トニー・スターク が あらわれた ! クレイジー松本キヨシ ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 I 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ が生まれた世界に、トニー・スタークがいたら⋮⋮。 天災が作り出した兵器、インフィニット・ストラトス││通称 S ガバガバ設定かもしれませんが、頑張ります " そしてアンチ・ヘイトは保険です。 タグに追加します。 寄せ集めたオリジナルスーツを出すかもしれません。そうなったら 有しています。もしかしたら、合宿あたりにヒーローの良いところを 社長は基本的に映画版の設定のみで、シビル・ウォーまでの記憶を ! 至らない点があると思いますが、よろしこよろしこ。 少し面白いアイディアが思いついたので書いてみました。 " プロローグ ││やはり造ってしまう │││││││││││ プロローグ ││天才、転生 │││││││││││││││ 1 目 次 プロローグ ││白騎士事件前日 │││││││││││││ 3 I am Iron man │││││││││││││││ 第2回モンド・グロッソ ││誘拐事件 ││││││││││ テストパイロット ││彼女の夢 │││││││││││││ スターク・インダストリーズ起業 ││そして │││││││ 白騎士事件 ││その後 ││││││││││││││││ 白騎士事件 ││後編 ││││││││││││││││││ 白騎士事件 ││前編 │││││││││││││││││ 5 11 17 23 28 34 39 50 プロローグ ││天才、転生 キャプテン・アメリカこと、スティーブン・グラント・ロジャース が率いる反対派ヒーローと、僕が率いた賛成派ヒーロー同士での大規 模な内戦。 シビル・ウォーと呼ばれる闘いは、様々な爪痕を残した。 キャプテンが率いたヒーロー達は、一度は監獄に入れられたもの の、キャプテンの手によって脱獄、その後は行方不明になった。 その時、キャプテンから送られた1つのケータイは、送られたメッ セージと共に僕が大切に保管している。 このことは僕以外に知る人間はいない。 そして僕のことなんだが⋮⋮。 重度の心臓病を患い、それが悪化して死んだ。 心臓近くに残っていた兵器の破片を取り除いた手術の後遺症なの か、はたまたアークリアクターによる後遺症なのかはわからない。 だが、シビル・ウォーによる精神的疲弊、ストレスが重なり、心臓 病を患ったのは確かだ。 僕はキャプテンやバナーのように、超人ではない。 だから僕はスーツに頼らなければ闘えない。 そして病には勝てない。 僕はこの死を、仕方なく受け入れてしまった。 心残りがあるとするならば、足腰が不自由になってしまったロー ディを助けられなくなってしまったこと。 そして、キャプテンと仲直り出来なくなってしまったことだろうか ⋮⋮。 1 ・ ・ ・ さて、何故死んだ僕がこんな思考に浸っているのか。 それは僕が生きているからである。 何故かはわからないが、同姓同名でまた生まれたのだ。 思考できるようになった歳、まあ3、4歳頃になって、さすがの僕 も混乱した。 何でこうなっているのかと。 まさか僕は過去に戻っているのかとも思ったが、どうやらそうでも ない。 まず、父と母こそ同じだが、一般的家庭に生まれたことだ。 父は軍に関わっていない。むしろ普通の職、俗に言うサラリーマン というやつになっている。 パラレルワールド 母は家で家事をしている。 こ こ だ け な ら 並行世界 と や ら と も 思 う か も し れ な い。な ん せ ア メ リカは僕が知っている通りに戦争で勝っているから。 だが、この世界が前世と確定的に違うとわかったことがある。 アメリカの戦時中に、キャプテン・アメリカという兵士が存在して ヒーロー いないのだ。 ヴィラン つまり、正義の原典とも言えるキャプテン・アメリカが存在しなけ れば、その対極である悪も存在しないのだ。 僕はこの出来事を知って唖然とした。そして前世とは違う世界な のだと、僕に知らしめたのだ。 そして僕はそんな世界で、どう生きれば良いのか、何故かわからな くなってしまったのだ。 2 プロローグ ││やはり造ってしまう 何年か時が経ち、僕は12歳になったわけだが⋮⋮。 とりあえず、前世と同じように生きてみることにした。 ただし、軍事兵器は造らないという方向性でだ。 軍事兵器を造っても碌な事にならないのは明白だし、身を持って 知っている。それが原因かはわからないままだが、間違いなく僕が死 ぬ要因にはなっているし。 エンジンを造る歳が早い なので、4歳で集積回路基盤を組み立て、5歳でエンジンを制作。 何 るのなんて簡単な事だ。 ? 幾度の試作を重ね、最新鋭の人工知能が完成した。 ﹁よし⋮⋮F.R.I.D.A.Y.気分はどうだ ﹂ そして、今。家の地下に僕の部屋兼研究室を造ってもらい、そこで つけていた。 そんな周りからの評価に脇目も振らずに、僕は人工知能制作に手を なる。 わかる通り、こんな事をしていれば周りから天才と呼ばれるように その資金で材料は調達してる。 ブログの広告はFXや株に比べれば微々たる程度の物だがね。 思った事はない。 で 金 を 儲 け て い る ん だ よ。こ の 時 ほ ど 前 世 の 知 識 が 役 に 立 っ た と 材料やその資金はどこから調達した 僕がブログの広告、FXや株 当たり前だ。材料さえ調達できれば、一度造ったことのある物を造 ? そして、そこから僕はアイアンマンのスーツに着手するのであっ れに関して苦笑する他なかった。 僕のスーツ依存症は、前世から引き継がれているみたいだ。僕はこ ⋮⋮アイアンマンのスーツだ。 僕はディスプレイに映し出されている1つの設計図を見る。 ﹁そうか、それは良かった。これでやっとアレが造れる﹂ ﹃おはようございます、トニー様。問題無く稼働しています﹄ ? 3 ? た。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ああ、その前にブログに届いてる熱心なファンからのコメントを返 さないと。このファン、中々筋が良くて僕に劣らない頭脳を持ってい るんじゃないかと思ってるんだよ。 ○○○ 日本。 とある家のとある部屋。 ﹃不思議の国のアリス﹄を思わせるような服装を纏っている彼女││ 篠ノ之束はパソコンのモニターに釘付けであった。 モニターには英語で﹃トニー・スタークの開発日記﹄と銘打ったブ ログを読んでいる。 彼女も天才である故に、一々翻訳せずとも読めるのだ。 ﹁││すごいなぁトニー・スタークは。私とそう年齢は変わらないの に、もう人工知能の開発を終わらせちゃったんだ﹂ 4 束は楽しそうに、嬉しそうにブログを読む。 ﹂ ちなみに、束よりもトニーの方が年齢は1つ上だ。 ﹁私も頑張らなきゃ フォルダ名は﹃インフィニット・ストラトス﹄と書かれていた。 束はトニーのブログを閉じ、フォルダを開く。 ! プロローグ ││白騎士事件前日 15歳になった僕は今、マサチューセッツ大学で行われる、科学者 の研究発表に参加していた。 いや、仕方なく参加したと言った方が良いのだろうか 周りの大人達から、 ﹁君と同年代の子が出る﹂と聞いたからだ。そう じゃなかったら絶対来ていない。 というのも、アイアンマンスーツの開発が難航しているのだ。 まず、成長期である僕の身体にあったスーツと大人になった身長の スーツではサイズが違う。 とりあえず、前世での最終的な身長に合わせたスーツを主に造り、 今の身長に合わせたスーツは1着だけ造った。 ここまで言っておいて何だが、身長の問題はどうとでもなると気づ いた。 それよりも最大の難関である、スーツの動力源であるヴィブラニウ ムの精製だ。僕の前世の記憶を元に、精製をしようとしているんだ が、これがどうにも上手くいかない。 これが無ければ、スーツの試験運用も出来ない。 パラジウムを使う手も考えたが、アレのせいで痛い目を見ている僕 としてはあまり使いたくない。それにそんな急ぎでもないのでね。 とりあえず今は、自宅でF.R.I.D.A.Y.とロボットアー ムのダミーとユーが改善点を探してくれているだろう。 しかし、3年も改善点を探してはいるが、一向に見当たらない。 ⋮⋮それにダミーとユーが何かやらかさないか不安があるが。 そんなことを考えていると、僕の番が来たみたいだ。 とりあえず、人工知能と3Dホログラフィックモニターについて話 そうかと思っている。 アイアンマンスーツについて話さないのかって ね。まぁ前世の時みたく、軍にスーツは渡さないよ。 ⋮⋮ローディもいないからね。 5 ? あれは僕の自己満足の物だし、何より戦争に使わされそうで嫌だ ? ○○○ トニーが前に立つと、会場内の気が一瞬で引き締まる。 それ程、彼は凄い人物なのだ。 4歳で集積回路基盤を組み立て、5歳でエンジンを開発。そして1 2歳で最新鋭の人工知能を開発。 会場にいるみんながみんな、トニーが何を発表するかに興味と関心 を抱いている。 トニーが前に立ち、マイクをONにして喋り始める。 ﹃あー。んん、トニー・スタークだ。今回発表するのはみんなが期待し てる程ではないと思うから、期待しないでくれ。じゃないと僕がプ レッシャーで潰れそうだ﹄ 何を言ってんだコイツは、と会場内にいる科学者はそう思い、笑う。 ﹃じゃあ、まずは人工知能についての発表⋮⋮。だけどこれはみんな が知っているかもしれないから飛ばそうと思う。ちなみに開発手段 ・ 信じられない って顔をしているな。実 " 6 は開示しない。分野にもよるが、科学者なら自分で開発してくれ﹄ トニーはそう言う理由はちゃんとある。 前世でウルトロン計画を実施した時、世界が大混乱に陥ったから だ。 ヴィジョンやマキシモフ姉弟、そしてアベンジャーズの協力によっ てそれは打倒された。しかし、それによって起こった惨事も多いこと をトニーはわかっている。 もしかしたら、ウルトロンのような人工知能を造る奴がいるかもし れない。そう思ったからトニーは開発手段を開示しないのだ。もし、 誰かがウルトロンのような人工知能を造ったら、トニーはそれを破壊 するつもりでいる。 ﹃次で最後だが⋮⋮。これは未発表。今回が初めての発表だ。既に僕 ・ の家では取り入れてる物。3Dホログラフィックモニターだ﹄ トニーが操作し、2Dのモニターにその画像が映し出される。 そこの君、 " ﹃見てわかるように、モニターが3Dになっているだけ。ああ、タッチ もできる。ん 際に見せてみよう﹄ ? 今更だが、年上ばかりいる中でトニーの喋り方はあまりよろしくな いだろうが、その年上の人間達が気にしてないので、トニーはその喋 り方を続けている。 トニーはズボンのポケットから、ケータイサイズのガラスのような ・ ・ 物を取り出すと、ステージの真ん中目掛け、それを手首で軽く振る。 すると、ステージの真ん中に3Dモニターが現れた。 これに科学者達は騒めきを起こす。 ﹃やっぱり3Dホログラフィックモニターの方が楽だね。さてと、ご 覧の通り、自分の手でこのモニターを触って、動かすことができる﹄ トニーは3Dモニターの前に出ると、それを手で触り始める。 ﹃この3Dホログラフィックモニターは既に完成されてはいるが、ま だまだ改善の余地はある。だからこれに関しては僕が納得いく出来 になったら、開発手段を開示しようと思う。あぁ、これを商品化する なら売り上げの50%は僕に渡すんだぞ。以上だ﹄ 彼女が前に立ち、発表が始まる。 みたいだ。 研究発表内容は﹃インフィニット・ストラトス﹄。 宇宙空間での活動を目的としたパワードスーツ。 要は何がなんでも人命は守る宇宙服だ。いや、アイアンマンスーツ に近いか だ。 ﹁出来るわけがない﹂と罵る奴もいれば、ほくそ笑む奴もいる。 とりあえず、そんな奴らは無視して僕は彼女の研究発表を聞こう。 7 トニーはそれだけ言うと、ステージから降りた。 会場にいる科学者達は立ち上がり、今回最大の拍手をトニーへと 送ったのであった。 ○○○ 同年代の子 さて、僕の発表が終わった次は篠ノ之束とかいう女性の発表だっ た。 どうやら彼女が僕と " 服装からして﹃不思議の国のアリス﹄を連想させるな。 " 僕は実に素晴らしい発明だと思ったが、周りはどうやら違うよう ? それに、どうやら彼女は僕のブログに熱心にコメントをくれたファ ンのようだ。なんでわかったかって 最近になって、コメントだと嫌だという彼女とはチャットでよく意 見交換をするんだが、その僕の意見が発表内容の所々に反映されてい るのを見てわかった。 僕は少し嬉しく思ったよ。同レベルの会話が出来るのは僕の造っ た人工知能かバナーくらいしか居なかったからね。 そしてその﹃インフィニット・ストラトス﹄。 大気圏内外でも高い機動力を有し、宇宙空間で邪魔な漂流物を撤去 できるよう、武器も搭載されているようだ。 そして肝心の人命を守ることに関しては、2層のバリアによって守 られるようだ。外側の層のバリアがもし破られたのなら、外側の層よ りも出力の高いバリアがそれを守る。 彼女のアイディアはとても素晴らしい。特にバリアに関してはア イアンマンにも取り入れようかと思ったくらいだ。 しかし、周りの科学者はそうは思わないようだ。 彼女の発表が終わってステージから降りると、周りの科学者達は ﹁不可能だ﹂だの、 ﹁机上の空論だな﹂だのと罵る。当事者である彼女 は悔しそうに顔を伏せた。 少し癇に障った僕は、立ち上がって、拍手を彼女に送った。 それを見た周りの科学者達は、一気に鎮まり、彼女は僕を見る。 造って ﹁素晴らしい研究じゃないか。人命をよく考えた良い研究だ。特に2 層のバリアは僕も1本取られたよ﹂ 僕がそう言うと彼女は少し嬉しそうな表情を見せる。 ﹁そんなの不可能に決まってる﹂ ふと、誰かがそんな言葉を発した。 じゃあ君はこれを実際に造ってみようとしたのか 僕はその声がした方向を見て、反論してやった。 ﹁不可能 ? どうだ ﹂ しかし、会場は静かなままだった。 8 ? み よ う と し た 上 で 不 可 能 と 言 っ た の な ら 僕 も 不 可 能 だ と 認 め よ う。 ? ? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹁不可能を可能にするのが科学者だと僕は思っている。だから、やる 前から諦めるような奴は科学者を名乗らないでほしいね﹂ ﹁まぁ、あくまで僕の意見だけどね﹂と付け加えて、僕はステージから 降りた篠ノ之束に近づく。 そして握手を求めた。 ﹁素晴らしい研究だ。頑張ってくれ﹂ ﹁あ、ありがとう﹂ 篠ノ之束はやはり嬉しそうに握手に答えた。 握手をし終え、これ以上この場にいても意味がないと思い、会場か ら退場し、自宅へと帰った。 篠ノ之束は憧れていたトニー・スタークに認められ、感激していた。 ﹁⋮⋮そうか ダミーに伝えといてくれ、良くやった、と﹂ 自宅への足取りは、とても軽いものとなった。 まさかの吉報に、僕は心が躍る。 ﹃かしこまりました﹄ ! 9 しかし、それもすぐに鎮まってしまう。 ︵凡人共にわからないなら、どうにかして見せつければいいじゃない か︶ そう思いつくと、束もトニーの後を追うようにして会場から退場 し、日本へと戻った。 ○○○ ﹂ 自宅へ戻る途中、F.R.I.D.A.Y.からの電話があったの で僕はそれに出る。 まさかヴィブラニウムが精製できたのか ? ﹃トニー様、良いご報告があります﹄ ﹁なんだ ﹂ ? ﹃ダミーが改善点を見つけ、そこを改善した所、上手くいきました﹄ ﹁⋮⋮なんだって ﹃そのまさかです﹄ ? ちなみにだが、褒められたダミーは嬉しそうにアームを回転させて いたらしい。可愛い奴だよ、全く。 10 白騎士事件 ││前編 ﹃トニー様、一大事です﹄ ﹁⋮⋮なんだF.R.I.D.A.Y.﹂ 翌日。 無事生成できたヴィブラニウムを使い、スーツへの動力源として取 り付けることができた。 何着もあるスーツに取り付けるのは一苦労であり、その日は大学を 休んだ。 昨日から徹夜をしていたトニーは、昼寝をしていたところ、F.R. I.D.A.Y.に起こされた。 気持ち良く睡眠を取れていたトニーからしたら、少し不満がある が。 し か し、そ れ も F.R.I.D.A.Y.の 一 言 で 眠 気 は 吹 き 飛 ﹂ 11 ぶ。 ﹃アメリカ軍の固定ミサイルがハッキングされ、日本へと照準を合わ ﹂ し、発射しようとしています﹄ ﹁何だって ﹁それは確かか ﹃はい﹄ ? です﹄ ﹄ ﹁ハッキングか⋮⋮。そんなことできるのは僕くらいか ﹃トニー様 ﹁冗談だよ、冗談﹂ トニーには心当たりがあった。 自分と劣らない才能、つまり天才である人物。 そうーー ﹂ ターが全てハッキングされています。後は物理的な操作を行うのみ ﹃日本を射程圏内とするミサイルの配備された軍事基地のコンピュー ? !? ﹁アメリカ軍だけか ﹂ それを聞いたトニーは昼寝をしていたソファから飛び上がる。 !? ? ﹁ーー篠ノ之束か﹂ トニーは呟いた。 しかし、その考えはすぐに消した。 軍がミサイルの管理をそう易々とハッキングされるような所に置 かないだろうというのと、物理的な操作を必要とするからだ。精々砲 台の方向を変えるくらいしかできない。 ﹁じゃあ一体誰が⋮⋮。日本が多方面からミサイルを守る手段がある とは⋮⋮﹂ そこまで考えると、ある結論に至った。 そこからの行動は早かった。 ﹁F.R.I.D.A.Y.、アメリカ軍事基地にハッキングして砲台 ﹄ の方向を変えるんだ。それと並行して現状のアメリカ軍事基地内の 情報を集めてくれ﹂ ﹃かしこまりました。トニー様は ﹁お出かけだ﹂ トニーはそう言うと、上着を脱ぎつつ、スーツが収納されている サークルへと足を運ぶ。トニーはタイツのような薄手の服装になっ ている。 ﹃トニー様それは危険です。試験運用もしていなければ、空を飛ぶ計 算もしてません﹄ ﹁そんなものどうとでもなる。ちなみにこれは経験談だ﹂ サークルへと足を踏み入れると、上下からアームが出てきてトニー にスーツを纏わせる。 今の身長に合わせた唯一のスーツ。 ﹃アイアンマン マークIII﹄ 武装、色合いも前世そのまま。 唯一の変更点と言えば、動力源がパラジウムからヴィブラニウムに 変わっているというところか。 ﹁あぁ、やはり安心するな﹂ スーツを纏い終わったトニーは、小さい声でそう呟いた。 ﹃ハッチ、開きます。充分なサポートは出来ませんのでご了承くださ 12 ? い﹄ ﹁わ か っ て る よ。と に か く F.R.I.D.A.Y.は 情 報 が 手 に 入ったらこちらに回してくれ﹂ トニーはリパルサーレイを噴かし、飛び立った。 ﹄ ○○○ ﹃あれ ﹁どうした、束﹂ 日本上空。 織斑千冬は束から任された﹃白騎士﹄を纏い、空に待機している。 製作者の束は別の場所で千冬のバックアップをする予定だ。 現在、白騎士は世界各国から向けられたミサイルを撃墜││という 名目で、ISの有用性を示そうとしている。しかし、ミサイルの発射 などに関しては束は関わっていない。偶然なのだ。偶然にも、ISの 有用性を示せる場が出来たから、束はその場を利用しているのだ。 ﹃アメリカ軍のミサイルが発射されてないんだよ。砲台も元に戻って るし⋮⋮。こっちに向いてたんだけどなー﹄ ﹄ ﹁他国からもミサイルは飛んでくるんだ。むしろ1ヶ国分のミサイル が減って私は助かった﹂ ﹃それもそうだねー。おっ、ちーちゃん来たよ ﹄ ﹁あぁ、そうだな﹂ から ﹃へへーん、当たり前でしょ なんてたってこの束さんが造ったんだ ﹁凄いな、このISというのは。実際に使ってる私にはわかる﹂ 幸いにも海上のため、日本本土への被害は少ない。 とミサイルを斬り落としていく。 千冬は白騎士に装備されている大型プラズマブレードを使い、次々 話していると、ロシア方面からミサイルが飛んできた。 ! ていく。 手にある大型プラズマブレードを握り直し、ミサイルを斬り落とし ︵この白騎士と私なら、できる︶ 千冬は友の言葉に思わずそう言い返し、口元に笑みを浮かべる。 ? 13 ? ! ○○○ 各国から日本に迫るミサイルの脅威から千冬が奮闘している頃。 ﹃逆探知を試みたところ、ハッキングをした者はアメリカ軍事基地内、 管制室にいるようです﹄ ﹁ナ イ ス だ F.R.I.D.A.Y.。ち ょ う ど 僕 も ア メ リ カ 軍 事 基 地に着いた﹂ 軍事基地内に着陸すると、まず目に見えるのは倒れている人々だ。 生体反応からして、まだ生きている。 気絶しているだけだ。 ﹁人手が少ない時に狙われたとはいえ、軍としてこれはどうなんだ 全く⋮⋮ローディが見たら凄く怒るぞ﹂ ﹂ かつての友の事を考えつつ、トニーは管制室へと向かう。 ﹁F.R.I.D.A.Y.、管制室の中に誰かいるか ﹁な、何もんだお前 ﹂ ﹁大人しく投降した方が身のためだぞ﹂ トニーはその人物にリパルサーレイを向けつつ警告した。 管制室にいた人物は突然のことに驚き、トニーの方を見る。 リパルサーレイでドアを撃ち破って入る。 ﹁よし、突入だ﹂ ﹃⋮⋮1人の生体反応を感知しました﹄ 調べさせる。 管制室の前に立ち、F.R.I.D.A.Y.に生体反応が無いか ? 人物が入ってきたからだ。 ﹂ ﹁悪党に名乗る名前はない﹂ ﹁この 撃った。 しかし、そんな物がアイアンマンのスーツを貫くはずもなく、ト ニーはノーダメージである。 14 ? いきなり入ってきた人物が普通の軍人ではなく、ロボットのような 相手の反応は当たり前である。 ! 相手はかなりの速さで懐から1丁の拳銃を取り出し、トニーへと ! ﹁はぁ⋮⋮。僕は警告したぞ﹂ 溜め息混じりにそう言うと、肩から麻酔針のようなミサイルを相手 に撃った。 相手はそれに気づくことなく、気絶した。 ﹁さて、とりあえずこいつを連れて外へ出るか。F.R.I.D.A. Y.、君はハッキングされた各国の砲台の方向を変えてくれ﹂ ﹃かしこまりました﹄ トニーが外へと出ると、軍人が取り囲むようにしてトニーを待って いた。 指揮官が前に立ち、警告する前にトニーが喋った。 ﹁今回の事件の関係者だ。ほら﹂ そう言ってトニーは片手で掴んでいた犯人を指揮官の前へと投げ 15 る。 指揮官が何か言いたげだったが、やはりトニーが先に喋り始める。 ﹁僕はこれから日本に行って人助けをしないといけないから暇じゃな い。あぁ、そうだ。戦闘機とか飛ばさないほうが良いぞ。損失が増え るだけだからな﹂ それだけ言うと、トニーはリパルサーレイを噴かせ、日本へと飛び 立った。 ○○○ F.R.I.D.A.Y.が ハ ッ キ ン グ し 終 え る 頃 に は 日 本 に む かって撃たれていたミサイルは徐々に少なくなっていき、今ではもう 撃たれる気配は無くなっていた。 ﹁はぁ⋮はぁ⋮。どうだ、束﹂ ﹂ ﹃うん、ミサイルはもう来ないみたい。⋮⋮待って﹄ ﹁どうした束 ﹂ ﹃⋮⋮今度は戦闘機や艦隊がそっちに向かってる﹄ 急に真剣な様子に戻ったので、千冬は声をかける。 ? ﹁何だって⋮⋮ ? ﹃ごめん、ちーちゃん⋮⋮。まだ闘える ﹄ ﹄ ﹁任せろ。これを渡すわけにはいかんのだろ ﹃⋮⋮うん ﹁引き続き、サポートは任せたぞ﹂ そこで一旦、通信を切る。 ﹁ISが今回の引き金なのか ﹂ そこで、千冬も少しづつ気付いてきた。 ﹂ Sがあったから良いものの、無かったら大変な事に⋮⋮。IS 仕方なく思考を中断し、通信に応答する。 ﹄ ﹃戦闘機が207機、巡洋艦が7隻、空母が5隻みたい﹄ 12時の方向 ﹁数が多いな⋮⋮﹂ ﹃⋮⋮ちーちゃん ! ﹂ とか飛ばしてなかったが、他の国はどうしたというのだ⋮⋮。まだI ﹁しかし⋮⋮何故日本に向かってミサイル何かを⋮⋮。アメリカは何 めた。 千冬は集中し直す。そのついでに、今回の真相について気になり始 束も相手の数を調べなければならないからだ。 ? ? そこまで思考すると、束から通信が入る。 ? ? ﹂ ! 千冬は気合を入れ直し、ブースターを噴かせた。 ﹁もう一踏ん張り⋮⋮だな た視覚が、戦闘機を捉える。 束に指示された方向を見ると、ハイパーセンサーによって強化され ! 16 ! 白騎士事件 ││後編 ││某国が所有している母艦。 千冬が次々と戦闘機を撃墜させていく中、船員は少しの不安を抱え 始める。 そして、それは更に増大することになる。 マッハ1.58です ﹂ オペレーターの1人が、モニターを見て叫んだ。 ﹁未確認兵器が接近 ﹂ ﹂ ! ! ﹂ 兵器が現れたのだ。心情はあまりよろしくない。 ええい 我が軍の戦闘機はそいつを撃墜しろ ﹂ ! ﹁⋮⋮未所属です﹂ ﹁ッ の国も狙っているんだからどうにでもなるだろ あの白いのは他 当たり前だ。戦闘機が白騎士に撃墜されている中にまたもや謎の 司令官がその映像を見て、オペレーターに怒声を放つ。 ﹁どこの国のだ どではなく、人間サイズの赤と金色の装甲を纏った何かだった。 そこに映っていたのは、米軍が保有するステルス戦闘機﹃F22﹄な オペレーターが操作し、巨大モニターに衛生映像が映る。 ﹁衛星映像、出ます ﹁米軍のF22か ! ! た。 ○○○ ﹃トニー様、後方から戦闘機が3機接近しています﹄ 日本の領空に差し掛かった辺りで、F.R.I.D.A.Y.が警 告メッセージを発した。 ﹁僕も敵と見なされた訳か。F.R.I.D.A.Y.、フレアの準備 しとけよ﹂ ﹃かしこまりました﹄ ﹂ ﹁ああ、それとF.R.I.D.A.Y.。エンジン部分と操縦席を避 けつつ戦闘機を撃墜することは可能か ? 17 !? ! 司令官は半ば自暴自棄になりつつ、怒気を孕んだ声で指示を飛ばし ! !? ﹃難しいですが出来ないこともありません。少々お時間を頂きたいで す。目標の指定と計算を行います﹄ ﹁上出来だ。なら僕はドッグファイトを楽しむか﹂ トニーはリパルサーレイの出力を上げ、速度を上げる。 おおよそマッハ1.7は出ているかもしれない。 突然速度を上げたため、アイアンマンと戦闘機の距離が開く。 戦闘機も速度を上げ、距離を詰める。 ﹁そうこなくっちゃな﹂ トニーはディスプレイに表示される後ろの映像を見ながら飛行を 続ける。 よく見ると、戦闘機が徐々に近づき始めている。 戦 闘 機 が ト ニ ー を 射 程 圏 内 に 捉 え た と こ ろ で、F.R.I.D. A.Y.が警告メッセージを発した。 ﹃ロックオンされています﹄ 18 それと同時に、戦闘機から追尾型のミサイルが飛ばされた。 バレルロールや急上昇、急降下を試してみるが⋮⋮ ﹁いくつか残ってるな⋮⋮﹂ 数弾の追尾型ミサイルは依然として、トニーの後を追っている。 ﹁F.R.I.D.A.Y.、フレアを発射しろ﹂ ﹃かしこまりました﹄ そう言うと、腰部分に付いていたホルダーから、フレアが撒き散ら される。 残っていた追尾型ミサイルは全弾当たり、爆発した。 ﹂ その爆発の後ろから、戦闘機が追ってくる。 ﹁F.R.I.D.A.Y.まだか そう言って、トニーはお返しと言わんばかりに、左肩からミサイル ﹁中々楽しかったぞ。お礼のミサイルだ﹂ 戦闘機の間を抜け、トニーは戦闘機の後ろに付く。 直立状態からトニーは両手を前にし、減速する。 ﹁よし、反撃に出るか﹂ ﹃もう少しで⋮⋮、計算終了、目標を設定。いけます﹄ ? を発射する。 トニーの急な減速、攻撃に対応できるはずもなく、戦闘機は撃ち落 とされていく。 戦闘機に搭乗していたパイロット達は脱出し、パラシュートを開 く。 ﹁よしこれで⋮⋮﹃パラシュートが開けていないのが1名﹄全く⋮⋮ ﹂ パラシュートが開いていないパイロットをセンサーで捉え、トニー ﹂ はその後を追うため、下降する。 ﹁前回もこんなことなかったか ○○○ ﹁あらかた片付けたか⋮⋮ ﹂ トニーは再び、目的地へと飛ぶ。 ﹁今度こそ行くぞ﹂ シュートを開かすことに成功した。 パ イ ロ ッ ト の 近 く ま で 寄 り、座 席 に あ る ボ タ ン を 押 し て、パ ラ ﹁このボタンだな⋮⋮。ビンゴだ﹂ 1人そう呟くが、それを覚えているのはトニーのみである。 ? ﹁そうか、それは良かった﹂ その言葉に安心し、一息吐く。 ﹄ ちーちゃんまだ何 ! 何だ終わったのか。お手伝いが必要かと思ったんだがね﹂ ﹁はぁぁッ ﹂ ││話しかけてきた。 ﹁ん それが千冬に近づき││ 近してくるのがわかる。 束が千冬のバイザーにモニターを映す。そこには何かが急速に接 ! ﹃うん、もう撤退し始めてる。私達は勝ったんだよ 肩で息をしている千冬は束に確認するように呟いた。 ? ﹃エネルギーもそろそろ無くなるしもう戻っ⋮⋮ ﹄ か来る ! ﹂ ﹁何だと ? ? ! 19 ! それを見たなり、千冬は斬りかかる。 言っただろ、お手伝いに来たと ﹂ 無理もないだろう。相手が敵なら自分が死ぬかもしれないのだか ら。 ﹁おいおい、待って ! る。 ﹁だぁぁぁッ ﹂ 相手││といってもトニーなのだが、トニーはそれを簡単に回避す ! ﹁ その声、篠ノ之束か﹂ ﹃お願い、ちーちゃん止めて ﹄ ﹁おい、止めろ。聞こえてないのか ﹂ F.R.I.D.A.Y.にそう指示し、ひたすら距離をとる。 ﹃もうやっています﹄ ﹁F.R.I.D.A.Y.、攻撃パターンを﹂ どうやら千冬は一種のトランス状態に入っている様子だ。 千冬は続けて攻撃する。 ! 驚く。 ? た。 ﹃その声、やっぱりトニー・スターク ﹄ ! そこでトニーは束に訊いた。 ISには2層のバリアが張られていること。 発表を思い出す。 トニーはマサチューセッツ大学で行われた科学者達の発表で、束の ﹁そうだった。相手にすると面倒くさいな﹂ ﹃バリアによって守られています﹄ ⋮⋮だが トニーはリパルサーレイを千冬に撃つ。 ﹁そのつもりだ。君とは話さないといけないことがあるからな﹂ お願い、ちーちゃんを止めて ニーは、てっきり目の前にあるISに乗っているのも束だと思ってい 目の前にあるのはISで、それを造ったのは束だとわかっているト ﹁乗っているのは篠ノ之束ではないのか ﹂ 突然、オープンチャンネルから聞いたことのある声がし、トニーは ! !? ! 20 ! ﹂ ﹁何とかしてバリアを1層だけでも剥いでくれ。そうしたらこっちで ﹄ どうにかする﹂ ﹃わかった 束はその作業に取り掛かる。 ﹁F.R.I.D.A.Y.、終わったか ﹃ちょうど終わりました。そちらにパターンを反映させます﹄ ﹄ トニーの視界に、千冬の攻撃パターンが映し出される。 ﹃トニー・スターク、バリアを1層剥いだ ﹁よくやった。後は任せたまえ﹂ キャッチする。 ﹁デカイし重いな。もうちょっとスマートにならないのか ﹃トニー様、女性に対してそれは失礼かと﹄ ﹁僕はこのISってやつについて言ってるんだ﹂ ﹂ 気 絶 し た こ と に よ り、下 へ 落 ち そ う に な る が、ト ニ ー は そ れ を 千冬を気絶させた。 気絶させる程度の力で、アッパーカット。 ﹁悪いが少し眠ってくれ﹂ それをトニーは見逃さない。 攻撃を止められたことに千冬は驚き、隙ができる。 ザー部分がギリギリ当たりそうなところで止まった。 ら上段斬りがくるとわかっていたトニーはそれを白刃取りする。レ 一瞬で距離を詰めたことには少し驚いたが、攻撃パターンの予測か ﹁読めてたぞ﹂ 千冬が一瞬で距離を詰め、トニーへと上段斬りをする。 ! ﹃えっ ﹄ ﹁礼はいらないよ。とりあえず話しがある。僕の家まで来てくれ﹂ ﹃ありがとう、トニー・スターク﹄ 接触通信が送られてきた。 F.R.I.D.A.Y.のツッコミにそう返していると、束から ? 縦者の身柄はこちらで預かる。要は人質だな。ああ、安心してくれ、 21 ? ! ﹁そこなら誰にも邪魔されないし盗聴される危険もない。一応この操 ? 酷いことする気はないから﹂ ﹃⋮⋮分かった﹄ ﹁物分りが良くて助かるよ。少し待っててくれ。人目につきたくない だろうから向かいに行こう。それまでの間、どこかに隠れておいたほ うがいいぞ﹂ ﹃うん⋮⋮。ちーちゃんに手を出したら、トニー・スタークでも殺す﹄ 束はそう言うと、通信を切った。 ﹁怖い怖い⋮⋮。F.R.I.D.A.Y.、僕が家に着くまでの間、 衛星映像をハッキングして適当な映像を流しておいてくれ。それと 篠ノ之束の位置もわりだしておいてくれ﹂ ﹃かしこまりました﹄ トニーもF.R.I.D.A.Y.にそう指示し、とりあえず家へ と戻っていった。 22 白騎士事件 ││その後 ﹂ ラ ボ ﹁ここが⋮⋮トニー・スタークの研究室﹂ ﹁大した物は置いてないぞ 束は部屋のあちこちを見る。 あの後、何事もなく千冬を連れて自宅へと戻り、束も向かいに行っ て、今に至る。 千冬はISは待機状態になっているものの、未だに気絶している。 トニーもスーツを脱いでいる。 ﹁さて、まずは君の質問から答えてあげよう。篠ノ之束﹂ ﹁束で良い﹂ ﹁なら束と呼ぼう。僕のこともトニーで良い﹂ ﹂ 適当な作業台の上にトニーは座り、束は用意された椅子に座る。 ﹁トニーが着ていたのは⋮⋮何 ﹁⋮⋮名前は ﹂ トニーはマークIIIを視界に入れつつ、説明をした。 ﹁パワードスーツだ。君の造ったISと同じようなね﹂ ているマークIIIが現れる。 すると、トニーがスーツを装着したサークルの中から、組み上がっ ている。 を押す。そのケータイは時代を先取りしているようなデザインをし トニーはそう言うと、作業台の上に置かれていたケータイのボタン ﹁早速その質問か。まぁそう来るとは思ってたけど﹂ ? 名前を変えようとも思ったが、随分と慣れ親しんだ名前を今更変え ﹂ 金とチタン合金を使っている﹂ ることもどこか面倒くさいと思い、アイアンマンと言った。 ﹁鉄の男 ﹁実際には鉄は使ってないぞ 束はそれを穴が空きそうなくらい、見始めた。 ﹁す ご い ⋮⋮ 量 子 格 納 を 使 っ て な い の に ⋮⋮ あ ら ゆ る 通 信 網 の 傍 受 23 ? ﹁⋮⋮アイアンマン。そう、アイアンマンだ﹂ ? 3Dホログラフィックモニターを出し、設計図を見せる。 ? ? ⋮⋮。本当にすごいや⋮⋮﹂ ﹂ ﹁おいおい、そんなに褒めても何も出ないぞ とがあるんじゃないのか それと、君は僕に聞くこ ? ﹂ ? ﹂ うな。目的はわかっているんだろ ﹂ ﹁今回のこの世界を巻き込んだ事件。何かの組織が動いているんだろ それをトニーが代表して口にした。 トニーが行き着き、束も辿り着いた結論はこうだ。 には物理的な操作が必要なのだ。 れこそアメリカのミサイルも飛んでいた。つまり、ミサイルを撃つ時 管理しない。もしミサイル全体をネットワークで管理していたら、そ ない。せいぜい砲台の向きを変える程度のことしかネットワークで ミサイルなんてものは普通に考えてネットワークで管理なんてし ﹁そう、話が早くて助かるよ﹂ ルキーを押した奴らがいる﹂ ﹁でも各国のミサイルは飛んだ。つまり、各国の軍事基地にもミサイ だが﹂ け、アメリカのミサイルキーを押そうとしたところで僕が捕らえた訳 ﹁そういうこと。それでこの人物が各国のミサイルの砲台を日本に向 闘機が飛んで来なかったのか﹂ ﹁トニーがアメリカ軍事基地に行ったからアメリカからミサイルと戦 ﹁これは僕がアメリカ軍事基地に行った時の映像なんだが⋮⋮﹂ 映し出される。 F.R.I.D.A.Y.の名を呼ぶと、モニターに映像と情報が ﹃かしこまりました﹄ ﹁F.R.I.D.A.Y.﹂ ﹁前者は ﹁少なくとも後者は前者の結果を受けた各国家のものだろう﹂ ﹁そうだね⋮⋮。あのミサイルや戦闘機は誰の差し金 そう言って設計図をしまい、スーツも格納庫に戻した。 ? ﹁私のISを使わせるため⋮⋮﹂ 束にそう言うと、首を縦に振る。 ? 24 ? ・ ・ ﹁そう。ISが宇宙活動の為の物ではなく、兵器としての有用性を示 すことが目的だったんだろう﹂ それを聞いた束は歯軋りし、拳を強く握る。 それはそうだろう。凡人を見返す為とは言え、まんまと誰かの策に 溺れたのだから。 それに束がISを造った理由。それは人類の宇宙進出のためだ。 それが兵器として見られるように使われたのだ。造った者からし たら堪ったものではない。 ﹁あの発表会にその組織の関係者がいたんだろ。そして思った。今ま ﹂ でにない、強力な兵器として使えるのではないか、と﹂ ﹁⋮⋮ッ トニーは皮肉で言ってるのではない。事実を言っているのだ。 ﹁⋮⋮時代が動くぞ。各国がISについての説明を求め、各国はそれ を欲しがる。あの手この手を使って日本は承認せざるを得ない。日 本はそこまで強い国ではないだろうしね。そして、例え君が戦争の為 に使うなと言ったところで、自衛の為と言って軍にISを設置するだ ろうな﹂ そこまで言って、トニーは一息いれるために、コーヒーメーカーが ある場所に向かい、自分と束、千冬の分のコーヒーを淹れる。 千冬の分はロボットアームのダミーに持って行かせ、束の分はト ニーが持って行く。 ﹁⋮⋮そうしたら君のアイアンマンだって﹂ 束はトニーに聞こえるように呟く。 ﹁そうだな。しかし置かれている環境が違う。アイアンマンは正体不 明。映 像 は F.R.I.D.A.Y.が 全 て 別 の 物 に す り 替 え る か 消 去 し て い る。も し 僕 だ と バ レ た と こ ろ で 軍 が ス ー ツ を 寄 越 せ と 言ってきたとしても、僕は渡さない。無理矢理奪うものならスーツは 爆発させる。それにアメリカだ。各国からの圧力も耐えれるだろう な﹂ トニーは自分のコーヒーを呑み、束の分は彼女に渡す。 束はコーヒーを両手で包み、顔を伏せる。 25 ! ﹁じゃあ⋮⋮﹂ ﹂ 私はただ、ISによって宇宙活動が活 そして勢いよく顔を上げ、怒りの表情でトニーに言う。 ﹁じゃあどうしたら良いのさ 発になれば良いなって思って⋮⋮ ﹂ ﹁それだよ﹂ ﹁えっ 造ってる﹂ ・ ・ ・ ﹂ ? ﹁えっ﹂ ・ ・ ﹁それに僕は天才だ。君も天才と呼ばれているんだろ ・ ﹁うん﹂ ・ ﹁不可能をを可能にするのが僕達、科学者だろ ﹂ ﹁君 と 僕 な ら で き る だ ろ。僕 は 既 に 宇 宙 活 動 の 為 の ア イ ア ン マ ン も ﹁できるのかなぁ⋮⋮﹂ 握手だ。 そしてトニーは束の前まで向かい、手を差し伸べる。 していくんだ。その為なら僕も協力しよう﹂ い。兵器というイメージを、宇宙活動の為の発明というイメージに戻 う。しかし宇宙活動の為の発明だということを君は忘れてはいけな るようなことになってしまったら、それを止めることはできないだろ ﹁元々ISは宇宙活動の為の発明だ。それが今後、兵器として使われ トニーはコーヒーを作業台の上に置き、言った。 ! ! 災 ここに天才と天才の間に、協力関係が生まれたのだった。 天 ﹁よろしくね、トニー﹂ ﹁そういうことだ。よろしく、束﹂ 片手で溢れそうになる涙を拭う。 ﹁うん、そうだね﹂ そして、トニーの握手に応えた。 目には涙が溜まっていく。 き、目を大きく見開き、何かに気付いた。 その言葉、発表会でも言った言葉を、束に投げかける。束はそれ聞 ? 26 ? ﹁んん 私のことを忘れていないか ﹁ち、ちーちゃん ﹂ ﹂ ││そこで、今の今まで気絶していた千冬が目を覚ました。 ? ﹁ちーちゃん ﹂ るように、彼女は不器用でな﹂ スターク﹁トニーで構わない﹂⋮⋮トニー、束をよろしく頼む。わか ﹁大分前から起きてはいたんだがな⋮⋮。そんなことよりも、トニー・ いきなり目覚めた千冬に束は驚く。トニー然程驚いてはいないが。 ﹁おや、お目覚めか﹂ ! ファントムタスク そして、F.R.I.D.A.Y.は続けて言った。 たものになる。 しかし、F.R.I.D.A.Y.の言葉によって、空気は緊迫し ﹃犯人が所属している組織が判明しました﹄ は束で目をキラキラさせている。⋮⋮研究者の性というやつだろう。 さが 千冬は何処から声がするのかがわからず、辺りを見回しており、束 すると、F.R.I.D.A.Y.が話しかけてくる。 ﹁なんだF.R.I.D.A.Y.﹂ ﹃トニー様、大変申し訳ないのですが﹄ 千冬は少し笑い、そう答えた。 ﹁その時は任せてくれ﹂ な﹂ ﹁そ う か。千 冬 は 宇 宙 で I S に 乗 っ て も ら う こ と に な る だ ろ う か ら ﹁織斑千冬だ。千冬で構わない﹂ てもらうぞ。えーと、ちーちゃん﹂ ﹁不器用な女性というのもそれはそれで良い。それと、君にも手伝っ 束は恥ずかしそうに千冬に怒鳴る。 ! ﹃亡国産業という組織です﹄ 27 ! スターク・インダストリーズ起業 ││そして あれから時が経ち、トニーは20歳。束と千冬は19歳になった。 あの事件の後、開発者が日本人ということもあり、日本がIS技術 を独占的に保有していたことに危機感を募らせた諸外国はISに よってISの情報開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利 用の禁止などが定められた条約、アラスカ条約が各国の間に結ばれ た。 しかし、トニーが言った通り条約は建前であり、各国はISを軍に 配備した。未だ国と国の闘いではISが使われたことはないが。 その際、束はISの心臓部分と言っても過言ではないISコアを世 界各国に467個、配布した。 束は467個以上のISコアを各国に渡すことを拒んでいる。 その為、各国は限られたコア数で研究、開発、訓練をしている。 その数が表す意味があるのか、それとも単なる気まぐれなのか。そ れは束のみが知ることである。 ISコアは完全にブラックボックスと化しており、未だ束以外にI Sコアは造れない状況である。 ちなみに、467個以上造らないと束は言っているのだが、番外で あるISコアを2つ、トニーに渡している。 1つはトニーと束の共同開発の為のISコア。 もう1つはトニーが興味本位でISコアを研究したいと言った為 である。 閑話休題 世界各国にISコアが配られ、いざISを使おうとなった時に、1 つの重大な欠陥が発見された。 それは女性にしかISを使えないことである。 そのことに一部の女性は過激に反応し、﹁自分達は特別な存在なの だ﹂と意識し始める。 それにより、世界は女尊男卑の風潮が出来上がってくる。 そしてそれに便乗するような形で、ISによる世界大会、第1回モ 28 ンド・グロッソが開催される。 その大会の優勝者は織斑千冬。 女尊男卑の風潮は加速した。 ○○○ 僕が20歳になって、周りの環境が変わったことが3つある。 まず1つ目は、両親が亡くなった。 僕が20歳になってから暫くして亡くなった。ただ、死因は前世と は違う。 病で倒れて死んでしまったのだ。誰かに殺されたというわけでは ない。 僕は生まれてから一生懸命両親に孝行した。両親はそれに亡くな るまで応えてくれた。ある意味、というか少なくとも、僕は前世より も両親との仲を深められただろう。 両親が亡くなった日、僕は初めて、この世界に生まれて涙を流した。 2つ目はアイアンマンとしての活動が世界的に認知されつつある ことだ。 映像や情報を改竄したりしても、人が見たことを一々改竄できるわ けではない。それのおかげかどうかは知らないが、世界中はアイアン マンのことを﹃正義の味方﹄ ﹃ヒーロー﹄と呼んでいる。嬉しい事には 嬉しいのだが、最近はマスコミがアイアンマンの正体を嗅ぎ回ってい るので、非常に面倒だ。 そして3つ目は、僕が会社を起業したことだ。 その名もスターク・インダストリーズ。 前世とやっていることは同じ。ただ、軍事兵器の開発はしていな い。 その代わりにISの開発を行っているのだが、あまり積極的に行っ てはいない。 何故なら、僕が提示した条件に見合うテストパイロットが見つから 29 ないのだ。 テストパイロットがいないなら開発も進まない。 まぁ開発を始めたら、アメリカのIS企業トップになれる自信はあ る。 何て言ったって、アイアンマンを開発したノウハウがある僕と、協 力者である束がいるのだ。 それはもう世界最先端のISができるだろう。 まぁテストパイロットが見つかるまではそんなことに興味はない けどね。 そうそう、束についてだが、現在は僕の家を隠れ家として暮らして いる。 現在は僕と束、そして僕がある施設から連れ帰ってきた子と3人で 暮らしている事になるのかな 束とその子はたまに数ヶ月居なくなったりすることもあるが、ある 程度定期的に帰ってきている。 千冬は日本のISの国家代表になり、第1回モンド・グロッソで優 勝して多忙の毎日を過ごしているようだ。 たまに連絡を取ったり、会ったりはしている。 そして、僕が連れ帰ってきた子。名前はクロエ・クロニクル・スター ク。名前からわかるように僕の養子だ。 僕がアイアンマンの活動として、非道な研究をしている研究所をつ ぶしている時に出会った子だ。 ふと、その出会いを僕は思い出した。 ○○○ F.R.I.D.A.Y.の情報を受け、トニーはドイツのとある 研究所にヘリで来ていた。 試験ベイビーを造り、非道な研究をしているという情報だ。 トニーはそもそもドイツにはあまり良いイメージを持っていない。 むしろ嫌悪していると言ってもいいかもしれない。 良いイメージがあったとしても、ビールとソーセージが旨い。その 程度の良いイメージしか持っていないのだ。 30 ? トニーが研究をしている理由。前世ではナチスの流れを汲む秘密 組織、﹃ヒドラ﹄がいた。 S.H.I.E.L.D.を内部から崩壊させたのはヒドラだし、 マキシモフ姉弟を超人的な力を持つ人間にしたのもヒドラである。 そして何よりも、前世で両親を殺したのがヒドラなのだ。 ナチス、そしてヒドラが生まれたドイツを嫌悪してしまうのも無理 はないのだろう。 トニーはドイツがヒドラと無関係とわかっているため、更に複雑な 気分である。 ﹁さてと、着いたぞ﹂ 門番もいないのか ﹂ ﹃生体反応は近くにありません﹄ ﹁何だ ﹃そのようです﹄ ﹁管制室はあるか ﹂ とにかく、トニーにとっては好都合なので、ずかずかと中へ入る。 それでも非道な研究所なのかと。 トニーはそれを聞いて、呆れる。 ? トニーはスーツ、﹃マーク43﹄を前面から脱ぐ形で、外に出る。 言った。 モニターに映し出されている施設内の地図を見て、トニーはそう ⋮⋮﹂ ﹁そ れ は 僕 も 思 っ た。恐 ら く こ の 部 屋 に 隠 し 階 段 が あ る と 思 う が ﹃しかし地下への階段が見当たりませんが﹄ う﹂ ﹁どうやら地下があるようだな。恐らくそこで研究をしているんだろ 中はモニターだけが映っており、電気は点いていない。 F.R.I.D.A.Y.の報告を受け、中へと入る。 ﹁ここもか⋮⋮﹂ ﹃生体反応なし﹄ F.R.I.D.A.Y.の指示通りに進み、管制室の前に立つ。 ﹃あります。右を曲がったところに﹄ ? 31 ? ちなみだが、43以降のスーツはまだ開発途中である。 ﹁F.R.I.D.A.Y.、お前は見張ってろ。誰か来たら睡眠ミサ イルを撃っておけ﹂ ﹃了解しました﹄ ﹂ トニーは壁をノックしながら、隠し階段を探していく。 ﹁隠し階段⋮⋮、隠し階段⋮⋮。ん そして、壁の一面だけ音が違う事に気付き、その一面の壁を強く蹴 り破る。 ﹁うん、ビンゴだな﹂ その先には見事に隠し階段があり、トニーは下へと降りていく。 ﹃トニー様、この研究所は廃棄された可能性が高いです﹄ ﹁⋮⋮あぁ。地下室を見て僕も思った﹂ ﹂ 下に降りたトニーの言う通り、地下室は研究所らしくなっていた が、所々が荒れており、悲惨な状況になっていた。 ﹄ ﹁とりあえずF.R.I.D.A.Y.も下に来い。⋮⋮ん ﹃どうなされましたか ﹁⋮⋮けて﹂ 微かに声も聞こえる。 ﹁⋮⋮たすけて﹂ ﹁大丈夫か ﹂ そこには、1人の少女が倒れていた。 かう。 ﹁たすけて﹂と言っている事に気付いたトニーは大急ぎでその場に向 ? ﹂ 脈はあるが、かなり弱くなっている。 ﹁⋮⋮しにたく⋮⋮ない﹂ ﹁助けてやるから意識を手放すな 少女││つまりクロエだが、かなりギリギリの状態であった。 トニーは大急ぎで少女をヘリに乗せ、自宅へと連れ帰った。 ! 32 ? トニーがそう指示した途端、人の気配を感じる。 ? その少女を抱え、容体を確認する。 !? 自宅に連れ帰って来る間に一度、心肺停止状態になりかけた。 束と協力し、あらゆる手を尽くしたのだが、既に人の手では手遅れ になっている状況だった。最終的にISコアを心臓の代わりに埋め 込み、ISコアに搭載されているナノマシンによって、一命を取り留 めた。 トニーは少女を見て、前世でアーク・リアクターを胸に埋め込んで ﹂ いた自分の姿と重ねて見てしまった。 ﹁この子、どうするの 極度の人見知りの束が珍しく、初対面である少女を心配している。 ﹁僕が面倒を見ようと思う﹂ ﹁私も手伝うよ﹂ ﹁すまない、助かるよ。女性の事に関しては僕はできないからね﹂ その後、目を覚ましたクロエは、最初こそ混乱していたが、徐々に トニーと束のいる環境に慣れていき、今では家事を任せられるくらい には成長している。 33 ? テストパイロット ││彼女の夢 スターク・インダストリーズ社の面接室前には、かなりの数の人が 並んで座っていた。 何故こんなにも人がいるのか。 それは、トニーがISのテストパイロットを募集した為である。 会社が起業したと同時にテストパイロットを募集した以来である。 つまりこれで2回目の募集だ。 1回目は誰もテストパイロットになっていない。 何故か。それはトニーが必要としている条件を満たしている女性 がいなかったからだ。 今回の募集はトニーによるものだが、本人は今回もテストパイロッ トになる者はいないだろうと踏んでいる。 監視カメラを通して、別室でその女性の列を見ていたトニーは呟 ﹂ 34 く。 ﹁人数が増えてないか 女性がそう言った通り、部屋の中には1つのイスとビデオカメラが ﹁誰もいないじゃない﹂ ばれた女性は、早速部屋と入る。 F.R.I.D.A.Y.によるアナウンスで、面接が始まる。呼 ﹁はい﹂ ﹃面接を開始します。1番の方、面接室へお入りください﹄ ﹃お任せください﹄ ﹁とりあえず、面接を始めよう。頼んだぞF.R.I.D.A.Y.﹂ となる。それを聞きつけた女性が、今ここに並んでいるのだ。 トニーがテストパイロットを募集するということは、かなりの話題 トニーは溜め息を吐く。 ﹁⋮⋮前回落ちた奴もいるな﹂ ﹃前回よりも2倍近く増えています﹄ ? 向 か い 合 う よ う に な っ て い る。更 に 部 屋 は 辺 り 一 面 真 っ 白 で あ る。 面接官らしき者はどこにも見当たらない。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹃今回の面接官はそのカメラを通して貴女を見ています﹄ ﹁そう﹂ 女性は座ってくださいと言われる前に、椅子に座った。 ﹃⋮⋮申し訳ありません。貴女は不採用となります﹄ 何でよ ﹂ それを見たF.R.I.D.A.Y.は残念そうに言った。 ﹁はぁ うのに ﹂ ﹁ふざけてるのかしら 私がテストパイロットをやってあげるってい と面接官が仰っています﹄ ﹃貴女のような太々しい態度を取るような方と一緒に仕事は出来ない ふてぶて 女性は勿論、抗議する。突然不採用と通告されたからだ。 !? ﹂ 周りから天才って言われてるからって調子に 乗ってるんじゃないわよトニー・スターク そして、最後の1人もきっとそうなのだろうと、勝手に決めつけて トニーは欠伸をし、退屈そうにそう言った。 たよ﹂ ﹁まさか最後の1人を残して全員が女尊男卑の奴らとは思ってなかっ 面接も終盤に差し掛かってきた。 ○○○ れる。それの繰り返しだった。 その後も、女尊男卑に影響を受けた女性が面接を受けては追い出さ ﹃私もその意見に同意します﹄ ﹁今回も合格者は出なさそうだな⋮⋮﹂ その言葉を最後に、女性は面接室から追い出された。 ! ﹁ち ょ、離 し な さ い それぞれ掴み、外へ連れ出す。 そしてその黒服を着た女性2人が、面接を受けに来た女性の両腕を ら、黒服を着た女性が2人、入ってくる。 F.R.I.D.A.Y.が そ う 言 う と、女 性 が 入 っ て き た 扉 か ﹃話になりませんね。この方を連れ出してください﹄ ? ! 35 ? ! いた。 ﹂ ﹃最後の方、どうぞ﹄ ﹁は、はい F.R.I.D.A.Y.に呼ばれ、最後の女性は緊張しながら面 接室へと入る。 中は最初と変わっておらず、周りも一面真っ白である。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ それに女性は驚くが、声には出さなかった。 ﹃⋮⋮それではお座り下さい﹄ ﹁し、失礼します﹂ そう指示されると、女性は恐る恐る座る。 ここまで来たのは彼女が初めてである。 それにトニーは興味を示す。 ﹃それでは、貴女の名前と出身国を教えてください﹄ ﹁は、はい。ナターシャ・ファイルス、アメリカ出身です﹂ F.R.I.D.A.Y.による、彼女への面接が始まった。 ビデオカメラを通して、トニーが見ていることは勿論の事、嘘発見 ﹄ 器のような機能も搭載されており、嘘をついたらすぐに不採用という ことになる。 あ、すみません ﹂ シリアルとバナナ1本を食べてきました⋮⋮。 ﹃貴女は今朝、何を食べて来ましたか ﹁え ? すみません、この質問って何か意味があるんですか ! ました﹄ ﹁すみません、ありがとうございます⋮⋮﹂ 確かに、ナターシャの生体反応を見れば、動悸が激しくなっている のがわかる。 よほど緊張しているのだろう。 い く つ か F.R.I.D.A.Y.が 質 問 し、ナ タ ー シ ャ が 答 え る。 36 ! ﹃どうやら貴女が緊張しているようなので、素っ気ない質問をしてみ ? ? 緊張も解けたのか、先程よりもスムーズに受け答えが出来ていた。 ﹄ そ し て 最 後 に F.R.I.D.A.Y.が 1 つ の 質 問 を 投 げ か け る。 その質問が、最も重要な質問だ。 ﹃貴女はISに乗って、何をしたいんですか ナターシャは少し間を取って、答えた。 ﹁宇宙を⋮⋮、宇宙を自由に飛んでみたいんです﹂ ナターシャは続けて言った。 ﹁私、知ってます。ISが本当は兵器じゃないってこと。本当の使用 目的が別にあることも。だから、私はこの会社のテストパイロットの 募集を見て、やってみたいと思ったんです。兵器として使おうとしな い、この会社のテストパイロットを﹂ ナターシャの目は真っ直ぐ、カメラの先にいるトニーを見据えてい るかの様だった。 トニーはそれを見て、ニヤリと口元を崩す。 残り物には福が とはよく言ったものだ。F.R.I.D.A.Y.、彼女をこ ﹁嘘はついていないようだ⋮⋮。日本のことわざ、 ある " 入ってきた扉の位置と向かいにある扉が開いた。 ﹃おめでとうございます、ナターシャ・ファイルス様。貴女はスター 本当ですか ﹂ ク・インダストリーズのテストパイロットになる資格があります﹄ ﹁え⋮⋮ !? ﹁素晴らしいよ。正に僕が求めていた人材だ﹂ すると、その奥には拍手をナターシャへ送っているトニーがいた。 ナターシャは頷いて、立ち上がり、奥へと進む。 ﹃はい。ですので、この先へお進みください。トニー様がお待ちです﹄ ? 37 ? F.R.I.D.A.Y.が ト ニ ー の 指 示 を 受 け、ナ タ ー シ ャ が ﹃かしこまりました﹄ の部屋に通せ﹂ " ﹁あ、ありがとうございます﹂ ナターシャは大物有名人を前にして、また緊張感してまう。 ﹁最後に1つだけ質問だ。世界が変わっても君のそのISへの考え、 ﹂ そして││その夢を変わることなくテストパイロットをやっていく 自信はあるかね ナターシャはそう訊かれ、すぐに答えを示す。 ﹁この先の世界、どうなるかなんて私はわかりません。だけど、私の考 えとその夢は変わらないと、誓えます﹂ ナターシャは自信に満ち溢れた顔でそう言い切ったのだ。 トニーはそれを訊いて、口元に笑みを浮かべる。 ﹁知っているかもしれないが、僕の名前はトニー・スタークだ。よろし く、ファイルス﹂ ﹁み ん な か ら は ナ タ ル と 呼 ば れ て い ま す。な の で ナ タ ル で 構 い ま せ ん。よろしくお願いします、スタークさん﹂ 今日、スターク・インダストリーズ社に、初めてのISテストパイ ロットが誕生した。 38 ? 第2回モンド・グロッソ ││誘拐事件 第2回モンド・グロッソ。 会場はドイツとなっており、大人数の観客がスタジアムへと足を運 んでいる。 トニーもそのうちの1人であり、ナタルを連れてスタジアムの中へ と入っている。 今回、千冬からトニーの元に招待券が2枚届いた。 束は自宅に残ってテレビ中継で見ると言って、スタジアムに行くつ もりはなかった。そもそも、束は今、失踪中ということになっており、 公の場には行かないようにしているのだ。 クロエは﹁束様が残るなら私も﹂と言い、束と一緒に自宅待機であ る。 そこで、結果的に余ったトニーとナタルが行くことになったのだ。 ﹂ ナタルは苦笑しながら、売店でコーヒーを2本購入する。 ﹂ ﹁うちの会社って、その⋮⋮女尊男卑の思想の人がいないな、って。ス タークさんもやっぱり男として女尊男卑は嫌なんですか ﹁あぁ、そのことか﹂ トニーはナタルからコーヒーを受け取る。 ﹁へ ﹂ ﹁人間生まれて今日まで、平等なんてないだろ ﹁まぁそうですね﹂ ﹂ ﹁別に女尊男卑についてはいけないことではないと思うぞ﹂ コーヒーの缶を開け、一口呑んだところで、その質問に答えた。 ? になる世の中でも僕は良いと思ってるけどね﹂ 39 その時、開催国がドイツだとわかった瞬間、トニーは渋い顔をした が⋮⋮。 美の秘訣とか ﹁そういえば、スタークさんに聞きたいことがあるですけど﹂ ﹁なんだ ? ﹁男の人に聞くと女である私の立場がないですよ﹂ ? ﹁それに、何かと女が不平等な時代が長かった。今くらい男が不平等 ? ? ﹁じゃあ、なんでうちの会社にはそういう人がいないんですか ﹂ そうじゃない女性と僕達、男のモチベーションが下がる ﹁え、何ですか ﹂ ﹁あぁでも。女尊男卑で嫌な点は1つあるな﹂ ナタルは納得した様子で、コーヒーの缶を開けた。 ﹁なるほど﹂ だったよ﹂ 一 方 だ。最 悪、会 社 の 経 営 に も 響 き か ね な い。採 用 試 験 の 時 は 大 変 が最悪だろ ﹁単純だよ。そういう思想の奴らが仕事場にいたら、その場の雰囲気 ? ﹁⋮⋮セクハラですか ﹂ ﹁おいおい、そんなつもりはないぞ トニーとナタルは観客席に入る。 ﹂ それを聞いたナタルはジト目でトニーを見る。 ﹁思想に染まった女性が多くて、女の子と遊ぶ機会が減ったことだよ﹂ ニヤリと笑い、トニーは言った。 ? ﹁うん ﹂ ﹁君たち2人で観戦か ﹂ そんな2人にトニーは話しかけた。 見たところ、彼ら2人の親は見つからず、2人で来ているようだ。 た。 トニーが座った隣の席には、日本人の少年2人が並んで座ってい 客席の中で1番と言って良いほどの席であった。 前回の大会を優勝した千冬が招待した席は、やはりと言うべきか観 2人は席に座る。 じゃなくて武道の天才だけどね﹂ ﹁や は り、天 才 と 天 才 は 惹 か れ 合 う 運 命 か も し れ な い ぞ。千 冬 は 頭 時は驚きましたよ﹂ ﹁しかし、スタークさんが千冬さんと束博士と知り合いだって知った ? ? ? ﹃ただいまより、第2回モンド・グロッソ準決勝を開始します。日本代 表織斑千冬対││﹄ 40 ? すると、2人のうちの1人がトニーの質問に答えた。 ! アナウンスが入り、会場が盛り上がる。 ﹁始まりますよ﹂ ﹁わかってるよ。F.R.I.D.A.Y.﹂ ﹃わかっています。お任せください﹄ トニーは予め指示しておいた事を、F.R.I.D.A.Y.に実 行させた。 ○○○ 千冬は圧倒的実力差を見せ、完勝。 相手が可哀想に思えるくらいだ。 ﹂ 今はもう1つの準決勝が終わり、決勝戦までの空き時間である。 ﹂ ﹁俺、トイレ行ってくる ﹁俺も ﹂ ? ﹂ 的が掴めていません。もう少しお時間をください﹄ ﹁位置はわかるのか ﹁そうか。⋮⋮待てよ ﹂ 隣に座っていた少年2人がトイレに行ったのだ。 そこで、トニーはある事を思い出す。 ? ・ 前世で培った経験が、トニーに嫌な予感を感じとらせた。 う。 F.R.I.D.A.Y.にそう指示し、トニーはトイレへと向か ﹃かしこまりました﹄ クロエ、ナタルに連絡しろ。それと、一応43の準備をさせておけ﹂ ﹁F.R.I.D.A.Y.、トイレに行ってくる。何かあったら束と ・ ﹃この会場内に亡国産業がいることは確認しました。しかし、まだ目 ファントムタスク ﹁どうだ、F.R.I.D.A.Y. ﹁わかりました﹂と言って、ナタルも売店へと向かった。 ﹁僕はコーヒーで頼む﹂ ﹁私、飲み物買ってきます﹂ た。 トニーの隣に座っていた少年2人は席を立ち、トイレへと向かっ ! ﹃はい。会場の出入り口に5人、WCに4人﹄ ? 41 ! 小走りでトイレまで来ると、曲がればすぐの角でトニーは隠れる。 トイレの入り口付近を、覗き見る。 ちょうど少年2人が、出てきたところを怪しい黒服達によって気絶 ﹂ させられているところだった。 ﹁嫌な予感が当たったな⋮⋮ トニーは腕時計を操作。 腕時計が展開され、それを掌まで持っていき、装着させる。 ハンド部分のみだが、グローブ型の簡易アイアンマンスーツになる のだ。 リパルサーは撃てないが、強力なフラッシュと相手を怯ませる爆音 がそれぞれ使用できるようになっている。 トニーは角から出て早速、相手を爆音で怯ませる。 案の定、相手は怯み、こちらを視認する。 続けて強力なフラッシュを放ち、相手の視界を奪う。 トニーはサングラスををしている為、自身への被害はない。 相手が行動不能の間に、トニーは相手に近づく。 まず、目を抑えている相手を思いっきり殴って気絶させ、隣にいた 相手の頭を掴み、膝蹴りをして続けて気絶させる。 残り2人になったところで、爆音が弱まって相手の視界が戻ったの か、こちらに攻撃を仕掛けてこようとしてきた。 1人目が殴りかかってきたので、トニーはそれを屈んで避ける。 2人目が銃をこちらに向け、撃とうとした瞬間。 トニーはハンド型アイアンマンスーツの手で銃口を塞ぐように掴 む。 相手が引き金を引き、弾丸が発射された音がする。 偶然、トニーと相手は視線を合わせ、トニーは口元に笑みを浮かべ る。 相手は銃を相手から引き剥がそうとするが、逆にトニーが離した。 それを好機と見たのか、相手はもう一度トニーに銃を向けた瞬間、 違和感に気付いた。 42 ! 銃が分解されていたのだ。 分解された銃を目を大きくして見て、トニーの方を見る。 分解された銃の部品がトニーの片手に。 トニーはそれで相手の頬に思いっきり殴った。 その相手が気絶して倒れそうになるところを腕を掴み、後ろから 迫ってくる相手に向けて投げる。 後ろにいた相手は反応できずに投げられた相手共々倒れて気絶し た。 ﹁ふぅ⋮⋮。これで終わりだな﹂ ハンド型のアイアンマンスーツを元に戻した時。 ﹁両手を挙げな﹂ そう言って、何処からか現れた相手にトニーの頭に銃を突きつけら れた。 声からして、恐らく女性だろう。 ﹂ ﹂ ﹂ を浮かべ、今にでも殺しそうになるが、通信でも言われた通り何とか 怒りを抑える。 ﹁お前、トニー・スタークだな ﹁そうだ。天才、金持ち、プレイボーイ、博愛主義者のトニー・スター ? 43 それに、新たに相手が現れ、トニーを取り囲む。 トニーは大人しく両手を挙げた。 女性は仲間の1人に指示し、トニーの片腕に着けている腕時計を取 り外させる。そしてそれを女性が受け取り、眺める。 結構お金がかかってるからな﹂ ﹁お前、中々良いモン造ってんじゃねーか﹂ ﹁おいおい壊すなよ 何にお金かかってるって ? した。 ﹁んで ﹁テメェ⋮⋮ ﹃オータム、落ち着きなさい﹄ ! 通信越しでオータムと言われた女性は、トニーの発言に怒りで顳顬 こめかみ と、トニーが言った側から、女性は腕時計を地面に落として踏み潰 ? ﹁両親は君をもう少しお淑やかに育てるべきだったな﹂ ? クだが ﹂ ﹂ ﹂ 俺の聞き間違いじゃなきゃコイツ、助けてやる 明らかに、構成員の反応はトニーを馬鹿にしている。 構成員は近くにいた構成員と顔を見合わせ、笑っている。 ﹁怖すぎるぜ﹂ ﹁もう死んだぞ﹂ ﹁ワォ⋮⋮﹂ ﹁武器を捨てて、僕を椅子に縛りつけろ。ほら、5⋮⋮4⋮⋮バン 構成員は周りにそう言って、笑いを起こす。 ぞって言ったぞ﹂ ﹁おいおい、聞いたか ﹁今ならまだ助けてやるぞ﹂ ない。 トニーは構成員の1人にそう文句を言うが、その構成員は相手にし ﹁黙っとけ﹂ ﹁おい、縛るなら椅子に座らせろ﹂ トニーは手首を少し動かすと、近くにいる構成員に話しかけた。 だが、亡国産業の構成員が4人、この場にいる。 ファントムタスク オータムは、もう1人の少年の方に行ったので、ここにはいない。 いるパイプに手首を縛られている。 未だに気絶している少年は柱に磔にされ、トニーは四角形になって 廃工場に連れて行かれたトニーと少年。 ○○○ そして、モンド・グロッソの会場から離れた。 ちの1人共に黒塗りのバンに乗せられる。 トニーはとうとう観念し、その女性に連れて行かれ、少年2人のう ﹁わかったわかった わかった、大人しくする﹂ ﹁黙んねぇとお前のそのお喋りな口に銃突っ込んで引き金引くぞオラ ﹁おぉ、女性からのデートのお誘いとは、嬉しいね﹂ ﹁⋮⋮お前にも付いて来てもらうぞ﹂ ? それもそうだろう。先程みたいに腕時計を付けていなければ、縛り ! ? 44 ! ! 付けられて、動けないのだから。 ﹁ほら、来るぞ。3⋮⋮4⋮⋮﹂ ﹁黙れ﹂ 茶番に付き合いきれなくなったのか、それとも目障りになったの か、構成員は本気のトーンでそう言う。 ﹂ トニーは溜め息を吐いて⋮⋮ ﹁54333 ﹂ そしてその銃を最後の1人に向けたところ、その構成員は銃を持 つ殴られ、呆気なく気絶した。 突然のことで対応が出来なかった構成員は、トニーに銃を奪われつ で距離を詰める。 その装着された両脚で、少し飛び、離れた場所にいた構成員の元ま された。 その時にまた、新たなアーマーが飛んできて、もう片方の脚に装着 その装着された脚で、その構成員を蹴り飛ばす。 て、トニーの片脚に装着される。 その拳を握り潰そうとしたところで、新たなアーマーが飛んでき 受け止める。 ろうとするが、トニーはそれに気付き、スーツが装着されている手で そして、次に近くにいた構成員が、トニーの後ろから銃で殴りかか 相手が持っている銃を、スーツの力で握り潰し、裏拳を顔に入れる。 近くにいた構成員に、トニーは近づく。 そしてすぐさま、もう片方の手の拘束具を外す。 そう言ったトニーはリパルサーを撃ち、構成員1人を倒す。 ﹁言ったろ トニーは装着された手を見てから、構成員達を見ると⋮⋮ それがトニーの拘束具を外すと同時に、装着される。 構成員達は頭を抱える。 廃工場の窓が割れ、トニーの右手目掛け、あるものが飛んできた。 そう言った瞬間。 ! ち、少年の頭に突きつけていた。 45 ? ﹁その装備を脱げ。そして銃も捨てろ ﹂ トニーは大人しく銃を地面に落とし、それを蹴って相手の近くまで 飛ばす。 ﹁後ろに気をつけた方がいいぞ﹂ トニーがそう忠告すると、構成員は後ろを向く。 しかし、遅かった。 すぐ目の前にトニーのアーマーが飛んできていたのだから。 当然、回避できるはずもなく、そのアーマーにぶつかり、気絶した。 ﹁すまない。言うのが遅かったな﹂ そんなことを言いつつ、トニーは飛んで来たアーマーを装着する。 それを皮切りに、全てのアーマーがトニーの元に集結し、トニーは それを全て装着した。 ﹁ナ イ ス タ イ ミ ン グ だ F.R.I.D.A.Y.。僕 の 計 算 し た 通 り に来てくれた﹂ ﹃トニー様がそう指示しましたので﹄ そう、最初のアーマーがトニーに装着するまでは、全てトニーの計 画通りだった。 アーマーが来るように合図したのは手首を動かした時。 幸いにも、この廃工場に来るまでの間、眠らされることもなく、気 絶させられるようなこともなかった。 ﹂ その時にここまでの道のりを計算し、どれ位でアーマーが来るかの 計算もしていたのだ。 ﹁もちろん、ナタルに連絡しているよな だから、アイアンマンスーツを持ってくるのにもトニーとF.R. はまだ言ってないのだ。 イロットになってから今日まで、トニーがアイアンマンだと言うこと トニーとF.R.I.D.A.Y.の言う通り、ナタルがテストパ か﹂ ﹁それは悪かったな。アイアンマンの事は来年くらいには打ち明ける とを話さずナタル様に今回のことを話すのは難しかったです﹄ ﹃もちろんです。あと数分で到着します。しかし、アイアンマンのこ ? 46 ! I.D.A.Y.は苦労した。 ﹂ ﹁ナタルが警察を呼んでここに来るならここにいないほうがいいな。 F.R.I.D.A.Y.、もう1人の少年の方はわかるか ﹂ ﹃はい。既に千冬様が向かっています﹄ ﹁何でそこで千冬が出てくる ? る。 ﹂ ﹂ ﹁確かに顔が似てるな⋮⋮。おい、起きろ﹂ ﹁ん、ん⋮⋮ あ⋮⋮うん﹂ ﹁もうすぐで助けが来るから、大人しくしてろよ ﹁え ﹂ そろそろ意識が戻るであろう少年の元まで近づき、少年の顔を見 人は弟か﹂ ﹁⋮⋮確かに千冬がこの前そんなこと言っていたな。ということは2 ﹃トニー様なら気付いていると思っていたのですが﹄ ﹁何だって ﹃そこの少年ともう1人の少年が千冬様のご家族だからです﹄ ? ﹂ ? ﹁テメェは⋮⋮ ﹂ ﹁やあ、お淑やかな女性﹂ ○○○ ││織斑一秋が保護された。 その後、すぐに警察とドイツ軍を引き連れたナタルが到着し、少年 ﹁あれって⋮⋮、アイアンマン 少しづつ覚醒して来た頭で、少年は呟いた。 トニーはそう言うと、リパルサーを吹かし、空を飛んだ。 ? ? ﹄ ﹃そうか⋮⋮。ありがとう﹄ ﹃一秋様なら既にナタル様によって保護されました﹄ ﹃一秋は無事か 甲がボロボロであった。 時には、千冬が既にいて、オータムはISを纏ってはいるものの、装 トニーがもう1人の少年││織斑一夏が囚われている所に着いた ! !? 47 ? ﹁良い子だ﹂ ? 雪片 F.R.I.D.A.Y.からの報告に千冬は安堵した。 ﹁後は貴様だけだ﹂ ﹁みたいだな﹂ 千冬は自身のISの唯一の武器である刀剣型接近武器 みたいだな⋮⋮ なら逃げるが勝ちだ ﹂ ! ﹁閃光弾か ﹂ ﹂ ﹁千冬、弟の側にいろ ﹁わかってる ! ! ことは千冬も理解しており、その場から動かなかった。 ﹂ 光が収まって来たので、視界も通常通りに戻す。 ﹁一応聞くが追跡は ﹃反応は消えています﹄ ﹁だよな﹂ トニーはそれがわかると、千冬の方を向く。 ﹁千冬がここにいるということは、大会には出てないのか ﹂ ﹁ああ、そうだ。⋮⋮トニー、助かった﹂ ﹁何がだ ﹂ ﹁わざと敵に捕まって、一夏と一秋を助けるつもりだったのだろ 千冬にそう言われて、トニーは驚く。 を ﹁あー⋮⋮そうそう、そうだよ。わざと敵に捕まってね、助けたんだ﹂ 上手く事が運んでいたならば、会場内で助けることができたのだ。 全くそのつもりはなかったのだから。 ﹂ 追いかけることもできたが、あくまで一夏のことが最優先だという 何とか、トニーと千冬の反応が早く、光度調整をすることができた。 ! ﹂ それはたちまち強烈な光りを放ち、あたり一面を真っ白にする。 げた。 オータムは手榴弾のような物を呼び出し、それを地面に向かって投 ! ﹁その言い方だと、あっちの織斑一秋とトニー・スタークも失敗だった けている。 オータムに向かって構え、トニーは片手のリパルサーをオータムに向 " ? ? 48 " ? ? しかし、トニーのプライド的に本当のことを話すわけにもいかず、 何とかして誤魔化した。 そして、千冬に聞こえない小声でF.R.I.D.A.Y.に言っ た。 ﹁余計なことは言うなよ、F.R.I.D.A.Y.﹂ ﹃⋮⋮かしこまりました﹄ その時のF.R.I.D.A.Y.の返事は何故か、何時もよりも ワンテンポ遅かったのであった。 49 I am Iron man 第2回モンド・グロッソで起きた誘拐事件の後。 誘拐事件の後始末をドイツ軍がする代わりに、千冬が1年間ドイツ 軍の特別教官になった。 千冬がいない間の織斑兄弟は、日本の重要人保護プログラムによっ て、厳重に守られていた。 トニーと束は2人に何かあったらすぐに駆けつけられるように、準 備をしていたが、杞憂に終わった。 ○○○ その1年後。 IS学園 の教師として、教壇に立 千冬は特別教官の職務を終え、日本に帰国。 今度はIS操縦者育成機関の ち、鞭を振るう。 えることが出来るのか ﹂と言ったところ、千冬がキレた。その後は その時、トニーが﹁前々から疑問に思ってたんだが、千冬は人に教 " ドイツ軍では1人の落ちこぼれ兵士が部隊最強にまで上り詰めた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それをやってのけたのはその兵士だが、特訓を行ったのは千冬であ る。 なので千冬の人に教える才能は、方法は別としてだが、高い基準を 満たしている。 束は相変わらず世界中を飛び回っては帰宅を繰り返している。 クロエはそれに付いて行き、世界を見て学び、スポンジのように知 識を吸収している。 ナタルは、やっとスターク・インダストリーズ製のISが出来たか らか、忙しい毎日を送っている。 ナタルは四苦八苦しながら、操縦技術を磨いている。 トニーは相変わらず社長業の傍ら、アイアンマンとして活動してい る。 最近では束から貰ったISコアの研究が順調のようで、アイアンマ 50 " 喧嘩となり、仲裁人はまさかの束である。 ? ンに取り入れられるかどうか考えている。 ○○○ そして更に1年後。 世界初、ISの男性操縦者見つかる 世界は激震する。 社長室。 まったのだろう。 ・ ・ ・ ・ ﹃でも、今ならトニーもISに乗れるんじゃない ﹁まぁ確かにそうかもな﹂ ﹄ こ の 場 合、I S コ ア が 織 斑 兄 弟 を 織斑千冬 だ と 思 い、誤 認 し て し とが出来た﹂ ﹁しかし、遺伝子が最も似ているその家族。織斑兄弟はISに乗るこ た﹄ たからね。そこを基準にした結果、女性にしか乗れなくなっちゃっ ﹃多分ね。全ての元となったISコアにちーちゃんの情報が登録され ﹁最初の搭乗者が千冬だからか⋮⋮﹂ まぁ、既に半分の国は諦めているが。 なので、世界各国に束の足は掴めない。 トニーと束は独自のネットワークで通信している。 パソコンのモニターには束が映り込んでおり、そう言っている。 思ってなかったよー﹄ ﹃そうみたいだねー。予想はしてたけど、まさか本当にこうなるとは ﹁織斑兄弟がISに乗れるようになったのか﹂ かれた新聞をトニーは読んでいた。 高価な椅子に座り、優雅にコーヒーを飲みながら、見出しでそう書 " 常に持ち歩いているISコア。 よ﹂ ﹁だ け ど 僕 に は ア イ ア ン マ ン が あ る か ら ね。保 険 程 度 に 考 え て お く 要は千冬が白騎士に乗る前の状態にすることができたのだ。 の初期化に成功した。 トニーは束から受け取ったISコアの研究を続けた結果、ISコア ? 51 " 以前トニーが胸に埋め込んでいたアークリアクターと同じ形に加 工した物を手に取り、眺めていた。 ﹃そういえば、アイアンマンもそろそろ正体バレそうだね﹄ ﹁人気者は辛いな。⋮⋮やっぱりそろそろ潮時か﹂ ﹃ということは⋮⋮﹄ ﹁あぁ。束はF.R.I.D.A.Y.と協力して全国ネットに配信 してくれ﹂ 面白いものが見れそうだ ﹄ トニーは椅子から立ち上がり、ネクタイを軽く締める。 ﹃あいあいさー く。 IS ﹁ついに私達の翼がお披露目ですね ﹂ ﹁それ自分で言ってて恥ずかしくないか ﹂ 2人は記者会見場になっている1階のエントランスまで、並んで歩 ﹁あぁ、おはよう﹂ ﹁おはようございます﹂ 社長室の側にはナタルがいた。 トニーは束との通信を切り、社長室を出る。 のが目に浮かぶよ﹂ ﹁そうだな。僕には記者達が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている ! て開発したIS、 スカイファルコン のお披露目会となっている。 今回行われる記者会見では、スターク・インダストリーズ社が初め いてナタルも乗った。 特に悪びれる様子もなく、トニーはエレベーターに乗る。それに続 ﹁⋮⋮そうだな﹂ ﹁それ今言ったらサプライズじゃない気がするんですが﹂ ﹁サプライズを用意しているから、楽しみにしていてくれ﹂ なみをチェックする。 エレベーターを待っている間に、2人はエレベーターの扉で身だし ? ! " た。 しかし、それ以上の発表があることを、ナタルは知らないのであっ " 52 ! ○○○ エントランスに着くと、トニーはすぐにマイクがある所まで行く。 ナタルはすぐ近くで控えている。 ﹁諸君、おはよう。今日はすまないね、こんな所での記者会見で。何せ かなりの数の報道陣が詰め寄っていて、その、会議室とかだと入りき らない﹂ その言葉を聞いた記者達は苦笑する。 エントランスを急遽、記者会見場にしているが、それでもギリギリ と言ったところだ。 ﹁さて、早速始めるとしよう。我が社唯一のIS操縦者、ナターシャ・ ファイルスだ﹂ トニーは手をナタルの方に向けると、ナタルは記者達に向かって、 。わ ⋮⋮まあいいんだ 一礼する。その際、大量のフラッシュが焚かれる。 ﹁おいおい、まだ撮って良いなんて言ってないぞ スカイファルコン トニーは説明し終えると、ナタルへ目配せする。 ナタルはそれを待ってましたと言わんばかりに、スカイファルコン をコールした。 一瞬の光がナタルを包み込む。 そして、光が収まってきて、ISの姿が見えるようになる。 全体的に見ると、他のISよりもひと回り小さい。 突起部分は全くなく、装甲は丸みを帯びた印象を受ける。 脚にスラスターが2つ付いていて、1番特徴的なのは背中部分だろ う。 背中にスラスターが付いているが、それに隣接するような形で翼が 付いている。 ナタルはその翼を自由自在に動かす。前に持ってきたり、収納した り。 53 けどね﹂ トニーは苦笑し、続けて喋る。 ﹁今回、我が社が開発したIS。機体名は " ? かるように、空をファルコンのように飛ぶ、というのがテーマだ﹂ " スカイウィング 。 スカ " 伸縮性のある翼だということを示した。 ﹁武装はサブマシンガン2つと自律型索敵機 は背中部分に収納している﹂ に目を向ける。 記者達はオォ、と感嘆の声を上げ、記者達の頭上を飛び回る ナタルが背中を向き、スカイウィングを飛ばす。 スカイウィング " た。 ﹁スカイファルコンは第3世代の機体ですか 随分と挑戦しましたね﹂ ? を取り直した。 ﹁これで今回の発表は終わりだけど、僕になにか聞きたいことある すると、前にいた女性記者が手を挙げた。 トニーは指名すると、彼女は質問を始めた。 いてはどう思いますか ﹂ ﹂ ﹁トニー・スタークさん。ISの男性操縦者が現れましたが、それにつ ? トニーが自分1人で話していることに気付くと、咳払いをして、気 スカイファルコンを見たトニーは自分を賞賛し始めた。 石僕だ。他企業に遅れは取ってないと思う﹂ ﹁勿論だとも。初めて開発した割には上手くできてると思ってる。流 トニーは答えた。 初めての開発にしては スカイウィングがナタルの元へと戻った時に、記者1人が質問し イウィング " " " いな。僕もIS学園に入りたくなってきたな﹂ 口元は笑いながら、質問に答えた。 ・ ・ ・ ・ ? トニーの願望を聞いた記者達は苦笑する。 ・ ﹁では、メタルマンについてはどうお思いですか 先程と同じ女性記者が質問する。 ﹂ り。男は兄弟ただ2人。いや、でも周りは女の子ばかりだから羨まし だろうけど、IS学園に強制入学になるだろう。周りは女の子ばか ﹁これから大変なことになるだろうな。ハイスクールは決まっていた けようとする。 その質問を他の記者達も聞きたかったのか、トニーの言葉に耳を傾 ? 54 " ﹂ トニーは少し間を空け、その女性記者に訊く。 ﹁⋮⋮メタルマン れています﹂ ﹁写真とかある は思い、女性記者から写真を受け取る。 写真にはアイアンマンが写っている。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ トニーは眉間にシワを寄せ、もう一度女性記者に訊いた。 ﹂ 今度は写真に写っているアイアンマンを指差しながら。 ﹂ ﹁これが⋮⋮、そのメタルマン ﹁はい。そうですが ? アイアン 何でそんな情けそうな名前になっているのか。 ﹁どこからメタルマンなんて名前出てきた ﹂ 方がいいし、メタルマンだと言い表せない感情が込み上げてくる。 しかしトニー自身からしたら、やはり慣れ親しんだアイアンマンの ありかもしれない。 確かに鉄が名前に入っているから、その大まかな呼称として金属も メタル 自分の知らないところで新しいヒーローでも現れたのかと、トニー ﹁こちらに﹂ ﹂ ﹁えぇ。赤と金の色をしたアーマーを身に纏っていてヒーローと呼ば ? トニーはそれを聞いて、片手で頭を抱えた。 ? るようです﹂ ﹁このヒーローの名前はアイアンマンだ﹂ ? トニーは写真に写っているアイアンマンを指差しながら、会場内に ﹁このヒーローについてだが﹂ トニーがマイクを使ってそう言うと、会場は静かになった。 ﹁わかった、静かにしてくれ﹂ ナタルも心配そうにトニーを見ている。 女性記者の言葉に会場は騒めく。 思わず名前を訂正してしまい、墓穴を掘ってしまった。 ﹁何故トニー・スタークさんがその方の名前を ﹂ ﹁日本の某動画サイトからだそうです。そこから世界的に広まってい ? 55 ? いる全員に見せる。 ﹂ ﹁このヒーローの名前はアイアンマン。何でアイアンマンって名前を 知ってるかって そして、トニーは言い放った。 ﹁││私がアイアンマンだ﹂ このトニーのアイアンマン宣言は、束とF.R.I.D.A.Y. によって全世界に配信された。 そして織斑兄弟に次ぐ、世界を震撼させるニュースになった。 56 ?
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