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全国在宅療養支援診療所連絡会 第4回全国大会 プログラム別詳細
プログラム
ランチョンセミナー A
地域包括ケアシステムの充実と在宅栄養管理
タイトル
~住み慣れた地域でその人らしい暮らしのために~
共催
株式会社大塚製薬工場
日時
平成28年7月3日 12:20-13:20
会場
第1会場(大ホール)
座長
新田國夫
(全国在宅療養支援診療所連絡会 会長
/医療法人社団つくし会 理事長)
田村佳奈美 (かとう内科クリニック 管理栄養士)
演者
西山順博
(西山医院 院長)
かとう内科クリニック 管理栄養士
田村佳奈美
【講演1】
「在宅での飲み込みやすい食事の工夫 ~その実際と問題点~」
在宅療養をおくる高齢者で低栄養など「栄養」の問題を抱えている方も多いものと考
えます。しかし在宅で支援を行う管理栄養士が少ない現状もあり、在宅療養の高齢者の
低栄養の問題はなかなか解決されないままになっています。低栄養は褥瘡などの発症の
原因にもなるほか、肺炎や感染症の悪化の原因にもなります。この「低栄養」の問題を
改善するためには、出来るだけ「口から食べる」支援が必要です。しかし加齢により噛
むことや飲み込む機能が低下してくると、食べたいものをそのまま食べることが難しく
なるほか、誤嚥や場合によっては窒息のリスクも高くなります。今回は在宅でも家族の
食事と一緒に、飲み込みやすい食事を作るための工夫の実際やレシピを紹介お話しする
企画趣旨・概要①
と共に、管理栄養士が在宅支援が行えていない問題点なども考えてみたいと思います。
また、在宅で栄養補給のために活用されている経腸栄養剤の活用の意義や、継続して「美
味しく飲む」ための工夫などもご紹介したいと考えます。
(敬称略)
西山医院
院長
西山順博
【講演2】
「最後の一口を楽しむために
~半固形剤が救世主となる~」
【はじめに】
在宅療養ではキュアよりもケア志向が高まっているが、その患者(利用者)にとって最適なキュアと最適なケアで支えること
が大切であり、必要な栄養療法(キュア)があってこそ、最適なケアが提供できると考える。そして、国際生活機能分類
(International Classification of Functioning, Disability and Health :ICF)に基づいて、在宅療養サポートチーム(Home
care Support Team :hST)がそれを担っていかなくてはならない。
【在宅療養を支援する栄養管理とは】
医療:
「生きていること」
・ 命 への支援・・・キュア>ケア・・・摂食嚥下支援
療養:
「生きていくこと」
・生活への支援・・・ケア>キュア・・・食支援
栄養管理を医療の現場である病院で行うときは、疾病を予防、治療することに重きを置いて多職種が活動している。栄養管理
を療養の現場である在宅で行うときは、生活への支援として介護福祉職を含む多職種が活動しなければならない。栄養管理・
摂食嚥下支援というよりも食支援とする方が、多くの仲間が集う hST になってくれる。
【栄養管理とリハビリテーション(以下リハ)が両輪となり支える】
老化とともに摂食嚥下機能が低下し、QOL も低下していく。終末期に至る前から適切な栄養管理を行うことで平均寿命と健康
寿命が延伸する。これに、理学療法も含めたリハが加わることにより、QOL がより向上し健康寿命の延伸が期待できる。近年、
胃瘻を含めた人工的水分・栄養補給法(Artificial Hydration and Nutrition :AHN)は延命治療と位置付けられてしまい、
AHN が必要な方に対して、栄養療法が介入できないままに、リハのみを行いより一層サルコペニアに悪化させているケースが
企画趣旨・概要②
みられている。本来 AHN の適応のない方はリハの適応もないのではないかと考える。
ただ、AHN を望まれない方、AHN の適応のない方に対しても、在宅療養では hST が支援していくことで、病院では状態が悪か
った方も、在宅に帰ることで状態が落ち着き、自然と経口摂取が開始できることもある。AHN が栄養状態を改善することだけ
(命の支援)を目標とした延命治療ではなく、ある時は、緩和治療として必要栄養と水分を充足しリハのサポートを行い、ADL
を向上させ。ある時は、緩和ケアとして日常生活に制限のある期間(平均寿命-健康寿命)の QOL も向上できるものと考えて
いる。
【我々の地域での試み】
滋賀県大津市を 7 つのブロックにわけ、各々で hST が結成されて稼働している。皆が心をひとつにするための理念「こころの
平安」(ICF を共通言語として支える目標を明らかしケアする理念書)と、連携のツールとして「おうみ在宅療養連携シート」
が、医療職と介護福祉職の鎹(かすがい)となっていくものと確信している。
不顕性誤嚥やそれを疑う症状が出現する早い段階で、機能的口腔ケア、嚥下訓練を導入することができれば、最後まで口から
食事が摂れる機能の維持が期待できる。脳血管障害などの併発により急速に摂食嚥下機能が低下した場合も、栄養状態を適切
な AHN にて補いながら、経口摂取を目標に多職種が協働し在宅療養でのサポートに繋ぐことができることが望ましい。2 時間
以上かけて経口摂取の介助を行っている食事は、本人には強制栄養かもしれない。良質で高カロリーのものを食べやすい形態
で少量摂食してもらえばよい。経管栄養患者においては栄養療法だけで寝かせっぱなしにしておくことは避けなければいけな
い。早い段階から 2 時間近くもかかる液体栄養剤から 15 分程度の半固形剤にスイッチし、「生きていくこと」に必要な時間
をつくることも、緩和治療・緩和ケアとしての栄養管理である。最後の一口を楽しんでいただく目標に向けて、栄養管理とリ
ハが両輪となることが、終末期においても平安な在宅療養を過ごしていただけることに繋がるものと信じている。
(敬称略)