財政出動とIMFの変貌 - 一般社団法人 日本建設業連合会

 これでは子育ては難しい。二〇一六年の直近
の有効求人倍率は上がったとの報告があるけれ
る始末である。
因から各国に景気対策を求めることとなった。
ども、多くの地域で正社員の求人倍率は一・〇
中国上海で開催されたG は、年初来の株価
の低下や乱高下、石油価格の大幅低下などの要
このなかには、わが国では長年禁句となってき
を超えてはいない。
に下がりはじめたのは一九九八年頃からだが、
わが国は二〇年にもわたるデフレからいまだ
に脱却できていない。実際に消費者物価が顕著
書が上梓された年でもあった。
の軽井沢バス事故につながる﹃規制破壊﹄なる
下鉄サリン事件がありという年だったが、今年
グリーンスパンが﹁日本経済はデフレだ﹂と
言った一九九五年に、わが国は財政危機宣言を
アメリカFRB議長だったグリーンスパンが
はもっと売価が下がるだろう﹂と予測するよう
が続くと、デフレマインドが醸成されて、
﹁来年
従業員数を減らしたりすることになる。デフレ
販売価格が下がると企業は経費を節約する必
要があり、その最大要因である賃金を下げたり
この動きと財政危機認識とはピタリと指向が
一致したのだ。財政支出を減らして政府を小さ
向する。
さな政府、民営化、自由化、グローバル化を指
果が得られる﹂という考え方が基本だから、小
発した。この年は、阪神・淡路大震災があり地
﹁日本は戦後初のデフレに陥っている﹂と述べ
になる。そう考えるとあらかじめ、さらなる経
くすれば民間の活動分野を広げることになり、
くなる。
学は主張するのだから、財政支出削減推進派と
大きな経済的成果が得られると新自由主義経済
世帯収入もパート収入を含めても年間二〇〇万
回復したり経済が成長するなどと言い、財政出
こうして、具体的に何を内容とするのか明確
にされないまま、
﹁構造改革﹂を進めると景気が
意見が一致した。
円から四〇〇万円というあたりにピークができ
﹁クラウディングアウト説﹂ではなく、
﹁インフ
金 利 が 上 昇 し て 民 間 投 資 を 阻 害 す る ﹂と い う
経済学者がよく言う﹁政府支出が増大すると、
減してきたのである。
成長しない国となり、そのため税収が伸びない
は倍増したし、経済は世界でただ一つまったく
きく変えて、財政出動︵つまりは大きな政府だ︶
学習した。そのため、最近のIMFは論調を大
らなる歳出削減を呼び込むだけだということを
財政破綻に陥ったギリシャに厳しい財政規律
を強制してきたIMFは、厳しい歳出削減はさ
見事に証明している。この道路の部分的な供用
まさにその通りで、このことは近年の関東地
方での首都圏中央連絡道路︵圏央道︶の整備が
うのである。
ィングイン〟させ、総需要を増大させる﹂とい
ラが提供するサービスが民間投資と高度に補完
ままで、一人あたり名目GDPの世界における
の意義を唱えている。
大規模な物流施設が次々と建設されており、イ
292.99 日本
アメリカ
イギリス
ドイツ
フランス
韓国
300
250
247.26 200
192.56 150
165.82 106.42 100
47.09 50
0
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (暦年)
(注)1 全て名目値を用いている。 2 2005年の英国については、英国原子燃料会社(BNFL)の資産・債務の中央政府への承継(約15,600百万ポンド)の影響を除いている。
3 アメリカについては、2013年7月より採用された08SNAによるデータ、その他の国については、93SNAによるデータである。
資料)日本以外の国については、OECD Stat.Extracts 「National Accounts」、日本については、内閣府「2013年度国民経済計算(2005年基準・93SNA)(確報)より国土交通省作成。
(注1)全て名目値を用いている。
(注2)2005年の英国については、英国原子燃料会社(BNFL)
の資産・債務の中央政府への承継(約15,600百万ポンド)の影響を除いている。
(注3)アメリカについては、2013年7月より採用された08SNAによるデータ、その他の国に
ついては、93SNAによるデータである。
資料)日本以外の国については、OECD Stat.Extracts「National Accounts」
、日本について
は、内閣府「2013年度国民経済計算(2005年基準・93SNA)
(確報)より国土交通省作成。
﹁公共インフラへの投資の拡大は、短期的には
﹁公共インフラへの投資の増大は、残された
数少ない成長促進のための政策手段である ﹂
。
軽井沢と相次ぐバス事故の発生で完全に否定さ
ビスを生み出すというのも、わが国での関越・
壊したし、規制緩和・規制破壊がよりよいサー
れた。
主流派となり学会を席巻しているが、それは世
させる﹂
。
のIMFなのである。
界的には周回遅れとなっている。
世界的にも日本的にも、新自由主義経済学は
死んだのだ。わが国では、この経済学は完全に
さらに、この年のレポートでは、新自由主義
緊縮財政を迫って小さな政府を要求していた
時代とはまったく様相を異にしているのが最近
需要の増大、長期的には経済の生産能力を向上
いうのも、二〇〇八年のリーマンショックで崩
新自由主義経済学の市場がすべてを解決すると
延長の増加に伴い沿道や周辺には、各種工場や
的であるため、潜在的に民間投資を〝クラウデ
地位は直近では二七位に転落した。
﹁インフラは経済
二〇一三年のレポートで、
における生産での不可欠な要素である﹂と指摘
ンフラ整備が民間投資を誘発している様子が顕
その結果は惨めなものだった。歳出削減に励
んだのに︵励んだから︶政府債務のGDP比率
軽井沢バス事故は、規制緩和・規制破壊を推
進してきた新自由主義経済学からの、あらゆる
し、
﹁経済のあらゆるセクターにおいて、インフ
著に見られる。
一般政府公的固定資本形成の推移(平成8年を100とした割合)
(%)
二〇一四年のサーベイレポートでは、次のよ
うに述べた。
ラに依存しない生産は想像しがたい﹂と記述し
IMFの変貌
政策面での決別をわが国に迫っている象徴事件
給与は、平均して一〇∼二〇%も下がったし、
まさに、この二〇年間はこのような﹁恐怖の
循環﹂と言える状況で推移してきた。勤労者の
ればいい。民間に自由にやらせるほど経済的成
費の削減をしておかなければ企業は存続できな
たのは一九九五年六月のことだった。
規制緩和・規制破壊は新自由主義経済学のシ
ンボルとも言え、
﹁政府は余計なことをしなけ
新自由主義経済学の敗北
た財政出動も選択肢に含まれている。
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動は削りに削り、公共事業費は図に見られるよ
Hisakazu Ohishi
である。
大石久和
うに世界の先進国で唯一日本だけがひたすら削
国土学アナリスト
てインフラ整備の重要性に言及した。
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建設業界 2016.5
建設業界 2016.5
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財政出動とIMFの変貌
IMFがインフラ投資の重要性を説くほどに
変貌したように、経済学の常識は変化したのだ。
公共投資水準の国際比較
公共投資水準の国際比較
一般政府公的固定資本形成の推移
(1996年を100とした割合)