日本消化器病学会関東支部第339回例会 プログラム・抄録集

日本消化器病学会関東支部第339回例会
プログラム・抄録集
当番会長:横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 副病院長 國 崎 主 税
〒232-0024 神奈川県横浜市南区浦舟町4-57
TEL 045-261-5656/FAX 045-261-9492
会 期:平成28年5月21日
(土)
会 場:海運クラブ
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4
TEL 03-3264-1825
http://kaiunclub.org/
<発表者,参加者の皆様へ>
1.発表者は日本消化器病学会の会員に限ります。
2.発表はすべてPCでのプレゼンテーションとなります。
口演30分前までに,PC受付にてデータ登録・動作チェックを済ませてください。
1)会場 に 用 意 す るPCの ア プ リ ケ ー シ ョ ン は,Microsoft PowerPoint 2007/2010/
2013となります。発表データはUSBメモリにてお持ちください。また,
事前に必ず,
作成したPC以外のPCでも正常に動作することを確認してください。
※データ作成の際は,文字化けを防ぐため次の標準フォントをご使用ください。
日本語:MSゴシック,MS Pゴシック,MS明朝,MS P明朝
英語:Arial,Century,Century Gothic,Times New Roman
※スライド作成時の画面サイズはXGA(1024×768)であることをご確認の上,
作成してください。
2)Macintosh使用,及びWindowsでも動画を含む場合は,必ずPC本体をお持込みく
ださい。データでのお持込みには対応いたしかねますのでご注意ください。なお,
液晶プロジェクタへの接続はMini D-SUB 15pinにて行います。変換コネクタを必
要とする場合は必ずご自身でお持込みください。また,バッテリーのみでの稼動は
トラブルの原因となるため,外部電源用アダプタを必ずお持ちください。
3)音声出力には対応いたしません。
4)発表は枚数ではなく時間で制限させていただきます。
5)発表時は,演台に置かれたモニタを見ながらご自身で操作して画面を進めていただ
きます。なお,発表者ツールの使用はできませんのでご注意ください。
3.発表に際しては,患者さんのプライバシーの保護(日付の記載は年月までとする,等)に
十分配慮してください。
4.演題発表時には,利益相反状態の開示が必要になります。開示基準・規定の書式に従って
利益相反の有無を必ず開示してください。
5.演者は前演者の口演開始後,直ちに「次演者席」へご着席ください。
6.専修医セッション,研修医セッション及び一般演題は,1題口演4分,追加討論2分です。
時間厳守でお願いします。
7.質問される方は,所属と氏名を明らかにしてからお願いします。
8.専修医・研修医セッションの発表者あるいは同施設の方は,奨励賞表彰式に出席してくだ
さい。(第1会場 12:50 ~)
9.当日の参加費は2,000円です。
10.当日はこのプログラム・抄録集をご持参ください。なお当日ご希望の場合は,1部1,000
円にて販売いたします。(数に限りがございますので予めご了承ください)
11.座長・評価者の方は,セッション開始15分前までに総合受付にお立ち寄りください。
12.会場1階ロビーにAED(自動体外式除細動器)を設置しております。緊急の際はご利用
ください。
会 場 案 内 図 海 運 ク ラ ブ
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4
海運ビル
TEL 03-3264-1825
JA共済
ビル
旧赤坂
プリンス
ホテル
(再開発中)
赤坂エクセルホテル
東急
地下鉄 有楽町線,半蔵門線,南北線:永田町駅4,5,9番出口 2分
銀座線,丸ノ内線:赤坂見附駅D
(弁慶橋)出口 5分
― 1 ―
日本消化器病学会関東支部第339回例会
平成28年5月21日(土)
8:00~8:05 開 会 の 辞(第1会場)
第1会場(午前の部)
演 題
(1)
専修医Ⅰ (
第2会場(午前の部)
座 長
演 題
時 間
座 長
)1~5 8:05~8:35 野村 幸世 (13)専修医Ⅷ(膵3) 62~66 8:05~8:35 清水 哲也
食道、胃・
十二指腸1
(2)
専修医Ⅱ(胃・十二指腸2)6~10
(3)
専修医Ⅲ(
時 間
8:35~9:05 橋本 貴史 (14)専修医Ⅸ(その他)67~70 8:35~8:59 須河 恭敬
)11~15 9:05~9:35 芳賀 紀裕 8:59~9:04 休憩
胃・十二指
腸3、小腸1
(4)
専修医Ⅳ(小腸2、大腸)16~20
9:35~10:05 田村 寿英 (15)研修医Ⅰ(食道、胃・
:04~9:34 宗田 真
十二指腸1 ) 71~75 9
10:05~10:10 休憩
(5)
専修医Ⅴ(肝1)21~25
2 、 (6)
専修医Ⅵ(肝胆、膵1
)26~30
(7)
専修医Ⅶ(膵2)31~35
・十二指
(16)
研修医Ⅱ(胃腸2、小腸
)76~80
9:34~10:04 和田 則仁
10:10~10:40
村川美也子 (17)研修医Ⅲ(大腸)81~86
10:04~10:40 八木 健二
10:40~11:10
山本 恵介 (18)研修医Ⅳ (肝)
11:10~11:40
川嶌 洋平 (19)研修医Ⅴ(膵、その他)93~97
87~92 10:40~11:16 三輪 治生
11:16~11:46 平澤 欣吾
12:00~12:30 評議員会
12:05~12:50 ランチョンセミナー(第1会場)
「糖尿病外科治療の現状と展望」
四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センター センター長 笠間 和典 先生
司会 横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学 主任教授 遠藤 格 先生
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社 12:50~13:05 専修医・研修医奨励賞表彰式(第1会場)
13:05~14:00 特 別 講 演(第1会場)
「胃悪性腫瘍の現状と展望」
浜松医科大学外科学 第二講座 主任教授 今野 弘之 先生
司会 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 副病院長 國崎 主税
第1会場(午後の部)
演 題
(8)
食道
時 間
第2会場(午後の部)
座 長
演 題
36~41 14:05~14:41 阿久津泰典 (20)大腸2
時 間
座 長
98~103 14:05~14:41 畑 啓介
(9)
胃・十二指腸142~46
14:41~15:11 數野 暁人 (21)肝
104~110 14:41~15:23 熊本 宜文
(10)
胃・十二指腸247~51
15:11~15:41 近藤 恵里 (22)胆、膵
111~115 15:23~15:53 牛尾 純
(11)
胃・十二指腸3、小腸152~56
15:41~16:11 大島 貴
(12)
小腸2、大腸157~61
16:11~16:41 三戸部慈実
16:41~16:46 閉 会 の 辞(第1会場)
専修医・研修医セッションの発表者あるいは同施設の方は,奨励賞表彰式に出席してください。
(第1会場 12:50 ~)
― 2 ―
特 別 講 演 (第1会場 13:05~14:00)
「胃悪性腫瘍の現状と展望」
浜松医科大学外科学 第二講座 主任教授 今野 弘之 先生
司会
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 副病院長 國崎 主税 ・・・・・・演者の先生ご紹介・・・・・
こん の
ひろゆき
今野 弘之 先生
浜松医科大学外科学 第二講座 主任教授
略歴
昭和53年3月 慶應義塾大学医学部卒業
昭和53年4月 慶應義塾大学医学部外科研修医
昭和59年6月 清水市立清水総合病院外科医員
昭和60年8月 米国カリフォルニア州立大学サンディエゴ校留学
昭和62年5月 浜松医科大学第2外科助手
平成4年1月 同 講師
平成10年8月 浜松医科大学外科学第2講座助教授
平成16年11月 同 教授
平成22年4月 浜松医科大学医学部附属病院 副病院長(併任)
平成23年4月 静岡大学大学院自然科学系教育学部 客員教授
平成26年4月 浜松医科大学医学部附属病院 病院長
(副学長)
平成28年4月 浜松医科大学 学長
― 3 ―
ランチョンセミナー (第1会場 12:05~12:50)
「糖尿病外科治療の現状と展望」
四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センター センター長 笠間 和典 先生
司会 横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学 主任教授 遠藤 格 先生
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
・・・・・・演者の先生ご紹介・・・・・
かさ ま
かずのり
笠間 和典 先生
四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センター センター長
略歴
平成2年 群馬大学医学部 卒業
平成2年 群馬大学 麻酔・蘇生科
平成5年 大阪大学 特殊救急部 平成6年 亀田メディカルセンター 外科 シニア・レジデント
平成9年 同外科 スタッフ
平成12年 同外科 医長
平成13年 三省会 堀江病院 外科部長
平成18年 四谷メディカルキューブ きずの小さな手術センター 減量外科部長
平成23年 四谷メディカルキューブ 減量外科センター センター長
平成26年 四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センター センター長
東北大学第一外科 非常勤講師 兼任
滋賀医科大学消化器外科 非常勤講師 兼任
東海大学医学部第一外科 非常勤講師
― 4 ―
第1会場(午前の部)
8:00〜8:05
―開会の辞―
評価者
横浜市立大学附属市民総合医療センター
昭和大学病院
消化器病センター
内科
消化器内科
横浜市立市民病院
炎症性腸疾患科
( 1 )専修医Ⅰ(食道、胃・十二指腸1) 8:05〜8:35
沼田
和司
吉田
仁
辰巳
健志
座長 東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学 野 村 幸 世
1.食道癌手術における胸腔内吻合の major leakage を Over-The-Scope-Clipping system により閉鎖し
得た1例
横浜市立大学
外科治療学
○橋本
至,長澤
伸介,山田
貴允,原田
浩
山本
直人,大島
貴,湯川
寛夫,利野
靖
益田
宗孝
2.原発性頚部食道線癌の一例
横浜市立大学附属市民総合医療センター
○鈴木
良優,加藤
綾,佐藤
圭,宮本
洋
泉澤
裕介,山口
直孝,円谷
彰,大田
貢由
國崎
主税
3.食道気管支ダブルステント治療が有効であった食道気管支瘻合併食道癌の1例
横須賀市立うわまち病院
○古川
潔人,小宮
靖彦,大熊
幹二,森川瑛一郎
秋間
崇,妹尾
孝浩,池田
隆明
4.十二指腸水平脚の狭窄を来した segmental arterial mediolysis の一例
昭和大学藤が丘病院 内科学講座 消化器内科部門 ○東畑みさこ,高野
新谷
中西
菊名記念病院
消化器内科
文崇,小林
祐一,吉田詠里加,田淵
晃宏
孝弘,宮尾
直樹,上原なつみ
徹,花村祥太郎,五味
邦代,黒木優一郎
丸岡
直隆,長浜
西元
史哉
正亞,井上
和明,高橋
寛
5.肺癌術後脳転移の化学療法及び全脳照射中に消化管穿孔を合併した一例
東京女子医科大学病院
第二外科
○高部
裕也,瀬下
明良,三宅
春日満貴子,種市美樹子,植田
岡本
―5―
高宏
邦智,天野久仁彦
吉宣,鈴木
綾
( 2 )専修医Ⅱ(胃・十二指腸2)
8:35〜9:05
座長
順天堂大学
上部消化管外科学
橋
本
貴
史
6.胃癌により pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)を発症した1例
日本医科大学
消化器内科学
○池田
剛,河越
哲郎,丸木
雄太,飽本
山脇
博士,小高
康裕,新福
摩弓,名児耶浩幸
哲兵
植木
信江,辰口
篤志,二神
生爾,岩切
勝彦
7.S 状結腸軸捻転を併発した慢性特発性偽性腸閉塞症の一例
社会福祉法人
三井記念病院
○黒崎
滋之,戸田
信夫,船戸
和義,川村
聡
前島
秀哉,早田
有希,唐澤
祐輝,伊藤
大策
隆正,関
道治,田川
一海
小島健太郎,大木
8.内視鏡的砕石術に対し抵抗性を示し、コーラ注入・溶解療法にて治療し得た胃前庭部陥頓胃石の一例
東京都済生会中央病院
消化器内科
○田沼
浩太,三枝慶一郎,林
智康,小川
歩
西井まみか,阿部
善彦,星野
舞,岸野
竜平
酒井
信介,中澤
敦,塚田
信廣
元,船越
9.十二指腸粘膜下腫瘍上に発生した十二指腸癌に対して腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を施行した1例
横浜市立みなと赤十字病院
外科
○中尾
藤原
柿添
同
病理診断科
詠一,小野
秀高,平井
公也,前橋
学
大樹,杉政奈津子,中山
学,中嶌
杉田
光隆
熊谷
二郎
岳龍,大山
倫男
雅之,馬場
裕之,阿部
哲夫
稔,小倉
俊郎,石畝
亨
10.nab-PTX 療法で CR が得られた胃癌術後リンパ節再発の2例
埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 ○坂本眞之介,福地
持木
( 3 )専修医Ⅲ(胃・十二指腸3、小腸1) 9:05〜9:35
彫人,石田
秀行
座長 国立病院機構 宇都宮病院 外科 芳 賀 紀 裕
11.急性増悪時に膵炎を併発した好酸球性腸炎の1例
東京労災病院
○吉峰
尚幸,大場
信之,小嶋
武田
悠希,平野
直樹,伊藤
児島
辰也
啓之,小山
洋平
謙,西中川秀太
12.大腸全摘術後に胃癌に対する胃全摘術を施行した家族性大腸腺腫症の一例
千葉大学大学院医学研究院
先端応用外科学
千葉大学大学院医学研究院 先端応用外科学
千葉大学 フロンティア医工学センター
○龍崎
貴寛,羽成
直行,郡司
加野
将之,松原
久裕
林
秀樹
久,早野
康一
13.腸管粘膜生検が治療方針決定に有用であったシェーンライン−ヘノッホ紫斑病の一例
上都賀総合病院
内科
○古田
友美,海宝
雄太,近藤
花岡
亮輔,吉住
博明
裕子,永澤
潤哉
14.家族性高コレステロール血症を併存し診断に苦慮した小腸虚血の1例
日本医科大学
消化器外科
○増田
有香,清水
哲也,吉岡
正人,高田
英志
近藤
亮太,川島
万平,青木
悠人,山田
岳史
内田
英二
―6―
15.術前に小腸内視鏡で同定しえた回腸動静脈奇形の一例
済生会横浜市南部病院
消化器内科
義典,所
知加子,三村
優美
新平,金田
義弘,三箇
克幸,林
公博
稲垣
尚子,山田
英司,渡邉誠太郎,京
里佳
菱木
智,川名
一朗
澁谷
泰介,福島
忠男
消化器内科
岡田
直也
( 4 )専修医Ⅳ(小腸2、大腸) 9:35〜10:05
秀樹,張
近藤
外科
同
けいゆう病院
○中森
座長 横浜市立大学附属病院 消化器内科 田 村 寿 英
16.急速に増大した小腸間膜原発デスモイド腫瘍の1例
東京女子医科大学病院
消化器外科
○長野栄理香,大木
前田
文,山本
岳志,井上
雄志,中川
了輔
雅一
17.盲腸癌による成人腸重積症に対し腹腔鏡補助下手術を施行した1例
大森赤十字病院
同
外科
○尾崎
検査部
公輔,佐々木
愼,西田
由衣,寺井
恵美
森園
剛樹,金子
学,中山
洋,渡辺
俊之
坂本
穆彦
18.横行結腸脂肪腫を先進部とした腸重積症に対して単孔式腹腔鏡下腫瘤核出術を施行した一例
藤沢市民病院
外科
○田中
淑恵,山岸
清水
康博,本庄
山本
晋也,牧野
慎,三輪
茂,中堤
啓太,中本
礼良
優衣,森
康一,鈴木
紳祐
洋知,上田
倫夫,仲野
明
治生,石井
泰明,佐藤
健
19.内科的治療により除去しえた,直腸巨大糞石の一例
横浜市立大学医学部
消化器内科学
○杉森
金子
裕明,須江聡一郎,亀田
英里,佐々木智彦
田村
寿英,芝田
正晃,前田
渉,近藤
愼
20.進行直腸癌に対する周術期化学療法で病理学的完全奏効を得られた一例
NTT 関東病院
○鳥谷建一郎,渡邉
長尾
厚樹,里舘
針原
( 5 )専修医Ⅴ(肝1)
10:10〜10:40
座長
一輝,田
鍾寛,長田梨比人
均,奈良
智之,古嶋
薫
康
東京医科歯科大学
消化器内科
村
川
美也子
21.NASH 肝硬変に A 型急性肝炎を合併した一例
杏林大学医学部
第3内科
○清水
關
孝夫,奥山
秀平,八谷
隆仁,権藤
興一
里和,塚田幾太郎,佐藤
悦久,川村
直弘
理一,高橋
信一
西川かおり,森
同
病理学教室
秀明,久松
眞
望月
22.HCV 抗体価と HCV-RNA の経時的変化を観察しえた一例
横浜市立大学
肝胆膵消化器病学
○栗田
裕介,小林
孝輔,留野
渉,今城
健人
馬渡
宏典,藤田
浩司,米田
正人,中島
淳
斉藤
―7―
聡
23.腹腔鏡下肝切除を施行した肝外に突出した限局性結節性過形成の1例
自治医科大学
消化器・肝臓内科
○佐藤
直人,高岡
良成,廣澤
拓也,村山
梢
津久井舞未子,森本
直樹,礒田
憲夫,山本
博徳
綾子,大野
智里
和絵,沼田真理子,望月奈穂子,酒井
英樹
同
消化器外科
佐久間康成
同
病理診断学
福島
敬宜
24.異所性静脈瘤に対し interventional radiology による治療が有効であった3例
柏市立柏病院
消化器内科
○志水
太郎,遠藤
飯塚
南,佐藤
25.肝機能障害を契機に発見された多臓器不全をきたした急性心不全の一例
日本大学医学部
内科学系
消化器肝臓内科
同
病理学講座
( 6 )専修医Ⅵ(肝2、胆、膵1)
10:40〜11:10
○大木
庸子,高橋
利実,菊田大一郎,増田
和弘
俊一,後藤田卓志,森山
光彦
幸信,中河原浩史,山本
小川
眞広,松岡
絹川
典子
座長
東京大学医学部
あい
敏樹,今武
渡邊
消化器内科
山
本
恵
介
26.ペースメーカー植え込み患者に対してのラジオ波焼灼療法の安全性について
NTT 東日本関東病院
消化器内科
○金崎
峰雄,寺谷
卓馬,松橋
信行
27.ソフォスブビル/レディパスビル配合錠を投与中に心室性不整脈を生じた C 型慢性肝疾患の2例
埼玉医科大学
消化器内科・肝臓内科
○友利
勇大,中山
伸朗,浅見真衣子,斎藤
陽一
渕上
彰,鷹野
雅史,塩川
義人
藤井
庸平,平原
和紀,打矢
紘,中澤
学
琢,安藤さつき,中尾
将光,本谷
大介
実枝,今井
幸紀,持田
智
公將,露口
利夫,妹尾
純一,林
佐々木玲奈,中村
昌人,安井
近山
同
教職員・学生健康推進センター
菅原
通子,稲生
富谷
智明
慶典,内田
28.
(演題取り下げ)
29.原発性硬化性胆管炎に合併する胆管癌を診断しえた1例
千葉大学大学院医学研究院 消化器・腎臓内科学
○淺野
三方林太郎,横須賀
同
診断病理学
岩本
雅博
伸,杉山
晴俊
哲男,小泉
優子
收
雅美
30.経鼻的下垂体腫瘍摘出術中に急性膵炎を発症した一例
虎の門病院
消化器内科
○黒川
今村
―8―
憲,小山里香子,田村
綱男
( 7 )専修医Ⅶ(膵2)
11:10〜11:40
座長
東海大学医学部付属病院
消化器内科
川
嶌
洋
平
31.急激に進行した膵未分化癌の一例
獨協医科大学越谷病院
同
消化器内科
病理診断科
○徳富
治彦,須田
季晋,須藤
梨音,行徳
芳則
林
和憲,大浦
亮祐,市川
光沙,北川
智之
片山
裕視,玉野
正也
今田
浩生
32.異所性膵の膵炎により消化管通過障害を来した1例
東京女子医科大学
消化器内科
同
消化器外科
同
統合医科学研究所
○奥野
奈央,高山
敬子,赤尾
潤一,味原
隆大
長尾
健太,田原
純子,清水
京子,徳重
克年
土井
愛美,山下
信吾,山田
卓司,高橋
豊
山本
雅一
古川
徹
33.黄疸で来院し経過中に急性膵炎を合併した Weil 病の一例
神奈川県警友会
けいゆう病院
○岡田
直也,中下
学,北村
英俊,松永
崇宏
由喜,中嶋
緑郎,川崎
由華
高章,岡沢
啓,水城
啓,永田
博司
友弘,渡辺
亮,新木健一郎,平井圭太郎
吉本
憲史,関
伊藤
34.長径 28cm の巨大退形成膵癌の一切除例
群馬大学医学部附属病院
外科診療センター
○矢澤
久保
同
泌尿器科
憲生,五十嵐隆通,塚越真梨子,石井
星野
弘毅,桑野
博行,調
関根
芳岳,柴田
康博,鈴木
範洋
憲
和浩
35.脾臓出血を契機に発見された膵神経内分泌細胞癌の一切除例
横浜市立大学附属市民総合医療センター
横浜市立大学
消化器・腫瘍外科学
○高橋
弘毅,國崎
宮本
洋,泉澤
大田
貢由,円谷
遠藤
―9―
格
主税,小笠原康夫,佐藤
祐介,山口
彰
直孝,南
圭
裕太
第1会場(午後の部)
特別講演
13:05〜14:00
胃悪性腫瘍の現状と展望
浜松医科大学外科学
司会
( 8 )食道
第二講座
主任教授
今野
弘之 先生
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 副病院長
14:05〜14:41
座長
千葉大学大学院医学研究院
先端応用外科
國崎
主税
阿久津
泰
典
36.食道裂孔に横行結腸が嵌頓し胸腔内で穿孔した食道癌術後横隔膜ヘルニアの1例
横須賀市立市民病院
外科
○山本
淳,長嶺弘太郎,佐藤
三宅
益代,杉浦
渉,鈴木
伸吾
浩朗,亀田久仁郎,久保
章
37.上部消化管異物の臨床像:異物別の検討
国立国際医療研究センター
○櫻井
恵,横井
千寿,岡原
昂輝,島田
高幸
高崎
祐介,木平
英里,城間
翔,張
萌琳
畑
昌宏,久田
裕也,守安
志織,三島
沙織
大久保栄高,関根
一智,忌部
航,渡辺
一弘
櫻井
俊之,永田
尚義,小早川雅男,秋山
純一
○白井
告,大舘
幸太,水野
敬宏,和久津亜紀子
外處
真道,近藤
春彦,山城
雄也,三科
三科
雅子,明石
雅博,尾股
佑,渡邉
東
笹本
貴広,土屋
昭彦,西川
稿,山中
正己
38.食後の食道異物を繰り返した若年男性の一例
上尾中央総合病院
消化器内科
友二
39.脳腫瘍に対するコイル塞栓術後に認められた出血性食道潰瘍の1例
日本大学医学部 内科学系消化器肝臓内科学分野
○菊田大一郎,高橋
香里,宮田
隆
中川
太一,中河原浩史,大久保理恵,小川
利実,林
眞広
松岡
俊一,後藤田卓志,森山
光彦
40.骨および軟骨に分化した食道 GIST の1例
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科
横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科学
○矢澤
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科
國崎
主税,林
勉,山本
大田
貢由,円谷
彰
同
病理診断科
横浜市立大学医学部
消化器・腫瘍外科学
平
秋山
― 10 ―
慶一
沙代子
浩利,遠藤
格
淳,泉澤
祐介
41.食道 ESD 後狭窄予防の効果と現状
横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部 ○小林
亮介,平澤
欣吾,池田
眞一まこも,佐藤
横浜市立大学
( 9 )胃・十二指腸1
消化器内科
14:41〜15:11
前田
座長
良輔,福地
剛英
知子
愼
東海大学医学部
消化器外科
數
野
暁
人
42.診断に難渋した胃癌術後血球貪食症候群の1例
昭和大学藤ケ丘病院
消化器・一般外科
○関根
隆一,根本
洋,原田
芳邦,櫻庭
一馬
横溝
和晃,松原
猛人,出口
義雄,加藤
貴史
田中
淳一
義政,根本夕夏子,新後閑弘章,松浦
良徳
文彦,春山
晴,永井
泰斗
43.消化管スクリーニングの内視鏡を行った水疱性類天疱瘡の2例
厚生中央病院
消化器病センター
○堀江
中村
佐藤
同
東京医科大学
晋,木村
学,剛崎
皮膚科
竹村
卓也
分子病理学講座
黒田
雅彦
寛徳
44.胃癌術後1年における肺炎罹患の検討
済生会横浜市南部病院
外科
○林
勉,南澤
恵祐,根本
大士,澁谷
泰介
横井
英人,嶋田
裕子,和田
朋子,渡邊
卓央
高川
亮,嶋田
和博,村上
仁志,平川
昭平
秀之,福島
忠男,今田
敏夫
長谷川誠司,池
45.内視鏡的に摘出し手術を回避できた柿胃石の1例
佐倉中央病院
○荻原
崇,塩屋
萌映,岩淵
康雄
横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部 ○池田
良輔,佐藤
知子,福地
剛英,小林
46.胃 MALT リンパ腫と早期胃癌を合併した3例
眞一まこも,平澤
横浜市立大学附属病院
(10)胃・十二指腸2 15:11〜15:41
消化器内科
前田
亮介
欣吾
愼
座長 杏林大学医学部付属病院 消化器・一般外科 近 藤 恵 里
47.品川区胃がんリスク検診3年目の成績
荏原医師会
胃がんリスク検診検討委員会
○西川
品川区医師会
櫻井
順一,瀬底
正彦
幸弘
48.鎮静下胃 ESD 施行時における呼吸機能低下の危険因子における検討
千葉大学医学部
先端応用外科学
○相川
角田
千葉大学大学院医学研究院 消化器・腎臓内科学
瑞穂,上里
昌也,浦濱
慎輔,加賀谷暁子,武藤
中野
明,玉地
松村
倫明,横須賀
― 11 ―
智英,松原
收
竜馬,羽成
直行
頼彦,小倉由起子
久裕
49.出血を繰り返した二次性大動脈十二指腸瘻の1例
川崎幸病院
消化器内科
○高畑
彩子,十倉
淳紀,岡本
藤原
裕之,大前
芳男
法名,堀野
誠
50.好酸球性胃腸炎の治療中に診断に至ったアスピリン不耐症の一例
千葉ろうさい病院
同
内科
○吉田
直樹,粟津
雅美,渡邉由芙香,宮村
達雄
久我
明司,桝谷
佳生,菰田
文武,田中
武継
尾崎
大介
伸浩,山本
宏,鍋谷
圭宏
病理診断科
51.術前後の進展度診断が乖離した広範囲進行胃癌の一例
千葉県がんセンター
消化器外科
同
消化器内科
同
臨床病理部
(11)胃・十二指腸3、小腸1
15:41〜16:11
○外岡
亨,滝口
池田
篤,貝沼
修,早田
浩明,今西
俊介
有光
秀仁,小林
亮介,知花
朝史,石毛
文隆
永田
松夫
拓人,廣中
秀一,原
太郎
喜多絵美里,鈴木
山口
武人
竹山
裕之,荒木
座長
横浜市立大学
章伸,伊丹真紀子
外科治療学教室
大
島
貴
52.内視鏡的に摘除し得た胃 hamartomatous inverted polyp の一例
日本大学医学部
消化器肝臓内科
○原澤
尚登,春田
明子,中本
將秀,岩本
真帆
永井晋太郎,堀内
裕太,好士
大介,水野
滋章
後藤田卓志,森山
光彦
將秀
53.当院における胃 ESD 適応外病変の検討
日本大学医学部附属板橋病院
消化器肝臓内科
○原澤
尚登,春田
明子,岩本
真帆,中本
葉山
譲,佐藤
秀樹,水野
滋章,後藤田卓志
幸博,上條
孟,外川菜々子
森山
光彦
54.繰り返す腹痛症状から遺伝性血管性浮腫と診断し得た一例
国立病院機構 災害医療センター
同
国立病院機構
東京病院
消化器内科
○佐々木善浩,木谷
島田
祐輔,林
上市
英雄
臨床検査科
平野
和彦
消化器内科
川村
紀夫
昌武,永島
加世,大野
志乃
55.術後 13 年で肝再発をきたした小腸 GIST の1例
日本大学医学部 内科学系消化器肝臓内科学分野
○大内
高橋
琴世,中河原浩史,渡邊
幸信,平山みどり
利実,山本
眞広,松岡
後藤田卓志,森山
敏樹,小川
俊一
光彦
56.ハイネイーゲルと Ca 製剤による粘稠性腸内容が要因となった可能性のある腸閉塞をきたした食道癌
術後の1例
横浜市立大学
外科治療学
○長澤
伸介,橋本
至,山田
貴允,山本
直人
原田
浩,大島
貴,湯川
寛夫,利野
靖
益田
― 12 ―
宗孝
(12)小腸2、大腸1
16:11〜16:41
座長
東京慈恵会医科大学
消化器・肝臓内科
三戸部
慈
実
57.カプセル内視鏡検査で異常を認めなかった好酸球性胃腸炎の1例
自治医科大学附属さいたま医療センター
○浦吉
俊輔,賀嶋ひとみ,小糸
雄大,石井
剛弘
池田
正俊,上原
健志,西川
剛史,川村
晴水
山中
健一,浅野
岳晴,鷺原
規喜,松本
吏弘
浅部
伸一,宮谷
博幸,眞嶋
浩聡
58.絞扼性イレウスの判別式と ICG 蛍光法による血流評価で腸管切除を回避できた1例
横浜市立大学医学部
消化器・腫瘍外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター
横須賀共済病院
○関澤健太郎,石部
秋山
浩利,遠藤
諏訪
宏和,大田
外科
渡邉
純
外科
渡辺
一輝
がん総合医科学
市川
靖史
NTT 東日本
横浜市立大学医学部
関東病院
敦士,樅山
将士,小坂
隆司
格
貢由,國崎
主税
厚樹,小松
59.保存的治療で軽快した孤立性上腸間膜動脈解離の1例
横須賀市立市民病院
横浜市立大学医学部
消化器内科学
○山形
寿文,幡地
正輝,諸井
中山
沙映,有馬
功,前田
和人
愼
60.小腸虚血による汎発性腹膜炎術後に診断に至った直腸癌の1例
慶應義塾大学医学部外科学教室 一般・消化器外科 ○鈴村
博史,茂田
鶴田
雅士,石田
浩平,長谷川博俊,岡林
隆,安藤
徳田
敏樹,豊田
尚潔,北川
康一,山岸
茂,田中
淑恵,中堤
啓太
中本
礼良,清水
康博,本庄
優衣,鈴木
紳祐
山本
晋也,牧野
洋知,上田
倫夫,仲野
明
知史,岩間
剛史
望
雄光
61.直腸癌術後外耳道転移をきたした1例
藤沢市民病院
16:41〜16:46
外科
○森
―閉会の辞―
― 13 ―
第2会場(午前の部)
評価者
東邦大学医療センター
横須賀共済病院
消化器センター外科
外科
順天堂大学医学部
(13)専修医Ⅷ(膵3)
大森病院
下部消化管外科
8:05〜8:35
座長
島田
英昭
長堀
薫
小島
豊
日本医科大学
消化器外科
清
水
哲
也
62.胆嚢動脈分枝仮性動脈瘤破裂を伴った急性膵炎の一例
埼玉石心会病院
防衛医科大学校
○水野
寿一,高柳
駿也,染村
坂本
竜二,奥平
圭輔
山本
真由
放射線科
祥,阿部
敏幸
63.PD 術後門脈狭窄、挙上空腸静脈瘤に対して IVR が有効であった1症例
都立墨東病院
外科
○西原
泰治,鹿股
宏之,工藤
宏樹
高橋
正道,松岡勇二郎,和田
悠樹,脊山
郁雄,宮本
幸雄
梅北
信孝
真二,中瀬古裕一,高野
裕樹
64.膵癌と鑑別が困難であった自己免疫性膵炎の1例
東京慈恵会医科大学外科学講座
同
肝胆膵外科
消化器外科
○大楽
勝司,恩田
島田
淳一,兼平
卓,坂本
太郎,後町
柴
浩明,宇和川
匡,石田
祐一
矢永
勝彦
武志
65.門脈内膵液瘻で門脈閉塞をきたし保存的加療で改善を認めた1例
国立国際医療研究センター
消化器内科
○木村
沙織,忌部
航,柳澤
直宏
渡辺
花菜,三島
一弘,三神信太郎,櫻井
俊介,永田
尚義
横井
千寿,小島
康志,小早川雅男,秋山
純一
柳瀬
幹雄
66.SACI test が局在診断に有用であったインスリノーマの一例
群馬大学
消化器・肝臓内科
○関谷
深井
真志,水出
雅文,増田
邦彦,小林
剛
泰守,星
恒輝,中山
哲雄,山田
俊哉
志行,大山
達也
勇一,佐藤
賢
富澤
琢,安岡
秀敏,栗林
堀口
昇男,下山
康之,山崎
柿崎
暁,河村
修,草野
― 14 ―
元康
(14)専修医Ⅸ(その他)
8:35〜8:59
座長
慶應義塾大学医学部
内科学(消化器)
須
河
恭
敬
67.回盲部切除後,長期生存を得ている原発不明癌の1手術例
順天堂大学医学部
下部消化管外科
○松澤
宏和,雨宮
浩太,土谷
祐樹,萩原
牧野有里香,茂木
俊介,高橋
里奈,丹羽浩一郎
杉本
起一,神山
博彦,高橋
五藤
倫敏,冨木
裕一,坂本
一博
雄大,新藤
雄司,松本
史弘,賀嶋ひとみ
玄,小島
俊昭
豊
68.ステロイドが著効した Cronkhite-Canada 症候群の1例
自治医科大学附属さいたま医療センター 消化器科 ○小糸
石井
剛弘,大竹はるか,上原
健志,川村
晴水
西川
剛史,浦吉
俊輔,大滝
雄造,山中
健一
牛丸
信也,浅野
岳晴,岩城
孝明,鷺原
規喜
浅部
伸一,宮谷
博幸,眞嶋
浩聡
69.心窩部痛を契機に受診し緊急 IVR による止血術を要した胃大網動脈分節性動脈中膜融解(SAM)の
一例
横浜労災病院
消化器内科
○辻川真太朗,永瀬
佐藤
同
内視鏡部
肇,関野
雄典,石井
研
晋二,廣谷あかね,永嶌
裕樹,野上
麻子
小林
貴,鈴木
雅人,高柳
卓矢,立川
準
梅村
隆輔,川名
憲一,金沢
憲由
70.自己免疫性肝炎の経過観察中に出現した脾ペリオーシスの一例
獨協医科大学
獨協医科大学病院
消化器内科
病理診断科
(15)研修医Ⅰ(食道、胃・十二指腸1) 9:04〜9:34
○島田
紘爾,室久
俊光,田中
孝尚,渡邉
詔子
水口
貴仁,金森
瑛,岩崎
茉莉,陣内
秀仁
有阪
高洋,紀
仁,金子
仁人,飯島
誠
平石
秀幸
山岸
秀嗣
座長 群馬大学大学院 病態総合外科学 宗 田
真
71.術前化学療法が有用であった食道胃接合部癌の扁平上皮癌
横須賀救済病院
外科
○工藤
孝迪,木村
準,武井
将伍,田村
裕子
高畑
太輔,矢後
彰一,川村
祐介,高橋
智昭
押
正徳,大西
宙,諏訪
雄亮,渡邉
純
野尻
和典,盛田
知幸,茂垣
雅俊,舛井
秀宜
利人,斉藤
心,細谷
好則
崇,倉科憲太郎,佐久間康成,堀江
久永
長堀
薫
72.診断に苦慮した分化型胃癌の1例
自治医科大学附属病院
卒後臨床研修センター
○小川れをな,金丸
宇井
同
消化器一般外科
同
病理診断部
佐田
尚宏
三浦
義正,北山
丈二
三登久美子,金井
信行
― 15 ―
73.浸潤性膀胱癌の胃壁内転移を認めた1例
横浜南共済病院
消化器内科
○舩岡
裕亮,高木
将,小串
勝昭
戸塚雄一朗,平尾茉里名,三留
典子,中尾
聡
福島
泰斗,小林
槇,西郡
修平,濱中
潤
三浦
雄輝,金子
卓,岡
裕之,洲崎
文男
文,鈴木
健,平田
賢郎
康夫,高石
官均,金井
隆典
篤史
岡崎
昭宏,佐野
博
74.5− FU + LV 療法が奏功し透析離脱できた腹膜播種を伴うスキルス胃癌の一例
慶應義塾大学医学部
内科学
消化器
○佐々木佑輔,宇賀村
須河
恭敬,浜本
75.腹腔鏡内視鏡合同切除術を施行した胃原発 glomus 腫瘍の1例
東京慈恵会医科大学
外科学講座
(16)研修医Ⅱ(胃・十二指腸2、小腸) 9:34〜10:04
○山下
貴晃,藤崎
宗春,高野
裕太,渡部
志田
敦男,三森
教雄,矢永
勝彦
座長 慶應義塾大学医学部 外科学(一般・消化器) 和 田 則 仁
76.骨髄低形成を呈した HER2 陽性食道接合部癌に対してトラスツズマブ併用放射線療法が奏功した
1例
横浜市立市民病院
消化器外科
○大滝真梨香,小原
阿部
有佳,南
尚,近藤
裕樹,佐原
康太
宏典,藪下
泰宏,藪野
太一
77.コーラ溶解療法と内視鏡的破砕術の併用が有効であった巨大胃石症の1例
順天堂大学医学部
消化器内科
○土屋
俊,稲見
義宏,谷田貝
昂,高橋
正倫
順子
金澤
亮,東原
良恵,今
一義,加藤
山科
俊平,長田
太郎,渡辺
純夫
○渡邊
隆嘉,緒方
杏一,栗山
健吾,鈴木
雅貴
木村
明春,木暮
憲道,石井
範洋,桑野
博行
78.術前リンパ節転移が疑われた胃神経鞘腫の1例
群馬大学大学院
病態総合外科
79.内視鏡的静脈瘤結紮術とヒストアクリルを用いた硬化療法が奏功した十二指腸静脈瘤破裂の一例
昭和大学医学部内科学講座
消化器内科学部門
○佐藤
義仁,大森
里紗,魚住祥二郎,林
杉浦
育也,野本
朋宏,吉田
栄一
仁
80.クローン病に併発した小腸原発形質芽球性リンパ腫の1例
防衛医科大学校病院
同
内科学第2講座
検査部診断病理部
○吉冨
俊彦,塙
芳典,東山
正明,溝口
明範
西井
慎,寺田
尚人,和田
晃典,杉原
奈央
好川
謙一,高城
健,丸田
紘史,安武
優一
渡辺知佳子,高本
俊介,冨田
謙吾,永尾
重昭
三浦総一郎,穂苅
量太
中西
― 16 ―
邦昭
(17)研修医Ⅲ(大腸)
10:04〜10:40
座長
東京医科大学病院
消化器内科
八
木
健
二
81.盲腸癌に二次性の虫垂炎、穿孔を合併し緊急手術となった一例
国立病院機構災害医療センター
同
消化器内科
同
消化器外科
○糸川
直樹
大野
志乃,林
昌武,上条
島田
祐輔,佐々木善浩,上市
末松
友樹,石橋
雄次,伊藤
孟,木谷
幸博
英雄
豊
82.潰瘍性大腸炎に原発性硬化性胆管炎、肝内胆管癌を合併した1例
北里大学医学部
消化器内科学
○荻原
沙織,横山
奥脇
興介,高田
薫,宮田
英治,川岸
加奈
樹一,小泉和三郎
83.潰瘍性大腸炎の大腸全摘後に小腸多発潰瘍が出現し、インフリキシマブが著効した一例
横浜市立市民病院
炎症性腸疾患科
○長堀
黒木
まな,小金井一隆,辰巳
博介,近藤
裕樹,杉田
健志,二木
了
昭
84.特異な内視鏡所見より5-アミノサリチル酸製剤によるアレルギーを疑った潰瘍性大腸炎の一例
東京医科歯科大学
消化器内科
○丘
野崎
大島
東
佳恵,武井ゆりあ,松岡
克善,藤井
賢吾,根本
泰宏,福島
啓太,岡田英里子
茂,永石
宇司,岡本
隆一,土屋輝一郎
正新,中村
哲也,長堀
正和,荒木
昭博
朝比奈靖浩,渡辺
同
光学医療診療部
福田
俊光
守
将義,大塚
和朗
85.結腸癌異時性小腸転移の一例
済生会横浜市南部病院
外科
○遠藤
勉,南澤
恵祐,根本
大士
澁谷
和樹,林
泰介,横井
英人,和田
朋子,渡邊
卓央
高川
亮,嶋田
和博,村上
仁志,平川
昭平
秀人,福島
忠男,今田
敏夫
俊彦,百瀬
博一,飯岡
愛子,高安
甲平
小嶋幸一郎,渡邉
武志,松岡
弘芳,正木
忠彦
森
政則
長谷川誠司,池
86.潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術後5年で腹腔内膿瘍を発症した1例
杏林大学医学部付属病院
消化器・一般外科
○木村
俊幸,杉山
(18)研修医Ⅳ(肝) 10:40〜11:16 座長 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 内科 三 輪 治 生
87.高齢男性で発症した自己免疫性肝炎の一例
東京逓信病院
消化器内科
○林
崇明,北村和貴子,古谷
大久保政雄,小林
橋本
健悟,加藤
知爾
克也,関川憲一郎,光井
洋
直明
88.サイトメガロウイルス感染症を契機に急激な溶血性貧血を発症した一例
関東労災病院
消化器内科
○大久保彰人,矢野雄一郎,小野寺
中崎奈都子,嘉戸
小川
― 17 ―
正純,佐藤
慎一,金子
譲
翔,山宮
知
麗奈,草柳
聡
89.S 状結腸癌が細菌の侵入経路と考えられた Fusobacterium nucleatum による化膿性肝膿瘍の1例
聖マリアンナ医科大学
臨床研修センター
○菅野
同
消化器・肝臓内科
重福
隆太,渡邊
綱正,中野
弘康,池田
裕喜
白勢
大門,服部
伸洋,松永光太郎,松本
伸行
伊東
文生
奥瀬
千晃,鈴木
川崎市立多摩病院
優樹
通博
90.肝細胞癌に対するリザーバーカテーテル留置下肝動注化学療法中に発症した胆管狭窄及び肝動脈胆管
瘻の一例
がん研有明病院
○村田
翔平,金田
佐々木
同
画像診断部
隆,松山
笹平
直樹
松枝
清
遼,齋藤
圭,山田
育弘
眞人,尾阪
将人,高野
浩一
91.Denver 型 PV-Shunt 留置後2年目に敗血症を繰り返す肝硬変患者の1例
日本大学医学部附属板橋病院 消化器肝臓内科学分野
日本大学病院
消化器肝臓内科
○稲原
裕也,松本
直樹,本田
真之,香川
敦宣
牧野
加織,石井
大雄,熊川まり子,宮澤
祥一
水谷
卓,上村
楡井
和重,山上
慎也,永井晋太郎,中村
仁美
裕晃,松岡
俊一,森山
光彦
良弘,有田
後藤田卓志
92.FDG-PET で高集積を認めた肝細胞腺腫の一例
東京大学医学部附属病院 肝胆膵・人工臓器移植外科
○吉田
浩紀,稲垣
冬樹,阪本
赤松
延久,金子
順一,長谷川
同
病理部
柴原
純二
同
放射線科
渡谷
岳行
(19)研修医Ⅴ(膵、その他) 11:16〜11:46
潔,國土
淳一
典宏
座長 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 内科 平 澤 欣 吾
93.当院における 80 歳以上の切除不能進行膵癌に対する nab-paclitaxel と gemcitabine 併用療法の検討
東京慈恵会医科大学附属第三病院
○堀川
真吾,今井
那美,赤須
貴文,萩原
雅子
横田
健晴,岩久
章,小林
剛,小林
裕彦
木下
晃吉,伏谷
直,木島
洋征,小池
和彦
○佐藤
翔太,川口
義明,川西
彩,川嶌
洋平
94.穿孔を来した膵癌小腸転移の1例
東海大学医学部
消化器内科
羽田野敦子,小川
真実,峯
徹哉
俊樹,古川
大輔
同
消化器外科
富奥
同
病理診断科
中野 夏子,平林
美藤,佐藤
健一
95.臭化ブチルスコポラミンによるアナフィラキシーショックを来たした1例
草加市立病院
○慶徳
大誠,青沼
映美,鈴木
山本
満千,吉田
玲子,矢内
― 18 ―
快,鎌田
常人
和明
96.心房内血栓より上腸間膜動脈血栓症をきたし救命できなかった1例
日本大学医学部内科学系
消化器肝臓内科
○林
辰彦,後藤田卓志,林
香里,大内
琴世
中川
太一,高橋
利実,中河原浩史,山本
敏樹
今武
和弘,小川
眞広,松岡
光彦
○豊崎
瑛士,清崎
浩一,阿部
郁,小櫃
保
染谷
崇徳,石岡
大輔,菊川
利奈,斎藤
正昭
辻仲
眞康,宮倉
安幸,野田
弘志,力山
敏樹
蛭田
昌宏
俊一,森山
97.胃癌手術を契機に診断された Splenosis(脾症)の一例
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般消化器外科
同
病理部
― 19 ―
第2会場(午後の部)
(20)大腸2
14:05〜14:41
一般演題
座長
東京大学
腫瘍外科
畑
啓
介
98.卵巣穿通を伴った S 状結腸憩室炎に対し腹腔鏡下 S 状結腸切除術を施行した1例
横須賀共済病院
外科
○大西
宙,木村
舛井
秀宣,長堀
準,諏訪
雄亮,渡邉
純
裕,高橋
里奈
薫
99.アレルギー性紫斑病に伴う急性腹症の1例
順天堂大学
下部消化管外科
○牧野有里香,本庄
盧
薫平,岡澤
尚志,河野
眞吾,宗像
石山
隼,神山
博彦,高橋
五藤
倫敏,冨木
裕一,坂本
慎也,丹羽浩一郎
玄,小島
豊
一博
100.虫垂腫瘍との鑑別に苦慮した周囲膿瘍を伴う穿孔性虫垂炎の1例
独立行政法人 国立病院機構 横浜医療センター 外科
○山本
悠史,松田
悟郎,関戸
渡部
顕,高橋
直行,坂本
中崎
仁,清水
哲也
里紗,朴
峻
佑介
101.生物学的製剤と CAP 療法の併用により臨床的寛解を得た潰瘍性大腸炎の1例
社会医療法人社団 順江会 江東病院 消化器内科 ○橋本周太郎,小林
修,太田
三好由里子,伊藤
翔子,渡辺
一樹,小島
大地
拓人
102.結腸直腸吻合部の完全閉塞を非手術的に解除した1例
日本海員掖済会
横浜掖済会病院
○浅野
史雄,大山
倫男,森岡
大介,佐藤
三浦
勝,山口
和哉,堀井
伸利
芳樹
優作,谷口
浩一,齋藤
103.中毒性巨大結腸症を併発した直腸癌術後偽膜性腸炎の1例
横浜保土ヶ谷中央病院
外科
○小澤真由美,田中
上向
(21)肝
14:41〜15:23
座長
健人
伸幸
横浜市立大学医学研究科
消化器・腫瘍外科学
熊
本
宜
文
104.著明な白血球増多を伴い、急速に進行した重症型アルコール性肝炎の一例
国立病院機構
災害医療センター
国立病院機構
東京病院
消化器内科
消化器内科
○佐々木善浩,外川菜々子,上條
島田
祐輔,林
上市
英雄
川村
紀夫
昌武,永島
孟,木谷
幸博
加世,大野
志乃
105.脳腫瘍摘出後に肝機能障害を契機として発見された肝原発神経内分泌癌・脳転移の1例
千葉大学医学部附属病院
消化器腎臓内科学
同
脳神経外科学
同
診断病理学
○高橋
幸治,鈴木英一郎,井上
将法,若松
徹
收
小笠原定久,大岡
美彦,千葉
哲博,横須賀
松谷
康男,佐伯
直勝
智郎,岩立
神戸美千代
― 20 ―
106.多発肝細胞癌が自然退縮した症例
横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター
横浜市立大学附属病院
消化器内科
○道端
信貴,杉森
慎,羽尾
福田
浩之,野崎
昭人,中馬
田中
克明
近藤
正晃,前田
義輝,原
誠,沼田
浩二
和司
慎
107.高度静脈浸潤を認め、腫瘍組織内に合胞体様の多核巨細胞を多数認めた再発肝細胞癌の一例
帝京大学ちば総合医療センター
同
外科
病理
○菊地祐太郎,廣島
森
幹人,小杉
田中
邦哉
山崎
一人,石田
幸彦,松尾
憲一,平野
敦史
千弘,首藤
潔彦,幸田
圭史
康生
108.FibroScan®により経皮的バルーン血管形成術の治療効果を評価したバッドキアリ症候群の1例
東京大学医学部附属病院
消化器内科
○和気泰次郎,中塚
拓馬,奥新
和也,中込
近藤真由子,藤原
直人,佐藤
雅哉,南
達也
工藤洋太郎,中川
勇人,浅岡
良成,近藤
祐嗣
田中
康雄,建石
良介,小池
和彦
放射線科
柴田
英介,大倉
直樹,佐藤
次郎
NTT 東日本関東病院 放射線部
赤羽
正章
秀樹,鈴木
秀明,新井
同
良
109.複数回の肝動脈塞栓術で止血を得られた肝細胞癌破裂の1例
横須賀共済病院
消化器内科
○相川恵里花,渡辺
田邊
陽子,小馬瀬一樹,小島
平昭
衣梨,石井
高橋
純一
勝春
直紀,山本奈穂子
玲子,森川
亮,大坪
加奈
悠子,細矢さやか,剛崎
有加
110.SVR 後に多発する良性結節が出現しその経過2年後に HCC が出現した1例
東京都健康長寿医療センター
消化器内科
松岡
順子,中嶋研一朗,潮
内視鏡科
松川
美保,西村
誠
順天堂大学
消化器内科
佐藤
公紀,清水
遼,林
同
病理診断科
山下 淳史,福村
同
(22)胆、膵
○上垣佐登子,藤井
15:23〜15:53
座長
自治医科大学内科学講座
靖子,佐々木美奈
学,椎名秀一朗
由紀
消化器内科学部門
牛
尾
純
111.肝膿瘍を伴う胆嚢炎にて発症し、ERBD 施行し LVFX の膿瘍注射にて肝膿瘍が改善した神経内分泌
腫瘍の1症例
つくばセントラル病院
○内田
優一,浅岡
等,田内
雅史,上野
卓教
芳樹
112.化学療法により長期生存中の腹膜播種陽性胆道癌の2例
日本海員掖済会
横浜掖済会病院
○大山
倫男,浅野
史雄,森岡
大介,佐藤
三浦
勝,山口
和哉,堀井
伸利
113.経皮経肝的胆道ドレナージチューブの長期留置が内瘻化に有効であった術後胆道閉塞の一例
大森赤十字病院
消化器内科
○河合
恵美,栗原
圭一
秀幸
智則,諸橋
拓馬,芦苅
昭裕,千葉
井田
大典,須藤
直哉,関
志帆子,高橋
河野
― 21 ―
大樹,後藤
亨
114.腹部超音波検査で穿孔部位及び内容物の流出像がみられた胆石胆嚢炎の1例
東京都健康長寿医療センター
消化器内科
同
内視鏡科
同
外科
○上垣佐登子,佐々木美奈,藤井
剛崎
有加,松岡
松川
美保,西村
金
翔哲,吉田
悠子,細矢さやか
順子,中嶋研一朗,潮
靖子
誠
孝司,金澤
伸郎
115.膵神経分泌腫瘍(P-NET)との鑑別に苦慮した漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)の1切除例
船橋市立医療センター
消化器内科
同
外科
同
病理部
○小林
照宗,石垣
飛鳥,嶋
東郷
聖子,関
厚佳,安藤
夏目
俊之,丸山
尚嗣
清水辰一郎
― 22 ―
由紀子,興梠
健,水本
慧輔
英明
平成28・29年度 日本消化器病学会関東支部例会開催期日
例会回数
340
341
342
343
344
当 番 会 長
溝 上 裕 士
(筑波大学附属病院 光学医療診療部)
山 本 博 徳
(自治医科大学内科学講座 消化器内科学)
貝 瀬 満
(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 消化器内科)
屋嘉比 康 治
(埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科)
長 堀 薫
(国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院)
開 催 日
会 場
東 京
7月16日(土)
海運クラブ
東 京
9月24日(土)
海運クラブ
東 京
12月3日(土)
海運クラブ
平成29年
東 京
2月4日(土) 海運クラブ
東 京
5月27日(土)
海運クラブ
演題受付期間
4月13日
〜 5月11日予定
6月15日
〜 7月20日予定
8月24日
〜 9月28日予定
10月26日
〜 11月30日予定
2月15日
〜3月22日予定
演題の申込はインターネットにてお願いいたします。
詳細につきましては「URL: http://jsge.or.jp/member/meeting/shibu/kanto」をご覧ください。
平成28年度 日本消化器病学会関東支部教育講演会開催期日
講演会回数
28
29
当 番 会 長
開 催 日
会 場
申込締切日
永 尾 重 昭
東 京
6月26日(日)
6月3日(金)
(防衛医科大学校 光学医療診療部)
シェーンバッハ・サボー
正 田 純 一
東 京
未 定
(筑波大学医学医療系 医療科学) 11月20日(日) シェーンバッハ・サボー
次回(第340回)例会のお知らせ
期 日:平成28年7月16日(土)
会 場:海運クラブ 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4 TEL 03-3264-1825
【交通のご案内】地下鉄 有楽町線,半蔵門線,南北線:永田町駅4,5,9番出口…2分
銀座線,丸ノ内線:赤坂見附駅D(弁慶橋)出口…5分
特別講演:「革新的サイバニックシステム~サイボーグ型ロボットHAL最前線~」
演者:筑波大学大学院 システム情報工学研究科 教授 筑波大学 サイバニクス研究センター センター長 内閣府ImPACT革新的研究開発推進プログラム プログラムマネージャ ー
CYBERDYNE株式会社 代表取締役社長/ CEO 山海 嘉之
司会:筑波大学附属病院 光学医療診療部 部長/病院教授 溝上 裕士
ランチョンセミナー:「早期胃癌に対する内視鏡治療の現状と今後の展望」
演者:北里大学医学部 新世紀医療開発センター 低侵襲光学治療学 教授 田邉 聡
司会:筑波大学 医学医療系 臨床医学域 消化器内科学 教授 兵頭一之介
当番会長:溝上 裕士(筑波大学附属病院 光学医療診療部 部長/病院教授)
〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1
TEL 029-853-3218 FAX 029-853-3218
連絡先:奈良坂俊明(筑波大学附属病院 光学医療診療部 副部長)
◆研修医・専修医セッションについて◆
研修医(例会発表時に卒後2年迄)および専修医(例会発表時に卒後3~5年迄)セッションを設け,優秀演
題を表彰する予定です。演題申込時,講演形態は【研修医セッション】または【専修医セッション】から選び,
会員番号は,学会未入会の場合は,番号(99)で登録して下さい。なお,応募演題数が多い場合は,規定の受
付期間内で先着順とし,一般演題に変更させていただく場合がございます。また研修医・専修医セッションへ
の応募は,各々1施設(1診療科),1演題に制限させていただきます。
お問い合せについて
次回例会については,上記の当番会長の先生へ,その他の事務上のことは,下記関東支部事務局
へお願いいたします。
〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2
杏林大学医学部外科学教室(消化器・一般外科)
日本消化器病学会関東支部事務局 TEL 0422(71)5288 FAX 0422(47)5523
E-mail:[email protected]
日本消化器病学会関東支部 支部長 峯 徹哉
― 23 ―
日本消化器病学会関東支部 第28回教育講演会ご案内
(日本消化器病学会専門医制度:18単位)
日 時:2016年6月26日(日)
9:15 〜 16:55
会 場:シェーンバッハ・サボー(〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 電話:03-3261-8386)
会 長:永尾 重昭(防衛医科大学校 光学医療診療部 教授)
主 題:
「進化する消化器病学」
◆開会の辞◆永尾 重昭(第28回教育講演会会長)
◆講演1◆「門脈圧亢進症の最新の診断と治療 EISLからPSE、BRTOまで(肝硬変の集学的治療)」
講師:國分 茂博(新百ヶ合丘総合病院 肝疾患低侵襲治療センター長)
司会:市田 隆文(湘南東部総合病院 院長)
◆モーニングセミナー◆「酸関連疾患 最新の治療」
講師:屋嘉比康治(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科教授)
司会:上西 紀夫(公立昭和病院長、東京大学名誉教授)
◆講演2◆「食道疾患の最新の診断と治療 IPCLからPOEMまで」
講師:井上 晴洋(昭和大学江東豊洲病院 消化器センター長、教授)
司会:熊谷 一秀(あそか病院 昭和大学名誉教授)
◆講演3◆「小腸疾患の最新の診断と治療」
講師:山本 博徳(自治医科大学 消化器内科教授)
司会:菅野健太郎(JDDW理事長、自治医科大学名誉教授)
◆ランチョンセミナー◆「ウイルス性肝炎最新の治療、今後の展望」
講師:熊田 博光(虎の門病院分院長)
司会:小池 和彦(東京大学医学部 消化器内科教授)
◆講演4◆「NASH、NAFLD最新の診断と治療」
講師:渡辺 純夫(順天堂大学医学部 消化器内科教授)
司会:名越 澄子(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科教授)
◆講演5◆「IBDの最新の治療と腸内細菌イノベーション」
講師:金井 隆典(慶應義塾大学医学部 消化器内科教授)
司会:渡辺 守(東京医科歯科大学 消化器内科教授)
◆イブニングセミナー◆「国際分類からみた早期胃癌最新の拡大内視鏡診断」
講師:八尾 健史(福岡大学筑紫病院 内視鏡部教授)
司会:榊 信廣(早期胃癌検診協会理事、研究本部長)
◆講演6◆「胆膵疾患 最新の診断、治療」
講師:伊佐山浩通(東京大学医学部 消化器内科准教授)
司会:峯 徹哉(東海大学医学部 消化器内科教授)
◆支部長挨拶◆峯 徹哉(東海大学医学部 消化器内科教授)
◆閉会の辞◆永尾 重昭(第28回教育講演会会長)
参加方法:事 前登録制となりますので、2016年6月3日(金)までに関東支部ホームページの参加登録から、
お申し込みください。
参加費(5,000円、テキスト代含む)は事前振込となります。
なお一度お振込いただいた参加費は原則的にはご返金いたしませんので予めご了承ください。
※定員になり次第、締め切らせて頂きます。
(定員500名)
更新単位:18単位
※専門医更新単位登録票への確認印の押印は、開会の辞から閉会の辞までご参加いただいた方に限
ります。
なお、専門医更新単位登録票確認印の受付は、閉会の辞終了後から開始いたします。
問合せ先:日本消化器病学会関東支部第28回教育講演会 運営事務局
(株)サンプラネット内 担当:高橋
〒112-0012 東京都文京区大塚3-5-10 住友成泉小石川ビル6F
TEL:03-5940-2614 FAX:03-3942-6396
E-mail:[email protected]
― 24 ―
1
食道癌手術における胸腔内吻合のmajor leakageを
Over-The-Scope-Clipping systemにより閉鎖し得た
1例
横浜市立大学 外科治療学
橋本 至,長澤伸介,山田貴允,原田
湯川寛夫,利野 靖,益田宗孝
浩,山本直人,大島
貴,
症例は77歳男性。咽頭癌に対し放射線化学療法を施行され,
フォローアップ目的のPET-CTにて腹部食道にFDGの集積が認
められた。精査の結果,食道癌,Ae( EG) ,24mm,“0-Is”+0-IIa,
scc,T1bN0M0 StageIと診断され,腹腔鏡補助下食道切除術,亜
全細径胃管再建,後縦隔経路・胸腔内吻合,腸瘻造設術を施行
された。術後4日目の造影検査では異常は認められず経口摂取
を開始したが,術後7日目に右胸腔ドレーンより多量の咀嚼物
が流出し,吻合部の造影検査にて縫合不全と診断された。一時,
全身状態が悪化したが,右胸腔の洗浄ドレナージにて徐々に全
身状態が落ち着いたため, 上部消化管内視鏡検査を施行。再建胃
管縫合閉鎖部の径10mmにわたる縫合不全が認められた。これ
に対して保存的加療を継続したが,経口摂取を再開するまでに
は長期間を要すると考えられたため,Over-The-Scope-Clipping
( OTSC) systemを使用して縫合不全部の閉鎖を行った。閉鎖後
初期の造影検査ではわずかに造影剤の流出を認めたが,閉鎖後
20日目には経口摂取を再開することができ,その後の経過は良
好で退院した。食道癌手術における胸腔内吻合のmajor leakage
は重症化しやすく,治療に難渋することも多い。今回我々は,
軟性内視鏡を用いて使用するクリッピングシステムである
OTSC systemを使用して,食道癌手術におけるmajor leakageを閉
鎖し得た一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
3
横須賀市立うわまち病院
古川潔人,小宮靖彦,大熊幹二,森川瑛一郎,秋間
池田隆明
食道気管支瘻,食道癌
4
原発性頚部食道線癌の一例
横浜市立大学附属市民総合医療センター
鈴木良優,加藤 綾,佐藤 圭,宮本 洋,泉澤裕介,山口直孝,
円谷 彰,大田貢由,國崎主税
症例は65歳男性で、3か月前からの嚥下困難感を主訴に、当院内
科を紹介受診した。上部消化管内視鏡検査では、食道入口部左
側の食道壁が隆起し、狭窄のため細径スコープしか通過しな
かったが、粘膜病変は認めなかった。造影CT検査では、気管背
側に、頸部食道左側と連続した造影効果のある17mm大の腫瘍
を認め、食道を右側へ圧排していた。気管支鏡下穿刺細胞診を
試みるも診断がつかず、外科的生検を施行した。術中所見では、
甲状腺背側の食道と気管の間に、食道と固く癒着する30mm大
の腫瘍を触知し、腫瘍を部分切除した。病理学的診断は腺癌で
あり、免疫染色ではCK7陰性CK20陽性だった。PET-CTでは、
同部にSUV max=10. 3の異常集積を認めた他、S状結腸に異常集
積を認め、CFでも同部に一致して0-IIa病変を認めたが、免疫染
色からは結腸癌からの転移は否定的と判断した。その他の部位
には有意な集積は認めず、壁外性に発育した食道固有腺由来の
原発性食道腺癌と診断し、化学放射線療法(radiation+FP療法)
を開始した。食道固有腺由来の原発性食道腺癌は、粘膜下腫瘍
像を呈することが多く、粘膜病変を伴わない食道腫瘍の鑑別と
して、考慮すべきだと考えられた。今回、まれな食道固有腺由
来の原発性頚部食道腺癌の1例を経験したので報告する。
崇,妹尾孝浩,
【症例】74歳男性。
【既往歴】陳旧性脳梗塞、肺気腫【現病歴】
201x年8月下旬より嚥下困難が出現。9月中旬に体重減少、発熱、
咳嗽にて当院を受診し、右下葉肺炎および中部食道に全周性狭
窄 を 伴 う 食 道 癌 を 指 摘 さ れ た。検 査 成 績:WBC17600/ μ l、
RBC444x104 / μ l、Hb12. 6g/ dl、Hct37. 3%、Plt34. 3 x104 / μ l、
CRP15. 8mg/ dl、SCC8. 8ng/ ml。臨床経過:肺炎治療を行い、食
道癌はcT4N2M0のstage4aで食道ステント(covered Niti-S 18×
100mm)留置後に化学照射線量法を施行した。11月下旬の放射
線治療終了後には、嚥下困難などの自覚症状の改善を認めたが、
12月下旬より嚥下時に強い咳嗽が出現。上部消化管内視鏡検査
にて食道ステント上縁のun-covered部に左主気管支との瘻孔形
成を確認した。1月上旬に食道ステント(covered Niti-S 18×
100mm)をステント内に再留置した。しかし、初回に留置した
ステントが気管支内腔へ突出し、これに関連した呼吸器症状の
増悪が認められた。このため、十分なインフォームドコンセン
トのもとで1月下旬に全身麻酔下で気管支ステントを留置する
方針とした。気管支ステント(covered Ultraflex 10×40mm)留
置は合併症もなく終了し、治療後は嚥下時の咳嗽は改善し、経
口摂取が可能になり、全身状態も徐々に改善した。【考察】食道
癌は食道気管支瘻を合併する症例もあり、予後とADLを著しく
低下させる要因になる。本例はいわゆるダブルステントにて瘻
孔閉鎖を施行し、気道確保および経口摂食が可能になった症例
であり、気管支瘻孔合併食道癌の治療を考える上において示唆
に富むと考え報告する。
食道癌術後,majaor leakage
2
食道気管支ダブルステント治療が有効であった食道
気管支瘻合併食道癌の1例
十 二 指 腸 水 平 脚 の 狭 窄 を 来 し た segmental arterial
mediolysisの一例
昭和大学藤が丘病院 内科学講座 消化器内科部門1) ,
菊名記念病院 消化器内科2)
東畑みさこ1) ,高野祐一1) ,西元史哉2) ,吉田詠里加1) ,田淵晃宏1) ,
新谷文崇1) ,小林孝弘1) ,宮尾直樹1) ,上原なつみ1) ,中西 徹1) ,
花村祥太郎1) ,五味邦代1) ,黒木優一郎1) ,丸岡直隆1) ,長浜正亞1) ,
井上和明1) ,高橋 寛1)
症例は63歳女性。一過性意識消失のため前医に救急搬送され、
血液検査・頭部CTにて明らかな異常なく帰宅となった。しか
し翌日より頻回の嘔吐がみられ再度前医を受診。腹部CTで膵
頭部周囲の炎症所見を認め急性膵炎の診断で入院となり、精査
目的に当院に転院となった。CTを再度撮影すると十二指腸水
平脚周囲に高吸収域をみとめ、膵十二指腸動脈分枝の嚢状拡張
を認めた。腹腔動脈根部には狭窄が見られた。上部消化管内視
鏡検査では十二指腸水平脚に潰瘍や腫瘍性病変は認めず、周囲
からの浮腫性圧排をみとめた。膵十二指腸動脈のsegmental
arterial mediolysis( SAM) からの出血による狭窄が強く疑われ
た。3週間後のCTでは血腫は自然吸収されており、動脈の嚢状
拡張も消失していた。食事摂取を開始し経過良好で退院となっ
た。SAMは稀な疾患であるが、膵頭部周囲の炎症では鑑別に挙
げる必要がある。文献的考察を加えて報告する。
食道腺癌,食道粘膜下腫瘍
― 26 ―
segmental arterial mediolysis,十二指腸狭窄
5
肺癌術後脳転移の化学療法及び全脳照射中に消化管
穿孔を合併した一例
東京女子医科大学病院 第二外科
高部裕也,瀬下明良,三宅邦智,天野久仁彦,春日満貴子,
種市美樹子,植田吉宣,鈴木 綾,岡本高宏
症例は60歳代、女性。2005年12月に肺癌に対して右肺中葉を切
除した。病理でadenocarcinoma, mixed type, pT1b ( 最大腫瘍径
2. 5cm) N2 M0, stage3A であった。術後6ヶ月の胸部CTで多発
結節を認め、以降化学療法を継続となった。2013年5月には前
頭葉転移、2014年1月には下垂体転移を認め、ガンマナイフを施
行した。下垂体機能低下症を合併し、ステロイド内服開始と
なった。2014年6月Docetaxel + Bevacizumabを開始となった。
その後新たな脳転移巣を認め、2016年1月より全脳照射開始と
なった。全脳照射開始2週間後に突然の腹痛の訴えがあり、汎
発性腹膜炎が疑われ当科紹介となった。腹部CTでは腹腔内free
airと胃穹窿部後面に50mm大の膿瘍を認め、消化管穿孔の診断
で緊急開腹洗浄ドレナージ術を施行した。術中所見では胃後面
に膿瘍形成を認め、漿膜面に明らかな穿孔は確認できず、排膿
ドレナージを行った。術中上部内視鏡を併用したが、残渣が多
いため穿孔部位を同定することができなかった。術後腹痛は軽
快し、食事開始後も腹痛の再増悪を認めなかった。術後17日目
に上部内視鏡検査で術中に残渣の影響で観察できなかった胃穹
窿部後壁に潰瘍をみとめ、同部位からの潰瘍穿通が考えられた。
穿孔径が小さく、消化液漏出が小範囲に限局したことで膿瘍形
成され、膿瘍増大に伴い被膜が損傷し、汎発性腹膜炎を発症し
たと考えられた。消化管穿孔は急激な発症を呈する場合が多い
が、慢性的経過をとる場合もあり、本症例のような消化管穿孔
リスクの高い症例においては重篤な合併症として注意する必要
がある。また、穿孔径が小さい場合は穿孔部位の検索に苦慮す
る場合があり、術中確認や術後管理には柔軟な対応が要求され
る。
7
社会福祉法人 三井記念病院
黒崎滋之,戸田信夫,船戸和義,川村 聡,前島秀哉,早田有希,
唐澤祐輝,伊藤大策,小島健太郎,大木隆正,関 道治,
田川一海
症例は58歳男性。2014年7月腹痛、嘔吐にて他院入院歴あり。
2014年11月同様の症状にて当院受診。血液検査上特記すべき所
見はみられなかったが、腹骨盤部CT検査にて胃の著明な拡張
を認めた。経鼻胃管の留置し症状改善後、上部消化管内視鏡検
査、レントゲン透視施行するも器質的病変は指摘されなかった。
食事も問題なく摂取可能となり一旦退院、しかし2016年3月ま
で同症状にて5回入退院を繰り返している。CT所見では胃の拡
張に加え大腸小腸の拡張も出現したが明らかな閉塞機序は認め
なかった。途中S状結腸軸捻転を発症、内視鏡的に整復後再発
予防としてS状結腸切除術を施行している。この時の切除検体
にてアミロイド沈着やMeissner、 Auerbach神経叢の萎縮はみら
れなかった。また血清学的にも神経学的にも自己免疫性疾患や
神経疾患などの腸管蠕動不全来たし得る基礎疾患指摘できな
かったため、慢性特発性腸偽閉塞症と診断。蠕動亢進薬、整腸
剤など投与しつつ症状発症時腸管減圧にて対応している。経過
中S状結腸軸捻転を併発した慢性特発性偽性腸閉塞症の一例を
経験したので報告した。
消化管穿孔,脳転移
6
胃癌によりpulmonary tumor thrombotic microangiopathy
( PTTM) を発症した1例
S状結腸軸捻転を併発した慢性特発性偽性腸閉塞症
の一例
慢性特発性偽性腸閉塞,S状結腸軸捻転
8
内視鏡的砕石術に対し抵抗性を示し、コーラ注入・
溶解療法にて治療し得た胃前庭部陥頓胃石の一例
日本医科大学 消化器内科学
池田 剛,河越哲郎,丸木雄太,飽本哲兵,山脇博士,小高康裕,
新福摩弓,名児耶浩幸,植木信江,辰口篤志,二神生爾,
岩切勝彦
東京都済生会中央病院 消化器内科
田沼浩太,三枝慶一郎,林 智康,小川 歩,西井まみか,
阿部善彦,星野 舞,岸野竜平,酒井 元,船越信介,中澤 敦,
塚田信廣
症例は48歳女性。2013年6月より胃癌に対し化学療法中であっ
た。2014年6月初旬より咳嗽出現し投薬を受けるも改善せず増
悪し呼吸困難著明となったため7月初旬に緊急入院した。入院
時意識は清明、HR128/ min、RR30/ min、SPO2 90%( room) と頻
脈、頻呼吸を認めた。検査データではplt5. 5×104 / μlと低値、
Dダイマー16. 2μg/ mlと高値でありDICを示した。胸部CTでは
両肺に斑状浸潤影をわずかに認め、瀰漫性に気管支壁肥厚、粒
状影を認め、造影CTでは明らかな下肢静脈、肺動脈血栓を認め
なかった。腹部CTでは腹腔内リンパ節の増大を認めた。心電
図は洞性頻脈で、心エコーでは肺動脈圧の上昇を認めた。胃癌
の状態がPDであったこと、急激な呼吸不全とDICの合併、肺高
血圧発症、また他に肺高血圧になる原因を認めなかったことよ
り、今 回 の 呼 吸 不 全 の 原 因 は pulmonary tumor thrombotic
microangiopathy( PTTM) と臨床的に診断した。入院後より、酸
素投与、利尿剤、トロンボモジュリン投与を開始したが呼吸不
全は増悪し、化学療法導入する間もなく入院3日目に永眠され
た。剖検では、両肺動脈末梢腫瘍栓を認め確定診断となった。
PTTMは単なる腫瘍塞栓ではなく、びまん性の肺動脈末梢の腫
瘍塞栓と、それに伴う局所での凝固亢進が惹起される病態であ
る。臨床的には生前に診断されることは稀で、亜急性から急性
の経過を取り、原因不明の低酸素血症と肺高血圧症を呈し、通
常発症後短期間で死に至る疾患であることが知られている。
PTTMの1例を経験したので報告する。
【症例】77歳、男性。【主訴】腹痛【現病歴】20XX年12月初旬よ
り腹部膨満感が出現、その後徐々に症状増悪認め腹痛が出現、
1月に入ると黒色便を認め嘔吐を繰り返すようになったために
当院外来受診、精査加療目的に入院となった。【既往歴】2型糖
尿病、本態性高血圧症【生活歴】飲酒:週に5日は2合/ 日【入院
後経過】腹部CTにて胃の著明な拡張、40×30×40mm、40×35
×60mmの占拠性物質を認め、幽門部通過障害が疑われた。第2
病日に上部消化管内視鏡実施したところ胃前庭部に巨大潰瘍、
胃体部に長径5-10センチ大の胃石を2個認め、胃石による通過
障害の診断となった。内視鏡的砕石を試みたが、門馬鉗子では
胃石が硬く把持が困難であった。第3病日に再度内視鏡実施し
局注針にてコーラを注入。コーラ500ml/ 日の経口摂取も開始
とした。第9病日に再度内視鏡実施したところ一方の胃石は軟
化しておりスネアにて砕石を行い可能な限り回収を行ったが、
他方は砕石出来なかった。コーラ溶解療法継続、第25病日に再
度内視鏡検査実施したところ胃石は消失しており、潰瘍も改善
していた。腹部レントゲンでも肛門側の閉塞は疑う所見はな
く、残存胃石は消失もしくは排出されたと考えられた。後日の
検査にて胃石の成分はタンニン98%以上であった。
【考察】胃
石は胃内の過酸状態や胃内容の排泄遅延が原因として生成され
ると言われており、主な合併症は胃潰瘍、腸閉塞である。近年、
胃石に対してコーラ溶解療法が有用であるという報告がある。
自験例も胃内胃石に対してまず内視鏡的破砕術を試みたが抵抗
性を示したため、コーラ注入・溶解療法を併用することで治療
が可能となった。
PTTM,胃癌
― 27 ―
胃石,局注
9
十二指腸粘膜下腫瘍上に発生した十二指腸癌に対し
て腹腔鏡内視鏡合同手術( LECS) を施行した1例
横浜市立みなと赤十字病院 外科1) ,同 病理診断科2)
中尾詠一1) ,小野秀高1) ,平井公也1) ,前橋 学1) ,藤原大樹1) ,
杉政奈津子1) ,中山岳龍1) ,大山倫男1) ,柿添 学1) ,中嶌雅之1) ,
馬場裕之1) ,阿部哲夫1) ,杉田光隆1) ,熊谷二郎2)
【はじめに】早期十二指腸癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術
( ESD) が行われるようになってきた。しかし、遅発性穿孔など
の偶発症の発症頻度が高い。この問題点に対して、今回、腹腔
鏡内視鏡合同手術( LECS) による十二指腸部分切除術にて安全
に切除可能であった十二指腸粘膜下腫瘍上に発生した十二指腸
癌の1例を経験したので報告する。【症例】60歳台、男性。貧血
精査目的で、当院消化器内科に紹介受診。上部消化管内視鏡検
査で十二指腸下行脚のfater乳頭対側に粘膜下腫瘍を、同部位の
中央に浅い陥凹部を認め、生検結果でAdenocarcinoma ( tub1) が
検出された。十二指腸粘膜下腫瘍上の十二指腸癌であり、全層
切除の必要性があると判断し、LECSを選択した。腹腔鏡下に
横行結腸と肝下面との癒着を剥離し、下大静脈が露出するまで、
Kocherの授動を置いた。病変部位を特定後、内視鏡下にESD手
技で腫瘍を切除した。次に、腹腔鏡下で全層切除を行い、縫合
は腹腔鏡下にAlbert-Lembert縫合で縫合閉鎖を行った。術後7日
目に上部消化管造影検査を行い、縫合不全と狭窄がないことを
確認し、飲水開始とした。術後8日目から食事を再開し、その後
も合併症を認めず術後12日目に退院となった。摘出検体の病理
学的診断は、脂肪腫であり、提出した検体の粘膜に腫瘍性病変
は認めなかった。【考察】LECSは十二指腸腫瘍に対して有用な
術式と考えられる。また、全身麻酔下での治療であり、ESDも
安定して施行可能であった。当日は動画を用いて同手技を供覧
する。
11
東京労災病院
吉峰尚幸,大場信之,小嶋啓之,小山洋平,武田悠希,平野直樹,
伊藤 謙,西中川秀太,児島辰也
症例は47歳、女性。30歳時に好酸球性胃腸炎を指摘され、プレ
ドニゾロン(PSL)投与が開始された。以後、寛解、増悪を繰り
返していたが、近年はPSL5mg/ 日の維持量で病状は安定してい
た。平成27年9月よりPSL5mgの隔日投与に減量したところ、3
週間後より心窩部痛が出現した。血液検査では白血球数7900/
μl(Eo28. 2%)と好酸球増多を認めたため、PSL5mg/ 日に戻し
心窩部痛は一旦、軽快した。しかし、その2週間後より再び腹部
膨満感、食欲不振が出現した。白血球数は26800/ μl(Eo28. 2%)
と増悪し膵酵素の上昇も認め入院となった。CT検査では前庭
部から十二指腸下行部の粘膜は浮腫状に肥厚していた。また、
膵は全体に腫大し、膵周囲の脂肪識の混濁、腎下極以遠に及ぶ
浸出液貯留を認め、CTgrade2相当の膵炎を併発したと考えられ
た。上部消化管内視鏡検査では十二指腸粘膜は軽度の浮腫状変
化を呈しており、組織診では好酸球の浸潤を認めた。入院後、
絶食、補液、抗生剤、蛋白分解酵素阻害剤投与による保存的治
療を開始し、水溶性PSL30mgの投与も併用した。その後、自覚
症状、検査所見は速やかに改善し、第6病日には食事を再開した。
第8病日には白血球数6100/ μl(Eo5. 0%)と基準値内に復し、
第17病日に退院となった。退院後もPSLは漸減され、現在は
5mg/ 日内服中であるが再燃なく経過は良好である。急性膵炎
を併発した好酸球性胃腸炎としては、十二指腸に潰瘍形成し膵
液流出を妨げたと考えられる症例や好酸球性膵炎を合併した症
例などの報告がある。本症例もアルコール歴や胆管結石はなく
機序は不明であるが、好酸球性胃腸炎の増悪が膵炎の発症に関
与したと考えられた。長期経過中に急性膵炎を併発した好酸球
性胃腸炎の稀な1例を経験したので報告する。
LECS,十二指腸癌
10
nab-PTX療法でCRが得られた胃癌術後リンパ節再
発の2例
埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科
坂本眞之介,福地 稔,小倉俊郎,石畝 亨,持木彫人,
石田秀行
【目的】切除不能進行・再発胃癌に対する2次治療として国内第
II 相 試 験 ( J-0200) か ら ア ル ブ ミ ン 懸 濁 型 パ ク リ タ キ セ ル
( nab-PTX) の有効性や認容性は従来のPTXと同等であると報告
されている。同報告で奏効率は25. 9%でありCRを1/ 57例( 2%)
認めているが、実地臨床での胃癌に対するnab-PTXの治療成績
に関する報告は少ない。今回、当科におけるnab-PTX療法でCR
が得られた胃癌術後リンパ節再発の2例を経験したので報告す
る。【症例1】症例は74歳男性。胃癌で幽門側胃切除術を施行し
病理学的進行度はpT4aN3aCY1P0H0M0-pStage IVであった。標
的病変はなく術後補助療法としてS-1療法を行うが、アレル
ギー反応のためUFT療法に変更した。術後約6ヶ月のCT検査で
大 動 脈 周 囲 リ ン パ 節 ( 16a2) の 腫 脹 を 認 め 転 移 と 診 断 し た。
nab-PTX療法を導入し、4コース後に腫瘍マーカー( CEA) は正
常化、CT検査で16a2の腫脹は消失しCR inと判定した。有害事
象としてGrade3の好中球減少症とGrade2の末梢神経障害を認め
た。現在、CRを約10ヶ月間維持している。【症例2】症例は61歳
女性。胃癌の治療前進行度はcT4aN3P0H0M1( 6a2) -cStage IVで
あり、一次治療としてS-1/ CDDP療法を選択した。3コース後の
CT検査で16a2の腫脹は消失し、幽門側胃切除術を施行したが
16a2は切除不能( R2手術) であった。術後S-1/ CDDP療法を1
コース施行するが、CT検査で16a2の腫脹は増大し、nab-PTX療
法を導入した。8コース後に腫瘍マーカー( CEA) は正常化、12
コース後にCT検査で16a2の腫脹は消失しCR inと判定した。有
害事象としてGrade2の末梢神経障害を認めた。現在、CRを約
4 ヶ 月 間 維 持 し て い る。
【考 察】少 数 例 の 検 討 で は あ る が、
nab-PTX 療法は胃癌再発の2次治療として有効な選択肢となり
得ることが示唆された。nab-PTXの有害事象において末梢神経
障害の頻度は高く導入早期からのマネージメントが必要である
と考えられた。
急性増悪時に膵炎を併発した好酸球性腸炎の1例
好酸球性腸炎,膵炎
12
大腸全摘術後に胃癌に対する胃全摘術を施行した家
族性大腸腺腫症の一例
千葉大学大学院医学研究院 先端応用外科学1) ,
千葉大学 フロンティア医工学センター2)
龍崎貴寛1) ,羽成直行1) ,郡司 久1) ,早野康一1) ,加野将之1) ,
林 秀樹1, 2) ,松原久裕1)
【はじめに】家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘後に胃癌
に対する胃全摘術を必要とした症例を経験したので報告する。
【症例】62歳男性。2012年58歳時に下痢を主訴に近医受診し、当科
にてFAPと診断された。大腸全体に認める多発ポリープの一部に
癌化が疑われ、2013年2月に腹腔鏡補助下大腸全摘術を行った。
2013年10月に施行された上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に早期
癌0-IIc病変を2箇所指摘されたため、内視鏡下粘膜下層剥離術を
行ったところ、0-IIbないしIIc、径3〜12mmの不規則不連続な6病変
が明らかとなった。いずれも治癒切除と判断されたため経過観察
としたが、2014年11月の内視鏡検査で再度噴門部に0-IIc病変(深
達度M)、胃角直上に0-IIc病変(深達度SM2)を認めたため、胃全摘
手術の方針とした。2015年1月に腹腔鏡下胃全摘手術及びD1+リン
パ節郭清を施行したが、術前の内視鏡検査にて十二指腸に多発す
るポリープを認めていたためダブルトラクト再建とした。【結果】
術後は特に合併症を認めず第16病日に退院となった。体重は胃癌
手術前の62kgから1年後に44kgと著明に減少し、食後の腹痛を度々
訴えたものの、術後1年4ヶ月の現在、投薬により食事摂取・体重と
もに安定し、十二指腸に新規病変を認めることもなく安定した経
過を得ている。【考察】本症例のようにFAPの既往があり十二指腸
に病変を有する患者においては胃全摘後も十二指腸の定期的な観
察が必要となる。ダブルトラクト再建は技術的にも困難はなく、
術後の十二指腸観察にも問題は指摘されなかったことから、この
ような背景を有する症例に対しては有用な術式であると考えられ
る。また、大腸全摘後に胃全摘を加えることによる消化管機能的・
栄養学的問題が懸念されたが、やはり胃癌胃全摘後の平均的なレ
ベルを大きく上回る体重減少を認め、繰り返す食後の腹痛を認め
た。安定した状態を得るのに比較的長期を要したことから、可能
な限り胃切除範囲は縮小することが望まれるものと考えられた。
胃癌,アルブミン懸濁型パクリタキセル
― 28 ―
胃全摘,大腸全摘
13
腸管粘膜生検が治療方針決定に有用であったシェー
ンライン−ヘノッホ紫斑病の一例
上都賀総合病院 内科
古田友美,海宝雄太,近藤裕子,永澤潤哉,花岡亮輔,
吉住博明
【症例】40歳,男性.【現病歴】腹痛,紫斑,四肢浮腫,関節痛
のため近医より当院を紹介受診し,症状からシェーンライン−
ヘノッホ紫斑病( 以下SHP) が疑われた.外来での対症療法にて
一時は症状自然軽快し紫斑も消失していたが,数日後,腹痛,
嘔吐にて当院救急外来受診し,精査加療のため入院となった.
【既往歴】腹膜炎合併虫垂炎【検査所見】WBC 10, 400 / μl,Hb
15. 9 g/ dl,CRP 7. 38 mg/ dl,ASO 6 IU/ ml,IgA 275 mg/ dl,第13
因子活性 25 %【経過】入院直後,腹痛嘔吐精査のため上部消化
管内視鏡検査を施行し,十二指腸下行脚以遠に潰瘍瘢痕様の所
見と血豆様の発赤所見を認めた.生検では非特異的活動性炎症
所見のみであった.内視鏡像はSHPによる消化管虚血に矛盾し
ない所見と判断し,prednisolone0. 7mg/ kg/ 日を開始した.腹痛
はやや軽快するも,下血が出現したため下部消化管内視鏡検査
を施行し,回腸末端の輪状潰瘍を認めた.同部位からの生検に
て血管壁の顆粒球浸潤,赤血球漏出像,fibrinoid necrosis等SHP
に特徴的な病理組織学的所見を認めた.その後,第13因子補充
療法とmethylprednisoloneパルス療法を施行し,経時的に症状改
善を認め退院した.【考察】SHPは明確な原因は不明であるが
IgAの関与する免疫複合体により全身性の小血管炎を来たす疾
患である.本疾患は通常,紫斑部からの皮膚生検にて血管壁へ
の顆粒球浸潤を確認することで病理診断を得ることが多い.本
症例は入院時に紫斑が消褪していたため,皮膚生検未施行で
あったが,消化器症状出現時に積極的に内視鏡検査を行い,病
変部からの生検にてSHPに特徴的な病理所見を確認できた.
【結語】腸管粘膜生検にて特徴的な病理組織像を呈し,治療方針
決定に有用であったシェーンライン−ヘノッホ紫斑病の一例を
報告する.
15
済生会横浜市南部病院 消化器内科1) ,同 外科2) ,
けいゆう病院 消化器内科3)
中森義典1) ,所知加子1) ,三村秀樹1) ,張 優美1) ,近藤新平1) ,
金田義弘1) ,三箇克幸1) ,林 公博1) ,稲垣尚子1) ,山田英司1) ,
渡邉誠太郎1) ,京 里佳1) ,菱木 智1) ,川名一朗1) ,澁谷泰介2) ,
福島忠男2) ,岡田直也3)
症例は50歳女性。黒色便を主訴に近医を受診し、腹部造影CT
で回腸に造影剤の漏出があり小腸出血と診断された。血管造影
にて回腸動脈からの出血を認めたためゼラチン塞栓術を施行
し、一旦は止血されたが食事再開後再度出血があり、小腸精査
目的で当院受診となった。カプセル内視鏡を施行したところ小
腸に粘膜下腫瘍様隆起があり、その頂部から活動性出血を認め
た。経口小腸内視鏡を施行するも出血点まで到達できず、経肛
門小腸内視鏡を施行した。回腸に一部潰瘍化しコアグラが付着
した粘膜下腫瘍様隆起を認め、カプセル内視鏡で指摘されてい
た病変と思われた。観察時には活動性出血は認めなかったため
クリップと点墨でマーキングを行い、後日、止血と診断目的に
腹腔鏡下小腸部分切除を施行した。病理組織学的に動静脈奇形
と診断した。今回、小腸内視鏡検査により病変が同定され、術
前にマーキングが施行できた小腸動静脈奇形の1例を経験した。
小腸出血性病変において、術前の小腸内視鏡検査は、術中の病
変確認や切除範囲の決定に有用だと思われる。
シェーンライン−ヘノッホ紫斑病,腸管粘膜生検
14
家族性高コレステロール血症を併存し診断に苦慮し
た小腸虚血の1例
日本医科大学 消化器外科
増田有香,清水哲也,吉岡正人,高田英志,近藤亮太,川島万平,
青木悠人,山田岳史,内田英二
【はじめに】家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia,
以下FH) は,LDL受容体関連遺伝子変異による優性遺伝病であり,高
LDLコレステロール血症,皮膚または腱黄色腫,若年性動脈硬化によ
る冠動脈疾患を特徴とする. FHと腸管血流との関連性を示唆する論
文はないが,今回FHによる動脈硬化が原因と考えられる小腸虚血を経
験したので報告する.【症例】60代女性.突然の腹痛,嘔吐,下痢を主
訴に前医へ救急搬送され,憩室炎が疑われたが,腹痛コントロールつ
かず当科へ転院搬送となった.既往歴としては心房細動,高血圧や糖
尿病,脂質異常症があり,入院時の精査では加療後LDLが258と高値,
腱黄色腫を認め,FHと診断された.またFHによる大動脈弁狭窄症,慢
性心不全を併存していた.来院時に右下腹部の間欠的な腹痛があった
が腹膜刺激症状なく,血液生化学的検査では軽度の炎症反応の上昇の
みであり,代謝性アシドーシスを含め腸管虚血を疑う所見を認めな
かった.入院翌日に腹痛が増悪し腹膜刺激症状も出現したため,腹部
造影CTを施行し小腸に腸管虚血を呈していたため,緊急手術を行っ
た.小腸に分節状の色調不良を認め,壊死した小腸約160cmを可及的
に部分切除した.同時に腸管吻合や閉創はせず,open abdomenにて
集中管理を行った.術後1日目にsecond look operationを行い,他に腸管
虚血を呈している腸管がないことを確認し,腸管吻合と閉創を行った.
しかし術後19日目に再度右下腹部痛出現し,造影CTにて吻合部肛門側
に限局性の小腸虚血所見を疑われ緊急手術を施行した.吻合部を含む
回盲部切除を行った.初回手術から第27日目にドレーン排液が腸液様
となったため,同日開腹ドレナージを行い,縫合不全あり小腸ストー
マを造設した. 2回の腸管切除における病理検査では,ともに腸管に
壊死を認めたが,腸間膜血管に明らかな血栓を認めなかった.その後
の経過は良好であり,近日退院予定である.【結語】今回我々家族性高
コレステロール血症を併存し診断に苦慮した小腸虚血の1例を経験し
たので報告する.
術前に小腸内視鏡で同定しえた回腸動静脈奇形の
一例
小腸動静脈奇形,小腸内視鏡
16
急速に増大した小腸間膜原発デスモイド腫瘍の1例
東京女子医科大学病院 消化器外科
長野栄理香,大木岳志,井上雄志,中川了輔,前田
山本雅一
文,
【はじめに】腹腔内デスモイド腫瘍は稀な疾患である。今回、小
腸間膜由来のデスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する。
【症例】78歳男性【主訴】腹痛、背部痛、腹部膨満感【既往歴】
約36年前に十二指腸潰瘍に対して幽門側胃切除( B-I法) 、脂質
異常症【現病歴】脂質異常症に対して前医かかりつけであった。
定期受診の際に約1ヶ月継続する上記症状について相談し、腹
部超音波検査及び腹部CTを施行され、腹腔内腫瘍を認めたた
め精査加療目的に当院当科紹介受診となった。【治療経過】腫
瘤は、腹壁から硬く触知され、可動性良好であった。CTでは、
大きさは9. 5cm、辺縁は平滑で造影効果があり、内部が低吸収
域の腫瘤を認めた。MRIでは、T1強調像で辺縁に一部低信号を
認め、T2強調像で大部分が不均一な低信号、一部軽度高信号を
呈していた。腫瘍は短期間での増大があり、悪性を否定できな
かったため、FDG-PETを施行したところ腫瘤への集積を認め
た。以上より、鑑別診断としてデスモイド腫瘍や肉腫、孤立性
線維性腫瘍を考え、手術の方針となった。術中所見では、腫瘍
は小腸間膜由来であったため腫瘍摘出術及び小腸部分切除術を
施行した。摘出標本は、赤色、弾性硬、小腸の一部が腫瘍内に
落 ち 込 ん で い た。組 織 学 的 に は デ ス モ イ ド 腫 瘍 で あ り、
Vimentin( +) 、αSMA( 一部陽性) であった。以上の結果から、
本症例は腸間膜線維腺腫、デスモイド型と診断された。術後経
過は良好であり、術後9日目で退院した。現在も再発は認めて
いない。【まとめ】小腸間膜由来のデスモイド腫瘍の報告は稀
であるため、若干の文献学的考察を加えて報告する。
家族性高コレステロール血症,小腸虚血
― 29 ―
デスモイド腫瘍,腸間膜
17
盲腸癌による成人腸重積症に対し腹腔鏡補助下手術
を施行した1例
19
内科的治療により除去しえた,直腸巨大糞石の一例
大森赤十字病院 外科1) ,同 検査部2)
尾崎公輔1) ,佐々木愼1) ,西田由衣1) ,寺井恵美1) ,森園剛樹1) ,
金子 学1) ,中山 洋1) ,渡辺俊之1) ,坂本穆彦2)
横浜市立大学医学部 消化器内科学
杉森 慎,三輪治生,石井泰明,佐藤 健,金子裕明,須江聡一郎,
亀田英里,佐々木智彦,田村寿英,芝田 渉,近藤正晃,
前田 愼
症例は39歳男性。2015年12月動けないほどの腹痛を自覚。経過
観察にて一時軽快したが、5日後に再度下腹部痛の出現を認め
たため近医を受診。回盲部腸重積症の診断で、同日当院に転院
搬送となった。来院時腹痛は軽度、採血にて炎症値含め異常所
見を認めず、再度当院にて施行した造影CT検査にて回盲部腸
重積は認めるが、血流障害を示唆する所見がないことから、翌
日、待機的に腹腔鏡下腸重積解除術を行う方針とした。腹腔鏡
にて腹腔内を観察すると、病変部は盲腸が上行結腸内に陥入し
ている所見であった。Hutchinson手技の要領で腹腔鏡下に腸重
積を解除。改めて病変部を確認すると、先進部盲腸の一部が固
く、その漿膜が白色調に変化していることから、悪性腫瘍の可
能性を考え、リンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した。術
後の病理検体では、盲腸に4×3. 7cm の1/ 4周性2型進行癌を認
め、病理組織検査より、盲腸癌( tub2) pT3N0M0 Stage2と診断し
た。術後経過良好で、現在外来にて定期フォローとしている。
腸重積症は乳幼児に多い疾患で、成人腸重積は5〜10%と比較
的稀な疾患である。成人腸重積の原因として、器質的病変を有
するものが多く、大腸癌による腸重積が最も多い。また、高齢
女性に多く、部位は盲腸やS状結腸に好発し、肉眼型では隆起
型が多いとされている。乳幼児腸重積では、血流障害を伴うこ
とが多く、緊急整復が必要となる。しかし、成人腸重積の場合
は、慢性の経過をたどることも多いと報告されており、臨床症
状によっては必ずしも緊急手術を行う必要はない。また、成人
腸重積の原因として、大腸癌が最も多いことから、本症例のよ
うな若年であっても、癌の可能性を念頭に入れる必要があると
考える。近年は本症例と同様、腹腔鏡下での成人腸重積手術報
告例も散見される。
【症例】31歳,女性【現病歴】乳児期に近医にて肛門形成術施行.
幼少期より便性は水様であり,固形便の排出は認めなかった.
2014年12月下腹部膨満感を主訴に近医を受診.直腸に巨大糞石を
認め,精査加療目的に当院外科を紹介受診となった.腹部造影CT
では,直腸からS状結腸にかけて,長径18cm,幅12cmに及ぶ便塊の
貯留を認め,子宮は拡張した直腸により骨盤右側に偏位していた.
直腸診では,肛門縁より4cmの位置に膜様構造物による狭窄を認め
た.巨大糞石と診断されたが,外科的な摘出は困難と考えられた
ため,2015年1月当科紹介受診となった.腸閉塞症状は認めないた
め,緩下剤の投与にて経過観察としたが,3ヶ月後にCTを再検した
ところ,糞石の縮小は認めなかった.患者は挙児希望があり,糞
石の残存が妊娠継続,出産の障害になると考えられたため,内科
的に除去する方針となった.同年4月大腸内視鏡検査施行.下部
直腸は著明に拡張し,巨大糞石により充満していた.把持鉗子を
用いて糞石の破砕を試みたが,硬い外殻に覆われ,内部は粘土状
であり,効果的な摘出が困難であった.6月1日から5日にかけて,
入院の上,計3回の大腸内視鏡検査を施行.把持鉗子,五脚鉗子に
よる破砕を行ったところ,CTで糞石の縮小を認めた.また,内視
鏡検査時にオリーブ油を散布した所,糞石の軟化を認めたため,
オリーブ油の自己注腸を指導した.その後も把持鉗子,スネア,
バスケット鉗子などを用いた内視鏡的破砕術に加えて用指的な破
砕を繰り返し施行した所,同年9月に計13回目の大腸内視鏡検査に
て糞石の完全摘出に成功した.なお,糞石形成の原因として,後
日施行した外科的直腸生検では,Hirschsprung病は否定的であり,
乳児期の手術に伴う器質的な肛門狭窄が原因と考えられた.治療
後,緩下剤の投与を継続しているが,有形便の排出を認め,糞石の
再形成は見られていない.【考察】10cmを超える巨大糞石の報告は
極めて稀であり,内科的治療により除去しえた症例を経験したた
め,若干の文献的考察を加えて報告する.
糞石,大腸内視鏡
成人腸重積症,盲腸癌
18
横行結腸脂肪腫を先進部とした腸重積症に対して単
孔式腹腔鏡下腫瘤核出術を施行した一例
藤沢市民病院 外科
田中淑恵,山岸 茂,中堤啓太,中本礼良,清水康博,本庄優衣,
森 康一,鈴木紳祐,山本晋也,牧野洋知,上田倫夫,
仲野 明
腸重積を伴う大腸脂肪腫は外科的手術が必要となる.今回我々は,大
腸脂肪腫を先進部とした腸重積症に対して,単孔式腹腔鏡下脂肪腫核
出術を施行したので報告する.症例は38歳,女性.間欠的下腹部痛を
主訴に当院を受診した.造影CT検査で下行結腸に11×4×4cmの内部
が均一な脂肪濃度の腫瘤が陥入し,腸管重積を示唆する同心円状所見
(target sign)を認めた.腫瘤は有茎性で左側横行結腸を起始部として
おり,茎の内部には造影される栄養血管を認め,腸管虚血の所見はな
かった.栄養血管は,分岐形態から中結腸動脈左枝と判断した.診察
時には下腹部痛は消失していたが,腸重積症の診断で精査目的に入院
となった.横行結腸を起始部とした結腸脂肪腫による腸重積の診断で
待機手術の方針とした.術前検査で良性疾患と判断したため,単孔式
腹腔鏡下横行結腸脂肪腫核出術を行う方針とし,術前に大腸内視鏡で
脂肪腫の起始部に点墨マーキングを施行した.術中所見では,腫瘤は
下行結腸まで重積していたが,術中に腸管虚血は認めず,鏡視下に左
側横行結腸・脾弯曲部を授動し,臍部創から腸管を体腔外に導出した.
横行結腸の茎起始部においた点墨と対側の腸管に小切開を置き,
Hutchinson手技で腫瘤を摘出し,茎起始部を結紮切離した.腸管の切
開部はLayer-to-layerで縫合閉鎖した.術前に脂肪腫の起始部に点墨
マーキングを施行し,術中に起始部を正確に同定することで核出術が
施行可能となり,侵襲を最小限にする事ができた.術後経過は良好で,
術後7日目に退院した.術後の病理学的検査所見は、脂肪腫の診断で
悪性所見は認めなかった.【結語】大腸脂肪腫は腫瘤径が3. 0cmを超え
広基性のもの,腸重積を認めるもの,悪性所見を認めるものは腸管切
除の適応とされている.大腸良性疾患に対する単孔式腹腔鏡下手術
は、整容性に優れ,低侵襲であることから良い適応である.さらに術
前に良性疾患と判断し,十分な病態把握を行い,腸管の虚血所見がな
ければ,待機的脂肪腫核出術は大腸脂肪腫の術式選択肢の一つになる
と考えられた.
20
進行直腸癌に対する周術期化学療法で病理学的完全
奏効を得られた一例
NTT 関東病院
鳥谷建一郎,渡邉一輝,田
里舘 均,奈良智之,古嶋
鍾寛,長田梨比人,長尾厚樹,
薫,針原 康
術前化学療法により病理学的完全奏効を得られた一例を経験し
たため報告する。症例は62歳男性. 主訴は便秘と体重減少で
あった. 2015年2月頃より便秘を自覚し, 2015年夏までに7kgの体
重減少認めたため, 下部消化管内視鏡検査を施行したところ進
行 直 腸 癌 を 認 め た. そ の 後 の 精 査 で 直 腸 癌 RaRSRb Ant
cT3N2H0P0M0 cStage3bの診断となり術前化学療法を施行した.
当院での術前化学療法の適応はリンパ節転移を有するRaRbの
直腸癌で充分な説明を行いmFOLFOX6を術前に6コース, 術後
に6コース施行している. 化学療法としてmFOLFOX6療法を
2015年10月から2016年1月にかけて6コースを施行したところ,
病変が縮小, 瘢痕化していたため, 2016年2月に腹腔鏡下低位前
方切除術(D3郭清)+回腸人工肛門造設術を行った. 病理組織学
的検査では切除標本に癌細胞の遺残は認めず, 病理学的完全奏
効と判定された. 術後は合併症なく第10病日に退院された. 術後
に抗癌剤治療を継続している. 本邦では手術によって生存率, 局
所再発率ともに良好な成績が報告されており手術による完全切
除が標準治療とされてきたが, 化学療法の著しい進歩に伴い周
術期化学療法を見直すことも考慮する必要がある. 術前と術後
にサンドイッチ式に化学療法を行うことで従来の術後補助化学
療法と比較し( 1) 腫瘍を縮小させることで手術侵襲を少なくで
きる, ( 2) 術前の全身状態が良い状態で化学療法を早い段階から
施行することでDose intensityを保てる,( 3) 抗がん剤の効果判定
から術後の補助化学療法を検討できる, などの利点がある. 今
後直腸癌に対する術前化学療法の有用性の確立のため大規模臨
床試験が行われることを期待する.
脂肪腫,単孔式腹腔鏡手術
― 30 ―
直腸癌,病理学的完全奏効
21
23
NASH肝硬変にA型急性肝炎を合併した一例
杏林大学医学部 第 3 内科1) ,同 病理学教室2)
清水孝夫1) ,奥山秀平1) ,八谷隆仁1) ,権藤興一1) ,關 里和1) ,
塚田幾太郎1) ,佐藤悦久1) ,川村直弘1) ,西川かおり1) ,森 秀明1) ,
久松理一1) ,高橋信一1) ,望月 眞2)
【症例】50歳代、男性【主訴】発熱、全身倦怠感【現病歴】8月上旬
より全身倦怠感と褐色尿を認めていた。8月25日より40℃台の高
熱が出現し、翌日に近医を受診し抗生剤等の処方を受けた。8月27
日より白色便が出現し、症状改善しないため8月31日に紹介元を受
診。同院での血液検査でAST 4870 U/ I、ALT 4508 IU/ I、γGTP 875
IU/ L 、T-bil. 5. 9 mg/ dlと肝障害を指摘され、急性肝炎の疑いで当
院へ緊急入院となった。【経過】入院後は自然経過でAST、ALT、
PTは改善を認めた。黄疸は遷延したがピークアウトを認めたため
退院とした。退院後の初回外来では著明な腹水貯留、低アルブミ
ン血症の進行、肝性口臭を認めた。利尿剤(フロセミド20mg/ day、
スピロノラクトン50mg/ day)、BCAA製剤(BCAA顆粒3包/ day)で
加療を行い腹水、高アンモニア血症は速やかに改善を認めた。
元々、A型急性肝炎は軽快傾向でありそれ以外の要素が関連してい
ると判断し、精査のため腹腔鏡下肝生検を施行した。腹腔鏡での
肝表面所見は結節肝、病理所見では脂肪性肝炎による肝硬変で
あった。BMI30kg/ m2と肥満でありアルコール摂取歴がないこと
からNASHによる肝硬変と診断した。【考察】A型急性肝炎の入院
中に肝硬変が存在することを判断できなかった理由として、脾腫
はウイルス感染でも認めること、NASH肝硬変では血小板数が比較
的保たれていることが挙げられる。本邦におけるNAFLD患者は
1000万人、NASH患者数は約200万人と推定され、今後は更に増加
すると考えられる。しかしその多くが確定診断されておらず、診
断された時にすでに肝硬変まで進展している症例も少なくない。
一方で近年の本邦ではA型急性肝炎は稀な疾患であり、本症例のよ
うに急性肝炎から肝不全の病態を呈する症例が増加するおそれが
ある。NASHのリスクファクターを有する患者が急性肝炎を発症
した際には、背景肝にNASHが存在することを念頭に診療するべき
である。
自治医科大学 消化器・肝臓内科1) ,同 消化器外科2) ,
同 病理診断学3)
佐藤直人1) ,高岡良成1) ,廣澤拓也1) ,村山 梢1) ,津久井舞未子1) ,
森本直樹1) ,礒田憲夫1) ,山本博徳1) ,佐久間康成2) ,福島敬宜3)
【症例】40歳、男性【主訴】肝腫瘤精査【現病歴】2014年6月の人間
ドックでの腹部超音波検査で肝右葉下端に35mm大の肝腫瘤を指
摘され、精査目的に当院紹介となった。【既往歴】3歳、右下肢骨折
【内服歴】なし【家族歴】特記すべきことなし【生活歴】喫煙:5本
/ 日、飲酒:アルコール60g/ day 【現症】身長 167cm、体重 62kg、
BMI 22. 2【検査所見】AFP 3 ng/ ml,PIVKA 12 / ml,CEA 1. 4 ng/ ml,
CA19-9 4 U/ ml,HBs-Ag(-),HCV-Ab(-)
【画像所見】腹部超音
波検査:肝右葉尾側に39×30mm大の境界明瞭な低エコー腫瘤を認
め、カラードプラー法で内部に血流を一部認めた。CT検査:腫瘤
部位は単純で低吸収域、造影では早期相で増強効果あり、内部に
一部楔状の低吸収域を認めた。後期相で肝実質と同程度の増強効
果を示していた。MRI検査:腫瘤部位はT1強調像、T2強調像で肝
実質と同様で、Chemical shift imagingではin phase/ out of phaseの変
化は認めなかった。EOB-MRIで腫瘤は早期濃染、肝細胞相で増強
効果は残存しており、内部に線状の低信号域を認めた。【経過】画
像検査では肝多血性腫瘍でFNHが考えられたが、鑑別として悪性
疾患も否定できなかった。出血のリスクがあることや肝生検が困
難であり、本人が外科的治療を希望され、2014年10月腹腔鏡下肝
部分切除術施行した。術後は有害な合併症はなく、術後6日目に退
院となった。【切除標本肉眼所見】境界比較的明瞭の3. 1×3×2.
5cm大の多結節状の腫瘤で割面は一部に白色の線維化を伴う黄褐
色調の結節性病変であった。【病理組織所見】線維性隔壁により不
規則に分画されて配列の乱れた肝細胞索が見られ、肝細胞には細
胞異型性は認めなかった。線維性間質にはリンパ球浸潤、細胆管
の増生や異常な筋性血管を認め、FNHと診断した。【考察】FNHは
画像上、中心瘢痕や車軸様血管が特徴的所見とされているが、
HCCでも指摘されることがあり、鑑別が困難なこともある。今回
EOB-MRI検査が有用であった症例を経験したので報告する。
NASH,A型急性肝炎
22
HCV抗体価とHCV-RNAの経時的変化を観察しえた
一例
腹腔鏡下肝切除を施行した肝外に突出した限局性結
節性過形成の1例
FNH,腹腔鏡下肝切除
24
異所性静脈瘤に対しinterventional radiologyによる治
療が有効であった3例
横浜市立大学 肝胆膵消化器病学
栗田裕介,小林孝輔,留野 渉,今城健人,馬渡宏典,藤田浩司,
米田正人,中島 淳,斉藤 聡
柏市立柏病院 消化器内科
志水太郎,遠藤 南,佐藤綾子,大野智里,飯塚和絵,沼田真理子,
望月奈穂子,酒井英樹
【症例】62歳男性.肝炎発症4ヶ月前に右膝人工関節置換術後感
染を起こし手術となった.その後,再度右膝の感染を発症し再
手術を受けたが,術後の血液検査で肝機能障害を認めた. 人工
関節固定用セメントに混入している抗菌薬(バンコマイシン・
ミノマイシン)徐放剤による薬剤性肝障害が疑われた.前医に
て肝障害の増悪傾向を認めたためメチルプレドニゾロン500 mg
よりパルス療法を開始されたが,その後の血液検査でもPT46.
7%と延長を認めたため劇症化の恐れもあり, 肝移植を考慮す
るため当院転院となった.転院後にステロイドパルス療法を継
続したが,黄疸の悪化を認めた. 除法剤による薬剤性感障害の
遷延を疑っていたが,入院時のHCV抗体が軽度陽転化していた
ためHCV-RNAを測定したところ7. 8LOGIU/ mlと高値であり,
C型急性肝炎と診断した.HCVコアジェノタイプは1b型であっ
た.抗ウイルス治療としてPeg-IFNα-2aを180μg開始した.
倦怠感や食思不振が強く副作用と考えられ, Peg-IFNは計4回投
与で終了とした.その後全身状態は改善したため退院となっ
た.前医では自己血輸血であったため保存血を検査したとこ
ろ,肝炎発症4ヶ月前にはHCVは陰性であったが,肝炎は発症
直前の血液からHCV-RNAが検出されていた.今回, HCV抗体
価とHCV-RNAの経時的変化を詳細に観察しえた貴重な症例を
経験したので文献的考察をあわせて報告する.
【症例1】80歳、女性。特発性門脈圧亢進症を背景とする直腸静
脈瘤破裂に対し2014年6月に内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を施
行した。2014年11月に再破裂し、2回目のEVLを行った。2016
年1月に再々破裂し3回目のEVLを施行して一次止血を得たが、
再発を繰り返しており経皮経肝門脈塞栓術(PTO)の適応と考
えられた。造影CTで下腸間膜静脈を供血路とする直腸静脈瘤
の発達があり、エコーガイド下に拡張した傍臍静脈を穿刺して
門脈にアプローチし、下腸間膜静脈に対しモノエタノールアミ
ンオレイン酸塩、シアノアクリレート、金属コイルを併用した
塞栓術を施行し、現在まで再発を認めていない。【症例2】49歳、
女性。アルコール性肝硬変、食道静脈瘤で経過観察中に血便を
来たし他院に入院した。十二指腸静脈瘤破裂の診断となりEVL
で一次止血後に当科転院となった。造影CTで十二指腸静脈瘤
の残存を認め、左腎静脈への排血路からアプローチしてバルー
ン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行し、軽快した。【症
例3】52歳、男性。B型肝硬変、肝細胞癌、食道静脈瘤の経過観
察中に肝性脳症を来たし入院した。CT上門脈体循環シャント
の発達が著しく、上部消化管内視鏡検査でF2の十二指腸静脈瘤
を認めた。活動性出血はなかったが出血リスクを考慮し、下大
静脈への排血路からアプローチしてB-RTOを施行し、軽快し
た。【考察】EVL後に再発を繰り返す直腸静脈瘤に対しPTOが
有効であった1例、十二指腸静脈瘤に対しB-RTOが有効であっ
た2例を経験した。内視鏡的治療が困難な異所性静脈瘤では
interventional radiologyによる治療が有効と考えられ、文献的考
察を加えて報告する。
C型急性肝炎,HCV抗体価
― 31 ―
異所性静脈瘤,IVR
25
肝機能障害を契機に発見された多臓器不全をきたし
た急性心不全の一例
日本大学医学部 内科学系 消化器肝臓内科1) ,
同 病理学講座2)
大木庸子1) ,高橋利実1) ,菊田大一郎1) ,増田あい1) ,渡邊幸信1) ,
中河原浩史1) ,山本敏樹1) ,今武和弘1) ,小川眞広1) ,松岡俊一1) ,
後藤田卓志1) ,森山光彦1) ,絹川典子2)
【症例】60代男性。【主訴】食欲不振、嘔吐、下痢。【現病歴】大量
飲酒後に食欲不振、頻回の嘔吐と下痢が出現し、前医に救急搬送
となった。前医の血液検査でAST4457U/ L、ALT1257U/ L、PT%29%
と肝機能障害がみられ、急性肝不全の診断で入院となった。入院
後に補液での加療を開始したが、腎機能障害を呈してきたため、
高次医療機関での治療が望ましいとされ、当院に転院となった。
転院時の血液検査で肝機能障害、高度の腎機能障害もみられたた
め、血漿交換を含めた集中治療が必要と判断され、救急救命科に
転科となった。【嗜好】喫煙歴:40本/ 日、飲酒歴:エタノール
100ml/ 毎日【経過】入院時の胸部レントゲンで心拡大、肺門部の
うっ血、心臓超音波検査では左室駆出率の著明な低下が見られ、
腹部超音波検査、腹部CTでは肝臓には軽度の脂肪性変化が認めら
れるのみであった。画像検査の結果より急性心不全の診断とな
り、肝機能障害の原因はうっ血肝やショック肝が疑われた。心不
全の治療と並行して、肝機能障害に対しては補充療法などを行い、
ALTの値は徐々に改善が得られたものの、心不全は悪化傾向とな
り血圧の維持も困難となったため、カテコラミンの持続投与を
行った。心不全に対して経皮的心肺補助法の導入も検討したがご
本人が希望されなかったため、点滴での加療を継続したが反応乏
しく、永眠された。入院後に行った肝機能障害の原因精査では各
種ウイルス等は陰性であり、心不全に伴ううっ血肝などが疑われ、
剖検でも同様の所見が得られた。【考察】循環不全による虚血性肝
炎やうっ血肝が肝機能障害を引き起こすことがあり、うっ血肝の
場合、肝機能障害の程度は、心不全の重症度と比例するといわれ
ており、今回の症例では、重症のうっ血性心不全によって高度の
肝機能障害がひきおこされたと考えられた。比較的まれな症例で
あり、文献的考察を含めて発表する。
27
埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科1) ,
同 教職員・学生健康推進センター2)
友利勇大1) ,中山伸朗1) ,浅見真衣子1) ,斎藤陽一1) ,渕上 彰1) ,
鷹野雅史1) ,塩川慶典1) ,内田義人1) ,藤井庸平1) ,平原和紀1) ,
打矢 紘1) ,中澤 学1) ,近山 琢1) ,安藤さつき1) ,中尾将光1) ,
本谷大介1) ,菅原通子1) ,稲生実枝1) ,今井幸紀1) ,富谷智明2) ,
持田 智1)
ソフォスブビル(SOF)の有害事象で不整脈が注目されているが,実臨床での
実態は明らかでない。市販後,当科では本年3月中旬までにSOF/ レディパスビ
ル(LDV)配合錠を128例に投与して,2例で心室性三段脈が見られたので報告
する。症例1:69歳,女。高血圧と高脂血症を合併し,アムロジピン5mg/ アト
ルバスタチン5 mgの合剤を内服中のC型慢性肝炎症例。HCV-RNA 6. 5 Log
IU/ mL, Genotype 1b,NS5AはL31野生,Y93 H/ Y混合型。血小板数 14. 3万,PT
93%,AST 36 IU/ L,ALT 39 IU/ L,Alb 4. 0 g/ dL,TB 0. 6 mg/ dL。治療前の12誘
導心電図では正常洞調律であった。SOF/ LDV開始後より倦怠感を自覚した。1
週目でAST 29 IU/ L, ALT 30 IU/ Lと肝炎活動性は低下したが,心電図で単発の
心室性期外収縮を認めた。2週目はAST 29 IU/ L,ALT 25 IU/ Lと正常化したが,
倦怠感は増悪した。心電図でI度の房室ブロックと心室性期外収縮が多発し,
心室性3段脈を呈した。SOF/ LDVを中止し,翌日のホルター心電図では,心室
性期外収縮は全心拍の4. 5%だった。中止1週後の心電図は正常洞調律に回復
し,倦怠感も消失した。HCV-RNA陰性化は得られなかった。症例2:73歳,女。
高血圧を合併したC-P grade AのC型肝硬変症例。HCV-RNA 5. 7 Log IU/ ml,
Genotype 1b,L31野生,Y93野生(変異率0%)型。カンデサルタン8 mgを内服し
ていた。治療前の12誘導心電図では正常洞調律であった。SOF/ LDV開始4週で
動悸を自覚し,心電図では心室性期外収縮が多発し,心室性3段脈を呈していた。
AST 23 IU/ L,ALT 14 IU/ L,PT 110%,血小板数 10. 8万,Alb 4. 1 g/ dL,TB 0.
8 mg/ dL。2日後も動悸が持続しており,入院としてホルター心電図を施行した
が,心室性3段脈は消失しており,特記すべき異常を認めなかった。HCV-RNA
は4週で陰性化し,SOF/ LDVの12週投与を完遂した。SOF投与時の不整脈はア
ミオダロン内服例で特に注意すべきだが,治療前に心電図異常がない症例でも
心室性期外収縮や房室ブロックを生じて治療を中断せざるを得ない場合もあ
り,治療中は心電図検査を定期的に実施すべきである。
肝機能障害,うっ血肝
26
ペースメーカー植え込み患者に対してのラジオ波焼
灼療法の安全性について
ソフォスブビル/ レディパスビル配合錠を投与中に
心室性不整脈を生じたC型慢性肝疾患の2例
インターフェロンフリー治療,不整脈
28
NTT 東日本関東病院 消化器内科
金崎峰雄,寺谷卓馬,松橋信行
【背景】
RFAは,肝臓がん治療の中でも侵襲性が低いため,肝臓がん患者のなかでも高
齢者や頻回に再発を繰り返す症例や肝機能不良例であっても施行出来ることか
ら,近年急速に普及した治療法である. しかし, 心臓ペースメーカー植え込み患
者においてRFAを行う際は,Electromagnetic-interference( EMI) によるペース
メーカー不全が起こる可能性があり,特に肝臓がんにおけるRFA報告例は少な
く安全性が確立されていないのが現状である.今回当院でペースメーカー植え
込み患者7人に対してRFAを行った報告をする.
【症例】
2009年4月〜2016年3月までに当院でペースメーカー患者7人に合計32回のRFA
行った.これらのペースメーカーに与えた影響と対処法,安全性について検討
した.今回RFAにはCool-tip( モノポーラー電極針) を全例使用した.年齢:
64-86歳,基礎心疾患:洞不全症候群 4人/ 3度AVブロック 1人/ 2度AVブロック
1人/ 心房細動 1人,ペーシングモード:DDD 6人/ VVI 1人,肝細胞がん 6人/ 転
移性肝腫瘍( 原発:S状結腸癌) 1人.
【結果/ 考察】
DDDのうち3人は自己心拍が不十分のため,事前にVOOの非同期モードに変更
したことで,治療中から治療以降も問題は生じなかった.その他はいずれも自
己心拍は十分に保たれており,ペースメーカーへの依存度は低いと判断したた
め,そのままのモード下でRFAを行った( 最高出力100W,温度93度,最長治療
時間 計29分/ 回) .29回全てにおいて不整脈やペースメーカー不全は無かった.
しかし,DDDモード下でRFAを行った2人は,多量のラジオ波電流が,ペース
メーカー本体でオームの法則の計算により過剰に抵抗値が低下したと誤認させ
ていた.それによりペースセンス極性が安全機能の働きにより,心房と心室
リード線上のバイポーラーシステムからユニポーラーシステムへのPolarity
switchが生じていた事が判明した.
【結語】
ペースメーカー植え込み下でも肝臓がんに対するRFAは全例問題なく行え,安
全性は高いものと思われた.またRFAによるペースメーカーの極性を変えた症
例がある事も報告する.
RFA,ペースメーカー
― 32 ―
(演題取り下げ)
29
原発性硬化性胆管炎に合併する胆管癌を診断しえた
1例
千葉大学大学院医学研究院 消化器・腎臓内科学1) ,
同 診断病理学2)
淺野公將1) ,露口利夫1) ,妹尾純一1) ,林 雅博1) ,佐々木玲奈1) ,
中村昌人1) ,安井 伸1) ,杉山晴俊1) ,三方林太郎1) ,岩本雅美2) ,
横須賀收1)
【背景】
原発性硬化性胆管炎( PSC) に胆管癌が合併することは知られているが、その診
断、治療に関しては議論をされているところである。我々はPSCに胆管癌を合
併した1例を経験したので報告をする。
【方法/ 結果】症例は64歳女性。潰瘍性大腸炎の寛解期であったが、2012年11月
に上腹部痛と肝障害を指摘された。腹部超音波検査にて左肝内胆管の軽度拡張
を指摘されたが、ウルソデオキシコール酸を継続投与されたことにより肝障害
は改善した。2015年9月に肝障害の悪化を認めた。CTにて右肝内胆管の拡張が
みられ、ERCPを施行されたところ肝外胆管上中部の狭窄と肝内胆管の部分的
狭窄と拡張からPSCが疑われ当科紹介となった。CTでは肝外胆管壁は2mm程
度に肥厚し、口径不整がみられ、広範囲に遅延相で胆管壁の造影効果が増強し
ていた。当初、ERCPでの細胞診はclass1or2、胆管生検は悪性所見を認めず、下
部胆管の観察にとどまったが経口胆道鏡でもPSCに特徴的な瘢痕狭窄、憩室様
突出を認めるのみであった。しかし胆管像から胆管癌の合併を否定できなかっ
たことから計18箇所の胆管生検を行い、左肝管からadenocarcinoma、膵内胆管
からsuspect of adenocarcinomaを認めた。当院肝胆膵外科にコンサルテーション
を行ったところ、切除範囲が広範となること、残肝に胆管狭窄を有するPSCで
あることから術後の胆管炎コントロールが困難と予想され切除不能と判断され
た。また、肝移植の適応に関しては膵内胆管からsuspect of adenocarcinomaを認
め適応外とされた。プラスチックステント( PS) 留置により減黄および胆管炎
をコントロールし退院となった。しかしその後も胆管炎を再燃したことから全
身化学療法導入は困難と判断し、best supportive careとなっている。
【結論】
本症例は当科に紹介となる時点で初めてPSCを疑われており、より早い段階で
画像診断を行う必要があったと考えられる。合併する胆管癌の診断は容易では
なく、また、外科的切除範囲の決定にはいわゆるmapping biopsyが求められるこ
とから複数回の胆管生検が推奨される。
31
獨協医科大学越谷病院 消化器内科1) ,同 病理診断科2)
徳富治彦1) ,須田季晋1) ,須藤梨音1) ,行徳芳則1) ,林 和憲1) ,
大浦亮祐1) ,市川光沙1) ,北川智之1) ,片山裕視1) ,今田浩生2) ,
玉野正也1)
症例は70歳女性。約7年前に近医で脊椎腫瘍を手術後、同院で
膵尾部の嚢胞を経過観察されていた。20××年2月頃から37か
ら38℃台の遷延する発熱を認めた。3月下旬に心窩部痛が出現
し、上部消化管内視鏡検査を施行されたが異常は認めなかった。
5月下旬、発熱が軽快せず不明熱の精査目的に当院血液内科に
紹介受診した。CT検査で肺野に小結節影・肝内に多発する腫
瘤性病変、膵尾部に嚢胞性病変、嚢胞周囲腹側に低吸収域を認
めたため当科に紹介、入院となった。血液検査では白血球・
CRPの上昇を認めたが、血液・尿培養は陰性であった。同時に
貧血の急激な進行を認めたが消化管出血の所見は認めず、膵周
囲の低吸収域が短期間で出現したため、嚢胞破裂による腹腔内
出血と思われた。CT上膵嚢胞内に壁在結節が疑われ、癌化及
び肺・肝転移が示唆された。入院時から全身状態は悪く積極的
加療は困難で、6月中旬に死亡確認した。剖検の診断結果は、膵
体尾部癌・転移性肺腫瘍・転移性肝腫瘍・腹膜播種であった。
膵尾部嚢胞は貯留嚢胞で、CT上認められた嚢胞周囲の低吸収
域は進行した膵体尾部癌で、内部に一部腫瘍壊死を伴う出血が
認められた。本症例は急激に進行した膵未分化癌の症例であ
り、文献的考察を含めて報告する。
原発性硬化性胆管炎,胆管癌
30
経鼻的下垂体腫瘍摘出術中に急性膵炎を発症した
一例
虎の門病院 消化器内科
黒川 憲,小山里香子,田村哲男,小泉優子,今村綱男
【症例】41歳女性【主訴】なし【現病歴】30歳に膵胆管合流異常
症と診断され、総胆管拡張がなかったため他院にて胆嚢摘出術
のみ施行。今回、先端巨大症と診断され、成長ホルモン産生下
垂体腺腫に対して経鼻的下垂体腫瘍摘出術目的に紹介入院。手
術前日の血液検査で膵酵素上昇はなく、麻酔導入時まで腹部症
状はなかった。全身麻酔から覚醒直後に強い心窩部痛を訴え、
膵酵素上昇(Amylase 1031IU/ L, Lipase 3741U/ L)と造影CTに
て腎下極付近に及ぶ炎症を認め、急性膵炎と診断。GHの推移
を確認する目的で術中に6回血液検査を行っており、術中の膵
酵素の推移を追加検査すると、手術開始時はAmylase 80IU/ L、
Lipase 184U/ Lであったが、下垂体腫瘍に到達し摘出開始時は
Amylase 305IU/ L、Lipase 1972U/ L、そ の 20 分 後 は Amylase
326IU/ L、Lipase 2040U/ Lと経時的に上昇していた。Ulinastatin、
Nafamostat mesilate、IPM/ CSによる保存的加療で、翌日には膵
酵素は低下し、第16病日に経口摂取を開始し、第36病日に退院
となった。【考察】膵蔵に関係しない手術の術後急性膵炎の発
生率は0. 007%と報告され非常に稀な合併症である。頭部手術
では手術のストレスに起因した自律神経失調による膵蔵の血流
障害が術後膵炎の原因と考えられるとの報告もある。また、術
中の正確な発症時間や原因は不明である場合が多い。本症例は
術中に経時的に血液検査が行われていたことで手術開始後には
すでに膵炎を発症し始めていたと考えられた。麻酔導入時に膵
臓の循環障害を生じうる血圧低下は認めなかった。術前または
麻酔導入時に使用した薬剤による薬剤性膵炎である可能性が示
唆され、被疑薬としてはステロイドであるHydrocortisone、脂肪
製剤であるPropofolが考えられた。また、本症例は膵胆管合流
異常にて著明な拡張胆管を合併していたことが膵炎発症に関与
した可能性も考えられた。
急激に進行した膵未分化癌の一例
膵未分化癌,膵嚢胞
32
異所性膵の膵炎により消化管通過障害を来した1例
東京女子医科大学 消化器内科1) ,同 消化器外科2) ,
同 統合医科学研究所3)
奥野奈央1) ,高山敬子1) ,赤尾潤一1) ,味原隆大1) ,土井愛美2) ,
長尾健太1) ,田原純子1) ,山下信吾2) ,山田卓司2) ,高橋 豊2) ,
清水京子1) ,古川 徹3) ,徳重克年1) ,山本雅一2)
【症例】30歳代男性【主訴】上腹部痛【現病歴】3ヶ月前から上
腹部痛があり近医を受診し,上部消化管内視鏡で胃前庭部の粘
膜下腫瘍を指摘され,精査目的で当科へ紹介となった.造影
CTでは胃幽門部の浮腫性壁肥厚と,幽門大弯側の壁外に境界
明瞭な26mmの腫瘤を認め,腫瘤は早期相で造影され膵実質と
同程度の造影効果を呈した.EUSでは腫瘤は低エコーで内部に
点状高エコーや腺管様構造を認め,エコーレベルは腹側膵に類
似し,EUS下の吸引生検では膵組織が観察されたため,異所性
膵と診断した.上腹部痛は消失していたため経過観察としてい
たが,1ヶ月半後に再度上腹部痛が出現し前医を受診した.造
影CTで胃幽門部の浮腫状壁肥厚と,異所性膵の腫大と周囲の
脂肪織濃度の上昇を認め,異所性膵の膵炎と考えられた.急性
膵炎に準じて絶食,補液,蛋白分解酵素阻害剤などでの加療を
継続したが改善せず,当科へ転院となった.当科でも急性膵炎
に準じた内科的治療を継続したが改善乏しく,胃幽門部の浮腫
性壁肥厚による消化管通過障害をきたしており,保存的加療で
改善しなかった.手術適応と考え,幽門側胃切除および異所性
膵切除術を行った.術後病理診断で,胃粘膜下層から漿膜下層
に異所性膵組織を認めた.【考察】異所性膵は副膵,迷入膵とも
呼ばれ,本来の膵臓から離れた場所に膵組織が存在するものを
いう.胃粘膜下腫瘍の中で異所性膵は比較的多く見られるが,
ほとんどの場合は無症状に経過し,膵炎などの臨床症状を有す
ることは比較的稀である.今回我々は上腹部痛を伴い,繰り返
す炎症により消化管通過障害もきたした異所性膵炎の症例を経
験したので,文献的考察も加えて報告する.
術後膵炎,薬剤性膵炎
― 33 ―
異所性膵,膵炎
33
黄疸で来院し経過中に急性膵炎を合併したWeil病の
一例
神奈川県警友会 けいゆう病院
岡田直也,中下 学,北村英俊,松永崇宏,吉本憲史,関 由喜,
中嶋緑郎,川崎由華,伊藤高章,岡沢 啓,水城 啓,
永田博司
【症例】56歳、男性。【主訴】両下肢疼痛、歩行困難、全身倦怠感。
【既往歴】気管支喘息、高血圧、アトピー性皮膚炎。【現病歴】海外
渡航歴なし。アトピー性皮膚炎のため、全身に擦過傷を認めてい
た。2015年12月X日頃から悪寒が出現し、X+2日から下腿疼痛を認
めた。X+5日に症状が増悪し歩行不能となり、また尿濃染を自覚
し当院へ救急搬送された。血液検査で黄疸、腎機能障害、血小板
減少、炎症反応高値を認め入院となった。【経過】造影CTでは胆道
の閉塞機転は認めなかったが、採血で黄疸、肝胆道系酵素上昇を
認め胆道感染を疑い、CPZ/ SBTの投与を開始した。抗菌薬投与直
後に血圧低下をきたし、大量補液、ノルアドレナリンで血圧を維
持した。抗菌薬をMEPMに変更し第3病日から血圧は安定したが、
膵酵素上昇と上腹部痛を認め急性膵炎の合併を疑いメシル酸ガベ
キサートを併用した。黄疸、腎機能障害、血小板減少と抗菌薬投
与直後の悪化からWeil病を疑い、病歴を再聴取し、職場厨房でのネ
ズミ、及びその糞尿の存在が判明した。第6病日より抗菌薬は
CTRXに変更し、腎機能障害や炎症反応は改善し第15病日に抗菌薬
を終了した。国立感染症研究所による顕微鏡下凝集試験( MAT) で
第2病日と第10病日のペア血清における抗体価の上昇がLeptospira
borgpetersenii serovar Castellonis, Leptospira borgpetersenii serovar
Poiの血清型で見られ,Weil病と診断した.MRCPでも膵胆道系に
異常所見なく、膵炎はWeil病の合併症と考えられた。その後腎機
能は改善し、炎症の再燃はなく,第32病日に退院した.【考察】
Weil病は黄疸、腎機能障害、血小板減少を特徴とするレプトスピラ
感染症である。海外渡航歴は認めなかったが、症状や経過から積
極的に本疾患を疑い診断に至った。経過中に急性膵炎を合併し、
閉塞性黄疸との鑑別を要したWeil病の一例を経験したため、若干
の文献的考察を加えて報告する。
35
脾臓出血を契機に発見された膵神経内分泌細胞癌の
一切除例
横浜市立大学附属市民総合医療センター1) ,
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学2)
高橋弘毅1) ,國崎主税1) ,小笠原康夫1) ,佐藤 圭1) ,宮本 洋1) ,
泉澤祐介1) ,山口直孝1) ,南 裕太1) ,大田貢由1) ,円谷 彰1) ,
遠藤 格2)
症例は61歳,男性.突然の腹痛を主訴に近医を受診した.腹膜
刺激症状を認め,急性腹症の精査目的に当科紹介受診となった.
精査の腹部造影CTで脾臓周囲に液体貯留を認め,非外傷性脾
出血の診断で緊急IVRの方針とした.IVRでは,明らかな動脈
性出血の所見は認めなかったが,今後仮性動脈瘤を形成するこ
とも考慮し,脾動脈根部から約10cmの脾動脈本幹から脾門部に
かけて6個のmicro coilを用いて塞栓術を施行した.フォロー
アップの腹部造影CTで血腫の増大がないことを確認し,症状
が回復したため退院とした.腫瘍性病変を否定しきれないため
精査のPET-CT施行したところ,脾臓内側にSUVmax7. 0のFDG
の集積を認めた.遠隔転移所見がないため,原発性脾臓悪性腫
瘍を疑い手術の方針とした. 術中所見では,脾腫瘍の膵尾部
への浸潤を認め,膵体尾部切除術を施行する方針とした.病理
組織学的所見では,腫瘍は脾臓内部で被膜を有して圧排性に増
殖しており,膵実質内で腫瘍が胞巣状に増殖する像を認めた.
ま た,腫 瘍 細 胞 の 免 疫 染 色 で は,synaptophysin 陽 性,
chromogranin A陽性,Ki-67陽性率は80%,核分裂像が多数認め
られ,61個/ 10HPFであった.以上の病理組織学的所見から,膵
尾部原発の神経内分泌細胞癌が脾臓浸潤したものと診断した.
術後経過は良好で,術後12日目に退院となった. 脾臓出血を
契機に発見された膵神経内分泌細胞癌の症例は極めて稀であ
り,若干の文献的考察を加えて報告する.
脾臓出血,膵神経内分泌細胞癌
Weil病,急性膵炎
34
36
長径28cmの巨大退形成膵癌の一切除例
1)
群馬大学医学部附属病院 外科診療センター ,
同 泌尿器科2)
矢澤友弘1) ,渡辺 亮1) ,新木健一郎1) ,平井圭太郎1) ,久保憲生1) ,
五十嵐隆通1) ,塚越真梨子1) ,石井範洋1) ,星野弘毅1) ,関根芳岳2) ,
柴田康博2) ,鈴木和浩2) ,桑野博行1) ,調
憲1)
症例は54歳、男性。人間ドックで腫瘍マーカーの上昇を指摘さ
れたため、前医を受診した。CTを施行し、膵尾部から脾門部に
かけて腫瘤を指摘され、脾出血が疑われたため、当科を紹介受
診した。当院での精査で、腫瘍マーカーはCEA158. 9ng/ ml、
CA19-9 14134U/ ml、SPAN-1 6164U/ ml と 上 昇 を 認 め、CT、
MRIでは膵尾部から脾門部に径20cm超の内部不均一で壊死や
嚢胞成分を疑う腫瘤が認められ、左腎を圧排していたが、明ら
かな転移所見は認めなかった。腫瘍はdoubling time 39日と急速
な増大傾向を示した。画像所見などから退形成膵癌と診断し、
明らかな遠隔転移を認めないことから手術の方針とした。
手術は膵体尾部切除・脾臓・左腎・副腎・横行結腸合併切除を
施行した(手術時間9時間48分、出血量3249ml)。
腫瘍は最大径28cmに達し、病理所見では乳頭状の管状腺癌と間
質に核異型のある多核巨細胞が多数認められ、退形成膵癌の診
断だった。腎への浸潤を認めたが、切除断端や剥離面への浸潤
は認めず、腎・横行結腸合併切除によりR0切除を得られた。術
後にISGPF Grade Aの膵液漏、Clavien Dindo Grade Iのイレウス
を認めたが保存的に改善し、第39病日に退院し、現在術後60日
間、腫瘍マーカーは正常化し、無再発生存中である。
退形成膵癌は膵癌の中でも稀な組織型であり、過去にOhmoto
らが25cmの切除例を報告している。本症例は最大腫瘍径28cm
と報告されているものの中で最大であった。退形成膵癌は腫瘍
径に関係なく長期生存例が報告されているため、他臓器合併切
除を行っても根治術を目指すことが重要と考えられた。
食道裂孔に横行結腸が嵌頓し胸腔内で穿孔した食道
癌術後横隔膜ヘルニアの1例
横須賀市立市民病院 外科
山本 淳,長嶺弘太郎,佐藤
亀田久仁郎,久保 章
渉,鈴木伸吾,三宅益代,杉浦浩朗,
症例は74歳の男性で、5日前からの上腹部痛と発熱を主訴に当
院を受診した。3年2か月前に他院で、胸部中部下部食道癌に対
する開胸開腹手術の既往があった。血液生化学的検査では炎症
反応の著明な上昇を認め、胸腹部造影CT検査では、左胸腔内に
横行結腸の脱出と液体貯留を認めた。横隔膜ヘルニア嵌頓、横
行結腸左胸腔内穿孔の診断で緊急手術を施行した。
開腹すると、拳上再建胃管左側の食道裂孔に横行結腸が嵌頓し
ていた。横隔膜を切開し横行結腸を腹腔内に還納すると、横行
結腸は虚血性壊死により2か所で穿孔しており、左胸腔内に多
量の便汁を認めた。穿孔部を含めて約25cmにわたり横行結腸
を切除し、口側は単口式横行結腸人工肛門、肛門側は粘液瘻と
した。左胸腔内、腹腔内を多量の生理食塩水で洗浄した後、胸
腔、腹腔ドレーンを留置し、人工呼吸管理のままICUに入室し
た。術後敗血症性ショックに陥ったが術後2日目に人工呼吸器
から離脱し、6日目には経口摂取が可能となった。
その後、左膿胸が遷延したため、3回にわたり穿刺排膿を施行し
たがドレナージ効果不良であったため、保存的加療は限界と判
断し、他院の呼吸器外科に転院し、外科的治療の方針とした。
術後47日目に左醸膿胸膜胼胝切除術、開窓術を施行し、その後
炎症反応は改善した。さらに開胸創部に対して101日目に筋弁
充填、膿胸腔閉鎖術を施行した。術後経過は良好であり、リハ
ビリテーションを行ったのち、初回手術後149日目に退院となっ
た。現在、ADLは自立しており外来通院中である。
食道癌術後の横隔膜ヘルニアにより、胸腔内で穿孔した症例の
報告は稀である。若干の考察を加えここに報告する。
退形成膵癌,巨大腫瘍
― 34 ―
横隔膜ヘルニア,食道癌術後
37
39
上部消化管異物の臨床像:異物別の検討
国立国際医療研究センター
櫻井 恵,横井千寿,岡原昂輝,島田高幸,高崎祐介,木平英里,
城間 翔,張 萌琳,畑 昌宏,久田裕也,守安志織,三島沙織,
大久保栄高,関根一智,忌部 航,渡辺一弘,櫻井俊之,永田尚義,
小早川雅男,秋山純一
【目的】内視鏡的に摘出した上部消化管異物症例について、臨床像と異
物別特徴を調査し、診療上の留意点を探索する。【方法】2010年8月
〜2016年2月に当院で内視鏡的食道及び胃内異物摘出術を行った73例
を対象にした。調査項目:( A) 年齢・性別・異物の種類、( B) 頻度の多
いPTP( a)・義歯( b)・食物塊( c) に関する検討:年齢・性別・自覚症状の
有無・既往歴・誤飲から処置開始までの時間・停留部位・摘出法・処置
時間・合併症について後方視的に調査した。【結果】( A) 年齢:0〜97歳
(小児2例、成人71例、65歳以上36例)、性別:男女比1. 03(37/ 36)異物
の種類: PTP20例、義歯18例、食物塊17例、他18例。( B) 年齢:( a) 40代
〜90代(年代別では80代が8例で最多)、( b) 20代〜80代、( c) 30代〜80
代。性別:( a) 男女比0. 25( 4/ 16) 、( b) 0. 63( 7/ 11) 、( c) 1. 83( 11/ 6) 。
自覚症状:( a) 18例( 90%) 、( b) 4例( 22%) 、( c) 16例( 94%) 。既往有:
( a) 10例:生活習慣病等、( b) 12例:意識障害を有する中枢神経系疾患
等(このうち2例はCTで偶発的に発見)、( c) 10例:食道癌等。誤飲から
処置開始までの時間:( a) 最長15時間、平均5. 3時間。( b) 最長2ヶ月、
平均12時間( 2ヶ月経過した症例を除く) 。( c) 最長48時間、平均17. 7時
間。停留部位:( a) 食道17例、胃3例、( b) 食道3例、胃13例、その他2例、
( c) 全例食道。摘出法:( a) 異物除去用フード・ワニ口鉗子、( b) 異物除
去用フード・ワニ口鉗子・オーバーチューブ・回収ネット・ゴム手袋・
バスケット鉗子等、( c) 五脚・ワニ口鉗子・回収ネット等。処置時間:
( a) 11. 8分、( b) 38. 5分、( c) 12分。合併症:( a) 食道裂創3例、( b) 食道裂
創3例、( c) なし。いずれも処置を必要とせず、外科的治療に至った症
例なし。【結論】異物誤飲は高齢者に多いが、中年世代でもPTPを、若
年世代では食物塊を不慮に誤飲する可能性があることが示された。
PTPは有症状例が多いため比較的早期に摘出されるが、義歯は意識障
害を有する患者において上部消化管内に長期間停留し画像検査で偶然
発見されるケースもあり注意が必要である。食物塊以外の異物を提出
する際には食道損傷に注意が必要である。
日本大学医学部 内科学系消化器肝臓内科学分野
菊田大一郎,高橋利実,林 香里,宮田 隆,中川太一,
中河原浩史,大久保理恵,小川眞広,松岡俊一,後藤田卓志,
森山光彦
【症例】60代女性【主訴】吐血【現病歴】脳神経外科にて頭蓋底
髄膜腫の開頭腫瘍摘出術目的に入院となった。腫瘍の増大傾向
が認められていたため、開頭腫瘍摘出術前に栄養血管に対する
コイル塞栓術を施行した。コイル塞栓術施行日の夜に頻回の嘔
吐があり、その後吐血が認められたため当科にコンサルトと
なった。【臨床経過】症状経過からマロリーワイス症候群を最
も考えたが、持続する出血所見はなかった。CTでわずかな縦
隔気腫を疑う所見があったことから緊急上部消化管内視鏡検査
を施行せず、ガストログラフィンでの造影を施行した。明らか
な穿孔を疑う所見は認められず、経過観察とした。1週間後の
上部消化管内視鏡検査にて、中部食道に半周性の白苔を伴う食
道潰瘍を認め今回の吐血の責任病変と判断した。その後、食道
潰瘍は改善し退院となった。【考察】今回吐血を契機に認めた
カテーテル治療後の出血性食道潰瘍の1例を経験した。吐血後
に確認される食道潰瘍は報告が少なく、カテーテル治療後の偶
発症としても留意する必要があると考え、文献的考察を含めて
報告する。
上部消化管異物,内視鏡
38
食道潰瘍,吐血
40
食後の食道異物を繰り返した若年男性の一例
上尾中央総合病院 消化器内科
白井 告,大舘幸太,水野敬宏,和久津亜紀子,外處真道,
近藤春彦,山城雄也,三科友二,三科雅子,明石雅博,尾股 佑,
渡邉 東,笹本貴広,土屋昭彦,西川 稿,山中正己
症例は31歳の男性。2015年6月5日の20時30分頃ステーキを食べ
た後より食道詰まり感出現にて同日22時に当院救急外来受診。
症状は詰まり感だけでは無く、逆流、嘔気症状も出現。肉片の
大きさは本人の話から40mm程度であった。胸部CTにて下部食
道に残渣に伴う狭窄、食道の拡張、液体貯留を認めており、同
日に緊急上部消化管内視鏡検査を施行。食道内、食道胃接合部
には異物を認めず、胃体上部大弯に肉片を確認。胃内での異物
確認であり除去、摘出はせず帰宅の方針となった。同年9月30
日の18時頃生ニンニク1個丸飲みし食道詰まり感出現。翌10月1
日に症状改善なく当院消化器内科受診。以前の既往もありCT
施行せず緊急上部消化管内視鏡検査を施行。食道胃接合部には
まり込んでいるニンニクを確認し、スコープで押し込み胃内へ
落下させた。処置後粘膜裂創を認めたが止血等の処置の必要は
なく粘膜保護剤処方で帰宅となった。食道異物は日常診療にお
いてしばしば遭遇する重要な疾患の一つであり、異物の種類、
形状、大きさなどにより緊急内視鏡の適応となることが多い。
今回若年の繰り返す食道異物であり、食道運動機能の低下、粘
膜筋層の障害は考えにくく、食事習慣の改善が対策となり得る。
若干の文献的考察を加えて報告する。
脳腫瘍に対するコイル塞栓術後に認められた出血性
食道潰瘍の1例
骨および軟骨に分化した食道GISTの1例
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科1) ,
同 病理診断科2) ,
横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科学3)
矢澤慶一1, 3) ,國崎主税1) ,林
勉1) ,山本 淳1) ,泉澤祐介1) ,
大田貢由1) ,円谷 彰1) ,平沙代子2) ,秋山浩利3) ,遠藤 格3)
症例は47歳の男性.胸やけを主訴に近医を受診し,胃噴門部大
弯側に20mm大の粘膜下腫瘍を指摘され,精査加療目的に当科
紹介となった.EUSでは胃噴門部第4層と連続した低エコー域
を認めた.EUS-FNAを行い,病理組織学的所見からGISTと診
断した.2014年11月に噴門部胃GISTの診断で手術を施行した.
術中,腹部食道左壁に腫瘤を触知し,腫瘤摘出術を施行した.
切除標本は長径30mmの腫瘤で,粘膜面に潰瘍形成,陥凹はな
かった.割面は光沢のある白色充実性を呈しており,出血や壊
死は見られなかった.組織学像は食道固有筋層から連続して,
不整な核と好酸性の細胞質をもつ類円形細胞が腫瘤を形成して
おり,一部に紡錘形細胞の配列を認めた.免疫組織化学染色の
検討では,CD117及びCD34は陽性でSMA,S-100は陰性であっ
た.MIB-1 陽 性 率 1% 未 満,核 分 裂 像 は 3 個 / HPF で 食 道 原 発
GIST(低リスク分類)と診断した.腫瘤の一部に島状の軟骨化
形成を認め,その一部は骨に分化していた.食道原発GISTは全
消化管GISTの2%以下と比較的稀であり,これまでに骨および
軟骨への分化を認めた食道原発GISTの報告例はない.今回,食
道原発GISTに骨および軟骨の成分を認めたので,文献的考察を
加えて報告する.
食道異物,食事習慣
― 35 ―
食道GIST,骨分化
41
43
食道ESD後狭窄予防の効果と現状
横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部1) ,
横浜市立大学 消化器内科2)
小林亮介1) ,平澤欣吾1) ,池田良輔1) ,福地剛英1) ,眞一まこも1) ,
佐藤知子1) ,前田 愼2)
【背景】食道ESDはstrategyの確立や技術の向上に伴い、大きな表在性腫
瘍に対する治療も可能になったが、切除範囲の増大に伴い、術後狭窄
が危惧されている。現在、狭窄予防法として、トリアムシノロンアセ
トニド局注療法、プレドニゾロン内服療法など講じられているが、適
応および効果に関しては依然議論すべき問題である。【目的】食道
ESDのうち、切除後潰瘍が2/ 3周以上の病変の治療成績および術後狭
窄予防の効果に関して検討を行った。【方法】狭窄予防法として潰瘍
底にトリアムシノロンアセトニドを局注する方法( TA法) 、プレドニゾ
ロンを0. 5mg/ kgから内服開始し2週毎に減量する方法( PSL法) のいず
れかを選択、もしくは併用とした。スコープが通過しない狭窄を来た
した場合、内視鏡的バルーン拡張術を施行した。【対象】2011年1月か
ら2015年12月に施行された食道ESD262例354病変のうち切除後潰瘍の
周在性が2/ 3周以上となった117例128病変。【結果】周在性が2/ 3周以
上3/ 4周以下は83病変( A群) 、全周は9病変( C群) 、それ以外は36病変( B
群) であった。TA法は40病変、TA+PSL法は11病変に施行した。狭窄
非予防群の狭窄率はA群29%( 19/ 65) , B群91%( 10/ 11) , C群100%( 1/ 1)
に対し、予防群TA法はA群0%( 0/ 18) , B群45%( 10/ 22) , C群( 0/ 0) 、TA+
PSL法はA群( 0/ 0) , B群33%( 1/ 3) , C群63%( 5/ 8) であり、狭窄予防によ
りA群、B群で有意に狭窄率の低下を認めた( A群p=0. 005, B群p=0.
009) 。また、狭窄例の内視鏡拡張回数に関して、狭窄非予防群はA群
1-14回( 平均6回) 、B群3-15回( 平均8回) 、C群17回に対して、狭窄予防
群はA群なし、B群1-17回( 平均6回) 、C群2-28回( 平均14回) であった。
【考察】治療潰瘍底が3/ 4周以下の病変では、TA法により狭窄を認めな
かった。また、亜全周性病変に関して、TA法は狭窄病変の割合を減少
させた。さらに、術後狭窄を来たした場合でも、狭窄予防対策が内視
鏡拡張回数の軽減に寄与する可能性が考えられた。今回、全周性病変
に関して狭窄予防群は全例TA+PSL併用であり、PSL法の効果の判定
は難しいが、併用群でも63%と高率に術後狭窄を来たしており、さら
なる狭窄予防対策の開発が必要と思われる。
厚生中央病院 消化器病センター1) ,同 皮膚科2) ,
東京医科大学 分子病理学講座3)
堀江義政1) ,根本夕夏子1) ,新後閑弘章1) ,松浦良徳1) ,中村文彦1) ,
春山 晋1) ,木村 晴1) ,永井泰斗1) ,佐藤 学1) ,剛崎寛徳1) ,
竹村卓也2) ,黒田雅彦3)
【症例1】85歳女性。2016年1月から全身に掻痒感を伴う紅斑、両
下腿の水疱が出現し、2月10日当院皮膚科に入院となった。皮
膚生検で表皮内水疱形成と好酸球浸潤認め、蛍光抗体法で基底
膜部にIgG +weak、C3 +weak、採血でBP180抗体15. 1 U/ mlから
水疱性類天疱瘡の診断となった。悪性腫瘍スクリーニングの採
血でSCC 2. 8 ng/ mlと上昇を認めた。胸腹骨盤単純CTでは肺癌
含め悪性腫瘍は認めず、消化管スクリーニング目的に当科紹介
となった。上部消化管内視鏡検査では食道癌など悪性腫瘍は認
めず、大腸内視鏡検査でも悪性腫瘍は認めなかった。【症例2】
86歳女性。2015年12月から全身に掻痒を伴う皮疹が出現し、2
月12日当院皮膚科入院となった。皮膚生検で表皮内水疱形成と
多数の好酸球浸潤認め、蛍光抗体法で基底膜部にIgG ±、IgM
±、C3 +、採血でBP180抗体181 U/ mlから水疱性類天疱瘡の診
断となった。悪性腫瘍スクリーニングの採血でCEA 7. 6 ng/ ml、
CA19-9 186 U/ mlと上昇を認めた。胸腹骨盤単純CTで胃壁の肥
厚が疑われ、消化管スクリーニング目的に当科紹介となった。
過去に大腸癌で術後だったが、大腸内視鏡検査で悪性腫瘍は認
めなかった。上部消化管内視鏡検査で胃体上部から中部の小彎
前 壁 側 に 周 堤 隆 起 の 崩 れ た 潰 瘍 性 病 変 を 認 め、生 検 で
adenocarcinomaの結果であった。胸腹骨盤造影CT施行し、胃癌
Type3 T2N0M0 cStage1Bの診断となった。【考察】水疱性類天疱
瘡は表皮基底膜部抗原に対する自己抗体の関与により、表皮下
水疱を生じる自己免疫性水疱症の代表的疾患である。水疱性類
天疱瘡では内蔵悪性腫瘍の合併頻度が高いとされている。今回
我々は腫瘍マーカー上昇から、消化管スクリーニングの内視鏡
検査を施行し、胃癌を合併した1例を経験したので若干の文献
的考察を含めて報告する。
食道,狭窄
42
胃癌,水疱性類天疱瘡
44
診断に難渋した胃癌術後血球貪食症候群の1例
昭和大学藤ケ丘病院 消化器・一般外科
関根隆一,根本 洋,原田芳邦,櫻庭一馬,横溝和晃,松原猛人,
出口義雄,加藤貴史,田中淳一
【はじめに】血球貪食症候群( hemophagocystic syndrome:以下, HPS) には
単一遺伝子病である一次性と,悪性腫瘍,感染症,自己免疫疾患,移植
などに付随して発症する二次性がある.手術後に発症したHPSも散見
されるが,まれであり他の病態との鑑別が難しいことが多い.手術後
のHPSに関して自験例を踏まえ報告する.【症例】68歳男性【既往歴】
糖尿病( 術前HbA1c 9. 2%) 【現病歴】進行胃癌( L, Circ, type4, por-sig,
cT4a( SE) N0H0P0M0, cStage2B) に対して,胃全摘術( D2-No. 10, 11d郭
清,Roux-en-Y再建) を施行した.第5病日に発熱を認め,第6病日に著
明な血小板減少を認めた.血液培養でS. maltophiliaが検出された.CT
では明らかな縫合不全は認めなかったが,腹腔内膿瘍を含めた何らか
の感染症に伴うDICと考え,薬物療法を行った.しかし,発熱と炎症
反応上昇,血小板減少は改善せず( 最低1. 1万) ,連日濃厚血小板の投与
を行った.第11病日の血液培養ではS. maltophiliaに加え,E. cloacaeと
Candida tropicalisが検出された.CTで脾腫を認めたがこの時点では経
過を見ていた.第18病日に急激なARDSを発症し人工呼吸器管理を要
した.第20病日にHPSを疑うと,診断基準項目( 発熱,脾腫,2系統以上
の血球減少,可溶性IL-2レセプター高値,フェリチン高値) を満たして
いた.同日よりPSL60mg/ 日を開始し,翌日より血小板低下は治まっ
た.第23病日に抜管し全身状態は改善傾向となりPSLを漸減した.第
27病日の血液培養では細菌,真菌ともに消失していた.【考察】HPSの
原因は様々であるが,共通した病態として制御不能の高サイトカイン
血症があり治療ではサイトカインの制御を要する.以前の術後HPSの
報告例を検索すると,虫垂炎手術から膵頭十二指腸切除まで大小様々
な手術で発症しており,あらゆる手術で発症する可能性がある.手術
という侵襲が何らかの機序で高サイトカイン血症をもたらしているも
のと考えられる.術後のHPSでは認識が低いために診断が遅れるのに
加え,感染症を増悪させることを懸念してステロイドの開始が遅れる
可能性がある.病態を理解した上での早期の治療開始が必要である.
消化管スクリーニングの内視鏡を行った水疱性類天
疱瘡の2例
胃癌術後1年における肺炎罹患の検討
済生会横浜市南部病院 外科
林
勉,南澤恵祐,根本大士,澁谷泰介,横井英人,嶋田裕子,
和田朋子,渡邊卓央,高川 亮,嶋田和博,村上仁志,平川昭平,
長谷川誠司,池 秀之,福島忠男,今田敏夫
【目的】術後遠隔期の肺炎を術後1年のCT検査における活動性
肺炎像の有無を検討した。
【対象】2012年1月から2014年6月ま
でに当院で胃癌に対してリンパ節郭清を伴う胃切除術を施行さ
れた89例。【方法】遠隔期肺炎の有無は術後1年に実施した胸部
CT検査で活動性肺炎像としてconsolidation、 粒状影、 スリガラ
ス陰影、の有無で診断した。肺炎像が見られた症例をP群、見
られなかった症例をC群として、背景因子および術後1年におけ
る筋肉減少率(腹部CT検査で第3腰椎レベルの腸腰筋断面積を
測定し術前からの減少率を算出)を検討した。【結果】術後肺炎
像は25例(28%)に見られ、P群25例、C群54例であった。平均
年齢P群73歳vs C群68歳(p=0. 046)、ASAスコア(1/ 2/ 3)P群2
(9. 1%)/ 17(77. 3%)/ 3(13. 6%)vs C群6(11. 8%)/ 45(88.
2%)/ 0(0%)
(p=0. 039)、平均術前BMI、P群21. 8 vs C群 22. 5
( p=0. 387) であった。進行度は(Stage I/ II/ III/ IV)P群11(44%)
/ 8(32%)/ 6(24%)/ 0(0%)、C群30(56%)/ 14(26%)/ 9
(17%)/ 1(2%)、
(p=0. 717)、術式P群:胃全摘7例(28%)幽
門側胃切除18例(72%)、C群:胃全摘13例(24%)幽門側胃切
除41例(76%)、アプローチ:P群開腹手術16例(64%)、腹腔鏡
手術9例(36%)、C群:開腹手術35例(65%)、( p=0. 783) 。腹腔
鏡手術19例(35%)、( p=1. 00) 。術後合併症発生率:P群7例
(18%)、C群7例(13%)
、( p=0. 122) 。術後化学療法あり:P群5
例(20%)、C群13例(24%)、( p=0. 779) 。平均筋肉減少率:P群
19%、C群8%、( p<0. 001) 。であった。P群でASAスコア3の症
例が多く、年齢および筋肉減少率が有意に高かった。一方術式、
アプローチ、進行度では両群間に差は見られなかった。【まと
め】術後遠隔期に高齢患者は肺炎罹患の危険性が高く、筋肉量
の減少と術後肺炎の罹患に関連が示唆された。
胃癌術後,血球貪食症候群
― 36 ―
胃癌,肺炎
45
47
内視鏡的に摘出し手術を回避できた柿胃石の1例
品川区胃がんリスク検診3年目の成績
佐倉中央病院
荻原 崇,塩屋萌映,岩淵康雄
荏原医師会 胃がんリスク検診検討委員会1) ,品川区医師会2)
西川順一1) ,瀬底正彦1) ,櫻井幸弘2)
【症例】53歳 男性【主訴】上腹部痛【既往歴】高血圧、糖尿病に
て通院中【現病歴】平成28年1月26日朝からの上腹部痛のため来
院した。
【入院時身体所見】身長165cm、体重71. 7kg。血圧140/ 67
mmHg、脈拍84/ 分、体温36. 5度。上腹部に限局的に圧痛を認め
たが、筋性防御、反跳痛は認めなかった。他腹部全体は平坦で
腹部膨満は認めなかった。【血液検査所見】白血球7500/ μl、
CRP 0. 05と炎症反応は認めず、ヘモグロビン16. 9g/ dlと貧血も
認めなかった。他に特記事項はなかった。腹部単純レントゲン
写真:小腸ガスやNiveau像など腸閉塞を示唆する所見は認めな
かった。【経過】同日PPIと胃粘膜保護薬、鎮痛剤の内服を処方
し翌27日に上部消化管内視鏡検査予定とし帰宅とした。上部消
化管内視鏡:当初は胃潰瘍や急性胃炎を想定し経鼻内視鏡で検
査を開始したが、胃体下部から前庭部に巨大な黄色の胃石を複
数認めたため、一旦内視鏡を抜去した。この時点で患者本人に
柿の摂取をしたかどうか問診したところ、1月24〜25日にかけ
て干し柿12個を食べたとのことで、柿胃石と判断した。経口内
視鏡を挿入しバスケット鉗子で摘出を試みたが、胃石は大きい
もので直径5cm以上あり把持できず、またスネアでも表面が平
滑なため把持できなかった。このため生検鉗子で少しずつ破砕
しスネアで把持し繰り返し摘出した。またオーバーチューブも
使用し、内視鏡先端に透明フードを装着し胃石を吸引し摘出を
繰り返した。摘出には1時間30分を要した。なお胃粘膜には体
部小彎、胃角部、前庭部にびらんから潰瘍を認めた。5日後に再
診し、全身状態は良好で自覚症状はなく、また腹部単純レント
ゲンで腸閉塞像を認めないことを確認した。【摘出標本】最大
径5cmの胃石2個をはじめ多数の胃石を摘出し、結石分析ではタ
ンニンが主成分であった。【結語】比較的稀とされる柿胃石を
認め内視鏡的に摘出し手術を回避し得た1例を経験したので文
献的考察を含め報告する。
品川区の対策型検診( X線検査) での胃がん検診は平成23年度の
受診率4. 3%にすぎない。そこで平成24年7月からH. pylori感染
とペプシノーゲン法による胃がんリスク検診( ABC検診) を導
入した。対象は50歳から75歳までの区民で、5歳毎に行ってい
る。3年間の結果を報告するが、50歳からの検診の報告は他に
ない。受診対象者は3年間合計73, 814人、受診者は8, 832人( 受
診率12%) であった。リスク群別の割合はA群61%、B群13%、C
群22%、D群4%であり、年度別にみるとA群はやや増加、C群は
減少傾向を示した。年齢別リスク群をみると、50歳ではA群が
80%近いが加齢とともに低下し、CD群は加齢とともに増加し
た。BCD群( 要精密検査者) は3, 403人( 要精査率38. 5%) であっ
た。内視鏡検査による精検受診者数は2, 212人( 精検受診率
65%) であった。発見がん数は32例で、早期がん30例、進行がん
2例で、がん発見率は0. 36%であった。各リスク群別の胃がん
件数をみると、B群で進行がん1例、早期がん2例、C群で進行が
ん1例、早期がん21例、D群で早期がん7例であり、がん発見率は
B群0. 31%、C群1. 26%、D群2. 29%であった。なお、最年少の発
見がんは55歳の2例であり、65歳以上が27例を占めた。50歳か
らの検診の適否の判断として、発見がんの最年少が55歳であり、
除菌治療歴を有する者が混入し未感染率を高めている可能性は
あるもののA群をピロリ菌未感染と想定したとき50歳での感染
率は20-24%にすぎず、検診効率を考慮すれば容認できる。
柿胃石,胃内異物
46
胃がんリスク検診,品川区
48
胃MALTリンパ腫と早期胃癌を合併した3例
1)
横浜市立大学附属市民総合医療センター 内視鏡部 ,
横浜市立大学附属病院 消化器内科2)
池田良輔1) ,佐藤知子1) ,福地剛英1) ,小林亮介1) ,眞一まこも1) ,
平澤欣吾1) ,前田 愼2)
【背景】胃MALTリンパ腫と胃癌の発生にHelicobacter pylori (Hp)
感染の関与が広く知られているが、両者の合併例の報告は少な
い。当院で胃MALTリンパ腫と早期胃癌を合併した3例を経験
したので若干の文献的考察を加え報告する。【症例1】55歳女性、
胃体上中部前後壁大彎に80mmのMALTリンパ腫を認め、Hp陽
性のため除菌施行しCRを得られた。その後、経過観察中の
2008年に胃体下部小彎25mm大0-IIb( cT1a、生検tub2) 、胃体下前
壁6mm大IIc( cT1a、生検tub2) を認め、ESDを施行し両病変とも
に治癒切除であった。さらに2013年に胃角部小彎20mm大0-IIc
( cT1a、生検tub2) の異時多発を認めたが、こちらもESDにて治
癒切除が得られた。 【症例2】68歳男性、穹窿部前壁に30mm大
のMALTリンパ腫と体上部後壁に30mm大の0-IIa( cT1a、生検
tub1) を認めた。Hp陽性であり除菌施行。胃癌に対してはESD
を施行し治癒切除が得られたが、除菌後もMALTリンパ腫の残
存を認めたため現在放射線治療中である。【症例3】35歳女性、
胃体上中部大彎後壁60mm大のMALTリンパ腫と胃角部大彎に
25mm大の0-IIc( cT1a、生検でsig) を認めた。Hp陽性。両病変に
対し腹腔鏡下胃全摘術+D1郭清が施行された。手術検体の病理
結 果 は L/ Gre, 0-IIc ( 17 × 13mm) , sig, pT1a, ly0, v0, pN0
( 0/ 38) , pPM0, pDM0, MALT lymphomaであった。
【結論】胃
MALTリンパ腫と胃癌の合併例の報告は少なく稀であるが、胃
MALTリンパ腫では胃癌合併も念頭に置いた経過観察が重要で
ある。
鎮静下胃ESD施行時における呼吸機能低下の危険因
子における検討
千葉大学医学部 先端応用外科学1) ,
千葉大学大学院医学研究院 消化器・腎臓内科学2)
相川瑞穂1) ,上里昌也1) ,浦濱竜馬1) ,羽成直行1) ,角田慎輔1) ,
加賀谷暁子1) ,武藤頼彦1) ,小倉由起子1) ,中野 明1) ,玉地智英1) ,
松原久裕1) ,松村倫明2) ,横須賀收2)
【目的】早期胃癌における内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)は高度な技
術を必要とし、手術時間が長くなる傾向があり、鎮静・鎮痛は不可欠であ
る。しかし鎮静を行うことによって術中呼吸障害などの偶発症を伴う危
険性がある。鎮静下ESDを安全に行うために、呼吸機能低下の危険因子を
明らかにし、術中呼吸障害のハイリスク群を術前に抽出することを目的と
した。【方法】胃ESDで手術時間が概ね2時間以内と判断し、鎮静下手術を
行う症例を対象とした。鎮静はプロポフォールの静脈内投与で行うもの
とし、1-2mg/ kg bolusで導入した後、1-4mg/ kg/ hrで維持した。中途覚醒が
見られた場合は適宜0. 5-1mg/ kg bolus投与を行い、術中はBIS値が70以下
となるようにプロポフォールの投与量を調節した。鎮痛としてペンタゾ
シンを適宜使用した。術中呼吸状態を酸素飽和モニタに加え、気流音から
呼吸数をモニタするアコースティックセンサ(RRa)、胸郭・腹部運動から
呼吸状態をモニタするzRIP努力呼吸センサを使用しモニタリングした。
これらにより得られた術中の低呼吸・無呼吸数(回/ hr)が12回以上の場合
を呼吸抑制ありと定義し、年齢、性別、BMI、ASA-PS分類、呼吸機能、喫
煙指数、心機能、腎機能、肝機能、プロポフォール投与量(mg/ hr)、無呼
吸症候群(以下SAS)の有無についてそれぞれ比較検討した。【成績】対象
40症例はいずれも完遂可能であり、重篤な偶発症は認めなかった。患者背
景は平均年齢70. 9歳。男女比は男29例、女11例。40症例中、呼吸抑制あり
群となったのは17例であった。危険因子として有意差がでた項目はプロ
フォール投与量(呼吸抑制あり群:平均327. 40mg/ hr、呼吸抑制なし群:平
均267. 72mg/ hr、p=0. 037)およびSASの有無(p=0. 006)のみであった。さ
らにSASの重症度が増すにつれ無呼吸・低呼吸数も増加する傾向がみられ
た。【結論】鎮静下ESDにおいてSASを有する症例では術中、低呼吸・無呼
吸を呈する回数がSASを有さない症例と比べ多く認められた。SASの有無
は鎮静下ESDにおける呼吸抑制の危険因子のひとつとして留意すべきであ
ると考えられた。
MALTリンパ腫,胃癌
― 37 ―
ESD,鎮静
49
51
出血を繰り返した二次性大動脈十二指腸瘻の1例
川崎幸病院 消化器内科
高畑彩子,十倉淳紀,岡本法名,堀野
大前芳男
誠,藤原裕之,
【症例】62歳男性. 【主訴】吐下血. 【既往歴】4か月前に腹部大
動脈瘤に対し, 人工血管置換術施行. 【現病歴】2011年8月大量
の吐下血を認めたため, 当院外来を受診. 精査加療目的に緊急
入院となった. 【経過】 入院時の腹部造影CT検査で, 十二指腸
水平脚近傍の人工血管周囲に肉芽組織の増生が認められたが,
明らかな造影剤漏出像は認められなかった. 上部消化管内視鏡
では, 十二指腸3rd portionに小さな肉芽を認めた. 下部消化管
内視鏡でも出血源は認められず, 再出血も認められなかったた
め, 第9病日に退院となったが, その2日後に再度吐下血をされ
たため, 再入院となった. CTおよび内視鏡所見は前回同様であ
り, 小腸カプセル内視鏡を用いて水平脚以深の観察を行った
が, 活動性の出血源は特定できなかった. 第11病日に吐血し,
直後に内視鏡を施行したところ, 肉芽付近から噴出性の出血が
認められた. 周囲にHSE局注を施行したところ止血が得られ,
翌日以降再出血は認められなかった. 第13病日に血管造影検査
を行い, 十二指腸近傍の異常血管や仮性動脈瘤, また大動脈か
らの穿通枝などの有無を検索したが, 異常所見は認められな
かった. 外科的な十二指腸切除も検討したが, 大動脈周囲の癒
着や侵襲度の問題から経過観察の方針となった. しかし, 退院
1か月後に再度吐下血を認め, 内視鏡およびCT検査で大動脈十
二指腸瘻の診断となり, 緊急手術を行った. 人工血管吻合部の
離解部が確認され, 縫縮を試みたが, 術中心停止となり, 死亡
された. 【考察】大動脈腸管瘻は人工血管置換術後の重篤な合
併症の一つであり, 診断が困難なうえ, 致死率の高い疾患であ
る. 大量の吐下血で発症する場合もあるが, 瘻孔が小さなうち
は一過性の消化管出血を繰り返すこともある. 本例は肉芽から
の出血が大きな瘻孔形成の前兆であったと考えられる稀な症例
であり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
千葉県がんセンター 消化器外科1) ,同 消化器内科2) ,
同 臨床病理部3)
外岡 亨1) ,滝口伸浩1) ,山本 宏1) ,鍋谷圭宏1) ,池田 篤1) ,
貝沼 修1) ,早田浩明1) ,今西俊介1) ,有光秀仁1) ,小林亮介1) ,
知花朝史1) ,石毛文隆1) ,永田松夫1) ,喜多絵美里2) ,鈴木拓人2) ,
廣中秀一2) ,原 太郎2) ,山口武人2) ,竹山裕之3) ,荒木章伸3) ,
伊丹真紀子3)
【緒言】胃癌の進展度および深達度診断は、拡大観察や画像強調などの内
視鏡画像の進歩とともに診断能が向上している。しかしまれに、画像の進
歩にも関わらず、進展度および深達度における術前画像診断と術後病理診
断が乖離する症例を経験する。今回、術前後で進展度診断が大きく乖離し
た胃癌の一例を経験したため、報告する。【症例】70代、男性。胃癌検診に
て異常を指摘され、胃癌の診断にて当科紹介となった。腫瘍マーカーは
CEA、CA19-9ともに陰性であった。上部内視鏡検査上、EG junctionから胃
体中部にかけての半周性の40mm大の0-IIa+IIb病変で、深達度はcT1bと診
断した。生検では、腫瘍部位から低分化および高分化腺癌が認められ、
negative biopsy部からは癌は検出されなかった。腹部造影CTでは、胃噴門
部から胃体中部小弯側にかけて軽度の壁肥厚が認められ、リンパ節腫大も
有意なものは指摘されず、術前総合診断はcT1bN0M0 cStage IAと判断した。
上記胃癌病変に対し、胃全摘術、D1+郭清、結腸後Roux-Y再建を施行した。
腹膜播種は認めず、術中腹腔洗浄細胞診も陰性であった。口側食道切離断
端を術中迅速組織診に提出し、腫瘍陰性を確認した。術後経過は良好で、
第8病日に退院となった。病理結果は、中分化腺癌を主体に低分化、粘液
癌成分も伴っており、進展範囲は135mm x 75mmにも及んだ。深達度はpT3
で、リンパ節転移もpN3a ( 14/ 60) と、術前診断と大きく乖離しており、最
終病理診断はpT3N3aM0 pStage IIIBであった。術後補助化学療法を行い、
術後11ヶ月経過し、無再発生存中である。【結語】術前後の進展度診断が
大きく乖離した、広範囲進行胃癌の一例を経験した。診断の乖離の原因と
して、線維化成分が比較的少なかったことによる、術前画像上の、進行癌
としては非典型的な比較的良好な胃の拡張と壁進展があったと考えられ
た。
胃癌,進展度診断
大動脈十二指腸瘻,消化管出血
50
好酸球性胃腸炎の治療中に診断に至ったアスピリン
不耐症の一例
術前後の進展度診断が乖離した広範囲進行胃癌の
一例
52
内 視 鏡 的 に 摘 除 し 得 た 胃 hamartomatous inverted
polypの一例
千葉ろうさい病院 内科1) ,同 病理診断科2)
吉田直樹1) ,粟津雅美1) ,渡邉由芙香1) ,宮村達雄1) ,久我明司1) ,
桝谷佳生1) ,菰田文武1) ,田中武継1) ,尾崎大介2)
日本大学医学部 消化器肝臓内科
原澤尚登,春田明子,中本將秀,岩本真帆,永井晋太郎,堀内裕太,
好士大介,水野滋章,後藤田卓志,森山光彦
症例は67歳男性。40歳頃から気管支喘息、50歳頃から慢性副鼻
腔炎で近医にて加療されていた。2015年1月、繰り返す嘔吐と
食思不振を主訴に当科を受診した。来院時の診察では、胸部聴
診で喘鳴を聴取した。血液検査では、白血球数 23, 800/ μL,
好酸球分画 79. 0 % , IgE 732 mg/ dL , CRP 5. 01 mg/ dLだった。
胸腹部CT検査では食道と胃前庭部の壁の壁肥厚を認めた。上
部消化管内視鏡検査及び下部消化管内視鏡検査を行いともに明
らかな粘膜所見は認めなかったが、食道・胃・十二指腸及び大
腸より複数個の生検を行った。生検の病理検査で好酸球性胃腸
炎に合致する所見が得られた。prednisolone 40mg/ 日の点滴投
与を開始した。翌日の血液検査では白血球数・好酸球分画とも
に改善を認めたが、臨床症状の改善はなかった。治療開始2日
後より喘息症状は増悪し、酸素吸入が必要となり高度の喘息発
作を認めた。また、両下肢に発赤を伴う膨隆疹も認められた。
以上の経過よりアスピリン不耐症を疑い、predonisoloneから
dexamethasone 6. 6mg/ 日点滴に変更した。喘息症状は速やかに
改 善 し、酸 素 吸 入 を 中 止 し た。食 事 摂 取 も 可 能 と な り、
predonisolone 40mg/ 日の 内服に変更し漸減したが、臨床症状の
悪化はなく経過した。本症例は好酸球性胃腸炎の治療としてコ
ハク酸エステル型ステロイドの投与を行ったところ高度の喘息
発作と皮膚症状を発症した。( 1) 酢酸エステル型ステロイドに
変更し速やかに症状の改善を認めたこと、( 2) 成人発症の気管
支喘息と慢性副鼻腔炎の既往を持つことよりアスピリン不耐症
と診断した。好酸球性胃腸炎については、近年アスピリン不耐
症の気道外病変として注目されており、両者の関連について若
干の文献的考察を踏まえ報告する。
【症例】48歳女性。【現病歴】胃癌検診を受ける毎に胃ポリープ
を指摘されるため近医受診。同院での上部内視鏡検査にて胃内
に有茎性のpolypoid lesion認めたため、精査加療目的にて当科外
来紹介受診となる。当科外来での上部内視鏡検査にて、胃体上
〜中部前壁に周囲と同様粘膜で覆われたΦ18×15mm大の”キノ
コ状”外観を呈する有茎性病変認められ、同時に施行した超音
波内視鏡にて胃壁から立ち上がる粘膜下層内に類円形の嚢胞様
構造が複数観察された。病変頂部からの生検ではGr. 1であっ
たが、御本人の強い希望もあり内視鏡的摘除目的にて当科入院
となる。【入院時現症】特記事項なし。【入院時検査所見】特記
事項なし。【入院後経過】入院当日EMR施行。病変茎部に生食
局注し、スネアにて病変を摘除した。術後経過良好にて7日後
に退院となる。【病理組織所見】粘膜仮想と考えられる部位に
嚢胞状に拡張した多数の腺管が認められ、大型導管の周囲に胃
底腺様の小型腺腔の密在が観察された。拡張腺管は単層円柱上
皮による裏打ちが認められ、構造異型や腫瘍性細胞の増殖はな
い。胃底腺の過形成性増殖は認めず、粘膜表層部には導管拡張
や腺造成などの変化に乏しく、hamartomatous inverted polypと診
断された。【結語】胃hamartomatous inverted polypは比較的稀な
疾患とされ、医学中央雑誌にても報告は40件程度である。今回、
我々は内視鏡的に摘除し得た有茎性胃hamartomatous inverted
polypの一例を経験したため若干の文献的考察を加え報告する。
好酸球性胃腸炎,アスピリン不耐症
― 38 ―
胃,hamartomatous inverted polyp
53
55
当院における胃ESD適応外病変の検討
術後13年で肝再発をきたした小腸GISTの1例
日本大学医学部附属板橋病院 消化器肝臓内科
原澤尚登,春田明子,岩本真帆,中本將秀,葉山 譲,佐藤秀樹,
水野滋章,後藤田卓志,森山光彦
日本大学医学部 内科学系消化器肝臓内科学分野
大内琴世,中河原浩史,渡邊幸信,平山みどり,高橋利実,
山本敏樹,小川眞広,松岡俊一,後藤田卓志,森山光彦
【背景】胃ESDは2007年に保険収載され、現在では早期胃癌およ
び胃腺腫に対する標準治療となっている。当院では2005年3月
〜2015年12月末までの期間に計520病変に対し胃ESDを施行し
た。【対象】このうち術後の病理組織にてESD適応外と診断さ
れた33病変について検討した【結果】33病変中29病変は男性、
4病変は女性であった。平均年齢は70. 91±8. 52歳。病変部位は
噴門部1病変、体上部10病変、体中部7病変、体下部4病変、胃角
部2病変、前庭部9病変、穹窿部病変はなかった。病変の肉眼型
は0-I 1病変、0-I+IIa 1病変、IIa4病変、IIa+IIc 6病変、IIc 20病変、
IIc+IIa 1病変で、IIc病変が多かった。病理組織型はtub1が12病
変、tub2が7病変、porが4病変、sigが1病変、papが1病変、組織混
在型が8病変であった。深達度はm病変が9病変、sm1病変が8病
変で、sm2病変が16病変であった。切除検体は31例が一括切除、
2例が2分割となった。平均処置時間は131. 39±86. 04分。平均
病変サイズは19. 93±8. 78mmであった。断端陽性率は15. 2%で
あった。偶発症は3例で術中穿孔、1例で術中大出血、2例で遅発
性出血を認めたが、遅発穿孔は認めなかった。33例中12例が追
加手術となった。術後追加手術を施行せず3年以上経過したの
は8例であった。このうち、当科外来で経過観察しえた7症例で
は2015年3月の時点では再発・転移は1例も認めていない。【考
察】適応外病変はIIc病変が多く、処置時間も長く、偶発症の発
症率も高い傾向が認められた。また、断端陽性率も高かった。
追加手術せず、当院で3年以上経過観察した症例では再発・転移
とも認めていないが、今後も厳重な経過観察が必要と考えられ
た。
【症例】79歳女性。64歳時に下血を主訴に来院し、回腸に70mm
大の腫瘍を認めたため小腸部分切除術を施行された。病理組織
学的所見で、腫瘍はGastrointestinal Stromal Tumor( 以下、GISTと
略記) であった。術後数年間は当院で経過観察されていたが、
再発がみられなかったため、近医へ紹介となっていた。77歳時
に近医で施行されたた腹部超音波検査で多発する肝腫瘍を認め
たため、精査目的に当院へ紹介受診となった。腹部超音波では
肝内に最大45mm大の多発する低エコー腫瘤を認めた。ソナゾ
イド造影では血管相で均一に染影効果を認め、後血管相で欠損
像を呈した。腹部造影CTでは、肝内に造影効果を伴う多発す
る肝腫瘍を認めた。転移性肝腫瘍を考え、上下部消化管内視鏡
検査を行ったものの原発巣は認めなかった。PET-CTでも同部
位でFDGの著明な集積を認め、悪性腫瘍が疑われたため、確定
診断目的で肝腫瘍生検を行った。腫瘍細胞は紡錘形の異型細胞
の束状増殖であり、免疫染色ではc-kitが強陽性であった。前回
手術時の小腸GISTの検体と類似した所見であり、小腸GISTの
多発肝転移と診断した。イマチニブ400mg/ 日による治療を行
い、現在約15ヶ月を経過し、腫瘍径が約11%の減少を認めてお
り、部分奏功の状態である。【考察】GISTは完全切除後であっ
ても約40%と再発率は高く、5年生存率54%とされている。再
発例では2年以内に再発することが多いと報告されており、初
回再発が10年以降に生じる症例は稀である。「GIST」
「再発」を
キーワードとして、医学中央雑誌にて2002年から2015年まで検
索したところ、10年以降の再発症例は、自験例を含め14例が報
告されていた。術後長期間を経て初回再発をきたすこともあ
り、長期的な経過観察が必要であると考えられた。
GIST,再発
胃ESD,適応外病変
54
繰り返す腹痛症状から遺伝性血管性浮腫と診断し得
た一例
国立病院機構 災害医療センター 消化器内科1) ,
同 臨床検査科2) ,国立病院機構 東京病院 消化器内科3)
佐々木善浩1) ,木谷幸博1) ,上條 孟1) ,外川菜々子1) ,島田祐輔1) ,
林 昌武1) ,永島加世1) ,大野志乃1) ,上市英雄1) ,平野和彦2) ,
川村紀夫3)
【症例】23歳女性
【既往歴】急性胃腸炎(4-5回入院歴あり),精神科通院(仕事上
のストレス)
【生活歴】飲酒:機会飲酒、喫煙歴:なし
【現病歴】今まで急性腹症,急性胃腸炎で入院を繰り返していた.
2015年11月,下腹部痛,嘔気・嘔吐認め,当院受診となった.
採血でWBCが2万以上高値を示し,CT画像上も小腸を中心とし
た明瞭な三層構造を有する著明な浮腫性壁肥厚と多量の腹水を
認め,精査加療目的で入院となった.
以前に上・下部内視鏡およびカプセル内視鏡施行したが有意な
所見がなかった.本人の問診から1.腹痛、嘔気などの症状を
小学生頃から反復.2.4-5年に1回,同様の症状で入院を繰り
返す.3.月経困難症なし.4.両上肢の突然の腫脹,上肢や大
腿の内側に皮疹の出現・消失を年に数回繰り返す.5.ストレ
スや天候などがきっかけとなり、腹痛が出現.上記より遺伝性
血管性浮腫(Hereditary angioedema, 以下HAE) も鑑別と考え,血
清補体価測定し,C3:61mg/ dl,C4:6mg/ dl, CH:50:6U/ mlと
低値であり,C1インヒビター活性を測定.10以下であり,HAE
と診断した.
【考察】HAEは, C1インヒビターの遺伝子異常により,機能低下
を起こし,凝固系やキニン-カリクレイン系が活性化し,ブラジ
キニンの産生で血管透過性が亢進し,引き起こされる疾患であ
る.消化器症状で受診することも多いが,通常は急性腹症や腸
炎として診断されていることも多いと思われる.繰り返す腹痛
症状から遺伝性血管性浮腫と診断し得た一例を経験したので文
献的考察を加えて報告する.
56
ハイネイーゲルとCa製剤による粘稠性腸内容が要
因となった可能性のある腸閉塞をきたした食道癌術
後の1例
横浜市立大学 外科治療学
長澤伸介,橋本 至,山田貴允,山本直人,原田
湯川寛夫,利野 靖,益田宗孝
浩,大島
貴,
症例は68歳男性。咽頭痛にて前医受診し、頚部食道癌下咽頭浸
潤の診断で当院を受診。臨床腫瘍科での根治的科学放射線療法
後、当科にてsalvage 手術となる。施行術式は咽頭喉頭食道全摘
出術・3領域郭清、亜全胃管による胸腔内後縦隔経路での咽頭再
建。永久気管孔造設、甲状腺・副甲状腺全摘(植込なし)、腸瘻
造設(Treizより20cm)を施行した。術後1日目よりハイネイー
ゲルを開始。術後2日目より腸瘻よりチラーヂン、乳酸Ca・Vit.
D投与を開始。腸瘻の投与速度を徐々に増加。術後6日目、胸部
Xpにて挙上胃管が右方へ突出し始める。術後8日目、腹部膨満
感あり、CTにて腸閉塞の診断。胃管挿入し1790mlの排液があっ
た。小腸造影を行いながら、イレウス管の挿入を行う。挿入時、
小腸に杏仁豆腐様の残渣を含む腸内容あり。腸内容液を洗浄吸
引。さらに後日イレウス管位置を調整し 1000ml程度の杏仁豆
腐様の残渣を吸引すると排液は通常腸液となった。その後、他
の経腸栄養剤を使用おこなったところ、腸閉塞は生じず、通常
通り使用することができた。 ハイネイーゲルは投与時には液
状であるが、酸性環境の胃内において、ペクチンとカルシウム
が反応することにより、半固形状になるように調製された濃厚
流動食品である。Treitz靭帯より肛門側の腸瘻の患者では、通
常ゲル化せず、他の経管栄養剤と同様に扱える。また乳酸カル
シウム( 以下乳酸Ca) 投与により、胃酸分泌に関わらずゲル化
を促進するという報告がなされている。今回食道癌術後で、ハ
イネイーゲルを腸瘻より投与していた患者において、併施した
副甲状腺全摘後に対する乳酸Ca投与の結果、粘調度の高い腸内
容が生じ、腸瘻速度の増加に応じて、その粘度の高い腸内容が
術後小腸への負担となり腸閉塞を生じた可能性のある一例を経
験したので報告する。
遺伝性血管性浮腫,急性腹症
― 39 ―
ハイネイーゲル,カルシウム製剤
57
カプセル内視鏡検査で異常を認めなかった好酸球性
胃腸炎の1例
自治医科大学附属さいたま医療センター
浦吉俊輔,賀嶋ひとみ,小糸雄大,石井剛弘,池田正俊,上原健志,
西川剛史,川村晴水,山中健一,浅野岳晴,鷺原規喜,松本吏弘,
浅部伸一,宮谷博幸,眞嶋浩聡
【症例】19歳、男性【既往歴】アトピー性皮膚炎 小児喘息【臨
床経過】平成27年7月より腹部膨満感、1日5回程度の下痢が出現
し、近医を受診した。整腸剤が処方され、1週間後の再診時には
下痢回数は減少したが、腹部膨満の悪化を認めた。同日撮影し
たCTで腹水貯留と小腸壁の肥厚を認め、当院紹介となった。
来院時、発熱や腹痛はないものの腹部膨満が著明であり、採血
検査では白血球、好酸球の増多(WBC 9130/ μL( Eosino 68%))
を認めたが、炎症反応の上昇(CRP 0. 1 mg/d1)は認めなかっ
た。上下部消化管内視鏡検査では特異な異常は認めなかった
が、ラ ン ダ ム に 施 行 し た 食 道 粘 膜、全 結 腸 粘 膜 の 生 検 で
12-25/ HPFの好酸球浸潤を認めた。カプセル内視鏡検査でも明
らかなびらん、潰瘍などを認めず異常なしの所見であった。腹
水中の好酸球増加もあり、好酸球性腸炎と診断した。プレドニ
ン40mg/日の内服を開始したところ速やかに症状の改善を認
め、内服開始5日目には白血球、好酸球減少(WBC 5200/ μL
(Eosino 0. 7%))を認めた。ステロイド治療が奏功していると
判断し、現在通院加療中である。【考察】好酸球性胃腸炎は比較
的稀な疾患ではあるが、近年報告が増えてきている。全消化管
での病変が起こりえるが特に小腸病変の頻度が多く、カプセル
内視鏡検査が有用とする報告もある。本症例ではCT上著明な
小腸腸管壁の浮腫上変化を認めたものの、カプセル内視鏡検査
では異常を指摘できなかった。若干の文献的考察を加えて報告
する。
59
横須賀市立市民病院1) ,横浜市立大学医学部 消化器内科学2)
山形寿文1) ,幡地正輝1) ,中山沙映2) ,諸井厚樹1) ,有馬 功2) ,
小松和人1) ,前田 愼2)
【目的】大動脈解離を伴わない孤立性上腸間膜動脈解離は病態
が不明で治療法が確立していない稀な疾患とされている.今回
我々は腹痛を主訴に受診され,腹部造影CTで急性上腸間膜動
脈解離と診断し,保存的加療で軽快した1例を経験したため報
告する.【方法】症例は65歳女性.昼食後突然のpain scale10/ 10
の腹部全体に及ぶ腹痛を自覚されたため当院救急外来を受診さ
れた。来院時意識清明で血圧177/ 95mmHg,脈拍66/ 分,呼吸20
回/ 分,体温36. 2℃だった.嗜好歴は煙草を1日20本嗜み,飲酒
は機械飲酒だった.家族歴は特記事項はなく,身体所見は臍上
部に圧痛ならびに反跳痛がみられた.血液検査では白血球
15900/ ul,D-dimer0. 59ug/ mLと軽度白血球上昇がみられた.腹
部造影CTでSMA解離所見が見られたため腹痛の原因は急性孤
立性上腸間膜動脈解離と診断した.大動脈解離を伴わず,空腸
動脈枝を含め主要臓器血流に問題がないため消化器内科で入院
加療を行った.入院後絶食補液管理で疼痛は軽減し,腸管虚血
の所見も見られなかった為厳重な血圧管理とヘパリンナトリウ
ム10000単位持続点滴による保存的加療を行ったところ第7病日
のCTで解離所見に変化がないため第11病日に軽快退院された.
【成績】発症後2週後,1か月後,3か月後にCTで経過観察したと
ころ次第に解離部は解消し,6か月後には解離部は確認されな
くなった.【結論】上腸間膜動脈解離は特異的症状が乏しいた
め腹部造影CT検査を行う際にはどう疾患を念頭に血管の走行
に留意する必要がある.
好酸球性胃腸炎,カプセル内視鏡
58
絞扼性イレウスの判別式とICG蛍光法による血流評
価で腸管切除を回避できた1例
横浜市立大学医学部 消化器・腫瘍外科1) ,
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター2) ,
横須賀共済病院 外科3) ,NTT 東日本 関東病院 外科4) ,
横浜市立大学医学部 がん総合医科学5)
関澤健太郎1) ,石部敦士1) ,諏訪宏和2) ,樅山将士1) ,渡邉 純3) ,
小坂隆司1) ,渡辺一輝4) ,大田貢由2) ,秋山浩利1) ,市川靖史5) ,
國崎主税2) ,遠藤 格1)
【はじめに】絞扼性イレウスに伴う腸管壊死は不可逆的で腸管切除を必要とす
る.腸管切除回避のためには,早期診断,手術が重要となる.絞扼性イレウス
の診断は画像のみでは困難な場合がある.当科では絞扼性イレウスの判別式
(Y=0. 48×Peritoneal irritation sign( 1/ 0) +0. 31×Collection of ascites ( 1/ 0) −0.
052×Pco2( mmHg) +2. 12 ( 1: positive,0: negative) )が0. 6以上を絞扼性イレウ
スと診断し,緊急手術の判定に用いている.また腸管切除は肉眼的所見によっ
て判断されることが多く,切除範囲決定に難渋することもある.近年,ICG蛍
光法は腸管吻合部の血流評価や肝切除範囲決定に用いられている.今回,絞扼
性イレウスの腸管血流評価にICG蛍光法が有用であった1例を経験したので報
告する.【症例】87歳の男性.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.開腹歴はなく,腹
部所見では腹膜刺激症状を伴う左側腹部痛を認めた.血液検査所見では炎症反
応の上昇は認めなかった.腹部造影CT検査でclosed loop obstruction,同腸管の
造影効果減弱,腹水を認めた.絞扼性イレウスの判別式はY=1. 00(>0. 6)で
あり,画像所見と併せ,絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.腹腔鏡
でアプローチした.手術所見では血性腹水を認め,腸管は暗紫色を呈しており,
癒着した大網による内ヘルニアと診断した.癒着を剥離して絞扼を解除した.
肉眼的に腸管は暗紫色を呈しており壊死を疑ったが,血流観察目的にICG蛍光
法を用いた.暗紫色の腸管であっても均一にICGが流入することを確認し,腸
管壊死はないと判断して,腸管切除は行わなかった.術後7日目より食事を開
始し,術後14日目に軽快退院した.【考察】当科で行っている絞扼性イレウスの
判別式は有効であり,緊急手術の判断の一助となった.またICG蛍光法は,臓
器血流を鋭敏に可視化する事ができ,切除の有無や範囲の判断に有効と考えら
れた. 【結語】絞扼性イレウスの判別式を用いて早期に手術を行い,ICG蛍光
法による血流評価で腸管切除を回避できた1例を経験した.
保存的治療で軽快した孤立性上腸間膜動脈解離の
1例
上腸間膜動脈解離,診断
60
小腸虚血による汎発性腹膜炎術後に診断に至った直
腸癌の1例
慶應義塾大学医学部外科学教室 一般・消化器外科
鈴村博史,茂田浩平,長谷川博俊,岡林剛史,鶴田雅士,石田
安藤知史,岩間 望,徳田敏樹,豊田尚潔,北川雄光
隆,
【症例】45歳女性
約1ヶ月前から腹痛を認め、吐血と全身の痺れも認めたため当
院救急搬送された。腹膜刺激症状および腹部造影CT検査にて
free airを認めたため、汎発性腹膜炎と診断した。術前に上部消
化管内視鏡検査を施行し、上部消化管に異常がないことを確認
し、下部消化管穿孔疑いにて緊急手術を施行した。
開腹すると膿性腹水と回腸末端から約90cmの小腸に虚血性変
化を認めたが、明らかな穿孔部は認めなかった。術中内視鏡を
施行し、大腸に穿孔がないことも確認した。右卵管も壊死して
おり回盲部切除術、右卵管切除術、回腸人工肛門造設術を施行
した。術後、一時的に透析を必要としたが第28病日に離脱し、
第48病日に転院となった。病理組織学的所見では回腸壁全層が
壊死に陥っており、虚血性腸炎に矛盾しない所見であった。
術後4ヶ月の時点で下部消化管内視鏡検査を施行したところ、
AV 20cmの直腸に全周性2型腫瘍を認め、直腸癌と診断した。
明らかな遠隔転移などないことを確認し、高位前方切除術を施
行した。術後経過良好で術後10日で退院となった。病理組織学
的所見はpType2, tub2, pT3N0M0 fStage2であった。術後3ヶ月
経過しているが再発は認めていない。
【考察】小腸虚血性病変は一般的に急性経過を辿り緊急手術を
要する。本症例は骨盤内炎症疾患が原因となり慢性経過を辿っ
て虚血性腸炎を発症したと考えられた。術中内視鏡にて大腸に
穿孔がないことは確認したが、前処置不十分な状態であり、粘
膜面を詳細に観察することは困難であった。汎発性腹膜炎の原
因として閉塞性大腸癌による穿孔の可能性が考えられたが、結
腸の拡張や便汁の漏出、術中内視鏡によるAir leakを認めなかっ
たため、卵管壊死に伴う虚血性腸炎と考えられた。今回、小腸
虚血による汎発性腹膜炎術後に診断に至った直腸癌の1例を経
験したので、文献的考察を加えながら報告する。
絞扼性イレウス,ICG蛍光法
― 40 ―
直腸癌,小腸虚血
61
63
直腸癌術後外耳道転移をきたした1例
藤沢市民病院 外科
森 康一,山岸 茂,田中淑恵,中堤啓太,中本礼良,清水康博,
本庄優衣,鈴木紳祐,山本晋也,牧野洋知,上田倫夫,
仲野 明
【症例】88歳男性、進行直腸癌に対し腹仙腹式直腸切断術+D2
郭清施行。病理組織学的検査では、RbPE, pA, pN1, sH0, cP0,
cM0 Stage3aで、pRM1( 251LN剥離面) と診断されたが、高齢で
あることから追加の治療の希望なく、経過観察の方針となった。
術後6ヶ月のCTにて右肺に結節影出現、両側鼠径リンパ節腫大
あり再発の診断となったが、化学療法の希望なく経過観察と
なった。術後1年、局所再発によるイレウスを発症し、回腸-上
行結腸バイパス術を施行した。術後1年6ヶ月、以前より左耳の
難聴は認めていたが左耳痛と耳漏の訴えがあり、視診にて軟骨
部外耳道に腫瘍を認めた。腫瘍により外耳道は閉塞しており、
耳鏡は挿入できず腫瘍の基部は不明であった。また、頭部CT
では外耳道に軟部組織陰影を認め、外耳道壁の溶骨性変化と乳
突蜂巣への腫瘍の浸潤が認められた。直視下に腫瘍の生検を施
行し、病理組織学的検査では、HE染色:直腸癌に類似所見、免
疫染色:CK7( +) 、CK20( +) で、CDX-2( +/ -) であり、直腸癌の
外耳道転移の診断となった。外耳道転移に関しては全身状態を
考えて積極的な治療は行わず、BSCの方針となった。【考察】外
耳道癌は聴器癌の一種であるが、聴器癌は頭頚部悪性腫瘍の約
1. 38%から1. 44%と報告されており、外耳道癌はまれな疾患で
ある。その中でも転移性外耳道癌は極めてまれであり、医中誌
で検索するかぎり、直腸癌の外耳道転移の報告はない。主症状
としては耳痛、耳漏が多く、聴力低下、腫瘤形成などの耳疾患
一般にみられるものと共通するため、慢性中耳炎・外耳道炎と
の鑑別が比較的困難である。そのため、転移性外耳道癌を早期
診断するのは困難であるが、多発転移を有する患者において耳
痛、耳漏などの自覚症状を認めた場合、外耳道転移の可能性も
考慮する必要があると考えられた。【結語】直腸癌術後外耳道
転移をきたした1例を経験したので文献的考察を加えて報告し
た。
都立墨東病院 外科
西原悠樹,脊山泰治,鹿股宏之,工藤宏樹,高橋正道,松岡勇二郎,
和田郁雄,宮本幸雄,梅北信孝
【緒言】膵頭十二指腸切除術(PD)の術後長期合併症として門
脈狭窄、門脈圧亢進症があるが、挙上空腸静脈瘤からの出血は
診断、治療が難しい。今回我々は、門脈合併切除再建を伴うPD
術後の拳上空腸静脈瘤、出血に対し、interventional radiology
( IVR) が有効であった1例を経験したので報告する。【症例】86
歳、男性。膵頭部癌に対してPD、D2リンパ節廓清、門脈合併切
除再建を施行した(T4N1M0, stageIVa)。再発所見なく経過し
ていたが、術後10ヶ月後より貧血、低栄養が進行し、頻回の輸
血を要した。上部下部消化管内視鏡で出血源は明らかでなかっ
た。術後12ヶ月の時点で造影CTにて門脈本幹の狭窄、腸間膜
静脈を介した求肝性の側副血行路と拳上空腸静脈瘤、腹水を認
めた。拳上空腸静脈瘤による消化管出血の診断となり、IVRを
施行する方針とした。【結果】全身麻酔下に、右下腹部小切開で
経回結腸静脈アプローチにて門脈カニュレーションを行った。
造影にて門脈本幹の狭窄と、側副血行路、拳上空腸静脈瘤が描
出された。圧格差があったため門脈ステントを留置し、バルー
ン拡張を行った。側副血行路は拳上空腸静脈に向かう1か所の
みであり、コイル塞栓術を行った。処置後、門脈圧格差は消失
した。術後は貧血の進行も無く、経過良好で第6病日に退院と
なった。治療後の造影CTではステントは開存し、腹水は著明
に減少し、拳上空腸静脈瘤の消失が確認された。貧血、栄養状
態は著明に改善し、現在外来で経過観察中である。【結語】PD
術後の貧血では門脈狭窄、挙上空腸静脈瘤を念頭におき、必要
に応じてIVR治療を検討すべきである。
直腸癌,外耳道転移
62
胆嚢動脈分枝仮性動脈瘤破裂を伴った急性膵炎の
一例
埼玉石心会病院1) ,防衛医科大学校 放射線科2)
水野寿一1) ,山本真由2) ,高柳駿也1) ,染村 祥1) ,阿部敏幸1) ,
坂本竜二1) ,奥平圭輔1)
症例は68歳男性。腹痛を訴え当院に救急搬送された。血液検査
で炎症反応とアミラーゼの上昇、肝胆道酵素異常があり、腹部
造影CTで重症膵炎の診断で当科に入院となった。保存的療法
により改善傾向にあったが、第7病日から腹痛を伴う下血が生
じ、血液検査上で肝胆道系酵素異常を認めたため、造影CTを施
行した。その結果、胆嚢内に胆嚢動脈から発生したと思われる
仮性動脈瘤が認められ、追加で施行されたMRCPでは、総胆管
内に多数の欠損像が指摘された。これらの結果より胆嚢内に形
成された仮性動脈瘤破裂に伴う胆管炎と診断し、緊急TAEにて
止血後、ERCPにて胆管ドレナージを施行した。その後経過は
良好で第20病日に退院となった。膵炎の血管合併症の死亡率は
平均19%( 0%〜53%) で、急性膵炎に限ると死亡率は44%と高く
予後が悪い。今回我々は集学的医療で治療しえた一例を経験し
たので、若干の文献を交えて報告する。
PD術後門脈狭窄、挙上空腸静脈瘤に対してIVRが有
効であった1症例
門脈狭窄,IVR
64
膵癌と鑑別が困難であった自己免疫性膵炎の1例
東京慈恵会医科大学外科学講座 肝胆膵外科1) ,
同 消化器外科2)
大楽勝司1) ,恩田真二1) ,中瀬古裕一1) ,高野裕樹1) ,島田淳一1) ,
兼平 卓1) ,坂本太郎1) ,後町武志1) ,柴 浩明1) ,宇和川匡1) ,
石田祐一1) ,矢永勝彦2)
近年の画像診断能の発展にも関わらず,いまだ膵癌と腫瘤形成性膵炎
の鑑別が困難な症例が存在する.今回,我々が経験した膵癌との鑑別
が困難であった自己免疫性膵炎の1例を報告する.症例は70歳代の男
性.B型肝炎,C型肝炎に対して,当院消化器内科で7年前にインター
フェロン治療を行いウイルス学的著効(SVR)が得られ,その後経過
観察されていた.2014年11月の腹部USで膵尾部に低エコー腫瘤を指
摘された.造影CTで早期相で低濃度,後期相で軽度造影される2cm大
の腫瘍を認め,膵癌が疑われ,2015年1月に当科紹介受診された.初診
時,自覚症状はなく体重減少を認めなかった.EUSでは不整形の低エ
コー腫瘤であり膵癌が疑われたが,当科で施行したCT,MRIで腫瘍の
軽度縮小と周囲脂肪織混濁の改善を認めた.SPIO造影MRIで腫瘍と脾
臓の信号は一致せず,膵内副脾は否定的であった.血清CEA,CA19-9,
DUPAN-2は上昇を認めず,IgG4は31. 9mg/ dlと上昇を認めなかった.
PET-CTでは膵に異常集積を認めなかった.以上の臨床所見や画像所
見の経時的変化より,膵癌は否定できないが,腫瘤形成性膵炎の可能
性が高いと判断され,厳重な経過観察の方針となった.2014年4月の
CTで腫瘍の増大を認めなかったが,7月のCT,MRIでは,膵尾部腫瘍
の体部側に隣接して新たに早期相で結節状の造影不良域を認めた.閉
塞性膵炎の可能性が示唆されたが,膵癌との鑑別が困難であったため,
十分なインフォームドコンセントのもと手術を施行した.術中USで
は膵尾部に2cmの低エコー腫瘤を認め,膵体尾部脾合併切除術(D2郭
清)を施行した.病理組織学的には,膵尾部腫瘤に一致してリンパ球
および形質細胞主体の炎症細胞浸潤,花筵状線維化,閉塞性静脈炎を
認め,免疫染色でIgG4陽性形質細胞が50個以上/ HPFであり,1型自己
免疫性膵炎と診断された.術後膵液瘻Grade Aを認めたがその他の合
併症を認めず,術後12日で退院した.術後8か月経過した現在,IgG4関
連の病変の再燃なく経過観察中である.
急性膵炎,胆道出血
― 41 ―
自己免疫性膵炎,膵癌
65
門脈内膵液瘻で門脈閉塞をきたし保存的加療で改善
を認めた1例
67
回盲部切除後,長期生存を得ている原発不明癌の
1手術例
国立国際医療研究センター 消化器内科
木村花菜,三島沙織,忌部 航,柳澤直宏,渡辺一弘,三神信太郎,
櫻井俊介,永田尚義,横井千寿,小島康志,小早川雅男,秋山純一,
柳瀬幹雄
順天堂大学医学部 下部消化管外科
松澤宏和,雨宮浩太,土谷祐樹,萩原俊昭,牧野有里香,茂木俊介,
高橋里奈,丹羽浩一郎,杉本起一,神山博彦,高橋 玄,小島 豊,
五藤倫敏,冨木裕一,坂本一博
【はじめに】膵仮性嚢胞は急性膵炎の晩期合併症であり、嚢胞感染、
嚢胞内外の出血、後腹膜や腹腔への穿破や周囲臓器への穿通をき
たすことが知らされている。今回、膵仮性嚢胞が門脈に穿破し、
保存的加療により軽快した症例を経験したので報告する。【症例】
52歳男性。既往歴は、アルコール性重症急性膵炎、膵仮性嚢胞形
成である。大腸憩室出血で入院した際に、造影CT検査で膵周囲の
脂肪織濃度の上昇、膵尾部仮性嚢胞に加え、門脈血栓症と側副血
行路の発達を偶発的に認めた。精査のため、MRIとEUSを追加し
た。MRIではT1強調像で血栓よりも低信号を、T2強調像で明瞭な
高信号を認め、拡散強調像で拡散制限を認めなかった。EUSでは
門脈内の内部低エコー・後方エコー増強を認め、門脈内が仮性嚢
胞の内容物で途絶されていた。後日のCT再検で、膵仮性嚢胞と門
脈の交通を認めたことから、門脈内膵液瘻の診断となった。また、
上部消化管内視鏡検査(EGD)では胃食道静脈瘤を認めた。カモ
スタット内服を開始し、26日目には造影CT検査により膵尾部の仮
性嚢胞の縮小を確認した。経過中、食事開始による脂肪摂取量の
増加に伴いアミラーゼの上昇を認めたため、脂肪摂取量を減量し
パンクレリパーゼの内服も追加した。その後、脂肪制限食を指導
の上退院し、外来で経過観察したところ、診断日より約1ヶ月半後
のCT・MRIで膵仮性嚢胞内容物の自然消失を確認した。門脈血流
障害は残存したものの、8ヶ月後のEGDで胃食道静脈瘤は改善傾向
であった。【結語】本症例は、膵仮性嚢胞門脈内穿破に対して、膵
酵素阻害薬内服による保存的治療によって膵仮性嚢胞の改善およ
び側副血行路の改善が認められた症例である。過去の報告では膵
仮性嚢胞の門脈穿破は稀な病態であり、敗血症性ショックを繰り
替えし、致命的な結果をもたらしうる。治療は比較的外科手術が
選択される報告が多い。今回、保存加療により改善を認めた症例
を、文献的考察を含めて発表する。
【はじめに】原発不明癌は十分な検索にもかかわらず原発巣が
不明な転移性悪性腫瘍で,頻度はがん全体の1〜5%と比較的ま
れで,生存期間中央値は6〜9か月と予後不良である.今回,転
移リンパ節に対し回盲部切除を施行し長期生存を得ている手術
症 例 を 経 験 し た の で 報 告 す る.【症 例】患者 は 70歳 代 男 性.
2013年8月から右側腹部違和感で近医受診. CTで回盲部領域の
リンパ節腫大(17mm)が認められ当院へ紹介となった.PETで
は回盲部リンパ節にSUVmax6. 4の集積が認められたが,上下部
内視鏡検査では異常なく,本人希望で経過観察となった.2014
年 5 月 CT お よ び PET で リ ン パ 節 増 大(32mm)と 集 積 増 強
(SUVmax12. 6)が認められ手術の方針となった.手術所見では
腫大したリンパ節が回盲部領域に認められ回盲部切除を施行し
た.術後の病理結果では,リンパ節は転移性adenocarcinomaで
約3cm大のものが2つ認められた.回腸,盲腸,上行結腸,虫垂
のいずれにも腫瘍は認められなかった.免疫染色ではCK7( -) ,
CK20( -) , p53( +) , MUC1, 2, 5AC, 6( +) などから消化管と胆膵系
が疑われ,経口DBE,カプセル内視鏡およびMRCPを施行する
も異常は認められなかった.術後補助化学療法は施行しておら
ず,唯一上昇していたp53は術後速やかに正常化した.術後3年
が経過し,1年毎に施行しているPET,CT,上下部内視鏡検査で
は異常は認められていない.【まとめ】回盲部リンパ節転移を
来した原発不明癌に対し回盲部切除を施行し長期生存を得てい
る1例を経験した.示唆に富む症例と考え報告する.
原発不明癌,回盲部切除
moonchan,moonchan
66
SACI testが局在診断に有用であったインスリノーマ
の一例
群馬大学 消化器・肝臓内科
関谷真志,水出雅文,増田邦彦,小林 剛,深井泰守,星 恒輝,
中山哲雄,山田俊哉,富澤 琢,安岡秀敏,栗林志行,大山達也,
堀口昇男,下山康之,山崎勇一,佐藤 賢,柿崎 暁,河村 修,
草野元康
【症例】50歳代男性【既往例】高血圧症【現病歴】X-1年秋、意
識消失発作で近医受診。血糖値25mg/ dlと低血糖を指摘され
た。CTでは膵腫瘤指摘できなかったが、インスリノーマが疑
われ精査目的に当院紹介となる。【入院後経過】腹部造影CT,
腹部造影USでは膵腫瘤同定できず。スクリーニングEUS施行
も膵腫瘤は同定できなかった。SACI testではGDA領域のイン
スリン step upを認めたため膵頭十二指腸切除術施行。切除標
本では膵頭部にinsulin-producing neuroendocrine tumor G1を認
め、術後低血糖症状は消失し退院となった。【考察】各種画像精
査にて腫瘍同定ができず、SACI testが局在診断に有用であった
インスリノーマ症例を経験した。インスリノーマ症例における
SACI testの有用性について、文献的考察も含め報告する。
68
ステロイドが著効したCronkhite-Canada症候群の1例
自治医科大学附属さいたま医療センター 消化器科
小糸雄大,新藤雄司,松本史弘,賀嶋ひとみ,石井剛弘,
大竹はるか,上原健志,川村晴水,西川剛史,浦吉俊輔,大滝雄造,
山中健一,牛丸信也,浅野岳晴,岩城孝明,鷺原規喜,浅部伸一,
宮谷博幸,眞嶋浩聡
【諸言】Cronkhite-Canada症候群(CCS)は消化管ポリポーシス
に脱毛、爪甲異常、皮膚色素沈着など外胚葉系の変化を伴う原
因不明の非遺伝性の比較的稀な疾患である。今回我々はプレド
ニゾロン(PSL)投与にて著明に改善したCCSの1症例を経験し
たので、若干の文献的考察と当院での過去のCCS症例の臨床経
過を合わせて報告する。【症例】55歳男性、食欲不振と上腹部不
快感、下痢のため下部消化管内視鏡検査を施行。回腸末端から
直腸にかけてポリポーシスを認めたため当院へ紹介となった。
受診時、3ヵ月で12kgの体重減少、1日15回程度の水様性下痢、
味覚障害、全身の脱毛、手指の色素沈着、爪甲の委縮、味蕾の
委縮、低蛋白血症を認めた。上部消化管内視鏡検査、経肛門的
小腸内視鏡検査では食道を除く腸管に、大小不同の発赤浮腫状
のポリポーシスを認めた。ポリープの病理学的所見は腺管の拡
張、間質の浮腫を認めた。蛋白漏出シンチグラフィーでは上行
結腸、横行結腸を中心にRIの集積があり、これらの結果から
CCS及び、それに伴う蛋白漏出性胃腸症と診断した。PSL 30
mg/ dayの経口投与を開始し、水様性下痢や、爪甲の委縮、脱毛
所見などの改善を認めた。PSLを漸減し、1年間でPSL投与終了
しているが再発は認めていない。【考察】CCSの自然経過は予
後不良であり、Clinical malignancyとされていたが、近年多くの
症例にてステロイド療法の効果が確認され、治療の主流となっ
ている。本症例や当院で経験した他のCCS症例2例もステロイ
ド投与により症状の改善を認めたため、文献的考察を加えて報
告する。
インスリノーマ,SACI test
― 42 ―
ポリポーシス,Cronkhite-Canada症候群
69
心窩部痛を契機に受診し緊急IVRによる止血術を要
した胃大網動脈分節性動脈中膜融解( SAM) の一例
71
術前化学療法が有用であった食道胃接合部癌の扁平
上皮癌
横浜労災病院 消化器内科1) ,同 内視鏡部2)
辻川真太朗1) ,梅村隆輔2) ,永瀬 肇1) ,川名憲一2) ,関野雄典1) ,
金沢憲由2) ,石井 研1) ,佐藤晋二1) ,廣谷あかね1) ,永嶌裕樹1) ,
野上麻子1) ,小林 貴1) ,鈴木雅人1) ,高柳卓矢1) ,立川 準1)
横須賀救済病院 外科
工藤孝迪,木村 準,武井将伍,田村裕子,高畑太輔,矢後彰一,
川村祐介,高橋智昭,押 正徳,大西 宙,諏訪雄亮,渡邉 純,
野尻和典,盛田知幸,茂垣雅俊,舛井秀宜,長堀 薫
【症例】78歳男性【主訴】心窩部痛【現病歴】心房細動の既往があり循
環器内科でワルファリンによる抗凝固療法を行っていた。昼食摂取後
より腹痛が出現し、自制外となったため救急外来を受診した【入院後
経過】腹部単純CTで、膵頭部前面から肝十二指腸間膜にかけての広範
な炎症所見を認めた。膵頭部に限局する急性膵炎と考えガイドライン
に則り膵炎に対する標準的治療を開始したが前述の加療に反応せず、
翌日の採血では炎症反応が増高し、血色素値の低下が認められた。身
体所見上は冷感を伴う腹痛の増悪が認められた。腹部造影CTを撮影
したところ、左右横隔膜下から肝十二指腸間膜内、右前腎傍腔にかけ
ての血腫形成と、動脈相での肝十二指腸間膜内からの血液漏出所見を
認めた。大網からの出血所見と考え、コイル塞栓術による止血術を施
行した。腹腔動脈を同定後、右胃大網動脈まで挿入し、その分枝から
の活動性出血を同定した。マイクロコイルで出血する分枝に対して塞
栓を行い、漏出がないことを確認し終了した。塞栓術後より腹痛の軽
減を認め、採血上も炎症反応の低減が認められた。治療後施行した腹
部CTでも血腫の増大を認めなかったため、コイル塞栓術による止血効
果は十分であったと考えられた。退院後経時的に撮影したCTでは血
腫の縮小を認めた【結語】分節性動脈中膜融解( SAM) は1976年に
Slavinらにより提唱された疾患で、主に腹部内臓動脈に動脈瘤を生じ
る稀な疾患である。血管組織の採取により特徴的な病理学的所見を認
める必要があるが、近年ではIVRの発達により画像診断を最終診断と
する症例が増加している。内山らが提唱する臨床診断基準と本症例を
照合してみると、関連する既往のない中高年の患者に突発的に出現し
た腹痛、腹腔内出血で発症し、血管造影検査で血管不整を認めるといっ
た特徴からは分節性動脈中膜融解( SAM)による大網出血として矛盾
しないものと考えられた。緊急IVRによる止血術を要した胃大網動脈
からの大網出血の一例を分節性動脈中膜融解( SAM)に対する若干の
文献的考察を加えながらここに報告する。
症例は67歳女性。心窩部痛を自覚した。近医を受診し上部消化
管内視鏡検査を行ったところ、胸部食道から胃体上部前壁にか
けて潰瘍限局型( 2型) の病変を認め、生検にてsquamous cell
carcinoma( well differenciated) が認められ進行食道癌の診断とな
り精査加療目的にて当院紹介受診となった。採血検査にてSCC
は3. 4 ng/ dlと軽度上昇を認め、上部消化管バリウム造影では食
道胃接合部に壁の変形と潰瘍底のバリウムの貯留を認めた。造
影CT検査では食道胃接合部に淡い造影効果をみとめ、3番のリ
ンパ節腫大を認めた。PET-CTで食道胃接合部にSUV-max 10. 3
の集積を認め、リンパ節や他臓器への集積は認められなかった。
以上の結果よりT3N1M0 clinical stage3と診断し、術前化学療法
として、FP療法( 5-FU, CDDP) を2コース施行した。術前化学療
法2コース終了後の効果判定の上部消化管内視鏡では潰瘍の消
失と瘢痕化を認め、上部消化管バリウム造影では壁の変形は消
失していた。造影CT検査では病変像は不明瞭化し3番リンパ節
腫大も縮小、PET-CTでは食道胃接合部の集積は消失していた。
臨床的にPR( partial response) と判断し右開胸開腹胸部食道切除
術+2領域郭清+胃管再建+腸瘻造設+胆嚢摘出術を行った。術
後経過良好にて術後24日目に退院した。摘出検体からは食道胃
接合部に30×20 mmの瘢痕を認め病変部位と考えられた。病理
結果では悪性所見を認めず病理学的CR( complete response) で
あった。術前化学療法にて食道胃接合部の扁平上皮癌が病理学
的完全奏効した1例を経験したので文献的考察を含めて報告す
る。
食道胃接合部癌,術前化学療法
大網出血,分節性動脈中膜融解(SAM)
70
自己免疫性肝炎の経過観察中に出現した脾ペリオー
シスの一例
獨協医科大学 消化器内科1) ,
獨協医科大学病院 病理診断科2)
島田紘爾1) ,室久俊光1) ,田中孝尚1) ,渡邉詔子1) ,水口貴仁1) ,
金森 瑛1) ,岩崎茉莉1) ,陣内秀仁1) ,有阪高洋1) ,紀
仁1) ,
金子仁人1) ,飯島 誠1) ,平石秀幸1) ,山岸秀嗣2)
【症例】46歳、女性、自覚症状なし【既往歴】25歳時:子宮筋腫
で核出術。33歳時:自己免疫性肝炎発症。41歳時:左耳介部腫
瘍、顔面紅斑。46歳時からうつ病で内服加療。【生活歴】喫煙:
22歳時から継続、10本/ 日。飲酒:なし【現病歴】2001年6月( 33
歳時) 肝機能障害にて当院当科を紹介受診。検査成績、腹腔鏡
所見、肝生検結果から自己免疫性肝炎と診断。ステロイド投与
で肝機能は正常化し、以後は定期的に外来通院中であった。
2014年10月某日に行った定期の腹部超音波検査にて、初めて脾
臓の腫瘤性病変を指摘された。腹部造影CTでは長径12mm大の
境界明瞭な低吸収域を3か所認め、PET検査を施行したところ
造影CTの低吸収域と同部位にFDGの集積が見られた。さらな
る精査・加療目的に入院となった。【入院時身体所見】身長 164.
2cm 体重 51. 5kg 体温 36. 5℃ 血圧 130/ 82mmHg 脈拍 70回/ 分
整意識 清明 眼瞼結膜貧血(−)眼球結膜黄染(−)体表リンパ
節 蝕知しない胸部 心雑音(−)ラ音(−)腹部 平坦 軟 肝を心
窩部で4横指蝕知 脾臓蝕知せず。 自発痛(−) 圧痛(−) 下腹
部正中に手術瘢痕あり下肢 浮腫(−)【入院後経過】悪性リン
パ腫や他臓器腫瘍の脾転移が否定できず、診断目的に当院外科
にて腹腔鏡下脾臓摘出を行った。摘出標本所見として、マクロ
では正常部位に比して周囲が退色調で内部が黒褐色調の領域を
認め、ミクロでは同部位は赤血球が充満した拡張類洞の集合で
あり病理組織学的に脾ペリオーシスと診断した。【結語】自己
免疫性肝炎の経過中に出現した脾ペリオーシスの一例を経験し
た。
72
診断に苦慮した分化型胃癌の1例
自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センター1) ,
同 消化器一般外科2) ,同 病理診断部3)
小川れをな1) ,金丸利人1) ,斉藤 心1) ,細谷好則1) ,宇井
倉科憲太郎1) ,三浦義正2) ,三登久美子3) ,金井信行3) ,
佐久間康成1) ,堀江久永1) ,北山丈二2) ,佐田尚宏1)
崇1) ,
症例は76歳、男性。既往歴は特に認めなかった。症状はなかっ
たが、健診で行った上部消化管内視鏡検査にて、胃体中部小彎
に0-2a病変を認めた。生検結果は異型腺管(aypical gland)の診
断であり、癌の確定には至らなかった。その後数ヶ月のイン
ターバルで4回内視鏡検査、生検を行なったが、病理学的に確定
診断に至らず、当院消化器内科へ紹介となった。当院でも定期
的に上部消化管内視鏡フォロ−し、約3年間で計10回の生検し
ても癌の確定診断には至らなかった。しかし、肉眼的には徐々
に発赤した隆起性病変が目立つようになり、1型病変様へと形
態が変化した。初回内視鏡から約3年経過しており、超音波内
視鏡、ボーリング生検施行し、adenocarcinoma suspectedとの診
断であった。CT検査で小彎側のリンパ節腫大10mmもあり、診
断も含めた外科的治療について当科コンサルトとなった。臨床
的には胃癌の病態が疑われたため、内科・外科・病理部との協
議の結果、これ以上の生検による診断は困難と判断、経過から
胃癌と考え手術の方針となり、胃全摘術施行した。切除検体の
病理の結果は、Advanced gastric cancer, type3(55×38mm), pT2,
INFb, tub2, int, ly1, v1, pPM0, pDM0, pN0。(免疫染色では病変
部はα-SMA陽性の幼若な筋線維芽細胞の増生を認め、これに
よる壁の肥厚が見られた。CD10、CDX-2は腸上皮化生粘膜お
よび腫瘍で陽性を示している。MUC5AC、MUC6は既存の胃粘
膜では陽性を示していたが、腫瘍部分は陰性であった。p53は
陰性で、wild typeが示唆されている。MUC2は陰性だが、HE染
色と以上の免疫染色の結果を合わせて腸型形質の分化型腺癌)
診断に苦慮した、分化型胃癌を経験したので、文献的考察を加
えて、報告致します。
脾ペリオーシス,自己免疫性肝炎
― 43 ―
胃癌,診断困難
73
75
浸潤性膀胱癌の胃壁内転移を認めた1例
横浜南共済病院 消化器内科
舩岡昭宏,佐野裕亮,高木 将,小串勝昭,戸塚雄一朗,
平尾茉里名,三留典子,中尾 聡,福島泰斗,小林 槇,西郡修平,
濱中 潤,三浦雄輝,金子 卓,岡 裕之,洲崎文男,
岡崎 博
【症例】75歳男性【主訴】肉眼的血尿【既往歴】高血圧、糖尿病、
虫垂炎、結核【現病歴】2013年4月、数日前からの肉眼的血尿を主
訴に当院泌尿器科受診。膀胱鏡検査で右側壁に径2cmの有茎性非
乳頭状腫瘍を認めた。5月経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)施
行し、病理検査でmucinous adenocarcinoma、腫瘍はすべて浸潤像を
示すことから浸潤性膀胱癌と診断した。浸潤性膀胱癌として造影
CT、骨シンチ施行したが転移は認めず、6月膀胱全摘術、前立腺全
摘術、回腸導管造設術施行。病理検査で粘液腺癌(INFβ、pT3a、
ly0、v0、u-rt0、u-lt0、N0,StageIII)と診断し、断端は陰性であっ
た。原発性膀胱癌に対する術後補助化学療法としてテガフール・
ウラシル内服治療を行っていたが、2014年5月施行したCTで肝表
面、脾臓表面、胃小彎側、右腸腰筋表面に嚢胞性病変を認め、腹膜
播種を疑った。2014年7月、肝表面の嚢胞性病変に対する組織診断
依頼目的で当科併診。【経過】肝表面の経皮的生検は病変の部位が
深いために困難であり、胃小彎側の嚢胞性病変に対し超音波内視
鏡(EUS)下で生検を施行する方針とした。2014年8月EUS施行し、
胃噴門部直下小弯やや後壁よりに12×9mmの粘膜下層と連続する
粘膜下腫瘍を認めた。類円形でスコープによるcusion sign陽性で
可動性が高く、内部は均一な低エコーであったが単純性嚢胞と比
べるとやや高エコーで後方エコーの増強は認めず、隔壁構造も認
め な か っ た。同 部 位 に 対 し て 超 音 波 内 視 鏡 下 穿 刺 吸 引 法
(EUSFNA)施行し、病理検査でadenocarcinomaと診断、膀胱腺癌の
転移として矛盾しない結果となった。全身化学療法の適応であっ
たが治療は希望されず、保存的に経過観察する方針とした。【考
察】膀胱癌の他臓器への転移としては肝臓、肺、骨などが多いとさ
れている。今回の症例のように浸潤性膀胱癌の胃の壁内への転移
を認めることは稀であり、貴重な症例と考えられる。文献的な考
察を加え、報告する。
東京慈恵会医科大学 外科学講座
山下貴晃,藤崎宗春,高野裕太,渡部篤史,志田敦男,三森教雄,
矢永勝彦
胃 粘 膜 下 腫 瘍 の 原 疾 患 と し て は gastrointestinal stromal tumor
(GIST)や平滑筋腫,神経鞘腫などが多いが,非常にまれな病理
組織を呈する症例もある。今回,胃原発glomus腫瘍の1例を経
験したので文献的考察を加えて報告する。症例は42歳,男性。
2004年に検診の上部消化管造影検査で20mm大の胃腫瘍を指摘
されていたが放置していた。2014年に7月に検診目的に近医で
上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃粘膜下腫瘍を指摘
され当科へ紹介となった。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部前
壁に40mm大の内腔突出型の粘膜下腫瘍を認めた。CTでは同部
位に30mm大の内部が比較的均一で境界明瞭な腫瘤を認めた。
積極的に悪性を示唆する所見ではなかったが増大傾向であるこ
とから手術適応と判断し,同年10月に腹腔鏡内視鏡合同胃部分
切除術を施行した。術後病理組織的検査では固有筋層内に淡明
な細胞質と類円形の核を有する小型細胞が増殖しており拡張し
た 毛 細 血 管 の 増 生 を 伴 っ て い た。免 疫 染 色 で は α SMA,
Collagen IV,Laminin,Synaptophysin 陽 性 で Chromogranin A,
CD56,CD79αは陰性,MIB-1 index 1%でglomus腫瘍と診断し
た。glomus腫瘍は四肢末端や体幹皮下に好発する有痛性の非上
皮性腫瘍であるが消化管での発生は少なく,胃原発の報告は比
較的まれであるため報告した。
胃壁内転移,膀胱癌
74
5−FU+LV療法が奏功し透析離脱できた腹膜播種
を伴うスキルス胃癌の一例
慶應義塾大学医学部 内科学 消化器
佐々木佑輔,宇賀村文,鈴木 健,平田賢郎,須河恭敬,浜本康夫,
高石官均,金井隆典
症例は68歳男性.200X年10月から心窩部痛を自覚し1カ月程度
で症状増悪前医へ入院.上部消化管内視鏡検査では胃体下部か
ら前庭部にかける腫瘍を認めCT所見と合わせスキルス胃癌(低
分化腺がん)
・腹膜播種の診断となり閉塞性黄疸・水腎症・十二
指腸狭窄を伴っていた.入院後 1週間で無尿となり尿管ステン
ト挿入するも効果なく透析導入.本人・家族が積極的治療を希
望され同年12月に当院へ転院.消化管閉塞に胃管、閉塞性黄疸
に対してPTBDチューブを挿入し腎不全に対しては透析を継
続.全身状態が良好であったため12月末より5−FU+LV療法
(6週投与、2週休薬)を80%に減量し開始.緩徐であるが十二指
腸狭窄症状は改善し自尿も回復.化学療法4回投与後に実施し
た造影CTにてPRと判定.胃管を中止し腎機能も正常化したた
めに透析を離脱したうえで化学療法継続している.スキルス胃
がん腹膜播種は消化管閉塞、尿管閉塞、閉塞性黄疸など多彩な
合併症により化学療法の導入や継続のタイミングに苦慮するこ
とが多い.しかしながら適切なレジメン選択と支持療法により
症状緩和が得られることが報告されている.文献検索を加えて
報告する.
腹腔鏡内視鏡合同切除術を施行した胃原発glomus腫
瘍の1例
胃,glomus腫瘍
76
骨髄低形成を呈したHER2陽性食道接合部癌に対し
てトラスツズマブ併用放射線療法が奏功した1例
横浜市立市民病院 消化器外科
大滝真梨香,小原 尚,近藤裕樹,佐原康太,阿部有佳,南
藪下泰宏,藪野太一
宏典,
骨髄低形成が併存した胃癌では、化学療法が困難となる場合が
多い。今回我々は、姑息的に骨髄抑制の少ない分子標的薬トラ
スツズマブと放射線療法を併用し、原発巣のCRと肝転移のPR
が得られたHER2陽性食道接合部癌の1例を経験したので報告す
る。【症例】50歳、男性、【現病歴】食事のつかえ感を主訴に近
医受診し、食道胃接合部の腫瘤を指摘され、当科紹介受診に至っ
た。上部消化管内視鏡検査で腹部食道から噴門小弯中心に4cm
長の2型腫瘍を認め、生検病理組織診断でtub2、HER2 3+であっ
た。造影CT検査では肝S6の18mm大の低吸収域と上縦隔リンパ
節腫大( 12mm) があり、食道接合部癌 Siewert type II、EG、2型、
T3N3M1b( Liver) cStage IVと診断された。【既往歴】高血圧症、
高尿酸血症、
【家族歴】特記すべきことなし。【経過】標準療法
としてカペシタビン・オキザリプラチン( Xelox) +トラスツズマ
ブ( HER) 療法を行う方針としたが、白血球数 2330、好中球数
910とgrade2の血球減少を認めた。血液内科へ併診し骨髄低形
成を指摘されたため、放射線治療科と相談の上、放射線療法を
行う方針とした。その後も白血球数および好中球数の改善が得
られず、化学療法としてトラスツズマブ単剤を放射線療法に併
用した。放射線療法中、grade4の好中球減少がみられ、8日間の
休止を余儀なくされたが、計59. 4Gy/ 33回/ 57日間の放射線治
療、トラスツズマブの併用を3回施行した。上部消化管内視鏡
検査結果では癌原発巣は消失し、肝転移の縮小( 56%) が得られ、
つかえ感も消失した。
スキルス,化学療法
― 44 ―
食道胃接合部癌,トラスツズマブ
77
コーラ溶解療法と内視鏡的破砕術の併用が有効で
あった巨大胃石症の1例
79
内視鏡的静脈瘤結紮術とヒストアクリルを用いた硬
化療法が奏功した十二指腸静脈瘤破裂の一例
順天堂大学医学部 消化器内科
土屋 俊,稲見義宏,谷田貝昂,高橋正倫,金澤 亮,東原良恵,
今 一義,加藤順子,山科俊平,長田太郎,渡辺純夫
昭和大学医学部内科学講座 消化器内科学部門
佐藤義仁,大森里紗,魚住祥二郎,林 栄一,杉浦育也,野本朋宏,
吉田 仁
【症例】81歳、男性【主訴】心窩部痛・食欲低下【現病歴】201X年
11月上旬頃に心窩部痛出現、飲水しか出来ないため前医を受診。
前医で上部消化管内視鏡(GS)検査を施行し、胃内に巨大な胃石1
個と小胃石を2個認めたため、胃石除去目的に当院紹介され入院加
療となった。入院時施行した上部消化管造影検査では胃内に150
×65mmの巨大胃石を1個と幽門側に25mm大の小胃石を1個認め
た。入院当日よりコカ・コーラゼロ®を1日当たり1. 5L飲用する溶
解療法を開始。溶解療法7日目のGS検査では、大小胃石の色調は
全体的に黒褐色で一部茶色に変化していたが大きさは変化がな
かった。前庭部に胃潰瘍と十二指腸下降脚にも潰瘍瘢痕があり管
腔は狭小化していた。把持鉗子にて胃石の破砕を試みたが胃石は
固く破砕困難であった。16日目に施行したGS検査では、巨大胃石
は全体の大きさに変化は認めなかったが表面は軟化していたた
め、把持鉗子によって巨大胃石を破砕することが可能であった。
また幽門側の小胃石は25mmスネアを用い分割・破砕し得た。24日
目のGS検査では、胃石の色調は緑黄色となり全体的に縮小傾向に
あった。把持鉗子にて破砕を繰り返しさらに縮小した。26日目に
も把持鉗子とスネアで破砕を繰り返し、ほぼ全ての胃石を分割・
破砕し得た。29日目のGS検査では、胃内に前回破砕した胃石が散
在しているのみであったため、溶解療法を終了とし同日退院と
なった。58日目に外来で施行したGS検査で胃石の消失を確認し
た。胃石の成分分析は98%以上がタンニンであった。【考察】本症
例は十二指腸潰瘍の治癒過程で腸管が狭小化したため、胃排泄能
低下が生じ巨大な胃石を形成したものと推測された。胃石が大き
いときには、長期間のコーラ溶解療法を要するが、内視鏡下破砕
術を併用する事により安全かつ短期間で胃石を除去することが可
能と考えられた。【結語】コーラ溶解療法と内視鏡的破砕術の併用
が有効であった巨大胃石症の一例を経験した。貴重な症例と考え
られたため報告する。
【症例】50歳女性【既往歴】肝硬変【現病歴】2014年9月に吐血を主
訴に受診し、緊急上部消化管内視鏡検査を施行し、食道静脈瘤破
裂と診断した。内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)にて止血し、入院と
なった。入院後、内視鏡的硬化療法(EIS)を施行した。肝硬変は
初回指摘であり、原因精査のため、肝生検を施行したが、成因不明
であった。2015年6月の内視鏡検査で食道静脈瘤を認め、8月にEIS
を施行した。12月から腹部膨満・食思不振を認め、血液検査で貧
血の進行を認めたため、精査・加療目的に緊急入院となった。【経
過】入院時に緊急上部消化管内視鏡検査を施行し、内視鏡の接触
による粘膜の易出血はあったが、活動性出血は認めなかった。CT
では明らかな血管外漏出は認めず、腹水の貯留、十二指腸下行脚
に静脈瘤を疑う所見を認めた。後日、再度上部消化管内視鏡検査
を施行し、十二指腸水平脚に静脈瘤を認めたが、出血は認めなかっ
た。貧血の進行の原因は十二指腸粘膜からの出血と判断し、食事
を開始した。第19病日に貧血の進行、見当識障害を認め、血液検
査でアンモニアの高値、CTで明らかな血管外漏出は認めなかった
が、上腸間膜静脈から門脈にかけて血栓を新たに認めた。肝性脳
症に対し分岐鎖アミノ酸の点滴静注、貧血に対しては適宜輸血で
対応した。アンモニアの低下とともに第24病日には意識レベルの
改善を認めたが、第25病日に多量の下血、血圧低下を認めたため、
緊急上部消化管内視鏡を施行し、十二指腸静脈瘤破裂を認め、EVL
にて止血を行った。追加治療としてバルーン閉塞下逆行性経静脈
的塞栓術(B-RTO)を検討したが、門脈血栓があるため、静脈瘤の
みの塞栓を目的としてヒストアクリルを用いたEISを選択し、同日
追加治療を施行した。その後は出血を認めず、門脈血栓に対し、
血栓溶解療法を開始した。【結語】十二指腸静脈瘤は門脈圧亢進症
において0. 4%の頻度とされ、稀な疾患と言える。今回、十二指腸
静脈瘤破裂という臨床的に貴重な一例を経験したため若干の文献
的考察を加え報告する。
胃石,コカ・コーラ
78
十二指腸静脈瘤,門脈圧亢進症
80
術前リンパ節転移が疑われた胃神経鞘腫の1例
群馬大学大学院 病態総合外科
渡邊隆嘉,緒方杏一,栗山健吾,鈴木雅貴,木村明春,木暮憲道,
石井範洋,桑野博行
【はじめに】胃神経鞘腫は全胃腫瘍の0. 2%と報告されており、
稀な腫瘍である。悪性例ではリンパ節転移の報告もみられる
が、今回術前リンパ節転移が疑われた胃神経鞘腫を経験したの
で報告する。
【症例】66歳女性。検診の上部内視鏡検査で粘膜
下腫瘍を指摘され精査加療目的に当科紹介。胃体中部大弯に中
央にdelleを伴う粘膜下腫瘍を認め、EUSでは内部均一な低エ
コー腫瘤で筋層由来と思われた。生検では紡錘形細胞の増生を
認め、免疫染色ではc-kit( -) 、CD34( -) 、S-100蛋白( +) であり神
経鞘腫が疑われた。CTでは胃体中部大弯に6 cm大の造影効果
を伴う腫瘤を認め、FDG-PETでSUV max 8. 3の異常集積を認め
た。また、右胃大網動脈に沿って腫大リンパ節を複数認めたが、
FDGの異常集積は認めなかった。神経鞘腫疑いであったが、悪
性およびリンパ節転移の可能性を否定できず、胃癌に準じて幽
門側胃切除術、D1+郭清を施行。術後病理診断は紡錘形細胞が
束状に配列し、免疫染色ではc-kit( -) 、CD34( -) 、S-100蛋白( +)
で神経鞘腫の診断となった。悪性所見はなく、MIB-1 labeling
indexは4. 5%であった。術前指摘されていた腫大リンパ節に転
移所見は認めなかった。術後経過は良好で第8病日退院し、現
在まで再発等認めていない。
【考察】本症例は5cm以上でdelle形
成、リンパ節腫大も認めていたため悪性の可能性が否定できず
リンパ節郭清を伴う胃切除術を施行したが、悪性所見はなく、
リンパ節転移も認めなかった。良性神経鞘腫に転移を伴わない
リンパ節腫大を認めたとする報告もあり、文献的考察を含めて
報告する。
クローン病に併発した小腸原発形質芽球性リンパ腫
の1例
防衛医科大学校病院 内科学第 2 講座1) ,
同 検査部診断病理部2)
吉冨俊彦1) ,塙 芳典1) ,東山正明1) ,溝口明範1) ,西井 慎1) ,
寺田尚人1) ,和田晃典1) ,杉原奈央1) ,好川謙一1) ,高城 健1) ,
丸田紘史1) ,安武優一1) ,渡辺知佳子1) ,高本俊介1) ,冨田謙吾1) ,
永尾重昭1) ,三浦総一郎1) ,穂苅量太1) ,中西邦昭2)
症例はHIV陰性の63歳男性。30年前に腸閉塞にて当院で2回外科的手術を
施行し、病理学的にクローン病と診断され、7年前から治療を自己中断し
ていた。平成27年3月中旬から腹部膨満感と体重減少が出現し当科受診。
同年4月に下部消化管内視鏡検査(以下CF)を施行し、術後回腸上行結腸
吻合部の狭窄を認め、MR enterocolonographyでも術後吻合部に狭窄を認め、
口側小腸に著明な液体貯留を認めたため入院のうえイレウス管を挿入し、
待機的に外科的手術を施行した。術中所見として残存小腸は250cm程度で
Treitz靱帯から150cm以遠に浮腫を認めるが狭窄は吻合部のみであった。
病理学的に縦走潰瘍部で好中球・リンパ球・形質細胞・好酸球浸潤を伴う
肉芽形成と肉芽腫を認め、クローン病による炎症所見と考えられた。また
潰瘍底に核小体明瞭な腫大核を有する異型細胞が比較的密に集簇し、背景
には小型のリンパ球浸潤を伴い、免疫組織学的にCD20、CD56、CD79a陰性
でCD138、MUM1、IgG、λ陽性であったため、クローン病に併発した小腸
原発形質芽球性リンパ腫と診断。採血、骨髄穿刺で明らかな異常所見は認
めず、PET-CTでも骨への集積は認めなかった。PET-CTで集積を小腸に認
めたため、残存病変の可能性を考え、大腸と小腸を内視鏡的に観察したが、
明らかな粘膜の変化は認めず、step biopsyでも特異的な所見は認めなかっ
た。また術後狭窄を認めたが、炎症所見は軽度で、組織学的に形質芽球性
リンパ腫は認めなかった。小腸原発形質芽球性リンパ腫は検査法、治療法
ともに確立していないため、血液学的、内視鏡的、画像的に厳重に経過観
察している。クローン病に対しては5-ASA製剤と整腸剤のみ投与してい
る。抗TNFα抗体や免疫調整剤を投与することにより形質芽球性リンパ腫
の再燃が懸念されるため実施していないが、術後吻合部が再び狭窄してき
ている。これまでクローン病に形質芽球性リンパ腫が合併した報告は検
索した限り世界で認めない。クローン病に合併した悪性腫瘍に対する対
応方法について考察し報告する。
神経鞘腫,リンパ節転移
― 45 ―
クローン病,形質芽球性リンパ腫
81
盲腸癌に二次性の虫垂炎、穿孔を合併し緊急手術と
なった一例
国立病院機構災害医療センター1) ,同 消化器内科2) ,
同 消化器外科3)
糸川直樹1) ,大野志乃2) ,林 昌武2) ,上条 孟2) ,木谷幸博2) ,
島田祐輔2) ,佐々木善浩2) ,上市英雄2) ,末松友樹3) ,石橋雄次3) ,
伊藤 豊3)
【症例】68歳男性【既往歴】糖尿病、高脂血症、高血圧【主訴】
腹痛【現病歴】2016年1月上旬に腹痛あり近医を受診、体重減少、
HbA1c悪化、CA19-9、CEA高値を認め精査目的に1月当科を紹
介受診となった。腹部骨盤CT、GF 下部消化管内視鏡では盲腸
癌(tub2>tub1)、多発肝転移を認め化学療法を予定していたが
腹痛のため救急搬送された。腹部骨盤CTでは穿孔所見、腸閉
塞所見は認めず、腹膜浸潤による癌性疼痛と診断され疼痛コン
トロール目的に入院となった。【経過】入院後、麻薬処方により
疼痛軽快傾向であったが、入院4 日目に腹痛増悪あり、CT 再検
したところ虫垂炎、腹腔穿孔を認めた。同日当院外科により緊
急手術(回盲部切除・洗浄ドレナージ術)が行われた。病理所
見ではtub2( tub2>tub1>>por2) であり、腫瘍は融合の目立つ異
型腺管からなり、漿膜まで浸潤しており低分化な腺癌成分も見
られ、高度のリンパ管侵襲と静脈侵襲が認められた。近位断端
から 8. 5 cm、遠位断端から 11. 5 cmの盲腸部に 5. 2 x 3. 8 cm大
の腫瘍を認め、腫瘍は虫垂入口部から虫垂体部へ浸潤し、穿孔
も認められた。漿膜面に2. 4 x 2. 0 cmまでの播種巣も散在して
いた。【考察】盲腸癌に二次性の虫垂炎を合併することは日常
臨床で経験することは少ない。欧米の報告では虫垂炎症例50,
000例中59例(0. 1%)に盲腸癌を認めたという。また本邦でも
急性虫垂炎3, 056例中7例(0. 2%)、盲腸癌手術91例中7例( 7. 7%)
に合併例を認めたという報告があるが、検索したかぎり盲腸癌
の二次性虫垂炎により緊急手術となった症例の報告を認めな
かった。今回盲腸癌の経過中に二次性の虫垂炎、穿孔を合併し、
緊急手術となった示唆に富んだ一例を経験したので若干の文献
的考察を加えて報告する。
83
横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科
長堀まな,小金井一隆,辰巳健志,二木
杉田 昭
潰瘍性大腸炎に原発性硬化性胆管炎、肝内胆管癌を
合併した1例
北里大学医学部 消化器内科学
荻原沙織,横山 薫,宮田英治,川岸加奈,奥脇興介,高田樹一,
小泉和三郎
症例は33歳、男性。20歳時に潰瘍性大腸炎( UC) 全大腸炎型と診断、
プレドニゾロン( PSL) 20mg/ 日にて寛解導入、以後メサラジンの内
服で症状はコントロールされていた。2013年の血液検査にて軽度
の肝機能障害を認めたが、腹部超音波検査( echo) では肝胆膵系に
異常を認めなかった。その後も肝胆道系酵素は徐々に上昇し、
2014年に再度腹部echoを施行するも肝胆道系に異常は認めなかっ
た。ウルソデオキシコール酸の内服を開始したが、改善がなく約4
カ月後に再度腹部echoを施行した。肝内胆管の限局性拡張と胆管
壁に石灰化を有し肝外胆管も全周性の壁肥厚を認め、原発性硬化
性胆管炎( PSC) が疑われた。その後MRCPを施行したところ、echo
所見同様の肝内胆管の不整な拡張と肝左葉の肝門部近傍に40mm
大の腫瘤性領域を認めた。ERCPを予定したところ、本人が検査を
拒否し外来を自己中断した。MRCPから約4か月後より皮膚の黄染
や発熱、悪心、嘔吐などが出現し始め、緊急入院となった。入院時
T. Bil 15. 0mg/ dlと著明な黄疸を認めた。MRCPで肝左葉の肝門部
の腫瘤像は約5カ月で急速に増大していた。ERCP施行時の胆汁細
胞診より腺癌が認められ、PSCに肝内胆管癌( ICC) の合併と診断し
た。FDG/ PETにて肝門部から肝左葉の腫瘤の他に、肝両葉に複数
の多発浸潤が疑われた。減黄のためにPSL30mg/ 日を開始した。
家族が生体肝移植を強く希望し、他院外科へ転院、精査したが適
応外とされ、内視鏡的胆管ドレナージを施行し再度当院へ転院と
なった。その後肝不全の進行もあり、放射線療法や化学療法は行
えず、腹部echoでPSCが疑われてから約8カ月の短期間で永眠され
た。
【考察】本邦ではUCのPSC合併頻度は欧米に比較して低く、本例の
ようにICCを合併した報告は非常に稀である。本症例は短期間で
ICCが急速に進行しており、UCに肝機能障害を認めた際にはPSC
の合併も念頭におき、MRCPなども適宜行う必要がある。
了,黒木博介,近藤裕樹,
症例は58歳女性。38歳時に発症した潰瘍性大腸炎(UC)再燃寛解型で、
主にペンタサ内服で加療していた。発症19年後の下部消化管内視鏡検
査(CF)で直腸Rbに発赤を伴う平坦隆起を認め、生検病理組織所見で
高分化腺癌が検出され、colitic cancerと診断された。当科で大腸全摘、
直腸粘膜抜去、回腸嚢肛門吻合、リンパ節郭清、回腸人工肛門造設術
を施行し、病理組織学検査では直腸の病変は高分化型腺癌、深達度m
で、大腸粘膜には腺管のねじれ、杯細胞の減少、腺管密度の低下など
を認め、非乾酪性類上皮性肉芽腫はなくUCに矛盾しない所見であっ
た。術後経過は良好で、約半年後に人工肛門閉鎖術を施行した。退院
1か月後に腹痛・発熱・食思不振が出現し入院した。CFでは回腸嚢に
アフタが多発し、血管透見性の消失を認め、口側の回腸には膿性粘液
を伴う不整形潰瘍が多発していた。サイトメガロウイルス抗原やCD
毒素は陰性で、回腸嚢炎の治療に準じたシプロフロキサシンの内服で
症状が改善し退院した。退院1か月後に発熱、排便回数増多と嘔気、下
腹部痛を認め、血液検査で白血球数増加とCRP上昇があり、感染性腸
炎を疑い再入院した。絶食・抗生剤点滴で症状は改善した。CFでは口
側回腸の潰瘍は残存するものの上皮化傾向にあった。各種感染症検査
は陰性で、抗生剤を中止し、UCの上部消化管病変と考え、PSL30mg内
服を開始し、症状が改善し、退院した。PSLを10mgに漸減したところ
で、排便回数増多と血便、肛門痛が出現し、再度入院した。緊急CFで
は回腸嚢、口側回腸、回腸嚢肛門吻合部に不整形な深掘れ潰瘍が多発
し、悪化していた。各種感染症の陰性を確認し、インフリキシマブ
(IFX)を投与した。投与翌日から腹痛、肛門痛、排便回数増多などが
改善した。IFX2回目投与後に施行したCFでは、回腸嚢、口側回腸、回
腸嚢肛門吻合部の潰瘍は軽度縮小し、上皮化傾向にあった。IFX開始
後1か月半経過した現在も症状の再燃はなく、外来通院加療中である。
UC、大腸全摘後の回腸に多発潰瘍を認め、PSLの効果が不十分であっ
た症例にIFXが有効である可能性が示唆された。
潰瘍性大腸炎,小腸多発潰瘍
盲腸癌,虫垂炎
82
潰瘍性大腸炎の大腸全摘後に小腸多発潰瘍が出現
し、インフリキシマブが著効した一例
84
特異な内視鏡所見より5-アミノサリチル酸製剤によ
るアレルギーを疑った潰瘍性大腸炎の一例
東京医科歯科大学 消化器内科1) ,同 光学医療診療部2)
丘 佳恵1) ,武井ゆりあ1) ,松岡克善1) ,藤井俊光1) ,野崎賢吾1) ,
根本泰宏1) ,福島啓太1) ,福田将義2) ,岡田英里子1) ,大島 茂1) ,
永石宇司1) ,岡本隆一1) ,土屋輝一郎1) ,東 正新1) ,中村哲也1) ,
長堀正和1) ,荒木昭博1) ,朝比奈靖浩1) ,大塚和朗2) ,渡辺 守1)
症例は30歳代女性。約1ヶ月前より腹痛、下痢、血便を自覚するようになった。2週
間後に前医を受診し、下部消化管内視鏡検査が施行された。潰瘍性大腸炎と診断さ
れ、5-アミノサリチル酸( aminosalicylic acid:ASA) 製剤3. 6g/ 日が開始された。一時症
状は改善したが、その後症状が悪化したため、5-ASA製剤開始2週間後に前医に入院
となった。プレドニン静注療法( 50mg/ 日) が開始されたが、4日間の投与でも症状は
改善せず、38℃を超える発熱も認めるようになったため、当院に転院となった。
転院後、下部消化管内視鏡検査を施行したところ、全大腸にわたって連続性・びまん
性に粘膜は浮腫・発赤を呈し、易出血性であり、潰瘍性大腸炎に合致した所見だっ
た。しかし潰瘍形成は深部結腸を中心に強く、特に上行結腸では深掘れ潰瘍が多発
していた。
全大腸炎型潰瘍性大腸炎・重症の所見だったが、5-ASA製剤を開始し、一時症状が改
善した後に急速に症状が悪化したこと、潰瘍の分布が潰瘍性大腸炎として非典型的
だったことから、5-ASA製剤に対するアレルギーの可能性を考えた。内視鏡検査施
行当日より5-ASA経口製剤を中止したところ、速やかに症状は改善した。
臨床経過から5-ASAアレルギーの可能性が高いと考えたが、今後の寛解維持のため
に5-ASA製剤は重要であるため、第13病日より脱感作療法を目指し、剤形を変更し
た上で5-ASA製剤250mgの投与を開始した。しかし翌日夕方より便回数、血便回数
の増加を認めた。そのため、第15病日より5-ASA製剤を中止したところ、翌日より
便回数、血便回数は減少した。
5-ASA製剤は軽症〜中等症の潰瘍性大腸炎に対する基本治療薬である。しかし約
2%の頻度で、5-ASAアレルギーを呈することがある。5-ASAアレルギーでは下痢、
血便、腹痛、発熱など潰瘍性大腸炎に類似した症状を引き起こすため、潰瘍性大腸炎
の悪化と間違われやすい。今回我々は特異な内視鏡像から5-ASAアレルギーを強く
疑った症例を経験した。今後の症例蓄積により、5-ASAアレルギーに特徴的な内視
鏡所見が確立される可能性を示唆する症例と考え、報告する。
潰瘍性大腸炎,原発性硬化性胆管炎
― 46 ―
潰瘍性大腸炎,5-ASAアレルギー
85
87
結腸癌異時性小腸転移の一例
済生会横浜市南部病院 外科
遠藤和樹,林
勉,南澤恵祐,根本大士,澁谷泰介,横井英人,
和田朋子,渡邊卓央,高川 亮,嶋田和博,村上仁志,平川昭平,
長谷川誠司,池 秀人,福島忠男,今田敏夫
症例は52歳女性、2011年4月に上行結腸癌に対して前医で右半
結腸切除、3群リンパ節郭清術を施行した。病理組織診断は高
分化腺癌, tub1>tub2>muc, pSS, ly2, v2, n1, StageIIIAであっ
た。術後補助化学療法としてS-1を6カ月内服し経過観察中の
2015年6月に心窩部痛を自覚し前医を受診した。腹部CTで空腸
に腫瘤状の壁肥厚をみとめ、周囲に脂肪組織濃度上昇とリンパ
節腫大がみられ、小腸腫瘍の診断で精査加療目的に当院を紹介
された。小腸内視鏡では、トライツ靭帯から約15cm肛側に全周
性のType2腫瘍をみとめ同部位から生検し病理組織学的に中分
化腺癌と診断された。2015年6月に小腸部分切除術を施行した。
腫瘍はトライツ靭帯から25cm肛側にあり、周囲組織との癒着は
軽度であった。腫瘍周囲の漿膜に小結節病変と腸管膜内リンパ
節の腫大がみられ、同部位を合併切除した。切除検体の病理組
織学的所見は、高分化腺癌、中分化腺癌、および粘液癌成分が
混在し、漿膜面に露出し(se)、6個のリンパ節に転移を認めた
(n2)。主病変以外にも非連続な多数の壁内および漿膜下病変が
みられた。漿膜化結節病変がみられたことと組織所見が類似し
ていることから結腸癌の小腸転移と診断した。術後化学療法と
してXelox療法を継続している。大腸癌に直接浸潤を除く小腸
転移は比較的稀で、今回結腸癌術後異時性小腸転移の一例を経
験したので文献的考察を加え報告する。
東京逓信病院 消化器内科
林 崇明,北村和貴子,古谷健悟,加藤知爾,大久保政雄,
小林克也,関川憲一郎,光井 洋,橋本直明
症例は75歳男性、主訴は右季肋部痛、灰白色便、尿濃染であり
入院日1月前ごろより下腹部全体に重い感じを訴えていた。入
院10日前の当科定期外来受診時は、ほとんど自覚症状なく帰宅
した。翌日微熱と右季肋部に間欠的な鈍痛を自覚し、同時に灰
白色便・頻尿・尿濃染も認めていた。その後、頻尿・尿濃染を
主訴に泌尿器科を受診、採血でAST・胆道系酵素・Bil上昇して
おり消化器内科コンサルトとなり、急性肝障害、閉塞性黄疸疑
いにて、同日精査加療目的に同科入院となった。本症例は一般
的に発症が少ないとされている高齢男性の自己免疫性肝炎の一
例である。最終診断は診断基準を参考にしながら各症例におけ
る臨床的特徴ならびに組織学的特徴を踏まえ総合的な判断が必
要とされる。
結腸癌,小腸転移
86
潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術後5年で腹腔内膿
瘍を発症した1例
高齢男性で発症した自己免疫性肝炎の一例
自己免疫性肝炎,高齢男性
88
サイトメガロウイルス感染症を契機に急激な溶血性
貧血を発症した一例
杏林大学医学部付属病院 消化器・一般外科
木村俊彦,百瀬博一,飯岡愛子,高安甲平,小嶋幸一郎,渡邉武志,
松岡弘芳,正木忠彦,森 俊幸,杉山政則
関東労災病院 消化器内科
大久保彰人,矢野雄一郎,小野寺翔,山宮 知,中崎奈都子,
嘉戸慎一,金子麗奈,草柳 聡,小川正純,佐藤 譲
【症例】31歳 女性【主訴】腹痛・発熱【現病歴】16歳時に血便
を主訴に潰瘍性大腸炎を発症、他院で内服加療されていたがプ
レドニン離脱困難であり、換算で90g以上の投与となり相対的
手術適応となった。26歳時に全結腸切除術(IAA)が施行され
た。2015年7月(30歳)、腹痛と下痢を主訴に当院救急科を受診。
以後、当院消化器内科で加療されていた。2016年2月(31歳)、
38℃の発熱と腹痛を主訴に当院救急科を受診。CT検査にて、
回腸嚢炎、腹腔内膿瘍が疑われ抗菌薬による入院治療を開始し
た。【入院後経過】入院後に施行された大腸内視鏡検査では、回
腸嚢に炎症所見はなく、回腸嚢盲端にピンホール状の瘻孔がみ
られ、白色膿性物質が排出されていた。同部由来の膿瘍と考え
られた。CTガイド下ドレナージや、大腸内視鏡下のドレナー
ジを検討したが手技的に困難であり、また全身状態の増悪もみ
られたことから緊急開腹ドレナージ術を行うこととなった。膿
瘍腔は回腸嚢と子宮の間にあり、厚い膿瘍壁で覆われていた。
開放すると内部に隔壁を有し全体の大きさは4cmだった。切開
排膿し洗浄施行後にドレーンを留置した。膿瘍形成の原因が回
腸嚢盲端部の瘻孔と考え、便流入防止目的に小腸人工肛門を造
設した。術後、膿瘍腔の縮小傾向を確認、発熱や炎症の再燃も
なく経過は良好である。IAA術後5年と長期経過してから腹腔
内膿瘍が発症した稀な症例であり若干の文献的考察を含めて報
告する。
症例は39歳男性。生来健康であった。入院3週間前から発熱が
出現し、市販の感冒薬にて様子を見ていた。入院7日前より全
身倦怠感の増強、体動時ふらつきも出現したため近医を受診し
た。血液検査で総ビリルビン上昇・肝胆道系酵素上昇を認め、
肝機能障害精査目的に同日当院紹介受診となった。当院初診時
血液検査で軽度の正球性正色素性貧血、間接型優位高ビリルビ
ン血症(T/ D-Bil : 4. 1/ 1. 5 mg/ dl)、肝胆道系酵素上昇を認めた。
腹部超音波所見では肝脾腫があり、ウイルス性肝炎が疑われた。
再診時血液検査でCMV-IgM抗体陽性、他ウイルス肝炎マーカー
陰性でありサイトメガロウイルス肝炎と判断したが、急激な貧
血の進行(Hb12. 5から7. 5g/ dlまで低下)を認めており精査目的
で入院となった。消化管出血は否定され、他2系統の血球減少
はなく、ハプトグロビン低値、網状赤血球上昇より溶血性貧血
の経過が疑われた。直接/ 間接Coombs試験陰性、赤血球抵抗性
試験(シュガーウォーター試験)陰性であり、入院安静のみで
サイトメガロウイルス肝炎の改善とともに溶血性発作も自然軽
快した。今回我々はサイトメガロウイルス感染を契機に溶血性
貧血を発症した一例を経験したので、文献的考察を加え報告す
る。
潰瘍性大腸炎,腹腔内膿瘍
― 47 ―
溶血性貧血,サイトメガロウイルス
89
S状結腸癌が細菌の侵入経路と考えられた
Fusobacterium nucleatumによる化膿性肝膿瘍の1例
聖マリアンナ医科大学 臨床研修センター1) ,
同 消化器・肝臓内科2) ,川崎市立多摩病院3)
菅野優樹1) ,重福隆太2) ,渡邊綱正2) ,中野弘康2) ,池田裕喜2) ,
白勢大門2) ,服部伸洋2) ,松永光太郎2) ,松本伸行2) ,奥瀬千晃3) ,
鈴木通博3) ,伊東文生2)
【症例】78歳,男性.【現病歴】2016年2月初旬より持続する発熱を主訴に2
月下旬に当院を受診された. 血液検査で好中球数高値および腹部造影CTで
多発肝低吸収域(low density area;LDA)およびS状結腸腫瘤像を認め入院
となった. 【既往歴】陳旧性脳梗塞. 【常用薬】クロピドグレル. 【飲酒歴】
ビール700ml + ウイスキーダブル/ 日を50年間. 【喫煙歴】なし. 【入院時現
症】意識清明,体温 36. 5℃,脈拍数 54/ 分,血圧 100/ 56mmHg,腹部に圧
痛を認めなかった.【検査所見】肝胆道系酵素上昇,WBC 46800/ μl(Neut
90. 5%),CRP 16mg/ dlと炎症反応高値およびCA19-9 20. 3U/ ml, CEA 16.
7ng/ mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた.【経過】肝内LDAは肝膿瘍もしく
はS状結腸癌肝転移を鑑別に挙げ,診断的治療のため膿瘍ドレナージ施行
し白色調の悪臭を伴う膿を採取した. 膿瘍培養および血液培養採取後,
TAZ/ PIPC 13. 5g/ 3×を開始した.その後,膿瘍培養から Fusobacterium
nucleatum (F. nucleatum) が分離され,感受性からCAM/ AMPCの内服へ変
更し,第17病日に膿瘍ドレーンを抜去した.肝膿瘍の感染経路検索のため
施行した上部消化管内視鏡,歯科診察,MRCPで異常なく,心臓超音波で
は疣贅を認めなかった.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に全周性の潰瘍
限局型(2型)の進行大腸癌(tub 2, adenocarcinoma)を認め,CTでは肝転
移,傍結腸リンパ節腫大からcStage 4と診断した. 原発巣は外科的切除を施
行し,肝転移に関しては今後化学療法を予定している.【考察】肝膿瘍と同
時に診断される大腸癌の報告は多いが,本邦で大腸癌と同時に診断された
F. nucleatumの肝膿瘍は3例のみである. Fusobacteriumは腸管の他,齲歯の
起因菌として重要であり,本例では齲歯を含めた他の感染経路はすべて否
定しており,S状結腸癌が感染経路と考えられた. また近年F. nucleatumが
大腸発癌機構に関与する可能性が指摘されており(Genome Res 2012),示
唆に富む症例と考え報告する. 【結語】S状結腸癌が細菌の侵入経路と考え
られたF. nucleatumによる化膿性肝膿瘍の1例を経験した.
91
日本大学医学部附属板橋病院 消化器肝臓内科学分野1) ,
日本大学病院 消化器肝臓内科2)
稲原裕也1) ,松本直樹1) ,本田真之1) ,香川敦宣1) ,牧野加織1) ,
石井大雄1) ,熊川まり子1) ,宮澤祥一1) ,水谷 卓1) ,上村慎也1) ,
永井晋太郎1) ,中村仁美1) ,楡井和重1) ,山上裕晃1) ,松岡俊一1) ,
後藤田卓志2) ,森山光彦1)
【緒言】今回腹腔−静脈シャント(PV-Shunt)造設2年目に繰り返す
敗血症を経験したので報告する. 【症例】アルコール性肝硬変に合
併した肝細胞癌の診断で2□□0年3月に肝切除した. 2年後より難
治性腹水に対して, 内科的加療を開始するも治療抵抗性のため更
に2年後にPV-Shuntを造設した. 同年より肝細胞癌の再発を認め,
肝動脈化学塞栓療法( TACE) を開始し, 再発病変に対しTACEを継
続していた. 治療適応の食道静脈瘤を認め2□□5年に当科入院し
た. 入院時より発熱, 炎症反応高値あり, 脾梗塞, 腎梗塞, 脳梗塞を
合併していた. 熱源の同定はできず, 抗生剤投与で軽快し退院し
た. しかし, 退院後1ヶ月で発熱. 倦怠感, 下痢を認め再度入院した.
入院時培養検査で血液培養からE. coli認め, 敗血症の診断・加療し
た. 抗菌薬投与で軽快するも中止後に再燃を繰り返し, 再燃時に血
液培養からCrynebacterim striaumが検出された. 腹腔内感染症を示
唆する菌種による繰り返す菌血症, その他感染源が同定できず
Bacterial translocationの可能性と肝硬変患者に生じる特発性細菌性
腹膜炎( SBP) からPV-Shuntによる菌の大循環系への流入の可能性
が考えられたがPV-Shunt造設後のためSBPの証明が困難であった.
その後, 抗菌薬の継続で再燃を認めなかったが, シャント閉塞を起
こし腹水貯留を認め, 腹水中からCorynebacterim striaumが検出され
た こ と か ら SBP か ら Shunt を 介 し て の 敗 血 症 と 考 え ら れ た.
PV-Shuntを抜去予定であったが敗血症を再燃してから全身状態不
良であり, 抜去困難な状態であった. その後, 肝不全進行し永眠さ
れた.【考察】PV-Shunt挿入後のSBPの合併は腹水穿刺が困難で, 感
染源の同定が難しい状態であるが, 発症すると菌血症におちいる
ことがあり, PV-shunt増設後のSBPを疑った場合は早期からシャン
トの抜去・結紮も念頭に置かなければならないと考えられた.
Fusobacterium nucleatum 化膿性肝膿瘍,S状結腸癌
90
肝細胞癌に対するリザーバーカテーテル留置下肝動
注化学療法中に発症した胆管狭窄及び肝動脈胆管瘻
の一例
がん研有明病院1) ,同 画像診断部2)
村田翔平1) ,金田 遼1) ,齋藤 圭1) ,山田育弘1) ,佐々木隆1) ,
松山眞人1) ,尾阪将人1) ,高野浩一1) ,松枝 清2) ,笹平直樹1)
【症例】71歳男性。2015年7月、S7に9cmの肝細胞癌(HCC)を指
摘され、T4N1M0(Vp4)の診断で、リザーバーカテーテル留置
下にlow dose FPによる肝動注化学療法(リザーバー動注)を施
行されていた。2016年2月(8コースday8)に腹痛、下血を主訴
に当科を受診した。血液検査でヘモグロビンの低下、ビリルビ
ンの上昇、肝・膵酵素の上昇を認めた。上部内視鏡検査では胃
十二指腸内に血液を認めたが出血源は特定できなかった。腹部
造影CTでは4cmのHCCを認め、また胆嚢内に出血を疑う高吸収
域を認めた。以上よりHCCの胆道浸潤に伴う胆道出血による
閉塞性黄疸を疑い、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ( ENBD) 及び
肝動脈塞栓術( TAE) の方針とした。ERCPでは、凝血塊による
胆嚢内の透亮像の他、上部胆管に限局性の糸状狭窄を認め、
ENBDを行った。血管造影では、右葉のHCCからの胆道出血は
見られず、胆管狭窄部に一致して右肝動脈から胆管への造影剤
の漏出が認められ、肝動脈胆管瘻と診断し、右肝動脈に対して
コイルによるTAEを行った。以後出血なく経過し、胆道狭窄の
治療と瘻孔閉鎖を目的に、ERCP下にcovered metallic stentを留置
した。その後、再出血、胆管炎は認めず退院となった。
【結語】胆管狭窄や肝動脈胆管瘻はリザーバー動注療法による
晩期合併症として報告されているが、両者が同時に観察された
報告はない。本病態及び治療法について文献的考察を含め報告
する。
Denver型PV-Shunt留置後2年目に敗血症を繰り返す
肝硬変患者の1例
腹腔静脈シャント,特発性細菌性腹膜炎
92
FDG-PETで高集積を認めた肝細胞腺腫の一例
東京大学医学部附属病院 肝胆膵・人工臓器移植外科1)
同 病理部2) ,同 放射線科3) ,
吉田浩紀1) ,稲垣冬樹1) ,阪本良弘1) ,有田淳一1) ,赤松延久1) ,
金子順一1) ,長谷川潔1) ,柴原純二2) ,渡谷岳行3) ,國土典宏1)
【背景】肝細胞腺腫は肝細胞由来の良性腫瘍であるが、日本での報告は
稀であり、また、画像上は高分化型肝細胞癌との鑑別が困難である。
今回、術前に高分化型肝細胞癌との鑑別が困難であった肝細胞腺腫の
一切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する。【症例】患者
はコーカソイドの40代女性で、健診で行った腹部超音波検査で肝腫瘤
を指摘され、当科を紹介受診した。HBV、HCVともに陰性、アルコー
ル 摂 取 は 機 会 飲 酒 で、ピ ル の 内 服 歴 が あ っ た。腫 瘍 マ ー カ ー は
PIVKA2 46 mAU/ mlと軽度上昇していたが、AFP、CEA、CA19-9は正
常範囲内であった。造影CT検査では肝S8に単純でlow、造影動脈相で
iso、造影門脈相でlowとなる占拠性病変を認め、MRIのT1 Dual Echoで
はopposed phaseで信号低下を認め、T2脂肪抑制で等信号であった。
EOB-MRIでもhepatobiliary phaseで信号低下を認め、高分化型肝細胞癌
を疑った。しかし、FDG-PETでは肝S8に異常高集積を認め、高分化型
肝細胞癌としては非典型的であった。肝細胞癌の術前診断で開腹し
た。術中所見では、腫瘍は肝表面に局在しており、視診では黄褐色調
で、触診では周囲肝実質と同程度の硬度で、腫瘤としては触知不能で
あった。術中超音波では腫瘍はhyperechoic massとして描出され、ソナ
ゾイドで造影後のvascular phaseで濃染され、Kupffer phaseでは抜けが
認められた。針生検による迅速病理診断では、肝細胞腺腫やFNHが疑
われた。画像上はFNHの可能性は低いため、肝細胞腺腫の可能性が高
いと考えられた。肝腫瘍は肝表面に局在し、破裂による腹腔内出血の
可能性があること、文献的に悪性化の可能性があること、非切除とす
れば将来的に経過を追跡する必要が生じることから、肝S8の亜区域切
除を行って腫瘍を切除した。永久標本の結果では肝細胞腺腫と診断さ
れた。【考察】肝細胞腺腫は画像上、高分化型肝細胞癌との鑑別が難し
いと言われているが、今回FDG-PETの所見が高分化型肝細胞癌と肝細
胞腺腫との鑑別に役立つ可能性が示唆された。
肝動脈胆管瘻,肝動注化学療法
― 48 ―
肝細胞腺腫,FDG-PET
93
当院における80歳以上の切除不能進行膵癌に対する
nab-paclitaxelとgemcitabine併用療法の検討
東京慈恵会医科大学附属第三病院
堀川真吾,今井那美,赤須貴文,萩原雅子,横田健晴,岩久
小林 剛,小林裕彦,木下晃吉,伏谷 直,木島洋征,
小池和彦
章,
【背景】切除不能進行膵癌に対しては1990年代後半よりgemcitabine
(GEM)が標準治療として用いられている。本邦では2014年12月よ
りnab-paclitaxel(nab-PTX)とGEM併用療法が保険適応となった。
国内第I/ II相試験では75歳までが対象であり、80歳以上の超高齢の
膵癌患者に対するnab-PTXとGEM併用療法の効果と安全性に対し
ては明らかなになっていない。今回、当院での使用経験から、80
歳以上の超高齢者の切除不能進行膵癌患者に対するnab-PTXと
GEM併用療法の効果と安全性について検討する。【対象】2015年1
月から12月までに当科にてnab-PTXとGEM併用療法を施行した切
除不能進行膵癌患者8名を対象にした。【結果】年齢中央値は74
(66〜84)歳で80歳以上は3例であった。80歳未満の群では性別は
男性3例、女性2例、発生部位は膵頭部2例、膵体部1例、膵尾部2例、
進行度はstageIVaが2例、stageIVbが3例、投与回数の中央値は4
(2〜5)コースであった。80歳以上の群では性別は男性1例、女性2
例、発生部位は膵頭部1例、膵体部1例、膵尾部1例、進行度は
stageIVaが1例、stageIVbが2例、投与回数の中央値は1(1〜2)コー
スであった。CTCAE v4. 0でgrade3以上の副作用は全例で認め、内
訳は80歳未満の群では貧血3例、好中球減少1例、発熱性好中球減
少症1例、全身状態悪化1例、80歳以上の群では貧血1例、好中球減
少1例、末梢神経障害1例であった。副作用のため、全例で投与量
減量もしくは中止となった。転帰は80歳未満の群では死亡例2例、
S-1内服への変更例は2例、nab-PTXとGEM併用療法継続例は1例、
80歳以上の群では死亡例2例、GEMへの変更例が1例であった。【ま
とめ】当院の症例では80歳以上の超高齢者群と80歳未満の群で、
副作用の発現頻度に差は認めなかったが、投与回数の中央値は超
高齢者群で少なかった。文献的報告を含め、超高齢者の化学療法
について考察する。今後も症例を重ね、検討が必要である。
95
草加市立病院
慶徳大誠,青沼映美,鈴木
矢内常人
1)
臭化ブチルスコポラミン,アナフィラキシーショック
96
穿孔を来した膵癌小腸転移の1例
2)
東海大学医学部 消化器内科 ,同 消化器外科 ,
同 病理診断科3)
佐藤翔太1) ,川口義明1) ,川西 彩1) ,川嶌洋平1) ,羽田野敦子1) ,
小川真実1) ,富奥美藤2) ,佐藤俊樹2) ,古川大輔2) ,中野夏子3) ,
平林健一3) ,峯 徹哉1)
症例は62歳、男性。【主訴】腹痛。【既往歴】20歳 急性膵炎、50
歳 糖 尿 病。【家 族 歴】特 記 な し。飲 酒 歴 な し。喫 煙 歴 あ り
(20-25歳、20本/ 日)。【腹部所見】腹部全体に圧痛、反跳痛あり、
腹膜刺激症状が疑われた。【現病歴】2015年11月下旬腹痛にて
前医受診。腹部CT施行したところ、膵尾部腫瘍、多発肝腫瘍が
認められ、膵癌、肝転移疑いで12月上旬当院紹介受診となった。
病理学的確定診断目的にEUS-FNAを予定していたところ、腹
痛増悪のため救急受診された。腹部CT施行したところ、膵尾
部癌、肝転移の増大、腹膜播種の所見に加え、左傍結腸溝の少
量腹水と脾外側の少量free airが認められ、消化管穿孔が疑われ
たため、同日緊急手術の方針となった。腹腔鏡で腹腔内観察す
るも穿孔部は不明であり、開腹手術へ移行。トライツ靭帯から
約20cmと50cm肛門側の小腸漿膜に硬い結節・厚い白苔付着と
混濁腹水が認められ穿孔部が強く疑われた。穿孔部と思われる
小腸を部分切除し、腹腔内洗浄を行い閉腹した。摘出した小腸
に は 穿 孔 部 と 潰 瘍 部 が 認 め ら れ、い ず れ も moderately
differentiated adenocarcinoma ( compatible with metastatic pancreatic
carcinoma) の所見を呈しており、病変の主座は粘膜下層〜漿膜
下層に存在しており、腹膜播種病変というよりは小腸転移を示
唆する所見であった。術後経過は良好で、術後10日目に退院と
なり、退院後は外来で化学療法施行中である。膵癌小腸転移は
稀であり、さらに未治療膵癌、小腸転移に伴った消化管穿孔は
非常に稀と考え、その発生機序も含めて文献的考察を加え報告
する。
快,鎌田和明,山本満千,吉田玲子,
【症例】51歳 男性【現病歴】左下腹部痛を主訴に他院を受診し,
大腸憩室炎の診断で入院加療した。約1ヶ月後に再発し抗生剤
の内服により症状は軽快した。スクリーニング目的に下部消化
管内視鏡検査を行うため当科を受診した。検査施行前の問診で
は心疾患の既往やアレルギーはなく, 腸管蠕動抑制目的に臭化
ブチルスコポラミンの筋肉内注射を行った。その数十秒後, 突
然嘔気が出現し, 胸部の違和感と呼吸困難を訴えた。2分後に
JCS-300と意識レベルが低下し, 呼吸なく, 脈を触知しなかった
ため直ちに胸骨圧迫を開始し, 心肺蘇生を行った。胸部違和感
を訴えたことから臭化ブチルスコポラミンに伴う心血管攣縮に
よる虚血性心疾患を考えたが, 心電図, 心エコー検査では明らか
な異常はなかった。途中, 全身の皮膚の発赤に気づき, アナフィ
ラキシーショックを疑った。アドレナリンを静注し, ヒドロコ
ルチゾン点滴投与と大量補液を行った。その後, JCS-1までに
意識状態は改善したが, 収縮期血圧が70mmHgとショックバイ
タルであり, ドパミンを投与しても改善しなかったため同日
ICUへ入院し, 第4病日に退院した。退院後, DLSTで臭化ブチル
スコポラミンに対する陽性率208%と判明し, 臭化ブチルスコポ
ラミンによるアナフィラキシーショックと判断した。
【考察】
臭化ブチルスコポラミンは副作用が少ない比較的安全な薬剤で
あり, 内視鏡室では消化管蠕動抑制の目的で頻繁に使用されて
いる。副作用の中でも重篤なアナフィラキシーショックを来す
のは10000人の内, 1-3人と非常に稀である。全ての薬剤でアレ
ルギーが生じる可能性は存在するため, 様々な薬剤を投与する
内視鏡検査室ではそのリスクは常に存在し, 急変時に迅速に対
応できる体制を整えておく必要がある。
切除不能進行膵癌,80歳以上
94
臭化ブチルスコポラミンによるアナフィラキシー
ショックを来たした1例
心房内血栓より上腸間膜動脈血栓症をきたし救命で
きなかった1例
日本大学医学部内科学系 消化器肝臓内科
林 辰彦,後藤田卓志,林 香里,大内琴世,中川太一,高橋利実,
中河原浩史,山本敏樹,今武和弘,小川眞広,松岡俊一,
森山光彦
【症例】40代男性【主訴】胸苦【現病歴】1週間前より軽度の腹
痛を自覚していたが、胸苦が強くなり外来を受診した。心電図
では心房細動、頻脈で血圧も200mmHg以上の高値、心臓超音波
検査では左室駆出力が0. 128と低心機能を認め、高血圧性うっ
血性心不全の診断で入院となった。【服用歴】特記事項なし【臨
床経過】入院後高血圧性うっ血性心不全に対する加療、および
血栓予防目的でDOAC内服を開始した。入院日午後より腹痛が
増強し、施行した全身CTで上腸間膜動脈血栓症による小腸造
影不良域を認めた。第2病日午後より呼吸苦が出現、心房内血
栓、肺動脈血栓症、腎動脈血栓、上腸間膜動脈内に血栓を認め
たために集中治療室にて挿管管理となった。その後血清クレア
チニン2. 87mg/ dlと急激な腎機能低下、CRP23mg/ dlと高度な炎
症所見、胸水の増加を認めた。さらに昇圧剤による治療を行っ
たが反応しなかった。第4病日の造影CTでは、腸管壁の造影不
良、腹水、壁内ガスと腸管壊死を強く疑う所見を認めた。その
後状態は改善せず第5病日に永眠となった。【考察】心房細動か
らうっ血性心不全が惹起され心房内血栓を形成し、腎臓、上腸
間膜動脈、肺動脈の血栓症から腎機能低下、小腸壊死、呼吸不
全をきたした症例を経験した。致命的な疾患であり早期治療が
求められる疾患であることより早期より疑うことが必要であ
る。これらに留意しつつ文献的考察を含めて報告する。
膵癌,消化管穿孔
― 49 ―
上腸間膜動脈血栓症,腸管壊死
97
胃癌手術を契機に診断されたSplenosis( 脾症) の一例
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般消化器外科1) ,
同 病理部2)
豊崎瑛士1) ,清崎浩一1) ,阿部 郁1) ,小櫃 保1) ,染谷崇徳1) ,
石岡大輔1) ,菊川利奈1) ,斎藤正昭1) ,辻仲眞康1) ,宮倉安幸1) ,
野田弘志1) ,蛭田昌宏2) ,力山敏樹1)
症例は70歳代男性。既往歴として21歳時に交通事故のため脾損
傷し脾摘術を施行された。検診で胃癌と診断され加療目的に当
院紹介となった。上部消化管内視鏡検査では胃体上部後壁に
0-IIa+IIc様の所見を認め生検で高分化〜中分化腺癌と診断し
た。CTでは胃の周囲や左腎背側、大網内などに類円形の造影
効果を伴う腫瘤影が複数認められたが、明らかな転移所見は認
めなかった。術前診断U, post, cType 0-IIa+IIc, T2, N0, P0,
H0, M0 Stage IB, 副脾の診断で胃全摘術、Roux en Y再建術を施
行した。手術時の所見で大網内と体上部大弯の胃壁に暗赤色の
表面平滑な腫瘤を認めた。肉眼所見で脾組織と判断し右側大網
内のものは温存した。切除標本での病理組織検査で同組織は脾
組織と診断された。胃癌に関してはtub1>pap, T2, int. , INF
α, ly1, v1, N0の診断であった。術後、一過性のせん妄を認め
たが経過は概ね良好で第15病日に退院した。外傷性脾破裂の既
往があることより今回発見された腫瘤は脾症と考えられた。今
回の症例では脾損傷から50年の経過を経て手術の際、偶然発見
された。外傷後50年以上経過し、胃壁に接し存在した脾症の報
告はまれであり、文献的考察を加えて報告する。
99
順天堂大学 下部消化管外科
牧野有里香,本庄薫平,岡澤 裕,高橋里奈,盧 尚志,河野眞吾,
宗像慎也,丹羽浩一郎,石山 隼,神山博彦,高橋 玄,小島 豊,
五藤倫敏,冨木裕一,坂本一博
【症例】60歳代、男性。40歳代の時に紫斑が下肢に出現し、アレ
ルギー性紫斑病と診断された。その後、健診で蛋白尿、血尿を
指摘され当院腎臓内科で腎生検を行い、IgA腎症と診断されて
いた。1月中旬に腹痛、背部痛が出現したが軽快していた。そ
の後下肢に紫斑が出現し、紫斑が大腿部や上腕にも出現したた
め1月下旬に内科外来を受診した。血液の炎症反応、尿中の蛋
白、赤血球に大きな異常を認めず、経過観察となっていた。そ
の1週間後に39度の発熱と腹痛を認め、再度外来を受診した。
右下腹部に強い圧痛のみ認め、白血球18, 300/ μl、CRP 19.
5mg/ dlと炎症反応の上昇を認めた。また、腹部CT検査では回
盲部の腸管に炎症所見を認めたため緊急入院となった。結腸憩
室炎、急性虫垂炎を疑ったが、尿中に糸球体赤血球が出現して
おり、IgA腎血管炎の再燃、増悪の所見を認めた。下肢の紫斑
と併せアレルギー性紫斑病に伴う急性腹症と診断した。絶食、
補液、抗生剤投与で炎症反応の低下とともに腹痛は軽快した。
【考察】アレルギー性紫斑病はSchonlein-Henoch 紫斑病と呼ば
れ、全身性のIgA沈着による細血管炎であり四肢の紫斑、関節
痛、腎障害、腹痛を伴う過敏性血管炎と特徴づけられている。
本症は小児に多く、また腹痛が紫斑に先行することが多い。自
験例では急性腹症で入院となったが、紫斑の出現や腎炎の悪化
など典型的な症状を呈していたため、腹部症状を慎重に観察し
ながら保存的治療を行うことができた。ステロイド投与が治療
に有効とされているが、緊急手術の可能性も考えると投与に踏
み切ることができなかった。今回、紫斑の出現と腹痛の出現、
尿所見など全身の兆候を総合的に検討することで診断に至り、
治療を行うことができた症例を経験したので報告した。
アレルギー性紫斑病,腹痛
脾症,脾外傷
98
卵巣穿通を伴ったS状結腸憩室炎に対し腹腔鏡下S
状結腸切除術を施行した1例
横須賀共済病院
大西 宙,木村
長堀 薫
外科
準,諏訪雄亮,渡邉
アレルギー性紫斑病に伴う急性腹症の1例
100
虫垂腫瘍との鑑別に苦慮した周囲膿瘍を伴う穿孔性
虫垂炎の1例
独立行政法人 国立病院機構 横浜医療センター 外科
山本悠史,松田悟郎,関戸 仁,清水哲也,渡部 顕,高橋直行,
坂本里紗,朴
峻,中崎佑介
純,舛井秀宣,
症例は66才女性,歩行時の心窩部痛を主訴に外科を受診した.
受診時,心窩部は圧痛のみで反跳痛を認めなかったが,左下腹
部圧痛・反跳痛を認めた.血液検査所見ではWBC5. 7×103/ μ
l,CRP 0. 71mg/ dlとCRP軽度上昇を認めるのみであった.CT検
査ではS状結腸憩室炎,腫大した左卵巣内に液体貯留とガス像
を認め,上腹部と骨盤腔内に大量のfree airを伴っていた.腹水
貯留は認めなかった.以上の所見より,S状結腸憩室の卵巣穿
通と診断し,緊急で腹腔鏡下S状結腸切除術,左卵巣合併切除
を施行した.S状結腸には憩室を認め,腸管壁肥厚を伴ってい
た.S状結腸憩室と左卵巣が高度に癒着しており,術中卵巣内
からairの流出を認め,卵巣穿通を伴うS状結腸憩室穿孔と診断
した.術後縫合不全等なく,術後17日目に退院した.病理組織
学的検査所見では,S状結腸には憩室が多発し,左卵巣と癒着
し,割面にて卵巣は嚢胞様構造を形成していた.嚢胞様構造は
筋層から漿膜下に見られ,憩室の連続性は作製面では見られな
かったが,ほぼ近傍まで憩室を認めた.また嚢胞壁に食物残渣
を認めた.以上の所見から憩室炎の穿通により,腸管と卵巣が
交通し,嚢胞様構造を形成したものと考えられる像であった.
卵巣穿通を伴うS状結腸憩室炎の報告は非常に稀であるため,
報告する
症例は75歳、男性。10月某日に右下腹部痛を自覚し、近医を受
診。採血で炎症反応の軽度上昇を認め、急性虫垂炎疑いで抗菌
薬の内服による内科的治療が開始された。後日、経過観察目的
に腹部エコー検査を施行すると、右下腹部に腫瘤が疑われ、腹
部CT検査では虫垂先端の壁肥厚を伴った直径12mmの腫大を認
めた。経過が長く、小さな虫垂腫瘍も鑑別に挙がった。後日、
再度腹部CT検査を施行すると、虫垂先端を中心とした壁肥厚
を伴う31×24×28mmに及ぶ腫瘤状の虫垂腫大を認め、増大傾
向であった。虫垂腫瘍の可能性も否定しきれないため、当院紹
介初診となった。来院時、発熱はなし。McBurney点のやや尾
側に圧痛があるも、反跳痛はなかった。WBC 7800/ μl、CRP 1.
82mg/ dlと炎症反応はほぼ正常であったが、CA19-9 58. 1U/ ml
と腫瘍マーカーの上昇を認めた。腹部MRI検査を追加すると、
虫垂は軽度腫大、内腔に粘液が疑われる液体が充満しており、
虫垂から盲腸周囲にやや液状の層が認められ、偽粘液腫の可能
性も鑑別に挙がった。そのため、虫垂腫瘍を疑い、開腹回盲部
切除術を施行した。開腹すると、虫垂、盲腸、回腸末端、腹壁
に及ぶ100mm×90mmの腫瘤を認めた。腫瘤は腹直筋にも浸潤
しており、一部合併切除とした。また、回腸末端に播種を疑う
結節があり、腫瘤と一括で切除とした。病理組織診断では腫瘤
と思われた部分は菌塊を含んだ膿瘍であり、周囲膿瘍を伴った
穿孔性虫垂炎と診断された。播種を疑った結節も膿瘍であっ
た。虫垂腫瘍と虫垂炎とで鑑別を要する場面は多く、それらに
関して若干の文献的考察を加えて報告する。
大腸憩室炎,卵巣穿通
― 50 ―
虫垂炎,虫垂腫瘍
101
生物学的製剤とCAP療法の併用により臨床的寛解を
得た潰瘍性大腸炎の1例
社会医療法人社団 順江会 江東病院 消化器内科
橋本周太郎,小林 修,太田一樹,小島拓人,三好由里子,
伊藤翔子,渡辺大地
103
横浜保土ヶ谷中央病院 外科
小澤真由美,田中優作,谷口浩一,齋藤健人,上向伸幸
潰瘍性大腸炎に対する生物学的製剤の有効性については多数の
報告がすでに存在するが、他方で生物学的製剤が無効と判断さ
れる例もあり、これらに対する治療方針が臨床上の課題となっ
ている。今回、我々は生物学的製剤が当初無効と考えられ、
CAP療法を併用したところ臨床的寛解を得た1例を経験した。
症例は2型DM・高血圧のある53歳男性、平成19年に便潜血を契
機に潰瘍性大腸炎(左側大腸炎型)と診断された。当初はサラ
ゾスルファピリジン内服でコントロール良好であったが、平成
21年に粘血便の増悪を認めてステロイド注腸追加、及び内服を
メサラジンへ変更した。平成23年にはメサラジン注腸も追加さ
れたが臨床的寛解は得られず、加療目的に平成25年7月当院紹
介受診となった。
初診時の大腸内視鏡では左側結腸の地図状潰瘍が顕著であっ
た。入院後にCAP療法を施行したが、一時的に炎症反応の改善
を認めたものの臨床症状は改善しなかった。次いでステロイド
内服を開始、便回数の減少あり粘血便も軽快傾向にあったが、
ステロイド減量に伴って症状の再燃がみられ、ステロイド依存
性ありと判断してアザチオプリンの内服を開始した。しかしア
ザチオプリンの開始後も症状に改善なく、インフリキシマブの
使用を開始したものの、計3回の施行後も症状、炎症反応ともに
改善なく内視鏡像も増悪傾向であった。インフリキシマブ一次
無効と考えてアダリムマブへ投薬変更後も改善は認められず、
手術も検討される状況であったが、CAP療法の併用を開始した
ところ徐々に炎症反応・症状は改善傾向を示し、以降の内視鏡
所見においても改善傾向がみられた。
本症例は生物学的製剤・CAP併用療法の有効性を示唆するもの
と考えられるため、ここに報告する。
偽膜性腸炎は主にClostridium difficileにより下痢症を引き起こ
す院内感染性腸炎である.近年増加傾向にあり当院でも年間30
例ほどの発症を認めている.早期に診断し治療を開始すれば内
科的治療により軽快する予後良好な疾患である.しかし,まれ
に重症化し中毒性巨大結腸症を合併することが報告され,致死
率も高く予後不良となる.今回我々は直腸癌術後に偽膜性腸炎
から中毒性巨大結腸症を併発した1例を経験したので報告する.
症例は76歳の男性で主訴は便潜血陽性.既往に慢性閉塞性肺疾
患(COPD)があった.直腸癌と診断し開腹低位前方切除術を
施行した.食事摂取も開始していた術後15日目に,下痢を契機
に偽膜性腸炎の診断となった.メトロニダゾール内服治療を開
始したが, 症状が増悪し腸管拡張が悪化した.このためバンコ
マイシンへ変更したが術後23日目に汎発性腹膜炎の状態となっ
た.CT所見では腹腔内遊離ガスを認め,巨大結腸症から穿孔
性腹膜炎に至った可能性が高いと判断し緊急開腹手術を施行し
た.手術所見では横行結腸は著明に拡張していたが,腹水は漿
液性であり明らかな穿孔部位は不明であった.しかし拡張結腸
でのmicro perforationも否定できず,また中毒性巨大結腸症を来
していたため回腸双孔式人工肛門を造設した.術後DICとなり
集中治療を要したが,順調に回復し退院した.中毒性巨大結腸
症を合併したものの,早急な手術によって救命しえた症例と考
えられた.
中毒性巨大結腸症,腹腔内遊離ガス
生物学的製剤,CAP療法
102
結腸直腸吻合部の完全閉塞を非手術的に解除した
1例
日本海員掖済会 横浜掖済会病院
浅野史雄,大山倫男,森岡大介,佐藤芳樹,三浦
堀井伸利
中毒性巨大結腸症を併発した直腸癌術後偽膜性腸炎
の1例
勝,山口和哉,
消化管吻合の完全閉塞は稀ではあるが一定頻度の報告があり、
通常は外科的な再吻合術redo surgeryが適応される。結腸直腸吻
合部の完全閉塞を非手術的に解除せしめた1例を経験したので
報告する。79歳男性でS状結腸癌に対する腹腔鏡下S状結腸切
除後の縫合不全による吻合部完全閉塞及び吻合部の口側及び肛
門側の腸管の完全離断により数年間回腸人工肛門造設状態で
あった。回腸人工肛門閉鎖のためにまず結腸直腸吻合のための
redo surgeryを施行したところ手術直後は問題なかった吻合部が
人工肛門閉鎖直前の再評価で再度完全閉塞を認めた。今回の閉
塞は、画像上吻合部の口側及び肛門側の腸管の連続性は保たれ、
吻合に使用したcircular staplerのリングの形状にも問題がなくリ
ング内の膜様肉芽組織による閉塞と考えた。Re-redo surgeryも
考慮したが患者本人と相談の上、まずは非手術的に解除を試み
る方針とした。透視下CF下で方向を十分確認した上で経肛門
イレウス管挿入キットのthrough-the-scope dilatorに貫通力を担
保するためガイドワイアーを逆向きに先端が出ないよう挿入充
填したものを吻合部の膜様閉塞部の中央を貫くよう強く押し込
んだところ吻合部の非連続性は解除された。以後は通常の経肛
門イレウス管挿入手技に則りover-tube dilator挿入まで行った後
に、通常の吻合部狭窄に対するバルーン拡張手技で治療した。
その後回腸人工肛門を閉鎖し以後3年以上の経過で吻合部の閉
塞及び狭窄の再燃は認めない。腸管吻合部の完全閉塞に対する
非手術的治療の報告は散見されるが、いずれも他領域の特殊治
療器具を流用したsharp dissection, punctureもしくはelectrocision
に よ る も の で あ る。今 回 の 方 法 を 我々 は blunt penetration
techniqueと名付けたが、この方法は日常的に用いる器具で、諸
家の特殊器具を用いる方法に比べ安全に施行可能と考え報告す
る。
104
著明な白血球増多を伴い、急速に進行した重症型ア
ルコール性肝炎の一例
国立病院機構 災害医療センター 消化器内科1) ,
国立病院機構 東京病院 消化器内科2)
佐々木善浩1) ,外川菜々子1) ,上條 孟1) ,木谷幸博1) ,島田祐輔1) ,
林 昌武1) ,永島加世1) ,大野志乃1) ,上市英雄1) ,川村紀夫2)
【症例】45歳女性
【施行歴】飲酒歴:焼酎4合〜5合/ 日×20年以上
【現病歴】以前からアルコールを多飲していた.2014年8月頃から倦怠
感,10月頃から黄疸を認め,さらに倦怠感悪化し,飲酒できなくなっ
た.その後も症状改善せず,同年11月に近医受診.肝胆道系酵素高値
を認めていたが,白血球が82, 280と著明に増加していたため,血液疾
患が疑われ,当院血液内科に紹介となった.当初はCMLなど骨髄増殖
性疾患を疑い,骨髄穿刺等施行したが,正常な好中球が反応性に増加
しており,血液疾患は否定的であった. WBC,肝胆道系酵素上昇の精
査加療目的で消化器内科に入院となった.
血液検査では,A,B,C,E型肝炎は認めず,抗核抗体や抗ミトコンド
リア抗体等は陰性であった.薬物等の内服もなく,サプリメント等の
摂取もなかった.腹部造影CTでは、著明な肝腫大と高度の脂肪肝を認
めた.
意識は清明であったが,発熱,AST 優位の上昇,Bil,ALP,γ-GTPの
高値,PTが50%以下であった. 禁酒していても肝機能は改善していな
か っ た こ と か ら,堀 江 ら に よ る 重 症 型 ア ル コ ー ル 性 肝 炎(severe
alcoholic hepatitis,以下SAH)の診断基準に該当したため,上記診断
となった.
抗生剤投与や好中球エラスターゼ阻害剤等施行したが,肝機能やPT等
の改善に乏しかった. 徐々に全身状態不良となり,第19病日に永眠と
なった.
【考察】SAH はアルコール性肝炎の一種で多くは肝性脳症,肺炎,急性
腎不全,消化管出血,エンドトキシン血症などを伴う予後不良の疾患
である.治療として顆粒球除去療法,血漿交換, 好中球エラスターゼ
阻害剤,ステロイドパルス等が報告されているが,依然として予後不
良である.本症例では残念ながら救命できなかったが,著明な白血球
上昇を認めており,文献的考察を加えて報告する.
消化管吻合,術後合併症
― 51 ―
重症型アルコール性肝炎,好中球エラスターゼ阻害剤
105
脳腫瘍摘出後に肝機能障害を契機として発見された
肝原発神経内分泌癌・脳転移の1例
千葉大学医学部附属病院 消化器腎臓内科学1) ,
同 脳神経外科学2) ,同 診断病理学3)
高橋幸治1) ,鈴木英一郎1) ,井上将法1) ,若松 徹1) ,小笠原定久1) ,
大岡美彦1) ,千葉哲博1) ,松谷智郎2) ,岩立康男2) ,佐伯直勝2) ,
神戸美千代3) ,横須賀收1)
107
高度静脈浸潤を認め、腫瘍組織内に合胞体様の多核
巨細胞を多数認めた再発肝細胞癌の一例
帝京大学ちば総合医療センター 外科1) ,同 病理2)
菊地祐太郎1) ,廣島幸彦1) ,山崎一人2) ,石田康生2) ,松尾憲一1) ,
平野敦史1) ,森 幹人1) ,小杉千弘1) ,首藤潔彦1) ,幸田圭史1) ,
田中邦哉1)
症例は63歳女性. 頭痛を主訴に近医を受診したところ頭部CT
検査で右脳に腫瘍を認め, 当院脳神経外科に紹介となった. 頭
部造影CT検査では, 右頭頂葉に長径45mmで辺縁部に強い造影
効果を持つ腫瘍を認めた. 右頭頂葉膠芽腫の疑いで腫瘍摘出術
を施行した. 術前より軽度の肝機能障害があり, 術後に精査目
的で腹部造影CT検査を行ったところ, 長径181mmで辺縁部に
強い造影効果を持ち, 肝内側区域から前区域と後区域の一部に
またがる肝腫瘍を認めたため当科へ紹介された. 肝腫瘍に対す
る 針 生 検 を 施 行 す る と 腫 瘍 細 胞 は ChromograninA 陽 性,
Synaptophysin陽性でKi-67指数90%以上であり, 神経内分泌癌
の診断とした. 他に原発巣となる病変を認めなかった. 摘出さ
れた脳腫瘍の病理も同様の所見であり, 肝原発神経内分泌癌・
脳転移と考えた. 術後29日目からエトポシド・シスプラチンの
併用療法( EP療法) を開始し, 現在まで3コース施行し腫瘍は長
径110mmに縮小しPartial Responseを維持している. 転移性脳腫
瘍の摘出後に肝原発神経内分泌癌が発見される症例は稀であ
る. 転移性脳腫瘍の原発についての鑑別診断として神経内分泌
癌も考慮すべきであると考えられた.
症例は84歳男性、HCV陽性。2011年4月 検診腹部エコーにて
S5/ 8に6cm大のSOLを指摘され当院受診。S5/ 8中心のHCC 単
純結節型 6. 5cmの診断で2011年5月 肝前区域切除+胆嚢摘出
術施行し、術後合併症なく10病日で退院した。以降近医で経過
観察され、2014年4月 腹部エコーにて肝後区域に高エコー領域
が認められ、再度当科紹介受診した。精査の結果、造影MRI
(EOB)にて肝後区域に7. 5cm大の早期濃染、肝細胞相で低信号
の単発病変を認め、さらにそこから右肝静脈内にIVCにまで達
する腫瘍栓を認めた。HCC rec, H1, St-P, 7. 5cm, 多結節癒合
型, Eg, Fc+, Fc-inf+, Sf+, S1, N0, Vp1, Vv3, Va0, B0, P0,
T3N0M0: cStageIIIと診断し、2014年8月肝後区域部分切除術、右
肝静脈内腫瘍栓摘出術を施行した。切除検体では、線維性被膜
を持つ中小の多結節が癒合する腫瘤が形成され、そこから肝門
に向かって腫瘍塞栓が認められた。中分化を主体とする肝細胞
癌で脈管侵襲が著しく認められ、特に肝静脈内に大型の腫瘍栓
が発達し先端は肝静脈断端近傍まで達していた。腫瘍細胞はク
ロマチンの増量した高度に腫大した核を持ち、部分的に合胞体
様の多核巨細胞を多数認めた。本症例の非常に浸潤能の高い性
質と腫瘍組織内に認められた合胞体様の多核巨細胞との関連に
ついて若干の文献的考察を報告する。
肝原発神経内分泌癌,EP療法
Syncytial giant cell,Vv3
106
108
多発肝細胞癌が自然退縮した症例
横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター1) ,
横浜市立大学附属病院 消化器内科2)
道端信貴1) ,杉森 慎1) ,羽尾義輝1) ,原 浩二1) ,福田浩之1) ,
野崎昭人1) ,近藤正晃2) ,中馬 誠1) ,沼田和司1) ,前田 慎2) ,
田中克明1)
【症例】73歳・女性
【現病歴】
アルコール性肝硬変、糖尿病、高血圧があり、近医に通院し
ていた。
2014年12月、腹部超音波にて肝右葉に径6cm大の腫瘤をみと
めた。AFP10. 9ng/ ml、PIVKA-2:2347mAU/ mlと腫瘍マーカー
の上昇もみとめ、肝細胞癌の疑いで同月当院へ紹介受診となっ
た。
2015年1月造影CT、EOB-MRI施行。S5/ 8肝表面に径6cm大腫
瘤、両葉に多発小結節をみとめ、S5/ 8肝細胞癌、肝内多発転移
と診断し、2月TACE施行の方針となった。
1月下旬、体温39度台の発熱を2日間みとめた。
2月TACE目的で入院。IVR-CT施行し、S5/ 8腫瘤の径4cm大
への縮小と腫瘍内血流の消失をみとめた。また、両葉の肝内多
発転移巣は消失していた。多発肝細胞癌の自然退縮と判断し、
TACEは中止とした。入院時に測定していた腫瘍マーカーは
AFP10. 0ng/ ml、PIVKA-2:295mAU/ mlとPIVKA-2が著明に低下
していた。
悪性腫瘍の自然退縮は、6万〜10万例に1例と非常に稀である
と言われており、ご報告させていただく。
FibroScan®により経皮的バルーン血管形成術の治療
効果を評価したバッドキアリ症候群の1例
東京大学医学部附属病院 消化器内科1) ,同 放射線科2) ,
NTT 東日本関東病院 放射線部3)
和気泰次郎1) ,中塚拓馬1) ,奥新和也1) ,中込 良1) ,近藤真由子1) ,
藤原直人1) ,佐藤雅哉1) ,南 達也1) ,工藤洋太郎1) ,中川勇人1) ,
浅岡良成1) ,近藤祐嗣1) ,田中康雄1) ,柴田英介2) ,大倉直樹2) ,
佐藤次郎2) ,赤羽正章3) ,建石良介1) ,小池和彦1)
【緒言】バッドキアリ症候群は肝部下大静脈あるいは肝静脈三主幹の閉塞
ないし狭窄により門脈圧亢進症を呈する疾患群であり,しばしば経皮的バ
ルーン血管形成術( PTA) による狭窄解除術が施行される.PTA前後で
FibroScanによる肝硬度測定( LSM) を行った報告はこれまでになく,肝下大
静脈閉塞の評価にLSMが有用であることが示唆されたためここに報告す
る.【症例】19歳男性.【現病歴】11歳時,肝機能障害を契機にIa型バッド
キアリ症候群と診断された.13歳時,両下腿浮腫,眼瞼浮腫が増悪し当院
小児科受診.肝部下大静脈の膜様閉塞部に対しPTAを施行した.その後は
症状改善していたが,脾腫・血小板減少・両下腿浮腫が出現し,再治療の
ため当科入院となった.【経過】術前の腹部超音波検査およびMRI検査で
は肝部下大静脈は著明な狭窄ないし閉塞が疑われ,LSM値 35. 3kPaと著明
高値であった.第2病日,血管造影検査にて肝部下大静脈の完全閉塞を認
めたため,膜様閉塞部を穿刺突破したのち狭窄部に対しバルーン拡張術を
施行した.術翌日の腹部超音波検査で肝部下大静脈は2mm程度の開存が
見られ,LSM値は21. 3kPaと低下していた.術後合併症なく第5病日退院.
術後20日の腹部超音波検査では肝部下大静脈は10mm程度の開存が見ら
れ,LSM値はさらに14. 3kPaまで改善していた.【考察】LSMは肝線維化の
指標として使用されるが,一方で肝うっ血の影響を受けることが知られて
いる.本症例の術後LSM値低下は膜様閉塞解除により肝うっ血が改善し
たことを反映していると考えられた.PTA術後はしばしば再狭窄・再閉塞
が問題となるが,完全閉塞に対するPTAは穿刺が必要となるリスクの高い
処置であり完全閉塞に至る前に治療のタイミングを逸しないことが肝要
である.LSMは再狭窄の評価にも応用可能と思われ,再狭窄の程度を非侵
襲的に類推できる重要なツールになりうると考えられた.
肝細胞癌,自然退縮
― 52 ―
バッドキアリ,フィブロスキャン
109
複数回の肝動脈塞栓術で止血を得られた肝細胞癌破
裂の1例
横須賀共済病院 消化器内科
相川恵里花,渡辺秀樹,鈴木秀明,新井勝春,田邊陽子,
小馬瀬一樹,小島直紀,山本奈穂子,平昭衣梨,石井玲子,
森川 亮,大坪加奈,高橋純一
111
つくばセントラル病院
内田優一,浅岡 等,田内雅史,上野卓教
症例は51歳の男性。右季肋部痛と腹部膨満を主訴に受診した。
AST112U/ l、ALT96U/ l、T-Bil0. 8mg/ dl、Hb11. 9g/ dlと肝胆道系
酵素の上昇と貧血を認めた。造影CTでS8に腫瘤性病変と造影
剤の血管外漏出、腹腔内に著明な液体貯留を認め、肝細胞癌
(HCC:hepatocellular carcinoma)の破裂と診断した。来院後、
ショックバイタルとなり、緊急で腹部血管造影検査を施行した。
右肝動脈の造影にてS8に腫瘍濃染を認め、gelpartにて経皮的肝
動脈塞栓術(TAE:transcatheter arterial embolization)を行った。
その後、止血が得られ、バイタルも安定していたがTAE施行後3
日目に貧血の進行と腹部膨満の増悪を認め、HCCからの再出血
と判断し、再度腹部血管造影を施行した。腹腔動脈の造影にて
腫瘍濃染を認め、これに対しTAEを行った。その後、出血の所
見なく経過し、4週間後に外科的切除を施行した。現在、画像上
では腹膜播種や転移、再発は認めず、外来通院中である。肝細
胞癌の破裂にたいし速やかに緊急のTAEを施行することにより
良好な止血効果が期待できるが再出血のリスクがあるため、慎
重な経過観察および二期的肝切除を考慮する必要があることが
今回の症例で経験できたため文献的考察を加え報告する。
【目的】肝膿瘍を伴う胆嚢炎にて発症し、膿瘍ドレナージするも効
果なく、ERBD施行し膿瘍への胆汁供給を減少させ、LVFXを膿瘍
注射することで肝膿瘍が改善した神経内分泌腫瘍の症例を報告す
る。【症例】75歳男性【既往歴】尿管結石【主訴】発熱・右背部痛・
心窩部痛【現病歴】2015年12月上旬より右背部痛、心窩部痛があり
12月中旬に40度の発熱と右背部痛を主訴に当院受診し、CTにて胆
嚢炎穿破、肝膿瘍の診断で入院となった。【入院後経過】体温38. 0
度、血圧124/ 71mmHg、脈拍数60bpm。腹部軟、心窩部に圧痛を認
める。血液検査WBC25910/ μl、Hb12. 9g/ dl、血小板33. 6万/ μl 、
CRP35. 76mg/ dl、ALB2. 7g/ dl、AST148U/ l、ALT106U/ l、CEA79.
4ng/ ml。入院後、PTAD施行し抗生剤投与を開始した。穿刺時血性
の膿を認め培養にてKlebsiella pneumoniaeが検出された。血液培養
からも同様の細菌が検出された。PTAD後も肝膿瘍の改善がみら
れず、穿刺部位変更のため再度PTADを行った。連日血性の排膿あ
るものの解熱は得られなかった。穿刺後11日目には排液がなく
なったためドレーンは抜去した。肝膿瘍と胆嚢の交通があり感染
だけでなく胆汁の影響により改善が得られないと考えERBD(8.
5Fr 10cm)を施行した。また肝膿瘍に対してLVFX500mgを5倍希
釈し、1/ 5量にて膿瘍内洗浄を4回行い最後は注入した。その後解
熱が得られ、肝膿瘍培養は陰性となりCTでは膿瘍と胆嚢の交通は
消失した。一方で入院時からCEA高値であり、フォローアップの
CTにて多発肝腫瘤が出現した。肝膿瘍の細胞診を複数回提出する
も全てClass2であった。そのため肝生検を行い、神経内分泌腫瘍
(NEC)と診断した。原発不明であるがCTにて胆嚢壁の肥厚など
から胆嚢原発と考えた。約2ヶ月で肝臓全体に転移が広がり骨転
移も出現した。積極的なリハビリをするもperformance status4であ
り改善が見られないためBest supportive careの方針となった。【考
察】胆嚢癌を伴い胆嚢と交通のある難治性肝膿瘍に対してERBD施
行し抗生剤膿瘍注射が有効なことがある。
神経内分泌腫瘍,肝膿瘍
肝細胞癌,TAE
110
肝 膿 瘍 を 伴 う 胆 嚢 炎 に て 発 症 し、ERBD 施 行 し
LVFXの膿瘍注射にて肝膿瘍が改善した神経内分泌
腫瘍の1症例
SVR後に多発する良性結節が出現しその経過2年後
にHCCが出現した1例
東京都健康長寿医療センター 消化器内科1) ,同 内視鏡科2) ,
順天堂大学 消化器内科3) ,同 病理診断科4)
上垣佐登子1) ,藤井悠子1) ,細矢さやか1) ,剛崎有加1) ,松川美保2) ,
松岡順子1) ,中嶋研一朗1) ,潮 靖子1) ,西村 誠2) ,佐々木美奈1) ,
佐藤公紀3) ,清水 遼3) ,林
学3) ,椎名秀一朗3) ,山下淳史4) ,
福村由紀4)
今回我々は、当初は良性結節が多発していたが、数年後にPIVKA2の急上
昇がありHCCと診断された症例を経験したので報告する。症例は84歳男
性。約50年前の胆摘の際に輸血歴あり、その後HCV感染が確認された。
2006年から当院で加療開始、、2011年5月から1年間の少量IFN投与により
SVRとなった。2013年7月の腹部超音波検査で低エコー腫瘤を認めた。
CEA、CA19-9が高値であり、転移性腫瘍の可能性も考え、上下部内視鏡検
査、造影CT、造影MRIなど精査を行った。EOB-MRIでは、肝両葉に、径
25mm程度までの結節病変が多発していた。病変はEOB造影後から徐々に
造影され、平衡相まで造影効果が漸増していた。肝細胞造影相では、さら
に明瞭に造影され、多くの結節の中心部に造影不良域を有していた。多発
するFNHがまず考えられたが、高分化のHCCも否定できず、2013年12月に
腫瘍生検を実施した。腫瘍部検体には構造異型や細胞密度の増生はみら
れず、N/ C比の増大も目立たなかった。非腫瘍部では門脈域を中心にイン
ターフェイス肝炎を伴うリンパ球浸潤があり、軽度の細胆管増生を伴って
いた。再生結節の形成を認め肝硬変(A2/ F4)の像で、脂肪肝はみられな
かった。高分化HCCや高度異型結節を疑う所見には乏しく、再生結節ある
いは大再生結節と診断し経過観察の方針とした。気管支喘息のため造影
MRIや造影CTが困難であったため、その後は単純MRIで経過観察していた
が、多発結節は、約2年間変化を認めなかった。しかし、2015年8月13日に
27であったPIVKA2が10月30日には456と急上昇し、また、10月30日の単純
MRIではS4にT1WIで低信号となる径25mmの結節を認め、後向視的にみる
と、その結節は以前のMRIと比較して増大していた。造影エコーでHCCと
診断し、2015年12月にRFAを施行した。本症例は、SVR後に多発する良性
結節が出現し、その経過2年後にHCCが出現したと考えられる。若干の文
献的考察を加えて報告する。
112
化学療法により長期生存中の腹膜播種陽性胆道癌の
2例
日本海員掖済会 横浜掖済会病院
大山倫男,浅野史雄,森岡大介,佐藤芳樹,三浦
堀井伸利
勝,山口和哉,
化学療法により長期生存中の診断時腹膜播種陽性胆道癌の2例
を報告する。1例には原発巣切除を施行した。
【症例1】診断時
64歳男性 横行結腸癌イレウス疑いで当科に紹介され、緊急開
腹で回腸人工肛門造設の際に多発腹膜播種を認めた。術中所見
で横行結腸浸潤を伴うS45原発の肝内胆管癌と考えられ、腹膜
播種巣の病理所見から胆道由来の腺癌と診断し、GS療法を開
始した。経過中、脳梗塞、誤嚥性肺炎などを併発し診断後(以
下Dx後)7か月、GS8コース施行の時点で、本人が化学療法継続
を拒否したため化学療法を中止した。Dx後12か月に横行結腸
閉塞の解除を確認し、本人の希望で人工肛門閉鎖目的に開腹し
たところ、腹膜播種巣は消失しており人工肛門を閉鎖した。そ
の後も本人の希望で化学療法を施行せず経過観察していたが
Dx後28か月に上部胆管狭窄による黄疸を認め、癌の再燃を疑い
化学療法の再開を勧めたが、本人が切除を希望した。PET及び
右門脈塞栓時の開腹所見で腹膜播種を認めなかったためDx後
29か月に切除した。切除標本から肝門浸潤を伴う肝内胆管癌と
診断されたが、腹膜播種以外の非治癒因子は認めなかった。Dx
後47か月、切除後18ヶ月に腹膜播種再発を認めたが化学療法が
奏功し現在診断後69か月生存中。【症例2】診断時71歳男性、上
部胆管癌の診断で紹介された。腹部CTで腹膜播種を強く疑う
所見があり、右門脈塞栓を目的とした開腹の際に、多発腹膜播
種を認め試験開腹とし、腹膜播種巣の病理から胆道癌の腹膜播
種と確認しGS療法を開始した。Dx後12か月、GS13コース施行
後に胆石イレウスで開腹したが腹膜播種は消失していた。以後
GSを継続しDx後49か月にGCに変更したがDx後58か月生存中。
【まとめ】胆道癌に対する化学療法の成績は近年向上している
が、報告した2例は、いずれも腹膜播種巣の病理診断を得たが、
ともに1年後に再開腹の機会があり、肉眼及び細胞診の所見で
は腹膜播種は消失していた。稀な症例と考え報告する。
SVR後,良性結節
― 53 ―
化学療法,長期生存
113
経皮経肝的胆道ドレナージチューブの長期留置が内
瘻化に有効であった術後胆道閉塞の一例
大森赤十字病院 消化器内科
河合恵美,栗原大典,須藤拓馬,芦苅圭一,河野直哉,関志帆子,
高橋昭裕,千葉秀幸,井田智則,諸橋大樹,後藤 亨
症例は89歳女性。約40年前に胆石症に対して胆嚢摘出術が施行
され、翌年に術後胆管狭窄および腹膜炎を発症し、胆管切開術
( 詳細不明) を施行された既往あり。約35年前から当院を通院
し、術後胆管炎を繰り返していたが保存的に治療、軽快してい
た。20XX年6月から術後胆管炎の頻度が増加し、同年7月の造
影CTで両葉の肝内胆管の拡張と左右肝管合流部の閉塞を認め
た。胆管ドレナージ目的にERCPを施行し、左肝管へのガイド
ワイヤー( GW) の挿入は可能であったが、右肝管へのガイディ
ングは胆管の完全閉塞により不可能であった。左肝管に7Frプ
ラスチックステントを留置し、内瘻化したがその後も左胆管閉
塞による胆管炎が再発した。同年8月、CT上、右肝内胆管の拡
張が増悪したため、再度肝右葉の胆道ドレナージ目的に再度
ERCPを行ったが、肝門部の閉塞の通過が困難であった。この
ため、同年9月に経皮経肝的胆管ドレナージ術( PTBD) を施行。
やはり,経皮的に右肝管の閉塞部のGWの通過が困難なため、
ストレートタイプのドレナージチューブ( 12Fr) を,自然開通を
期待して先端が肝門部閉塞部に押しあてるように留置し、外瘻
化にて経過観察とした。同年12月にPTBD造影を施行したとこ
ろ、外瘻化チューブの先端は肝門部閉塞部を自然に通過し、総
胆管内まで進んでいた。後日、内瘻化目的に経乳頭的に胆管ス
テント留置を行い、閉塞部の内瘻化に成功した。肝門部良性胆
管閉塞に対しては磁石圧迫吻合術、外科的手術などが報告され
ているが、確立された治療法はない。経皮的胆管ドレナージを
閉塞部に押しあてるように留置することで、特殊な手技を必要
とせず肝内部胆管閉塞部を内瘻化し得た一例を経験した。文献
的考察を含め報告する。
115
船橋市立医療センター 消化器内科1) ,同 外科2) ,
同 病理部3)
小林照宗1) ,夏目俊之2) ,清水辰一郎3) ,石垣飛鳥1) ,嶋由紀子1) ,
興梠慧輔1) ,東郷聖子1) ,関 厚佳1) ,安藤 健1) ,丸山尚嗣2) ,
水本英明1)
【症例】65歳女性。【現病歴】胃腸炎症状を訴え近医を受診。腹
部超音波検査を施行したところ、膵体部に20数mm大の腫瘤を
指摘され当院へ紹介となった。【経過】血液検査は血算、生化学
および腫瘍マーカーともに正常であった。腹部造影CT検査で
膵 体 部 に 24mm 大 の 多 血 性 腫 瘍 を 認 め た。MRI 検 査 で は
T1-low、T2-high、拡散強調像-high intensityをきたしていた。超
音波内視鏡検査(EUS)では、膵体部にDopplerでbasket状に拍動
する血流信号を伴う24mm大の低エコー腫瘤を認めた。明らか
な被膜や石灰化、嚢胞は見られなかった。いずれの画像でも主
膵管の拡張や途絶は見られなかった。鑑別診断としてP-NET、
膵 動 静 脈 奇 形 を 考 え た。追 加 の 検 査 と し て、血 管 造 影、
EUS-FNA、PET-CT検査を検討したが手術を希望され、脾臓温
存膵体尾部切除を施行した。肉眼的に22×20mm大の腫瘍を認
め、割面は均一で乳白色調を呈していた。病理組織学的には細
かい線維性の隔壁様の構造物が見られ、小型の嚢胞を少数認め
た。ジアスターゼ消化性のPAS陽性物質を含むglycogen-richな
細 胞 が 見 ら れ、免 疫 染 色 で は cytokeratin 陽 性、CD34 陰 性、
synaptophisin 陰性、chromograninA 陰性であった。最終診断は
SCN(solid type or microcytic type)であった。【考察】膵臓の多
血性病変の診断には、P-NETのほか、SCN、膵腺房細胞癌、腎細
胞癌の転移、paraganglioma、膵内副脾、膵臓動静脈奇形、膵血管
腫など多くの疾患を鑑別にあげる必要がある。またSCNの診断
にはEUSによるhoney comb構造の所見が有用とされるが、solid
typeもしくは充実部分が多いmicrocystic typeでは超音波検査に
よるDopplerで豊富な血流を認めることも重要な所見の一つと
考えた。
術後胆道閉塞,経皮経肝的胆道ドレナージ
114
膵神経分泌腫瘍(P-NET)との鑑別に苦慮した漿液
性嚢胞性腫瘍(SCN)の1切除例
腹部超音波検査で穿孔部位及び内容物の流出像がみ
られた胆石胆嚢炎の1例
東京都健康長寿医療センター 消化器内科1) ,同 内視鏡科2) ,
同 外科3)
上垣佐登子1) ,佐々木美奈1) ,藤井悠子1) ,細矢さやか1) ,
剛崎有加1) ,松岡順子1) ,松川美保2) ,中嶋研一朗1) ,潮 靖子1) ,
西村 誠2) ,金 翔哲3) ,吉田孝司3) ,金澤伸郎3)
今回我々は、腹部超音波検査で穿孔部位及び内容物の流出像がみられ
た、胆石胆嚢炎の症例を経験したので報告する。症例は86歳女性。脳
梗塞、甲状腺機能低下症などで近医通院中で、クロピドグレル含めた
処方を受けていた。2015年に腹痛で近医受診、炎症反応と軽度のトラ
ンスアミナーゼ上昇がみられCTを施行。胆嚢は約9cm大に腫大し、内
部に結石と高吸収を示す病変を認めたため、急性胆嚢炎の診断で当院
紹介受診となった。来院時、体温は36. 2℃、右季肋部の圧痛を認めた。
血 液 検 査 で は WBC25070、CRP20. 2、TBil0. 8、AST252、ALT144、
ALP223、BUN51、Cr1. 97と炎症反応と肝酵素の上昇がみられた。腹部
超音波では、胆嚢は腫大し、内部は充実性の高エコーで充満していた。
内容物に明らかな血流はみられなかった。胆嚢体部の壁構造は一部消
失しており、穿孔が疑われた。壁消失部分から、腹腔内へ充実エコー
がつながっており、穿孔部位からの流出と考えられた。CTでは胆嚢は
高度に拡張し、内部には結石とともに、濃縮胆汁や胆泥貯留の混在を
疑う高吸収の貯留構造を認め、一部膿瘍形成が疑われた。胆嚢穿孔を
伴った急性胆のう炎と診断し、胆のう摘出術を施行した。術中所見で
は、内部から流出しているようにみえていた充実性の部分は血腫で
あった。摘出した胆嚢は底部付近に約3cm大の穿孔部位を認めた。病
理では、黒色調となっていた部分では、胆嚢壁内の出血がみとめられ、
一部では全層性の出血を伴って胆嚢壁の壊死像がみられた。胆嚢壁は
浮腫と線維化により肥厚がみられ、好中球及びリンパ球の浸潤を伴っ
ていた。腹膜面には好中球浸潤と線維素の析出を伴合う腹膜炎の所見
を認めていた。今回、超音波検査で、胆嚢壁の穿孔とそこからの流出
像が観察され、迅速な診断治療につなげられた症例を経験したので、
若干の文献的考察を加えて報告する。
胆嚢穿孔,胆嚢炎
― 54 ―
SCN,P-NET