前年度審査概評 - 大分大学経済学部

平成 27 年度学生懸賞論文 審査概評
平成 27 年度学生懸賞論文コンクールには,3 年生の論文 21 編,卒業論文を発展させた 4 年生
の論文 4 編,合計 25 編の応募があった。このうち,個人研究が 5 編,共同研究(3~6 名)が 20
編であった。応募者総数は 96 名にのぼり,応募論文数は昨年度を 9 編上回った。次年度に向け,
教員の皆様には,学生諸君に対して一層の応募の奨励をしていただければ幸いである。
審査は,教育研究支援室室長,教育部会委員 2 名および審査論文の専門分野を考慮して選任さ
れた 3 名の合計 6 名によって,厳正に実施した。その結果,今年度は入選 7 編,選外が 18 編とな
った。入選の内訳は 1 等 1 編,3 等 2 編および佳作 4 編である。
応募論文の傾向は例年と同様である。第 1 に,現地調査やインタビューの成果を取り入れたも
のが多いことである。第 2 に,関係学問分野の研究動向を反映したもので,とりわけ,会計学分
野からの応募が多いことである。次に,1 等と 3 等の論文を紹介しておこう。
1 等は,
「大分県姫島における共同体型漁業資源管理の考察―資源管理は漁業技術とともに進歩
したのか―」
(安藤侑晟著)である。この論文は,大分県姫島を対象地域として,新たな漁業技術
による漁獲圧の増大に対する伝統的な共同体的漁業規制の対応を検証するとともに,現実に即し
た効果的な資源管理型漁業のあり方を検討することを目的としている。漁業管理や「漁業期節」
(姫島独自の漁業操業ルール)に関する先行研究を丁寧に渉猟しただけでなく,
「漁業期節」に関
する歴史的変化を詳細に検討し,さらには漁業者の高齢化や後継者問題にも触れながら結論を導
いている。審査では,完成度が高い力作であるという評価や,漁業分野に近代化がどのように浸
透していくのかについて鮮やかに記述され興味深いという評価など,総じて高い評価を得た。
3 等は,①「
『原価計算基準』の再検討―時間概念を取り入れた原価計算の実務的要請を受けて
―」
(甲斐未乃梨・古賀智里・城可奈子・田下未彩希・豊田美乃里・山口愛梨の 6 名による共著)
,
②「Investor Relations が株主資本コストに与える影響―IR サイトの品質と市場ベータ値の検証
―」
(藤井郁也著)である。
論文①は,これまで改訂がなかった「原価計算基準」について,その改訂が行われるべきであ
るとすれば,どのような要請・要件が必要かを検討したものである。基準改定の条件として「時
間」概念を論理展開の基礎に位置づけ,全部原価計算と直接原価計算の利益額に違いが生じる原
因,さらには時間を取り入れた原価計算手法が提案されている状況に言及し,それらが企業内部
からの基準改定の要請であるとする。審査では,時間概念を基軸とする基準改定への視座を評価
するにせよ,企業外部からの要請については議論が不十分ではないか,あるいは基準の見直しを
検討するのであれば,時間概念を導入すべきという結論を最初から措定するのではなく,基準に
ついて,いかなる点が議論されてきたかをもっと検討すべきであるという指摘があった。
論文②は,Investor Relations(以下,IR とする)が情報の非対称性の緩和に貢献するか否か
について実証的に検証し,IR の意義を検討することにある。審査では,先行研究をよく検討した
うえで実証分析に行っており,着実にまとめられている。データの採取や分析は詳細であるが,
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IR の提供する情報は多様であり,いかなる情報が投資決定に重要なのか,といった点の検討が必
要ではないか,あるいは重回帰分析における自由度調整済み決定係数の値が低すぎるので,回帰
式の改善が必要ではないかという指摘があった。
以上から分かるように,今年度の学生懸賞論文コンクールでは,2 等を該当なしとした。この
理由は,1 等とした論文と 3 等とした論文の間に,完成度の点で明らかに差があったと判断した
からである。次に,今回の応募論文に見られた問題点を述べておこう。
第 1 に,論文タイトルはきわめて重要である。論文タイトルと論文内容が違いすぎると,筆者
の意図するところが分からなくなる。当然,審査でも不利になる。論文内容に即した適切なタイ
トルを付けて欲しい。また,今回のコンクールでは,翻訳を意識したタイトルの付いた論文があ
ったが,翻訳と論文とは異なるので,論文としてふさわしいタイトルや論述方法を心掛ける必要
がある。工夫が必要と考えられる。
第 2 に,応募に当たっては,募集要項ならびに論文執筆上の注意をよく読んで欲しい。これま
でのコンクールでは,本文における引用文献の記載形式や,参考文献リストの記載には問題が散
見されていた。今回のコンクールでは引用文献の記載形式にはさほど問題はなかったように思わ
れる。この点は歓迎すべきことである。ただし,評価のポイントとして,参考文献リストの整理
が行き届いているかどうかを挙げる審査委員もいるので,参考文献リストの整理も厭わずに取り
組んで欲しい。
また,原稿の長さは,募集要項の原稿執筆上の注意点として明記しているように,本文 A4 サイ
ズ 40 字×35 行で 20 枚以内(表紙・目次を含まない)である。この規定を順守しない応募論文が
1 編あった。今回は,規定違反として排除まではしなかったが,評価はそれを踏まえた厳しいも
のにならざるをえない。規定は順守して欲しい。
第 3 に,共同研究で執筆者が分担され,論理の流れがスムーズに行かない場合が生じることが
ある。一般的に,読み易く,論理的に無理のない,説得力のある論文の評価が高くなる。そうい
う意味で,応募者には,
「他人に読ませる」意識をぜひ,もっていただきたい。そのためには,地
道ではあるが,プリントアウトして推敲を重ねるしかない。読み易くすることはもちろん,論文
構成の全体的バランスを再考したり,誤字・脱字を防いだり,図表を整えたり,フォントを揃え
るといったことが可能になる。論文の提出前にぜひ,取り組んでいただきたい。
最後に,経済学部での学業研鑽の目標の一つとして熱心に取組んでくれた学生諸君,ご指導い
ただいた教員の皆様に,心から感謝申し上げる。学生諸君には,この懸賞論文が学習や研究の一
層の発展の機会となれば幸いである。次年度,応募論文数が増えることを期待して筆をおくこと
にしたい。
(文責 審査委員 西村善博)
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