ひまわりだより NO.217 - 巾上ひまわり薬局・塩尻ひまわり薬局

ひまわりだより
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薬の量と腎臓には深い関係があるのをご存知でしょうか。
今回は腎臓と薬の関係についてです。
薬が効果を失うのに深く関わっている臓器の一つが腎臓です。
腎臓は薬を尿の中に排泄して体外に出してしまうことで効果を失わせます。
薬によって主に肝臓で代謝されたり胆汁から便に排泄されて効果を失
うもの、主に腎臓で排泄されて効果を失うものが分かれていますが、後者
を特に腎排泄型と言います。腎排泄型の薬は腎臓の機能が低下していると
体内にとどまりやすくなり副作用につながるため薬の量を調節する必要が
あります。
<腎機能の評価>
腎機能の評価には検査をする必要があります。その中で薬の用量調節に
重要なものは血清クレアチニン値です。クレアチニンとは筋肉で作られる
老廃物です。クレアチニンは全てが腎臓から排泄されて体の外に出て行く
ので、体の中にたまっていなければ腎臓の機能は良好、たまってきたら腎
臓の機能が低下しているという目安に使えます。
血清クレアチニン値を元に、腎臓がどれだけの血液をろ過する能力があ
るのかを計算して出した値が eGFR(推定糸球体ろ過量)と eCCr(推定クレ
アチニンクリアランス)の二つです。eGFR が糸球体という場所のろ過能力
のみを評価しているのに対して、eCCr は糸球体のろ過能力+尿細管での
排泄能力も評価しているという違いがあります。そのため一般的には CCr
は GFR の 1.2~1.3 倍となります。
eGFR は標準的な体型で換算し
た 値を 使うこ とが 多いため 、
CKD(慢性腎臓病)などにおける腎
機能の指標として使われます。標
準的な体型に換算しているという
のは、体が小さな人の腎臓の排泄
能力が体の大きな人より低いから
クレアチニンは糸球体と尿細管から排泄される。
といって腎臓病が進んでいるわけ
ではないからです。(例:体重 100kg の人の eGFR が 100 で、体重 50kg
の人の eGFR が 50 だとしても、後者のほうが腎不全が進んでいるとは言
えない)
一方、eCCr は体の大きさも考慮した値で、主にこちらが腎機能による
薬の調節の指標として用いられます。(例:体重 100kg の人の CCr が 100
で、体重 50kg の人の CCr が 50 だとしたら、後者のほうが少ない薬物の
投与量でよい可能性がある)
eGFR は血清クレアチニン値と年齢のみで計算するため、血液検査の結
果に表示されていることがありますので、自分の腎機能がどのくらいか確
認してみてください。eCCr は血清クレアチニン値と年齢と体重で計算す
るため、薬剤師が血液検査の結果とともに体重を聞くことがあるのは、こ
の値を計算するためでもあります。
この二つの値はどちらも血清クレアチニ
ン値から計算して求める推定値のため場合
によっては実際の値からはかなりずれていることがあります。推定が適さ
ない場合は、小児や高齢者、肥満の方などです。
高齢者で筋肉量が落ちている人は、もともと筋肉でつくられるクレアチ
ニン自体の量が少ないことが原因で、血清クレアチニン値が低いため腎機
能が正確に反映されないことがあります。この場合、そのまま他の人のよ
うに計算してしまうと、腎機能が高い=薬の量が多くても大丈夫と判断し
てしまうことになり危険です。
肥満の方の場合は、体重が多いからといって腎機能が高い、というわけ
ではないので、
やはり腎機能を過大評価しがちになるため注意が必要です。
GFR:標準的な体型に換算されていて腎臓病の進み具合の目安になる
GFR(ml/min/1.73 ㎡)
腎機能
90 以上
正常
60〜90
正常または軽度低下
45〜60
軽度〜中等度低下
30〜45
中等度~高度低下
15〜30
高度低下
15 以下
末期腎不全
CCr:薬の排泄能力の目安になる。下表はあくまでも例。
CCr(ml/min)
50 以上
10〜50
10 以下
通常のお薬の量が投与されることが多い。
制限の出てくる薬がある。
薬によっては禁忌もある。
<薬の量の調節の例>
それでは具合的な薬の例を見てみましょう。
糖尿病の薬の中に DPP4 阻害薬というグループがあります。複数のメー
カーが同じ薬効のものを出していますが、化学構造が違うため、腎臓から
排泄の程度が違い、腎機能の低下の状態による調節の指示がそれぞれ異な
っています。
DPP4 阻害剤における薬の内服量の調節の例(1 回量)
CCr
薬剤名(成分名)
50 以上
30〜50
30 以下
ネシーナ(アログリプチン)
25mg
12.5mg
6.25mg
ジャヌビア(シタグリプチン)
50mg
25mg
12.5mg
トラゼンタ(リナグリプチン)
5mg
テネリア(テネイグリプチン)
20mg
ネシーナとジャヌビアは腎臓から尿中に排泄される比率が高いため CCr
の低下に従って薬を飲む量を減らすことになっています。一方、トラゼン
タやテネリアは肝臓から胆汁へ排泄されたり、代謝されたりする比率が多
いため CCr が低下しても薬を減らす必要がありません。
薬の量を守らなければならない理由の一つがこのように患者さんによっ
て腎機能の状態を見ながら薬の量が決められているためなのです。
薬の用量を守る大切さの一端が理解していただけるかと思います。
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