井上勲名誉教授「みどりの学術賞」受賞記念講演会

井上勲名 誉教 授「みど りの 学術賞」 受賞 記念 講演 会
井上勲名誉教授「みどりの学術賞」受賞記念講演会
日
時:
平成28年
5月22日(日)16:30~17:45
場
所:
つくば国際会議場
中ホール300
1.開会挨拶
筑波大学長
永田
恭介
2.来賓挨拶
つくば市副市長
岡田
久司
様
茨城県企画部科学技術振興監兼国際戦略総合特区推進監 渡邉
千明
様
3.井上勲名誉教授記念講演
「藻類は地球環境と生物進化の立役者」
井上勲名誉教授「みどりの学術賞」受賞記念祝賀会
日
時:
平成28年
5月22日(日)18:00~19:30
場
所:
つくば国際会議場
レストラン「エスポワール」
1.開会挨拶
筑波大学
渡邉信
藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター長
2.乾杯
筑波大学
白岩善博
特命教授
3.歓談
4.挨拶
筑波大学
副学長
井上研究室OG
三明
康郎
山口
晴代
5.井上名誉教授挨拶
6.閉会挨拶
筑波大学
生命環境系
系長
松本宏
井上
勲(いのうえ
いさお)プロフィール
筑波大学名誉教授・特命教授
1950 年生まれ。1973 年、東京教育大学理学部生物学科卒業、1979 年、筑波大学
大学院生物科学研究科を修了した後、ナタール大学(現 、クワズールー・ナタル大
学、南アフリカ)研究員、国立公害研究所( 現、国立環境研究所)客員研究員を経
て、1983 年、筑波大学生物科学系 講師、1990 年、同助教授、1996 年同教授。2015
年生命環境系教授を定年退職、同年 4 月名誉教授および特命教授、現在に至る。そ
の 間 、 生 物 科 学 系 長、生 命 環 境 科 学 研 究 科長、 学 長 特 別 補 佐 、 学 長 補 佐 を 務 め る 。
2007 年頃から環境・エネルギー問題に関わり、2007 年から 2015 年までつくば 3E
フォーラム議長、2010 年から藻類産業創成コンソーシアム理事長を務める。
専門は藻類学。微細藻類の分類、進化、系統の研究を通して、地球進化と生物進化
に藻類が果たしてきた役割を理解することに努めている。著書に、藻類の多様性 新
たな生物の世界が見えてきた(単著、微小藻の世界シリーズ、国立科学博物館,2000
年)、藻類 30 億年の自然史—藻類から見る生物進化(単著、東海大学出版 会 2005)、
微生物の世界(分担編集、執筆、丸善 2006)、藻類 30 億年の自然史 第二版 藻
類から見る生物進化・地球・環境(単著、東海大学出版会 2007)など。
日本藻類学会賞 (1995)、日本藻類学会論文賞 (2002)、アメリカ藻類学会 THE
LUIGI PROVASOLI AWARD (2005) 、日本植物学会賞特別賞(教育)(2007)、
国際藻類学会 TYPE CHRISTENSEN PRIZE (2007)、第 25 回南方熊楠賞 (2015)
を受賞。
受賞理由
「葉緑体を獲得した『藻類』の系統分類学と多様性進化解明」
海に囲まれた日本で、藻類は古くから私達
を見いだした。井上氏は、藻類の系統分類学
の生活に深く関わってきた。最近はエネルギ
の発展に寄与したばかりでなく、生物の多様
ーへの利用にも注目が集まる。藻類は、酸素
性を生み出した進化の道筋の解明にも大いに
発生型光合成を行う生物のうち、主に水中生
貢献したと言える。井上氏らが発見した「ハ
活をする生物の総称で、単細胞藻類から多細
テナ Hatena arenicola」は、葉緑体の獲得に
胞性で大型の海藻類まで実に多様な生物群を
よる植物化のプロセスを解明する上で特筆す
含む。井上氏は、藻類の系統解析ならびに多
べきものであり、高校教科書でも紹介されて
様性の解明に大きな成果をあげてきた。
いる。ハテナは二次共生による植物の進化が
約 30 億年前、捕食性の真核生物がシアノ
現在進行形の状態にあると考えられる。
バクテリア(藍藻)を取り込む一次共生によ
井上氏は、藻類を通して生物界を俯瞰的に
って葉緑体をもつ真核藻類(一次植物)が生
とらえ、それを大著「藻類30億年の自然史」
まれた。一次植物の紅色藻類や緑色藻類のあ
に著した。生物間相互作用こそが、生物の多
るものは、さらに別の捕食性真核生物に取り
様性を生み出す原動力であるとする。地球史
込まれて葉緑体に進化した。つまり、葉緑体
を、地球と生物の相互関係、さらに生物間の
は一次共生だけでなく、二次共生によっても
相互関係で理解すべきとする観点は、我々ヒ
作られたのである。井上氏は、一次共生で生
トに大きな示唆を与えてくれる。また、井上
まれた原始的な緑色藻類や、二次共生に由来
氏は、大量の藻類画像データを世界で初めて
する葉緑体を持つ生物(二次植物)であるハ
ウェブで一般公開した。これらの功績で日本
プト藻類や不等毛類等を中心に研究を行って
植物学会特別賞(教育)を受賞した。
きた。ハプト藻類では、ハプトネマと呼ばれ
以上のように、井上氏は、「藻類」が30
る細胞器官の構造と機能の解明を行い、ハプ
億年の歴史を重ね多様に進化してきた道筋を、
ト藻がハプトネマで餌粒子を細胞内に取り込
細胞共生を軸として解明し、系統分類学の発
むことを発見した。また、二次植物の構造解
展と多様性進化の解明に多大な貢献をした。
析と分子系統解析から、複数の新高次分類群
(内閣府「受賞者紹介」を一部改編)
みどりの賞
「 み ど り の 学 術 賞 ( THE MIDORI A CADEM IC PRIZE ) 」 は 、 国 内 に お い て 植 物 、 森 林 、 緑 地 、 造
園 、自 然 保 護 等 に 係 る 研 究 、技 術 の 開 発 そ の 他「 み ど り 」に 関 す る 学 術 上 の 顕 著 な 功 績 の あ っ た 個 人
に 内 閣 総 理 大 臣 が 授 与 し 、 そ の 功 績 を 讃 え る こ と に よ り 、「 み ど り 」 の 大 切 さ に つ い て 広 く 国 民 の 理
解を深めることを目的としています。