換
過渡現象を求めるには、ラプラス変換を用います。ラプラス変換の公式の一部を表 1 に示します。一般的
に、時間関数を小文字で、ラプラス変換の結果を大文字で表します。
sL1  Li1 0 
I1  I 2 v0 0 Vin
···················································································(3)


sC
s
s
I1  I 2 v0 0

 RI 2  0 ·····························································································(4)
sC
s
式(3) および式(4) の v0 0 はキャパシタ C の端子電圧の初期値なので、 Ri2 0 です。式(3) および

式(4) を I 1 と I 2 について整理して書き直すと、
表1
f t 
1
t
e  at
sin  t
cos  t
ver. 2.0 2016 年 5 月
ラプラス変換の公式
F s 
1
s
1
s2
1
sa
f t 

s 2
2
f t  a 
e  as F s 
eat f t 
F s  a 
df t 
dt
sF s   f 0
 f t dt
t
s
2
s 2
0
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F s 
1
F s 
s
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V
1 
1
R

I 2  in  Li1 0  i2 0 ····································································(5)
 sL1 
 I1 
sC 
sC
s
s

1
R
 1


I1  
 R  I 2  i2 0 ······················································································(6)
sC
s
 sC

となります。式(5) および式(6) は I 1 と I 2 に関する連立方程式で行列を用いて、
1

 sL1 
sC

1
 

sC

R

 I1   Vin
 Li1 0  i2 0
  
s
 ···························································(7)
    s
1
R





 R I
i2 0


sC
s
 2  


1
sC
と表します。
1-3 連立方程式の解
式(7) の係数の行列式は、

1
sC
1

sC
sL1 

1
sC
1
R
sC

LR  2 1
1 
s
s 
 ······························································(8)
s 
CR
LC 
であり、 I 1 と I 2 は式(9) および式(10) のように求められます。
R
1
1
 1

Vin
R
1
i1 0 s 2  
i1 0  i2 0  Vin  s 
Vin





Li
0

i
0

1
2
1 s
1
CR
L
L
LCR


s
sC
I1 

··(9)
R
1
1
1

2
i2 0
R s
s 
s
s
sC
CR
LC
1
sL

1
1
sC
I2 
1
 
sC
i 0
1
Vin
R
2
Vin
 Li1 0  i2 0 1 i2 0 s  1 s 
CR
LCR
s
s

····························· (10)
R
1
1
s
2
i2 0
s 
s
s
CR
LC
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2- ラプラス逆変換
式(9) および式(10) を、ラプラス逆変換することによって時間応答を得ます。
ラプラス逆変換は部分分数展開して、表 1 の公式を用います。両式とも分母に s に関する 2 次式を含む
ので、分母が因数分解できるか否かによって、部分分数展開の方法が異なってきます。
2 次式はこれを 0 とおいたときに、(1) 実根を持たない、(2) 重根を持つ、(3) 異なる 2 根を持つ の 3 とお
りに分けられます。これらは、式(9) および式(10) の右辺の分母の係数の値によります。
以下の計算は、やや煩雑で長くなります。式の変換が苦手な人は、3 つの場合に分けられることを理解した
上で、次章の近似式に進んでも良いでしょう。
(1) 実根を持たない場合
式(9) および式(10) の分母を 0 とおいたときの 2 次方程式の根の判別式、
2
4
 1 
····································································································· (11)
D
 
LC
 CR 
が負のときに、2 次式は異なる 2 根を持ちます。すなわち、
R
1 L
················································································································ (12)
2 C
のときで、分母は、
2
2
1
1 
1 
1  1 
s 
s
 s 

 
 ······························································· (13)
CR
LC 
2CR  LC  2CR 
2
と変形されます。上式の右辺の定数項は式(11) により正なので、これを次式のように書き直します。
2
2
2
1 
1  1   1

2

s 
 
   s    0 ································································ (14)
2
CR
LC
2
CR




 

ここに、
  2CR ··················································································································· (15)
2
0 
1  1 

 
LC  2CR 
2
 1 L
1
 ···························································· (16)
 1  

LC
2
R
C


です。
式(17) の条件では分母は因数分解できないので、式(9) および式(10) はそのまま用いて、表 1 の公式が
使えるように部分分数展開します。すなわち、恒等式を用いて、
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R
1
1
1
 1


i1 0 s 2  
i1 0  i2 0  Vin  s 
Vin
B s    D0
1
A
L
L
LCR

 CR

·················· (17)
I1 
  
2
2
s
s
 1
 1
2
2
 s    0
 s    0
 
 
が s の恒等式となるように、係数 A, B, D を求めます。上式の中辺、右辺の分母を払います。
2
R
1
1
 1

 1
 1
2
i1 0 s  
i1 0  i2 0  Vin  s 
Vin  A s    A0  B s  s  D0 s ··· (18)
L
L
LCR
 CR

 
 
2
上式の右辺を s について整理します。
2
1
 1
 1
2

2
2
A  s    A0  B s   s  D0 s   A  B  s 2   A  B  D0  s  0 A ··············· (19)

 
 


式(18) の左辺と、式(19) の右辺の s の次数の係数がそれぞれ等しいので、
A  B  i1 0 ············································································································· (20)
1
R
1
2
 1
i1 0  i2 0  Vin ································································ (21)
 A  B  D0  

L
L

 CR
1
0 2 A 
Vin ········································································································ (22)
LCR
の A, B, D についての連立方程式が成立します。まず、式(22) から、
A
V
1
Vin  in ································································································ (23)
R
0 LCR
2
が求まり、これを式(20) に代入して、
B  i1 0  A  i1 0 
Vin
····························································································· (24)
R
となり、これらを式(21) に代入して、
D0 
1
R
1
2 Vin 1
1 Vin 1
R
 R 1 V
i1 0  i2 0  Vin 
 i1 0 
 i1 0  i2 0     in ········ (25)
CR
L
L
 R 
 R 
L
L  R
となります。したがって、
I1 
Vin 1

R s
Vin

 i1 0 
R

R
1  R 1  Vin 
 1   1
i1 0 
i2 0 
   
 s    
0 L
0  L   R  0
   0
2
 1
2
 s    0
 
···················· (26)
を得ます。
式(26) の右辺第 1 項の 1 s は 1 すなわち、時刻 0 で立ち上がる振幅 1 のステップを表します。
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第 2 項の分母子に含まれる s  1  は、ラプラス逆変換した時間関数に exp  t
します。分母は s  0
2
2
  を掛けることを意味
の形※2 をしているので、分子の s の次数により cos と sin とに分かれます。した
がって、式(26) のラプラス逆変換は、
 t
 1
Vin 
Vin 
R
1  R 1  Vin 
i1 
  i1 0 
i1 0 
i2 0 
    sin 0t  e ··········· (27)
 cos 0t  
R 
R 
0 L
0  L   R 
0

となります。上式を i1 0 および i2 0 について整理すると、
 

 t  Vin
sin 0t  t
R sin 0t t
1  R 1
··· (28)
 e i1 0 
i1   cos 0t 
e i2 0  1  cos 0t     sin 0t e 



L

L

R




0
0
0


 
 
I 2 についても同様に、
I2 
1
s
1

i1 0
1
B s    D0
s
Vin
A

CR
LCR
················································· (29)
  
2
1
1
s
1

2
s2 
s
 s    0
CR
LC
 
i2 0 s 2 
とおいて、
Vin  1   2
1
1 Vin 

i1 0 
i2 0 
i2 0   s    

R    0
0
0 R  0
Vin 1 
······························· (30)
I2 

2
R s
 1
2
 s    0
 
を得ます。これをラプラス逆変換すると、
i2 
 t
 2
Vin 
V 
1
1 Vin 
······················ (31)
 i2 0  in  cos 0t  
i1 0 
i2 0 
sin

t

0 e
R 
R
0
0 R 

0
となります。同様に、上式を i1 0 および i2 0 について整理すると、
i2 
2 sin 0t
0
t



sin 0t  t
sin 0t  t 
 
V
e i2 0  1   cos 0t 
e  in ············· (32)
e  i1 0   cos 0t 
0 
0   R


 
を得ます。
※2
分母が s  1  2  0 2 のとき、分母が s 2  0 2 の関数(cos または sin)に exp  t   を掛ける、すなわち
指数的に減衰する cos または sin を意味します。
ver. 2.0 2016 年 5 月
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図 3 はディスチャージ、すなわち入力電源からインダクタ L
とキャパシタ C とに蓄えたエネルギーを負荷 R に消費する
期間です。図 2 と図 3 とを比べると、図 3 は図 2 の Vin を 0
C
i1
(ゼロ)とおいたものと等価であることがわかります。
R
i2
したがって、電流 i1 および i2 は式(28) と式(32) におい
て、 Vin  0 とおくことによって求まります。すなわち、
t
t

sin 0t  
R sin 0t 
 e i1 0 
i1   cos 0t 
e i2 0 ····· (33)
0 
0 L

i2 
2 sin 0 t
0
図 3 ディスチャージの期間
t


sin 0 t  t
e i2 0 ··························································· (34)
e  i1 0   cos 0 t 
0 

となります。
チャージ期間の式(28) と式(32) における電流 i1 0 と i2 0 は、ディスチャージ期間の式(33) と式(34)
の i1 と i2 であり、逆に式(33) と式(34) の i1 0 と i2 0 は式(28) と式(32) の i1 と i2 です。最初
のチャージ期間の i1 0 と i2 0 はいずれも 0(ゼロ)なので、式(28) と式(32) 、および式(33) と式(34) を
順次計算することによって、電流の過渡応答を求めることができます。
この場合は、求めた結果の式(33) および式(34) が sin と cos を含むので、振動型といいます。
図 4 に振動型の計算例を示します。細かい階段状の変化を繰り返しながら、また、大きな周期の減衰型振
動によって、最終値に漸近していく様子が分かります。
(2) 重根を持つ場合
1 L
······································ (35)
2 C
のとき、式(9) および式(10) の分母は重根を持ち
ます。このとき、分母を次のように変形します。
2
1
1  1
s 
s
  s   ················ (36)
CR
LC   
2
ここに、
1.6
1.4
1.2
電流 [ A ]
R
1.8
1
0.8
0.6
Vin  5 V, ton  0.5us, toff  0.5us
i1
i2
0.2
0
0
50
100
150
200
250
300
時間 [ us ]
  LC ········································ (37)
です。
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L  32uH, C  8uH, R  2
0.4
図 4 振動型の過渡応答
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このとき、式(9) を部分分数展開します。恒等式を用いて、
R
1
1
 1

i1 0 s 2  
i1 0  i2 0  Vin  s 
Vin
1
A
B
D
CR
L
L
LCR


·················· (38)
I1 
 

2
1
1
s
s s1 
1
s2 
s
CR
LC
  s   
とおいて、前述の振動型と同様の手順で、式(38) の係数 A, B, D を求めると I 1 は、
I1 
Vin 1

R s
Vin 1 i 0  R i 0   R  1  Vin


1
2
L
 L   R ····················································· (39)
R 
2
1
 1
s
s  

 
i1 0 
となります。
同様に I 2 は、
I2 
Vin 1

R s
Vin 1 2i 0  i 0  Vin 
 1

2
R
R  
······························································ (40)
2
1
1


s
s  

 
i2 0 
となります。式(39) および式(40) をラプラス逆変換することにより、時間関数を得ます。
t
Vin 
Vin  t  1
R
 R 1  Vin  
i1 
 i1 0  e   i1 0  i2 0     t e
R 
R
L
L  R

t
t
t
t


R 
 t 
 R 1   V
 1   e  i1 0  t e  i2 0  1  e      t e   in ········································· (41)
L
 
L 

 R
Vin 
Vin  t 1 
Vin  t
i2 
 i2 0  e  2i1 0  i2 0  t e
R 
R

R

t
t

  t  t V
 t 
e  i1 0  1  e  i2 0  1  1  e   in ····················································· (42)

 
  
 R
2t
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3
この場合は、前に述べた振動型と、次で述べ
2.5
る減衰型の境界で臨界型といいます。ディスチャ
2
電流 [ A ]
ージ期間の電流は振動型と同様に、式(41) およ
び式(42) において、 Vin  0 とおくことによって
求まります。図 5 に臨界型の計算例を示します。
1.5
1
L  32uH, C  8uH, R  1
Vin  5 V, ton  0.5us, toff  0.5us
0.5
i1
i2
(3) 異なる 2 根を持つ場合
0
1 L
······································ (43)
R
2 C
0
50
100
150
200
250
300
350
時間 [ us ]
のとき、式(9) および式(10) の分母は異なる 2
図 5 臨界型の過渡応答
根を持ちます。このとき、分母を次のように変形し
ます。
s2 
1
1 
1 
1
s
  s   s   ··············································································· (44)
CR
LC   1   2 
ここに、
2


1 
C 
  ··················································································· (45)

1  1   2 R

 1 2CR 
L

 


1
2


1 
C 
  ··················································································· (46)

1  1   2 R

 2 2CR 
L

 


1
です。
このとき、式(9) を部分分数展開します。恒等式を用いて、
R
1
 1
i1 0 s 2  
i1 0  i2 0  Vin
1
L
L
 CR
I1 
1
1
s
s2 
s
CR
LC
1

Vin
s 
A
B
D
LCR

 

···················· (47)
1
1
s s
s
1
2
とおいて、前述の振動型と同様の手順で式(47) の係数 A, B, D を求めると、
Vin
···················································································································· (48)
R

 1  R  Vin
R  1 2
B   1 i1 0 
i2 0 
················································· (49)
1   2 
 2 1
L  2 1
 2 1  L  R
A
D
2
 2 1
i1 0 
 2  R  Vin
R  1 2
i2 0 
···················································· (50)
1   1 
L  2 1
 2 1  L  R
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となるので i1 は、
i1  
 1e

t
1
 2e
 2 1

t
2

i1 0 
t

1
R
e e
 1 2
L
 2 1
t
2
i2 0
t
t
t
t





1
2
  1e  1   2 e  2 R
 e  2e
 1 
  1 2 1
 2 1
L
 2 1



 Vin
········ (51)

R


となり、同様に i2 は、
t
t

 2   1   1
2
i2  
e e
 2   1 

t
1

 i1 0   2 e   1e

 2 1


t
2
t
t



  1e  1   2 e  2
i2 0  1 
 2 1



 Vin
···················· (52)

 R

となります。このとき、 i1 , i2 はいずれも減衰する
指数関数なので、減衰型といいます。ディスチャ
6
ージ期間については、振動型、臨界型と同様です。
5
図 6 に、減衰型の計算例を示します。
電流 [ A ]
4
3
2
L  32uH, C  8uH, R  0.5
Vin  5 V, ton  0.5us, toff  0.5us
1
i1
i2
0
0
50
100
150
200
250
300
350
時間 [ us ]
図 6 減衰型の過渡応答
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3- 近似式
以上述べた 3 つの型いずれも式が少し煩雑で現象を理解しにくいので、近似式を考えます。
まず、(1) 振動型の i1 は式(28) でした。
 

 t  Vin
sin 0t  t
R sin 0t t
1  R 1
··· (28)
 e i1 0 
i1   cos 0t 
e i2 0  1  cos 0t     sin 0t e 



L

L

R




0
0
0


 
 
上式の時刻 t はチャージ時には t on で、ディスチャージ時には t off です。このレギュレータの発振周期
ton  toff  T と 0 ,  の関係を、
1
0 ≪ ···················································································································· (53)
T
T ≪ ······················································································································ (54)
を前提とします。このとき、
cos 0t  1, sin 0t  0t , e

t

 1 ·················································································· (55)
と近似できます。ここで、 t は T , t on , t off などです。このとき式(28) は、
i1  i1 0 
R
t
t i2 0  Vin ····························································································· (56)
L
L
と近似できるので、時刻 t からチャージしたときの電流は、
i1 t  ton   i1 t  
R
t
ton i2 t   on Vin ·················································································· (57)
L
L
となり、時刻 t における電流は式(33) の近似により、式(58) を得ます。
i1 t   i1 t  toff  
R
toff i2 t  toff  ····················································································· (58)
L
i2 についても同様に式(32) を近似して、
i2 
2t

i1 0  i2 0 ······································································································ (59)
を得ます。時刻 t からチャージしたときの電流と時刻 t における電流は、
i2 t  t on  
i2 t  
2t off

2t on

i1 t   i2 t  ·························································································· (60)
i1 t  t off   i2 t  t off  ·················································································· (61)
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となります、ここで式(58) および式(61) を式(57) に代入して、
 t
R
R  2t
toff i2 t  toff  ton  off i1 t  toff   i2 t  toff    on Vin ························· (62)
L
L  
 L
i1 t  ton   i1 t  toff  

 
を得ます。式(62) の i1 t  t on , i2 t  t on  は時刻 t からチャージ後の電流で i1 t  t off , i2 t  t off
 は、デ
ィスチャージして時刻 t に至った電流なので、定常状態において両者は等しくなります。これらを単に i1 ,i2
とおくと、式(62) は、
i1  i1 
 t
R
R  2t
toff i2  ton  off i1  i2   on Vin ······································································· (63)
L
L  
 L
となり、整理して、
2toff

i1 
ton  toff
i2 
ton
Vin
······························································································· (64)
R
を得ます。同様に、式(58) および式(61) を式(60) に代入すると、
i2 t  t on  
2t on 
R
 2t off
i1 t  t off   i2 t  t off  ···························· (65)
 i1 t  t off   t off i2 t  t off  
 
L
 
となり、同様にして、
R
t ont off i2  0 ···································································································· (66)
L
を得ます。式(64) および式(66) は i1 ,i2 すなわち、定常状態におけるそれぞれの電流に関する式(67) の連
i1 
立方程式です。
 Vin 
ton  toff  i


1
   R 
 
ton 
     ····················································································· (67)

R
tontoff  i2   0 
 
L

 
 2toff

 

 1

係数の行列式は、
2toff
ton  toff

ton
1
R
tontoff
L


2toff R
t t
tontoff  on off ····························································· (68)
 L
ton
となります。式(68) の右辺第 1 項は R の大きさにもよりますが、ほぼ無視できるので、

t on  t off
t on
··········································································································· (69)
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とみなしてよく、 i2 は、
1
i2 

2t off

1
Vin
Vin
t on Vin
R
R  t  t  t  t R ·································································· (70)
on
off
on
off
0
t on
となります。したがって、出力電圧 vout は、
vout  Ri 2 
t on
Vin ······························································································· (71)
t on  t off
を得ます。
以上は振動型について述べましたが、臨界型、減衰型についても同様に近似を行うことにより、式(71) に到
達できます。
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1
2016 年 1 月
初版
2
2016 年 5 月
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正)「2- ラプラス逆変換」
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