IS 月は出ているか? ID:86360

IS 月は出ているか?
ドロイデン
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
少年は神より新たな命を得た。そして、少年は戦いという日常へと進むのだった。
目 次 第一章 始まり
プロローグ │││││││││
Episode1 神様のバカ野郎
│││││││││││││││
Episode2 月下銃士 │
Episode7 兄妹なんだから E p i s o d e 8 フ リ ー デ ン Episode9 若社長
第二章 フリーデンにて
│
E p i s o d e 1 0 疾 風 の 革 命 Episode3 ウサミミの指名手
66
Episode11 パパ//// !!
E p i s o d e 1 2 女 は 度 胸
!!
82
配犯が⋮⋮⋮⋮ ││││││││
49
55
!!
88
Episode4 あれから │
?
74
5
1
12
19
27
E p i s o d e 5 そ れ で も 俺 は E p i s o d e 6 嘘 ⋮⋮ だ ろ
34
43
│
第一章 始まり
プロローグ
⋮⋮ここはどこだ
気がついて目を明けてみれば、そこは白一色に覆われた場所にいた。
衣を纏った男がいた。
⋮⋮なんで疑問系なんですか
﹁ついでに僕は神様なんだけど、僕の部下の不始末で、君、死んじゃったのね
?
別の世界へ転生させてあげることになったわけ。そこはOK
⋮⋮⋮⋮色々と突っ込みたいですけど、まぁだいたいは。
⋮⋮どれどれ
﹂
﹁なら上場、一応行ける世界はリスト化したから、ここから選んでね﹂
?
?
﹃トータル・イクリプス﹄⋮⋮あのストレスマッハな世界で死んでこいと
﹂
転生する意味
﹁まぁそこは気にしないでね。ともかく、部下の不始末は上司の不始末ってことで、君を
?
﹂
後ろを振り返ると、そこには某アニメのマッドサイエンティストのような無精髭と白
﹁ここはいわゆるこの世とあの世の狭間の、詰まる所死者の待機所みたいな所かな
?
?
1
無いよね
合いだよね
﹃とある魔術の禁書目録﹄⋮⋮これはこれで絶対にレベル5とかに殺されかけるの請け
?
わ、転生とか死んでも勘弁だ。もう死んでるけど
﹃BLEACH﹄⋮⋮転生して死神になるってどういうこっちゃ
味作品の設定通りだけどよ
アホなのか
﹂
ある意
﹂
そんなところに敢えて行
ていうかリリカルはそれなりに人気なんだけどね﹂
﹃魔法少女リリカルなのは﹄⋮⋮SLB怖い、魔王様怖い
﹁君なにげに要求高すぎないかい
⋮⋮アホか、どれもこれも戦闘介入待ったなしじゃねぇか
く俺じゃあないよ
﹁ならジョジ⋮⋮﹂
スタンドなんてやってられるか
!!
言っとくけど戦闘は何処かしろに少なからず入るよ
⋮⋮それだけは絶対に嫌だ
!!
?
⋮⋮⋮⋮なら、せめてISの世界にお願いします。
﹁じゃあ何が良いんだい
?
?
!!
⋮⋮良いですよ、元々ロボット好きでしたからね。ついでに好きな作品の一つでした
?
?
?
﹃ブラック・ブレッド﹄⋮⋮トータルよりはマシだけど、これもこれでストレスマッハだ
?
﹁ISって、それはそれで別の意味でストレスマッハなんじゃないかい
プロローグ
2
し。
⋮⋮あー、転生特典ってやつですか
﹁ふむ⋮⋮ならば特典をあげよう﹂
⋮⋮ん
いまなんでもって言った
﹁うん、言ったぞ﹂
?
ガンダムを専用機にとかいうのは何度も別のであったけど、どれ
?
﹂
?
﹂
?
﹂
?
⋮⋮こんな神様特典な機体を、それとビット兵器どころかビーム兵器さえまだ未発達
﹁どういうことだい
⋮⋮これは個人的なんだが、自分自身の肉体を強化したい。出来るなら頭脳面で
﹁なら三つ目は
⋮⋮変に関わって原作解離とかしたくないし、何よりそれじゃあつまらない。
﹁う∼ん、それまたどうしてかい
で会わせるな。ついでに同じクラスにもするな
⋮⋮ほっとけ、良いんだよ好きな機体なんだから。二つ目に、俺と一夏を原作開始ま
もこれもフリーダムとかユニコーンとかウィングガンダムとかばっかりだったのに﹂
﹁それまたどうして
⋮⋮なら、一つ目に専用機を﹃ガンダムX﹄にしてくれ
?
﹁そうそう。今回は⋮⋮そうだな⋮⋮3つまでなんでもバッチコイだよ﹂
?
3
なのに、そんなものを、それも高火力決戦兵器を搭載してるこいつを、誰が整備できる
⋮⋮なんでもバッチコイなんだろ
くとも機体名は変わっちゃうけど、大丈夫
⋮⋮その程度なら、まぁ、仕方ない、か
﹂
﹂
?
⋮⋮なんかノリが軽いな∼って床が開いてノォォォォォォ
!!
こうして、俺の新たな人生が幕を開けるのだった。
!!
﹁まぁ二言したら、それこそ天界の信用問題だからね。分かったよ。だけど一つ目、少な
?
﹁まぁそれはそれで結構な無茶苦茶言ってるけど⋮⋮﹂
備とかの技術は反復練習で何とかなる。
なったら面倒だからな、最低でもシュナイゼル以上ルルーシュ以下の頭脳は欲しい。整
⋮⋮それに、こんな機体を持っていれば少なからず﹃ウサギ﹄の介入を受ける。そう
﹁な、なるほど⋮⋮﹂
?
﹁了解、なら⋮⋮いってらっしゃーい
プロローグ
4
﹂
Episode1 神様のバカ野郎
﹁えぇと⋮⋮どうしてこうなった
!!
・
・
・
早く起きて∼
﹂
!!
関わったらどっちにしろ原作解離待ったなしやないかい。この神様のバカ野郎
?
ルと通う生活をしていた。
﹂
﹁まったく∼双子だってのにどうしてお兄ちゃんはこうものんびり屋さんなのかな
﹁ほっとけ、それより早くしないと学校に遅れるぞ﹂
﹁それはクロト兄もでしょ。ほら、早く朝ごはん食べよう
﹁二人とも仲が良いわね∼﹂
!!
﹂
というわけで、現在俺はフランスにある、それなりに大きなジュニアスクールにシャ
!!
いや、確かに一夏とは関わりたくないとは言ったが、だからといってシャルロットと
シャルロットと、その母親と三人で生活していた。
﹁⋮⋮おう、シャル﹂
﹁クロト∼
!!
う数年くらいまえ、恐らく機体だと思われる十字のロケットもあった。で、現在、俺は、
俺は現在の環境に憂鬱としていた。いや、まさかの神様転生という事が起きたのがも
?
5
母さん⋮⋮アディール・フェブリエはニコニコと笑ってそう言う。因みに原作で出て
こなかったが、シャルルの旧姓はフェブリエだったらしい。
﹁そりゃ兄妹だもん、仲が良いのは当然だよ﹂
﹂
お母さん聞いてないわよ
﹂
﹁そうだな。⋮⋮⋮⋮でだ、シャル、お前確か昨日、定期テストの結果返ってきた筈だろ
母さんに見せたのか
?
どういうことかな
?
﹁う、それは⋮⋮⋮⋮﹂
﹁シャル
?
﹂
?
見せてないうえにだいぶ危ない点数だったようだな。
お兄ちゃんは常に50位以内じゃん
﹁だいぶ微妙だな∼、ていうか、今回のテストは俺も勉強教えてやったよな
﹁別にいいでしょ
!!
﹁え
ってうわ
?
﹂
﹂
!!
!!
遅刻する
!!
﹁って、シャル時間時間
たら、絶対にシャルル以上に壊滅的になってたかも、だ。
確かに現在50以内には入っているが、もしルルーシュクラスの頭脳を貰ってなかっ
﹁まぁな⋮⋮﹂
!!
﹂
笑顔なのにどこか怖い表情の母さんに、シャルは冷や汗と共に顔を背ける。どうやら
?
?
﹁うう⋮⋮500人中200位だった﹂
Episode1 神様のバカ野郎!!
6
﹁いってらっしゃ∼い
﹂﹂
﹂
!!
じゃね
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮そうなのかシャル
﹁疑問を疑問で返すなよ⋮⋮﹂
﹁う∼ん、そうなんじゃないかな
?
?
﹂
!!
がアレを世界に発表する日だ。
﹃ハロハロ∼私の名前は篠ノ之束だよ∼
﹄
俺はため息を付きながら、スマホでテレビを見始める。今日はあの日⋮⋮⋮⋮ウサギ
?
﹂
﹁そりゃ、クロトが授業中寝てる癖に、まるで分かってるかのように受け答えするから
﹁あのドS教師め⋮⋮なんで俺にばかり答えさせるんだよ﹂
︵ジョジョは関係ないぞ︶がお弁当を食していた。
方へ向かったらしく、回りには同じクラスで妹のシャルルと、俺の友人であるディオ
昼休み、俺は項垂れるように教室の机に突っ伏していた。クラスメートは大方食堂の
﹁つ、疲れた⋮⋮﹂
俺たちは急いで準備を済ませ、田舎道をせっせと走るのだった。
﹁﹁行ってきます
!!
7
と、いきなりテレビ画面がジャックされたように、目の前の問題のウサギが姿を現し
た。
⋮⋮⋮⋮﹄
それが映し出された。
﹃││IS⋮⋮インフィニット・ストラトスの開発目的は、宇宙開発を目的としていて
﹂
と、進んでいくうちに真っ白な機体⋮⋮多分﹃白騎士﹄かな
﹁ねぇクロト、この人なんて言ってるの
?
時の日本語は世界共通語扱いになってないから、わからないのも無理はないか。
シャルが疑問に思ったのか、俺に対してどういうことか聞いてくる。まぁ確かにこの
?
どんな物なのかな∼
﹂
まぁ、この学校唯一の日本語が分かるのはお前だけだしな﹂
﹁でもロボットか∼
!!
ディオが首をかしげながらそういう。
?
墨入れ、艶消し、塗装まで完璧にやったぜ
個人的に、あのウサギと白騎士がどう動くのか、少しだけ気になったのも事実だった。
!!
モデルをネットで買ってたよね﹂
﹁おうよ
!!
﹁そこまで聞いてないよ⋮⋮でも⋮⋮﹂
﹂
﹁ディオってホントにロボット好きだよな。確かこの間も日本のロボットアニメのプラ
!!
﹁そうなのか
﹁うーん、多分新しいロボットが出たとかなんとか言ってるんだと思う﹂
Episode1 神様のバカ野郎!!
8
そしてその日の夜、自室に入った俺は自分のパソコンで監視衛星の事を調べていた。
家でもあのウサギのニュースの話題が出たが、ニュースでは袋叩きな内容ばかりだっ
恐らくそろそろ白騎士事件のためにウサギが
た。そ の う ち、そ れ の せ い で 世 界 が 色 々 と 変 わ る な ん て、絶 対 に 思 わ な い だ ろ う な
⋮⋮⋮⋮
そして今夜⋮⋮⋮⋮日本だと昼間か
ハッキングするのは目に見えてる。
﹁⋮⋮⋮⋮やっぱり、な﹂
寝ていて、恐らく俺が居なくなってもバレないだろう。
そして俺は静かに靴を履き、家の裏にある納屋に向かい⋮⋮
ブレスレットは光輝き、俺は自らのISを身に纏った。
﹁⋮⋮⋮⋮﹃GX﹄起動﹂
﹁さてと⋮⋮﹂
入っていた。って、
﹂
・
俺は始めて扱うそれのマニュアルと拡張領域を調べると、何やら二つのパッケージが
・
俺は静かにパソコンを閉じると、母さんとシャルルの部屋を確認する。二人とも既に
?
﹁こりゃ﹃X魔王﹄のバックパックじゃねぇか、なんであるんだ
?
9
というのも、今搭載してる通常の﹃GXパック﹄、ハモニカ砲とビームマシンガンを中
心とした﹃ディバイダーパック﹄、さらには﹃ガンダムX﹄違いの﹃X魔王パック﹄と、
﹂
どういうわけか三つもパックを内蔵していた。さらに
﹁って、あと手紙
﹃クロトくんへ
これを読んでる頃には、白騎士事件になってるかな
思ってないが⋮⋮
﹄
⋮⋮詰まる所、あの駄神様の仕業だった。まぁ書いてることも然りなので悪いとは
神様より﹄
じゃあそういうことだからね、頑張ってね∼
ね。﹃GXパック﹄はあんまり使えなさそうだしね。
たよ。サテライトシステムは暫く使えないだろうし、何より実践だと昼間が中心だから
あと、これは僕からの贈り物として﹃X魔王﹄のパッケージをインストールしておい
さて、機体についてだけど、名前は﹃ルナーク﹄。意味は承知の通り月を関してるよ
?
何故か入ってあった手紙を取り出してそれを読んでみる。
?
﹃Ps. シャルちゃんと一緒だからって、夜にオイタしたらダメだよ
?
Episode1 神様のバカ野郎!!
10
﹁誰がするか
誰が
﹂
!!
その文を見た瞬間に、俺は手紙をビームサーベルで焼き付くした。
!!
た。
燃えつき、灰になるのを確認し、俺は﹃X魔王パック﹄に換装して夜の空を飛び出し
﹁⋮⋮さて、さっさと行くか﹂
11
Episode2 月下銃士
﹁さて⋮⋮日本に最高速でもかなりの時間がかかるから⋮⋮な
﹂
﹂
それに、いくら原作で白騎士が一人で解決できたといって、目の前で一人だけ孤軍奮
まってる。
あのウサギに存在をアピールしておけば、何かしらのアクションを起こしてくるに決
実際、2千発以上ある核弾頭を全部消し飛ばせるとは思って無いが、それでも世界や
れすれで牽制し、追い返した。
いた。領空侵犯だとか何とか五月蝿かったが、とりあえずビームライフル一発を直撃す
現在、俺はアメリカ方面から射ち上がる核弾頭を相手にチマチマと破壊活動を行って
!!
!!
闘させるには忍びないしな。
どんだけアメリカは核を作ってやがったんだよ
!!
まぁもっともあのウサギはそれさえ耐えてケロリとしてそうだがな。ていうかあれ
﹁あのウサギめ、会う機会があったらゼッテェにサテキャをぶちこんでやる﹂
撃ち落としたはずだが、それでもまだ視界には300近くの核が射ち上がってくる。
悪態を付きながらも、その実ライフルの照準は外さない。誘爆も含めてかなりの数を
﹁くそったれ
Episode2 月下銃士
12
は本当に人間なのだろうか
︶
!!
﹂
!!
﹂
白騎士は一気に加速して此方の間合いを詰めてくる。俺も後退しつつ銃で牽制する。
︵来た
﹁⋮⋮⋮⋮
も冷や汗は止まらない。
白騎士は何も言わず、ただ剣を構えるだけ、俺はライフルを構えてわいるが、それで
︵白騎士⋮⋮⋮⋮後のブリュンヒルデ、か。厄介極まりないな︶
まったく同じだった。
白い剣に鎧、まるで中世の騎士のような姿をしたそれは、正しく、昼間に見たそれと
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
仕方なく止まると、数分経って﹃それ﹄は来た。
追い付く勢いで飛んでくる。まぁだいたい予想はできるけどね。
だいたい数十分過ぎた辺りで、何かしらの物体が高速で、しかも俺の﹃ルナーク﹄に
﹁⋮⋮って、何か飛んできた
んにバレないように戻るには、もう移動を始める他ない。
機体自体にジャミング装置は無いから監視衛星に引っ掛からず、なおかつシャルと母さ
と言ってるうちに全ての核を撃ち落とし、俺はそのまま反転、祖国に戻ろうとする。
?
?
13
︶
が、やはり白騎士のスピードは早く、まるでニュータイプなのかというほどに正確に避
けてくる。
だったら
!!
﹂
俺は拡張領域からパッケージを﹃ディバイダー﹄へと換装し、マシンガンをぶっ放す。
︵ライフルじゃ追い付けない
!!
﹂
!!
﹂
!!
︶
へ入ってくる。そして右手の剣を降り下ろしてくる。
迎撃にバルカンを放つが、それさえも避けながら接近し、なおかつ一瞬にして間合い
﹁⋮⋮⋮⋮
方へ急接近してくる。
ながらも回避する。が、奴はそれを狙ったかのように高速で剣を回収するや否や再び此
と、いきなり白騎士は自身の剣を投げてくる。まさかの行動に驚いて俺は体勢を崩し
﹁⋮⋮⋮⋮
弱いが、それでも数当たればなんとやらだ。
俺はそれに追い討ちを掛けるように、ブレストバルカン含めて攻撃する。一発一発は
と、しかし確実にダメージが入ってるようだった。
白騎士もそれに反応して避けてくる。が、それでもマシンガンの弾速にじわりじわり
﹁⋮⋮
!?
︵させるかっての
!!
Episode2 月下銃士
14
︶
迫り来る剣をディバイダーで受け止め、俺はマシンガンをしまってビームサーベルを
抜く。
︵こいつで
︶
!!
︶
!!
︵なんとか⋮⋮か⋮⋮︶
いった。
白騎士は自身の状態を確認するかのように沈黙し、やがて此方に背を向けて撤退して
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
し、さらに自慢の聖剣も真ん中からへし折れる。
俺は一気に引き金を引いた。19連装のビームの熱線に、白騎士は右肩と右足を直撃
︵くらいやがれってんだよ
うとするが、時既に遅しだ。
俺はディバイダーの中央部の砲口を一瞬で開く。まさかの事に白騎士は驚いて引こ
︵今なら、こいつで
ギリまで持っていく。鍔迫り合いに夢中なのか、白騎士はそれに気付いていない。
シールドとして使っていたディバイダーを、白騎士の体ギリギリ、奴が油断するギリ
れる。が、それこそが狙いだった。
下段切り上げの太刀筋を、白騎士は平然と自身の剣で防ぎ、鍔ぜり合いへと持ち込ま
!
15
不本意だが、またこいつを相手にISで戦う事になるかもしれないと思うと、俺はた
め息と共に頭痛がしてくるような錯覚をおぼえるのだった。
余談だが、この戦闘のせいでフランスに戻るのにだいぶ時間がかかり、帰ってくる頃
side
﹂
には母さんが既に起床していて誤魔化すのに苦労したのは、また別のはなしだ。
・
!!
・
ISは今はアレだけではなかったのか
!?
そんなものが存在するのか
﹂
私もあんな機体が出てくるなんて知らなかったもん
﹁お前の知らないISだと
?
﹂
!!
私にはそういった知識は皆無だったが、目の前の友人は物理学やら機械工学に関して
ないかな﹂
こそ、ISでもレーザー兵装が限界かな∼ってくらいに。私でも今時点じゃ絶対に造れ
﹁それも分からない。そもそもビーム兵装なんて理論上でも製造が難しいんだよ、それ
友人は戯けるようにそういった。が、それでも私は訝しんで聞き返す。
?
!!
なISが出てくるなんて誰が思おうか。
そして核弾頭が発射されたのは数時間前、そんな短時間でアレと、いやアレ以上に強力
私は憤慨しながら目の前の友人に問いかける。アレが発表されたのは昨日の夕方頃、
﹁束どういうことだ
???
﹁ちーちゃん落ち着いて
Episode2 月下銃士
16
﹂
は天才的な才能と知識を持っているの。その彼女ですら無理だというのだ、しかもおふ
ざけ抜きで、だ。詰まる所そういうことなのだろう。
﹁そうか⋮⋮⋮⋮因みに今のところ奴の機体の呼称はなんてなっているのだ
﹁そうだね∼、こっちの機体は白騎士だから⋮⋮⋮⋮﹂
?
17
﹂
?
﹁﹃月下銃士﹄、そんな感じかな
Episode2 月下銃士
18
Episode3 ウサミミの指名手配犯が⋮⋮⋮⋮
﹁はぁ⋮⋮⋮⋮頭痛い﹂
﹂
・
・
・
・
翌日、俺はため息混じりに昼食のお弁当をいつものメンバーで食していた。というの
も
﹁いや∼何度見ても凄いよなこれ
・
・
・
・
・
・
・
・
・
んて、男心擽られるぜ
・
なぁクロト
﹂
!!
﹂
?
一ヶ月ぐらいかな、と思いつつ、俺は弁当のサンドイッチを完食するのだった。
︵はてさて⋮⋮いったい何日ぐらい俺の平和は続くのかね∼︶
シャルが心配そうに聞いてくるが、俺は何でもない、と返す。
﹁クロト兄、なんか表情硬いよ
﹁あ、あぁそうだな︵言えねぇ、まかり間違ってもそれが俺だなんて絶対に言えねぇ︶﹂
!!
﹁この﹃白騎士﹄って奴の剣の動きもだけどさ、特に﹃月下銃士﹄とかいう奴のビームな
士との戦闘のワンシーンというのだから、頭痛も待ったなしだ。
・
ディオが夢中ながらにスマホで動画を見てる。しかもその動画というのが俺と白騎
!!
19
月日は数年ほど流れ、俺とシャルは相も変わらず母さんと三人でゆったりと生活して
いた。
ハイスクールの中等部の生活にも慣れ始め、色んな意味で世界は原作通りに変わって
いった。そして現在、俺とシャルは家の畑で野菜の収穫をしている。
﹁うん、取れた取れた
ないかな
﹂
﹂
﹁⋮⋮シャル、俺はちょっと用事があって少しここを離れるから、野菜を家に運んでくれ
いる。とその時、何やら不思議な気配が背後を襲った。
そういうシャルに、俺はよしよしと頭を撫で、シャルはそれに顔の頬を少し緩ませて
﹁そっか⋮⋮﹂
て嬉しいくらいだもん﹂
﹁ううん、私はクロト兄とお母さんがいれば全然大丈夫だから。むしろ家族の役にたて
﹁お疲れシャル、悪いな、日曜の朝方だってのに﹂
!!
い日常を送っていた。
といってもシャルは女尊男卑の影響を全く受けず、男の俺やディオとも相も変わらな
﹁分かったクロト兄﹂
﹁シャル、そっちのトマトを収穫頼む。こっちのジャガイモはもうすぐ終わるから﹂
Episode3 ウサミミの指名手配犯が…………
20
?
﹁ん、分かったよ﹂
シャルはなんの疑いもせずに野菜を持って家の方へと向かっていく。そして俺は畑
の中からニンジン何本か房抜いてその場を離れる。
﹂
近くの森まで来ると、俺はISのハイパーセンサーだけを起動し、辺り一帯を確認す
キャロットミサイル
る。そして、
﹁必殺
!!
﹂
!!
びにしろよ。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
?
﹂
今目の前にニンジン泥棒してるウサミミの指名手配犯が
﹁ニンジンさ∼ん⋮⋮⋮⋮ってあれ
﹁⋮⋮ え っ と F B I で す か
それだけは勘弁してぇ
⋮⋮⋮⋮︵迫真の嘘︶﹂
﹁あわわ
!!
?
ウサギの悲鳴は森のなかに大層響き、小鳥たちが一斉に飛び立っていった。
!!
﹂
いとも簡単に両手と口でキャッチして見せた。ていうかウサミミならせめてうさぎ跳
なんとウサミミを着けてアリスの格好をした変人が、蛙跳びで四つほどなげたそれを
﹁ニンジンさ∼ん
手元のニンジンを一気に投げ飛ばした。すると、
!!
21
﹂
﹁で、アンタは確か数年前にISを発表した、天災で頭のネジが一本どころか全部抜け
てて、なおかつ指名手配犯の篠ノ之束でいいんだよな
﹁はい、その通りです﹂
る。
?
良いんですか
﹂
﹂
そのウサミミは飾りなんで引っこ抜いて良いで
良いんでしょう
﹁何をふざけた事を言ってるんですか
すよね
?
え、君ってホントにフランス人
?
まぁ実際、俺の予想に反して数年もウサギさんが来るのが遅かったのは正直驚きだ
消えて日本に戻りやがれ﹂
﹁ともかく、俺はアンタみたいな変人と付き合う義理は毛頭ないから、さっさとこっから
驚くところそこかよと思いつつ、俺はため息をついて後ろを振り返った。
?
?
﹁三段活用上手すぎ
!!
?
て﹂
﹁いや∼君の持ってるISについて、ちょっちO☆HA☆NA☆SHIしたいな∼なん
とはなんの関わり合いもないと自覚してますが﹂
自分
まさかの敬語に俺は驚きながらも、目の前でひれ伏してる残念美女にジト目を向け
?
﹁その指名手配犯様が、いったいぜんたい、一健全な男子学生になんのご用ですか
Episode3 ウサミミの指名手配犯が…………
22
﹂
が、干渉してくるのならば逃げるだけのスタイルである。
﹁ちょっと
なにこれ
﹂
!!
﹁あ、クロト兄お帰り
﹂
家に戻ると、既に朝食の準備を終えたシャルが出迎えてくれた。最近は母さんが病気
!!
頭痛の種が増えるのだった。
もっとも、それを破壊しかねないのがあの変態ウサギだということも含めると、俺の
た最高クラスに丈夫な網だからな。あれは︶
︵なんせ、女性の小指すら入らないほどに網目の小さいうえに、芯材にタングステン使っ
こえたが、とりあえず放っておく。
俺はそういって家の方に歩き進める。途中ネットを引っ張ったりするような音が聞
すよ。暫くそこで大人しくしておいてください﹂
﹁ISの開発会社が売ってる、対テロリスト用の強化トリモチ弾と、漁師とかが使う網で
!!
ギは文字通り確保された。
なく押した。すると突然地面と木々の上からトリモチ弾と網が発射され、敢えなくウサ
さて、ウサギさんの人間場馴れした跳躍を確認すると、俺は手元のスイッチを躊躇い
﹁そうは⋮⋮⋮⋮いかないよ
!!
23
で寝込むことが多く、俺とシャルの二人で家事炊事をするのが日課だった。
﹁ワリィなシャル、今日は俺が料理の当番だったのに﹂
素直にシャルに謝るが、彼女は笑ってそれを返す。
﹁気にしなくて大丈夫。用事があったんだから仕方ないよ﹂
には
冗談に聞こえない冗談を笑いつつ、俺はシャルを追って母さんの部屋に入ると、そこ
﹁おう⋮⋮﹂
﹁冗談だよ。さ、お母さんを起こしに行こ﹂
﹁おいおい、家族でそれはキツいって﹂
﹁でも、今度ショッピングに連れてってね。クロト兄の奢りで﹂
Episode3 ウサミミの指名手配犯が…………
24
25
Episode3 ウサミミの指名手配犯が…………
26
ベットで肌が異常に白くなって、息をしなくなっていた母親がそこにいた。
Episode4 あれから
あれから数日が経った。
母さんの葬儀を終えた俺達は、いつも通り家で過ごしていた。だが、そこに日溜まり
のような雰囲気は存在しない。
・
・
・
死 因 は 急 性 心 筋 梗 塞、詰 ま る 所 突 然 死 と い う も の だ っ た そ う だ。母 さ ん が 死 ん で、
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
シャルは崩れるように毎晩泣き通した。俺が作った料理すら喉に通らず、まるで生きる
目的を無くしたあの頃の俺と同じ目をしていた。
家の畑も、花も、まるで主人が居なくなって悲しむように、それぞれが萎れていた。
﹁⋮⋮⋮⋮はい﹂
どうやら俺達自身に用があるみたいなのだろう。
が、俺たち二人は居留守を決め込んで無視をする。が、二度目のインターホンが鳴ると、
と、その時、玄関のインターホンが空気を壊すかのように鳴り響く。宅配とかだろう
もできずに死んでいた。その現実を直視できないほど、俺達はかなりマイッていた。
俺自身、どうシャルに接していいか分からなかった。唯一無二の母親が、目の前で、何
︵くそ⋮⋮⋮⋮なんでだよ︶
27
﹃⋮⋮⋮⋮アディール・フェブリエさんのお宅で、間違いないでしょうか﹄
声の主はそれなりに歳をとったおっさんのそれだった。
﹁⋮⋮⋮⋮母さんは死にましたよ﹂
﹃あぁ⋮⋮その事で話をしたいと思ってね、済まないが中に入れてもらえないかな
﹄
?
仕方ないと思いつつ、俺は玄関に向かって歩いていき、鍵を開けて目の前の人物と対
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
峙する。その人はスーツを着こみ、正しくモダンという姿の男性だった。
﹂
﹂
こっちは葬儀が終わってすぐなもんで色々と大変なんだけど﹂
﹁⋮⋮クロト・フェブリエ君、でいいのかい
﹁そういう貴方は
?
﹁いや、別に構わないさ。ともかくこちらは本題に入りたいのだか
﹁えぇ、かまいませんが﹂
俺は対面になるように座り、彼の目を見詰める。
﹂
椅子に座らせ、俺は冷蔵庫に冷やしておいた紅茶をマグに分け、彼の前に置く。
ういう質だった事を知ってるように思えた。
男性の言葉に渋々ながら中にいれる。男は玄関で靴を脱ぐところを見て、母さんがそ
﹁それは済まないことをした。とりあえず、失礼しても
?
?
?
﹁茶菓はありませんから、これで勘弁してくださいね﹂
Episode4 あれから
28
﹁先ずは自己紹介とさせてもらいます。私の名はカルロス、カルロス・デュノアと言いま
す﹂
﹂
﹁デュノア⋮⋮⋮⋮確かフランスのISの大手製造会社の名前もデュノア社でしたよね
29
無いに等しい。それも世界規模の大企業となればさらにだ。
﹁それで、用件の方は﹂
?
いったいどういう事かサッパリ分からないん
彼は事無げにそういってきた。って、おい、
﹁そうだな、簡潔に言おう⋮⋮私の養子になるつもりはないかい
﹁⋮⋮ちょっと待ってください、養子に
﹂
彼は平然と言ってのけるが、社長と呼ばれる人間にプライベートなんてものは殆どが
﹁まぁ、今日はプライベートだからね。流石にそこまでの事にはならないよ﹂
だ﹂
こんなところに来るなんて、こんなところで闇討ちやらされたら、それこそ大変な迷惑
﹁⋮⋮⋮⋮社長とはいえ無用心だと思いますけど、SPどころか部下の一人も連れずに
と自身の名前が明記されていた。
男はそう名乗ると、懐から名刺を取り出して此方へと渡す。確かにデュノア社の名前
﹁はい、私はそのデュノア社の社長になります﹂
?
?
ですけど
﹂
?
その時、すでに母さんは俺達の事を身ごもっていたようで、彼の重圧は酷いものだっ
な人と結婚して社員たちを路頭に迷わせるか、その二つで大きく揺れ動いていた。
カルロスさんは苦悩した。好きでもない女の人と結婚し彼女を捨ててしまうか、大切
た。そしてその条件として、自分の家の娘を妻にしろと。
その時、後の現社長妻となる人の実家がお金の融資をしてくれるという話が出てき
た。
地の売却など、出来る限りの手は尽くしたが、それでもまだ数千万の負債が残されてい
当然カルロスさんは負債の解消の為に奔走した。事業の大幅な縮小、社員の削減、土
ルロスさんが社長にさせられてしまった。
クからか先代は首を吊って自殺、株式制の会社じゃなかった為に、訳も分からぬままカ
だった先代が事業に失敗し、多額の負債を抱え込むことになってしまった。そのショッ
程の仲だったそうだ。が、運命とはそう易々と上手くいかず、当時のデュノア社の社長
彼曰く、母さんとカルロスさんは昔に1度付き合っていて、二人とも将来を近いあう
彼は一口紅茶に口をつけると、彼は少しずつ話始めた。
れてくる5年以上も前の話だ﹂
﹁ふむ、なら最初から話すべきかな。まず彼女、アディと私は昔恋仲だった。君達が産ま
Episode4 あれから
30
た。
だが母さんは、彼に﹃自分の事よりも社員の人達の方が大切だ﹄と言い、彼に会社を
救うべきだといった。
﹂
その結果、カルロスさんは現社長妻となる人と結婚し、会社は小規模ながらもとても
結束のあるものとなったそうだ。
﹁でも、それなら俺達を養子にするメリットなんて無いんじゃ
業を勝手に始めていたんだ﹂
﹁妻が⋮⋮⋮⋮会社で秘書官をしてるのだが、彼女は自分こそが社長だというように、事
ての始まりだったそうだ。
それに伴い、会社は急成長を果たし、世界規模の大企業へと変貌した。が、それが全
ル﹄を専用機にしたいとかなりのオーダーが入るようになったのだ。
その使いやすさ、安定性、さらに拡張領域の多さが幸いし、世界各国から、
﹃ラファー
ル﹄が爆発的にヒットしたのだ。
つでしかなかったデュノア社だが、発表されて2年後、自社が開発したIS﹃ラファー
というのも、ISが発表されて以来会社は変わったからだ。それまでは弱小企業の一
俺の疑問に、彼は苦笑を交えてそう呟く。
﹁そうかもしれないね。けど、私はもう社長という立場を捨てたいと思ってるんだ﹂
?
31
﹁女尊男卑の風潮⋮⋮ですか
まった﹂
﹂
?
分達にできるのは殆ど何もなかった。
彼はそれが許せなかった。だが、彼女の一派にほぼ会社を乗っ取られている現状、自
達ばかりを⋮⋮﹂
を悉くクビにしていった。誰も彼も、昔から会社のために必死に頑張ってきてくれた人
﹁そうだ、彼女は遂に人事部にまで手を伸ばし、少しでも自分の派閥に逆らった男性社員
﹁けど、それだけじゃなかった、ですか
﹂
き、今ではIS部門でさえ彼女の息がかかった女たちがトップに来るようになってし
﹁そうだ、最初は小規模な部品製造の事業だった。だが、彼女の勢いに会社は呑まれてい
?
﹁だから、僕達と共に会社を捨てて、新しい生活を始めたい、と
彼はそういうと、名刺に何かを書き込み始める。
れて構わない。何せ僕は、君達を捨てた最低の大人だからね﹂
﹂
﹁そうだ。もちろん君達の意見を尊重したいし、何より嫌ならば嫌とはっきり言ってく
?
券はできないさ。けど、もう私は疲れてしまったよ﹂
﹁まぁ株の六割は私が保持してるからね。彼女達と言えど、私の許可なく株式の増加発
﹁⋮⋮⋮⋮それでよく社長を続けていられますね﹂
Episode4 あれから
32
が、彼の悲しげな心を表してるようだった。
そういって彼は、ゆっくりと立ち上がってドアを出ていく。今に降りだしそうな雨
絡を寄越してくれ﹂
﹁僕のプライベート用のメールアドレスだ。二週間以内に君達が決めたなら、それに連
33
Episode5 それでも俺は
デュノア社長が来てから二、三日経って、俺とシャルは久し振りに学校へ来ていた。
が、俺もシャルも授業はどうしても上の空になってしまう。
﹁⋮⋮であるからして││﹂
││養子にならないか。
その言葉に俺はどう返事していいのかサッパリ分からなかった。
実際シャルの事も考えればあの人の話を聞くのが一番なのだろう。だが、だからと
いってそんな大切な決断を簡単に決めていいのか、そう思うと何も言えなかった。
?
﹁⋮⋮⋮⋮シャルは、どうするのがいいと思う
﹂
俺達はそれだけの言葉で教室を後にするのだった。
﹁⋮⋮うん、そうだね﹂
﹁⋮⋮帰るか、シャル﹂
と、いつのまにか授業が終わってしまったようで、回りは少しざわざわしてる。
﹁││じゃあ今日の授業はここまでだから、あまり教室に居残るなよ﹂
Episode5 それでも俺は
34
﹂
帰り道、重苦しい雰囲気に耐えられなくなって俺はそんなことを口にした。
﹁どうするって、養子のこと
﹁あぁ⋮⋮﹂
﹂
?
﹂
!!
が降りてきてこちらを囲んできた。
突如として目の前に黒い高級車らしきものが止まったかと思うと、中から大勢の女達
俺達は近くのアイスショップに向けて進路を返る。だが、それは起きた。
﹁うん
﹁じゃ、早速行くか﹂
と思った。
俺がそういうと恥ずかしいのか、かなり赤くなって俯いている。そんな姿も愛らしい
﹁⋮⋮都合の良いところは現金なんだからな、シャルは﹂
﹁え、ホント
﹁⋮⋮⋮⋮シャル、アイスでも食べに行くか﹂
か無理をしてるのは見え見えだった。
俺はそういいながらシャルの表情を伺い見る。顔こそ笑ってはいたが、それでも何処
﹁そうは言うけどな⋮⋮、実際養子になるって簡単なことじゃないんだぜ﹂
﹁⋮⋮私は、クロト兄がいれば⋮⋮どっちでもいいよ﹂
?
35
﹁な、なんだよ
お前らは
﹂
!!
﹂
てめぇら、いったいなんのつもりだ
﹁煩い坊やだこと、やっちまいな
﹂
!!
て、一気に襲い掛かってくる。こんな場所では自慢のIS持つ返るわけがなく、ごく普
女のリーダーらしき奴がそういうと、それぞれが金属バットやら鈍器やらを取り出し
!!
﹁シャルにだと
﹁ふん、アンタみたいな坊やには用はないのよ、私達はそこの女の子に用があるの﹂
!!
!!
﹂
﹂
通の一般人の俺は後頭部に喰らってしまい昏倒する。
﹁ガハッ
!!
﹁クロト兄
!!
﹁⋮⋮⋮⋮ん、⋮⋮⋮⋮くん、クロト君
!!
﹁目が覚めたようだな、クロトくん﹂
﹁俺は⋮⋮⋮⋮いったい⋮⋮⋮⋮﹂
気がついて目を開いた俺の前には、どういうわけかカルロスさんとウサギがいた。
﹁んぐ⋮⋮﹂
﹂
俺は妹の名前を呼ぶが、朦朧とした意識がプツリと途切れた。
﹁シャ⋮⋮ル⋮⋮⋮⋮﹂
Episode5 それでも俺は
36
﹁ここは⋮⋮確か俺は⋮⋮シャルと﹂
﹁⋮⋮⋮⋮シャル⋮⋮シャルが
ッ
﹂
シャルロットに何があったんだい
﹂
?
!!
﹂
!!
﹂
!!
﹂
?
﹁な
それって犯罪行為じゃ
!!
﹂
的に操作しようとしてるんだ﹂
動かすことができるんだけど、あの女、束さんのISのシステムを使って人の脳を人工
﹁精神制御、いわゆる人体実験だよ。ISは脳の神経操作によってまるで手足のように
﹁イケないこと
カルロスさんの言葉に、ウサギは自分のパソコンからそんなことを口にした。
﹁しかも、今調べてみたらその女、かなりイケないことに手を出してたみたいだよ﹂
だ
﹁そうだ。恐らくシャルロットの存在を知って、自分の思い通りになる駒にするつもり
﹁あの女⋮⋮もしかして現妻の﹂
﹁そんな⋮⋮⋮⋮く、まさかあの女が既に手を回していたとは
ウサギから状況を聞いた俺は、シャルが何者かに連れ去られたことを二人に話す。
﹁シャルロット
?
!!
やらから出てきて追ってみれば、くーくん、道の真ん中でボロボロに倒れてたんだから﹂
﹁今はこのカルくんの付き人が運転する車の中だよ、漸く私があのネットやらトリモチ
37
!!
﹁普通ならね、けど、あの女は女性権利団体のトップクラスの重鎮でもある、奴等は世界
政府にまで侵食してるから、こういうことも揉み消したりなんか普通にあるのさ﹂
﹂
﹂
ウ サ ギ は イ ラ イ ラ し な が ら そ う い う。い つ も の ウ サ ミ ミ は 怒 り の 模 様 で か な り ピ
シッと立ってる。
﹁それで、今は何時ですか
四時間以上も気を失ってたのか、俺は
﹁今はフランス時間で午後七時だよ﹂
﹁な
!!
!!
ISなんて乗れないし、相手は少なからずISを持ってる。そ
?
れにもしかしたら、君は﹂
﹁君は男の子なんだよ
!!
なんていうのはやってお釣りが出る程の時間だ。
﹂
アイツらが何処に行ったのかさえ分かれば
﹁分かったら、君はどうするの
!!
ウサギは真剣な顔で聞いてくる。
?
﹂
まさかの事態に、俺は愕然とした。四時間なんて研究所に持っていって精神操作する
!!
﹁くそ
Episode5 それでも俺は
38
39
﹂
?
﹁その妹と戦うことになるかもしれないんだよ
Episode5 それでも俺は
40
﹁
﹂
その言葉に、俺は何も言い返せなかった。
!?
ようにやる、それだけなんだよ﹂
ウサギの容赦のない言葉が、俺の心に突き刺さる。
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮それでも﹂
﹁
クロトくん
﹂
俺は無理矢理走行中の車の扉を開けると、転がるように飛び降りた。
﹁それでも、俺はシャルの兄貴なんだ。兄貴が妹を助けないで、どうするってんだよ
﹁な
!!
!!
?
﹃月下銃士﹄
!!
!!
放した。
﹁な
﹂
カルロスさんが驚いてこちらを見るが関係ない、俺は自らの機体を、
﹃ルナーク﹄を解
!!
﹂
﹁そもそも私は今や国際指名手配犯だからね。自分のやりたいように動くし、やりたい
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
し、助ける義理もない﹂
﹁私はあの﹃月下銃士﹄の姿を見ることができればそれでいい。私にとっては他人事だ
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
41
・
・
うこりごりだった。
・
・
既に﹃魔王パック﹄へと換装した俺は、駆け抜けるように空へ上がる。失うのは、も
﹃すみません、お父さん、俺はシャルを連れ戻してきます﹄
Episode5 それでも俺は
42
Episode6 嘘⋮⋮だろ
﹁⋮⋮⋮⋮ここか﹂
︵一発サテキャを射つか
いや、あれは威力が高すぎるし何よりシャルを巻き込みかね
も警備はかなりザルだった。
レーザー圏外から見たところ、どうやらかなりの大きな建物のようだったが、それで
確認する。
俺は監視衛星をハッキングし、奴等の居場所を突き止めると、上空から奴等の基地を
?
!!
して、
﹁突貫じゃあぁぁぁ
﹂
換装して﹃ディバイダーパック﹄になると、シールドをバックパックに取りつけ、そ
﹁仕方ない、か﹂
物ねだりは出来る分けない。
のパッケージがあれば、
﹃ディバイダー﹄込みで少なからず余裕があっただろうが、無い
そう考えると、
﹃Xパック﹄も﹃魔王パック﹄も使用は不可能、もし﹃0024タイプ﹄
ない。それにまだあれと交信してないからそもそも使えない︶
?
43
一 気 に 急 降 下 を 敢 行 す る。当 然 な が ら 警 報 が な る わ け だ が、そ ん な も ん 関 係 な い。
ビームマシンガンをぶっ放し、周辺の車やら壁などを一気に破壊する。
﹄
﹄
着陸すると、どうやら相手方のIS⋮⋮デュノア社製第二世代型量産機、﹃ラファー
ル・リヴァイブ﹄が数機、姿を現した。
﹃貴様、ここがどこだか分かってるのか
﹃我々、女性権利団体の活動拠点を良くも
!!
のか、何もせずにそれを受ける。が、ビームの刃にそんなちゃちなシステムが効くわけ
そして一気に逆袈裟に切り上げると、パイロットは絶対防御があると高を括っていた
よって思うように動けず、こちらの間合いへと詰める。
当然ながら相手はそれを避けようとするが、右手に持ったビームマシンガンの牽制に
俺は左手にビームサーベルを抜き、一気にスラスターを吹かせて斬りかかる。
﹁⋮⋮⋮⋮死ね﹂
相手はアサルトライフルやらキャノン砲を構えているが、俺にはどうでもよかった。
!!
﹄
﹄
もなく、肉体ごと切り裂かれ、女は何が起こったか分からないまま機体と共に爆破され
リザァァァ
!!
た。
﹃リザ
!!
﹃そんな、いくらレーザー兵器とはいえ、絶対防御が聞いてないなんて
!!
Episode6 嘘……だろ?
44
﹁⋮⋮⋮⋮ビーム兵器を舐めすぎだ、テメェらは﹂
俺は聞こえないようにそう呟いた。
元々、武器としてのレーザーとビームは同じ光熱線を圧縮して使われるのだが、その
二つは威力に大きな違いがある。
レーザーは交信用などに応用が効くほど、熱源としてはそこまで高くなく、高くても
鉄を焼ききる位だ。
だがビームは、熱源としてはかなりの温度を持ち、
﹃08小隊﹄で凍った湖を一瞬にし
て温泉ほどの温度へ変え、MSの装甲さえも焼ききるどころか溶かしてしまう。それほ
どに違う兵器なのだ。
そうこうしてるうちに、残った機体も順々にスクラップにしていき、女どもは一人を
除いて、何も言わない肉塊へと変貌した。
﹂
ボイスチェンジャーを使い、ビームサーベルで脅しながらそう聞く。女は冬場の寒さ
﹁⋮⋮⋮⋮貴様らが奪った女の子はどこだ﹂
お、恐らくあの方と一緒にいる筈よ
と、死への緊張感からがくがくと震えていた。
﹂
﹁お、奥の、だ、第三セクター
﹁⋮⋮嘘じゃないな
!!
俺が脅しを込めて確認すると、女は頭をかなりの早さで上下する。どうやら嘘は付い
?
!!
45
てないようだ。
﹁⋮⋮⋮⋮死にたくないなら、さっさとここから離れることだな﹂
﹂
達が、光の無い目で何処かを見つめていた。
そこはまさしく、人体実験の結果というべき存在がうようよと、檻にたくさんの少女
着する。
たが、どれもこれも武器とスラスターを壊して戦闘不能にし、目的の場所の入口へと到
を見届けると、格納庫らしきところから機体と共に侵入する。途中何度かISが出てき
俺がサーベルを退けると、女はISスーツのまま、町の方へと走っていく。俺はそれ
﹁ひ、ヒィィィ
!!
?
﹁⋮⋮⋮⋮嘘⋮⋮だろ
﹂
の姿が暴かれる。そこにあったのは⋮⋮
俺は彼女達に祈りを捧げ、大きな扉へと近づく。途端、扉は唸りをあげて開かれ、中
﹁⋮⋮⋮⋮シャル﹂
アスクールに通う前の子供の姿さえあった。
少女達はどれもこれも、まだ自分と変わらない年齢の少女ばかりで、なかにはジュニ
︵これが人のやることか⋮⋮⋮⋮︶
Episode6 嘘……だろ?
46
47
白いフォルムに特徴的な鋏のような両腕、特徴的な胸部装甲と、冑のようなその頭部、
それはまさしく前世で、それも何度も見たことのある機体のそれと、全く酷似していた。
そして、その頭部ユニットから流れるブロンドの髪は、見間違えるなんてあり得ない
ほどに、その現実を物語っていた。
﹂
?
﹁シャル⋮⋮⋮⋮なのか
Episode6 嘘……だろ?
48
﹂
Episode7 兄妹なんだから
﹁シャル⋮⋮⋮⋮なのか
︵⋮⋮こいつの情報を知ってる奴がいるのか
俺以外の﹃転生者﹄が
︶
?
と、呆然と考えていた俺に、シャルの操るベルフェゴールが一気に接近してくる。
?
ネットで調べてみたが、それらしき情報は一切なかった。
しかしこの世界に﹃ガンダム﹄という概念は存在しない。前に﹃ガンダム﹄について
され、後の﹃ガンダムヴァサーゴ﹄、﹃ガンダムアシュタロン﹄の礎となったもの。
作品内でニュータイプを異端視する勢力が、毒には毒を以て制するという意味で建造
ようなコンセプトだが、それこそがこの機体の特徴だ。
その能力は簡潔に言えば﹃ニュータイプを殺すためのニュータイプ専用機﹄、矛盾する
れるゲームシリーズから初登場し、外伝にて猛威を振るったMSだ。
ガンダムベルフェゴール⋮⋮⋮⋮﹃ガンダムX﹄の作品において、
﹃Gジェネ﹄と呼ば
番だったからだ。
きの声をあげた。それはシャルの姿もあったと思うけど、それ以上にその機体の姿が一
目の前の白亜の機体⋮⋮⋮⋮﹃ガンダムベルフェゴール﹄を纏った妹を見て、俺は驚
?
49
﹁く
﹂
シャル
目を覚ませ
!!
!!
が絶対的に不利だ。
﹁くそ
﹂
実の妹を相手に銃口を向けるわけにもいかず、かといって下手に受け身に回れば此方
るに相応しいものだった。
の元になった機体なだけに、かなりのパワーで降られるそれは、正しく悪魔の名を関す
慌ててビームサーベルを抜き、迫りくるストライククローを弾き返す。アシュタロン
!!
かった。
俺が叫ぶ言葉に、シャルは一切反応しようとせず、その目は虚ろに何も見つめていな
!!
目を覚ませって
俺はお前と戦いたくなんか
﹂
!!
だった。
﹁シャル
!!
洗脳⋮⋮⋮⋮確かベルフェゴールを操るためには⋮⋮⋮⋮︶
?
と、一瞬見せた隙をシャルは見逃すことなく、今まで閉じていたクローを開いて、此
︵待てよ
再び声を掛けるが、やはり一向になんの反応もない。まるで洗脳されたかのよう││
!!
主体の機体に、強襲型のルナークでは相性が悪く、鍔迫り合いどころか弾くのが精一杯
そして両手を構えると、再びクローを、今度は連続でぶつけてくる。パワーと殲滅を
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
Episode7 兄妹なんだから
50
方の腕を掴みこんだ。
﹂
だけだった。
気づけシャル
!!
シャル
シャル
俺だ
!!
クロトだ
!!
﹂
!!
ていた。
﹁くそ
!!
﹂
?
︵くそ、このままじゃシャルを⋮⋮⋮⋮大事な妹を⋮⋮︶
ターが解除されてる事を示すに十分だった。
小さい声だが、ハッキリと聞こえたそれは、どう捉えてもベルフェゴールのリミッ
﹁敵ノ殲滅ヲ最優先トスル。敵ノ殲滅ヲ最優先トスル。敵ノ殲滅ヲ⋮⋮⋮⋮﹂
﹁は
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮スル﹂
しい。慌てて叫ぶが、シャルの表情は一考に変わることがない。それどころか
こんな砲撃を喰らってしまえば、いくらISといえど絶対防御なんて合ってないに等
!!
部のリアクターを展開すらしてきて、ソニック・スマッシュ砲の銃口が目の前に肉薄し
目の前に近づいて大声をあげるも、シャルは一考に反応を示さない。それどころか胸
﹁シャル
﹂
慌てて外そうともがくが、そのパワーに外れるわけもなく、ギリギリと嫌な音がなる
﹁しまっ
!!
!!
51
︶
その時だった。シャルの冑に妙なものが付いてるのに気づいたのは。
︵これは⋮⋮何かの⋮⋮傷
﹁⋮⋮⋮⋮
﹂
に発射した。
俺はブレストバルカンとショルダーバルカンを一斉に吹かし、銃口と冑に向けて一斉
は。
その瞬間だった。俺は漸くベルフェゴールの唯一無二とも言える弱点に気づいたの
?
﹂
冑が突然割れて、それは崩れるように地面に落ちた。
パキン
退していく。そして
まさかの毎に驚いたのか、シャルのベルフェゴールの腕が自然と剥がれ、少しずつ後
!!
!!
?
ベルフェゴールはニュータイプ専用機、だが、開発した勢力はニュータイプを異端視
俺は痛む体を支えながら、そう呟いた。
﹁やっぱり⋮⋮⋮⋮その冑が弱点だった、か﹂
シャルに戻る。
途端、シャルの虚ろだった目が光を取り戻し、まるで憑き物が落ちたようにいつもの
﹁││敵ノ殲滅ヲ⋮⋮⋮⋮あれ
Episode7 兄妹なんだから
52
し、尚且つ危険視もしていた。
それ故に、ベルフェゴールはニュータイプを乗せなくてもニュータイプと同じような
働きを出来るシステム、所謂﹃Nシステム﹄を開発したのだ。
その名を関する通り、それは人間を洗脳し、擬似的なニュータイプとしての能力を使
えるようにした代物だが、それ故に不完全な代物で、作中では使用者の細胞が死滅して
いくとい障害を起こしてしまったほど、強力且つ、ベルフェゴールを最凶最悪と言わし
めるに相応しいそれになったのだ。
そして今回、Nシステムの媒介となった冑も例外ではあらず、破壊されれば洗脳も解
﹂
けてニュータイプとしての力を使えなくなるというわけだった。
﹁大丈夫
クロト兄
﹂
﹂
わ、私の心配より自分の事を大事にしてよ
﹁あ、あぁ、何とかな。シャルこそ、平気か
﹁もう
﹂
!!
!!
今にも泣きそうな顔のシャルを見て、俺は左手だけを部分解除し、彼女の頭をそっと
﹁ごめん⋮⋮私⋮⋮お兄ちゃんを⋮⋮⋮⋮﹂
シャルは憤慨したようにクローを肩に乗せ、腕の状態で抱き締める。
!!
?
!!
ISの状態のまま、シャルは慌てて此方の方に寄ってくる。
﹁私は⋮⋮ク、クロト兄
!!
53
撫でる。
﹂
﹁バァカ。妹が兄貴に迷惑かけるのは当然なんだよ、ヘッポコシャル﹂
﹁ヘ、ヘッポコ
る。
・
・
・
・
・
・
シャルが何かを言いたげだったが、それを胸に抱き締めることで言わせないようにす
﹁ひ、酷いよ、クロトn﹂
とで大変なことに繋がるんだよ﹂
﹁お前はいつも気負いすぎなんだよ。そんな調子だから、今回みたいにちょっとしたこ
!?
!!
響く声で鳴き始めるのだった。
︵シャルにこんなことをしたやつらを⋮⋮俺は絶対に許さない⋮⋮
俺は密かにそう誓い、今は彼女の事を大事に思うのだった。
︶
その言葉を聞いた途端、シャルは思いっきり俺の胸に顔を埋め、この空間いっぱいに
﹁も少し、俺のことも頼れよ。俺たちは大事な兄妹なんだからさ。シャルロット﹂
Episode7 兄妹なんだから
54
Episode8 フリーデン
﹁さて⋮⋮と、﹂
とりあえず泣き止んだシャルをだっこした俺は、一先ずここを出ることを優先するこ
とにした。
﹂
﹂
因みにどういうわけか、あのあとベルフェゴールは待機状態になってしまい、現在
シャルの髪に白い飾りとしてくっ付いてる。
﹁とりあえず、ここからどうやって出ようか
﹁
﹂
ててくれ﹂
﹁︵エネルギーはギリギリ⋮⋮か︶⋮⋮仕方ない、シャル、少し俺にピッタリとくっ付い
は可能な限り避けたい。
餌食となった少女達が入ってる檻の目の前を通らなければならないのだ。そんな状況
というのも、通ってきた道には屑鉄と肉塊となったISと、恐らくベルフェゴールの
シャルは不思議そうに言うが、俺個人としては勘弁してほしかった。
﹁え、来た道を真っ直ぐ戻れば良いんじゃないの
?
?
55
?
シャルは不思議そうな顔で言われた通りにすると、俺は背中のディバイダーを右手に
持つ。
﹂
!!
俺は砲口を展開すると、それをカッター状に形成して天井へ発射する。当然天井には
﹁照射じゃ崩れると大変だから⋮⋮な
もう一丁
﹂
一直線に貫通し、大きな傷が入る。
﹁そりゃ
!!
﹁これで、お終いっと
落ちてきた。
﹂
最後にもう一本発射すると、それはまさしく四角形を象り、天井板が支えを無くして
!!
の傷を入れる。
確認すると同時に、俺は少しだけ移動して、さっきつけた傷に垂直になるように二本
!!
!!
た。
﹃クーく∼ん
﹄
軽口を叩きつつ、シャルをお姫様だっこして開けた穴から脱出する。と、その時だっ
たし﹂
﹁といってもエネルギーが限界なんだけどな、何せさっきの戦闘でSEごと持ってかれ
﹁⋮⋮⋮⋮凄い﹂
Episode8 フリーデン
56
﹂
今、一番聞きたくない声を聞いた気がした。
﹁⋮⋮ねぇクロト兄
り少ない為、仕方なくウサギの方へ進み、着陸すると共に機体を解除した。
﹁いや∼やっぱりクーくんがあの﹃月下銃士﹄のパイロットだったんだね∼
!!
を観察してくる。ていうか無駄に存在感ある爆弾の谷間が見えそうなんだが⋮⋮⋮⋮。
途端にウサギがブーブー言いながら覗き込むように近づいてきて、ふむふむとこっち
﹁もう、隠すのも面倒なんで、但し機体スペックは見せませんよ﹂
﹂
シャルは何処か諦めたように言うが、それは全くもって同感だった。エネルギーも残
﹁⋮⋮もう私は驚かないよ﹂
﹁⋮⋮篠ノ之束、ISの産みの親で、天災で変態な残念美女だ﹂
﹁お兄ちゃん⋮⋮あれって﹂
態の姿も確認できる。
かって走ってきていた。ついでにボンネットには、見たことのあるウサミミを付けた変
そこにはつい数時間前に俺が乗っていた、カルロスさんの付き人の車が、此方に向
シャルの鋭い指摘にため息一つ付くと、声のした方向を振り向く。
﹁それって認めてるような物だよ﹂
﹁聞いたら敗けだ、あれは幻聴だ﹂
?
57
しかしそれにムッとしたのか、シャルの表情が何処か怖い。
﹁クロト兄、明日のご飯抜きね﹂
﹁シャルさん、一応俺命の恩人なんだけど﹂
﹂
﹁ドスケベなお兄ちゃんに食べさせるご飯はありません﹂
断固、抗議する
!!
を見守る親のそれの表情だった。
?
い。
ないけど⋮⋮から良いものの、何も手を打たなければおんなじ事が繰り返されかねな
俺はため息と共に父さんにその事を聞いた。今回は事なきを得た⋮⋮のかは分から
﹁⋮⋮たく、それでこれからどうするんだ
﹂
そんなコントにカルロスさんはにこりと笑って見ている。どこをどう見ても我が子
﹁横暴だ
!!
﹁そりゃ、確かにあそこには⋮⋮⋮⋮まぁ、居たけどさ、それでどう繋げるつもり
﹁ま、そこは色々と⋮⋮ね
﹂
逃げられてる可能性が高い。
﹂
IS部隊の奴等は脅した奴を除いて全て肉塊になってるし、研究員達には恐らく既に
?
験者もいる、使えるカードはこれで充分だ﹂
﹁まずはあの女を捕まえる事にするかな。ここにはどうやら、人体実験のデータやら被
Episode8 フリーデン
58
?
明らかに黒い笑いで父さんはそう言った。うん、聞かない方がいいかもしれないね。
とはいえ、愛し合ったものは似るものなのだろうか
この天才束さんがハッキングして映像が外部に漏れな
﹂
!! !!
するな、目のやり場に困る。
?
﹁どっちにしろ、今のままじゃ第二、第三のシャルが出てきかねないからな⋮⋮可能なら
自然に心を読んでくる妹に驚きながらも、ポーカーフェイスで突っ込む。
﹁断じて俺は疚しい気持ちはないぞ、シャル﹂
﹁お兄ちゃん、一週間にしようか
﹂
妙にご都合主義な塊のウサギはそう宣う。ていうか一々跳び跳ねたりしてアピール
いようにセーフティしたからね
﹁その点ならモーマンタイだよ
﹁ま、とりあえず俺が﹃ルナーク﹄のパイロットだって事はバレてそうだからな⋮⋮﹂
?
無責任なと思うも、母さんもそういえばそういった感じだった。結婚はしてなかった
やってさえいれば後は何も言わないよ﹂
﹁い や、僕 は 保 護 者 に は な る け ど 基 本 的 に は 放 任 主 義 だ か ら ね。ち ゃ ん と や る こ と を
﹁おいおい、一応父さんが家長なんだから、父さんが決めてくれよ﹂
はクロトくんに任せるよ﹂
﹁まぁ、その後は⋮⋮何処か田舎で人知れずゆっくりとクラスのもアリだが、まぁその点
59
何処かに所属してるって事にするのが一番なんだけど﹂
﹁僕 の デ ュ ノ ア 社 な ら 可 能 だ ろ う け ど、結 局 は あ の 本 妻 を 何 と か し な い こ と に は
⋮⋮⋮⋮﹂
﹁あと、出来るだけバレないようにとなると⋮⋮﹂
﹂
ふむ⋮⋮⋮⋮俺とシャル、父さんはう∼んと唸りこむ。実際こんな条件を簡単に受け
この束さんの頭にアイデアがナウプリーディング
﹂
!!
入れられるほどの起業など聞いたことがない。
﹁はいはーい
というのも⋮⋮⋮⋮﹂
!!
?
!!
﹁⋮⋮ダメもとで聞くけど、ちゃんとしたアイデアなんだよな
﹁もちろん
Episode8 フリーデン
60
数週間後、俺達三人はまさかウサギの作戦がうまく行くとは思わず、少し唖然として
いた。
して社長である父さんと束さんが秘密裏に︵正確にはデュノア社の男性重役社員と古く
簡単に言うと、まずはウサギが独自のIS開発企業﹃ラビット社﹄なるものを設立、そ
な手段だった。
ウサギの作戦、それは簡単に言えば、企業合併というなんともシンプルかつビックリ
﹁﹁アハハ⋮⋮﹂﹂
てるというかなんというか⋮⋮﹂
﹁しかし、流石は篠ノ之束というべきか⋮⋮突拍子のないように見えて、その実本質を見
61
から支えてる人間にだけ、重要極秘案件として伝えていたそうだが︶それを纏める。
そして纏めた次の日には社長が社員一同を集めてそれを発表し、さらにその際の人事
で現妻及びその傘下の派閥女性陣を一気にリストラしたのだ。
当然ながら妻及び傘下の女性陣は一斉蜂起、抗議活動をしようとしたが、数少ない束
さんに対して好意的なFBIの一人が研究所に関して捕縛、逮捕され、彼女達は現在取
り調べの真っ最中、恐らく釈放される事は無いだろうという見解だそうだ。
﹂
これに伴い父さんは現妻を元妻とし、はれて俺達二人を養子として迎え入れたのだっ
た。
﹁しかし、後は彼らがだが⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
社長椅子に座りながら、父さんはため息混じりに空を見る。
﹁そうだよ。お父さんのこと、ちゃんと分かってくれると思うよ
?
ドアが開き、入ってきたのは十数人ばかりの大人達だった。それぞれが中々に引き締
﹁⋮⋮⋮⋮失礼します﹂
﹁どうぞ﹂
とその時だった。ノック音が三回鳴り、父さんは慌ててネクタイを締め直す。
﹁⋮⋮だといいがな⋮⋮﹂
?
﹁大丈夫だって父さん、ちゃんと話はしたんでしょ
Episode8 フリーデン
62
まった顔で、まるで歴戦の猛者という風格がある。
それは、まさしく彼らの血と、努力と、そして社長達に対する思いを形にした、次期
る父さんに渡す。
そういってジルダさんたちは、自分達の鞄から一枚の紙を取りだし、それを社長であ
え私達はここに戻ってきました﹂
﹁ですが、貴方の息子さんや娘さん達の言葉を、貴方の本心を知ったからこそ、私は、い
れないのも無理はないだろう﹂
﹁そう⋮⋮だろうな。人事をあの女達に任せた、私にも落ち度はあったからな。信じら
たの言葉でも断るつもりだった﹂
﹁我々は⋮⋮最初は乗り気でなかった。あの女達に再び会うことなんて、例え社長、あな
派に追い出された優秀な技術者達だ。
他の人たちも、父さんを最初期から支え、デュノア社を盛り上げ、そして元妻達の一
から追い出された一人でもあった。
術者として、父さんを支えてきた一人だった。そして、元妻に一番最初に邪魔だと会社
ジルダさん⋮⋮父さんがまだ社長に就任して間もない頃から、事務として、また一技
﹁⋮⋮⋮⋮ええ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮来てくれたか、ジルダさん、皆﹂
63
第三世代型ISの設計図だった。
﹁我々は、貴方のもとをついていきます。今度は、定年過ぎても、この会社に残るつもり
ですよ﹂
﹁そうか⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
そういうと、父さんは椅子から立ち上がり、彼らの前に出た。
﹁これからは忙しくなるぞ
﹁覚悟のうえです。社長﹂
Episode8 フリーデン
64
?
65
デュノア社という会社は終わった。しかし、ただでは終わらなかった。
新たな結束、クロトやシャル、さらにはIS生産部門顧問となった束の参戦により、フ
ランスのIS技術は飛躍的に上昇した。
﹃フリーデン﹄そう新しく名付けられたその会社から発表された機体は、後に世界大
会、モンドグロッソの優勝をすることになるのは、いまはまだ、遠い話。
第二章 フリーデンにて
Episode9 若社長
は、ジルダさん含め多数の技術者と協議することとなった。
日曜日、一応フリーデンの専属パイロット︵秘密裏だが︶兼技術部の一人となった俺
﹁さて、これから作る第三世代型ISの検討会に入りたいと思います﹂
!!
どういうことですか
﹂
﹁まずテーマですが、重要なのは大きく分けると二つです﹂
﹁二つ
?
りと少なからず動揺しているようだ。
ジルダさんが疑問に思って聞いてくる。回りも同様に首を傾げたり、他の人と喋った
?
そうなると、第三世代量産機が主流になったときに、第二世代のうちの機体は真っ先
サギがいるが、彼女はおそらく追加でコアは造らないだろう。
これは言わずもがな、ISのコア数には限度がある。うちにはコアの開発者であるウ
であること﹂
扱いやすく、尚且つうちのトップ商品﹃ラファール・リヴァイブ﹄のような動きが可能
﹁まず一つ目、試作機を作るにして、いずれはそれを量産化するわけなので、可能な限り
Episode9 若社長!!
66
に売れなくなる。つまりは会社がトブ可能性だってあるのだ。
﹂
そうならないためにも、
﹃ラファール・リヴァイブ﹄を乗ってる人間に、それと同じ感
覚で動かせ、尚且つ他の第三世代型に負けないスペックが必要になる。
﹁二つ目、これは第三世代型の特徴になるともいえる特殊武装だ﹂
﹁特殊武装⋮⋮⋮⋮最近で聞くところの、イギリスの﹃BT兵器﹄のようなものですか
﹁そうです。それを量産でも使える、低コストで効果的なものが必要になります﹂
﹂
!?
らこれしか思い付かないし。
思いっきり﹃ストライク﹄ですね、うん。ていうか、ラファール系に近いっていった
プトにしました﹂
の場その場で換装し、近接、中距離、遠距離での戦闘を瞬時に入れ換えることをコンセ
﹁機体名は⋮⋮あー、便宜上﹃アタッカー﹄とさせてもらいます。様々なパッケージをそ
俺はホロディスプレイで企画書をそれぞれの目の前にオープンする。
﹁なんだよ、その四代目って。まぁともかくこれだ﹂
﹁よ、四代目が自らですか
﹁とりあえず、今回は例として自分が考えたものをあげたいと思います﹂
を簡単に考えられたら苦労なんてしない。
その言葉に、開発陣は一斉に黙ってしまう。そりゃそうだ。そんな画期的なシステム
?
67
﹁なるほど⋮⋮ですがパッケージが無いと随分とシンプルですな﹂
﹁ええ、ですが今現在考えてるのは、武装をシンプルにして高機動戦を中心としたもの、
大型の剣を一本とブーメランなどを搭載したもの、高火力レーザー砲とミサイルなどを
装備するもの、その三つを構想しているつもりです。﹂
俺の言葉に社員達はそれぞれがなるほど、と称賛の言葉をあげている。が、
﹂
﹁パッケージについては構わないでしょうが、そのパッケージだけでは使うに不十分な
のでは
すぎる。
?
と思いますし﹂
優秀な技術者が沢山居るんですし、技術力こそが、自分達の、フリーデン社の持ち味だ
﹁そこは追々、新しいパッケージを皆で考えれば良いんでは無いでしょうか
ここには
当然ジルダさんが疑問点をあげてくる。父さんも言ってたけど、この人、すごい有能
?
そう締め括ったところで、会議はお開きとなった。そのあと暫く賛辞の雨霰を頂い
皆さんなら、もっと良い機体を考えてくれると、私は考えてます﹂
﹁勿論、この機体は私が、まだ学生の私が考えたものです。私より長く技術を磨いてきた
熟考したのち、彼はとりあえず認めてくれた。
﹁なるほど⋮⋮⋮⋮そういうことなら、私からは何もありませんね﹂
Episode9 若社長!!
68
て、俺は少し形見が狭い思いをしたのだった。
午後になって、俺はウサギに呼び出されて研究室まで足を運んでいた。
普段なら死んでも近付かないだろうが、今回ばかりは仕方ないと割りきってドアの前
に立つ。
ちょっとま﹂
!?
﹂
!?
何がとかは突っ込むべからず、下手な興味は身を滅ぼすからね。これ絶対。
﹁︵⋮⋮⋮⋮白かったな⋮⋮︶﹂
立たせるのだった。
当然の叫び声と共に、彼女の投げたスパナの直撃を受け、俺は暫く意識を宙へと飛び
﹁キャァァァァァァ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮︵汗﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
以外は生まれたままの美少女がそこに⋮⋮⋮⋮って、
開けた途端、中からシャルの声が聞こえたと思って入ってみると、そこには下の下着
﹁え、クロト兄
﹁ウサギ、入るぞ﹂
69
﹁もう
なんでお兄ちゃんがこんなところにくるのさ
﹂
!!
ここフランスだよね
なんで正座
﹁だからってあのタイミングで来る
﹂
ていうか、ちゃんとノックぐらいしてよ
﹁いや、ウサギの研究室だからノックなんて要らないと思いまして﹂
!!
﹁仕方ないだろ。今日はウサギに呼ばれてたんだからさ﹂
?
﹂
﹁それで、問題のウサギは何処だ
?
﹁⋮⋮おいウサギ、真面目にやるつもりないなら俺とシャルは帰らせて貰うが
完璧確信犯だよ
﹂
!!
ちゃうんだよね∼﹂
﹁今弄るって言いかけたよ
!!
﹂
﹂
﹁に ゃ は は ∼ い や ∼ シ ャ ル る ん の 顔 が 面 白 い か ら ね ∼ つ い つ い 弄 り ⋮⋮ 遊 び た く な っ
?
うん、シャルさん目が怖いよ、顔が黒いよ︵意味深︶
突然魔王の声が聞こえたかと思うと、背中にどういうわけか不思議な感触が現れる。
!!
﹂
シャルが某正義の味方みたいな事を言ってるが、気にしたら負けだ。
﹁なんでさ
!?
!!
?
十分位経って漸く目を覚ました俺は、目の前の修羅に正座させられていた。ていうか
!!
﹁こっこだよ∼
Episode9 若社長!!
70
シャルが憤慨したままに行ってくる。うん、ここは賢者になって何も言わぬが吉、か。
﹁まぁとりあえず離れるとして∼、お久だね∼クーくん﹂
﹁俺は出来ることなら関わりたくないんだけどな﹂
﹂
恨みがましくそういうと、ウサギはまたまた∼とかなんとか言ってハイテンション
だ。
﹁ハァ⋮⋮⋮⋮で、頼んでたシャルの検査結果はどうだったんですか
俺がそういうと、ウサギは珍しく真剣な顔になる。
?
用はなかった。細胞、遺伝子にもね﹂
Nシステムの影響が何もなかったのか
?
は﹂
﹁脳波
﹂
あまりに不思議な言葉に、俺は思わずそう聞き返す。
マイナスの感情になると一定の感脳波を発してる﹂
﹁うん、普通に調べたら何の異常も無いんだけどね、なんていうか⋮⋮嫉妬
﹂
?
?
?
﹁感脳波って、一卵性双生児が互いに考えてることが分かるみたいなもんか
そういった
﹁うん、束さんが自ら調べてみたけど、そういう反応はなかったよ。⋮⋮⋮⋮脳波以外
﹁本当か
﹂
﹁うん、結果から言うと、あの﹃ベルフェゴール﹄とかいう機体からのシャルるんの副作
?
71
﹁簡単な例だとそれだね。けど、シャルるんの場合はその範囲が大きいんだ﹂
ウサギの言葉に、俺はもしかしたらと思う。
る。良い意味でも悪い意味でもね﹂
﹁シャルるんの感脳波は、さっきクーくんがあげたそれの数倍、いや数十倍の影響力があ
﹁⋮⋮具体的には﹂
﹁そうだね⋮⋮死んだ人間の心をダイレクトに受け取ってしまう程に強力だね﹂
その事を聞いた俺は真っ先に頭を抱えた。まさしくそれは﹃ティファ・アディール﹄並
﹂
のニュータイプ能力だ。それを持ってるということはつまり、
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
?
﹂
?
俺達二人の言葉に、シャルは驚いて口をパクパクしてる。
よ﹂
﹁クーくんの言う通り、知られれば今度は色々な人間が狙ってきてもおかしくないんだ
﹁え
﹁⋮⋮最悪、この前みたいな誘拐が起こりかねないってことだよ﹂
シャルは分からないように聞いてくる。
﹁えっと、二人とも、いったいどういうこと
Episode9 若社長!!
72
﹁まぁ、俺がいるうちはそんなことさせないけどな。とりあえずは安心しとけ﹂
シャルにそうは言ったものの、俺は見えない敵を思って緊張するのだった。
﹁うん⋮⋮⋮⋮﹂
73
このまま専用機を作っちゃおうか
Episode10 疾風の革命
﹁さてシャルるん
﹂
!!
どんな性癖してるの
﹂
クーくん流石にISの腕はダメだって
頭を握りこむ。
﹁イタタタ
﹁まさかのご褒美
どんな
﹂
もっとやって
﹂
!!
私イッちゃうって﹂
ちゃんと理由あるよ
シャル、それがこの変態MSだから仕方ない︵諦め
﹁へぇ∼
また強くなってるよ
!!
﹁え、やだ﹂
﹁話すから、離してくださいお願いします
﹂
﹁別に良いよ、逝きながら話してください﹂
俺はそう聞くが腕は離さない。離すなんて言ってないから当然だ。
﹁イダダダ
!!
?
!!
﹂
!!
!?
!!
雰囲気をぶち壊すようなウサギの言葉に、俺は部分展開した右腕のアイアンクローで
﹁おいウサギ、何言ってるこの野郎﹂
!!
!?
!!
!!
?
﹁そ、それに何の考えなしに言った訳じゃないよ
Episode10 疾風の革命
74
﹁まさかの即答
クロト兄ストップストップ
﹂
!!
﹁う∼、クーくん酷いよ
束さんの素敵な頭が真っ二つになっちゃうよ
﹁おお∼、クーくんって頭良い
﹂
!!
﹂
?
させてしまった。それは結局のところ封印されたが、それも結局は脳内の電気信号によ
スヘルメット型の機械を通して、ある一人の科学者が、人の完全洗脳という技術を確立
前世で知ってる作品の中に﹃SAO﹄と呼ばれるものがあった。その作品ではフェイ
が出来る。
詰め、研究すれば、最悪の場合だと、人間の脳を操作して自分の思い通りにさせること
確かにシャルの感脳波を狙う可能性が少なくないというのは正論だ。感脳波を突き
の強力な感脳波を狙う組織が、いつどこで出てくるか分かったものじゃないからね﹂
﹁理由ね。まず一つに、シャルるんの自己防衛のため。これは言わずもがな、シャルるん
﹁それで、どんな理由なんだ
とかないと、シャルが黒シャルになっちゃうからな。
シャルは何処か遠いところを眺めていた。うん、とりあえずボケるのはここまでにし
﹁⋮⋮⋮⋮この展開に着いていけない私はおかしいのかな⋮⋮﹂
!!
﹂
シャルに止められ、仕方なく俺は腕を離す。ホントに仕方なくだけど。
!?
﹁良かったですね。そうなったら物事を二つ同時に考えられますよ﹂
!!
75
るシナプスを媒介に技術を展開していった。
電気信号と脳波は少なからず密接な関係がある。つまり今言った技術は、応用さえし
てしまえば脳波でも可能な技術であると言える。
﹁二つ目、これは会社的な問題なんだけど、そろそろ第三世代型試作機をEU内でコンペ
しなきゃならないから﹂
﹁なるほど、ISは核となるコアが有限、だからこそコンペをしてそれぞれの国が⋮⋮で
もって会社が委員会から補助金をもらわなきゃならない、と﹂
﹂
ウサギにしては至極まっとうすぎる理由に、少しだけがっかりしながらも俺はとりあ
﹁そういうこと。詰まるところ二つの理由があるって訳なのね﹂
えず部分展開した腕をもとに戻す。
?
る。
﹁とりあえず、この機体じゃダメなんですか
﹁あー、クーくんが言ってたシャルるんを操ってた機体だっけ
?
流石にコンセプトがガラリと変わりすぎてるし、それに﹂
それでも良いんだけど、
?
﹂
突然話を振られたせいで、シャルはどう答えて良いか分からないという表情を浮かべ
﹁えっと⋮⋮﹂
﹁そんなわけで、シャルるんの機体を造るんだけど、何か要望はある
Episode10 疾風の革命
76
ウサギはチラリとこちらを見る。どうにかしただろうか
?
﹂
?
﹂
?
﹂
?
体にも影響してたんだと思う﹂
﹁それは確かにあの子が嬉しかったんだとおもうし、それに多分、あれはNシステムが機
て、俺を殺す気満載だった。
俺はシャルにそう問いかける。あの時、ベルフェゴールは完全にリミッターを解除し
﹁なら、俺と戦ったときのあれは
子は独りになるのが寂しくて、自分自身を抑えてると思う﹂
﹁だってそうでしょ。機体がそう思ってるなら、リミッターなんて掛けないもん。この
﹁シャル⋮⋮⋮⋮﹂
くとも私はそう思う﹂
に恐怖したんだと思う。けど、この機体自体にはそういう気持ちは無いと思うし、少な
﹁うん。この機体、色んな子と触れあってきたみたいだけど、みんな狂暴すぎるこの機体
俺は不思議そうに聞き返す。
﹁可哀想って⋮⋮その機体がか
﹁でも⋮⋮⋮⋮なんか使ってあげないと可哀想だし﹂
のを調整せずに使ったら、最悪一生ベットの住人になっちゃうよ
﹁クーくんの機体ですら圧倒する機体なうえに、解析して出たスペック見たけど、あんな
77
﹁システムが機体に影響してた
﹂
シャルは撫でるように機体へ触れる。
が続けば悲しくもなるよ﹂
﹁自分を扱える人間が居なくて、それでいて乗っても体や精神を壊しちゃう。そんなの
﹁悲しみ⋮⋮⋮⋮﹂
が流れてくるみたいだった﹂
﹁それにこの子、凄い寂しがり屋なんだよ。数週間一緒に居たけど、時々この子の悲しみ
じゃない。
ウサギが唸るようにそういう。実際造ったのは彼女なんだから、こういうのも不思議
ど﹂
﹁う∼ん、コアにも人格みたいな個性が存在するからね、それは無きにしもあらずだけ
?
﹁⋮⋮⋮⋮分かったよ﹂
だろう。けど、
俺は何も言えずに口を閉ざす。前までの俺なら原作乖離を恐れて止めろと反対した
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
ね﹂
﹁だから、出来るならこの子を使ってあげたい。この子が寂しい思いをしないためにも、
Episode10 疾風の革命
78
﹁
クロト兄
﹂
!!
いが、そんなの知ったことじゃない。
彼女の、大の妹の願いを断れる筈がなかった。それが、実の兄の弱点なのかもしれな
!!
﹁うん
大丈夫だよ
﹂
!!
﹂
!!
﹂
?
﹂
!!
﹁デュノア社がフリーデンとなって、機体が新しい風を運ぶ。だから﹂
俺は半分呆れながらそういうが、内心この人のネーミングに期待して聞いてみる。
﹁おいおい﹂
﹁それならこの束さんの頭に既にあるよ∼
﹁なら名前だな⋮⋮一応試作機の名前も付けなきゃいけないし⋮⋮⋮⋮﹂
﹁うん。この子が一緒なら、私は大丈夫だよ
んで、尚且つこの機体のコアと武装を可能な限り使う。それで良いか
﹁それとシャル、今回はコンペもある。だから、機体は第三世代試作機のデータを組み込
!!
題でシャルの体を壊しかねない﹂
﹁ただし、機体自体に大幅な改修をする。流石に今のまま使わせるのは、機体性能的な問
79
80
Episode10 疾風の革命
﹁﹃疾風の革命﹄﹃ラファール・イノベイク﹄なんてどうかな
81
﹂
?
ジだというのだから質が悪い。ていうか、
﹃GX﹄の戦艦の会社名なのに機体らパッケー
しかめそれが、どれもこれも﹃SEED DESTINY﹄のザフト関連のパッケー
とか、個人的にはどこからそんなのを思い付いたというようなものばかりだ。
はたまた収束ビーム砲と対艦刀をそれぞれ二つ装備した大型のウィングスラスターだ
ターを組み合わせたパッケージだとか、収束レーザー砲を二門肩に付けたものだとか、
というのも、それぞれが考えてきたのというのが、背部にミサイルポットとスラス
括ってた俺には、予想の斜め上を行くこととなった。
そして俺があげたパッケージ換装、まぁそこまで新しいのは考え付かないとたかを
とわかるからだろう。
風の再来﹄という意味だった事から、そのシリーズの発展機というのが一目瞭然となる
に開発陣営からも高評価だった。というのも第二世代﹃ラファール・リヴァイブ﹄が﹃疾
まず試作機の方だが、ウサギが命名した﹃ラファール・イノベイク﹄の名は予想以上
てはや数十日、事態はかなり進むことになった。
はてさて、シャルのIS兼フリーデンの第三世代試作機の作成プロジェクトが始動し
Episode11 パパ////
Episode11 パパ////
82
83
ジが﹃SEED﹄関連ってどういうこっちゃ それに俺が例に上げたの﹃ストライク﹄だ
ぞ、ストライクがザフトのシルエット着けてるってシュールすぎだろ
でいた。ていうかこの世界にガンダムって無いはずだよね
たくなったのは心のうちに秘めておく。
そうだよね
と突っ込み
?
込んでいる。そんな機体を堂々と人前で出すわけにもいかず、かといってシャルを守る
の白騎士事件が、俺の介入でこう呼ばれるようになったらしい︶﹄映像にはっきりと映り
ちなみになぜ俺の分もかというと、俺の機体﹃ルナーク﹄は﹃二人の騎士事件︵原作
ながらほぼ徹夜で敢行してる。
シャルの機体はコンペでの模擬戦用に造るという事なので、現在ウサギが設計図を見
で了承をとった。ついでに俺の分も。
そしてシャルの機体だが、これはウサギによる先行試作を独自カスタマイズする形式
多分ウサギの頑張りでもっと早く完成するだろうけど。
そんなこんなで試作機の開発は開始され、コンペのある四月前には完成する予定だ。
?
また、他にも珍しいのでは﹃Vガンダム﹄と﹃V2﹄のパッケージを考えてくる奴ま
れ燃費悪いし。
後の﹃デスティニーシルエットモドキ﹄だけは先送りになることが決定した。だってあ
とりあえず最初の二つは量産するに吝かじゃない性能だから何も言わなかったが、最
!?
!?
ため、仕方なくこうするに落ち着いた訳だ。
そもそも今の第二世代も第三世代も装甲は絶対防御に頼りきって薄いからね。俺の
機体みたいに全身装甲タイプの︵見た目だけだか︶第一世代型はお呼びじゃない。かの
ブリュンヒルデが乗ってくるなら話は別だが。
そんなわけで、あと約一年と数ヵ月で原作が開始されるので、俺は不自然が無いよう
にということだ。
﹂
そして現在、俺とシャルは機体操作の練習を兼ねて、第二世代﹃ラファール・リヴァ
逃げてばかりだと蜂の巣になるぞ
﹂
ベースにしている。簡単に言えば、相手をマシンガンなど連射系の武器で牽制し、その
対して此方の戦術は、サブマシンガンによる牽制を主体とした、所謂追い込み漁を
れがあと数ヵ月ちゃんと訓練すれば、少なくとも一線級のパイロットになるだろう。
いうべきか、まだ実際に動かして数日だというのに、かなり手こずることになった。こ
シャルの原作での戦術、
﹃ラピット・スイッチ﹄による﹃砂漠の逃げ水﹄は、やはりと
みながらそういう。
俺は右手のサブマシンガンを射ちながら、シャルは両手のアサルトライフルを撃ち込
!!
イブ﹄で、互いに模擬戦をしていた。
!!
﹁クロト兄こそ、射ちすぎると後々苦しくなるよ
!!
﹁ほらほらシャル
Episode11 パパ////
84
実相手をフィールドの隅へと追い込む。そしてそこから肉弾戦や近接戦に持ち込むス
タイルだ。ボクシングで相手に攻撃されてるのに、むしろ自分が追い詰めてるというの
に近いことから、
﹃威圧する暴風﹄⋮⋮﹃プレッシング・トルネイク﹄とウサギに命名さ
れた。
俺もシャルも、相手を追い込むことに特化した戦術を使うものの、シャルの戦術が撹
乱を主体とした技巧派の技なら、俺のは相手をとことん追い込み、圧迫し、何もできな
いようにする圧倒型のもの。どちらが上手と言われれば判断は難しいが、少なくとも有
利となるのは俺の方だろう。
といってるうちにシャルの機体のSEが0になり、プシューと音を立てながらシャル
﹂
いやー、黒星無いとは味気ないもんだな∼﹂
のリヴァイブが固まってしまう。
﹁う∼、また負けた
﹁これで俺の18連勝∼
︵このままいけば、もしシャルの専用機が出来たらと考えると⋮⋮︶
た。
俺はにべもなくいうが、内心、いつ負けるか分かったものじゃないとハラハラしてい
﹁経験だ、経験﹂
﹁こっちの弾も当たってるはずなのに⋮⋮どうしてダメージが少ないの∼﹂
!!
!!
85
最悪ゾッとする。あんな機体で今と同じような戦法をしてこられたら、まだ負けはし
ないだろうけど、少なくともギリギリのそれは免れないだろう。
﹂﹂
﹁二人とも頑張ってるみたいだね﹂
﹁﹁父さん
てきてる。
さらに今日の模擬戦をモニタリングしてたウサギとジルダさんもフィールドに降り
床に座るのだった。
と、いつの間にか現れた父さんが、俺らにペットボトルとタオルを投げると、自分も
!!
﹁
シャルロットォ
﹂
!!
シャルのパパ発言に、父さんは滝のような涙を流して彼女を抱き締める。
!?
﹁そう⋮⋮、ありがとう⋮⋮パ⋮⋮⋮⋮パパ////﹂
﹁それに、実の息子と娘が切磋琢磨して頑張ってるんだ。それを見守るのも親の務めさ﹂
親子であるゆえに、俺やシャルは普段父さんとフランクに会話してる。
俺はスポドを飲みながらそう聞く。上司と部下︵一応テストパイロットだし︶以前に
﹁おいおい、まるで出歯亀してるみたいだぜ。別に見るものでも無いだろ﹂
﹁なに、偶々仕事に暇が出来てね。ついでに息子たちの試合を観戦してたというわけさ﹂
﹁珍しいね、父さんがこっちに降りてくるなんて﹂
Episode11 パパ////
86
﹁パ、パパ
恥ずかしいって
シャルロットォ
!! !!
皆が見てるって
﹂
!! !!
﹂
!!
こんな日常が毎日続けばいいな、俺達はそれぞれがそんなことを思いうのだった。
て父さんの号泣がフィールド内を木霊する。
俺、ウサギ、ジルダさんの和やかな笑い声と、シャルの恥ずかしがってる悲鳴、そし
﹁﹁﹁アハハ⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂
﹁ウォォォ
87
Episode12 女は度胸
﹁さ∼、シャルるんの専用機が完成し∼たよ∼
﹂
!!
﹂
?
たり、変なことをさせられたんでは話にならないし。
はっきりいって酷い状況だった。別にウサギが何徹しようと勝手だが、寝惚けて倒れ
﹁そ、そうですか⋮⋮﹂
くて、今ならどんなことでも出来そうだよ∼﹂
﹁えっとね∼、まともに眠ったのは二週間ぐらい前かな∼⋮⋮もうテンションがおかし
﹁あーお疲れ。とりあえず、今日まで何徹したんだ
さらに数週間の朱鷺が流れ、フラフラと千鳥足になりながら、ウサギはそう口にした。
!!
﹁それ絶好調違う
とにかく寝ろ
﹂
!!
その姿は、基本的なフレームは﹃リヴァイブ﹄のそれに、まるで﹃ガンダムアリオス﹄
シャルの機体を目に見る。
半分死にかけてるウサギをソファーに無理矢理横たわらせ、俺はとりあえず完成した
!!
﹁アハハ、大丈夫大丈夫、目の前にお花畑が見えるくらい絶好調なの∼全力全壊なの∼﹂
﹁ウサギ、とりあえず寝てろ。そんな状態じゃすぐにでも失神しちまうぞ﹂
Episode12 女は度胸!!
88
のフレームを組み合わせたような、独特なシルエットをしており、またそれぞれが少し
ずつ特異な姿をしていた。
オレンジ色のカラーリングに、白をアクセントにした両腕に取り付けられた二つの
シールドは、まるで﹃ゲイツ﹄のようなシールドクローへと様変わりし、攻防一体の複
合装備へと変貌してる。
﹃リヴァイブ﹄の特徴的な非固定ユニットもなくなり、その代わりにコネクターらしき
ものが装備されている。
﹂
?
?
笑う。うん、何かやるつもりだな。
﹁ねぇ、今日もクロト兄との模擬戦なんだよね
﹂
シャルはそう言いかけた途端、何かを思い付いたように、少しだけ口角を吊り上げて
﹁うん、わかっ⋮⋮⋮⋮﹂
﹁とりあえず初期設定するから、さっさと着替えてこい﹂
既に気絶したように意識を手放したウサギを見ながら俺はいう。
﹁﹃ベルフェゴール﹄のVと﹃シャルロット﹄のSだよ。ウサギも粋なことをするよ﹂
﹁V・S
﹁機体名は﹃ラファール・イノベイク V・Sカスタム﹄だそうだ﹂
﹁これが⋮⋮⋮⋮私の機体﹂
89
﹁お、おう⋮⋮⋮⋮﹂
﹁だったらクロト兄も着替えないとだよね∼﹂
﹂
嫌な予感しかしない。とてつもなく嫌な予感しかしない。
﹁だったらここで着替えても⋮⋮⋮⋮﹂
この変態が
!!
い意味は無かったのだが、クロト兄は面白いように怒鳴ってきた。
う∼、私は唸るように肩を落とす。いや、別に面白そうだからやってみただけで、深
シャル視点
の教育を間違えたのか、俺は堪らずにそう思った。
シャルはブーブー言ってきたが、俺は睨んでそれを黙らせる。いったいどこでシャル
た。
俺は怒鳴りながら、シャルの言葉の続きを遮り、そのまま首根っこつかんでぶん投げ
﹁良いから早く着替えに行けぇ
!!
いつからといわれたら多分、あの誘拐事件のあとぐらいだと思う。まさか兄さんがI
もなく、LOVEの好きだ。
私、シャルロット・フェブリエは兄が好きだ。家族愛とかの好きでなく、LIKEで
︵私って⋮⋮やっぱり妹として見られてるんだよね︶
Episode12 女は度胸!!
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Sを動かしてまで私を助けてくれた、それは家族だったからという理由もあるだろうけ
ど、それでも私がLOVEの意味で好きになったきっかけなんだと思う。
それ以来、クロト兄と二人っきりだったりすると、どこか顔がニヤけちゃったり、心
が高鳴ったりと、私は変に緊張してしまった。
束さんにそれを聞いてみたら、やっぱりあの人にも、私がクロト兄に対して恋愛感情
を抱いてるんだってきっぱりと言われた。しかも冷やかし混じりで。そのときは私自
身がティーポットになったみたいに顔が熱くなってた。
︶
けど、これはイケない恋だ。近親恋愛はどこの国でも御法度だし、何より堅物な兄が
認める訳がない。
どうしたら良いんだよ∼私
!!
︵だ、大胆過ぎるよね、でもこれくらいやらないと⋮⋮うん、女は度胸
︶
私は心にそう誓い、とりあえずは自分のISスーツに着替える私だった。
!!
は、
私は思い付いた。こんな気持ちにさせた兄に、責任を取らせる方法を。しかしそれ
︵あれ、もしかしたら⋮⋮⋮⋮︶
に手を当て⋮⋮
顔を真っ赤にさせ、頭をブンブン振り回して考えを無理矢理に飛ばさせる。そして胸
︵あ∼
!!
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