会長要望演題4 広範囲胸部大動脈瘤成績向上のための工夫1 PR4

会長要望演題4 広範囲胸部大動脈瘤成績向上のための工夫1
5月25日 12:40〜13:20
第4会場 (ホテル グランパシフィック LE DAIBA B1F シャトレ)
司会
松居 喜郎 (座長) (北海道大学 循環器・呼吸器外科)
湊谷 謙司 (座長) (国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
PR4-1 当院における広範囲胸部大動脈瘤に対する治療方針
演者
高橋 宏明 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
大北 裕 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
池野 友基 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
藤本 将人 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
後竹 康子 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
阿部 陛之 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
松枝 崇 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
山里 隆浩 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
井澤 直人 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
宮原 俊介 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
野村 佳克 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
北村 アキ (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
佐藤 俊輔 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
井上 武 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
松森 正術 (神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
【目的】我々は弓部大動脈瘤を含む下行大動脈瘤(広範囲胸部大動脈瘤)に対して積極的に一期
的置換術を行う方針としてきたが,その治療成績について検討した.【対象および方法】1999
年10月から2015年9月までに当院で施行した弓部大動脈全置換術583例のうち,弓部下行を含む
広範囲胸部大動脈瘤に対する手術症例は58例であった.なお動脈瘤間にほぼ正常径の大動脈を認
める多発動脈瘤症例は除外した.このうち一期的人工血管置換術は44例に施行された.手術適応
は最大短径55mm,Marfan症候群45mm以上で置換範囲は基本的に大動脈径40mm以下の部位と
した.一期的に行うかどうかは年齢,frailty,慢性肺疾患,腎機能,基部置換や腹部大動脈瘤な
ど同時治療が必要な他疾患を考慮し低リスクと判断した場合は一期的再建を行い,リスクが高い
場合は二期的再建を行なった.一期的置換の手術アプローチは左開胸での弓部下行置換を基本と
し(n=25),ST junctionを含む基部病変を認める場合は左前側方開胸+胸骨部分正中切開ALPS
(n=7)やclamshellアプローチ(n=2)を用い,胸腹部大動脈瘤を合併している場合は左開胸に
後腹膜アプローチを追加した(n=7).また下行大動脈瘤が近位下行に限定していた3例には正
中切開でアプローチした.平均年齢は64±14歳,男性33例(75%),破裂6例(13.6%),Mar
fan3例(6.8%)であった.術前診断は解離性瘤34例:急性6例,慢性28例(上行大動脈置換後1
9例),非解離10例であった.大動脈置換範囲は基部~下行6例,上行~下行31例,上行~胸腹
部7例であり,1例で同時にTEVARを行った.【結果】術後30日以内の死亡例は4例(9%)であ
った.死因は破裂例でのLOS,残存大動脈感染瘤の破裂,粥腫塞栓による心筋梗塞(胸腹部合併
症例),敗血症(術中下行大動脈損傷)であった.遠隔生存率は5年79.5%,大動脈イベント回
避率は5年100%で吻合部関連の遠隔期合併症はなかった.【結語】一期的再建の死亡例には置換
範囲やアプローチ方法に問題があり,二期手術を考慮すべき症例もあった.しかし耐術症例の遠
隔成績は良好であり,リスクの低い一期的再建は妥当であると考えられる.
PR4-2 広範囲解離性大動脈瘤に対するReversed elephant
trunkを用いたStaged open repairの経験
演者
伊庭 裕 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
中西 克彦 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
栗本 義彦 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
山田 陽 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
八田 英一郎 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
丸山 隆史 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
西岡 成知 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
氏平 功祐 (手稲渓仁会病院 心臓血管外科)
51才時に急性A型大動脈解離を発症し,Bentall手術(Carboseal 23mm)を施行されていた.そ
の後は,定期的にCTでフォローされていたが,弓部より末梢は徐々に拡大傾向を認めていた.2
014年11月(56才)に背部痛を認め,CT上,下行から腹部大動脈までの再解離を認め,緊急入
院となった.CTでは弓部は55mmで新規の解離はなく,左鎖骨下動脈分岐部直後は48mmであり
,その先の下行近位は70mmと最も拡大しており,一部に三腔解離を認めていた.弓部より末梢
は全体的に拡大しており,広範囲解離性大動脈瘤であったが,これに対して二期的に手術を行う
方針とし,まずは破裂の可能性が高い下行大動脈以遠に対して胸腹部大動脈置換術を行い,二期
的に弓部大動脈置換術を行う予定とした.2014/11/28に胸腹部大動脈人工血管置換術(左鎖骨
下動脈分岐部直後~両側総腸骨動脈)を施行した.術中,中枢吻合は左鎖骨下動脈直下で超低体
温循環停止法(18℃)を用いて行ったが,この際に,次回の弓部置換の際にReversed elephant
trunk(RET)として使用するために,人工血管を約5cm内側に折り返して内翻させて,中枢吻
合を行った.術後は明らかな神経学的症状は認めなかったが,リハビリに時間を要し,術後52日
目に退院した.その後,本人の仕事の都合で二期目の手術予定が延期されていたが,2015/10/2
1に胸骨再正中切開にて全弓部大動脈人工血管置換術を施行した.術中,28℃で循環停止として
,弓部大動脈内から下行内に挿入されているRETを引き出して,弓部4分枝人工血管と吻合し,
中枢側は以前のBentall手術の人工血管と吻合した.術後経過は順調で,術後18日目に自宅退院
した.弓部から下行・胸腹部にかけての広範囲大動脈瘤に対して二期的手術を行う場合で,胸腹
部大動脈置換術を先行させる場合,初回手術の際にRETを留置しておくことは,二期目の弓部置
換術の際の末梢吻合を容易にするために有用と考えられたため,術中ビデオ含めて供覧する.
PR4-3 当科における広範囲胸部大動脈病変に対する術式の工夫―Type 2
hybrid arch repair(上行置換+total debranching TEVAR)―
演者
八丸 剛 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
水野 友裕 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
大井 啓司 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
八島 正文 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
長岡 英気 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
黒木 秀仁 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
田崎 大 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
藤原 立樹 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
竹下 斉史 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
木下 亮二 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
荒井 裕国 (東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科)
【背景・目的】弓部大動脈瘤が下行大動脈まで及び,さらに上行大動脈にも病変を認めるような
広範囲胸部大動脈病変に対し,我々は,Bavariaらの分類のType 2 hybrid arch
repair(上行置換+total debranching TEVAR)を行っている.当科において本術式を施行した
症例について報告する.【対象・方法】基本的手術手順は,(1)1分枝付人工血管とdebranch
用3分枝人工血管でcooling中にconduit作成,(2)上行置換:脳分離体外循環,弓部3分枝断端
を縫合閉鎖,低体温循環停止open distalで末梢側吻合(人工血管の中枢側ランディングゾーン距
離を確保して)次いで中枢側吻合,(3)弓部3分枝を吻合しtotal debranch完成,(4)ヘパリ
ン化を一旦リバースして止血し血行動態が維持できることを確認,(5)一期的にTEVAR施行(
1分枝付人工血管の側枝より順行性にアクセス),である.当科でtotal debranching
TEVARを開始した2012年6月から2015年11月までの胸部大動脈手術155例のうち,Type 2
hybrid arch repairを施行した12例を対象とした.平均年齢は74.6±5.1(65-83)歳,男性9例
,真性9例・解離性5例(重複2例)であった.併施手術を4例で施行した(AVR2例,CABG2例
).Y-graft術後の3例にCSF drainageを施行した.上行大動脈最大径は41.7±4.9(35-48)m
mで,瘤の位置(Zone分類)は中枢Z1.7(Z0-Z3)~末梢T6.2(T4-T9)であった.デバイス
は全例GORE TAGを使用した.【結果】術後挿管時間は15.8±6.9(11-36)時間であった.死
亡例はなく,小脳梗塞1例(後遺症なし)と肺炎1例(治癒)を認めたが,対麻痺は全例認めなか
った.中枢ランディングゾーン距離(人工血管部分)は35.4±9.3(15-45)mm,ステントグラ
フト治療長は22.8±4.5(15-30)cm,ステントグラフト末梢端位置はT8.6±1.3(T6-T10)で
,1例に左鎖骨下動脈のtype2エンドリークに対し塞栓術を追加し,全例エンドリークはなく,d
ebranch
graftも全て開存を確認した.【結語】当科における広範囲胸部大動脈病変に対するType 2
hybrid arch repairの成績は全例エンドリークもなく良好であった.本術式の利点としては,左
開胸を回避することができて,末梢側吻合が容易であるという点で,open stent法と同様であり
,さらに血圧(脈圧)を確保した状態でステントグラフトを留置することにより対麻痺リスクを
低減できる点においても,有用な術式であると考えられる.
PR4-4 当院におけるTARET+TEVARの臨床成績
演者
前田 和樹 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
吉鷹 秀範 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
平岡 有努 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
田村 健太郎 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
都津川 敏範 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
近沢 元太 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
石田 敦久 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
坂口 太一 (心臓病センター榊原病院 心臓血管外科)
【はじめに】近年,胸部ステントグラフト(TEVAR)の普及により,広範囲胸部大動脈瘤や大動
脈解離に対する,治療方針は大きく変わってきている.当院では,弓部大動脈瘤を含む広範囲胸
部大動脈瘤は,上行弓部大動脈置換+エレファントトランク挿入(TARET)を行い,TEVARを追
加するTARET+TEVARを第一選択としている.脊髄虚血回避の観点から,アクセスルートが問題
なければ,TARETとTEVARを2期的に分けている.ただ,TEVARの際の逆行性アプローチが難し
い場合は,TARETと上行アクセスTEVARを一期的に行っている.【対象】2011年3月から2015
年10月までのTEVAR施行した258例のうち,事前または同時にTARETを施行した90例を対象に
し,臨床成績について検討した.【結果】術前患者背景は,原疾患:Stanford
A型大動脈解離22例(24.4%),Stanford B型大動脈解離16例(17.8%),胸部大動脈瘤51例
(56.7%),鎖骨下動脈瘤1例(1.1%)であった.年齢71.6±9.9歳
女性比21/90(23.3%)BSA 1.7±0.19
Adamkiewicz動脈(AKA)同定率61.1%瘤最大短径55.4±10.2mm
血液透析2例(2.2%)術前Cre 1.25±1.34mg/dl 糖尿病17例(18.9%)であった.手術関連デー
タでは,TARETの合併手術は,AVR1期的TARET+TEVAR
20例(22.2%),2期的TARET+TEVAR 70例(77.8%)であった.1期的TARET+TEVARのう
ち3例は,術中に緊急でTEVARを施行した.TEVAR施行時のアクセスは,大腿動脈69例(76.7%
)総腸骨動脈3例(3.3%)腹部大動脈1例(1.1%)上行グラフト17例(18.9%)であった.30
日死亡は,0例で,在院死は1例(1.1%)(肺炎)であった.主な術後合併症は,脳梗塞3例(3.
3%),不全対麻痺5例(5.6%),対麻痺3例(3.3%)であった.術後フォローアップ期間は,1
8.1±14.9ヶ月で,遠隔期死亡8例(8.9%)で,そのうち大動脈関連死が2例(ともに動脈瘤破裂
)であった.1年生存率は92%で4年生存率は85.7%であった.遠隔期に瘤拡大を認め,追加血管
内治療を行ったのが9例(10%)(コイル塞栓4例 TEVAR5例)であった.【考察】TARET+TEV
ARの成績は,当院の2005年から2013年の待機的TAR(n=163)の成績(30日死亡3.1%,在院
死4.9%,脳梗塞0%),待機的Debranching TEVAR(n=26)の成績(30日死亡7.7%,在院死1
9.2%,脳梗塞26.9%)と比較しても良好な成績であり,Debranching TEVARより脳梗塞のリス
クを軽減できる.しかし,エンドリークや大動脈解離のリエントリーからの偽腔への血流などに
よる瘤拡大で,追加処置も必要なる可能性もあり,定期的なフォローは必要である.
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